説明

ポリ乳酸系自発捲縮繊維

【課題】 優れた捲縮発現性能を有し、かつ、発現した捲縮はへたりにくく、クッション材等の中綿用途に好適なポリ乳酸系自発捲縮繊維を提供する。
【解決手段】 分子量の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとが単繊維内において接合されてなる複合繊維であって、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂BはL−乳酸および/またはD−乳酸からなり、かつポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの少なくとも一方が以下の条件(1)、(2)を同時に満足する。(1)L−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが99.0/1.0を超えるものである。(2)ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分の量が0.08質量%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のポリ乳酸からなる繊維であって、分子量の異なる2種のポリ乳酸からなる複合繊維とすることで優れた捲縮発現性を有し、かつ、発現した捲縮はへたりにくく、クッション材等の中綿用途に好適なポリ乳酸系自発捲縮繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、クッション材などの中綿用途などには、粘度の異なるポリエチレンテレフタレートなどの2種類のポリエステルを、並列的または偏心的に接合した複合繊維とし、延伸または熱処理によって3次元のスパイラル捲縮を発現させた繊維が使用されている。
【0003】
合成繊維の中でも特にポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野、用途において広く使用されている。
【0004】
しかし、最近は、ポリエチレンテレフタレートなどの従来の合成樹脂が石油を原料としていることから、石油の枯渇を促進させる問題が生じるため、石油の枯渇を遅延する目的から、植物由来であるポリ乳酸樹脂が注目されるようになっている。
【0005】
特許文献1では、粘度や光学純度の異なる2種類のポリ乳酸を並列的または偏心的に接合し、スパイラル捲縮を発現する複合繊維が提案されている。しかしながら、この発明においては、ポリマーのモノマー量や光学純度との関係には着目していなかったため、場合によっては、捲縮発現して得られたスパイラル捲縮は、捲縮のもちが十分でなく、へたりが生じることがあるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−201629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決し、優れた捲縮発現性能を有し、かつ、発現した捲縮はへたりにくく、クッション材等の中綿用途に好適なポリ乳酸系自発捲縮繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、分子量の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとが単繊維内において接合されてなる複合繊維であって、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂BはL−乳酸および/またはD−乳酸からなり、かつポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの少なくとも一方が以下の条件(1)、(2)を同時に満足することを特徴とするポリ乳酸系自発捲縮繊維を要旨とするものである。
(1)L−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが99.0/1.0を超えるものである。
(2)ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分の量が0.08質量%未満である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリ乳酸系自発捲縮繊維は、優れた捲縮発現性能を有し、かつ、発現した捲縮はへたりが生じにくく、捲縮の形態を長期間良好に維持することができるので、クッション材等の中綿用途に好適に使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のポリ乳酸系自発捲縮繊維は、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bが、単繊維内において接合されてなる複合繊維である。単繊維内において接合されている形態としては、自発捲縮性能を向上させるためには、並列的又は偏心的に接合されてなる複合繊維とすることが好ましい。つまり、並列的とは2成分が例えばサイドバイサイド型のように貼り合わされている形状であり、偏心的とは2成分が例えば芯鞘型に貼り合わされており、芯部と鞘部の中心点が一致せずにずれているものをいう。
【0011】
本発明のポリ乳酸自発捲縮繊維は、ポリ乳酸樹脂A、Bの分子量の差により、自発捲縮縮性能を有するものである。ポリ乳酸樹脂AとBはいずれの分子量が高いものであってもよいが、分子量の差は、数平均分子量で10000〜30000程度が好ましい。分子量の差が10000以下であると捲縮の発現性に劣るものとなりやすく、30000を超えると、紡糸時のニーイング(ノズル直下の糸曲がり)が大きくなり、紡糸操業性が低下するため、好ましくない。
【0012】
そして、本発明におけるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとは、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする共重合物である。ポリ乳酸を製造するための乳酸としては、D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。ポリ乳酸を主体とする共重合物としては、乳酸(D体のみ、L体のみ、D体とL体の混合物のいずれでもよい。)と、例えばε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマーの一種又は二種以上とを共重合したものが挙げられる。
【0013】
さらに、本発明においては、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの少なくとも一方が以下の条件(1)、(2)を同時に満足することが必要である。
(1)L−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが99.0/1.0を超えるものである。
つまり、上記したようなポリ乳酸がD体のみ又はL体のみの場合は、L/D又はD/Lが100/0となる。D体とL体の混合物においてはD/Lが99.0/1.0を超えるものとする。
【0014】
(2)ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分の量が0.08質量%未満である。
なお、ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分とは、上記したような共重合成分等のモノマーや後述するような末端封鎖剤や添加剤等をいうものである。
【0015】
(1)、(2)の両条件を満足することにより、ポリ乳酸樹脂の結晶性が著しく向上する。このため、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの少なくとも一方が(1)、(2)の両条件を満足することにより、発現した捲縮に熱や圧力などがかかったとしても、捲縮のへたりが生じることが少なく、捲縮の形態を長期間良好に維持することができる。
【0016】
(1)の条件において、L/D又はD/Lが99.0/1.0を超えるものでない場合、つまりL/D又はD/Lが98.0/2.0であったり、95.0/5.0というように、主体とするL−乳酸中のD−乳酸の含有割合や、主体とするD−乳酸中のL−乳酸の含有割合が多い場合、結晶性の高いポリ乳酸することが困難となる。
【0017】
(2)の条件において、ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分の量が0.08質量%以上であると、ポリ乳酸樹脂の結晶性が阻害され、結晶性の高いポリ乳酸樹脂とすることが困難となる。
【0018】
したがって、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの両者が(1)、(2)の両条件を満足しない場合、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bともに(1)、(2)の条件の一方のみを満足する場合、ポリ乳酸樹脂の結晶性を向上させることができず、発現した捲縮はへたりやすいものとなる。
【0019】
中でもポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの両方ともが(1)、(2)の条件を満足すると、上記のような捲縮のへたり防止効果(捲縮形態の維持効果)が大きくなるため好ましい。
【0020】
なお、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bのどちらか一方だけが、(1)、(2)の条件を満足する場合は、他方の樹脂は、捲縮の発現性や繊維の耐熱性などを考慮して、L−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが95.0/5.0を超えるものであり、かつ、ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分の量が0.8質量%以下であることが好ましい。
【0021】
次に、図面を用いて、本発明の繊維の複合形状について説明する。図1〜3は、本発明の繊維の好ましい複合形状の実施態様を示す単繊維の横断面模式図である。図において、aはポリ乳酸樹脂Aを、bはポリ乳酸樹脂Bを、cは中空部をそれぞれ示す。
【0022】
前記したように、本発明においては、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bが、単繊維内において接合されてなる複合繊維であって、自発捲縮性能を向上させるためには、並列的又は偏心的に接合されていることが好ましい。
【0023】
図1は並列的(サイドバイサイド型)に接合された例であり、図2は偏心的に接合された例(芯鞘型)であり、図3は並列的に接合された例であって中空部を有する例である。図3に示すように本発明の繊維においては、単繊維の横断面形状において中空部を有するものでもよい。
【0024】
また、単繊維の横断面形状は、円形のみならず、長円形、ひょうたん形、多角形、多葉形、アルファベット形その他各種の非円形(異形)、中空形などのいずれであってもよく、用途等に応じて任意に選択すればよい。
【0025】
ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとの複合比率(断面積比)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択すればよい。通常、複合比は1/10〜10/1の範囲、中でも1/5〜5/1の範囲が好ましく、さらには1/3〜3/1とすることが好ましい。
【0026】
また、本発明の繊維は長繊維、短繊維のいずれであってもよいが、クッション材等の中綿用途や不織布用途には短繊維とすることが好ましく、短繊維とする場合には、繊維長は使用目的に応じて任意に選ばれるが、5〜80mmが好ましく、中でも20〜70mmとすることが好ましい。
【0027】
繊度も同様に使用目的に応じて任意に選ばれるが、通常、単糸繊度0.1〜50デシテックス(dtex)とすることが好ましく、中でも0.5〜30dtexとすることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明の繊維においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリ乳酸樹脂の耐久性を高めることを目的として、ポリ乳酸樹脂に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤を添加してもよい。また、各種顔料、染料、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を混合していてもよい。
【0029】
なお、これらの末端封鎖剤や添加剤等が分子量1000以下の成分となる場合は、上述したように(2)の条件を満足するように添加することが必要である。
【0030】
本発明の自発捲縮繊維は、短繊維として原綿の段階で捲縮を発現させて、顕在捲縮綿とすることもできるし、原綿を不織布などの繊維構造物にした後に捲縮を発現させる潜在捲縮綿として使用することもできる。中でもクッション材等の中綿用途では、大きなスパイラル捲縮が発現する顕在捲縮綿とすることが好ましく、伸縮性を有する不織布を得る場合には潜在捲縮綿とすることが好ましい。
また、顕在捲縮や潜在捲縮の長繊維として使用することもできる。
【0031】
なお、本発明の自発捲縮繊維の捲縮は、顕在捲縮綿の場合は延伸又は延伸後に熱処理を行うことで発現させることができ、潜在捲縮綿の場合は、不織布などの繊維構造物にした後に熱処理を施すことにより発現させることができる。
【0032】
発現させる捲縮数は、使用用途に応じて任意に設定すればよいが、顕在捲縮綿の場合は、クッション材に好適なクッション性や嵩高性を付与するためには、捲縮数を5〜20個/25mmとすることが好ましく、中でも6〜10個/25mmとすることが好ましい。そして、捲縮率は8〜40%、中でも15〜30%とすることが好ましい。
【0033】
一方、潜在捲縮綿の場合は、捲縮数を30個/25mm以上とすることが好ましく、伸縮性に優れた不織布を得る場合には、50〜100個/25mmとすることが好ましい。
【0034】
捲縮数や捲縮率は、ポリ乳酸樹脂中のL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lや分子量、複合構造の偏心度合いや、延伸倍率、熱処理時の温度等によって適宜調整することができる。
【0035】
そして、顕在捲縮綿の場合は、2種類のポリ乳酸のL/D又はD/Lの差を小さくすることが好ましく、ポリ乳酸樹脂A、Bともに条件(1)、(2)を満足することが好ましい。
【0036】
一方、潜在捲縮綿の場合は、発現する捲縮数を多くする場合には、2種類のポリ乳酸のL/D又はD/Lの差を大きくすることが好ましく、ポリ乳酸樹脂A、Bのいずれか一方のみが条件(1)、(2)を満足することが好ましい。
【0037】
次に、本発明のポリ乳酸系自発捲縮繊維の製造方法について、一例を用いて説明する。
本発明の繊維は、両成分を通常使用される複合紡糸装置を用いて、複合紡糸することにより得ることができる。まず、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bを並列的や偏心的に接合されるように紡糸し、紡糸した糸条を横吹付や環状吹付等の冷却装置を用いて、吹付風により冷却した後、油剤を付与する。続いて引き取りローラを介して未延伸糸として巻取機に巻取る。巻取られた未延伸糸を周速の異なるローラ群間で延伸する。
【0038】
そして、捲縮を発現させた短繊維(顕在捲縮綿)とする場合は、延伸に引き続いてリールなどで引き取ることによってスパイラル捲縮を発現させ、必要に応じて熱風等で熱処理を行い、ECカッターなどのカッターで目的とする長さにカットする。また、潜在捲縮綿とする場合は、延伸後、押し込み型の捲縮装置などで機械捲縮を付与した後に目的とする長さにカットする。
【0039】
また、長繊維とする場合は、延伸後そのまま捲き取り、必要に応じて、撚糸、仮撚加工等の加工を行う。
【0040】
なお、本発明においては、溶融紡糸時のポリ乳酸樹脂の紡糸温度は235℃以下とすることが好ましい。紡糸温度が235℃より高いと、熱分解によりポリ乳酸樹脂中のモノマー量が増加してしまうため、(2)の条件を満足することが困難となる傾向がある。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、実施例における特性値等の測定法及び評価は次の通りである。
(1)数平均分子量および分子量1000以下の成分の量(質量%)
ポリ乳酸樹脂を10mg/mlの濃度になるように、クロロホルムに溶解して、クロロホルムを溶媒として、Gel Permeation Chromatography(GPC)法により測定した。検出器は屈折率計を使用し、分子量の標準物質としてポリスチレンを使用した。また、分子量1000以下の成分の量をポリ乳酸樹脂中の割合(質量%)として求めた。
(2)ポリ乳酸中のL−乳酸とD−乳酸の含有割合(L/D)
超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(3)単糸繊度(dtex)
JIS L−1015 8.5.1(正量繊度)A法により測定した。
(4)捲縮数、捲縮率
捲縮数−JIS L1015 8.12.1のけん縮数に基づき測定した。
捲縮率−JIS L1015 8.12.2のけん縮率に基づき測定、算出した。
(5)初荷重時比容積(cm/g)、荷重時比容積(cm/g)
得られた短繊維(原綿)をカード開繊機にかけてシート状ウェブにした後、20×20cmの大きさに切り、質量が80gになるように積み重ね、初荷重(測定板20×20cm、質量170g)時の比容積を測定したものを初荷重時比容積とした。荷重(測定板20×20cm、質量170g+荷重5.23kg)時の比容積を測定したものを荷重時比容積とした。
初荷重時比容積が100cm/g以上、荷重時比容積が20cm/g以上のものを嵩高性能に優れているものと評価した。
(6)耐へたり性(回復率)
(5)において、荷重時比容積を測定した後に、再度、初荷重(測定板20×20cm、質量170g)時の状態に戻して、10分経過した時の容積をMとし、荷重(測定板20×20cm、質量170g+荷重5.23kg)下で、50℃、相対湿度70%の雰囲気下で24時間放置した後に、室温で、初荷重(測定板20×20cm、質量170g)時の状態に戻して、10分経過した時の容積をNとし、下記式により回復率を求めた。
回復率(%)=(N/M)×100
回復率70%以上のものを耐へたり性に優れているものと評価した。
【0042】
実施例1
ポリ乳酸樹脂Aとして、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂であって、L/Dが98.0/2.0、数平均分子量65300、分子量1000以下の成分の量が0.16質量%であるものを用い、ポリ乳酸樹脂Bとして、L−乳酸を主体とするポリ乳酸樹脂であって、L/Dが99.2/0.8、数平均分子量85100、分子量1000以下の成分の量が0.05質量%であるものを用いた。両ポリマーを複合紡糸装置に導入し、複合比1/1にて、図1に示すような並列型(サイドバイサイド型)となるようにして、孔数が443の紡糸口金より、吐出量240g/分、220℃で複合紡糸した。糸条を集束後、引取速度1000m/minで引き取り、未延伸糸条束を得た。この時、紡糸時の糸切れはなく、操業性は極めて良好であった。
得られた未延伸糸条束を延伸温度60℃、延伸倍率3.50倍で延伸した後、続いてリールで引き取り、捲縮を発現させ、3次元的なスパイラル捲縮を有する顕在捲縮繊維とした。そして、仕上げ油剤を付与後に、100℃で乾燥させ、繊維長64mmに切断し、単糸繊度が6.6dtexであるポリ乳酸自発捲縮繊維(スパイラル捲縮を有する顕在捲縮短繊維)を得た。
【0043】
実施例2〜6、比較例1〜4
ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂BのL/D、数平均分子量、分子量1000以下の成分の量をそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行い、ポリ乳酸自発捲縮繊維を得た。
【0044】
実施例1〜6、比較例1〜4で得られたポリ乳酸自発捲縮繊維の捲縮数、捲縮率、嵩高性能、耐へたり性の評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より、明らかなように、実施例1〜6の繊維は、嵩高性能、耐へたり性ともに優れていた。
一方、比較例1〜4の繊維は、ポリ乳酸樹脂A、Bともに(1)、(2)の条件を同時に満足するものではなかったため、嵩高性能は良好であるが、耐へたり性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の繊維の複合形状の一実施態様(並列的に接合)を示す単繊維の横断面模式図である。
【図2】本発明の繊維の複合形状の他の実施態様(偏心的に接合)を示す単繊維の横断面模式図である。
【図3】本発明の繊維の複合形状の他の実施態様(並列的に接合かつ中空部を有する)を示す単繊維の横断面模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量の異なるポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bとが単繊維内において接合されてなる複合繊維であって、ポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂BはL−乳酸および/またはD−乳酸からなり、かつポリ乳酸樹脂Aとポリ乳酸樹脂Bの少なくとも一方が以下の条件(1)、(2)を同時に満足することを特徴とするポリ乳酸系自発捲縮繊維。
(1)L−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが99.0/1.0を超えるものである。
(2)ポリ乳酸樹脂中の分子量1000以下の成分の量が0.08質量%未満である。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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