説明

ポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物

【課題】自動車用内外装部品を成形するのに適したポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン40〜55重量%、ポリ乳酸25〜40重量%、およびスチレン含有量が14〜21重量%、温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフロー値が2〜10g/10分であるスチレン系エラストマー16〜24重量%、を含むことを特徴とするポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物に関し、特にスチレン系熱可塑性エラストマーを配合することにより、耐衝撃性を改善するのみでなく、互いに非相溶性であるポリ乳酸とポリプロピレンの相溶性を改善して、自動車用内外装部品成形樹脂材料としての使用を可能にした樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
BRICsをはじめとする新興産業発展国の経済規模の拡大もあって、石油需要が急増することにより、原油価格の高騰や化石資源の枯渇が予想されている。また、自動車には、CO削減や省エネルギー化のために燃費向上などの環境性能向上だけでなく、製品に使用される素材そのものに環境負荷を低減する環境性能が求められている。このような産業動向もあって、化石資源から再生可能資源への移行は必然的に要求されるものであり、中でも植物原料由来のプラスチックを利用することは大きな注目を集めている。
【0003】
ポリ乳酸は植物資源から発酵により得られる乳酸を原料としており、強度、剛性に優れるとともに、商業プラントで製造され市販化されていることからも、最も利用しやすいバイオマスプラスチックと言える。ただし、ポリ乳酸は自動車に使用される樹脂と比較して、耐熱性や耐衝撃性が劣るという課題を有している。耐熱性の改善に関しては、ポリ乳酸の光学異性体(L体、D体)制御技術や結晶核剤の添加など、さまざまな試みがなされている(特許文献1)。
【0004】
耐衝撃性の改善手法としては、樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーとポリマーブレンド、ポリマーアロイするのが一般的である。ポリプロピレンは安定した材料性能と安価な材料価格から、バンパ、インストルメントパネル、ドアトリムをはじめとして自動車内外装部品で多量に適用され、自動車用の樹脂材料の中で最も使用量が多いため、ポリ乳酸とのポリマーブレンドに適しており、自動車用の内装部品の一部に使用されている。ただし、ポリ乳酸を含有したポリプロピレン樹脂組成物は、ポリ乳酸単体と比較すると耐衝撃性は高いが、自動車用内装部品には不十分なものとなる。特許文献2にはポリ乳酸含有ポリプロピレンを用いて、耐熱性および衝撃性に優れた成形品が得られると記載されている。また、ポリ乳酸系樹脂組成物を用いたゲート部衝撃強度と曲げ弾性率に優れた自動車部品も提案されている(特許文献3)。しかしながら、自動車のバンパ、ドアトリムに要求されるように、側面衝突時に成形品が脆性的に割れないほどの耐衝撃性を有し、且つ、凹み変形などが発生しない剛性を両立するポリ乳酸を含有する自動車樹脂組成物は自動車に車載されることはなかった。さらに、これら先行技術に挙げられるポリマーブレンド系では系全体の相溶性を改善するために、化学変性した樹脂およびエラストマーの使用や特殊な相溶化剤を使用することで、従来の汎用樹脂に比べてコストの大幅な上昇を招いている。また、結晶核剤効果と物性補強効果を有するタルクの添加は、樹脂組成物の比重が上昇するため、軽量化が求められる自動車部品にとっては避けたいところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−146261号公報
【特許文献2】特開2010−265444号公報
【特許文献3】特開2008−260861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主要な目的は、自動車用内外装部品を成形するのに適したポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物を与えることにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、互いに非相溶性であるポリ乳酸とポリプロピレンの相溶性を、特殊な化学変性や相溶化剤を使用することなく改善して、自動車用内外装部品成形樹脂材料としての使用の可能な耐衝撃性および剛性を有するポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの研究によれば、特定のスチレン含有量および溶融流動性(分子量)を有するスチレン系エラストマーを、ポリプロピレンおよびポリ乳酸に対して特定の比率で配合することが、上述の目的の達成のために有効であることが見出された。
【0009】
すなわち、本発明のポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン40〜55重量%、ポリ乳酸25〜40重量%、およびスチレン含有量が14〜21重量%、温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフロー値が2〜10g/10分であるスチレン系エラストマー16〜24重量%、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物は、優れた耐衝撃性、剛性を有する成形品を製造可能であり、特に自動車のバンパ、ドアトリムなど高い剛性値、衝撃値の両立が必要な部品の製造において、石油資源消費量を低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】凹み試験に用いたポリプロピレン系樹脂組成物の成形品(補強用リブなしリアバンパ)の概形を示す模式斜視図。
【図2】(a)および(b)は、スチレン含有量が異なる4種のSEBS1〜4を各30重量部の割合で配合して得られた4種の組成物について測定した、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃値の測定結果をそれぞれ示すグラフ。
【図3】予備試験において、それぞれスチレン含有量はほぼ同じであるが、メルトフロー値の異なる2種のSEBSの組を含む3組計6種の組成物について測定した曲げ弾性率(棒グラフ)およびシャルピー衝撃値(折れ線グラフ)の測定結果を示す複合グラフ。
【図4】(a)および(b)は、実施例および比較例の組成物についての、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強さの測定結果を、それぞれSEBS含有量をパラメータとして、PLA含有量の変化に対応して示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン、ポリ乳酸およびスチレン系エラストマーを主成分とする。
【0013】
(ポリプロピレン)
本発明の組成物の主たる成分であるポリプロピレンは、共重合体に比べて剛性および表面硬度に優れたホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)であり、特に曲げ弾性率(ISO178:1993)が2000MPa以上のものが用いられる。曲げ弾性率が2000MPa未満であると、ポリ乳酸を含んだポリプロピレン樹脂組成物の曲げ弾性率が低下する傾向にある。230℃、2.16kgf で測定したメルトフロー値(MFR)(JIS K7210)は20g/10分以上が好ましく、より好ましくは30g/10分以上のものが用いられる。
【0014】
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸は、D-乳酸ユニット(D体)が5モル%未満、特に、2モル%以下、のものが好ましい。D-乳酸ユニットが5モル%以上であると、樹脂組成物の曲げ弾性率が低下する傾向にある。MFR(JIS K7210、190℃、2.16kgf)が、20g/10分以上、特に30g/10分以上のものが好ましい。
【0015】
(スチレン系エラストマー)
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体およびスチレン−イソプレン共重合体の水素添加物用いられる。その中でも、ブタジエンあるいはイソプレンに起因する二重結合の水素添加度が90モル%以上、特に95モル%以上であり、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)と通称されるものが、例えば自動車使用環境下での耐候(光)性能に優れるために好ましい。
【0016】
水素添加スチレン系エラストマーは、それ自体でポリプロピレンとポリ乳酸との間の親和性を改良する効果を有し、更なる化学処理をしたものを用いるのは、本発明の趣旨に反する。スチレン含有量(より詳しくは、重合したブロック共重合体エラストマー中のポリスチレンセグメンの含有量)は、小なるほどエラストマー性が強く、大になるほどエラストマー性を失う。本発明では、スチレン含有量が、14〜21重量%、好ましくは、15〜18重量%のものを用いる。スチレン含有量が21重量%を超えると、得られる樹脂組成物の衝撃値が著しく低下し、スチレン含有量が14重量%を下回ると樹脂組成物の剛性が著しく低下する。
【0017】
水素添加スチレン系エラストマーは、分子量判定の目安となるメルトフロー値(MFR:JIS K7210、230℃、2.16kgf)が、2〜10g/10分、好ましくは4〜6g/10分のものを用いる。上記のメルトフロー値範囲内において、スチレン系エラストマーのポリプロピレンマトリクス中への分散粒子径が、曲げ弾性率と耐衝撃性の両立に寄与するに最適なサイズ、約0.3〜3μmとなる。
【0018】
(組成)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における主たる樹脂三成分、すなわち:ポリプロピレン、ポリ乳酸およびスチレン系エラストマー、の間で維持されるべき組成は以下の通りである。
【0019】
ポリプロピレンは、上記三成分のうち40〜55重量%、好ましくは45〜55重量%、を占める量で用いられる。40重量%未満であると樹脂組成物においてポリプロピレンがマトリックス相とならず、成形性および耐久性の面で著しい低下が見られる。一方、55重量%を越えるとポリ乳酸系樹脂やスチレン系エラストマーの含有量が低下し、樹脂組成物の剛性、耐衝撃性の両立が困難となる。
【0020】
ポリ乳酸は25〜40重量%、好ましくは25〜35重量%である。25重量%未満であると樹脂組成物の剛性が低下し、40重量%を越えると成形加工性が著しく低下する。
【0021】
スチレン系エラストマーの含有量は、含まれるスチレン含有量の値により変化するエラストマー性の強弱により変化するが、16〜24重量%、好ましくは18〜23重量%の範囲とする。16重量%未満であると樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、24重量%を越えると剛性が低下する。
【0022】
(その他成分)
成形品の用途によっては、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に、有機結晶核剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料、金属粉等)、発泡剤、難燃剤等の添加物が、当該目的を損なわない程度で含まれていても良い。
【0023】
(組成物)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記各成分を、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ニーダー等の混練機を用いて、例えば180〜230℃の温度で混練し、造粒することにより形成できる。生産性を考慮すると、二軸混練押出機を用い、滞留時間を10分間以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例を参照して、本発明をより具体的に説明する。以下の記載において、組成の規定に関する「比」、「%」および「部」は、特に断らない限りいずれも重量基準とする。また、以下の記載を含めて本明細書に記載する物性値は、以下の方法による測定値に基づく。
【0025】
1)テストピースの成形
二軸押出機(神戸製鋼(株)製、スクリュー径D:32mm、スクリュー長L/D=44)を用いて、200℃、滞留時間20分で溶融混練してペレット化した後、型締め圧130トンの射出成形機を用いて、成形温度200℃の条件で、各種テストピース(曲げ弾性率測定用、シャルピー衝撃強さ測定用、凹み試験用、高速面衝撃試験用)を成形した。
【0026】
2)測定試験
<曲げ弾性率>
曲げ弾性率は、ISO178(JIS K7171「プラスチック−曲げ特性の求め方−」)に準拠し、80mm×10mm×4mmtのテストピースを使用し、雰囲気温度23℃の環境下において曲げ速度2mm/分で測定した。
【0027】
<シャルピー衝撃強さ>
シャルピー衝撃強さはJIS K7111−2「プラスチック−シャルピー衝撃特性の求め方-」に準拠し、タイプAノッチ(ISO 179/1eA)を設けた80mm×10mm×4mmtのテストピースを使用して、雰囲気温度23℃の環境下において評価した。
【0028】
3)成形品評価
<凹み試験>
成形品の剛性の判定のための凹み試験は、図1に示す成形品(補強のリブなしリアバンパ)を作製し、図1に矢視する箇所を、φ20mmの圧子で所定の荷重で押した際の変形量を、一般的な自動車用PP樹脂成形品と比較して評価し、変形量が著しく大きい場合に×、変形量が同等程度の場合には○と判定した。
【0029】
<高速面衝撃試験>
成形品の衝撃性は、高速面衝撃試験において成形品の破壊形態で目視評価した。試験機として、島津製作所製ハイドロショットHITS−P10を用いて、JIS K7211−2「プラスチック−硬質プラスチックのパンクチャー衝撃試験方法−」に準拠して試験を実施した。テストピースは60mm×60mm×2mmtを使用した。評価基準は、衝撃破壊の形態がYS(安定き裂によって起こる降伏)あるいはYD(深絞りによって起こる降伏)で自動車用PP樹脂に代表される延性破壊形態を目標とした。破壊形態が上記の評価基準内であれば、車両での側面衝突においてドライバーおよび乗員に樹脂破面が被害を与えない許容範囲内である(○)とした。他方、脆性破壊は、乗員保護の観点で好ましくない。
【0030】
[予備試験]
ポリプロピレンとして、市販のホモポリプロピレン((株)プライムポリマー製「J137M」;MFR=30g/10分、曲げ弾性率=2300MPa、シャルピー衝撃強さ(23℃)=1.0kJ/m)を用いた。またポリ乳酸として(NatureWorks社製射出成形用グレード「3001D」;MFR=30g/10分、曲げ弾性率=3500MPa、シャルピー衝撃強さ(23℃)=2.0kJ/m)を用いた。
【0031】
基本組成として、上記ポリプロピレン50重量部、ポリ乳酸30重量部を固定し、残る30重量部としてスチレン含有量およびメルトフロー値(MFR)が異なる各種のスチレン系エラストマー(スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS))を配合した組成物について、各種予備試験を行なった。
【0032】
(予備試験1)
上記基本組成において、下表1に示すように、MFRが4〜5g/10分で、スチレン含有量(St含有量)が12〜30重慮%の範囲で異なる4種のSEBS1〜4を各30重量部の割合で配合して得られた4種の組成物について、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃値を求めた。結果を表1ならびに図2(a)および(b)に示す。図2(a)および(b)を見れば明らかなように、曲げ弾性率はスチレン含有量の増大とともに上昇するが、シャルピー衝撃値はスチレン含有量が15重量%近辺で極大値を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
(予備試験2)
上記基本組成において、下表2に示すように、スチレン含有量(St含有量)が15重量%で共通するがMFRが異なる2種のSEBSを含む組1、St含有量が18〜20重量%でほぼ同じであるがMFRが異なる2種のSEBSを含む組2、St含有量が29〜30重量%でほぼ同じであるがMFRが異なる2種のSEBSを含む組3、の3組計6種の組成物について、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃値を求めた。結果を表2および図3に示す。図3をみると、同じスチレン含有量を有するSEBSを用いても、メルトフロー値(MFR)が異なると、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃値は大きく異なること、MFRが2〜10g/10分程度のSEBSを用いるのが望ましいこと、が分る。
【0035】
【表2】

【0036】
(実施例1〜4、比較例1〜8)
上記予備試験の結果を踏まえて、スチレン系エラストマーとして、St含有量=18重量%、MFR=4.5重量%であるSEBS(旭化成ケミカル(株)製「タフテックH1062」)を用い、下記表3および4に示すように、上記予備試験で用いたポリプロピレン(h−PP)およびポリ乳酸(PLA)との組合せで、組成の異なる12種のポリプロピレン系樹脂組成物を調製し、曲げ弾性率、シャルピー衝撃値に加えて、上述した方法により実用試験としての凹み試験および面衝撃試験を行なった。結果をまとめて、表3および4に示すとともに、SEBS含有量をパラメータとして、PLA含有量の変化に対応する曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強さの変化を、それぞれ図4(a)および(b)に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
上記結果からも分るように、ポリプロピレン系樹脂組成物はポリ乳酸(PLA)の含有量が増加するほど、曲げ弾性率が増加する傾向となった。ただし、PLAの含有量が40重量%となると、成形性が著しく低下する。一方、スチレン系エラストマー(SEBS)の含有量は、曲げ弾性率が15重量%で1700MPa以上、20重量%で1600MPa以上、25重量%で1500MPa未満となった。シャルピー衝撃強さは、15重量%で10kJ/m未満、20重量%で15kJ/m以上、25重量%で30kJ/m以上となった。
【0040】
実用試験結果としては、表3および4が示すように凹みは、曲げ弾性率が1500MPa未満となると著しく大きくなる結果となった。一方、高速面衝撃による破壊形態を目視評価した結果も表3および4に示す。シャルピー衝撃強さが10kJ/m未満であると、破壊形態が脆性破壊であることが確認できた。乗員保護を考慮すると、シャルピー衝撃強さが15kJ/m以上が好ましい。
【0041】
上記した曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さ、凹み、高側面衝撃の評価結果から、自動車部品に要求される剛性と耐衝撃性を両立するポリ乳酸含有ポリプロピレン樹脂組成物およびその成形体を製造するには、上記した実施例1〜4に相当する以下の特性および組成条件を満たすことが望ましいことが分る。
【0042】
・スチレン系エラストマーとしては、スチレン含有量が14〜21重量%特に15〜18重量%の範囲;MFR値が2〜10g/10分、特に4〜6g/10分、の範囲のものが望ましい。
・剛性は、著しい凹みが発生しない曲げ弾性率1500MPa以上が望ましい。
・耐衝撃性は、破壊形態が脆性破壊とならないシャルピー衝撃強さ15kJ/m以上が好ましい。
【0043】
主要な3樹脂成分間の組成に関しては、ポリプロピレンが、40〜55重量%、特に45〜55重量%;ポリ乳酸が25〜40重量%、特に25〜35重量%;スチレン系エラストマーが、16〜24重量%、特に18〜23重量%、となることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、従来の植物由来成分含有のポリプロピレン樹脂組成物と比較して、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるため、従来のバイオマスプラスチックでは使用できなかった自動車用内外装部品に適用である。特に、ドアトリム、バンパに好適であり、その部位にバイオマスプラスチックを適用した例は未だかつてない。また、上記の部品例と併せて、フロントグリル、ピラートリム、コンソールボックスなど従来のポリプロピレン樹脂組成物からの代替が可能となり、環境負荷の低減を図ることができる。また、構成成分として特殊な化学変性処理を施していない成分で効果が発揮されるため、一般的にコスト面が懸念されるバイオマスプラスチックにおいて生産コストの上昇が防止できる。よって、汎用性の高いバイオマスプラスチック製品とか投げられる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、自動車内外装部品や二輪部品だけでなく、家電、AV機器、OA機器、化粧品、生活用品、事務用品など幅広い展開が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン40〜55重量%、ポリ乳酸25〜40重量%、およびスチレン含有量が14〜21重量%、温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフロー値が2〜10g/10分であるスチレン系エラストマー16〜24重量%、を含むことを特徴とするポリ乳酸含有ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリプロピレンは曲げ弾性率が2000MPa以上のホモポリプロピレンであり、ポリ乳酸のD体含有量は5モル%未満である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
スチレン系エラストマーは、スチレン含有量が15〜18重量%かつメルトフロー値が4〜6g/10分である請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
スチレン系エラストマーは、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)またはスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)である請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
高速面衝撃試験において延性破壊の挙動を示す請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
曲げ弾性率が1500MPa以上且つシャルピー衝撃強さが15kg/cm以上である請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−1722(P2013−1722A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131200(P2011−131200)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】