説明

ポリ乳酸樹脂組成物

【課題】耐衝撃性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸(A)65〜95重量%と、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)2.5〜17.5重量%とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム2.5〜17.5重量%とを含有するポリ乳酸樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性の優れたポリ乳酸樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも機械特性及び耐熱性等の物性が優れているため、電気部品や事務機器部品等に使用されているが近年、更なる物性の向上が求められている。具体的には、層状粘土鉱物や衝撃強化剤などを熱可塑性樹脂に添加し、混練機で溶融混練することにより物性の向上を図っている。また、ポリ乳酸を代表とする植物由来樹脂のコンポジット技術の研究も活発に行われている。
【特許文献1】特開2003−286396号公報
【特許文献2】特開2005−29759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンポジット技術としては、特許文献1にように、ポリ乳酸に多層構造重合体を添加し耐衝撃性の向上を図っていることがあげられる。しかし、耐衝撃性の物性向上効果は不充分である。また、特許文献2は、ポリ乳酸に未変性天然ゴムとアクリル変性天然ゴムとを添加し耐衝撃性が向上することが開示されている。しかし、これら文献に開示された樹脂組成物は、添加前に比べ耐衝撃性は向上するが、構造部品として使用するための十分な強度が得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、上述の課題を検討した結果、ポリ乳酸に添加する添加物の量が同じである場合に、従来の成形品よりも耐衝撃性に優れた成形品になるポリ乳酸樹脂組成物を発明するに到った。
【0005】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)およびメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)とを含有するポリ乳酸樹脂組成物であり、好ましくは各組成の重量比が、ポリ乳酸(A)65質量%以上95質量%以下、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)2.5質量%以上17.5質量%以下、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)2.5質量%以上17.5質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリ乳酸(A)とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)を含有する耐衝撃性の優れたポリ乳酸樹脂組成物を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ポリ乳酸(A)とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)を含有するポリ乳酸樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
本発明は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)およびメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)との2種類の材料をポリ乳酸樹脂組成物に含有させることが重要である。特に、添加量が同じ場合は、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)およびメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)との2種類の材料を添加したとき成形品が高いシャルピー衝撃値を示した。
【0009】
含有させることにより樹脂組成物全体にポリ乳酸が均質に分散し、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて成形品を製造したときに、より耐衝撃性の優れた成形品を提供できる。
【0010】
ポリ乳酸(A)は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等のコポリマーでも、それらの混合物でもよく、末端基が封鎖されたり、修飾されているものも含まれる。
【0011】
市販されているポリ乳酸では、
レイシアH100J、レイシアM−151S Q04、レイシアM−151S Q52、レイシアH−100J F19(商品名、いずれも三井化学株式会社製)、
テラマックTE−2000、テラマックTE−1030、テラマックTE−1070、テラマックTE−7000、テラマックTE−7307、テラマックTE−7300、
テラマックTE−8210、テラマックTE−8300、テラマックTP−4000、テラマックTP−4030、テラマックHV−6200(商品名、ユニチカ株式会社製)、
エコディア(商品名、東レ株式会社製)が好適に用いられる。
【0012】
これら市販品のポリ乳酸を単独又は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。ポリ乳酸(A)の質量平均分子量は1万〜40万が好ましく、さらに好ましくは10万〜30万が好ましい。また、ポリ乳酸(A)の質量比は65質量%以上95質量%以下が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上95質量%以下が好ましい。65質量%以上95質量%以下においては耐熱性の指標である荷重撓み温度の効果にも優れる。
【0013】
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)は、アクリル酸アルキル単位からなるアクリル成分、シリル基末端ポリエーテルからなるシリコーン成分、グリシジル基含有ビニル系単位を有する重合体が用いられる。重合体は、多層構造重合体を形成するものが好ましい。
【0014】
ここで多層構造重合体とは、最内層(コア層)とそれを覆う1以上の層(シェル層)から構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体である。概略図を図1に示す。
【0015】
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)は、コア層がアクリル酸アルキル単位からなるアクリル成分とシリル基末端ポリエーテルからなるシリコーン成分とからなる複合重合体であり、シェル層がグリシジル基含有ビニル系単位を有する重合体成分である。
【0016】
代表的な一例の構造式にて示すと以下のとおりである。
【0017】
【化1】

【0018】
コア層を構成する材料の単位構造を示す化学式であり、化学式1の左部分がアクリル酸アルキル単位であり、右部分がシリル基末端ポリエーテル単位である。
【0019】
【化2】

【0020】
シェル層を構成する材料の単位構造を示す化学式であり、化学式2はグリシジル基含有ビニル系単位である。
【0021】
アクリル酸アルキル単位としては、
具体的には、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、
メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸オクタデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸クロロメチル、メタアクリル酸2−クロロエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、
メタアクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタアクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0022】
シリル基末端ポリエーテルのシリル基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキルシリル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキルシリル、
ビニル、アリル、ブテニルなどのアルケニルシリル、フェニル、トリル、ナフチルなどのアリールシリル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキルシリル、ベンジル、フェネチルなどのアリール−アルキルシリルなどが挙げられる。
【0023】
また、ポリエーテルにはポリエチレン、ポリプロピレンなどが用いられる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0024】
グリシジル基含有ビニル系単位としては、メタアクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられる。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
【0025】
市販品としては、メタブレンS−2200(商品名、三菱レイヨン株式会社製)が好適に用いられる。エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)の質量比は、組成物全体を100質量%とした場合に、2.5質量%以上17.5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは2.5質量%以上10質量%以下が好ましい。2.5質量%以上17.5質量%以下範囲内においては耐衝撃性の指標であるシャルピー衝撃値および耐熱性の指標である荷重撓み温度の効果に優れる。
【0026】
本発明において使用するメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)は、コア層はブタジエン・スチレン重合体で、シェル層はメタクリル酸メチル重合体が用いられる。
【0027】
【化3】

【0028】
コア層に含まれるブタジエン・スチレン重合体であり、化学式3の左部分がブタジエン単位であり、右部分がスチレン単位である単位構造を示したものである。
【0029】
【化4】

【0030】
シェル層に含まれるメタクリル重合体で、化学式4はその単位構造を示したものである。
【0031】
市販品としては、メタブレンC−223A、メタブレンC−323A、メタブレンC−215A、メタブレンC−201A、メタブレンC−202、メタブレンC−102、メタブレンC−140A、メタブレンC−132(商品名、三菱レイヨン株式会社製)、
カネエースM−600(商品名、株式会社カネカ製)が好適に用いられる。
【0032】
メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)の質量比は、組成物全体100質量%に対して、2.5質量%以上17.5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは2.5質量%以上10質量%以下が好ましい。前記範囲内においては耐衝撃性の指標であるシャルピー衝撃値および耐熱性の指標である荷重撓み温度の効果に優れる。
【0033】
本発明では、ポリ乳酸(A)とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)およびメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)を含有することを特徴とする。さらに、組成物全体100質量%に対し、ポリ乳酸(A)65質量%以上95質量%以下であり、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)2.5質量%以上17.5質量%以下であり、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)2.5質量%以上17.5質量%以下の質量比が好ましい。これを射出成形等により成形すると、27kJ/mを超える耐衝撃性の優れた成形品を得ることができる。さらに、耐衝撃性の向上が図られるばかりではなく、耐熱性や曲げ物性等の低下も最小限に抑えることが可能である。本発明は、バージン材のみではなく、市場から回収したリサイクル材にも適用でき、物性の回復に使用が可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変形可能であることは言うまでもない。
【0035】
なお、評価としては以下の項目について実施した。
(1)耐衝撃性評価
本実施例で作製した短冊試験片(80×10×4.0mm)を用いて本実施例のポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性をシャルピー衝撃値にて評価した。なお、ISO 179に準拠し、ノッチ加工:ノッチングツールA−3(商品名、株式会社東洋精機製作所製)タイプAノッチ、測定装置:デジタル衝撃試験機DG−UB(商品名、株式会社東洋精機製作所製)、各n(測定本数)=4にて測定した。
(2)耐熱性評価
本実施例で作製した短冊試験片を用いて本実施例のポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を荷重撓み温度(DTUL)にて評価した。なお耐熱性評価はISO 75に準拠し、フラットワイズ、応力:0.45MPa、昇温速度:2℃/min、測定装置:HDT/VSPT試験装置TM−4126(商品名、株式会社上島製作所製)、各n(測定本数)=2にて測定した。
(3)曲げ物性
本実施例で作製した短冊試験片を用いて本実施例のポリ乳酸樹脂組成物の曲げ物性を三点曲げ試験(曲げ弾性率、最大曲げ強度)にて評価した。なお、ISO 178に準拠し、測定装置:精密万能試験機オートグラフAG−IS(商品名、株式会社島津製作所製)、各n(測定本数)=4にて測定した。
【0036】
(実施例1)
A成分(ポリ乳酸)、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)及びB2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)として下記の原材料を準備した。
A成分:〔ポリ乳酸(三井化学株式会社製、商品名「レイシアH100J」)〕
B1成分:〔エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンS−2200」)〕
B2成分:〔メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンC−223A」)〕
前記A成分95質量%と前記B1成分2.5質量%と前記B2成分2.5質量%とをラボプラストミル4C−150(商品名、株式会社東洋精機製作所製)にて180℃で溶融混練し樹脂組成物を調製した。射出成形機SE18DU(商品名、住友重機械工業株式会社製)にて短冊試験片(80×10×4.0mm)を作製した。なお、金型温度は100℃〜105℃、成形温度は190℃、保圧70MPaとした。
【0037】
(実施例2)
A成分(ポリ乳酸)を93質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を3.5質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を3.5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0038】
(実施例3)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を7.5質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を2.5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0039】
(実施例4)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を5質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0040】
(実施例5)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を2.5質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を7.5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0041】
(実施例6)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を7.5質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を7.5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0042】
(実施例7)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を10質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を10質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0043】
(比較例1)
B1成分及びB2成分の添加を無くした以外は、実施例1と同様に二軸混練機による溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0044】
(比較例2)
A成分(ポリ乳酸)を95質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を5質量%で溶融混練した。B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)の添加を無くした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0045】
(比較例3)
A成分(ポリ乳酸)を95質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)の添加を無くし、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を5質量%添加した。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0046】
(比較例4)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を10質量%で溶融混練した。B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)の添加を無くした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0047】
(比較例5)
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)の添加を無くし、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を10質量%添加した。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0048】
(比較例6)
A成分(ポリ乳酸)、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)及びB3成分(シリコーン・アクリルゴム)として下記の原材料を準備した。
A成分:〔ポリ乳酸(三井化学株式会社製、商品名「レイシアH100J」)〕
B2成分:〔メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンC−223A」)〕
B3成分:〔シリコーン・アクリルゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンS−2001」)〕
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を5質量%、B3成分(シリコーン・アクリルゴム)を5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0049】
(比較例7)
A成分(ポリ乳酸)、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)及びB4成分(ASグラフトシリコーン・アクリルゴム)として下記の原材料を準備した。
A成分:〔ポリ乳酸(三井化学株式会社製、商品名「レイシアH100J」)〕
B2成分:〔メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンC−223A」)〕
B4成分:〔ASグラフとシリコーン・アクリルゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンSRK−200」)〕
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を5質量%、B4成分(ASグラフトシリコーン・アクリルゴム)を5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0050】
(比較例8)
A成分(ポリ乳酸)、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)及びB5成分(アクリル系複合ゴム)として下記の原材料を準備した。
A成分:〔ポリ乳酸(三井化学株式会社製、商品名「レイシアH100J」)〕
B2成分:〔メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンC−223A」)〕
B5成分:〔アクリル系複合ゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンW−450A」)〕
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B2成分(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム)を5質量%、B5成分(アクリル系複合ゴム)を5質量%とした。それ以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0051】
(比較例9)
A成分(ポリ乳酸)、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)及びB5成分(アクリル系複合ゴム)として下記の原材料を準備した。
A成分:〔ポリ乳酸(三井化学株式会社製、商品名「レイシアH100J」)〕
B1成分:〔エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンS−2200」)〕
B5成分:〔アクリル系複合ゴム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「メタブレンW−450A」)〕
A成分(ポリ乳酸)を90質量%、B1成分(エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム)を5質量%、B5成分(アクリル系複合ゴム)を5質量%とした以外は実施例1と同様にラボプラストミルによる溶融混練、さらに射出成形機にて短冊試験片を作製した。
【0052】
上記実施例による評価結果を表1に、また上記比較例による評価結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1および表2に示されているように、実施例1のポリ乳酸樹脂組成物は比較例2および比較例3と比べ、同じゴム量(5質量%)を添加してもシャルピー衝撃値が大きく向上していることがわかる。これはエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴムとがポリ乳酸に分散する際、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム由来の約100nm島とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム由来の約300nm島との分布をもった図2に示すようなきれいな海・島構造をバランスよく形成させているからであると考えられる。
【0056】
また、実施例3〜5のポリ乳酸樹脂組成物においても比較例4および比較例5と比べ、同じゴム量(10質量%)を添加してもシャルピー衝撃値が大きく向上していることがわかる。
【0057】
熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を評価する荷重撓み温度(0.45MPa)は、ゴム添加量に比例して下がることが一般的に知られている。すなわち、耐衝撃性を向上させるためにゴム成分を多く添加すると加重撓み温度が低下するが、本発明ではエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴムとを添加することでゴム添加量を最低限にすることが可能となる。その結果、荷重撓み温度の低下を最小限に抑えられる。また、曲げ弾性率及び曲げ強度においてもゴム添加量を最低限にすることで、それぞれの低下を最小限に抑えられることがわかる。
【0058】
さらに実施例4と比較例6〜9と比べ、同じゴム量(10質量%)の添加でも本発明であるエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴムの組合せが最も優れていることが分かる。これはエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのエポキシ基による樹脂との相溶性が向上していることがある。さらに、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム由来の約100nm島とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム由来の約300nm島との分布が最もバランス良く分散しているためであると考えられる。
【0059】
以上説明したように、本発明により、耐衝撃性の優れたポリ乳酸脂組成物を簡易に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は耐衝撃性の向上を図りたいポリ乳酸樹脂に適用ができる。また、バージン材のみではなく市場から回収したリサイクル材にも適用でき、物性の回復に使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】コアシェル構造を示す概略図
【図2】本発明の海・島構造をあらわす概略図
【符号の説明】
【0062】
1 多層構造重合体における最内層(コア層)
2 多層構造重合体における最外層(シェル層)
3 ポリ乳酸(海の部分)
4 エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(島の部分)
5 メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(島の部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)とを含有することを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸(A)とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)とメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)とを含有し、
組成物全体100質量%に対し、ポリ乳酸(A)65質量%以上95質量%以下、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴム(B1)2.5質量%以上17.5質量%以下、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合ゴム(B2)2.5質量%以上17.5質量%以下からなることを特徴とするポリ乳酸樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263526(P2009−263526A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115735(P2008−115735)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】