説明

ポリ乳酸樹脂組成物および樹脂成形体

【課題】結晶化速度を向上すること。
【解決手段】ポリ−D乳酸樹脂と、結晶核剤と、ハイドロタルサイト類化合物と、を含有するポリ乳酸樹脂組成物、および該ポリ乳酸樹脂組成物を成形した樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物および樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され各種用途に使用されている。特に家電製品や自動車の各種部品、筐体等に使用されたり、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品にも熱可塑性樹脂が使用されている。
【0003】
例えば、結晶核剤としてアミド系増核剤を含み、第二増核成分としてハイドロタルサイトを含む一般的な複合金属化合物をポリオレフィン樹脂中へ分散した樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリ乳酸系ステレオコンプレックスを形成するポリマー組成物に、結晶核剤として燐酸エステル金属塩を含み、さらに含水珪酸マグネシウムを含む組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−46037号公報
【特許文献2】特開2003−192884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリ−D乳酸樹脂を含有する態様において、更に結晶核剤および/またはハイドロタルサイト類化合物を含有しない場合に比べ、結晶化速度を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
ポリ−D乳酸樹脂と、結晶核剤と、ハイドロタルサイト類化合物と、を含有するポリ乳酸樹脂組成物である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記ハイドロタルサイト類化合物が、下記一般式(1)で示される構造を有する化合物およびその有機化処理物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物である。
[M2+1−x3+(OH)x+[An−x/n・mHO]x− (1)
(一般式(1)中、xは0<x≦0.33を、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+およびZn2+から選択される2価の金属を、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+、Co3+およびIn3+から選択される3価の金属を、An−はOH、F、Cl、Br、NO2−、CO2−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCOOおよびシュウ酸イオンから選択されるイオンを、nは前記イオンの価数を、mは正の数を表す。)
【0008】
請求項3に係る発明は、
ポリ−D乳酸樹脂と、結晶核剤と、ハイドロタルサイト類化合物と、を含有するポリ乳酸樹脂組成物を成形した樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、ポリ−D乳酸樹脂を含有する態様において、更に結晶核剤および/またはハイドロタルサイト類化合物を含有しない場合に比べ、結晶化速度が向上される。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、ハイドロタルサイト類化合物が一般式(1)で示される構造を有する化合物およびその有機化処理物から選択される少なくとも1種でない場合に比べ、結晶化速度が向上される。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、ポリ−D乳酸樹脂を含有する態様において、更に結晶核剤および/またはハイドロタルサイト類化合物を含有しない場合に比べ、結晶化速度が向上した樹脂成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る樹脂成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のポリ乳酸樹脂組成物および樹脂成形体の実施形態について説明する。
【0014】
<ポリ乳酸樹脂組成物>
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ−D乳酸樹脂と、結晶核剤と、ハイドロタルサイト類化合物と、を含有する。
【0015】
ポリ−D乳酸樹脂を用いた樹脂組成物においては、結晶化速度の向上が望まれている。これに対し本実施形態においては、ポリ乳酸樹脂組成物中にハイドロタルサイト類化合物が存在することにより、樹脂組成物の結晶核の形成が容易になるため結晶化が促進され、その結果結晶化速度が向上するものと推察される。
また、ハイドロタルサイト類化合物の含有に伴い結晶の大きさが微細化されるため、樹脂組成物の物理的特性がより向上されるものと推察される。
【0016】
尚、樹脂組成物としてポリ−D乳酸樹脂ではなくポリ乳酸系ステレオコンプレックスを用いた態様においては、そもそも結晶化速度が速いという特性を有しているため、更に結晶化速度を向上させる観点でハイドロタルサイト類化合物を添加する必要がなく、またハイドロタルサイト類化合物の添加による結晶化速度の向上は見込めないものと推察される。
【0017】
(ポリ−D乳酸樹脂)
本実施形態において用いられるポリ−D乳酸樹脂は、下記構造式(1)に示すポリ−D乳酸単位の繰返し構造を有する樹脂である。
【0018】
【化1】



【0019】
(結晶核剤)
結晶核剤とは、樹脂の結晶化過程で核生成を促す足場を提供する添加剤であり、その結果核生成が促進され結晶化が促進される化合物を指す。
【0020】
本実施形態にて用いられる結晶核剤としては、特に限定されるものではないが、例えば含水珪酸マグネシウム〔例えばタルク、カオリン、マイカ等〕;りん酸エステル金属塩〔例えばフェニルホスホン酸亜鉛塩等のフェニルホスホン酸金属塩、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス(2,2’−メチレンビス−4,6−ジ−t−ブチルフェニルホスフェート)等〕、5−スルホイソフタル酸ジメチル二バリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチル二カルシウム等の芳香族スルホン酸ジアルキルエステルの金属塩;メチルデヒドロアビエチン酸カリウム等のロジン酸類の金属塩;トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド等の芳香族カルボン酸アミド;p−キシリレンビスロジン酸アミド等のロジン酸アミド;デカメチレンジカルボニルジベンゾイルヒドラジド等のカルボヒドラジド類;キシレンビスステアリル尿素等のN−置換尿素類;メラミンシアヌレート等のメラミン化合物の塩;6−メチルウラシル等のウラシル類等が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度の観点から、特にフェニルホスホン酸亜鉛やタルクが好ましい。
【0021】
また、これら結晶核剤の一次粒子径は、樹脂組成物としてポリ−D乳酸樹脂へ分散される際には10μm以下の粒子のものが好ましい。一次粒子径が10μm以下であることにより、結晶化の際に破壊の起点となることが抑制され、結晶核剤としての効能が十分に発揮されて、その結果樹脂としての性能が向上する。
【0022】
上記結晶核剤の含有量は、前記ポリ−D乳酸樹脂100質量部に対して0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0023】
(ハイドロタルサイト類化合物)
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物にはハイドロタルサイト類化合物が含有される。
前記ハイドロタルサイト類化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(1)で示される構造を有する化合物やその有機化処理物等が挙げられる。尚、下記一般式(1)で示される構造を有する化合物は層状構造を有する化合物である。
【0024】
[M2+1−x3+(OH)x+[An−x/n・mHO]x− (1)
(一般式(1)中、xは0<x≦0.33を、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+およびZn2+から選択される2価の金属を、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+、Co3+およびIn3+から選択される3価の金属を、An−はOH、F、Cl、Br、NO2−、CO2−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCOOおよびシュウ酸イオンから選択されるイオンを、nは前記イオンの価数を、mは正の数を表す。)
【0025】
上記M2+としては、更にMg2+、Zn2+が好ましい。
上記M3+としては、更にAl3+が好ましい。
上記An−としては、更にCO2−が好ましい。
【0026】
中でも下記一般式(1’)で示される構造を有する化合物が好ましい。
[Mg1−xAl(OH)x+[(COx/2・mHO]x− (1’)
(一般式(1’)中、xは0<x≦0.33を、mは正の数を表す。)
【0027】
一般式(1’)で示される構造は、正に帯電したMg(OH)に類似する基本層[Mg1−xAl(OH)x+と、負に帯電した[(COx/2・mHO]x−とからなる層状構造を備える。CO2−はイオン交換性であり、他のイオンと容易に交換され得る。
ハイドロタルサイト類化合物は、層状交換の層間に、可逆的に水を吸着および脱離し得る。ハイドロタルサイト類化合物を温度500℃以上700℃以下で焼成すると、結晶水が脱離して、MgO−Al系固溶体が得られ、この固溶体はハイドロタルサイト類化合物のごとく水分、陰イオン等を吸着し、これらを吸着することで容易にハイドロタルサイト類化合物に戻る。
【0028】
前記一般式(1)で示される構造を有する化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
(a)MgAl(OH)12(CO)・3H
(b)Mg3.5Zn0.5Al(OH)12(CO)・3H
(c)Mg4.5Al(OH)13(CO)・3.5H
(d)Mg4.3Al(OH)12.6(CO)・mH
(e)MgAl(OH)16(CO)・4H
【0029】
・有機化処理物
また、前記一般式(1)で示される構造を有する化合物の有機化処理物も用いられる。
ハイドロタルサイト類化合物の有機化処理は、特に限定されるものではないが、例えば次のようにして行われる。まず、ハイドロタルサイト類化合物を水中に分散させ、その分散液中に有機物の水溶液を添加し、該有機物をハイドロタルサイト類化合物の層間にインターカレートさせる。その後、乾燥させることにより、ハイドロタルサイト類化合物が有機化された有機化ハイドロタルサイト類化合物が得られる。
ハイドロタルサイト類化合物を有機化するために用いられる上記有機物としては、水中で陰イオンを呈する有機物が用いられる。例えば、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシアルキレン基等の有機置換基と、カルボン酸基及びスルフォン酸基等の陰イオンを形成し得る官能基と、から構成される有機物等が挙げられる。具体的には、ステアリン酸及びその塩等が用いられる。
具体的には、構造式中に炭酸イオンを有するハイドロタルサイト類化合物であれば、その炭酸イオンがCl,OH,F,Br,NO2−,I,SO2−,アルキル基、ベンジル基、ポリオキシアルキレン基、ジカルボン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸に置換されたもの等が挙げられる。
【0030】
尚、これらハイドロタルサイト類化合物およびその有機化物は、その一次粒子径が1μm以下のものが好ましい。
【0031】
上記ハイドロタルサイト類の含有量は、前記ポリ−D乳酸樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上7.5質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
(その他の添加剤)
また、本実施形態に係る樹脂組成物においては、上記のものに加えて、(a)前記ポリ−D乳酸樹脂以外のその他の樹脂、(b)難燃効果を有する化合物(難燃剤)、(c)その他の成分等を含んでもよい。
【0033】
<(a)その他の樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物において前述のポリ−D乳酸樹脂と併用して用いられる樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0034】
・熱可塑性樹脂
上記熱可塑性樹脂としては、従来公知の樹脂が用いられる。具体的には、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、液晶樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリパラバン酸樹脂、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂、ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂、シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、上記のうちポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の少なくとも1種とスチレン系樹脂の少なくとも1種とを組み合わせたアロイ樹脂として用いてもよい。
【0036】
更に、上記熱可塑性樹脂の中でも生分解性樹脂が好適に用いられる。生分解性樹脂としては、生分解性を有している樹脂であればよく、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン変性樹脂、セルロース変性樹脂等が用いられる。
【0037】
本実施形態に係る樹脂組成物中において、前述のポリ−D乳酸樹脂も含めた全ての樹脂の含有量は、樹脂組成物の全組成中20質量%以上95質量%以下であることが好ましい。尚、その全ての樹脂におけるポリ−D乳酸樹脂の占める割合は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0038】
<(b)難燃効果を有する化合物(難燃剤)>
本実施形態に係る樹脂組成物においては、更に難燃効果を有する化合物(難燃剤)を含有してもよい。
尚「難燃効果を有する化合物(難燃剤)」とは、単独では難燃性を示さず、且つUL−94で規定される難燃性がHB未満の樹脂に添加して得られる樹脂組成物の、UL−94で規定される難燃性がHB以上となる化合物を表す。
【0039】
上記難燃剤としては、例えば、リン系、シリコーン系、含窒素系、硫酸系、無機水酸化物系等の難燃剤が用いられる。
上記リン系難燃剤としては、縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸アルミニウムなどが、上記シリコーン系難燃剤としては、ジメチルシロキサン、ナノシリカ、シリコーン変性ポリカボーネートなどが、上記含窒素系難燃剤としては、メラミン化合物、トリアジン化合物などが、上記硫酸系難燃剤としては、硫酸メラミン、硫酸グアニジンなどが、上記無機水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でもリン系難燃剤がより好ましい。
【0040】
尚、前記難燃剤としては合成したものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。
リン系難燃剤の市販品としては、大八化学工業製のPX−200、PX−202、ブーテンハイム製のTERRAJU C80、クラリアント製のEXOLIT AP422、EXOLIT OP930等が挙げられる。シリコーン系難燃剤の市販品としては、東レダウシリコーン製のZ6018、DC4−7081等が挙げられる。含窒素系難燃剤の市販品としては、ADEKA製のFP2200等が挙げられる。硫酸系難燃剤の市販品としては、三和ケミカル製のアピノン901、下関三井化学製のピロリンサンメラミン、ADEKA製のFP2100等が挙げられる。無機水酸化物系難燃剤の市販品としては、タテホ化学工業製のエコーマグPZ−1、堺化学工業製のMGZ3、MGZ300、日本軽金属製B103ST等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係る樹脂組成物において前記難燃剤を添加する場合には、その含有量として、樹脂組成物の全量に対し3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
<(c)その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物は、更にその他の成分を含んでいてもよい。樹脂組成物中における上記その他成分の含有量は0質量%以上10質量%以下であることが望ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより望ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
該その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、離型剤、相溶化剤、可塑剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。
【0043】
・樹脂組成物の製造方法
本実施形態に係る樹脂組成物は、少なくとも前述のポリ−D乳酸樹脂と結晶核剤とハイドロタルサイト類化合物とを用いて溶融混練することにより製造され、更にその他、該化合物以外の(a)その他の樹脂、(b)難燃剤、(c)その他の成分等を添加してもよい。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0044】
≪樹脂成形体≫
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより得られる。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る樹脂組成物を成形し、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。
【0045】
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
この際、シリンダ温度としては、170℃以上280℃以下とすることが望ましく、180℃以上270℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、40℃以上110℃以下とすることが望ましく、50℃以上110℃以下とすることがより望ましい。
【0046】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
【0047】
図1は、本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0048】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0049】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0050】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
【0051】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
【0052】
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152に、本実施形態に係る樹脂成形体が用いられている。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0054】
<樹脂組成物の作成方法>
二軸押出機(東洋精機ラボプラストミル、Φ25mm)を用い、下記表1乃至表5に記載の組成を、押し出し機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数30rpmの条件で、押出しした。押出機先端から吐出された樹脂組成物をペレット状にカッティングして、サンプルペレットを得た。
【0055】
<評価>
−結晶化速度(半結晶化時間)−
上記方法にて作製した樹脂組成物を膜厚500μmに調整したプレスフィルムサンプルを5μgから10μgサンプリングした。このサンプルを、示差走査熱量測定(DSC;Perkin Elmer社製、Diamond DSC)により200℃で5分間溶融した後、保持温度(110℃)まで500℃/minの速さで降温し、30分間保持したときの発熱ピーク時間(結晶飽和となる半分の時間)を半結晶化時間として求めた。サンプル温度が保持温度に達したときの時間を0分として、半結晶化時間を算出した。半結晶化時間が短いほど、結晶化速度が速いといえる。
(半結晶化時間の評価基準)
◎=半結晶化時間が35秒以下
○=半結晶化時間が35秒を超え45秒以下
△=半結晶化時間が45秒を超え60秒以下
×=半結晶化時間が60秒を超える
【0056】
−衝撃強さ(シャルピー衝撃強度の評価試験)−
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを用い、ISO−179に規定の方法に従って衝撃試験装置(東洋精機社製、DG−5)によりシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定し、その結果から所望の衝撃強度が得られているものを「○」、得られていないものを「×」として評価した。
【0057】
【表1】




【0058】
【表2】



【0059】
【表3】



【0060】
【表4】



【0061】
【表5】



【0062】
上記表1乃至表5に記載の組成物は、それぞれ以下のものである。
・PLA=ポリ−D乳酸(ネイチャーワークスジャパン(株)製、
IngeoBiopolymer4032D)
・結晶核剤A=(日本タルク製、P−3)
・結晶核剤B=(日産化学工業、エコプロモート)
・ハイドロタルサイト類化合物a=協和化学、DHT−4
・ハイドロタルサイト類化合物b=堺化学、STABIACE HT−P
【符号の説明】
【0063】
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−D乳酸樹脂と、結晶核剤と、ハイドロタルサイト類化合物と、を含有するポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト類化合物が、下記一般式(1)で示される構造を有する化合物およびその有機化処理物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
[M2+1−x3+(OH)x+[An−x/n・mHO]x− (1)
(一般式(1)中、xは0<x≦0.33を、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+およびZn2+から選択される2価の金属を、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+、Co3+およびIn3+から選択される3価の金属を、An−はOH、F、Cl、Br、NO2−、CO2−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCOOおよびシュウ酸イオンから選択されるイオンを、nは前記イオンの価数を、mは正の数を表す。)
【請求項3】
ポリ−D乳酸樹脂と、結晶核剤と、ハイドロタルサイト類化合物と、を含有するポリ乳酸樹脂組成物を成形した樹脂成形体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−207064(P2012−207064A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71660(P2011−71660)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】