説明

ポリマー組成物

熱可塑性ポリオレフィンと、エチレン、α−オレフィン、および場合により1種またはそれ以上の非共役ポリエンをモノマー単位として含む動的加硫エラストマーと、オイルとを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、オイル/エラストマー比が少なくとも2/1であり、熱可塑性ポリオレフィンの含量が該熱可塑性エラストマー組成物の総重量の10重量%未満であり、該組成物の粒状体が、内径95.3ミリメータ(mm)、長さ356mmの円筒内に326〜338mmの長さまで充填され、その円筒内で圧力465kg/m2、温度50℃で1時間保持された後に、鉛直状態に保持された円筒から120秒以内に流出することが可能である、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低硬度熱可塑性エラストマー組成物
本発明は、熱可塑性ポリオレフィンと、エチレン、α−オレフィン、および場合により1種またはそれ以上の非共役ポリエンをモノマー単位として含む動的加硫エラストマーとを含む、熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
EP−A−436724には、ショアA硬度が50未満の熱可塑性エラストマーが記載されている。この熱可塑性エラストマー組成物は、共重合体ゴムおよび熱可塑性ポリオレフィンを、ホッパを通じて押出機のシリンダ内に供給し、ホッパとは別の入口を通じて鉱物油系軟化剤をシリコーン油と一緒に押出機に供給し、それによって有機過酸化物の存在下にこの混合物を熱処理することによって得られるものである。
【0003】
周知の低硬度の熱可塑性エラストマーの問題点は、組成物の粘着性が高いことにある。このことは例えば、粒状の該組成物を、大型袋、小型袋、ゲイロード箱(gaylord)、カートンに入れて積み重ねて貯蔵したままにしておいたり、あるいは貯蔵室に入れたままにしておいた場合に、互着を発生させる原因となる。一旦互着してしまった粒状体はもはや押出機の供給口に移送することができない。互着した粒状体が凝集して大きな塊を形成する可能性もある。さらには、大型袋、小型袋、ゲイロード箱、カートン、または貯蔵室に詰められた粒状体がすべてまたは実質的にすべて互着して、全体が一つの塊になってしまう可能性すらある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬度が低く、かつ粘着性がこれほど高くない熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、熱可塑性ポリオレフィンと、エチレン、α−オレフィン、および場合により1種またはそれ以上の非共役ポリエンをモノマー単位として含む動的加硫エラストマーと、オイルとを含む組成物を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、オイル/エラストマー比が少なくとも2/1であり、熱可塑性ポリオレフィンの含量が該熱可塑性エラストマー組成物の総重量の10重量%未満であり、該組成物の粒状体が、内径95.3ミリメータ(mm)、長さ356mmの円筒内に326〜338mmの長さまで充填され、その円筒内で圧力465kg/m2、温度50℃で1時間(hr)保持された後に、鉛直状態に保持された円筒から120秒以内に流出することが可能である組成物を提供することによって達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明による熱可塑性エラストマーの粒状体は、くっ付いたり塊になる傾向が非常に低いため、周知の低硬度熱可塑性エラストマーの問題を発生させることなく、大型袋、小型袋、ゲイロード箱、カートン、または貯蔵室内で貯蔵することができ、移送に際しても、例えば、粒状体を貯蔵室から加工設備へ移送する際に用いられる場合がある自動気送設備によって容易に行うことが可能である。これにより、この種の熱可塑性エラストマーを初めて現代の生産加工に、そして商業用途に用いることが可能になるであろう。
【0007】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物のさらなる利点は、この組成物の成形品の表面が非常に滑らかであることから、この組成物がいわゆる「ソフト感(soft touch)」を利用するグリップや押しボタン等に非常によく適していることである。
【0008】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物のさらなる利点は、この組成物が低粘度であることから、成形品への加工が、特に射出成形によって容易に行えることにある。
【0009】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物のさらなる利点は、この組成物が熱可塑性ポリマーの耐衝撃性改良剤として使用するのに非常によく適していることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物に使用するのに好適な熱可塑性ポリオレフィンとしては、例えば、エチレンもしくはプロピレンのホモポリマー、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレンと炭素原子4〜20個を有するα−オレフィンコモノマーとのコポリマー、またはプロピレンと炭素原子4〜20個を有するα−オレフィンコモノマーとのコポリマーが挙げられる。プロピレンと炭素原子4〜20個を有するアルファ−オレフィンコモノマーとのコポリマーの場合、前記コポリマーのプロピレンモノマー単位の含量は、好ましくは少なくとも75重量%である。熱可塑性ポリオレフィンホモ−およびコポリマーの調製には、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、または他のシングルサイト触媒を用いてよい。
【0011】
好ましくは、熱可塑性ポリオレフィンとして、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはその混合物が使用される。より好ましくは、熱可塑性ポリオレフィンとして、ポリプロピレンが使用される。最も好ましくは、ポリプロピレンホモポリマーが使用される。
【0012】
ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.3〜50(グラム/10分)、より好ましくは0.5〜20である(ISO標準1133(230℃、荷重2.16kg)に準拠)。
【0013】
熱可塑性ポリオレフィンの量は、熱可塑性エラストマー組成物の総重量の10重量%未満である。好ましくは、この量は8重量%未満であり、より好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の総重量の6重量%未満であり、よりさらに好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の総重量の5重量%未満であり、最も好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の総重量の4重量%未満である。熱可塑性ポリオレフィンの量は、好ましくは、熱可塑性エラストマー組成物の総重量の2重量%を超える。
【0014】
動的加硫エラストマーを含む熱可塑性エラストマー組成物も同様に熱可塑性加硫(TPV)として知られている。本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用されるエラストマーは、モノマー単位として、エチレン、α−オレフィン、および場合により1種またはそれ以上の非共役ポリエンを含む。このエラストマーは、α−オレフィンとして、4〜20個の炭素原子を含むα−オレフィンを含んでもよい。このα−オレフィンは、例えば、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテン等である。好ましくは、プロピレンが使用される。
【0015】
該エラストマー中のエチレンとα−オレフィンとの重量比は、好ましくは90/10〜20/80、より好ましくは70/30〜40/60である。
【0016】
好ましくは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物に使用されるエラストマーは、非共役ポリエンを含んでいる。これにより、動的加硫を非常に良好に制御できるようになる。
【0017】
エラストマーに使用してもよい非共役ポリエンとしては、例えば、5−エチリデンノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、および1,4−ヘキサジエンがある。このエラストマーは、2種以上の異なるポリエン、例えばENBおよびVNBを含むことも可能である。
【0018】
ポリエンも含むエラストマーは、好ましくはポリエンを1〜12重量%、より好ましくは2〜10重量%含む。
【0019】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性加硫物(TPV)に使用するのに好適なことが知られている任意のオイルを含んでいてもよい。好適なオイルとしては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、および芳香族系オイルがある。最も好適なものは、ホワイトオイルとも呼ばれる非常に純度の高いパラフィン系オイルである。そのなかでも最も好適なのは、シェブロン(Chevron)により開発されたいわゆるイソクラッキングおよび脱ろうプロセスによって調製されるパラフィン系オイルである。
【0020】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中のオイル/エラストマー比は、少なくとも2/1、好ましくは少なくとも2.5/1、より好ましくは少なくとも3/1、最も好ましくは少なくとも3.5/1である。
【0021】
本発明による組成物の粒状体は、内径93.5ミリメータ(mm)、長さ356mmの円筒内に326〜338mmの長さまで充填され、この円筒内で圧力465kg/m2、温度50℃で1時間、好ましくは24時間、よりさらに好ましくは24時間保持された後に、鉛直状態に保持された円筒内から120秒以内、好ましくは60秒以内、より好ましくは30秒以内、よりさらに好ましくは15秒以内に流出することが可能である。
【0022】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは、ショアA硬度が35未満、より好ましくは30未満、よりさらに好ましくは25未満である。
【0023】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは、細管粘度計を用いて、剪断速度207s−1、温度200℃で測定した剪断粘度が300Pa.s未満である。最も好ましくは、この組成物を同一の条件下で測定した剪断粘度は200Pa.sである。
【0024】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物の押出成形品は、表面が非常に滑らかであると考えられ、例えば、日本国(Japan)の株式会社ミツトヨ製の型式211サーフテスト(Surftest)表面粗さ試験機で、測定力を4mN(0.4gf)、カットオフ長を0.8mmに設定して測定したRaが5マイクロメータ未満で表される平滑性を有する。好ましくは、この平滑性は3ミクロン未満である。
【0025】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、さらなる通常の成分、例えば補強用および非補強用充填剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、滑剤、発泡剤、顔料、難燃剤をさらに含んでいてもよい。使用してもよい充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク、二酸化チタン、カーボンブラック、および無機ナノ粒子がある。
【0026】
さらに本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物の調製方法に関する。
【0027】
動的加硫は、少なくとも熱可塑性ポリオレフィンおよびエラストマーを含む混合物を混練するステップと、このエラストマーを混練しながら加硫するステップとを含む。
【0028】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の調製は、熱可塑性ポリオレフィン、エラストマー、オイル、および加硫剤を、回分式混合機に一度に加えるか、または連続式混合機に同じ位置から加えることによって一段階で組成物を調製することによって行ってもよい。しかしながら、本発明による熱可塑性エラストマー組成物は、まず熱可塑性ポリオレフィンの溶融物およびエラストマーを混練した後、混練を継続しながら、動的加硫が起こるように加硫剤を加えることによって調製してもよい。
【0029】
オイルは、例えば、動的加硫の前および/または途中および/または後に加えてもよい。好ましくは、動的加硫の前および途中にオイルを加える。最も好ましくは、動的加硫の途中で2回以上に分けてオイルを加える。回分法の場合は、混合サイクルの様々な段階の途中で様々な回数でオイルを加える。押出機の場合は、供給口から下流方向に向かってそれぞれ異なる距離にある2つ以上の位置からオイルを供給する。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の調製は、従来の混合装置、例えば、ロールミル、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、連続式混合機(例えば、単軸押出機、二軸押出機)等で実施してもよい。好ましくは、この工程は、二軸押出機を用いて実施する。
【0030】
加硫剤としては、フェノール樹脂、過酸化物、ケイ素を含む硬化剤、またはボランを使用してもよい。エラストマー100部に対しフェノール樹脂を0.5〜5.0部用いた場合に良好な結果が得られる。好ましくは、フェノール樹脂を0.5〜3.0、より好ましくは1〜2部使用する。粒状体に粘着性を生じさせないように、十分な量の硬化剤を使用することが重要である。使用する硬化剤が多すぎると、本発明による組成物は、表面が粗過ぎるかまたは形態の悪いものになる。好ましくは、表面粗さRaが10未満、好ましくは7未満、より好ましくは5未満となる量の硬化剤を使用する。
【0031】
好適なフェノール樹脂としては、例えば、オクチルフェノール−ホルムアルデヒド硬化樹脂がある。この種の市販の樹脂としては、例えば、仏国(France)のCECA−Atoより供給されるリベタク(Ribetak)R7530Eまたは米国のシェネクタディ(Schenectady,US)より供給されるSP1045がある。
【0032】
該組成物が混合機から排出されるときの温度は、好ましくは200〜260℃である。
【0033】
フェノール樹脂以外の加硫剤を使用する場合、同一または同等の動的加硫速度が得られるように、加硫剤の量、温度、および滞留時間を選択することが重要である。
【0034】
本発明による熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマーの動的加硫度は、好ましくは80〜98%、より好ましくは82〜96%、より好ましくは84〜94%である。
【0035】
エラストマーの加硫度は、ゲル含有率という項目で表される。ゲル含有率は、エラストマーの試料を有機溶媒に浸漬した際に不溶なエラストマーの量と、エラストマー総量(重量)との比率である。この方法は、米国特許第5100947A号明細書に記載されている。
【0036】
さらに本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物の粒状体に関する。粒状体の粒径は、1.5〜10mm、好ましくは2〜6mmであってもよい。
【0037】
さらに本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物を含む成形品に関する。押出成形または射出成形により得られる成形品がその好例である。射出成形により得られる成形品が好ましく、グリップ、ガスケット、フロアマットがその好ましい例である。さらに本発明は、本発明による熱可塑性エラストマー組成物およびさらなる熱可塑性ポリマーを含む混合物に関する。この方法においては、このさらなる熱可塑性ポリマーは、本発明による熱可塑性エラストマー組成物によって耐衝撃性が改良されているかまたは軟化されている。好適なさらなる熱可塑性ポリマーとしては、例えば、熱可塑性ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーが使用され、最も好ましくは、ポリプロピレンブロックコポリマーが使用される。このさらなる熱可塑性ポリマーは、本発明による熱可塑性ポリマー組成物の一部である熱可塑性ポリマーと同一であってもよい。また、このさらなる熱可塑性ポリマーが異種のものであってもよい。このさらなる熱可塑性ポリマーが、ナイロン、ポリエステル、またはPPO(これらはポリ塩化ビニル代替品として変性されていてもよい)である場合も良好な結果が得られる。本発明による熱可塑性エラストマー組成物を5〜30重量%と、さらなる熱可塑性ポリマーを95〜70重量%とを含む混合物が得られた場合に良好な結果が得られる。本発明による熱可塑性エラストマー組成物およびさらなる熱可塑性ポリマーを含む混合物の好適な用途は、バンパー、インスツルメントパネル、および自動車の内装部品である。
【0038】
他の実施態様においては、比較的少量のさらなる熱可塑性ポリマーを本発明による熱可塑性エラストマー組成物と混合する。例えば、さらなる熱可塑性ポリマーを5〜50重量%と、該熱可塑性エラストマー組成物を95〜50重量%とを含む混合物を製造する。この場合、好ましくは、熱可塑性ポリマー組成物の熱可塑性ポリマーおよびさらなる熱可塑性ポリマーはどちらもポリプロピレンである。
【0039】
試験方法
耐ブロッキング性試験方法
粒状体の温度が50℃となるように、空気温度50℃の熱風循環式オーブン内で粒状体を予熱する(通常は30分間)。
【0040】
この粒状体を、長さ356mm、内径95.3mmの鋼管(米国ブリストル(Bristol,US)からの304Lステンレス鋼溶接管、ASTM A−312/SA−312)内に流し込むことによって装入する。円筒内に流し込む粒状体の量は、円筒の326〜338mmの長さが粒状体で充填されるように選択する。この円筒を、円筒の軸が鉛直方向を向くようにして鋼製の皿(pan)に載せる。この円筒および皿も50℃に予熱しておいたものである。粒状体を円筒内に流し込んだ後、円柱形の松材の栓を円筒内の粒状体の上に載せる。この松材の栓は、直径94mm、厚さ38.1mm、重量110グラムのものである。栓の上部中央に3.21kgの重り(重りおよび栓全体で3.32kg)を載せる。次いで、皿に円筒を鉛直に立てたまま、50℃の熱風循環式オーブンに所定の時間(例えば1、24、または48時間)入れる。粒状体をオーブンから取り出してから円筒をオーブンに入れるまでの時間が120秒を超えないようにする。
【0041】
その後、円筒および皿をオーブンから取り出す。重りおよび栓を取り除き、約1秒以内に円筒を皿から約300mmの高さまで持ち上げる。
【0042】
円筒をオーブンから取り出してから円筒を持ち上げるまでの時間は60秒以内とする。
【0043】
持ち上げ始めた時点から、粒状体がすべて円筒から流出するまでに要した時間を測定する。
【0044】
表面粗さ測定方法
押出成形ストリップの表面粗さを、日本国(Japan)の株式会社ミツトヨ製の型式211サーフテスト表面粗さ試験機を用いて、測定力を4mN(0.4gf)として測定した。カットオフを0.8mmに設定した。
【0045】
比較実験A、実施例I〜IV
表1に規定した組成を有する熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
【0046】
ケルタン(Keltan)(商標)P597は、エチレン、プロピレン、およびポリエンのエラストマーを100部と、オイルを100部とを含む混合物である。ケルタンP597は、蘭国(The Netherlands)のDSMより供給される。PP1012は、米国アモコ(Amoco,US)より供給されるポリプロピレンホモポリマーである。さらなる成分については表1を参照されたい。
【0047】
エラストマーとしてのケルタンP597(商標)(DSMからの50重量%油展EPDM)と、熱可塑性ポリマーとしてのポリプロピレンホモポリマーPP1012(商標)(米国BPアモコ、MFR=1.2g/10分)と、追加用プロセスオイルであるペンズウルトラ(Pennzultra)1199(商標)(米国ペンズオイル(Pennzoil,US))と、添加剤パッケージとを、ZE40Aバーストーフ(Berstorff)噛合型同方向回転二軸押出機(43L/D)内で溶融混合および混練することによって試料を調製した。追加用プロセスオイルは、押出機に沿った複数の位置から注入した。添加剤パッケージは、フェノール系硬化剤SP1045(商標)(米国シェネクタディ・インターナショナル・インコーポレーテッド(Schenectady International Inc.,US))、塩化第一スズ二水和物(独国TH・ゴールドシュミット・アーゲー(TH.Goldschmidt AG,Germany))、酸化亜鉛(米国ジンク・コーポレーション・オブ・アメリカ(Zinc Corporation of America,US))、熱安定剤イルガノックス(Irganox)1076(米国チバ・ガイギー・コーポレーション(Ciba Geigy Corporation,US))、タルクであるシンパクト(Cimpact)610(米国ルーゼナック・アメリカ・インコーポレーテッド(Luzenac America Inc.,US)、およびステアリン酸亜鉛(米国ウィトコ(Witco,US))を含むものとした。溶融温度は205〜235℃の範囲内とした。直径3mmの粒状体を製造した。粒状体の粘着性を測定した(表2参照)。
【0048】
最先端の射出成形機を用いて射出成形した厚さ2mmの板を試料とした。この板について、表2に示すように機械特性を測定した。
【0049】
幅50mm、厚さ1mmのストリップを温度220℃で押出成形した。このストリップの表面粗さを測定した(表2参照)。
【0050】
比較実験Aにおいては、十分な硬化剤を使用せず、粒状体に粘着性が生じるようにした。実施例I〜IVの粒状体は粘着性がなく、それと同時に、この組成物は、硬度、機械特性、表面粗さ等において良好な値を示す。
【0051】
【表1】



【0052】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリオレフィンと、エチレン、α−オレフィン、および場合により1種またはそれ以上の非共役ポリエンをモノマー単位として含む動的加硫エラストマーと、オイルとを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、オイル/エラストマー比が少なくとも2/1であり、熱可塑性ポリオレフィンの含量が前記熱可塑性エラストマー組成物の総重量の10重量%未満であり、前記組成物の粒状体が、内径95.3ミリメータ(mm)、長さ356mmの円筒内に326〜338mmの長さまで充填され、その円筒内で圧力465kg/m2、温度50℃で1時間保持された後に、鉛直状態に保持された円筒から120秒以内に流出することが可能である、組成物。
【請求項2】
前記粒状体が、前記円筒内に24時間保持される、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記粒状体が、前記円筒内に48時間保持される、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記粒状体が、前記円筒内から60秒以内に流出可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記粒状体が、前記円筒内から30秒以内に流出可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記粒状体が、前記円筒内から15秒以内に流出可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリオレフィンがポリプロピレンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性エラストマー組成物の硬化度が80〜98%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマー組成物の表面平滑性Raが10ミクロン未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマー組成物の表面平滑性Raが5ミクロン未満である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性エラストマーのショアA硬度が50未満である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
前記エラストマーが、エラストマー100部を基準として0.5〜5部のフェノール樹脂を用いて動的に硬化される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物およびさらなる熱可塑性ポリマーを含む混合物。

【公表番号】特表2007−500262(P2007−500262A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521800(P2006−521800)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000542
【国際公開番号】WO2005/010094
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】