説明

ポリマー製造装置

【課題】ポリマー製造装置において、脱水反応器で発生した水蒸気が凝縮する際の熱エネルギーを有効に利用し、エネルギーの無駄を削減する。
【解決手段】脱水反応器2で少なくとも2種の成分を脱水縮合させ、得られた中間体を、重合反応器6で重縮合させてポリマーを製造するポリマー製造装置において、脱水反応器2で発生した蒸気が導入される蒸留塔3と、この蒸留塔3の塔頂部31から得られた水蒸気を冷却して凝縮させる第1凝縮部4と、重合反応器6で発生した蒸気を冷却液に接触させて凝縮させ、得られた凝縮液の一部を冷却器73で冷却して前記冷却液とする第2凝縮部74とを備える。そして、第1凝縮部4を、温水が循環する温水循環ライン(温水配管5)を介して、吸収式冷凍機9の再生器91に接続し、吸収式冷凍機9の蒸発器93を、冷水が循環する冷水循環ラインを介して、第2凝縮部7の冷却器73に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水反応器で少なくとも2種の成分を脱水縮合させ、得られた中間体を、重合反応器で重縮合させてポリマーを製造するポリマー製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱水反応器で2種の成分を脱水縮合させ、得られた中間体を、重合反応器で重縮合させてポリマーを製造することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジカルボン酸成分の液体と、ジオール成分の液体とをエステル化反応器(脱水反応器)で反応させ、得られた中間体を重合反応器で重縮合させてポリエステルを製造する技術が開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示の技術において、脱水反応器では、未反応のジオール成分が、副生成物である水とともに蒸発し、脱水反応器の外へ流出する。この脱水反応器から流出したジオール成分を回収して再利用するため、脱水反応器から流出した蒸気は蒸留塔へと導かれ、水蒸気とジオール成分の液体とに分離される。そして、分離されたジオール成分の液体は脱水反応器へと戻される。このとき、蒸留塔で分離された水蒸気は、凝縮器に移されて凝縮され、得られた凝縮水の一部は、還流液として蒸留塔へ戻される。
【0005】
また、重合反応器では、中間体と共に脱水反応器から重合反応器内へ流れ込んだ未反応のジオール成分、又は、副生成物として生成したジオール成分が蒸発して、重合反応器の外へ流出する。この重合反応器から流出したジオール成分を含む蒸気(以下、ジオール蒸気という。)は、湿式コンデンサーで冷却液との接触により凝縮して液化し、回収される。ここで回収された凝縮液の一部は、冷却器で冷却された後、湿式コンデンサーに戻され、ジオール蒸気を凝縮させるための冷却液として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/50448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した特許文献1に開示のような水蒸気を凝縮させる凝縮器には、一般に、冷媒が循環する第1循環ラインを介して、冷却塔が接続される。この第1循環ラインを流れる冷媒は、凝縮器で水蒸気を冷却させる一方、水蒸気の凝縮熱を吸収して温度上昇する。水蒸気の凝縮熱を吸収した冷媒は、冷却塔へ移動し、冷却塔内で大気中に熱エネルギー(凝縮熱)を放出して、凝縮器へ戻る。
【0008】
さらに、上記した特許文献1に開示のような湿式コンデンサーで得られた凝縮液を冷却する冷却器には、一般に、冷媒が循環する第2循環ラインを介して、電気エネルギーを駆動源とする電気式冷凍機が接続される。この第2循環ラインを流れる冷媒は、冷却器内で凝縮液を冷却する一方、凝縮液の熱を吸収して温度上昇する。この凝縮液の熱を吸収した冷媒は、電気式冷凍機で冷却された後、冷却器に戻る。
【0009】
このように、上記した特許文献1に開示の技術で、ポリエステルを製造するためには、冷却塔と電気式冷凍機が必要となる。しかし、冷却塔と電気式冷凍機とを備えると、冷却塔にて、凝縮器で発生した熱エネルギーを大気中に放出する一方で、電気式冷凍機で電気エネルギーを要するため、エネルギーの無駄が多い。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、脱水反応器で発生した水蒸気が凝縮する際の熱エネルギーを有効利用することで、エネルギーの無駄が削減されたポリマー製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るポリマー製造装置は、脱水反応器で少なくとも2種の成分を脱水縮合させ、得られた中間体を、重合反応器で重縮合させてポリマーを製造するポリマー製造装置において、脱水反応器で発生した蒸気が導入される蒸留塔と、この蒸留塔の塔頂部から得られた水蒸気を冷却して凝縮させる第1凝縮部と、重合反応器で発生した蒸気を冷却液に接触させて凝縮させ、得られた凝縮液の一部を冷却器で冷却して前記冷却液とする第2凝縮部とが備えられ、前記第1凝縮部が、温水が循環する温水循環ラインを介して、吸収式冷凍機の再生器に接続され、前記吸収式冷凍機の蒸発器が、冷水が循環する冷水循環ラインを介して、前記第2凝縮部の前記冷却器に接続されていることを特徴とする。
【0012】
この本発明のポリマー製造装置によれば、温水循環ラインを流れる温水は、第1凝縮部において、水蒸気を凝縮させるための冷媒として利用される。この第1凝縮部で水蒸気を冷却させるための冷媒として利用され、水蒸気の凝縮熱を吸収した温水は、吸収式冷凍機の再生器で、吸収液を加熱するための加熱源に利用される。また、冷水循環ラインを流れる冷水は、吸収式冷凍機の蒸発器で発生した気化熱により冷却され、第2凝縮部の冷却器において、凝縮液を冷却するための冷媒として利用される。
【0013】
つまり、本発明のポリマー製造装置では、第1凝縮部で発生した凝縮熱(熱エネルギー)を利用して吸収式冷凍機の再生器を駆動させ、この吸収式冷凍機の蒸発器から、第2凝縮部の冷熱源を得ている。このため、従来と比べて、エネルギーの無駄を削減することができる。
【0014】
本発明に係るポリマー製造装置において、前記温水循環ラインを流れる温水は、50〜80℃の温度で前記第1凝縮部に入り、入る時の温度よりも高い80〜95℃の温度で前記第1凝縮部から出ることが好ましい。
【0015】
この本発明のポリマー製造装置によれば、第1凝縮部で水蒸気は50〜80℃の温度の温水で冷却されるので、第1凝縮部で水蒸気を凝縮して得られる凝縮水の温度を、50℃以上の高温に保つことができる。例えば、凝縮水を還流液として蒸留塔に戻し、蒸留塔の塔底部に溜まった液体を反応溶液として脱水反応器に戻す場合、蒸留塔へ戻す還流液の温度が低いと、蒸留塔の塔底部に溜まる液体の温度を一定に保つために、脱水反応器で加熱する際に、多量のエネルギーが必要となる。しかし、前記温水循環ラインを流れる温水の温度を、50〜80℃の温度で前記第1凝縮部に入るように設定すると、蒸留塔へ戻す還流液の温度が高温に保たれるため、蒸留塔の塔底部に溜まる液体の温度を一定に保つための昇温エネルギーが少なく、脱水反応器で加熱する際に必要なエネルギーを節約することができる。また、温水は、第1凝縮部から80〜95℃の温度で出るため、吸収式冷凍機の再生器において、吸収液から水蒸気を十分に分離させることができ、蒸発器において、冷水循環ラインを流れる冷水を十分に冷却することができる。
【0016】
また、本発明に係るポリマー製造装置において、前記冷水循環ラインを流れる冷水は、0〜30℃の温度で前記冷却器に入り、入る時の温度よりも高い5〜35℃の温度で前記冷却器から出ることが好ましい。
【0017】
この本発明のポリマー製造装置によれば、第2凝縮部の冷却器で、凝縮液を十分に冷却することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリマー製造装置によれば、脱水反応器で発生した水蒸気が凝縮する際の凝縮熱(熱エネルギー)を利用して吸収式冷凍機の再生器を駆動させて、この吸収式冷凍機の蒸発器から、重合反応器で発生した蒸気を凝縮させるための冷熱源を得ることができるので、エネルギーの無駄を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るポリエステル製造装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図1を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、ポリマー製造装置として、ポリエチレンテレフタレート(即ち、ポリエステル)を製造するためのポリエステル製造装置1に本発明を適用した場合を示す。
【0021】
本実施の形態のポリエステル製造装置1は、図1に示すように、脱水反応器2で、テレフタル酸(図1中では、TPAと略す。)とエチレングリコール(図1中では、EGと略す。)とを脱水縮合させ、生成した中間体を重合反応器6で重縮合させてポリエチレンテレフタレート(本発明でいうポリマー)を製造する構成とされている。ここで、脱水反応器2は、配管11を介して蒸留塔3に接続されており、脱水反応器2から発生した蒸気は、蒸留塔3で、水蒸気とエチレングリコール液に分離される。さらに、蒸留塔3の塔頂部31には、配管12を介して第1凝縮部4が接続されており、蒸留塔3の塔頂部31から得られた水蒸気は、第1凝縮部4で凝縮液化される。一方、重合反応器6は、配管13を介して第2凝縮部7に接続されており、重合反応器6から発生した蒸気は、第2凝縮部7で凝縮される。
【0022】
このような本実施の形態のポリエステル製造装置1において、第1凝縮部4と第2凝縮部7は、吸収式冷凍機9に接続されており、本実施の形態のポリエステル製造装置1は、第1凝縮部4で発生した凝縮熱を吸収式冷凍機9の熱源に利用して、第2凝縮部7の冷熱源を得る構成とされている。
【0023】
以下、本実施の形態のポリエステル製造装置1の各部におけるポリエステルの製造工程を具体的に詳述する。
【0024】
脱水反応器2では、テレフタル酸と、過剰量のエチレングリコールとが、大気圧下、加熱媒体により、250〜260℃の温度で加熱される。これにより、テレフタル酸とエチレングリコールとが脱水縮合して、2〜3量体のオリゴマー(中間体)が生成する。生成した中間体は、配管14を通じて、重合反応器6へ移送される。重合反応器6へ移送する中間体の量は、配管14に設けられた制御弁141により適宜調整される。また、脱水反応器2では、副生成物として水が生成し、生成した水が蒸発するとともに、未反応のエチレングリコールが蒸発する。そして、水とエチレングリコールとを含む蒸気は、配管11を通じて、蒸留塔3へ流れる。
【0025】
蒸留塔3は、脱水反応器2の頂部に配管11を介して接続されており、配管11を通じて脱水反応器2から流れ込んだ蒸気を、蒸気圧の差により、水蒸気とエチレングリコールの液体とに分離する。具体的には、蒸留塔3の塔頂部31に水蒸気が溜まり、塔底部32にエチレングリコールの液体が溜まる。また、蒸留塔3の塔頂部31は、配管12を介して、後述する第1凝縮部4の凝縮器41に接続されており、塔頂部31に溜まった水蒸気は、配管12を通じて、第1凝縮部4の凝縮器41へ流れる。一方、蒸留塔3の塔底部32は、配管15を介して、脱水反応器2に接続されており、塔底部32に溜まったエチレングリコールの液体は、配管15を通じて、脱水反応器2へと戻される。
【0026】
第1凝縮部4は、凝縮器41と、貯留タンク42とを備えている。ここで、凝縮器41は、上述した通り、蒸留塔3の塔頂部31と配管12を介して接続されている。また、貯留タンク42は、凝縮器41と配管44を介して接続され、蒸留塔3と配管45を介して接続されている。配管12を通じて蒸留塔3から凝縮器41へ流れ込んだ水蒸気は、凝縮器41で凝縮され、得られた凝縮水は、貯留タンク42に貯留される。貯留タンク42に貯留された凝縮水の一部は、配管45を通じて、蒸留塔3へ戻り、蒸留塔3で還流液として使用される。このとき、蒸留塔3に戻る凝縮水の量は、配管45に設けられた制御弁43により調整される。また、余った凝縮水は、系外に排出される。
【0027】
この第1凝縮部4の凝縮器41は、温水が循環する温水配管5(本発明でいう温水循環ライン)を介して、後述する吸収式冷凍機9の再生器91に接続されている。
【0028】
温水配管5を流れる温水は、第1凝縮部4の凝縮器41で水蒸気を冷却して凝縮させるための冷媒として使用される一方、後述する吸収式冷凍機9の再生器91において、水蒸気を吸収した吸収液を加熱するための加熱源として利用される。このため、温水配管5を流れる温水の温度は、水蒸気を冷却凝縮させることができ、且つ、吸収式冷凍機9の再生器91で吸収液を加熱できる温度に設定されている。
【0029】
具体例としては、温水配管5を流れる温水は、50〜80℃、より好ましくは70〜80℃の温度で第1凝縮部4の凝縮器41に入り、水蒸気との熱交換により温度上昇して、凝縮器41に入る時の温度よりも高い80〜95℃、より好ましくは90〜95℃の温度で凝縮器41から出ることが好ましい。このように温水配管5を流れる温水の温度を、50〜80℃の温度、より好ましくは70〜80℃の温度で、凝縮器41に入るように設定すると、蒸留塔3へ還流液として戻す凝縮水の温度が50℃以上、より好ましくは70℃以上の高温に保たれるため、塔底部32に溜まるエチレングリコールの温度を一定に保つための昇温エネルギーが少なく、塔底部32に溜まったエチレングリコールの液体を脱水反応器2で加熱する際に必要なエネルギーを節約することができる。
【0030】
重合反応器6は、脱水反応器2と配管14を介して接続されており、配管14を通じて脱水反応器2から移送された中間体を、50〜300Pa(abs)下で、加熱媒体により280〜285℃の温度に加熱する。これにより、重合反応が起こり、ポリエチレンテレフタレートが生成される。このとき、エチレングリコールを含む副生成物が生成する。生成した副生成物は、蒸発し、重合反応器6と第2凝縮部7のスクラバー71とを接続する配管13を通じて、後述する第2凝縮部7のスクラバー71へ流れ込む。
【0031】
第2凝縮部7は、スクラバー71と、貯留タンク72と、冷却器73とを備えている。スクラバー71は、上述したように、重合反応器6に配管13を介して接続されている。さらに、スクラバー71の頂部には、配管16を介して真空発生装置(エゼクター)75が接続されている。また、スクラバー71と、貯留タンク72と、冷却器73とは、配管741,742及び循環ポンプ743により構成された凝縮液循環ライン74により接続されている。この凝縮液循環ライン74は、スクラバー71内で蒸気を凝縮させて得られた凝縮液を、貯留タンク72へ移送し、貯留タンク72へ溜まった凝縮液の一部を、冷却器73を経由して、スクラバー71内に移送するように構成されている。この凝縮液循環ライン74において、貯留タンク72と冷却器73との間には、循環ポンプ743が設けられている。なお、貯留タンク72に溜まった凝縮液は、凝縮液循環ライン74に循環させる一部を残して、脱水反応器2で再使用するために、回収される。
【0032】
第2凝縮部7のスクラバー71内では、冷却器73で冷却された凝縮液が噴射される。これにより、配管13を通じて重合反応器6からスクラバー71内に流れ込んだエチレングリコールを含む蒸気が、噴射された凝縮液(冷却液)との接触により冷却されて凝縮し、凝縮液(エチレングリコールを主成分とする液体)となる。この時、配管13を通じて重合反応器6からスクラバー71内に流れ込んだ蒸気に含まれる成分のうち、水、窒素、空気等のエチレングリコールよりも沸点の低い成分を主成分とする気体が、真空発生装置75に吸引され、そして、系外へ排出される。
【0033】
スクラバー71で得られた凝縮液は、凝縮液循環ライン74により貯留タンク72へ移送される。そして、貯留タンク72に溜まった凝縮液の一部は、凝縮液循環ライン74により冷却器73へ移送される。この冷却器73は、冷水が循環する冷水配管8(本発明でいう冷水循環ライン)を介して、後述する吸収式冷凍機9の蒸発器93に接続されており、冷却器73へ移送された凝縮液は、冷却器73において、冷水配管8を流れる冷水と熱交換されることで冷却される。そして、冷却器73で冷却された凝縮液は、上述したように、スクラバー71へ移送されて、スクラバー71内でエチレングリコールを含む蒸気を凝縮させるための冷却液として噴射される。
【0034】
このように冷水配管8を流れる冷水は、第2凝縮部7の冷却器73で凝縮液を冷却させるための冷媒として使用される。このため、冷水配管8を流れる冷水の温度は、凝縮液を、エチレングリコールを含む蒸気を凝縮させる冷却液として使用可能な温度まで冷却することができる温度に設定されている。具体例としては、冷水配管8を流れる冷水は、0〜30℃、より好ましくは0〜5℃の温度で冷却器73に入り、凝縮液との熱交換により温度上昇して、入る時の温度よりも高い5〜35℃、より好ましくは、5〜10℃の温度で冷却器73から出ることが好ましい。
【0035】
吸収式冷凍機9は、図1に示すように、再生器91、凝縮器92、蒸発器93、吸収器94とを備えている。上述したように、再生器91は、温水配管5を介して、第1凝縮部4の凝縮器41と接続されており、蒸発器93は、冷水配管8を介して、第2凝縮部7の冷却器73と接続されている。
【0036】
このような吸収式冷凍機9では、吸収器94内で水蒸気を吸収した吸収液が、温水配管5を流れる温水、具体的には、第1凝縮部4の凝縮器41で加温され、再生器91に入った温水により加熱される。これにより、吸収液から水蒸気が分離し、分離した水蒸気は、凝縮器92内に流れ込み、凝縮器92内を循環する冷却水により冷却されて凝縮し、水となる。この水は、減圧状態に保たれた蒸発器93内で蒸発する。このとき、冷水配管8を流れる冷水が、蒸発器93内で水が蒸発する際の気化熱により冷却される。また、蒸発器93内で水の蒸発により発生した水蒸気は、吸収器94内に流れ込み、吸収液に吸収される。そして、この吸収液が、再生器91へ移送され、上記した温水配管5を流れる温水により加熱される。
【0037】
上記したポリエステル製造装置1では、第1凝縮部4において、水蒸気が、温水配管5を流れる50〜80℃の温水により冷却され凝縮される。そして、得られた凝縮水の一部は、還流液として蒸留塔3に戻される。この時、蒸留塔3に戻される凝縮水は、50〜80℃の温水により水蒸気を冷却凝縮して得られるものであるため、50℃以上の温度を有している。このため、塔頂部31に戻される還流液(水)による過剰冷却を防止する事ができ、(塔底部32に溜るエチレングリコールの液体の温度を一定に保つための昇温エネルギーが少なく、)塔底部32に溜まったエチレングリコールの液体を脱水反応器2で加熱する際に必要なエネルギーを節約することができる。また、温水配管5を流れる温水は、第1凝縮部4の凝縮器41に50〜80℃の温度で入り、第1凝縮部4で水蒸気の凝縮熱を吸収して、入る時の温度よりも高い80〜95℃の温度で凝縮器41から出て、吸収式冷凍機9の再生器91へと移送される。このため、温水配管5を流れる温水は、十分に、吸収式冷凍機9の再生器91の駆動源、即ち、水蒸気を吸収した吸収液を加熱する加熱源となり得、これにより、第2凝縮部7の冷却器73に接続された冷水配管8を流れる冷水は、吸収式冷凍機9の蒸発器93で発生した気化熱により十分に冷却される。
【0038】
このように、本実施の形態のポリエステル製造装置1は、第1凝縮部4で発生した凝縮熱(熱エネルギー)を利用して吸収式冷凍機9の再生器91を駆動させ、この吸収式冷凍機9の蒸発器93から、第2凝縮部7の冷却器73の冷熱源を得るように構成されているため、脱水反応器で発生した水蒸気を凝縮させるための凝縮器、及び、重合反応器で発生した蒸気の凝縮液を冷却するための冷却器のそれぞれに、冷却塔又は電気式冷凍機等の冷却装置を備える従来のポリエステル製造装置と比べて、エネルギーの無駄を削減することができる。
【0039】
上記した本実施の形態では、テレフタル酸とエチレングリコールとを脱水反応器2で脱水縮合させて得られた中間体を重合反応器6で重合反応させてポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)を製造するポリエステル製造装置1に、本発明のポリマー製造装置を適用した場合の構成を示しているが、本発明のポリマー製造装置は、脱水反応器でテレフタル酸とエチレングリコールとを脱水縮合させるものに限定されない。即ち、本発明のポリマー製造装置の脱水反応器は、2種以上の成分を脱水縮合させるものであれば、特に限定されず、例えば、2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸成分と、2つのヒドロキシル基を有するジオール成分とを反応させるものであってよい。
【0040】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0041】
1 ポリエステル製造装置(ポリマー製造装置)
11〜16 配管
2 脱水反応器
3 蒸留塔
31 塔頂部
32 塔底部
4 第1凝縮部
41 凝縮器
42 貯留タンク
43 制御弁
5 温水配管(温水循環ライン)
6 重合反応器
7 第2凝縮部
71 スクラバー
72 貯留タンク
73 冷却器
74 凝縮液循環ライン
741,742 配管
743 循環ポンプ
75 真空発生装置
8 冷水配管(冷水循環ライン)
9 吸収式冷凍機
91 再生器
92 凝縮器
93 蒸発器
94 吸収器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水反応器で少なくとも2種の成分を脱水縮合させ、得られた中間体を、重合反応器で重縮合させてポリマーを製造するポリマー製造装置において、
脱水反応器で発生した蒸気が導入される蒸留塔と、
この蒸留塔の塔頂部から得られた水蒸気を冷却して凝縮させる第1凝縮部と、
重合反応器で発生した蒸気を冷却液に接触させて凝縮させ、得られた凝縮液の一部を冷却器で冷却して前記冷却液とする第2凝縮部と
が備えられ、
前記第1凝縮部が、温水が循環する温水循環ラインを介して、吸収式冷凍機の再生器に接続され、
前記吸収式冷凍機の蒸発器が、冷水が循環する冷水循環ラインを介して、前記第2凝縮部の前記冷却器に接続されている
ことを特徴とするポリマー製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー製造装置であって、
前記温水循環ラインを流れる温水は、50〜80℃の温度で前記第1凝縮部に入り、入る時の温度よりも高い80〜95℃の温度で前記第1凝縮部から出ることを特徴とするポリマー製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリマー製造装置であって、
前記冷水循環ラインを流れる冷水は、0〜30℃の温度で前記冷却器に入り、入る時の温度よりも高い5〜35℃の温度で前記冷却器から出ることを特徴とするポリマー製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111831(P2012−111831A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261272(P2010−261272)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(510310244)日本電気機器株式会社 (1)
【Fターム(参考)】