説明

ポリマー粒子及びその製造方法

【課題】柔軟な伸縮性と空隙確保という、相対する2つの作用を両立した、応力により柔軟に潰れ始めるが、完全には潰れないポリマー粒子及び、その製造方法を提供すること。
【解決手段】微小圧縮試験機を用いて、ポリマー粒子に0.1Nまで荷重をかけたときの圧縮率 [(荷重をかけたときの押し込み長さ/荷重をかけないときの粒子直径)×100(%)] が、5〜40%であるポリマー粒子、ならびに、イオン性を有するポリマーから形成されたコア粒子の存在下に、これと対イオン性を有する単量体を含む単量体成分を重合することを特徴とするポリマー粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力により柔軟に潰れ始めるが、完全には潰れないポリマー粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、小型、軽量、薄型化に有利であることから、各種の家電や携帯端末の入力機器として、タッチパネルが広く用いられている。このタッチパネルは、画面を指で押したり、専用ペンで描画したりすると、その応力がかかった部分が対面電極と接触することにより、通電して信号が入力される。
【0003】
抵抗膜式タッチパネルは、一般に、上部電極層と下部電極層がスペーサーを介して積層したものである。表示面(画面など)を指やペンで押すと、上部電極層に応力がかかり、上部電極層と下部電極層とが接触することにより、通電して信号が入力される。そして、スペーサーは、接着性のある樹脂とともに接着性組成物として用いられることが多い(例えば、特許文献1)。 上記スペーサーとしては、種々のものが提案されている。
【0004】
例えば、「母粒子の表面に樹脂層が設けられているコア−シェル型粒子の製造方法であって、電荷を有しない前記母粒子の表面に、イオン性基を有する樹脂微粒子を、液相中で付着させる工程を有することを特徴とするコア−シェル型粒子の製造方法。」が開示されている(例えば、引用文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−320404号公報
【特許文献2】特開2004−43674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、タッチパネル用スペーサー粒子としては、柔軟な伸縮性と空隙確保という、相対する2つの作用・機能を両立することが必須であると考えた。すなわち、応力により柔軟に潰れ始めるが、完全には潰れないという作用・機能を備えることである。
しかしながら、タッチパネル用スペーサー粒子について、粒子の構造に基づいた上記作用・機能についての検討は、これまで全くされてない。
【0007】
本発明者らは、検討されていない原因は、従来のコア−シェル型粒子の製造方法では、以下の理由により、タッチパネル用スペーサー粒子に適する上記作用・機能を備えるコア−シェル型ポリマー粒子を作ることができないことに起因すると考えた。
【0008】
従来のポリマー粒子の製造方法は、一般に、コア粒子と単量体の存在下に、重合反応させることにより、ポリマーに覆われたコア−シェル型ポリマー粒子とするものである。しかしながら、この製造方法では、コア粒子全体が単量体を吸収することにより膨潤してしまうため、コアとシェルの境界がうまく形成されない、という問題点があった。この方法では、粒子の構造に基づいた作用・機能をコントロールすることはできない。
【0009】
また、上記の問題を解消するため、コア粒子として、高架橋ポリマー(高硬度)コア粒子を用いるが考えられる。しかしながら、この場合、単量体がコア粒子に吸収されないため、重合反応させても、コア粒子表面にポリマー層を形成しない(重合反応により、単量体成分のみの樹脂微粒子が生成される)、という問題点があった。この方法でも、粒子の構造に基づいた作用・機能をコントロールすることはできない。
【0010】
そこで、本発明の課題は、上記の問題点に鑑みて、今までにない斬新な構造を有するポリマー粒子、及びその製造方法を見出し、柔軟な伸縮性と空隙確保という、相対する2つの作用を両立したポリマー粒子を提供することである。すなわち、応力により柔軟に潰れ始めるが、完全には潰れないポリマー粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、微小圧縮試験機を用いてポリマー粒子に0.1Nまで荷重をかけたときの圧縮率〔(荷重をかけたときの圧縮長さ/荷重をかけないときの粒子直径)×100(%)〕が、5〜40%であるポリマー粒子に関する。また、本発明は、イオン性ポリマー表面を有するコア粒子の存在下に、該コア粒子表面のイオン性ポリマーに対する対イオン性単官能単量体を含む単量体を重合させてシェル層を形成するポリマー粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柔軟な伸縮性と空隙確保という、相対する2つの作用を両立したポリマー粒子を提供することができる。すなわち、本発明によれば、応力により柔軟に潰れ始めるが、完全には潰れないポリマー粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔本発明のポリマー粒子について〕
本発明のポリマー粒子について以下に説明する。
本発明のポリマー粒子は、微小圧縮試験機を用いてポリマー粒子に0.1Nまで荷重をかけたときの圧縮率(荷重をかけたときの圧縮長さ/荷重をかけないときの粒子直径×100(%))が、5〜40%であるポリマー粒子である。本発明のポリマー粒子とは、コア−シェル型ポリマー粒子が好ましい。前記コア−シェル型ポリマー粒子におけるコア粒子は、架橋ポリマーであることが好ましい。また、本発明のポリマー粒子の平均粒子径は、1〜50μmであることが好ましい。
【0014】
<圧縮率>
本発明のポリマー粒子は、微小圧縮試験機を用いてポリマー粒子に0.1Nまで荷重をかけたときの圧縮率(荷重をかけたときの圧縮長さ/荷重をかけないときの粒子直径×100(%))が、5〜40%であるポリマー粒子である。本願では、圧縮率とは、圧縮される長さの割合をいう。
本発明のポリマー粒子は、荷重を一定方向(荷重方向)からかけた場合、荷重方向に柔軟に潰れ始めるが、一定の割合以上には潰れないという作用・機能を有する。コア−シェル型ポリマー粒子の場合、潰れる部分がシェル層に相当し、潰れない部分がコアに相当すると考えられる。
本発明のコア−シェル型ポリマー粒子では、シェル層の厚さが好ましくは当該粒子の平均粒子径の5〜40%であることから、シェル層が潰れた場合の圧縮される長さ(荷重をかけたときの圧縮長さ)の割合は、(荷重をかけたときの圧縮長さ/荷重をかけないときの粒子直径×100(%))は、5〜40%となる。圧縮率は、さらに好ましくは20〜40%である。5%未満の場合、変形が小さすぎるためタッチパネル用スペーサーとしての機能を果たさない可能性がある。一方、40%を超えると、変形が大きすぎるため間隙確保ができず、タッチパネル用スペーサーとしての機能を果たさない可能性がある。
「荷重をかけたときの圧縮長さ」とは、粒子に全く荷重がかからない状態から、粒子に最大荷重をかけたときに、荷重方向に粒子が潰れた長さをいう。
【0015】
<ポリマー粒子の平均粒子径、シェル層の厚さ>
本発明のポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜50μm、より好ましくは10〜50μmである。
なお、本発明のコア−シェル型ポリマー粒子では、シェル層の厚さが好ましくは当該粒子の平均粒子径の5〜40%であり、さらに好ましくは20〜40%である。5%未満では例えばタッチパネルスペーサー粒子としての機能を果たさない可能性がある。一方、40%を超えると、粒子の変形が大きくなりすぎることによりスペーサーとしての間隙確保ができず、タッチパネル用スペーサーとしての機能を果たさない可能性がある。
なお、平均粒子径の測定方法は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて、数平均粒子径として、測定できる。
【0016】
<コア−シェル型ポリマー粒子>
本発明のコア−シェル型ポリマー粒子は、例えば、架橋ポリマーからなるコア粒子と、ポリマーに柔軟性を付与することのできる柔軟性単量体を含有したポリマーからなるシェル層から構成される。
【0017】
本発明のコア−シェル型ポリマー粒子の一例を示すと、半径13.5μmの高硬度コアと厚さ半径が9μmの柔軟シェル層から構成される、粒子径が45μmのコア−シェル型ポリマー粒子の場合、この粒子に、平面圧子を用いて、最大荷重0.1Nまで加圧し、最大荷重において、粒子が圧縮される長さを測定したところ、18μmであった(後記実施例を参照)。このことから、本発明のコア−シェル型ポリマー粒子は、直径が45μmの粒子であり、半径13.5μmの高硬度コアと厚さ半径が9μmの柔軟シェル層から構成されているコア−シェル型ポリマー粒子であることが確認できる。
【0018】
〔ポリマー粒子の製造方法について〕
本発明のポリマー粒子の製造方法について以下に説明する。
本発明のポリマー粒子は、イオン性ポリマー表面を有し、架橋ポリマーから構成されるコア粒子の存在下に、該コア粒子表面のイオン性ポリマーに対する対イオン性単官能単量体を含む単量体を重合させてシェル層を形成することにより製造される。また、前記ポリマー粒子の製造方法で得られたポリマー粒子の存在下に、該ポリマー粒子表面のイオン性ポリマーに対する対イオン性単官能単量体を含む単量体を重合させて、更にシェル層を形成する工程を繰り返すことが好ましい。この製造方法により得られるポリマー粒子は、架橋ポリマーから構成されるコアで必要な空隙を確保し、シェル層が柔軟性を有するコア−シェル型粒子となり、また、ミクロンサイズの大粒径粒子を得ることができる。
これに対し、従来のミクロンサイズの粒子は、コア粒子に単量体を吸収させて重合するものである。このような方法では、コア粒子全体が単量体により膨潤するため、コア−シェル境界が形成されない。一方、コア粒子として、高架橋ポリマー(高硬度)コア粒子を用いると、当該コア粒子に単量体が吸収されないため、シェル層がうまく形成されない。
【0019】
<コア粒子及び、コア粒子の製造方法>
コア粒子は、少なくともイオン性単官能単量体及び架橋性単量体を含有する単量体成分を共重合して得られた、高架橋、イオン性のポリマー粒子である。製造方法としては、少なくともイオン性(カチオン性又はアニオン性)単量体と架橋性単量体を含む単量体成分を乳化重合法で重合する方法、シード粒子の存在下、少なくともイオン性(カチオン性またはアニオン性)単量体及び架橋性単量体含む、単量体成分を加え重合するシード重合法などが挙げられる。これらのうち、シード重合法が好ましい。
【0020】
(シード粒子の製造方法)
シード粒子の製造方法には、特に制限はないが、通常、重合性単量体を、乳化重合または懸濁重合で製造することができる。
シード粒子は、1段の重合で得られる粒子を用いてもよい。また、1段だけの重合で得られる粒子をそのまま用いるのではなく、1段目の重合で得られた粒子を更にシードとして2段目の重合を行って1段目のものより、さらに大きい粒子径となったものをシード粒子として用いることができる。また、シード粒子は、必要に応じて1段または2段、またはさらに3段以上の重合を繰返して製造したものを使用することができる。
【0021】
(シード粒子の平均粒子径)
本発明において、シード粒子は、コア粒子の核となる粒子であり、その平均粒子径は、0.4〜45μm、好ましくは4〜45μmである。平均粒子径の測定方法は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて、数平均粒子径として、測定できる。
【0022】
(重合性単官能単量体について)
本発明のコア粒子の核となるシード粒子に用いられる重合性単官能単量体の主成分としては、本発明の効果を奏する限り特に制限はないが、下記単量体等が挙げられる。
例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−セチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、ケイ皮酸ニトリル等のシアン化ビニル系単量体;(メタ)アクリレート2−シアノエチル、(メタ)アクリレート2−シアノプロピル、(メタ)アクリレート3−シアノプロピル等のシアノ基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のエチレン性不飽和モノオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;などの非イオン性単官能単量体が挙げられる。
また、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノメチルマレイネート、モノエチルマレイネート、モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノ(2−(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の不飽和カルボン酸単量体;及びその無水物類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、N−(3−(メタ)アクリロキシプロピル)N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、N−[2−((メタ)アクリロイルアミノ)エチル]N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、N−[3−((メタ)アクリロイルアミノ)プロピル]N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、等の四級アンモニウム基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等の芳香族ビニル系単量体;などのイオン性単官能単量体が挙げられる。
また、例えば、1,2−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の五官能(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレート類等の架橋性単量体を用いることができる。
これらの単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、シードに用いられる単量体としては、スチレン、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
これらの重合性単量体は、後述するコア粒子やシェル層の製造時にも用いられる。
【0023】
(コア粒子の製造方法)
コア粒子が、高架橋イオンコアを形成するためには、得られるコア粒子がイオン性(カチオン性、あるいはアニオン性)を有し、かつ高架橋の高硬度コアとなるためには、前述の架橋性単量体およびイオン性単官能単量体(カチオン性単量体またはアニオン性単量体)を必須成分として用い、前述の非イオン性単官能単量体も用いることができる。
コア粒子の製造方法には、特に制限はないが、通常、シード粒子の存在下に、非イオン性重合性単官能単量体、架橋性単量体およびイオン性単官能単量体を、乳化重合または懸濁重合で製造することができる。詳細には、例えば、前記シード粒子に、乳化重合や懸濁重合下、水性媒体中で、後記する有機過酸化物などのラジカル重合開始剤を添加して十分に攪拌し、その後、高架橋イオンコアを形成させる前記単量体成分を添加して、重合を開始すればよい。
なお、コア粒子がカチオン性あるいはアニオン性のいずれかのイオン性を具備するためには、1回の重合でもよいが、同じイオン性単官能単量体を含む単量体成分を数回繰り返して重合し積層してもよい。
【0024】
(コア粒子の平均粒子径)
コア粒子の平均粒子径は、0.4〜45μm、好ましくは4〜45μmである。なお、平均粒子径の測定方法は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて、数平均粒子径として、測定できる。
【0025】
(ガラス転移温度)
なお、コア粒子は、得られるコア−シェル型ポリマー粒子がタッチパネル用スペーサー粒子などの用途向けに対応し、一定の荷重でも潰れないよう、高架橋の高硬度のコアを形成するものである。ここで、高硬度の目安としては、コア粒子のガラス転移温度が、90℃以上、好ましくは120℃以上であることを指称する。このガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)装置(例えば「DSC 204 F1」NETZSCH社製)を用いて測定することができる。DSC装置を用いてポリマーを加熱することにより得られるDSC曲線(縦軸に熱流、横軸に温度をとる)上で、ベースラインがシフトする部分において、シフト前のベースラインの延長線と変曲点おける接線の交点の温度をガラス転移温度として測定することができる。(以下同様)。
なお、コア粒子のガラス転移温度は、当該コア粒子を作製した段階で、このコア粒子自体のガラス転移温度を測定すればよい。
また、コア粒子において、高硬度の目安となるガラス転移温度を前記のような数値範囲にするには、単官能単量体の種類及び割合、架橋性単量体の割合を調整することにより容易に調整することができる。
なお、ガラス転移温度は、ポリマーを構成する単量体の組成が分かれば、ある程度、おおよそのガラス転移温度を推定することもできる。シェル層の場合も同様である。
ガラス転移温度の計算値
ガラス転移温度(Tg)の計算値は、一般的に以下のFOXの式で求められる。
1/Tg=Wa/Ta+Wb/Tb+・・・
(Tg:ホ゜リマーのTg(単位:K)、Wa,Wb・・・:モノマー毎の重量分率〔Wa+Wb+・・・=1〕、Ta,Tb・・・:各モノマーを単独重合したホモポリマーのTg(単位:K))
単位の換算:セルシウス度(摂氏)CとケルビンKの関係は、C=K−273.15である。
架橋性単量体を含む場合には、(架橋性単量体のホモポリマーはガラス転移がおこらないため、)架橋成分を除いた成分から算出する、非架橋部分のTgとして求められる。
【0026】
(イオン性単官能単量体)
また、高架橋イオンコアを形成する本発明のコア粒子に用いられるイオン性単官能単量体としては、カチオン性単量体かアニオン性単量体のどちらか一方を用いる。コアを形成するために用いるイオン性単官能単量体としては、前述のイオン性単官能単量体のうち、下記のもの等が挙げられる。
【0027】
(アニオン性単量体)
アニオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノメチルマレイネート、モノエチルマレイネート、モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノ(2−(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の不飽和カルボン酸単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル等の重合性不飽和結合を有するリン酸エステル;p−スチレンスルホン酸等の重合性不飽和結合を有するスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性の単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(カチオン性単量体)
また、カチオン性単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、N−(3−(メタ)アクリロキシプロピル)N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、N−[2−((メタ)アクリロイルアミノ)エチル]N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、N−[3−((メタ)アクリロイルアミノ)プロピル]N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、等の四級アンモニウム基含有(メタ)アクリル酸誘導体系単量体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニル基含有含窒素芳香族化合物(塩)等が挙げられる。これらのアニオン性の単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ここで、イオン性単官能単量体として、アニオン性単量体を用いる場合には、得られるコア粒子は、高架橋アニオンコアを形成する。
一方、イオン性単官能単量体として、カチオン性単量体を用いる場合には、得られるコア粒子は、高架橋カチオンコアを形成する。
【0028】
コア粒子を重合するために用いる単量体成分は、少なくとも、非イオン性単官能単量体、架橋性単量体、イオン性単官能単量体を含むものが好ましい。さらに詳細には、コア粒子を重合するために用いる単量体成分の割合は、非イオン性単官能単量体が1〜97質量%、好ましくは10〜90質量%。架橋性単量体が2〜98質量%、好ましくは10〜90質量%。イオン性単官能単量体が1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%(ただし、非イオン性単官能単量体+架橋性単量体+イオン性単官能単量体=100質量%)である。コア粒子が高架橋ポリマーであるためには、架橋性単量体の割合が、コア粒子全体に対して、2質量%以上、好ましくは10質量%以上である。
【0029】
非イオン性単官能単量体が1質量%未満では、単量体成分の混和性が不足し、単量体成分が分離してしまうことにより、高架橋イオン性ポリマーが得られない場合がある。一方、97質量%を超えると、十分な架橋及びイオン性を付与することができないため、コア粒子が高架橋コアとならない場合、及び対イオン単量体成分がシェル層を形成しない場合があり好ましくない。
また、架橋性単量体が2質量%未満では、コア粒子が高架橋コアとならず、好ましくない。一方、架橋性単量体が98質量%を超えると、粒子が形成されない場合があり好ましくない。
さらに、イオン性単官能単量体が1質量%未満では、コア粒子である高架橋イオンコアにおいて、充分なイオン性が発現しない場合がある。一方、イオン性単官能単量体が50質量%を超えると、単量体成分の混和性が不足し、単量体成分が分離してしまうことにより、高架橋イオン性ポリマーが得られない場合があり好ましくない。
【0030】
<コア−シェル型ポリマー粒子を構成するシェル層及び、その製造方法>
本発明のコア−シェル型ポリマー粒子は、イオン性ポリマー表面を有するコア粒子の存在下に対イオン性単官能単量体を含有する単量体成分を加え、乳化重合あるいは懸濁重合することにより、シェル層を形成させる工程を経て製造され、この工程を繰り返すことによっても製造される。
例えば、水系媒体中で、高架橋アニオン性コア粒子存在下に、乳化重合や懸濁重合で、カチオン性単量体、非イオン性単官能単量体と、必要に応じて架橋性単量体とを含む単量体成分を加え重合することにより、カチオンシェルを形成させる(1層目)。更に対イオンとなるアニオン性単量体と、非イオン性単官能単量体と、必要に応じて架橋性単量体とを含む単量体成分を加え重合することにより、アニオンシェルを形成させることもできる(2層目)。ここで、イオン性単官能単量体及び/又は非イオン性単官能単量体として、後述するような柔軟性単量体を用いることで、本発明の目的を達成する柔軟なシェル層を有するコアシェル粒子を形成することができる。この工程を繰り返すことにより、本発明の高架橋コアであるコア粒子の周囲に柔軟性のあるシェル層が形成された本発明のコア−シェル型ポリマー粒子が得られる。
ここで「イオン性を有するポリマーから形成されたコア粒子の存在下に、これと対イオン性を有する単量体を含む単量体成分を重合することを特徴とするポリマー粒子の製造方法。」とは、例えば上記1層目の形成工程をいう。
さらに、「イオン性を有するポリマー粒子の存在下に、前記ポリマー粒子のイオン性と対イオン性を有する単量体を含む単量体成分を重合する工程を少なくとも1回有することを特徴とするポリマー粒子の製造方法。」とは、例えば上記2層目以降の形成工程をいう。「イオン性を有するポリマー粒子」とはコア粒子に対して、少なくともシェル層を1層以上備えたポリマー粒子をいう。
【0031】
コア−シェル型ポリマー粒子を製造する場合の具体例を挙げると、まず、ポリスチレンのシード粒子を作製し、水系媒体中で前記シード粒子にラジカル重合開始剤として有機過酸化物を添加して十分に攪拌したのち、非イオン性単官能単量体、架橋性単量体およびアニオン性単量体を含むアニオン性単量体成分を加えて重合して高架橋アニオンコアを形成させる。ついで、このコア粒子に有機過酸化物を添加して十分に攪拌したのち、非イオン性単官能単量体、架橋性単量体およびカチオン性単量体を含むカチオン性単量体成分を加えて重合することにより、柔軟カチオンシェルを形成させる。次いで、この柔軟カチオンシェルに有機過酸化物を添加して十分に攪拌したのち、単官能単量体、架橋性単量体およびアニオン性単量体を含むアニオン性単量体成分を加えて重合し、柔軟アニオンシェルを形成させる。以後、同様の工程を繰り返すことにより、柔軟シェル層が複数層積層されてなる、本発明のコア−シェル型ポリマー粒子が得られる。
上記の製造例により得られるコア−シェル型ポリマー粒子におけるシェル層が、少なくとも、単官能単量体、架橋性単量体、イオン性単官能単量体から構成される。
シェル層に用いられる単量体成分の組み合わせは、得られた重合体のガラス転移温度の計算値が、−80〜50℃となるものが好ましく、−40〜10℃であるものがさらに好ましい。シェル層のガラス転移温度を、前記数値範囲内にするには、シェル層を構成する単官能単量体の種類及び比率を調整することにより、容易に調整することができる。シェル層のガラス転移温度をこの範囲とすることにより、本発明の目的とする、一定範囲までは潰れ、それ以上は潰れないポリマー粒子の柔軟性シェル層を形成することができる。ガラス転移温度を単量体組成から求める計算式は前述した通りである。
ガラス転移温度の計算値が上記範囲内であり、かつ架橋性単量体の含有量は、シェル層に用いられる単量体全体に対して、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0032】
なお、コア−シェル型ポリマー粒子のガラス転移温度を実際に測定した場合、シェル層の体積が大きくなるにつれ、ポリマー粒子全体としてのガラス転移温度は明確には観測されなくなるため、シェル層のガラス転移温度としては前述した計算値で代用する。
例えば、後述する合成例8のシェル層を構成する単官能単量体を重合した得られたガラス転移温度の計算値は、スチレン(Tg=100℃)46質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg=−85℃)50質量部、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(Tg=18℃)2質量部より、1/Tg=(46/373.15+50/188.15+2/291.15)/(46+50+2)と計算することができ、Tg=247K、すなわち−25℃となり、上記の範囲に含まれる。
前述したとおり、この計算値は、架橋成分を除いた成分から算出した非架橋部分のTgである。
【0033】
(シェル層を形成する単量体成分)
ここで、シェル層を形成する単量体成分としては、前記と同様の単官能単量体、前記と同様の架橋性単量体、および前記と同様のイオン性単官能単量体(カチオン性単量体あるいはアニオン単量体のいずれか)を主成分とする、柔軟イオン性単量体成分である。
【0034】
このうち、シェル層を構成する単量体成分のうち、単官能単量体の組み合わせにより、得られるシェル層の柔らかさの程度を決めることができる。また、イオン性単官能単量体を含有させることにより、例えば、柔軟カチオンシェル、柔軟アニオンシェル、柔軟カチオンシェル、柔軟アニオンシェル・・・・・のように交互に一方のイオン、他方の対イオンといった順序で、柔軟シェル層を複数層形成させることができる。また、シェル層に用いられる架橋性単量体は、シェル層にベタベタ感を与えず、また粒子同士の接着を防ぐという作用をなすものである。
【0035】
(柔軟性単量体)
シェル層を構成する単量体成分のうち、非イオン性単官能単量体、架橋性単量体、イオン性単官能単量体は、コア層を形成するコア粒子に使用されるものと同様であるが、単官能単量体は、得られるポリマーに柔軟性、すなわち低ガラス転移温度を有するポリマーを形成することが可能な単量体(以下、柔軟性単量体ともいう。)を含んでいることが好ましい。柔軟性単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以下であることが好ましく、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−セチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げることができる。
【0036】
シェル層を形成する単量体成分は、少なくとも、柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体、柔軟性単量体、架橋性単量体、柔軟性単量体以外のイオン性単官能単量体を含むものが好ましい。さらに詳細には、シェル層を形成する単量体成分の割合は、柔軟性単量体を含む非イオン性単官能単量体(柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体と柔軟性単量体との合計量)が40〜99質量%、好ましくは80〜96質量%。架橋性単量体が0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%。柔軟性単量体以外のイオン性単官能単量体(カチオン性単量体またはアニオン性単量体)が0.9〜50質量%、好ましくは2〜30質量%(ただし、柔軟性単量体を含む非イオン性単宮能単量体(柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体と柔軟性単量体との合計量)+架橋性単量体+柔軟性単量体以外のイオン性単官能単量体=100質量%)である。
【0037】
柔軟性単量体を含む非イオン性単宮能単量体が40質量%未満では、得られるシェル層に柔軟性を付与することができない。一方、99質量%を超えると、粒子が形成されない場合があり好ましくない。また、架橋性単量体が0.1質量%未満では、シェル層が実質的に架橋されず、用いられる単量体によっては、シェル層にベタツキが生じることにより、粒子同士が接着してしまうため好ましくない。一方、10質量%を超えると、シェル層の架橋が過剰となり、柔軟性が発現しない場合があるため、好ましくない。
さらに、柔軟性単量体以外のイオン性単官能単量体が0.9質量%未満では、単量体成分のイオン性が不足することにより、対イオン性であるコア粒子の表面にシェル層を形成しない場合があり、好ましくない。シェル層が形成できた場合でも、得られるシェル層のイオン性が不足するため、次の対イオン性単量体を含む単量体成分がシェル層を形成しない場合があり、好ましくない。一方、50質量%を超えると、単量体成分の混和性が不足し、単量体成分が分離してしまうことにより、シェル層を形成しない場合があり、好ましくない。
【0038】
〔乳化剤について〕
ここで、シード粒子、コア粒子や本発明のコア−シェル型ポリマー粒子を乳化重合や懸濁重合で製造する際に用いる乳化剤としては、特に制限はなく、通常、樹脂を乳化重合や懸濁重合で製造する際に用いられるものであれば良い。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、有機懸濁保護剤などの界面活性能を有する物質を挙げることができ、特にアニオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。これらの乳化剤は、1種を単独でもしくは2種以上組み合せて用いることができる。
ここで、アニオン性界面活性剤としては、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸のナトリウム塩、もしくはカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸などを挙げることができる。
また、非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどを挙げることができる。
さらに、有機懸濁保護剤としては、常温で固体の水性ポリマーであり、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デンプン、アラビアゴムなどが挙げられる。
乳化剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対し、通常、1〜30質量部である。
【0039】
〔重合開始剤について〕
また、本発明の粒子を乳化重合や懸濁重合で製造する際に用いる重合開始剤としては、特に制限はなく、通常、樹脂を乳化重合や懸濁重合で製造する際に用いられるものであれば良い。
重合開始剤としては、ハイドロパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルバーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を任意に使用することができる。
重合開始剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対し、通常、0.1〜10質量部である。
【0040】
〔分子量調節剤について〕
なお、粒子の製造に際には、必要に応じて、分子量調節剤(連鎖移動剤)を添加することができる。
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、通常の重合反応の分子量調節に慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。このような連鎖移動剤には、例えばプロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのような炭素数1〜30のアルキルメルカプタン類や、オクチルチオグリコレート、チオグリコール酸、ジフェニルスルフイドのような炭素数1〜30の有機硫黄化合物や、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロムトリクロロメタンのような炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素や、α−メチルスチレンダイマーのような不飽和基を有する炭化水素類などが含まれる。これらの連鎖移動剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。かかる連鎖移動剤は、単量体と混合して使用する方法、初期に一括して仕込む方法、逐次追添する方法、導入速度やその組成を連続的ないしは段階的に変化させる方法などを採用することができる。
分子量調節剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対し、通常、0.1〜10質量部である。
【0041】
粒子の製造の際に用いられる媒体は、特に制限はないが、製造後、乾燥前に水性分散体として得られるという観点から、水性媒体が好ましい。水性媒体としては、例えば、水やアルコールなどがあるが、水が好ましい。重合反応の回数は、特に制限はなく、一段の重合でも、多段の重合でも良い。反応温度や反応時間も、特に制限はなく、適宜調整して行うことができる。例えば、40〜90℃で1〜4時間の反応を、2〜3回行うことができる。
水性媒体の使用量は、重合性単量体100質量部に対し、通常、100〜2000質量部である。
【0042】
粒子を乾燥させて粉末状の有機粒子を得る方法としては、一般に行われているエマルジョンの粉末化法を用いることができ、例えば噴霧乾燥法(135〜155℃)、熱風乾燥機を用いたトレイ乾燥法(50〜70℃)および流動床乾燥法(常温〜70℃)などを用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、合成例、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、合成例、実施例、比較例中の各種の測定は、下記の方法により行った。
合成例1〜6より、シード粒子を調製した。また、合成例7より、高硬度コア粒子を調製した。また、合成例8〜11より、コア−シェル型粒子を調製した。そして、実施例1により、コア−シェル型粒子の評価を行った。
【0044】
[平均粒子径]
透過型電子顕微鏡(「H−7650」、日立ハイテク社製)または走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)によって観察される粒子の粒子径を測定し、観察視野中に存在する100個の粒子の粒子径の平均値(数平均粒子径)を算出した。
【0045】
[ガラス転移温度]
DSC装置(「DSC 204 F1」、NETZSCH社製)を用いて粒子を加熱することにより得られるDSC曲線(縦軸に熱流、横軸に温度をとる)上で、ベースラインがシフトする部分において、シフト前のベースラインの延長線と変曲点おける接線の交点の温度をガラス転移温度として測定した。
【0046】
[圧縮率]
微小圧縮試験機(「MCT−W500」、島津製作所社製)を用いて、「荷重をかけないときの粒子直径」を測定し、次いで60μm/secの速さで稼働する平面圧子によって粒子を最大荷重0.1Nまで加圧して、最大荷重において粒子が圧縮される長さ(「荷重をかけたときの圧縮長さ」)を測定した。100個の粒子について1個ずつ、粒子直径及び荷重をかけたときの圧縮長さを測定した。そして、下記の式で示された圧縮率を算出し、粒子直径・荷重をかけたときの圧縮長さ・圧縮率の平均値を算出した。
圧縮率(%)=(荷重をかけたときの圧縮長さ/荷重をかけないときの粒子直径)×100
【0047】
(合成例1)(0.2μmポリスチレン粒子の合成)
セパラブルフラスコ中に、イオン交換水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液0.6部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム1%および炭酸カリウム1.3%を含む水溶液2部、スチレン18部及びメタクリル酸2部からなる単量体成分を投入した。40rpmで攪拌しながら水浴中で75℃まで加熱し、tert−ドデカンチオール2部、重合開始剤として過硫酸ナトリウム5%水溶液20部を投入した。さらに75℃で2時間加熱した後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.5%水溶液4部を投入した。次に、反応溶液に、O/W型エマルジョン(イオン交換水37部、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液3部、スチレン76部及びメタクリル酸4部からなる単量体成分、tert−ドデカンチオール3部)を2時間かけて滴下した。さらに75℃で1.5時間加熱した後、過硫酸ナトリウム1%水溶液10部を投入した。さらに75℃で2.5時間加熱することにより、ポリスチレン粒子のラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、34%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が97%であった。
得られたラテックス中の粒子を透過型電子顕微鏡(「H−7650」、日立ハイテク社製)にて観察したところ、数平均粒子径が0.16μmであった。
【0048】
(合成例2)(0.4μmポリスチレン粒子の合成)
セパラブルフラスコ中に、イオン交換水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15%水溶液1.3部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム1%水溶液2部、合成例1記載の合成法によって合成された0.2μmポリスチレン粒子33%水分散液21部を投入した。40rpmで攪拌しながら水浴中で80℃まで加熱し、重合開始剤として過硫酸ナトリウム5%水溶液30部を投入した。次に、反応溶液に、スチレン97部およびメタクリル酸3部からなる単量体成分とtert−ドデカンチオール3部の混合液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15%水溶液0.67部およびイオン交換水2.3部を投入した。さらに80℃で1時間加熱した後、過硫酸ナトリウム1%水溶液10部を投入し、85℃で2時間加熱することにより、ポリスチレン粒子のラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、30%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が99%であった。
得られたラテックス中の粒子を透過型電子顕微鏡(「H−7650」、日立ハイテク社製)にて観察したところ、数平均粒子径が0.40μmであった。
【0049】
(合成例3)(0.9μmポリスチレン粒子の合成)
セパラブルフラスコ中に、イオン交換水191部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液2部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム1%水溶液2部、合成例2記載の合成法によって合成された0.4μmポリスチレン粒子30%水分散液33部を投入した。40rpmで攪拌しながら水浴中で80℃まで加熱し、重合開始剤として過硫酸ナトリウム5%水溶液30部を投入した。次に、反応溶液に、スチレン97部およびメタクリル酸3部からなる単量体成分とtert−ドデカンチオール3部の混合液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液1部およびイオン交換水2.5部を投入した。さらに80℃で1時間加熱した後、過硫酸ナトリウム1%水溶液10部を投入し、85℃で2時間加熱することにより、ポリスチレン粒子のラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、29%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が96%であった。
得られたラテックス中の粒子を透過型電子顕微鏡(「H−7650」、日立ハイテク社製)にて観察したところ、数平均粒子径が0.91μmであった。
【0050】
(合成例4)(3μmポリスチレン粒子の合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水30部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」、日油社製)6部、ドデシル硫酸ナトリウム10%水溶液2部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、イオン交換水351部、合成例3記載の合成法によって合成された0.9μmポリスチレン粒子30%水分散液8.4部、アセトン20%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、14時間静置することにより、有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液を得た。
〔ポリスチレン粒子の合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水351部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGM14L」、日本合成化学社製)50部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理ポリスチレン分散液、tert−ドデカンチオール4.5部を投入し、スチレン100部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。210rpmで攪拌しながら、水浴温度50℃で2時間、60℃で1時間、65℃で1時間、70℃で5時間加熱した。次に、反応溶液に、イオン交換水5.6部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1%水溶液0.22部、アゾビスイソブチロニトリル0.35部からなるスラリーを投入し、さらに70℃で5時間加熱することにより、ポリスチレン粒子のラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、17%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が98%であった。
得られたラテックス中の粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が3.2μmであった。
【0051】
(合成例5)(7μmポリスチレン粒子の合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水28部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」日油社製)6部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液2部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例4記載の合成法によって合成された3μmポリスチレン粒子22%水分散液46部、アセトン38%水溶液16部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復12時間震盪することにより、有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液を得た。
〔ポリスチレン粒子の合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水405部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)50部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理ポリスチレン分散液、tert−ドデカンチオール7部を投入し、スチレン100部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。400rpmで攪拌しながら、水浴温度50℃で3時間加熱した後、240rpmで攪拌しながら60℃で1時間、75℃で3時間加熱した。次に、反応溶液に、イオン交換水1.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1%水溶液0.1部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部からなるスラリーを投入し、さらに75℃で7時間加熱することにより、ポリスチレン粒子のラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、17%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が96%であった。
得られたラテックス中の粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が6.6μmであった。
【0052】
(合成例6)(14μmポリスチレン粒子の合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水29部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」、日油社製)6部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液1部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例5記載の合成法によって合成された7μmポリスチレン粒子15%水分散液88部、アセトン50%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復14時間震盪することにより、有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液を得た。
〔ポリスチレン粒子の合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水506部、メタノール180部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)50部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理ポリスチレン分散液を投入し、スチレン100部を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。400rpmで攪拌しながら、水浴温度50℃で3時間加熱した後、240rpmで攪拌しながら水浴温度60℃で1時間、75℃で2時間加熱し、ポリスチレン粒子のラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、11%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が88%であった。
得られたラテックス中の粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が14μmであった。
【0053】
(合成例7)(27μm高硬度コア粒子Aの合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水29部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」、日油社製)4部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液1部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例6記載の合成法によって合成された14μmポリスチレン粒子10%水分散液144部、アセトン50%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復14時間震盪することにより、有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液を得た。
〔高硬度コア粒子Aの合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水460部、メタノール150部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)50部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理ポリスチレン分散液を投入し、スチレン[非イオン性単官能単量体]80部、ジビニルベンゼン(「DVB−810」、新日鐵化学社製)[架橋性単量体]10部、メタクリル酸[アニオン性単量体]10部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。160rpmで攪拌しながら、水浴温度40℃で2時間、50℃で1時間、60℃で1時間、70℃で3時間、75度で40分加熱し、コア粒子Aのラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、11%に調整した。得られたラテックスは、重合転化率が92%であった。
得られたラテックスに対して、遠心分離機(「himac CR22E」、日立工機社製)を用いて1000rpmで30分間遠心分離を行い、沈降物を回収し、水に分散させ、固形分濃度を20%に調整した。粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が27μmであった。粒子のガラス転移温度をDSC装置(「DSC 204 F1」、NETZSCH社製)を用いて測定したところ、100℃であった。
【0054】
(合成例8)(コア−シェル型粒子Bの合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水29部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」、日油社製)4部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液1部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例7記載の合成法によって合成されたコア粒子Aの20%水分散液120部、アセトン50%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復14時間震盪することにより、有機過酸化物処理コア粒子A分散液を得た。
〔コア−シェル型粒子Bの合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水370部、メタノール180部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)200部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理粒子Bの分散液を投入し、スチレン[柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体]46部、2−エチルヘキシルアクリレート[柔軟性単量体]50部、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート[カチオン性単量体]2部、ジビニルベンゼン(「DVB−810」、新日鐵化学社製)[架橋性単量体]2部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。160rpmで攪拌しながら、水浴温度40℃で2時間、50℃で1時間、75℃で5.5時間加熱し、コア−シェル型粒子Bのラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、13%に調整した。得られたラテックス中のコア−シェル型粒子Bは、重合転化率が95%であった。
得られたラテックスに対して、超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて5分間超音波照射を行い、ステンレスメッシュ(目開き25μm)上に粒子を回収した。上記の超音波照射及びメッシュによる回収をさらに2回繰り返し、得られた粒子を水に分散させ、固形分19%に調整した。粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が33μmであった。粒子のガラス転移温度をDSC装置(「DSC 204 F1」、NETZSCH社製)を用いて測定したところ、2℃であった。
【0055】
(合成例9)(コア−シェル型粒子Cの合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水29部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」日油社製)4部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液1部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例8記載の合成法によって合成されたコア−シェル型粒子Bの19%水分散液292部、アセトン50%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復14時間震盪することにより、有機過酸化物処理粒子Bの分散液を得た。
〔コア−シェル型粒子Cの合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水315部、メタノール172部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)200部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理粒子B分散液を投入し、スチレン[柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体]46部、2−エチルヘキシルアクリレート[柔軟性単量体]50部、メタクリル酸[アニオン性単量体]2部、ジビニルベンゼン(「DVB−810」、新日鐵化学社製)[架橋性単量体]2部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。160rpmで攪拌しながら、水浴温度40℃で2時間、50℃で1時間、75℃で5.5時間加熱し、コア−シェル型粒子Cのラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、13%に調整した。得られたラテックス中のコア−シェル型粒子Cは、重合転化率が81%であった。
得られたラテックスに対して、超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて5分間超音波照射を行い、ステンレスメッシュ(目開き25μm)上に粒子を回収した。上記の超音波照射及びメッシュによる回収をさらに4回繰り返し、得られた粒子を水に分散させ、固形分22%に調整した。粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が38μmであった。粒子のガラス転移温度をDSC装置(「DSC 204 F1」、NETZSCH社製)を用いて測定したところ、4℃であった。
【0056】
(合成例10)(コア−シェル型粒子Dの合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水29部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」日油社製)4部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液1部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例9記載の合成法によって合成されたコア−シェル型粒子Cの22%水分散液292部、アセトン50%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復14時間震盪することにより、有機過酸化物処理粒子Cの分散液を得た。
〔コア−シェル型粒子Dの合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水1270部、メタノール180部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)200部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理粒子C分散液を投入し、スチレン[柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体]46部、2−エチルヘキシルアクリレート[柔軟性単量体]50部、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート[カチオン性単量体]2部、ジビニルベンゼン(「DVB−810」、新日鐵化学社製)[架橋性単量体]2部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。160rpmで攪拌しながら、水浴温度40℃で1時間、50℃で1時間、60℃で1時間、70℃で1時間、75℃で3時間加熱し、コア−シェル型粒子Dのラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、9.1%に調整した。得られたラテックス中のコア−シェル型粒子Dは、重合転化率が74%であった。
得られたラテックスに対して、超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて5分間超音波照射を行い、ステンレスメッシュ(目開き25μm)上に粒子を回収した。上記の超音波照射及びメッシュによる回収をさらに7回繰り返し、得られた粒子を水に分散させ、固形分20%に調整した。粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が42μmであった。粒子のガラス転移温度をDSC装置(「DSC 204 F1」、NETZSCH社製)を用いて測定したところ、−0.5℃であった。
【0057】
(合成例11)(コア−シェル型粒子Eの合成)
〔有機過酸化物エマルジョンの調製〕
ビーカー中に、イオン交換水29部、重合開始剤として有機過酸化物(「パーロイル355」日油社製)4部、ドデシル硫酸ナトリウム15%水溶液1部を投入し、氷浴中で冷却しながら超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて60秒間の超音波照射を4回行い、有機過酸化物エマルジョンを得た。
〔有機過酸化物処理ポリスチレン粒子分散液の調製〕
ポリエチレン製スクリュー瓶中に、合成例10記載の合成法によって合成されたコア−シェル型粒子Dの20%水分散液600部、アセトン50%水溶液30部、上記有機過酸化物エマルジョンを投入し、往復式震盪機(「SHAKER SR−1」、AS ONE社製)上で毎分90往復14時間震盪することにより、有機過酸化物処理粒子Dの分散液を得た。
〔コア−シェル型粒子Eの合成〕
セパラブルフラスコに、イオン交換水1170部、メタノール180部、ポリビニアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGH20」、日本合成化学社製)200部、硫酸第二鉄n水和物1%水溶液50部、上記有機過酸化物処理粒子D分散液を投入し、スチレン[柔軟性単量体以外の非イオン性単官能単量体]46部、2−エチルヘキシルアクリレート[柔軟性単量体]50部、メタクリル酸[アニオン性単量体]2部、ジビニルベンゼン(「DVB−810」、新日鐵化学社製)[架橋性単量体]2部からなる単量体成分を投入し、四ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、冷却管、温度計を取り付けた。160rpmで攪拌しながら、水浴温度40℃で1時間、50℃で1時間、60℃で1時間、70℃で1時間、75℃で3時間加熱し、コア−シェル型粒子Eのラテックスを得た。得られたラテックスの固形分濃度は、9.8%に調整した。得られたラテックス中のコア−シェル型粒子Eは、重合転化率が86%であった。
得られたラテックスに対して、超音波分散機(「UH−600S」、SMT社製)を用いて5分間超音波照射を行い、ステンレスメッシュ(目開き25μm)上に粒子を回収した。上記の超音波照射及びメッシュによる回収をさらに7回繰り返し、得られた粒子を水に分散させ、固形分20%に調整した。粒子を走査型電子顕微鏡(「JSM−6360LA」、日本電子社製)にて観察したところ、数平均粒子径が45μmであった。粒子のガラス転移温度をDSC装置(「DSC 204 F1」、NETZSCH社製)を用いて測定したところ、0℃であった。
【0058】
(実施例1)
〔コア−シェル型粒子Eの評価について〕
合成例11記載の合成法によって合成されたコア−シェル型粒子E(平均粒子径45μm)の荷重をかけないときの粒子直径を測定したところ、45μm(平均値)であった。次いで、60μm/secの速さで稼働する平面圧子を用いて最大荷重0.1Nまで加圧し、最大荷重において粒子が圧縮される長さ(荷重をかけたときの圧縮長さ)を測定したところ、18μm(平均値)であった。また、圧縮率は、40%(平均値)であった。
この結果から、直径45μmの粒子Eが直径27μmの高硬度コアと厚さ9μmの柔軟シェル層より構成されているコア−シェル型粒子であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のコア−シェル型粒子は、タッチパネル用スペーサーのほか、光学部品のギャップ形成用スペーサー、接着剤層厚さ制御用スペーサー等の用途に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小圧縮試験機を用いて、ポリマー粒子に0.1Nまで荷重をかけたときの圧縮率 [(荷重をかけたときの押し込み長さ/荷重をかけないときの粒子直径)×100(%)] が、5〜40%であるポリマー粒子。
【請求項2】
数平均粒子径が1〜50μmである請求項1記載のポリマー粒子。
【請求項3】
コアシェル構造を有する請求項1または2に記載のポリマー粒子。
【請求項4】
前記コアシェル構造を有するポリマー粒子のコアが架橋ポリマーから形成されている請求項3記載のポリマー粒子。
【請求項5】
イオン性を有するポリマーから形成されたコア粒子の存在下に、これと対イオン性を有する単量体を含む単量体成分を重合することを特徴とするポリマー粒子の製造方法。
【請求項6】
イオン性を有するポリマー粒子の存在下に、前記ポリマー粒子のイオン性と対イオン性を有する単量体を含む単量体成分を重合する工程を少なくとも1回有することを特徴とするポリマー粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−224750(P2012−224750A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93642(P2011−93642)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】