説明

ポリマー微粒子創製方法、およびポリマー微粒子創製装置

【課題】回収したポリマーからポリマー微粒子を短時間で得ることができるポリマー微粒子創製方法を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決するための手段としては、回収したポリマーに対して超臨界流体となる流体および溶媒を混合させた後、前記流体を超臨界状態とし、超臨界状態で所定時間保持した後、減圧することにより、前記流体を除去し、その後残留する液体を回収し、前記液体を乾燥させてなることを特徴とするポリマー微粒子創製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー微粒子創製方法、およびポリマー微粒子創製装置に関し、詳しくは、回収したポリマーからポリマー微粒子を短時間で得ることができるポリマー微粒子創製方法、およびポリマー微粒子創製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機のトナー、プリンターインクなどのバインダーにポリマーが使用されている。このポリマーの性状、例えば、粒子径等は限定されている。このようなポリマーは、使用後、回収され、再利用されるために、様々な方法が提案されている。このようなポリマーの微粒子を作成する方法としては、合成法、物理的粉砕法が主流となっている。このなかでも、ナノレベルのポリマー微粒子を得るためには合成法がよいと考えられ、様々な研究が行われている。物理的粉砕法は、ポリマーそのものを原料として用いて容易に処理を行うことができる。しかしながら、ポリマーを細かい微粒子にまで粉砕を行う場合には、非常に処理時間がかかり、さらにナノレベルまで粉砕することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような従来の問題点を解消し、回収したポリマーからポリマー微粒子を短時間で得ることができるポリマー微粒子創製方法、およびポリマー微粒子創製装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、
請求項1は、回収したポリマーに対して超臨界流体となる流体および溶媒を混合させた後、前記流体を超臨界状態とし、超臨界状態で所定時間保持した後、減圧することにより、前記流体を除去し、その後残留する液体を回収し、前記液体を乾燥させてなることを特徴とするポリマー微粒子創製方法であり、
請求項2は、回収したポリマーが投入され、流体を超臨界状態とすることが可能な反応容器と、超臨界流体となる流体を貯留し、前記反応容器に前記流体を供給する流体用タンクと、溶媒を貯留し、前記反応容器に前記溶媒を供給する溶媒用タンクとを備えてなることを特徴とするポリマー微粒子創製装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、回収したポリマーに対して超臨界流体となる流体および溶媒を混合させた後、前記流体を超臨界状態とすると、溶媒自体も超臨界状態に近い状態となると推測される。そして、超臨界状態で所定時間保持すると、混ざり合った超臨界流体および溶媒自体は、いわゆる一般的な超臨界流体が有する高い拡散性および高い溶解性によって、ポリマーを溶解しやすくなると推測される。そのため、溶媒自体がポリマーを溶解する。その後、ポリマーが溶解した超臨界流体および溶媒を減圧することにより、超臨界状態となっていた流体は、超臨界状態から通常の流体に戻る。その後残留する液体を回収し、前記液体を乾燥させると、前記液体中に含まれるポリマーのみを得ることができる。したがって、従来のような物理的粉砕法と比較して、回収したポリマーからポリマー微粒子を短時間で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係るポリマー微粒子創製方法は、回収したポリマーに対して超臨界流体となる流体および溶媒を混合させた後、前記流体を超臨界状態とし、超臨界状態で所定時間保持した後、減圧することにより、前記流体を除去し、その後残留する液体を回収し、前記液体を乾燥させてなる。
【0007】
ポリマーとしては、例えば、コピー機のトナー、プリンターインクなどのバインダー等に使用されているポリマーである。ポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0008】
超臨界流体となる流体としては、例えば、二酸化炭素、水、アンモニア、エタン、プロパン、エタノール、メタノール等を挙げることができる。この中でも、コストが安く、安全性が高いことから、二酸化炭素を使用することが好ましい。
【0009】
溶媒としては、エタノール、n−ブチルアルコール、THF(テトラヒドロフランの略、以下同じ)、キシレン等を挙げることができる。なお、この溶媒は、1種類のみならず、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0010】
超臨界状態で所定時間保持する時間としては、流体および溶媒の組み合わせ等により異なるが、例えば、0.5〜2時間程度である。
【0011】
図1は、本発明に係るポリマー微粒子創製装置の概略図を示している。図1に示されるように、ポリマー微粒子創製装置1は、反応容器2と、流体用タンク3と、溶媒用タンク4と、手動弁5と、捕集槽6と、吸引ポンプ7とを備えて成る。
【0012】
反応容器2は、回収したポリマーが投入され、流体を超臨界状態とすることが可能であればよい。反応容器2は、反応容器2内を攪拌する攪拌器2Aを備えていることが好ましい。なお、反応容器2の後段には、手動弁5と、捕集槽6と、吸引ポンプ7とがこの順に接続されている。
【0013】
流体用タンク3は、超臨界流体となる流体を貯留し、前記反応容器2に流体を供給する。流体用タンク3は、反応容器2の前段に接続されている。流体用タンク3および反応容器2の間には、ポンプ3Aと、手動弁3Bとがこの順に接続されている。
【0014】
溶媒用タンク4は、溶媒を貯留し、前記反応容器に前記溶媒を供給する。溶媒用タンク4は、反応容器2の前段に接続されている。溶媒用タンク4および反応容器2の間には、ポンプ4Aと、手動弁4Bとがこの順に接続されている。
【0015】
前記ポリマー微粒子創製装置1を使用した際のポリマー微粒子創製方法を図1および図2を参照して、説明する。
【0016】
まず、反応容器2内に回収したポリマーが投入される(図2(A)参照)。
【0017】
次に、ポンプ3Aおよび手動弁3Bを作動させて、流体用タンク3から前記反応容器2に超臨界流体となる流体を供給する(図2(B)参照)。
【0018】
さらに、ポンプ4Aおよび手動弁4Bを作動させて、溶媒用タンク4から前記反応容器2に溶媒を供給する(図2(C)参照)。
【0019】
次に、反応容器2内を昇圧および/または昇温することにより、反応容器2内に供給された流体が超臨界状態とされる。この際、攪拌器2Aを適宜、作動させて、超臨界流体となる流体および溶媒を混合する(図2(D)参照)。その後、流体を超臨界状態で所定時間保持する(図2(E)参照)。
【0020】
手動弁5および吸引ポンプ7を作動させて、反応容器2と捕集槽6とを接続し、反応容器2内を減圧する。減圧後、反応容器2から流体が捕集器6側へ移動する(図2(F)参照)。反応容器2内に残留する液体を回収し、この液体を乾燥させる。この液体を乾燥させることにより、ポリマー微粒子が得られる。
【0021】
上記したように、回収したポリマーに対して前記流体および溶媒を混合させた後、前記流体を超臨界状態とすると、溶媒自体も超臨界状態に近い状態となると推測される。そして、超臨界状態で所定時間保持すると、混ざり合った超臨界流体および溶媒自体は、いわゆる一般的な超臨界流体が有する高い拡散性および高い溶解性によって、ポリマーを溶解しやすくなると推測される。そのため、溶媒自体がポリマーを溶解する。その後、ポリマーが溶解した超臨界流体および溶媒を減圧することにより、超臨界状態となっていた流体は、超臨界状態から通常の流体に戻る。その後残留する液体を回収し、前記液体を乾燥させると、前記液体中に含まれるポリマーのみを得ることができる。したがって、従来のような物理的粉砕法と比較して、回収したポリマーからポリマー微粒子を短時間で得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
図1に示すように、まず、反応容器2内に回収したポリマーとしての長さ5mm、円柱形状を有するペレット状にしたポリアクリル酸メチルを投入した。次に、ポンプ3Aおよび手動弁3Bを作動させて、流体用タンク3から前記反応容器2に超臨界流体となる流体としての二酸化炭素ガスを供給した。さらに、ポンプ4Aおよび手動弁4Bを作動させて、溶媒用タンク4から前記反応容器2に溶媒としてのエタノールを供給した。
【0024】
次に、反応容器2内を45℃および7.7MPaの条件下とすることにより、反応容器2内に供給された二酸化炭素ガスを超臨界状態とした。この際、攪拌器2Aを適宜、作動させて、超臨界流体となる流体および溶媒を混合した。その後、二酸化炭素ガスを超臨界状態で、1時間保持した。
【0025】
手動弁5および吸引ポンプ7を作動させて、反応容器2と捕集槽6とを接続し、反応容器2内を減圧した。減圧後、反応容器2から二酸化炭素ガスが捕集器6側へ移動した。反応容器2内に残留するエタノールを回収した。この回収したエタノールは、白濁していた。この白濁は、発泡したポリアクリル酸メチルの一部がエタノールに溶解したためであると推測される。
【0026】
この回収したエタノールをプレパラート上に置き、乾燥させた。乾燥後、SEM分析を行った結果、1000nm程度の球状粒子が存在することが確認された。このSEM写真を図3に示す。
【0027】
[実施例2]
実施例2は、実施例1とは、ポリマーとして長さ5mm、円柱形状を有するペレット状にしたポリスチレンを使用したこと、溶媒としてn−ブチルアルコールを使用したこと、反応容器2内を40℃および7.9MPaの条件下としてことを除く他、同様である。この実施例2においては、この回収したn−ブチルアルコールは、白濁していた。この白濁は、発泡したポリスチレンの一部がn−ブチルアルコールに溶解したためであると推測される。
【0028】
この回収したn−ブチルアルコールをプレパラート上に置き、乾燥させた。乾燥後、SEM分析を行った結果、500nm程度の球状粒子が存在することが確認された。このSEM写真を図4に示す。
【0029】
[実施例3]
実施例3は、実施例1とは、ポリマーとして長さ5mm、円柱形状を有するペレット状にしたポリカーボネートを使用したこと、溶媒としてTHFを使用したこと、反応容器2内を40℃および7.9MPaの条件下としてことを除く他、同様である。この実施例3においては、この回収したTHFは、白濁していた。この白濁は、発泡したポリカーボネートの一部がTHFに溶解したためであると推測される。
【0030】
この回収したTHFをプレパラート上に置き、乾燥させた。乾燥後、SEM分析を行った結果、200nm程度の球状粒子が存在することが確認された。このSEM写真を図5に示す。
【0031】
[比較例1]
比較例1は、実施例1とは、溶媒としてアセトンを使用したことを除く他、同様である。この比較例1においては、ポリアクリル酸メチルは、アセトンに溶解したが、ポリアクリル酸メチルが溶解したアセトンを乾燥させると、フィルム状になり、微粒子の回収はできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明に係るポリマー微粒子創製装置の概略図を示している。
【図2】図2は、反応容器内の状態を示す概略図を示している。
【図3】図3は、微粒子の存在を示すSEM写真を示している。
【図4】図4は、微粒子の存在を示すSEM写真を示している。
【図5】図5は、微粒子の存在を示すSEM写真を示している。
【符号の説明】
【0033】
1 ポリマー微粒子創製装置
2 反応容器
2A 攪拌器
3 流体用タンク
3A ポンプ
3B 手動弁
4 溶媒用タンク
4A ポンプ
4B 手動弁
5 手動弁
6 捕集槽
7 吸引ポンプ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収したポリマーに対して超臨界流体となる流体および溶媒を混合させた後、前記流体を超臨界状態とし、超臨界状態で所定時間保持した後、減圧することにより、前記流体を除去し、その後残留する液体を回収し、前記液体を乾燥させてなることを特徴とするポリマー微粒子創製方法。
【請求項2】
回収したポリマーが投入され、流体を超臨界状態とすることが可能な反応容器と、超臨界流体となる流体を貯留し、前記反応容器に前記流体を供給する流体用タンクと、溶媒を貯留し、前記反応容器に前記溶媒を供給する溶媒用タンクとを備えてなることを特徴とするポリマー微粒子創製装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111798(P2006−111798A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302626(P2004−302626)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】