説明

ポリ(エチレングリコール)機能性誘導体およびその製造方法

【課題】PEGの従来にない機能性誘導体およびその製造方法の提供。
【解決手段】式(I):R−PEG−(CH−COOH[式中:kは1〜5であり;Rは水素、ヒドロキシル基、メトキシ基、および他のアルコキシ基から成る群より選択され;PEGは一般式(II):−CO−(CO)−(式中、nは44ないし4000の数を意味する)で示される]で示される、PEG−酸が提供される。また、a)ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる工程と、b)該PEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させてPEG−ニトリルを形成させる工程と、c)該PEG−ニトリルを該PEG−酸へ加水分解する工程とを含み、該PEG−酸が該式(I)で表され、該PEGが該一般式(II)で表される、単離かつ実質的に精製されたPEG−酸の調製方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(エチレングリコール)の機能性誘導体、ならびにその製造方法および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エチレングリコール)(PEG)(あるいはポリ(エチレンオキシド)(PEO)として知られる)は、エチレンオキシドの繰り返しサブユニットから成るポリマーである。これは非毒性であるため、下剤などの臨床的局面、および練り歯磨き中の分散剤のような消費者向け日用品において、広く用いられている。近年、医学者達は、結合した生体分子の半減期が増大するように、PEGの活性化誘導体を様々な生体分子と結合させるのに利用してきた。それ以来、研究者達は活性化PEG誘導体の開発を行っており、Harrisらは、1つのプロピオン酸またはブタン酸部分を有し、その2つの末端の各々にメトキシ基およびスクシンイミジル活性エステル(−CO−NHS)が別々に結合している、PEG酸の活性エステルを開示した(米国特許第5,672,662号)。Sedaghat−HeratiらはPolymer Bulletin,43,35−41(1999)において、メトキシポリ(オキシエチレン)プロピオン酸の合成におけるアクリロニトリルの使用を記載した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した背景の観点から、本発明の目的は、従来型でないPEG機能性誘導体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、1つの態様において、単離され実質的に精製されたPEG−酸であり、下記の構造:
【0005】
(I) R−PEG−(CH−COOH
を有し、
【0006】
式中、kは1〜5であり、Rは水素、ヒドロキシル基、メトキシ基、または他のアルコキシ基であり、PEGは一般式(II):
【0007】
(II) −CO−(CO)
で表され、
【0008】
式中、nは44〜4000である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、単離され実質的に精製されたPEG−酸の純度は95%〜100%の範囲である。別の好ましい実施形態において、PEG−酸は、純度が95%〜100%の範囲の固形である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、単離され実質的に精製されたPEG−ニトリルが提供され、下記の構造:
【0011】
(III) R−PEG−(CH−CN
で表され、
【0012】
式中、kは1〜5であり、Rは水素、ヒドロキシル基、メトキシ基、または他のアルコキシ基であり、PEGは前述の式(II)で表される。
【0013】
好ましい実施形態において、単離され実質的に精製されたPEG−ニトリルの純度は95%〜100%の範囲である。最も好ましい実施形態において、PEG−ニトリルは、純度が95%〜100%の範囲の固形である。
【0014】
本発明の別の態様によれば、単離され実質的に精製された前述の式(I)のPEG−酸を調製する方法が提供され、これには、ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる段階と、続いてPEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させてPEG−ニトリルを形成させる段階とが含まれる。PEG−ニトリルは次にPEG−酸へ加水分解され、生成するPEG−酸は純度が95%〜100%の範囲の固形である。
【0015】
好ましい実施形態において、クロロスルホナートは、塩化メシル、塩化トリフルオロメタンスルホニル(塩化トリフリック)、および塩化トシルから選択される。
【0016】
上記方法の変法において、加水分解の工程はさらに、PEG−ニトリルを無機酸で加水分解してPEG−アミドを形成させる工程と、続いてPEG−アミドをアルカリでもう1回加水分解する工程から成る。好ましい実施形態において、酸は塩酸であり、アルカリは水酸化カリウムである。
【0017】
上記方法の別の実施において、PEG−酸を水透析(water dialysis)により精製するさらなる工程が提供される。
【0018】
上記方法の最も好ましい実施において、ジクロロメタン中に溶解したヒドロキシル−メトキシ−PEGを、トリエチルアミンおよび塩化メシルと共に氷浴中アルゴンガス下で混合する。このようにして得られるメトキシ−PEG−メシラートを次に、ジメチルスルホキシド中に溶解したシアン化カリウムと共にアルゴンガス下で混合し、得られるメトキシ−PEG−ニトリルを、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムで精製する。精製されたメトキシ−PEG−ニトリルを塩酸と反応させてメトキシ−PEG−アミドを得る。このメトキシ−PEG−アミドは水透析により精製される。その後、精製されたメトキシ−PEG−アミドを水酸化カリウムと反応させ、続けて酸性化し、メトキシ−PEG−酸の形成に至る。最後に、メトキシ−PEG−酸を別の水透析プロセスにより精製し、凍結乾燥してメトキシ−PEG−酸の精製固体を得る。
【0019】
本発明のさらなる態様において、ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる段階と、PEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させてPEG−ニトリルを形成させる段階とを含む、単離され実質的に精製された式(III)のPEG−ニトリルを調製する方法が提供される。生成したPEG−ニトリルは、純度が95%〜100%の範囲の固体である。
【0020】
好ましい実施形態において、クロロスルホナートは、塩化メシル、塩化トリフルオロメタンスルホニル(塩化トリフリック)、および塩化トシルから選択される。
【0021】
上記方法の別の実施において、PEG−ニトリルをカラム濾過により精製するさらなる工程が提供される。
【0022】
上記方法の最も好ましい実施において、ジクロロメタン中に溶解したヒドロキシル−メトキシ−PEGを、トリエチルアミンおよび塩化メシルと共に氷浴中アルゴンガス下で混合する。このようにして得られるメトキシ−PEG−メシラートを次に、ジメチルスルホキシド中に溶解したシアン化カリウムと共にアルゴンガス下で混合し、得られるメトキシ−PEG−ニトリルを、まず乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムで精製し、続いて冷却ジエチルエーテル中で沈殿させてメトキシ−PEG−ニトリルの精製固体を得る。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる段階と、PEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させてPEG−ニトリルを形成させる段階と、PEG−ニトリルを加水分解してPEG−酸を形成させる段階と、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)の存在下で、PEG−酸をN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とカップリングさせてPEG−スクシンイミジルエステルを形成させる段階とを伴う、単離され実質的に精製されたPEG−スクシンイミジルエステルの調製方法が提供される。
【0024】
好ましい実施形態において、クロロスルホナートは、塩化メシル、塩化トリフルオロメタンスルホニル(塩化トリフリック)、および塩化トシルから選択される。
【0025】
上記方法の変法において、加水分解の工程は、PEG−ニトリルを無機酸で加水分解してPEG−アミドを形成させる工程と、続いてPEG−アミドをアルカリでもう1回加水分解し、続けて酸性化する工程とを含む。好ましい実施形態において、酸は塩酸であり、アルカリは水酸化カリウムである。
【0026】
上記方法の別の実施において、ジエチルエーテルを用いる沈殿によりPEG−スクシンイミジルエステルを精製するさらなる工程が提供される。この工程において、PEG−スクシンイミジルエステルを冷却エチルエーテル中で粗製混合物から沈殿させ、得られる沈殿物を濾過し、室温にて48時間真空乾燥させる。
【0027】
本発明には多くの利点がある。例えば、精製されたPEG−酸およびPEG−ニトリルは両方とも安定な化合物であり、そのためこれら2つのPEG誘導体を貯蔵するために不活性な環境を必要としない。
【0028】
本発明の別の利点は、精製されたPEG−酸が、タンパク質などの他の生体分子とのin situでのペグ化に容易に適用できることである。したがって、活性化PEG−スクシンイミジルエステルの単離は必要とされない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本明細書および請求項において用いられる「含む」とは、次に続く要素を含むが他のものを排除しないことを意味する。前述のように、ポリ(エチレングリコール)(PEG)は、ポリ(エチエンオキシド)またはポリ(オキシエチレン)と同義であり(両方ともPEOと略される)、エチレンオキシドの繰り返し単位から成る共通の構造(IV)を有するポリマーである。
【0030】
(IV) HO−(CO)−H
【0031】
一般に、用語PEGは様々な文脈において用いることができる。例えば、PEG−酸のような化学名の一部として用いられる場合、PEGは前述の式(II):
【0032】
(II) −CO−(CO)
により示される。
【0033】
一方で、PEG−COOHなどの化学式の一部としては、PEGは(V)の構造:
【0034】
(V) −(C−O)
により示される。
【0035】
PEGのC末端において、官能基または官能基の組合せをそこへ結合させることができ、その結果「キャッピングされたPEG(capped−PEG)」となる。例えば、メトキシ基(CHO−)をPEGのC末端へ付加すると、メトキシ−PEG(mPEG)が形成され、下記の化学式(VI):
【0036】
(VI) CHO−(C−O)−C−OH
によって表される。
【0037】
用語「シアニド」とは、α、β不飽和有機シアニドなどの有機シアニド、ならびにシアン化カリウム(KCN)などの金属シアン化物を指す。本明細書において表される「GMP準拠化学品」は、現行の適正製造基準の指針のもとで調製される化学品に合わせて精製される。「USPグレード化学品」とは、米国薬局方および国民薬品集(2006年)のUSP29−NF24版の対応する試験要求を満たす化学品を指す。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、前述の式(I)により表される、得られた、単離され実質的に精製されたPEG−酸は、GMP準拠およびUSPグレードであり、存在する検出可能な金属が5ppm以下である。PEG−酸の固体は外観上白色である。
【0039】
本発明の別の実施形態において、前述の式(III)で表される、単離され実質的に精製されたPEG−ニトリルは、GMP準拠およびUSPグレードであり、その中に存在する検出可能な金属が5ppm以下である。青白色のPEG−ニトリル固体の融点は49℃〜50.7℃である。
【0040】
本発明は下記の実施例によりさらに明らかにされ、この実施例は本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0041】
実施例1
【0042】
mPEG−メシラートを出発原料として用いるmPEG−ニトリルの調製方法
【0043】
mPEG−メシラートの製造および精製
【0044】
この方法の第1工程において、1gのヒドロキシル−mPEG(平均分子量5000、Fluka)を0.19gの塩化メシル(MsCl、Aldrich)と反応させることにより、mPEG−メシラートが製造される。2mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解したヒドロキシル−mPEGを、最初に0.14mLのトリエチルアミン(分析試薬級 99%以上、Merck)と共に氷浴中アルゴン下で1時間混合および撹拌する。その後、MsClをこの混合物に30分かけてゆっくりと添加し、さらに2時間連続して撹拌する。この混合物を室温でさらに22〜24時間撹拌する。
【0045】
次に、撹拌した混合物を吸引濾過し、沈殿物を捨て、乾燥シリカゲル(10g、70〜120メッシュ)を充填したカラムに濾液を通す。カラム中に保持されているmPEG−メシラートを完全に溶出させるために、約25mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)を濾過カラムに加える。前述の濾過および溶出の工程を、すべての塩化メシル残渣が除去されてしまうまで、少なくとも2回繰り返す。得られるmPEG−メシラート溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、200mLの冷却ジエチルエーテル(分析試薬級 99%以上、Tedia)中でさらに精製する。次に、精製された生成物を濾過し、48時間真空乾燥する。
【0046】
mPEG−ニトリルの製造および精製
【0047】
続いて、約1gの精製されたmPEG−メシラートを、5mLのジメチルスルホキシド(DMSO、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解した0.03gのシアン化カリウム(KCN、Aldrich)と反応させる。反応混合物を32〜35℃の温度で48時間アルゴンガス流下で撹拌し、mPEG−ニトリルを形成させる。次に粗製混合物を、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムに通す。濾液を収集し、次にカラム中に保持されているmPEGニトリルを完全に溶出させるために、DCMをカラム中に加える。メシル酸カリウムなどの不純物がすべて除去されるまで、この濾過プロセスを繰り返す。次に精製されたmPEG−ニトリルの濾液を冷却ジエチルエーテル中で沈殿させ、mPEG−ニトリルの固体生成物を得る。
【0048】
精製したmPEG−ニトリルは、H−NMRによる特性決定を行い、NMRスペクトル(図1a)は2.7ppm(ニトリル基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCN)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0049】
実施例2
【0050】
mPEG−メシラートを出発原料として用いるmPEG−酸の調製方法
【0051】
mPEG−メシラートの製造および精製
【0052】
この方法の第1工程において、1gのヒドロキシル−mPEG(平均分子量5000、Fluka)を0.19gの塩化メシル(MsCl、Aldrich)と反応させることにより、mPEG−メシラートが製造される。2mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解したヒドロキシル−mPEGを、最初に0.14mLのトリエチルアミン(分析試薬級 99%以上、Merck)と共に氷浴中アルゴン下で1時間混合および撹拌する。その後、MsClをこの混合物に30分かけてゆっくりと添加し、さらに2時間連続して撹拌する。この混合物を室温でさらに22〜24時間撹拌する。
【0053】
次に、撹拌した混合物を吸引濾過し、沈殿物を捨て、乾燥シリカゲル(10g、70〜120メッシュ)を充填したカラムに濾液を通す。カラム中に保持されているmPEG−メシラートを完全に溶出させるために、約25mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)を濾過カラムに加える。前述の濾過および溶出の工程を、すべての塩化メシル残渣が除去されてしまうまで、少なくとも2回繰り返す。得られるmPEG−メシラート溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、200mLの冷却ジエチルエーテル(分析試薬級 99%以上、Tedia)中でさらに精製する。次に、精製された生成物を濾過し、48時間真空乾燥する。
【0054】
mPEG−ニトリルの製造および精製
【0055】
続いて、約1gの精製されたmPEG−メシラートを、5mLのジメチルスルホキシド(DMSO、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解した0.03gのシアン化カリウム(KCN、Aldrich)と反応させる。反応混合物を32〜35℃の温度で48時間アルゴンガス流下で撹拌し、mPEG−ニトリルを形成させる。次に粗製混合物を、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムに通す。濾液を収集し、次にカラム中に保持されているmPEGニトリルを完全に溶出させるために、DCMをカラム中に加える。メシル酸カリウムなどの不純物がすべて除去されるまで、この濾過プロセスを繰り返す。次に精製されたmPEG−ニトリルの濾液を冷却ジエチルエーテル中で沈殿させ、mPEG−ニトリルの固体生成物を得る。
【0056】
精製したmPEG−ニトリルは、H−NMRによる特性決定を行い、NMRスペクトル(図1a)は2.7ppm(ニトリル基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCN)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0057】
mPEG−アミドの製造および精製
【0058】
次の工程において、1gの精製したmPEG−ニトリルを4mLの塩酸(HCl、12M、BDH Company)により加水分解してmPEG−アミドを形成させる。この酸加水分解反応は、米国特許第5,672,662号およびSedaghat−HeratiらによるPolymer Bulletin,43,35−41(1999)において過去に開示されており、その中で、最初にmPEG−ニトリルを室温で44時間撹拌しながら濃HClに溶解させ、続いて3.5gの水酸化カリウム(KOH、BDH Company)のペレットを、氷浴下で撹拌混合物に添加する。その結果、得られる溶液のpHはHCl(2〜6M)を用いて3〜4に調整される。上記の反応において、生成する塩化カリウム(KCl)を、透析により(1000カットオフ膜)室温で3日間かけて、毎日水を交換しながら除去する。KClの除去の完了は、透析した水の伝導度が透析に用いられる水の伝導度と等しくなることにより分かる。KClの除去であるにもかかわらず、透析のプロセスはmPEG−アミドを精製するのにも役立つ。
【0059】
mPEG−酸の製造および精製
【0060】
次に精製したmPEG−アミドは、撹拌下室温で72時間、1.7gのKOHペレットによりもう1回加水分解を受け、mPEG−酸の対応するカルボン酸塩を形成する。その後、HCl(2〜6M)を氷浴中の混合物に添加し、その結果得られるpHを3〜4に戻すように調整する。前述のmPEG−アミド合成と類似して、生成する塩化カリウム(KCl)塩および塩化アンモニウム(NHCl)塩を除去するために透析プロセスが利用され、このプロセスにおいて、氷冷した混合物を室温にて3日間、毎日水を交換しながら透析する(1000カットオフ膜)。透析した水の伝導度が透析に用いられる水の伝導度と一致すると、塩の除去は完了する。得られる精製mPEG−酸を次に3日間凍結乾燥し、mPEG−酸の精製固体を得る。
【0061】
精製したmPEG−酸をH−NMR分光法により同定し、NMRスペクトル(図2a)は2.4ppm(酸性基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCOOH)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0062】
実施例3
【0063】
mPEG−メシラートを出発原料として用いるmPEGスクシンイミジルプロピオン酸エステル(mPEG−SPA)の調製方法
【0064】
mPEG−メシラートの製造および精製
【0065】
この方法の第1工程において、1gのヒドロキシル−mPEG(平均分子量5000、Fluka)を0.19gの塩化メシル(MsCl、Aldrich)と反応させることにより、mPEG−メシラートが製造される。2mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解したヒドロキシル−mPEGを、最初に0.14mLのトリエチルアミン(分析試薬級 99%以上、Merck)と共に氷浴中アルゴン下で1時間混合および撹拌する。その後、MsClをこの混合物に30分かけてゆっくりと添加し、さらに2時間連続して撹拌する。この混合物を室温でさらに22〜24時間撹拌する。
【0066】
次に、撹拌した混合物を吸引濾過し、沈殿物を捨て、乾燥シリカゲル(10g、70〜120メッシュ)を充填したカラムに濾液を通す。カラム中に保持されているmPEG−メシラートを完全に溶出させるために、約25mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)を濾過カラムに加える。前述の濾過および溶出の工程を、すべての塩化メシル残渣が除去されてしまうまで、少なくとも2回繰り返す。得られるmPEG−メシラート溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、200mLの冷却ジエチルエーテル(分析試薬級 99%以上、Tedia)中でさらに精製する。次に、精製された生成物を濾過し、48時間真空乾燥する。
【0067】
mPEG−ニトリルの製造および精製
【0068】
続いて、約1gの精製されたmPEG−メシラートを、5mLのジメチルスルホキシド(DMSO、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解した0.03gのシアン化カリウム(KCN、Aldrich)と反応させる。反応混合物を32〜35℃の温度で48時間アルゴンガス流下で撹拌し、mPEG−ニトリルを形成させる。次に粗製混合物を、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムに通す。濾液を収集し、次にカラム中に保持されているmPEGニトリルを完全に溶出させるために、DCMをカラム中に加える。メシル酸カリウムなどの不純物がすべて除去されるまで、この濾過プロセスを繰り返す。次に精製されたmPEG−ニトリルの濾液を冷却ジエチルエーテル中で沈殿させ、mPEG−ニトリルの固体生成物を得る。
【0069】
精製したmPEG−ニトリルは、H−NMRによる特性決定を行い、NMRスペクトル(図1a)は2.7ppm(ニトリル基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCN)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0070】
mPEG−アミドの製造および精製
【0071】
次の工程において、1gの精製したmPEG−ニトリルを4〜5mLの塩酸(HCl、12M、BDH Company)により加水分解してmPEG−アミドを形成させる。この酸加水分解反応は、米国特許第5,672,662号およびSedaghat−HeratiらによるPolymer Bulletin,43,35−41(1999)において過去に開示されており、その中で、最初にmPEG−ニトリルを室温で44時間撹拌しながら濃HClに溶解させ、続いて3.5gの水酸化カリウム(KOH、BDH Company)のペレットを、氷浴下で撹拌混合物に添加する。その結果、得られる溶液のpHはHCl(2〜6M)を用いて3〜4に調整される。上記の反応において、生成する塩化カリウム(KCl)を、透析により(1000カットオフ膜)室温で3日間かけて、毎日水を交換しながら除去する。KClの除去の完了は、透析した水の伝導度が透析に用いられる水の伝導度と等しくなることにより分かる。KClの除去であるにもかかわらず、透析のプロセスはmPEG−アミドを精製するのにも役立つ。
【0072】
mPEG−酸の製造および精製
【0073】
次に精製したmPEG−アミドは、撹拌下室温で72時間、1.7gのKOHペレットによりもう1回加水分解を受け、mPEG−酸の対応するカルボン酸塩を形成する。その後、HCl(2〜6M)を氷浴中の混合物に添加し、その結果得られるpHを3〜4に戻すように調整する。前述のmPEG−アミド合成と類似して、生成する塩化カリウム(KCl)塩および塩化アンモニウム(NHCl)塩を除去するために透析プロセスが利用され、このプロセスにおいて、氷冷した混合物を室温にて3日間、毎日水を交換しながら透析する(1000カットオフ膜)。透析した水の伝導度が透析に用いられる水の伝導度と一致すると、塩の除去は完了する。得られる精製mPEG−酸を次に3日間凍結乾燥し、mPEG−酸の精製固体を得る。
【0074】
精製したmPEG−酸をH−NMR分光法により同定し、NMRスペクトル(図2a)は2.43ppm(酸性基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCOOH)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0075】
mPEG−SPAの製造および精製
【0076】
最終工程において、0.06gのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、Aldrich)を、1gの精製mPEG−酸および7mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)の混合物に添加し、反応混合物を0℃の低温に保つ。0.5mLのDCM中の0.1gの1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、Aldrich)をゆっくり添加し、混合物を室温で24時間アルゴン下で撹拌する。得られる溶液を吸引濾過するとすぐ、濾液を冷却ジエチルエーテルにより沈殿させ、得られる沈殿物を濾過し室温で48時間真空乾燥する。mPEG−SPAの最終生成物を、アルミホイル中でおよそ−20℃で貯蔵する。
【0077】
実施例4
【0078】
mPEG−トシラートを出発原料として用いるmPEGスクシンイミジルプロピオン酸エステル(mPEG−SPA)の調製方法
【0079】
mPEG−トシラートの製造および精製
【0080】
この方法の第1工程において、1gのヒドロキシル−mPEG(平均分子量5000、Fluka)を0.19gの塩化トシル(TsCl、Aldrich)と反応させることにより、mPEG−トシラートが製造される。2mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解したヒドロキシル−mPEGを、最初に0.14mLのトリエチルアミン(分析試薬級 99%以上、Merck)と共に氷浴中アルゴン下で1時間混合および撹拌する。その後、TsClをこの混合物に30分かけてゆっくりと添加し、さらに2時間連続して撹拌する。この混合物を室温でさらに22〜24時間撹拌する。
【0081】
次に、撹拌した混合物を吸引濾過し、沈殿物を捨て、乾燥シリカゲル(10g、70〜120メッシュ)を充填したカラムに濾液を通す。カラム中に保持されているmPEG−トシラートを完全に溶出させるために、約25mLのDCMを濾過カラムに加える。前述の濾過および溶出の工程を、すべての塩化トシル残渣が除去されてしまうまで、少なくとも2回繰り返す。得られるmPEG−トシラート溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、200mLの冷却ジエチルエーテル(分析試薬等級 99%以上、Tedia)中でさらに精製する。次に、精製された生成物を濾過し、48時間真空乾燥する。
【0082】
mPEG−ニトリルの製造および精製
【0083】
続いて、約1gの精製されたmPEG−トシラートを、4〜5mLのジメチルスルホキシド(DMSO、分析試薬級 99%以上、Tedia)に溶解した0.03gのシアン化カリウム(KCN、Aldrich)と反応させる。反応混合物を32〜35℃の温度で48時間アルゴンガス流下で撹拌し、mPEG−ニトリルを形成させる。次に粗製混合物を、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムに通す。濾液を収集し、次にカラム中に保持されているmPEGニトリルを完全に溶出させるために、ベンゼンをカラム中に加える。メシル酸カリウムなどの不純物がすべて除去されるまで、この濾過プロセスを繰り返す。次に精製されたmPEG−ニトリルの濾液を冷却ジエチルエーテル中で沈殿させ、mPEG−ニトリルの固体生成物を得る。
【0084】
精製したmPEG−ニトリルは、H−NMRによる特性決定を行い、NMRスペクトル(図1a)は2.7ppm(ニトリル基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCN)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0085】
mPEG−アミドの製造および精製
【0086】
次の工程において、1gの精製したmPEG−ニトリルを4〜5mLの塩酸(HCl、12M、BDH Company)により加水分解してmPEG−アミドを形成させる。この酸加水分解反応は、米国特許第5,672,662号およびSedaghat−HeratiらによるPolymer Bulletin,43,35−41(1999)において過去に開示されており、その中で、最初にmPEG−ニトリルを室温で44時間撹拌しながら濃HClに溶解させ、続いて3.5gの水酸化カリウム(KOH、BDH Company)のペレットを、氷浴下で撹拌混合物に添加する。その結果、得られる溶液のpHはHCl(2〜6M)を用いて3〜4に調整される。上記の反応において、生成する塩化カリウム(KCl)を、透析により(1000カットオフ膜)室温で3日間かけて、毎日水を交換しながら除去する。KClの除去の完了は、透析した水の伝導度が透析に用いられる水の伝導度と等しくなることにより分かる。KClの除去であるにもかかわらず、透析のプロセスはmPEG−アミドを精製するのにも役立つ。
【0087】
mPEG−酸の製造および精製
【0088】
次に精製したmPEG−アミドは、撹拌下室温で72時間、1.7gのKOHペレットによりもう1回加水分解を受け、mPEG−酸の対応するカルボン酸塩を形成する。その後、HCl(2〜6M)を氷浴中の混合物に添加し、その結果得られるpHを3〜4に戻すように調整する。前述のmPEG−アミド合成と類似して、生成する塩化カリウム(KCl)塩および塩化アンモニウム(NHCl)塩を除去するために透析プロセスが利用され、このプロセスにおいて、氷冷した混合物を室温にて3日間、毎日水を交換しながら透析する(1000カットオフ膜)。透析した水の伝導度が透析に用いられる水の伝導度と一致すると、塩の除去は完了する。得られる精製mPEG−酸を次に3日間凍結乾燥し、mPEG−酸の精製固体を得る。
【0089】
精製したmPEG−酸をH−NMR分光法により同定し、NMRスペクトル(図2a)は2.4ppm(酸性基に隣接するプロトンに相当、−OCHCHCOOH)、3.24ppm(メトキシ基に相当、CHO−)、および3.51ppm(ポリマー骨格に相当)においてピークを示す。さらに置換度はNMR分光法により約95%〜100%と決定される。
【0090】
mPEG−SPAの製造および精製
【0091】
最終工程において、0.06gのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、Aldrich)を、1gの精製mPEG−酸および7mLのジクロロメタン(DCM、分析試薬級 99%以上、Tedia)の混合物に添加し、反応混合物を0℃の低温に保つ。0.5mLのDCM中の0.1gの1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、Aldrich)をゆっくり添加し、混合物を室温で24時間アルゴン下で撹拌する。得られる溶液を吸引濾過するとすぐ、濾液を冷却ジエチルエーテルにより沈殿させ、得られる沈殿物を濾過し室温で48時間真空乾燥する。mPEG−SPAの最終生成物を、アルミホイル中でおよそ−20℃で貯蔵する。
【0092】
本発明の好ましい実施形態はこのように完全に説明される。この説明は特定の実施形態に言及しているが、本発明がこれらの具体的な詳細を変更して実施しうることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は本明細書において明記される実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【0093】
例えば、ヒドロキシル−PEGから得られるスルホナートエステルは、第1の置換反応において良好な脱離基として用いられるが、この反応は求核置換であるため、ヒドロキシル官能基をヒドロキシル−PEGから置換することのできるハロゲン化物などのいずれの脱離基も適用することができる。シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムなどの金属シアン化物はPEG−ニトリルの製造に関与するが、PEG−ニトリルは、α,β−不飽和有機シアン化物を用いてヒドロキシル−PEGから直接合成することができ、そのためこの合成経路は代替として用いることができる。PEG−酸またはPEG−ニトリルの精製において、酸化アルミニウムを充填したカラムなどの他の精製カラムもまた利用することができる。
【0094】
さらに、mPEG−メシラートまたはmPEG−トシラートの精製における溶出剤としてのジクロロメタンの代替として、ベンゼンを使用することができる。また、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)を、mPEG−酸からのmPEG−SPAの製造の最終工程において、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の代替として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】mPEG−ニトリルを他のmPEG−生成物と識別するH−NMRスペクトルの図である。
【図2】mPEG−プロピオン酸を他のmPEG−生成物と識別するH−NMRスペクトルの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(I) R−PEG−(CH−COOH
[式中:
kは1〜5であり、
Rは水素、ヒドロキシル基、メトキシ基、および他のアルコキシ基から成る群より選択され、
PEGは一般式(II):
(II) −CO−(CO)
(式中、nは44ないし4000の数を意味する)
で示される]
で示される、単離かつ実質的に精製されたPEG−酸。
【請求項2】
その純度が95%〜100%の範囲である、請求項1記載の単離かつ実質的に精製されたPEG−酸。
【請求項3】
純度が95%〜100%の範囲にある固体である、請求項1記載の単離かつ実質的に精製されたPEG−酸。
【請求項4】
式(III):
(III) R−PEG−(CH−CN
[式中:
kは1〜5であり、
Rは水素、ヒドロキシル基、メトキシ基、および他のアルコキシ基から成る群より選択され、
PEGは前記一般式(II)で表される]
で示される、単離かつ実質的に精製されたPEG−ニトリル。
【請求項5】
その純度が95%〜100%の範囲である、請求項4記載の、単離かつ実質的に精製されたPEG−ニトリル。
【請求項6】
純度が95%〜100%の範囲にある固体である、請求項4記載の、単離かつ実質的に精製されたPEG−ニトリル。
【請求項7】
a)ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる工程と、
b)該PEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させてPEG−ニトリルを形成させる工程と、
c)該PEG−ニトリルを該PEG−酸へ加水分解する工程と
を含み、該PEG−酸が該式(I)で表され、該PEGが該一般式(II)で表される、単離かつ実質的に精製されたPEG−酸の調製方法。
【請求項8】
調製されたPEG−酸が95%ないし100%の範囲の純度を有する固体である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程(a)における該クロロスルホナートが塩化メシルである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
工程(a)における該クロロスルホナートが塩化トシルである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
該工程(c)が
d)該PEG−ニトリルを無機酸で加水分解してPEG−アミドを形成させる工程と、
e)該PEG−アミドをアルカリで加水分解し、続いて無機酸で酸性化して該PEG−酸を形成させる工程と
をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項12】
工程(d)および(e)における該無機酸が塩酸であり、工程(e)における該アルカリが水酸化カリウムである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該PEG−酸を水透析により精製する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項14】
a)ジクロロメタンに溶解したヒドロキシル−メトキシ−PEGを、トリエチルアミンおよび塩化メシルと共に氷浴中アルゴンガス下で混合してメトキシ−PEG−メシラートを得る工程と、
b)ジメチルスルホキシドに溶解したシアン化カリウムを、該メトキシ−PEG−メシラートと共にアルゴンガス下で混合してメトキシ−PEG−ニトリルを得、該メトキシ−PEG−ニトリルを乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムで精製する工程と、
c)該精製されたメトキシ−PEG−ニトリルを塩酸と反応させてメトキシ−PEG−アミドを得、該メトキシ−PEG−アミドを水透析により精製する工程と、
d)該精製されたメトキシ−PEG−アミドを水酸化カリウムと反応させ、続いて塩酸により酸性化してメトキシ−PEG−酸を得る工程と、
e)該メトキシ−PEG−酸を水透析により精製する工程と、
f)該精製されたメトキシ−PEG−酸を凍結乾燥してその精製されたメトキシ−PEG−酸の固体を得る工程と
を含む、請求項7記載の方法。
【請求項15】
a)ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる工程と、
b)該PEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させて該PEG−ニトリルを形成させる工程と
を含み、そのPEG−ニトリルが該式(III)で表され、該PEGが該一般式(II)で表される、単離かつ実質的に精製されたPEG−ニトリルの調製方法。
【請求項16】
調製されたPEG−ニトリルが95%〜100%の範囲の純度を有する固体である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
工程(a)における該クロロスルホナートが塩化メシルである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
工程(a)における該クロロスルホナートが塩化トシルである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
該PEG−ニトリルをカラム濾過により精製する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項20】
a)ジクロロメタンに溶解したヒドロキシル−メトキシ−PEGを、トリエチルアミンおよび塩化メシルと共に氷浴中アルゴンガス下で混合してメトキシ−PEG−メシラートを得る工程と、
b)ジメチルスルホキシドに溶解したシアン化カリウムを、該メトキシ−PEG−メシラートと共にアルゴンガス下で混合してメトキシ−PEG−ニトリルを得る工程と、
c)該メトキシ−PEG−ニトリルを、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムで精製する工程と、
d)その精製されたメトキシ−PEG−ニトリルを冷却ジエチルエーテル中で沈殿させてその精製されたメトキシ−PEG−ニトリルの固体を得る工程と
を含む、請求項15記載の方法。
【請求項21】
a)ヒドロキシル−PEGをクロロスルホナートと反応させてPEG−スルホナートエステルを形成させる工程と、
b)該PEG−スルホナートエステルを金属シアン化物と反応させてPEG−ニトリルを形成させる工程と、
c)該PEG−ニトリルを該PEG−酸へ加水分解する工程と、
d)ジクロロメタンの存在下で、該PEG−酸をN−ヒドロキシスクシンイミドおよび1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させて、PEG−SPAを形成させる工程と
を含み、該PEGが該一般式(II)で表されるところの、
単離かつ実質的に精製されたPEGスクシンイミジルプロピオン酸エステル(PEG−SPA)の調製方法。
【請求項22】
工程(a)における該クロロスルホナートが塩化メシルである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
工程(a)における該クロロスルホナートが塩化トシルである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
該工程(c)が、
e)該PEG−ニトリルを無機酸で加水分解してPEG−アミドを形成させる工程と、 f)該PEG−アミドをアルカリで加水分解し、続いて無機酸で酸性化して該PEG−酸を形成させる工程と
をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
工程(d)および(e)における該無機酸が塩酸であり、工程(e)における該アルカリが水酸化カリウムである、請求項21記載の方法。
【請求項26】
該PEG−酸を水透析により精製する工程をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項27】
a)ジクロロメタンに溶解したヒドロキシル−メトキシ−PEGを、トリエチルアミンおよび塩化トシルと共に氷浴中アルゴンガス下で混合してメトキシ−PEG−メシラートを得る工程と、
b)ジメチルスルホキシドに溶解したシアン化カリウムを、該メトキシ−PEG−メシラートとアルゴンガス下で混合してメトキシ−PEG−ニトリルを得る工程と、
c)該メトキシ−PEG−ニトリルを、乾燥シリカゲルを充填した濾過カラムで精製する工程と、
d)該精製されたメトキシ−PEG−ニトリルを塩酸と反応させて、メトキシ−PEG−アミドを得る工程と、
e)該メトキシ−PEG−アミドを水透析により精製する工程と、
f)該精製されたメトキシ−PEG−アミドを水酸化カリウムと反応させ、続いて塩酸で酸性化してメトキシ−PEG−酸を得る工程と、
g)該メトキシ−PEG−酸を水透析により精製する工程と、
h)ジクロロメタンの存在下で、該精製されたメトキシ−PEG−酸をN−ヒドロキシスクシンイミドおよび1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと混合し、それらの混合物を0℃に維持する工程と、
i)ジクロロメタンの存在下、アルゴンガスの下で、工程(h)で得られる該冷却混合物を1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させてメトキシ−PEG−SPAを得る工程と、
j)該メトキシ−PEG−SPAを濾過カラムにより精製する工程と、
k)該精製されたメトキシ−PEG−SPAを冷却ジエチルエーテル中で沈殿させてその精製されたメトキシ−PEG−SPAの固体を得る工程と
を含む、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−308690(P2008−308690A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−155559(P2008−155559)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(508179442)バイオ−キャンサー・トリートメント・インターナショナル・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Bio−Cancer Treatment International Ltd
【Fターム(参考)】