説明

ポンプのインペラを格納する方法および拡張可能ポンプを圧縮する方法

【課題】経皮的挿入によって移植され、持続的血流量をもたらすポンピング装置を提供する。
【解決手段】ポンプのインペラ605を格納する方法において、ハブおよび1つ以上のブレードを有する拡張可能インペラと、メッシュ631を備えた拡張可能部分を有するカニューレとを備えるポンプを設け、前記ブレードを、展開形態から圧縮形態まで圧縮し、前記ブレードの遠位端は前記ハブに接近し、前記ブレードを、前記カニューレの一部分内において前記圧縮形態で保持することを含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2006年3月23に出願された米国仮特許出願第60/785,299号および2006年3月23日に出願された米国仮特許出願第60/785,531号の出願日の利得を主張し、これらの開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。さらに、2004年9月17日に出願された米国仮特許出願第60/610,938号および2005年9月15日に出願された米国特許出願第11/227,277号の開示内容の全体も、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、流体ポンピングインペラに関し、より詳細には、拡張可能な流体ポンピングインペラに関する。さらに詳細には、本発明は、心臓疾患の治療用の拡張可能インペラを有する左心室補助装置または右心室補助装置のような血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓疾患は、主要な社会問題であり、毎年、多数の生命を奪っている。心臓発作の後、調合薬のような薬を用いて非侵襲的に順調に治療されるのは、わずかな数の患者にすぎない。しかし、心臓機能に十分な機械的補助をもたらすことによって、心原性ショックを患う患者をも含む患者の大半が、心臓発作から回復する可能性がある。
【0004】
従来の手法では、心臓の機能を補助するために、不変の断面積を有する血液ポンプが心臓の左心室および大動脈弓内に外科的に挿入されている。この場合、血液ポンプを外科的に留置する必要がある。その理由は、十分な血流を維持するのに必要な大きさのポンプを経皮的に挿入するのは、現状では実際的ではなく、または不可能であるからである。外科的に挿入されるポンプの目的は、ある期間にわたって、例えば、一週間にも及ぶ長期にわたって、心筋への負荷を低減させ、これによって、罹患した心筋を安静モードで治癒しながら回復させることを可能にすることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、心臓麻痺の場合、外科的な挿入によって、さらに深刻な圧迫を生じる可能性がある。従って、左心室補助装置(LVAD)を経皮的に挿入することが望ましい。しかし、従来の断面直径が不変のこのようなLVADは、左心室内に配置されるために経由しなければならない脚の大腿動脈内を通過することができない。このような不変直径型LVADの最大直径は、経皮的挿入を実際に達成させるのに、略4mmに制限されねばならないだろう。これによって、ポンピングされる最大血流量は、略2L(リットル)/分、すなわち、多くの場合に所望される持続的血流値の略半分に制限されるだろう。ポンピング率は、装置の直径、特に、インペラの直径を増大させることによって、大きくすることができるが、大腿動脈の大きさが、経皮的挿入の制限因子になる。従って、経皮的挿入によって移植され、さらに従来の外科的に移植されるポンプがもたらす持続的血流量をもたらすポンピング装置が、緊急的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、LVADまたは右心室補助装置(RVAD)として、または患者の体内に挿入された後その場で拡張可能である血液ポンプから利得が得られる他の状況に、用いられるとよい。血液ポンプは、オペレータの判断でインペラの圧縮および拡張を可能とするインペラ設計を有している。この圧縮/拡張の特徴によって、拡張によるインペラ寸法の増
大によって血液ポンプを通る血流を増大させることができ、これによって、心筋に著しい負担を掛けることなく、人命を持続することができる血流をもたらすことが可能となる。得られる血流は、典型的には、少なくとも4L/分の血液、すなわち、通常、人命を持続するのに十分な血流である。
【0007】
血液ポンプをRVADとして用いる場合と血液ポンプをRVADと対照的なLVADとして用いる場合との違いは、患者内におけるポンプの位置およびポンプを通る血液の流れ方向である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】3列のブレード(3つのブレード列)を有するインペラの実施形態の端面図である。
【図1B】図1Aのインペラの斜視図である。
【図2A】展開形態にある本発明によるインペラの実施形態の極めて概略的な側面図である。
【図2B】格納形態にある図2Aのインペラの極めて概略的な側面図である。図2Aのインペラの展開を概略的に示す極めて概略的な側面図である。
【図3】図2Aのインペラの展開を概略的に説明するための極めて概略的な側面図である。
【図4A】小翼の実施形態を有するブレードの部分の拡大斜視図である。
【図4B】導管の一部内にある図4Aのブレードの断面図である。
【図5A】例示的な小翼形態を有するブレードの断面図である。
【図5B】例示的な小翼形態を有するブレードの断面図である。
【図5C】例示的な小翼形態を有するブレードの断面図である。
【図5D】例示的な小翼縁形状の断面図である。
【図6A】考えられる小翼形態をさらに示すインペラブレードの端面図である。
【図6B】考えられる小翼形態をさらに示すインペラブレードの端面図である。
【図6C】考えられる小翼形態をさらに示すインペラブレードの端面図である。
【図6D】考えられる小翼形態をさらに示すインペラブレードの端面図である。
【図7A】ブレードの近位端を包囲するようにハブに形成された凹みを有する本発明によるインペラの一部の拡大斜視図である。
【図7B】図7Aに示されるインペラの一部の断面図である。
【図8】インペラブレードを形成するのに用いられるポリウレタン材料の応力―歪グラフである。
【図9A】格納ハウジング内における格納形態にあるインペラの実施形態の斜視図である。
【図9B】格納ハウジングから外に出た後の図9Aのインペラの斜視図である。
【図10】インペラの実施形態の展開形態と運転形態を重ね合わせて示す斜視図である。
【図11】正規化された平均流体せん断応力を正規化された体積流量の関数として示すグラフである。
【図12】正規化された平均流体せん断応力を先端間隙の大きさの関数として示すグラフである。
【図13】本発明によるインペラの他の実施形態の側面図である。
【図14】本発明による血液ポンプの斜視図である。
【図15A】図14の血液ポンプのインペラ部分の側面図である。
【図15B】図14の血液ポンプのインペラが内部で運転するカニューレの側面図である。
【図15C】図14の血液ポンプと共に用いられる保持シースの部分縦断面図である。
【図16】種々のメッシュ設計の極めて概略的な側面図である。
【図17】展開形態にある図14に示されるカニューレの拡張可能部分の斜視図である。
【図18】六角形状のメッシュを有する拡張したカニューレの放出端または近位端の拡大斜視図である。
【図19】遠位先端を有するガイドワイヤを示す、拡張したカニューレの入口端または遠位端の拡大斜視図である。
【図20】拡張器をなすカニューレの遠位端の代替的実施形態の拡大縦断面図である。
【図21A】格納形態にあるカニューレの拡張可能部分の側面図である。
【図21B】展開形態のそれぞれにあるカニューレの拡張可能部分の側面図である。
【図22A】システム部品を示す、展開形態にある本発明の血液ポンプの極めて概略的な長手方向図である。
【図22B】システム部品を示す、格納形態にある本発明の血液ポンプの極めて概略的な長手方向図である。
【図23A】展開形態にある図14の血液ポンプの縦断面図である。
【図23B】引っ込められた位置にある図14の血液ポンプの縦断面図である。
【図23C】図14の血液ポンプのインペラが内部で運転するカニューレの側面図である。
【図24】展開形態にある血液ポンプの代替的実施形態の縦断面図である。
【図25】本発明の予装填されたシースの実施形態の一部を断面で示す側面図である。
【図26】患者内における血液ポンプの展開を示す極めて概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態によるインペラは、ハブおよびハブによって支持された少なくとも
1つのブレードを備えている。インペラは、ブレードがハブから離れて拡張する展開形態、およびインペラが、例えば、ブレードをハブの方に折り畳むことによって、半径方向に圧縮される格納形態を有しているとよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、ブレードの外縁は、小翼を有していてもよい。また、ブレードの折畳みを容易にし、および/またはインペラの回転によって生じる流体流のせん断応力を低減させるために、インペラは、ブレード根元の近傍に溝または凹みを有していてもよい。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、半径方向に圧縮されない略一定形態を保持するインペラを備えていてもよい。本発明によるインペラは、改良された血液ポンプを含む種々の用途に使用可能である。
【0012】
ブレード列
本発明の実施形態によるインペラは、インペラハブに沿って位置する1つまたは複数のブレード列に配置され得る複数のブレードを備えているとよい。図1Aおよび図1Bは、それぞれ、インペラ100の端面図および側面図を示している。インペラは、ハブ10および3つのブレード列に配置された複数のブレード12を備えている。第1のブレード列は、ブレード102,104を備え、第2のブレード列は、ブレード106,108を備え、第3のブレード列は、ブレード110,112を備えている。
【0013】
複数のブレード列を設けることによって、ハブに沿って同様の距離にわたって延在する単一の螺旋ブレードを折畳む困難さと比較して、ブレードを格納形態に折り畳むのが容易になる。各ブレード列は、同数のブレード、例えば、1〜3個のブレードを備えていると
よい。代替的に、各ブレード列におけるブレードの数は、異なっていてもよい。3つ以上のブレード列が設けられる実施形態では、少なくとも1つのブレード列におけるブレードの数は、他のブレード列におけるブレードの数と異なっていてもよい。複数のブレード列を設けることによって、インペラを半径方向に圧縮して格納形態を得るのを可能にする共に、単一ブレード列におけるよりも大きい流体ヘッド上昇値、すなわち、流体圧力上昇値を達成するのが容易になる。
【0014】
インペラを設計する1つの手法として、中心ハブの周囲に巻き付く程度が著しく大きい長い螺旋ブレードを有するインペラを設ける方法が挙げられる。しかし、長い螺旋ブレードの三次元形状によって、破断することなくまたは半永久的に変形することなく折畳まれる程度が制限される。単一の螺旋ブレードをブレード列に配置された複数(2つ、3つ、または可能であれば4つ以上)の個々のブレードに分割することによって、各列におけるブレードは、ハブの周囲に巻き付く程度が小さくなる。従って、個々のブレードは、格納プロセス中の変形を容易にする本質的に二次元の形状を有することが可能となる。2つ以上のブレードの組合せは、同様の軸方向長さを有する単一の螺旋ブレードにおけるのと同じ流れおよび圧力をもたらすことが可能である。例えば、個々のブレードは、約0.5〜1.5の範囲内の高さ/翼弦長さ比を有していてもよく、このようなより容易に折畳まれる複数のブレードは、組み合わさって、より長い蛇行ブレードにおけるのと同様の液圧効率をもたらすことが可能となる。さらに、血液ポンピング用途では、長い蛇行ブレードを用いると、血栓症をもたらす分流が生じるが、このような分流は、複数のブレード列を用いることによって、回避可能となる。
【0015】
このように、本発明のいくつかの実施形態によるインペラは、連続的に長く延びる螺旋ブレードではなく、複数の個別のブレード組を有しているとよい。連続的に長く延びる螺旋ブレードは、ハブに対して折り畳むのが困難であるが、長いブレードを2つ以上の短い部分に分割することによって、ブレードをより容易に円筒状の容積部または空間内に折り畳み、次いで、必要に応じて、展開することができる。
【0016】
本発明によるインペラは、第1の列において、ハブの周囲に配置された少なくとも2つのブレードを備えていてもよい。これらの少なくとも2つのブレードは、ハブの周囲に互いに略360/N°離間して配置されるとよく、Nは、第1のブレード列におけるブレードの全数を表している。代替的に、インペラは、少なくとも2つのブレード列に配置された複数のブレードを備え、各ブレード列が、少なくとも2つのブレードを備えていてもよい。ここで、第1のブレード列における少なくとも2つのブレードは、ハブの周囲に互いに360/N°離間して配置され、第2のブレード列における少なくとも2つのブレードは、ハブの周囲に互いに360/N°離間して配置されるとよく、Nは、第1のブレード列内のブレードの全数を表し、Nは、第2のブレード列内のブレードの全数を表している。N,Nは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1のブレード列および第2のブレード列は、互いに360/2N°だけ周方向にずれているとよい。
【0017】
好ましくは、ブレード列の数は、2つまたは3つである。ブレード列は、軸方向に互いに入り込んで(軸方向に重ねて)配置されてもよく、これによって、性能を高めることができる。しかし、この場合、格納形態にあるインペラの直径が大きくなることがある。ブレードは、軸方向に入り込んで配置されると、格納形態において互いに重なって折り畳まれるので、インペラの格納直径が増大する傾向にある。
【0018】
例えば、血液ポンピング用途に用いられるインペラの格納直径を可能な限り小さくするために、ブレード列は、好ましくは、ハブに沿って、互いに近接するが、軸方向に入り込むことなく、離間して配置されている。例えば、ブレード列間の間隔は、ハブ軸に沿った各ブレード列の軸方向長さよりも短いとよい。ブレード列の間隔が大きいと、せん断伴流
がブレード列間において減衰するが、インペラが長くなり、これによって、インペラを湾曲した経路、例えば、血管に沿って患者内の所望の位置に移動させるのが、より困難になる。
【0019】
また、ブレード列は、互いに角度をずらして配置されてもよい。角度ずれ(clocking)は、各ブレード列の対応するブレード間の角変位であり、特に、1つの列におけるブレードの後縁と次の列における対応するブレードの前縁との間の角変位である。例えば、インペラは、少なくとも第1のブレード列および第2のブレード列を有し、第1のブレード列および第2のブレード列は、同数のブレードを備えているとよい。この場合、第1のブレード列のブレードは、第2のブレード列の対応するブレードに対して角度をずらして配置されるとよい。血管ポンピング用途では、角度ずれは、血栓症を低減させるように調整されてもよい。ブレードは、後続ブレードの前縁が先行ブレードによって生じる伴流内に位置しないように、角度をずらして配置されてもよく、この角度ずれは、時計方向の角度ずれでもよいし、反時計方向の角度ずれでもよい。ブレード列は、後続ブレードの全体が先行ブレードの境界層または伴流に位置することになる直列配置されたブレードによる影響を避けるために、互いに対して角度をずらして配置されるとよく、これによって、せん断応力を低減させることが可能となる。
【0020】
他のブレードパラメータ
ブレードのリーン(lean)、すなわち、傾きの程度は、ブレードの剛性に従って調整されるとよい。ブレードのリーンは、約30°から約60°の間の(正圧面に向かう)前方リーンであるとよい。前方リーンブレードは、先端における流体の流入角を大きくするように変形し、これによって、ブレードへの負荷を大きくする傾向にある。従来の推進器は、構造的変形によってブレード先端の負荷をなくす傾向にある後方リーンブレードを用いている。従って、前方リーンの使用は、独特なものである。柔軟ブレードの前方リーンを用いることによって、ブレード先端とインペラが作動する導管の内面との間の間隙を最小限に抑えることが可能となる。後方リーンを用いる場合、間隙の大きさを制御するのがより困難である。
【0021】
また、ブレードの捩じれピッチ角は、例えば、導管内におけるインペラ作動の場合、可変であるとよい。ブレードずれ角は、約15〜30°の範囲内にあるとよく、これによって、導管内における低レイノルド数(例えば、ブレード先端翼弦に対して50,000未満)のインペラ運転を助長し、その結果、血液ポンプ用途の溶血を低減させることが可能となる。(周方向を基準として測定された)先端のピッチは、根元のピッチよりもかなり小さくすることができ、これによって、導管の内面の近くの境界層内の遅い流体流れに適合することが可能となる。このように、カニューレ内の層流プロフィル内における運転に適する改良されたインペラのブレードは、ブレード捩れを有し、ピッチは、流れプロフィルと略適合され、ブレード先端は、ブレード根元よりも小さいピッチ角を有している。ブレードは、ブレードピッチが比較的急峻に変化する領域において、わずかに隆起した外観を有しているとよい。
【0022】
(導管内ではない)外部流れ用途の場合、境界層がハブに接近する傾向にあるので、ブレードピッチの捻じれは、逆方向であるとよい。
【0023】
蛇行ブレードの根元は、反り(camber)として知られる幾何学的特性、すなわち、平坦面に置かれた場合の翼部分の湾曲を有している。単一の長いブレードを2つ以上の部分に分割することによって、これらの分割部分の反りを、例えば、10%未満の値、例えば、5%の値に制限することができる。後者の場合、任意の分割部分の直線からのずれは、分割部分の翼弦長さの約5%である。例えば、15%の反りを有する蛇行ブレードは、3つの部分に分割することが可能であり、この場合、これらの分割部分の各々は、実質的に直
線状であり、より容易に折畳まれることになる。その結果、蛇行ブレード性能と同様の性能を有する3つのブレード列に配置された3つのブレードを有するインペラが得られることになる。(前縁から後縁への)巻付け角は、最大約30°に制限され得る。従って、ブレード列の各々は、(同様のポンピング効率を有する単一の蛇行ブレードと比較して)、実質的に2次元のブレードを含むことが可能であり、これらのブレードは、蛇行ブレードよりも容易にハブに対して折畳まれることが可能である。
【0024】
ブレードの弾性率は、例えば、100%〜200%の歪に対してブレードをインペラの格納形態に変形させるために、低いとよい。代表例では、ブレードを格納形態まで大きく変形させるための弾性率は、運転応力に対する弾性率より約10倍小さいとよい。例えば、インペラは、運転応力に対して約10,000psiの曲げ弾性率を有し、格納変形に対して約1,000psiの曲げ弾性率を有する材料から形成されるブレードを備えているとよい。
【0025】
図2Aは、展開形態にあるインペラ200を示している。このインペラは、ハブ210および複数のブレード212を有している。インペラ200は、展開形態において半径Rを有している。この半径Rは、ハブ210の長手方向中心軸から最外ブレード先端までの距離として測定されている。展開直径は、展開半径の2倍であり、インペラ200がハブ210の長手方向軸を中心として回転したときにブレード先端によって描かれる円の直径である。また、導管250の壁も示されている。この導管250内を通って、流体がインペラ200に対して流れるようになっている。インペラ200は、導管250を通して流体をポンピングする軸流ポンプとして用いられるとよい。代替的に、インペラ200は、乗物用の原動力供給器として用いられてもよい。例えば、インペラは、ジェットボートのようなボートまたは他の船艇に動力を供給することも可能である。このような例では、導管250は、乗物を囲む水内に浸漬される管であってもよいし、または導管が全く設けられなくてもよい。
【0026】
図2Bは、格納形態にあるインペラ200を示している。ここでは、ブレード212は、折畳まれまたはハブ210の方に向かって変形されており、この格納形態で、格納ハウジング260によって保持されている。この場合インペラ200の格納直径を画定する格納ハウジング260の半径Rは、図2Aに示される展開したインペラの半径Rよりもかなり小さい。変形したインペラブレード212は、一箇所または複数個所において、格納ハウジング260の内面と接触してもよい。
【0027】
本発明の実施形態では、インペラ200の柔軟ブレード212は、格納形態にあるインペラの最大直径が展開形態にあるインペラの直径の略半分または半分未満となるように、折畳み可能または半径方向に圧縮可能である。図2Aおよび図2Bを参照すると、これは、R?≦(R/2)と記述される。R?≦(R/2)の比は、血液ポンプ用途に有用である。すなわち、この比によって、血液ポンプは、約3mmから約4mmの間の直径で非外科的に挿入され、人体内で約6mmから約7mmの間の直径に展開することが可能となる。他の用途では、他の直径比が有用である。
【0028】
導管内におけるインペラの展開
図3は、インペラ200の展開を説明するための概略図である。インペラ200は、ハブ210およびブレード212を有し、格納ハウジング260によって、格納形態で保持されている。格納ハウジング260は、展開前にインペラ200を格納する管であるとよい。インペラ200を回転するために、駆動シャフト230が用いられている。また、この図は、回転駆動シャフト230内の任意選択的なガイドワイヤ280も示している。ガイドワイヤ280は、インペラ200を所望の箇所に位置決めするのに用いられ、また、駆動シャフト230の回転は、例えば、もし格納ハウジング260の内面がネジ山を有し
ている場合、インペラを捩じり、インペラを格納ハウジング260の外に出すことによって、インペラ200を展開するのを補助することが可能となる。
【0029】
図の左側に、導管250が示されている。この導管250内には、インペラ200が展開され、大きい展開形態で運転されることになる。導管250は、流体をインペラ200に対して通流させるどのような構造体、例えば、管、カテーテル、カニューレ、または血管のような脈管であってもよい。
【0030】
格納ハウジング260内に収容されるインペラ200は、導管内、例えば、単一パイプ(水パイプ、ガスパイプ、下水パイプなど)、(血管のような)脈管、乗物用の推進ユニットの一部、または流体を通流させる他の構造体内で展開されるとよい。インペラは、格納形態で導管内の所望箇所に運ばれ、次いで、展開形態に展開されてもよい。インペラ200は、例えば、インペラに取り付けられた駆動シャフト230を用いて、格納ハウジング260から外に軸方向に付勢されることによって、展開されてもよい。そして、インペラは、格納形態にあるブレード212の蓄えられた潜在エネルギーを用いて、展開形態に拡げられることになる。
【0031】
格納形態によって、インペラ200は、所望箇所まで容易に運搬され、展開形態のインペラの直径よりも小さい開口を通過することが可能となる。使用後にインペラ200を導管から取り外すために、インペラは、例えば、柔軟ブレード212をハブ210に対して再び折畳むことによって、格納ハウジング260内に再び付勢され、格納形態が得られるまで半径方向に再び圧縮されるとよい。また、格納されたインペラは、展開形態のインペラの直径よりも小さい直径を有するアクセス孔を通して、使用箇所から取り外されるとよい。従って、インペラ200は、格納形態を取ることによって、比較的小さい入口孔を通して、大きい直径の導管250内に挿入されることが可能となっている。
【0032】
格納ハウジング260は、インペラ200が格納ハウジングの外方への軸方向移動によって展開される管として記載されているが、必ずしも、この通りでなくてもよい。むしろ、格納ハウジング260は、それ自体が拡張可能であってもよいし、または以下に述べるように、拡張可能部分を有していてもよい。格納ハウジング260の拡張によって、インペラ200は、展開すること可能となるので、当該インペラは、展開形態を得るのに、格納ハウジングから外に軸方向に押し出される必要がない。従って、図3を参照して、導管250は、拡張状態にある格納ハウジング260の代わりをすることが可能である。
【0033】
小翼
本発明によるインペラは、小翼を有する少なくとも1つのブレードを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、1つのブレード列内の全てのブレードがこのような小翼を備えていてもよく、インペラの他のブレードは、小翼を備えていてもよいし、または備えていなくてもよい。小翼は、運転状態のインペラの流体力学的性能を改良し、ポンピングされる流体内に存在するせん断応力を低減させることも可能である。その結果、ポンピングされる流体が細胞のような生物学的構造を備えるとき、ポンピング作動によるこのような構造の劣化を低減させることが可能となる。
【0034】
インペラブレードは、典型的には、1対の対向面、すなわち、ブレードが流体内で回転するときに圧力によって流体の相対運動を生じさせる正圧面、および負圧によって流体の運動を生じさせる負圧面を有している。典型的には、正圧面および負圧面は、平面的ではなく、翼形状を画定するように同じほぼ方向に湾曲している。また、ブレードは、ブレードが回転するときに流体を横切る前縁、後縁、および(ブレード先端またはブレードの遠位端とも呼ばれる)外縁を有している。小翼は、(ブレードの正圧面から)インペラの運動の方向に延在してもよいし、(ブレードの負圧面から)運動の方向と反対の方向に延在
してもよいし、または、その両方の方向に延在してもよい。
【0035】
図4Aおよび図4Bは、それぞれ、遠位端に小翼222を有するインペラ200のブレード212の斜視図および断面図である。図4Aは、破線で示されるように、小翼222と接合されるブレード212の断面を示している。小翼は、遠位端におけるブレードの断面を著しく拡げている。図4Bは、略T字状をなすブレード212および小翼222を断面で示している。図4Bに示されるように、ブレードの負圧側が右側で、正圧側が左側である。もしブレード212が、ブレードの遠位端において正圧面と負圧面との間のある厚みを有する場合、小翼222は、(ブレード回転方向と平行の方向において測定された)ブレードの遠位厚みの約1〜3倍の幅を有しているとよい。もしブレード212がある翼弦長さを有する場合、小翼222は、その翼弦長さと略等しい長さを有しているとよい。
【0036】
小翼222は、好ましくは、前縁および後縁を有する空力学的に滑らかな形状を有し、前縁において、流れが小翼の縁と衝突し、後縁において、流れが翼面から放出されるようになっている。小翼222は、好ましくは、概して、ブレード先端面に沿った流れ方向と平行の平均流れ方向において、滑らかな空力学的断面を有している。図5Dは、丸縁240、角縁242、および楔形(チゼル)縁244,246を含む使用され得る前縁の幾何学的形状を示している。
【0037】
インペラ200が導管250内において流体流れに対して回転する場合、展開形態にあるブレード212の遠位端は、小翼222を有していてもまたは小翼222を有していなくても、導管の内面の近くに配置されるとよく、これによって、ブレード遠位端と導管の内面との間に、先端間隙255が画定されることになる。先端間隙255は、ブレードの遠位端の最大厚みの約10〜50%であるとよい。このような場合、ブレードの先端を適切に賦形することによって、例えば、小翼222を有する先端を設けることによって、流れ場の質を改良し、せん断応力を低減させることができる。図4Bに示されるように、小翼222は、導管250の内面の近傍において、インペラ200に対する流体軸受として用いられる形状を有しているとよい。
【0038】
血液ポンプ用途では、シミュレーションによって、殆どの溶血がブレード先端において生じること、および小翼が溶血を低下させることが分かっている。代替的に、溶血を低減させるために、先端形状が丸められてもよい。ブレード先端が、流体に対して移動するとき、ブレード先端の丸められた形状は、角張った先端と比較して、先端における流れ分離および乱流を低減させ、小翼は、ブレード先端に生じる伴流の流れ分離、従って、乱流をさらに低減させることになる。小翼222を用いることによって、小さい先端間隙を有するが小翼を有しないインペラの性能を保持しながら、ブレード212の先端と導管250の内面との間の間隙255を大きくすることが可能となる。この効果は、小翼が整備された航空機翼の端の近くで揚力が維持されるのと類似している。小翼を有しないブレードの場合、ブレード遠位端の最大厚みの約0.10〜0.15倍の範囲内にある先端間隙において、流体ヘッドの損失が最小化され、この範囲内の先端間隙において、間隙流れにおけるせん断応力が低減し、溶血を低減することが予期される。小翼を備えるブレードの場合、ブレード遠位端の最大厚みの約0.25〜0.30倍の先端間隙において、流体ヘッドの損失が最小化される。導管内においてインペラを運転する場合、先端間隙が大きくなると、小さい先端間隙を用いる場合と比較して、せん断応力が低減し、血液ポンピング用途では、溶血が低減することになる。
【0039】
図5Aは、ブレード212の負圧面の外縁から延在する負圧側小翼262を示している。この図は、前縁から見た断面図であり、ブレードは、見ている方向に向かって回転するようになっている。図5Bは、ブレード212の正圧面から延在する正圧側小翼264を示している。パラメータは、負圧側小翼の場合と同様である。正圧側小翼の機能は、間隙
255を通る流れを減少させることにある。正圧側小翼は、流体軸受を生成する効果を有していないが、導管250の内面から低運動量の流体を「掻き出し」、この流体が間隙255に入って先端渦のコアの一部となるのを妨げるものである。これによって、流体流れの大部分におけるせん断応力を低減させることが可能となる。
【0040】
図5Cは、ブレード212の正圧面および負圧面の両方の外縁から延在する組合せ小翼266を示している。本発明の実施形態は、図5A〜図5Cに示されるこれらの形態を備えている。数値法を用いることによって、小翼形態を設計することができる。ブレード翼弦長さが長く、かつブレードの螺旋長さが大きい場合、ブレード先端および小翼の幾何学的形状は、複雑になる可能性がある。
【0041】
図6B〜図6Dは、小翼形態をさらに示している。ブレードは、これらの例を通して同一形状を有する小翼を支持している。図6Aは、小翼を有しないブレード212の外縁形状270を示している。
【0042】
図6Bは、ブレード212の正圧面の外縁から延在して部分272にわたって拡がる正圧側小翼を示している。小翼の部分270は、図6Aに示されるブレードの元の外縁形状に対応している。
【0043】
図6Cは、負圧側小翼、すなわち、ブレードの負圧面の外縁から延在する部分274、およびブレードの元の外縁形状に対応する部分270を示している。本発明のいくつかの実施形態では、ブレードの正圧側は、ブレード厚み、すなわち、ブレード幅の略1/3〜1/2の半径を有している。小翼長さは、ブレード厚みの1/2〜3倍であるとよい。ブレード厚みと略等しい厚みが示されている。小翼は、図示されるように、ブレードの下流側の半分に殆ど位置している。この目的は、ブレードが内部で作動する導管の内面に小翼の外縁が近接して、流体軸受をもたらすことである。このような構成では、小翼と導管250の内面との間の間隙内の流れは、その強さが減少し、先端渦が形成され難い。これによって、流体のせん断応力が低減することになる。間隙255は、基部ブレード最大厚みの約10%と約25%の間にあり、流体導管250と殆ど平行の領域である。間隙は、半径がブレード要素の軸方向位置の関数である円筒状、円錐状、または湾曲した側円筒状とすることができる。正圧側小翼のパラメータおよび(以下に述べる)組合せ小翼のパラメータも、同様であるとよい。
【0044】
図6Dは、ブレードの正圧面および負圧面の両方から延在する組合せ正圧側/負圧側小翼を示している。ここで、部分276が負圧面から延在し、部分278が正圧面から延在し、部分270がブレードの元の外縁形状に対応している。
【0045】
格納形態を促進する特徴部
図7Aおよび図7Bを参照すると、インペラ200は、格納形態の達成を補助する1つまたは複数の構造特徴部を有していてもよい。このような構造特徴部として、格納形態へのブレードの変形を容易にするために、ブレード根元の近傍に設けられる1つまたは複数の凹みが挙げられる。細長の凹み、例えば、溝282が、ブレードの近位端(ブレードがハブと接合しているブレード根元)の少なくとも一部の近傍において、インペラ200のハブ210に形成されているとよい。溝282は、ブレード212の負圧面および正圧面の片方または両方に隣接して形成されているとよい。好ましくは、溝282は、ブレードの近位端と平行かつ隣接してハブ210内に形成されている。
【0046】
構造特徴部によって、ブレード212の遠位端をハブ210の方に向かって移動させるのが容易になる。例えば、ブレード根元の一部または全ての周囲に設けられた溝282は、ブレードが格納形態にあるとき、例えば、ハブ210の方に折畳まれたとき、ブレード
212の内部機械的応力を低減させるのを補助することが可能となっている。
【0047】
いくつかの実施形態では、ブレード212は、翼形状の断面を有するとよく、凹みは、ブレードの近位端と平行に延びるようにインペラハブ210に形成される湾曲溝であるとよい。格納形態の達成を補助する他の構造特徴部として、図示されないが、当技術分野において知られている、1つまたは複数の凹みまたは切込をブレード212および/またはハブ210内に有する(リビングヒンジのような)ヒンジ、ブレード根元の近傍により容易に変形可能な材料から形成されるインペラ200の一部、などが挙げられる。
【0048】
また、凹みは、「ディレット(dillet)」とも呼ばれることもあり、ブレード根元のどのような穿堀をも含んでいる。ディレットは、例えば、ブレード幅および/または同様の寸法範囲内の幅の約0.5〜約1.5倍の深さを有するブレード根元近傍の溝であるとよい。ディレットは、格納形態を達成するために、インペラブレードをハブの方に向かって容易に折畳むことが可能となっている。
【0049】
また、ディレットは、インペラ200が作動するときに、インペラ200に対して移動する流体内の流体せん断応力および流れ渦を低減させることが可能となる。血液ポンピング用途では、せん断応力が低いと、血液の溶血が低減することになる。
【0050】
ハブ210は、ブレード212の両面の近傍にディレットを有しているとよく、この場合、ディレットは、各々、(ブレードがハブの方に折畳まれる方向に依存して)、ブレードの折畳みを容易にすると共に、一緒になって、根元接合渦の形成を低減し、これによって、血液ポンピング用途における溶血を低減している。ディレットは、例えば、ブレード根元に生じる馬蹄形の渦の形状を近似する馬蹄形ディレットであってもよい。従って、ディレットは、折畳まれていないインペラブレードにおけるせん断応力を低減させるために、設けられているとよい。
【0051】
ブレード材料および弾性率
インペラ200は、単一材料から形成されるハブ210および1つまたは複数のブレード212を備える単一インペラ体の形態にあるとよい。代替的に、ブレード212およびハブ210は、異なる材料から形成されてもよい。好ましくは、ブレード212は、格納形態においてハブ210の方に向かって変形可能となるように、柔軟性を有している。ブレード212は、格納形態から展開形態への拡張を可能にするどのような方法によって形成されてもよい。ここで、インペラ200の展開直径は、その格納直径よりも大きい。
【0052】
ブレード212は、ブレードがハブ210の方に向かって折畳まれる格納形態の達成を可能にするどのような材料から形成されてもよい。この点に関して、ブレードは、ブレードがもはや格納形態に保持されないときに、例えば、インペラ200が格納ハウジングから展開されるときに拡張するのに十分な弾性を有するゴム材料、弾性材料、または他の材料から形成されているとよい。ブレードは、ポリマー材料、例えば、適切な弾性特性を有するポリウレタンまたは他のポリマーから形成されていてもよい。血液ポンプのような医学装置の場合、生体適合性ポリマーが好ましい。平均分子量は、所望の特性が得られる所定の範囲内の値に選択されるとよい。代替的に、ブレードは、他の柔軟ポリマーから形成されてもよいし、任意選択的に外皮を伴う拡張可能な発泡体から形成されてもよいし、または形状変化材料または形状記憶材料および金属を含む他の圧縮可能または変形可能な材料から形成されてもよく、この場合、ブレードは、柔軟部分の変形によって、ハブ210の方に向かって変形されている。柔軟部分として、リビングヒンジのようなヒンジ、狭幅領域、剛性部分の材料と異なる材料、または他の構成が挙げられる。
【0053】
ブレード212および(任意選択的に)ハブ210は、低弾性率ポリマー、例えば、低
曲げ弾性率ポリウレタン(この用語は、本発明によるインペラを形成するのに用いられているポリウレタンウレアを含む)から構成されているとよい。インペラ200は、例えば、ポリマーの成形によって同一材料から一体に形成されたブレードおよびハブを有する単一構造体であるとよい。
【0054】
いくつかの例では、ブレード212は、厚いゴムバンドの剛性に近似する剛性を有しているとよい。このような実施形態では、ブレードは、いくらかの剛性を有しているが、運転負荷下において変形するようになっている。例えば、インペラ200を形成する材料は、負荷下において予測可能なブレードの変形を可能にする運転応力での線形弾性率およびブレードを格納形態に変形するのに用いられる高応力下における非線形弾性率を有するように、選択されるとよい。
【0055】
インペラ200は、約3,000psiと約30,000psiの間、より好ましくは、約5,000psiと約20,000psiの間、さらに好ましくは、約7,000psiと約10,000psiの間の(運転応力に対する)曲げ弾性率を有するポリウレタンのようなポリマーから形成されたブレード212を有しているとよい。運転応力に対する弾性率は、運転中のインペラの変形、いくつかの例では略5%の歪に対応するインペラの変形に対応している。所望の弾性率を達成するために、高弾性率材料を用いるとき、ブレード厚みを低減させてもよい。
【0056】
インペラブレード212は、例えば、インペラが格納形態にあるとき、インペラ200の圧縮された容積の95%をも占めることがある。
【0057】
図8は、本発明によるインペラ200を形成するのに用いることができる非線形材料の応力―歪関係を示している。左側(低応力側)の白四角は、インペラ運転点(運転状態下における応力および歪)に対応し、右側(高応力側)の黒丸は、インペラ格納形態に対応している。応力/歪関係は、インペラ運転点において略線形であり、その結果、運転応力による変形は、数値モデリングによって正確に予測可能となる。ブレード212がハブ210に対して折畳まれる格納形態は、曲線の高歪非線形部分内にある。これによって、格納
形態を材料の引張破壊点を通ることなく達成することが可能となり、また格納形態を達成するのに必要な応力を低減することが可能となる。例示的インペラ200では、格納形態における最大材料伸びは、約75%である。
【0058】
好ましくは、非線形材料、例えば、図8の特性を有する非線形材料が、ブレード212に用いられる。これによって、ブレード材料を、運転負荷下では比較的剛性となり、高歪下では、例えば、ブレード212が格納形態に折畳まれるとき、比較的柔軟となることが可能である。例えば、歪は、運転負荷では1〜10%、および折畳み中には75%であるとよく、応力/歪曲線は、運転負荷下では高弾性率(例えば、10,000psi)に対応し、折畳みと関連する高負荷下では低弾性率(例えば、1000psi)に対応することが可能である。応力―歪曲線は、運転点歪と折畳み歪との間の傾斜に鋭利な変化を有する2つの略線形領域を有しているとよい。
【0059】
インペラ200は、例えば、約5,000psiと約10,000psiとの間の弾性率を有する市販のポリウレタンポリマーから作製されるとよい。本発明による例示的なインペラは、弾性ポリマーから(ハブおよびブレードを備える)単一体として作製されている。用いられる例示的な材料として、運転変形に対して約10,000psiの弾性率を有するコナサン(Conathane)TMTU−901(サイテック(Cytec)工業(株)、ニュージャージ州、ウエストパターソン)、(約7,000psiの弾性率を有する)コナサン(Conathane)TMTU−701、および約5,000psiの弾性率を有するハップ
フレックス(Hapflex)TM560(ハプコ(Hapco)(株)、マサチューセッツ州、ハノ
ーバ)が挙げられる。しかし、他のポリウレタン、他のポリマー、または他の材料が用いられてもよい。
【0060】
過度の期間にわたって格納形態で保持されたポリマーインペラ200は、例えば、互いに隣接するポリマー表面間のクリープまたは静電溶着によって、適切に展開しないことがある。好ましくは、インペラ200は、インペラを所望の位置に挿入するのに必要な限りでのみ、格納形態で保持される。流体力学的応力および前方リーンは、展開および履歴現象効果の克服の両方に有用である。
【0061】
インペラ200は、ブレードを格納状態でハブ210の方に向かって変形させたときに蓄えられた潜在エネルギーによって、格納形態から展開することが可能となっている。しかし、(例えば、形状記憶材料を用いた場合におけるように)、他の蓄えられた潜在エネルギーが用いられてもよい。用途に応じて、インペラの展開を補助するために、熱(例えば、ワイヤまたは他の構造体の電気加熱)、遠心力、電磁力、ガスジェット、などの外部エネルギーがインペラ200に供給されてもよい。
【0062】
インペラの製造
インペラ200は、精密成形、(例えば、硬質ワックスマスターを用いる)インベストメント鋳造、光造形法、圧延、または他の技術を用いて、製造されるとよい。本発明のインペラ200は、著しい型割線が生じるのを避けるために、柔軟な型を用いて製造されている。
【0063】
展開形態で略6〜7mmの直径を有する極めて小さいインペラは、(ポリウレタンのような)ポリマーから製造され、精密型から引き出されるとよい。これによって、インペラを極めて低コストで製造することが可能となる。柔軟ブレード212によって、インペラは、型引っ掛かりを生じることなく、型から引き出され、多部品型、すなわち、分割型に代わって、一体型の使用が可能になる。これは、生体流体をポンピングするように設計されたインペラを製造する場合に有利である。
【0064】
インペラの最適化
標準的な計算流体力学解析(CFD)を用いて、ブレード形状を最適化することができる。インペラ材料が柔軟でない場合、回転時に、インペラの変形が生じない。柔軟材料から形成されるインペラ200を最適化する改良された方法は、(運転形態とも呼ばれる)運転応力下における展開形態を最適化することである。インペラは、無負荷での展開形態と必ずしも同じではない運転形態が最適化されるように、設計されるとよい。構造的計算によって、運転応力の負荷による変形を決定することが可能である。従って、インペラ200は、設計負荷状態下で回転および運転されるとき、最適化された流体力学的形状に変形する柔軟ブレード212を有しているとよい。
【0065】
インペラブレード212は、流体内の(乳濁液滴、懸濁液、細胞のような生物学的構造体など)の繊細な粒子の破壊を最小限に抑えるよう設計されてもよい。CFDモデルは、シミュレーションされたインペラを通る粒子から受けるせん断応力をシミュレーションするのに用いられてもよい。粒子から受ける中間的せん断応力の時間積分を用いて、生物学的用途における細胞破壊の可能性を評価することが可能である。前述したような複数のブレード列を含む分割ブレード設計によって、細胞が中間的せん断応力領域に在留する時間を低減させることが可能となる。これは、単一の長い螺旋ブレードと比較して、細胞または他の粒子の破壊を有利に低減させることができる。
【0066】
インペラブレード212は、運転中に変形することがあり、ブレードの最適形態は、展開および回転時にのみ達成されるとよい。例えば、ブレード212の最適な設計形態は、
運転応力下でのみ達成されるとよい。従って、ブレードの柔軟性による運転中のブレード変形は、性能の低下をもたらすことがない。インペラ200は、製造時の形状から著しく変形しても、十分に運転することができる。インペラは、変形分を見込んだ設計に基づいて製造可能である。所定の回転速度または所定範囲内の回転速度で運転されるインペラの形態が、最適化されるとよい。従って、本発明のさらに他の実施形態では、運転応力による変形を含むインペラの運転形態が、最適化されている。
【0067】
血液ポンプ用途では、CFDによる最適化は、ブレード表面の流速(レイノルズ数)、渦形成、噴流、根元接合部流れを最小限に抑えるために、および血栓症をもたらすことがある分流の生成を避けるために、用いられるとよい。
【0068】
レイノルズ数
本発明によるインペラ200は、導管境界層が導体内の流れの大半を含む低レイノルド数導管流れ内で運転することが可能である。レイノルズ数は、ブレード速度と翼弦長さの積を流体粘性で割った値である。レイノルズ数は、半径によって変化し、他に規定がない限り、一般的に、ブレードの先端(遠位端)と関連している。例えば、従来の推進器の運転時のレイノルズ数は、約10の単位であり、流体がブレードを横切ると、乱流遷移が生じることになる。
【0069】
インペラ200は、ブレード先端における30,000未満の小レイノルズ数の流れに対して、例えば、低速または低流量の比較的粘性の高い流体のポンピングに対して使用可能である。本発明によるインペラは、約1,000から約30,000の間、好ましくは、約2,000から約20,000の間、さらに好ましくは、約5,000から約20,000の間のブレード翼弦レイノルズ数で運転することが可能となる。このような低レイノズル数での運転は、ブレードを横切る流体の実質的な層流に対応している。乱流が少ないと、せん断応力が低減し、血液ポンピング用途における溶血が低減することになる。
【0070】
また、インペラ200は、10〜数10の大きいレイノルズ数の流れに対して用いられてもよい。用途に応じて、インペラ直径は、数mm(または数mm未満)〜数mの範囲内の値とすることができる。
【0071】
導管250内の運転では、インペラ200は、完全な層流プロフィル内、例えば、導管入口から導管直径の約10〜15倍の距離に配置されるとよい。
【0072】
複数のブレード列は、同様の液圧効率を有する単一の長い蛇行ブレードにおけるよりも低いレイノルズ数で運転されるとよい。各ブレード列は、例えば、実質的な層流を得るために、個別に最適化されるとよい。ブレード列は、血液ポンピング用途における溶血を低減させるために、角度を順次ずらして配置されるとよい。これによって、血栓症をもたらす流れ分離を回避することが可能となる。さらに、格ブレード列は、異なる数のブレード、例えば、1つ,2つ,3つのブレードを備えていてもよい。従って、複数のブレード列を用いることによって、単一の蛇行ブレードと比較して、同様の効率または改良された効率を維持しながら、血液ポンピング用途における溶血を低減させることが可能となる。例えば、混成流ポンプヘッドと同様の軸方向ヘッドが得られることになる。
【0073】
例えば、以下に述べる血液ポンプ600のような血液ポンプとしてカニューレ内で運転されるインペラ200では、ブレード翼弦レイノルズ数は、第1のブレード列では約12,600であり、第2のブレード列では15,800である。これは、流れが実質的に層流であることを示唆している。この場合、ブレード212は、ブレード表面の上方において、(せん断応力が高い値に急峻に移行する)乱流への移行を呈することがなく、これによって、血液ポンピング用途では、低溶血が得られることになる。
【0074】
溶血
溶血は、赤血球に含まれるヘモグロビンを放出する、赤血球の機能停止または破壊を指している。血液ポンピング用途では、所定のインペラ200に対する溶血を、文献によって知られている方程式、および溶血を低減させるように調整された前述のパラメータを用いて、評価することが可能である。
【0075】
ガロン(Garon)およびファリナス(Farinas)のモデル(「迅速3次元数値溶血近似」、人工器官(Artificial Organs)、28(11):1016−1025(2004))
を、ギエルシ―ペン(Giersiepen)らの経験的相関関係(「心臓弁プロテーゼにおけるせん断応力に関連する血液損傷の評価−25の大動脈弁の体外比較」、人工器官学会誌(International Journal of Artificial Organs)、13(5)、300−306(1990))と組み合わせることによって、溶血活性化および血小板活性化の両方の解析を行うことができる。ギエルシ―ペンは、血小板の破壊によるLDH(細胞質酵素)放出に対して、以下の経験的相関関係:
【数1】

を提案し、赤血球の破壊によるHb(ヘモグロビン)放出に対して、以下の経験的相関関係:
【数2】

を提案している。ここで、tの単位は、秒であり、τの単位は、パスカルである。ガロン/ファリナスのモデルは、要するに、ある体積内の上記のパラメータの正味の流束を計算することによって、
【数3】

の式で表わされる損傷モデルの骨組をもたらしている。ここで、
【数4】

および
【数5】

【0076】
変数τは、フォンミーゼス(Von Mises)基準と呼ばれる応力テンソルのスカラー形式
であり、
【数6】

によって規定され、ここで、σ、σ,σは、主応力である。
【0077】
ガロンおよびファリナスによれば、溶血の正規化された指数(g/100L)は、
【数7】

で表わされ、Hbは、ヘモグロビン濃度(g/L)であり、溶血の修正された指数(部分/10)は、
【数8】

で表わされる。
【0078】
類推によれば、血小板活性率は、
【数9】

によって表わされる。ここで、P1およびPLAは、例えば、血小板濃度(10/10−6L)である。
【0079】
ガロンおよびファリナスは、層流における溶血率しか考慮していないので、主応力は、層流における粘性応力テンソルにしか関連していない。ガロンおよびファリナスは、乱流がいかに含まれるかについては言及していないが、この検討は、他の研究においてなされている。アルバンド(Arvand)らの(「回転血液ポンプにおける溶血を評価するための有効な計算流体動力学モデル」、人工器官、29(7):531−540(2005))は、溶血退化モデルに用いられるスカラー形式のせん断応力の「数値的に生じる多様さ」を避けるために、乱流シミュレーションに関するレイノズル応力を無視することを実際に主張しているが、有効せん断応力(層流プラスレイノズル応力)を用いるさらに他の従来の手法も知られている。例えば、グ(Gu)らの「溶血を推測するための計算モデルの評価」、ASAIOジャーナル、p.202−207(2005)を参照されたい。
【0080】
溶血活性化および血小板活性化の両方の解析に対して、上記の両方の手法が適用され、かつ比較されるとよい。流れは、計算流体動力学を用いてシミュレーションされ、せん断応力は、決定された3次元流れデータから決定され、これによって、溶血が、せん断応力分布から決定されるとよい。
【0081】
格納形態および展開
インペラ200は、格納ハウジング260のような格納ハウジング内に格納され、格納形態で所望位置まで移送され、所望位置に達した後、展開形態に展開されるとよい。次いで、インペラの回転によって、その位置において流体流れを引き起こすことになる。例えば、格納形態にあるインペラは、展開形態にあるインペラの直径の半分と略等しいかまたはそれよりも小さい直径を有しているとよい。格納形態の直径は、一般的に、格納ハウジ
ングの内径によって画定されている。格納ハウジングは、インペラを格納形態で保持するように作用するどのような組立体でもよく、インペラが展開前に内部に格納される管、スリーブ、または同様の構造体であればよい。
【0082】
インペラ200の格納形態では、ブレード212は、展開形態よりも小さい直径を有するように、ハブ210の方に折畳まれるか、または変形または再賦形されるとよい。インペラ200は、格納ハウジング260によって格納形態に保持されるとよい。格納形態では、ブレード212の遠位端は、展開形態におけるよりもハブ210に接近し、インペラの格納直径は、展開直径よりも著しく小さい。展開直径の約1/2以下の格納直径を得ることが可能である。
【0083】
格納ハウジングは、格納ハウジング260のような一定直径を必ずしも有している必要がなく、インペラ200が格納される非拡張可能部分、およびインペラが内部に移動して展開する拡張可能部分を備えていてもよい。従って、インペラ200は、格納ハウジングの拡張した部分内において展開することが可能となる。格納ハウジングの拡張可能部分は、格納形態を有することもできる。例えば、格納形態にある拡張可能部分の直径は、拡張状態の直径の略半分以下であるとよい。代替的に、格納ハウジングの全体が、インペラ200が展開するために軸方向に移動しなくてもよいように、拡張可能であってもよい。
【0084】
拡張可能な格納ハウジングまたは拡張可能部分を備える格納ハウジングは、以下に述べる保持スリーブによって、圧縮状態で保持されているとよい。インペラ200は、格納ハウジングが圧縮状態で保持されたとき、格納ハウジング内に圧縮形態で格納されているとよい。しかし、インペラ200が配置されている格納ハウジングの部分から保持スリーブが取り外されると、格納ハウジングおよびインペラは、拡張形態または展開形態に拡張することが可能となる。インペラ200は、インペラブレード212を格納ハウジングの境界の外に付勢することによって、例えば、インペラを覆っている格納ハウジングの部分から保持スリーブを引き出すことによって、展開されるとよい。いくつかの実施形態では、保持スリーブは、インペラ200が展開形態を達成することを可能にするように、その場で拡張されてもよい。インペラ200を展開する他の方法も、当業者には明らかであろう。
【0085】
種々の方法によって、インペラ200を展開することが可能である。例えば、格納ハウジングは、インペラ200が展開形態にあるときに拡張形態を有し、インペラが格納形態にあるときに圧縮形態を有するように、拡張可能であってもよい。このような実施形態においては、格納ハウジングは、インペラ200を半径方向に圧縮して格納形態を達成し、格納ハウジングが拡張するときにインペラを展開させるように、作用するものである。代替的に、拡張しない格納ハウジングの場合、インペラ200は、格納ハウジングから外に半径方向に移動するようになっているとよい。
【0086】
図9Aは、ブレード332,334およびハブ310を示す、格納形態にあるインペラ300を示している。ブレード332,334は、格納ハウジング360によって、ハブ310の方に折畳まれている。図9Bは、格納ハウジング360から押し出され、展開形態にあるインペラ300を示している。図示される実施形態では、インペラ300は、展開形態でより明らかに示されるように、2つのブレート列を有し、第1の列はブレード332を備え、第2の列はブレード334を備えている。
【0087】
図10は、展開形態および運転形態の両方の状態で示されるハブ410および複数のブレードを備えるインペラ400を示している。この図では、無負荷の展開形態を、インペラが運転回転速度で回転するときの運転応力下の展開形態を比較することが可能である。無負荷の展開形態では、ブレードは、参照番号462A,464A,466Aで示される
第1の形状を有している。流体内で回転するとき、ブレードは、参照番号462A,464B,466Bによって示される運転形態に変形される。インペラ400は、設計負荷形態下で回転かつ運転するとき、柔軟ブレードが最適化された流体力学的形状に変形するように、設計されているとよい。
【0088】
一般的に、ブレードが推進力、すなわち、図の左側の方に向かう力を生じ、ブレードを図の左側の方に移動させるように、ブレードに揚力が生じると、ブレードが前方に変形することになる。第2のブレード列の前縁は、不明瞭に示されている。この例では、2つのブレード列が示されている。各ブレードは、2つの同一のブレードを有している。例えば、第1のブレード列は、462Bの運転形態および462Aの無負荷状態で示されるブレード462を備えている。各ブレードの前縁は、最大ブレード半径の点で後縁に滑らかに遷移している。同一のポリマーから形成されたハブおよびブレードの場合、シミュレーションによって、ハブが回転してわずかに変形し、第2のブレード列が第1のブレード列と比較して根元で回転することが分かっている。
【0089】
図11および図12は、図10に示されるインペラ400と同様の設計を有する例示的インペラにおける流体せん断応力の最適化を示している。インペラブレードの遠位端は、円筒状導管の内面の近傍を移動し、この場合、ブレード遠位端と導管の内面との間の先端間隙は、ブレード遠位端の最大厚みの約10〜50%である。
【0090】
曲線は、二重正規化され、設計点の値は、いずれも1.0とされ、目盛は、設計流れの百分率とされ、因子は、設計点における応力の値の倍数で表されている。例えば、図11は、設計流れの70%の点において、せん断応力が、設計条件におけるせん断応力値の1.3倍であることを示している。図12は、先端間隙が設計値よりも小さくなると、せん断応力が大きくなり、先端間隙が設計値よりも大きくなると、せん断応力がわずかに小さくなることを示している。従って、血液ポンピング用途の溶血を低減させるべく、ポンピング効率に著しい悪影響を与えることなく、流体のせん断応力を低減させることが可能となる。
【0091】
図13は、ハブ510、および各々が2つのブレードを有する2つのブレード列を備えるインペラ500を示している。第1の列は、ブレード582,584を備え、第2の列は、ブレード586,588を備えている。インペラ500は、ブレードピッチ角が相対的な流れ角の局部的な値に対して調整される、大きく湾曲した前縁線および後縁線を有している。インペラ500は、層流プロフィルを有するカニューレのような導管内での運転に適するように設計され、流量は、導管の内面の近くで少ない。この図は、流体導管壁の境界層の厚みが導管の直径に至る左心室補助装置(LVAD)に用いられる低レイノルド数インペラの設計要素を示している。血液ポンプ用途用のレイノルズ数は、10,000〜20,000の範囲内の値に決められている。
【0092】
拡張可能なインペラおよび拡張可能なカニューレ
いくつかの実施形態では、拡張可能なインペラは、カニューレと共に用いられ、このカニューレは、拡張可能部分を有していてもよいし、または有していなくてもよい。インペラは、拡張可能部分内に格納されていない場合、展開形態に拡張させるために軸方向に移動されねばならない。もしインペラが拡張可能なカニューレまたはカニューレの拡張可能部分内に格納されている場合、インペラは、カニューレの拡張によって展開形態に拡張することになる。この組合せは、改良された左心室補助装置(LVAD)のような改良された血液ポンプに用いられてもよい。
【0093】
例えば、拡張可能部分および非拡張可能部分を有するカニューレが設けられてもよく、インペラは、非拡張可能部分内または非拡張可能部分の近傍に格納されてもよい。インペ
ラは、カニューレの非拡張可能部分から外に付勢され、カニューレの拡張した部分に押し出される。次いで、インペラの柔軟ブレード内の蓄えられた潜在エネルギーによって、インペラが自己展開し、カニューレも、蓄えられた潜在エネルギーによって自己拡張することが可能となる。次いで、拡張したカニューレは、インペラが回転されるとき、流体が流通する流体導管の役割を有することができる。このようなシステムの例として、以下に述べる血液ポンプ600が挙げられる。拡張可能なカニューレおよびインペラは、以下に述べるように、一緒に、保持シース内に格納され、保持シースから外に付勢されるときに展開されてもよい。
【0094】
用途
本発明によるインペラは、流体(ガスまたは液体)用の軸流ポンプ、車両用の動力、または他の用途を含む種々の用途に対して用いられてもよい。本発明の実施形態による改良されたインペラの用途として、化学工業用のポンプ、航空機または船舶用の推進機、水ポンプ、などを備えている。
【0095】
本発明によるインペラは、柔軟な駆動シャフトの一端に取り付けられるとよい。そして、駆動シャフトの他端に加えられるトルクは、インペラを回転させるのに用いられている。トルクは、モータのような回転部材によって加えられてもよい。
【0096】
血液ポンプ
前述したように、本発明によるインペラは、血液を他の器官にポンピングする血液ポンピング用途、例えば、左心室補助装置または右心室補助装置、などに適している。
【0097】
血液ポンピング用途では、インペラは、カニューレ流れの層流プロフィル内で運転されるとよく、ブレードピッチは、好ましくは、この層流プロフィルに適合するように、半径によって異なっているとよい。2つのブレード列を有するインペラ、例えば、図13に示されるインペラ500は、前縁から後縁に向かう螺旋経路をもたらす溝状特徴部を第2のブレード列に有しているとよい。この溝状特徴部は、翼幅方向の負荷の変動によって立ち上がり、これによって、このインペラを用いる軸流ポンプは、斜流ポンプにおけるのと同様の揚程上昇を達成することが可能となる。
【0098】
計算流体力学解析によって、2つのブレード列を有する拡張可能インペラを備えた軸流血液ポンプは、左心室補助装置(LVAD)に用いられるのに適していることが分かっている。このインペラは、圧縮され、対象内に挿入される格納ハウジング、例えば、管、カニューレ、または他の構造体内に収容されるとよい。生体のような対象の場合、格納ハウジングの直径は、約3mm〜4mm未満とすることができる。装置が挿入されると、インペラをその場で約6mm〜7mmの直径を有する形状に展開することができる。次いで、生体の外部の駆動モータに連結された柔軟な駆動シャフトを用いて、インペラを回転することができる。このようなインペラは、例えば、左心室補助装置(LVAD)の場合、4L/m(リットル/分)、さらに好ましくは、5L/m以上をポンピングすることができるとよい。
【0099】
このような装置の代表例では、インペラは、約30,000RPMで回転することが可能である。インペラは、軸流ポンプをなす2つ以上の翼形ブレードを備えているとよく、ガイドワイヤを用いて、位置決めされるとよい。ガイドワイヤは、柔軟な駆動シャフトの中空中心内を延びるとよい。駆動シャフト中空中心は、注入、冷却、および/または潤滑の目的で、生理食塩水または他の流体を運ぶのに用いられてもよい。ガイドワイヤは、必要に応じて、取り外されるとよい。生体内の移植は、外科的介入を行うことなく、約3〜4mmの直径を有する挿入カニューレを通して達成されるとよい。例えば、インペラおよびカニューレを備える装置は、大腿動脈内の挿入カニューレを通して、格納形態で挿入さ
れるとよい。次いで、所望の位置、例えば、大動脈弁の近傍の位置に配置されたとき、インペラおよびカニューレは、格納形態の直径の略2倍に展開される(半径方向に拡張される)とよい。
【0100】
医学的移植の場合、金属編組、ポリマー編組、または複合材料編組からなる駆動シャフトが用いられるとよい。駆動シャフトの直径は、約1.5〜2mmであるとよく、ガイドワイヤの通過を可能とするために、中空であるとよい。
【0101】
本発明によるインペラは、カニューレ内で運転可能であり、100mmHgの圧力増分(インペラ両端間の圧力220mmHgから圧力損失分を差し引いた正味の圧力増分)で5L/mの流れが得られる。これらのパラメータは、血液ポンピング用途、例えば、左心室補助装置(LVAD)に適している。
【0102】
前述したような血液ポンピング用途に用いられる血液ポンプ600が、図14に示されている。血液ポンプ600は、図15A、図15Bおよび図15Cに示されるような3つの主要部分に分解されている。しかし、血液ポンピング用途以外の用途が意図される本発明による装置を作製するために、これらの特徴が組み合わされてもよいことに留意されたい。
【0103】
図15Aに示される第1の部分は、インペラ605である。このインペラは、回転駆動力をインペラに与える駆動シャフト630を有している。インペラ605は、ハブ610および複数のブレード612を備え、前述したインペラの特徴部のいずれかまたは全てを有しているとよい。ハブ610および駆動シャフト630は、血液ポンプ600内に内部管腔670を画定するために、中空であるとよい。
【0104】
図15Bに示される第2の部分は、インペラ605が位置するハウジングまたはカニューレ625である。カニューレ625は、圧縮された状態にあるインペラ605用の格納ハウジング660を有している。格納ハウジング660は、非拡張可能であるとよい。代替的に、格納ハウジング660は、それ自体が拡張可能であってもよく、またはカニューレ625が、運転形態または展開形態にあるインペラを収容する拡張可能部分を有していてもよい。運転形態にあるインペラ605と格納形態にあるインペラ605とが異なる位置にあるかまたは同じ位置にあるかは、インペラがカニューレ625内において軸方向に移動して展開するか、またはカニューレ625におけるインペラを格納している領域が拡張するかどうかに依存している。
【0105】
図15Cに示される第3の部分は、保持シース700である。保持シース700は、患者の血管内への挿入するために、圧縮された状態のカニューレ625の少なくとも一部を保持するものである。以下、これらの部分の各々について、十分に説明する。
【0106】
血液ポンプ600のカニューレ625は、その近位端に位置する非拡張可能部分623およびその遠位端に位置する拡張可能部分626を有している。拡張可能部分626は、流体流れを助長するために、一端または両端においてフレア加工されるとよい。カニューレ625の拡張可能部分623は、従来の生体適合性ポリマーの管などから形成されるとよい。その一方で、カニューレ625の拡張可能部分626は、金属またはポリマーメッシュのようなメッシュ631およびエラストマー被膜633から形成されてもよい。メッシュは、カニューレの半径方向剛性および曲げ特性を主に画定し、エラストマーは、メッシュを覆って、流体保持能力を有する連続的なダクトを形成している。
【0107】
メッシュ631は、六角形セルマトリックスの形態にあるとよい。または、メッシュ631は、図16に示されるように、周方向リング692および軸方向コネクタ694を備
えているとよい。周方向リングは、主に半径方向特性を制御し、軸方向コネクタは、軸方向剛性および曲げ特性に作用を及ぼすものである。
【0108】
メッシュ631は、柔軟材料、例えば、ポリマー、金属、形状記憶材料、または他の材料から形成されるとよく、レーザ切断された空洞、金網のマトリックス、または他の形態を有する機械加工された金属円筒から構成されているとよい。メッシュ631がニチロールのような記憶金属合金から作製される場合、約1000分の1インチの厚み、例えば、0.005〜0.007インチの範囲内の厚みを有する金属の一定直径管が、レーザを用いながら、メッシュ構造を残して切除されるとよい。次いで、マンドレルを用いて、この一定直径のメッシュを所望形状まで半径方向に拡張/収縮させ、任意選択的に、クランプ機構を用いて、マンドレル形状に確実に適合させるとよい。マンドレルは、例えば、熱処理によって、この形状に「賦形」されている。マンドレル、従って、カニューレ625の拡張可能部分626の直径プロフィルは、任意選択的に、特定の患者に対して特注作製されることが可能である。代替的に、メッシュ631は、ポリマーから形成されてもよい。メッシュ631用の他の適切な材料として、(合金、例えば、他の記憶金属合金)のような他の金属、ポリマー、他の形状記憶材料、などが挙げられる。
【0109】
レーザ切断ステップおよび賦形ステップを用いることによって、複雑な形状パターンを一定直径の管から形成することが可能になる。例示的設計によるカニューレは、(流体力学的損失を最小限に抑えるための)鐘形入口、(流速からの圧力回復のための)出口における流体力学的デフューザ、(入口流れの閉塞を回避するための)入口端におけるスクリーン状装置、およびカニューレが収縮したときに拡張器として作用するスクリーン先端における付加的材料、を備えている。
【0110】
メッシュ631が形成された時点で、エラストマー被膜633のような被膜が、メッシュ内面、メッシュ外面、および/またはメッシュ間隙に施されるとよい。(例えば、生体適合性、耐食性および/または流れ改良をもたらす)被膜は、溶液流延法によって形成されてもよいし、または当技術分野に知られている他の技術、例えば、別の管として膜を形成し、この管をメッシュの周囲に嵌合させ、熱収縮によって締まり嵌めをもたらす技術によって、形成されてもよい。エラステン(Elastane)TMまたはバイオスパン(Biospan
TMのような弾性ポリマーが被膜633に用いられるとよいが、他のポリウレタンまたは他のポリマーが用いられてもよい。メッシュ631および被膜633は、流体流れ用の導管であるカニューレ625の柔軟な拡張可能部分626をもたらすことが可能である。カニューレ625の拡張可能部分626は、遠位端に位置する流れ入口642および近位端に位置する流れ出口644を有する略円筒であるとよい。
【0111】
メッシュ631は、半径方向拡張/収縮中に(軸方向に沿って)わずかな長さ変化しか生じることなく、半径方向に拡張可能である。カニューレ625の拡張可能部分626は、蓄えられた潜在エネルギーを用いて、半径方向に収縮または拡張するようになっている。従って、メッシュ631は、好ましくは、自己拡張/自己収縮装置である。
【0112】
拡張可能部分626の半径方向剛性は、カニューレ長さに沿って異ならせることが可能なメッシュ厚みおよびセル構造の幾何学的密度によって、制御可能である。このように半径方向剛性の可変性は、カニューレ剛性を与えられる流体力学的負荷と適合させるのに有用であり、その結果、(流体力学的圧力が長さに沿って変化する)流れダクトとして作用する管の半径方向撓みをほぼ一定に維持することが可能になる。これは、インペラにおける一定の運転先端間隙をもたらす領域において、重要である。
【0113】
また、カニューレの曲げ剛性は、軸方向に変化する制御可能なパラメータでもある。例えば、周方向リング692および軸方向コネクタ694を用いて、メッシュ631を形成
する場合、曲げ剛性は、主に軸方向コネクタの数および配置によって制御されるが、周方向リングの剛性およびエラストマー被膜633の剛性にも依存している。周方向リングの相対的な配置は、曲げ中、カニューレの半径方向安定性に大きく影響を与えるものである。例えば、図16に示されるように、メッシュ631は、互いに隣接する周方向リングのかなりの部分が軸方向に互いに入り込んでいる。この形態により、曲げ変形にて生じる半径方向座屈に対して極めて安定したカニューレが得られることになる。逆に、周方向リングが軸方向に互いに入り込んでいないメッシュパターンのカニューレは、曲げ変形中に半径方向座屈を生じる傾向がある。半径方向剛性は、メッシュ厚みまたはメッシュ密度によって、大きくすることが可能である。高密度メッシュは、低密度メッシュよりも大きい半径方向安定性をもたらすことが可能である。
【0114】
図17は、拡張状態にあるカニューレ625を示している。カニューレ625の拡張した部分626は、血液をカニューレに流入させる入口642を有する遠位端646と、血液をカニューレから流出させる出口644を有する近位端648を備えている。入口642と出口644との間に部分は、カニューレ625の拡張可能部分626である。入口642は、障害物がカニューレに入るのを防ぐ複数の入口ストラット652を備えているとよい。同様に、出口644は、複数の放出ストラット654を備えているとよい。これらの放出ストラット654は、静止ステータブレードとして作用し、インペラ605による放出流れから旋回速度分を排除するものである。入口ストラット652および放出ストラット654は、カニューレ組立体の短い部分(例えば、1cmの部分)を占めるとよく、装置の中心軸を中心とする均一な円配列に配置された平坦な線状要素であるとよく、またはメッシュ631の一部であってもよい。代替的に、翼形断面を有するストラット654が形成されてもよい。インペラ605は、近位端648の近くに配置され、ガイドワイヤ680が、カニューレ625内およびインペラ605のハブ610内に延びている。カニューレ625の拡張した部分626を通る血流は、LVADの場合、(図17に示されるように)右から左に向かい、血液は、遠位端646を通って装置に入り、近位端648を通って装置から外に出るようになっている。
【0115】
元の管の切除加工されていない領域は、元の管直径を保持し、格納形態のインペラ605を保持するカップの形態にある格納ハウジングとして用いられるとよい。格納ハウジング660は、血液が流れないカニューレ625の非拡張部分と呼ばれることもある。この場合、カニューレ625の拡張可能部分626は、放出ストラット654を介して格納ハウジング660に取り付けられている。代替的に、カニューレメッシュ631、放出ストラット654、および格納ハウジング660が、単一管から形成されてもよい。また、カニューレ入口ストラット652も、同一の管から形成されてもよい。従って、カニューレおよび種々の付属部品は、例えば、単一の管、例えば、単一のニチロール管をレーザ切断し、次いで、マンドレルを用いてメッシュ部分を賦形することによって、製造可能である。代替的に、カニューレの種々の部分を別個に作製し、溶接または他の取付け技術を用いて、互いに取り付けることもできる。格納ハウジング660は、インペラ605が格納位置に戻るのを助長するために、放出ストラット654の形状によって画定されるフレア端649を有しているとよい。
【0116】
インペラ605は、格納形態で格納ハウジング660内に保持され、展開するために、例えば、駆動シャフト630を用いてインペラを格納ハウジングの外に付勢することによって、拡張可能部分626内に軸方向に移動されるとよい。次いで、インペラ605は、格納形態にあるブレード612の蓄えられた潜在エネルギーによって、展開形態に拡げられる。代替的に、インペラ605は、拡張可能部分626内に収縮された格納形態で保持され、拡張可能部分の拡張時に、自動的に展開してもよい。さらに他の実施形態では、格納ハウジング660は、それ自体が拡張可能であってもよく、この場合、インペラ605を軸方向に移動させることなく展開直径に拡張することが可能である。
【0117】
前述のカニューレ625の例では、拡張可能部分626は、2.62mmの内径、3.02mmの外径、および150mmの長さを有するニチロール管から形成されている。拡張した状態では、拡張可能部分626は、拡張した部分において6.6mmの公称内径および133mmの公称長さを有している。拡張可能部分は、35個の周方向リング692、(8つの周方向リングを含む)完全接続領域におけるリングごとに4つの軸方向コネクタ694、および(28個の周方向リングを含む)最小接続領域におけるリングごとに1つの軸方向コネクタ694を備えている。各周方向リング692は、リングごとに4つの波を有している。各波は、(切断直径において)5.05mmの波振幅を有している。リングの軸方向に互いに入り込んでいる部分は、2.05/5=0.41である(ここで、軸方向に完全に互いに入り込んでいる場合の軸方向に互いに入り込んでいる比率が1で、軸方向に互いに入り込んでいるパラメータは、波振幅によって割られた重複距離である)。最後に、入口ストラット652および放出ストラット654の代表的な厚みは、0.2mmである。
【0118】
回転可能な駆動シャフト630によって、患者の外側に位置するモータ(図示せず)とインペラ605との間に回転連結をもたらしている。駆動シャフト630は、インペラ605に接続される遠位端に位置する実質的に剛性の部分632と、実質的に柔軟な部分634を有しているとよい。駆動シャフトの柔軟部分634は、柔軟管638内に収容されるとよい。柔軟管638は、柔軟部分を支持し、柔軟部分が回転可能に駆動されるとき、柔軟部分の形状を維持している。駆動シャフト630の近位端は、駆動シャフトおよび付随的にインペラ605を回転するために、モータに接続されているとよい。代替的に、駆動シャフト630は、省略されてもよく、ポンプモータおよびインペラ605を運転する電力が、組立体の近位部分を通して供給されてもよい。
【0119】
駆動シャフト630は、約1.5〜2mmの直径を有しているとよく、ガイドワイヤ680の貫通を可能にするために、中空であるとよい。駆動シャフト630の柔軟部分634は、約1cmの曲げ半径を達成するために容易に曲げ可能である金属編組またはポリマー編組から形成されているとよい。市販の柔軟インペラ駆動シャフト、例えば、金属ワイヤ構造物から形成される駆動シャフトが、血液ポンプ600に用いられてもよい。しかし、回転部品と非回転部品との間の摩擦による加熱問題が、運転に必要などのような小さい半径の曲げ部内にも生じることがある。このような加熱問題を低減するために、複合柔軟シャフトが用いられてもよい。また、加熱問題は、相対的な回転運動が大きい互いに隣接する面の片方または両方に潤滑フィルムまたは低摩擦フィルムを設けることによって、対処することができる。これに関して、好ましい駆動シャフト630は、コイル巻きステンレス鋼と任意選択的なポリマー支持管の組合せから構成されているとよい。特に好ましいポリマーは、ポリテトラフルオロエチレンである。
【0120】
駆動シャフト630の剛性部分632は、軸受ハウジング675内に保持される1つまたは複数の軸受672によって支持されているとよい。生理食塩水が、内腔670を通って軸受ハウジング675内に導かれるとよく、軸受ユニット端シール674が、極めて小量(略1〜2cc/hr)の無菌の生理食塩水しか患者内に注入されないように、寸法決めされているとよい。この流体流れは、インペラ605の清浄化を助長し、駆動シャフトの振動を緩和させるものである。また、この流体流れは、血液が軸受ハウジング675に入ってその運転および寿命を劣化させるのを防ぐことも可能である。もし、駆動シャフト630の密度が生理食塩水または他の導入流体の密度と略同一である場合、振動の殆どが緩和されることになる。駆動シャフト630は、金属の密度よりも低い密度を有して生理食塩水の密度とより一致する炭素繊維または他の繊維およびポリマー複合材から形成されるとよい。振動を緩和させるために、他の低密度駆動シャフトおよび/または高密度流体が用いられてもよい。生理食塩水または他の流体は、中空駆動シャフト630の開口67
8を通して、軸受ハウジング675に導かれるとよい。
【0121】
図23Aおよび図23Bは、軸方向に摺動可能な格納ハウジング660を有する血液ポンプ600の実施形態を示している。これらの図に示されるように、軸受ハウジング675は、その両端のハウジング軸受672間に小径部分677を有しているとよい。従って、この小径部分は、格納ハウジング660の凹んだ環状溝664によって画定された内部リブ662が摺動運動する長手方向空間を画定している。図23Aに示される展開状態では、格納ハウジング660は、内部リブ662と軸受ハウジング675の近位ショルダーとの係合によって、許容される最大長さにわたって近位側に移動し、これによって、インペラ605のブレード612を外に出し、展開させている。一方、図23Bに示される格納形態では、格納ハウジング660は、軸受ハウジング675の遠位ショルダーと接触する内部リブ662によって、許容される最大長さにわたって遠位側に移動している。この位置では、格納ハウジング660の遠位端は、インペラ605のブレード612を包囲し、格納形態に保持している。
【0122】
血液ポンプ600の内腔670には、ガイドワイヤ680が通っている。内腔670およびガイドワイヤ680は、協働して、血液ポンプ600を患者内に位置決めするのを補助している。ガイドワイヤ680は、軸受/シール組立体内およびインペラ605のハブ610内にガイドワイヤを縫うようにして通るのを促進するために、2つの部分からなる構造を有しているとよい。何故なら、縫うようにして血液ポンプ内を通る部分は、使用時ではなく、工場の管理条件下で血液ポンプ内に通されるからである。一実施形態では、ガイドワイヤ680は、大腿挿入部位から心臓の左心室に向かう曲がりくねった動脈経路の案内を容易にするJ字状先端682を有しているとよい。ガイドワイヤ680は、収縮したカニューレ625内に位置する(ガイドワイヤの直径と同様の直径を有する)延長部の取付けを可能とする任意選択的な装置を近位端に備えているとよい。血液ポンプ600の内腔670は、ガイドワイヤ680の直径に対して比較的大きい直径を有しているとよい。ガイドワイヤ680は、1つまたは複数の付加的な遠位特徴部、例えば、ガイドワイヤの回収後のインペラ605の孔を埋める球状部または弁プラグ689を有しているとよい(図22A参照)。
【0123】
任意選択的に、インペラ605および軸受ユニット端シール674内を通るガイドワイヤ通路は、当技術分野において知られているように、ガイドワイヤ680の取外しの後にガイドワイヤ通路をシールする弁作用を有しているとよい。ガイドワイヤ680が取外しの後、機械的なシール(図示せず)を残してもよいし、またはインペラ605の材料が、ガイドワイヤの取外し時に内腔670の開口を閉じるように、設計されてもよい。これによって、患者内への過剰な生理食塩水の注入が回避されることになる。
【0124】
血液ポンプ600は、シースレス挿入手順を用いて、患者の体内に挿入されるとよい。このような手順は、図15Cに示されるように、遠位部分702および近位部分704を有する保持シース700を用いるとよい。遠位部分702は、約20cmの長さ、約9fr(3.0mm)の内径、および約10.5fr(3.5mm)の外径を有しているとよい。この遠位部分の内径は、収縮したカニューレ/インペラ組立体の格納を可能にする大きさである。保持シースの近位部分704は、約9frの外径を有する約1mの長さであるとよい。この近位部分704は、駆動シャフト630の柔軟部分634およびカニューレ625の非拡張可能部分623用のハウジングとして機能することが可能である。
【0125】
「予装填された」一体化挿入シース800が、保持シース700の近位部分704の周囲を摺動するとよい。挿入シース800の外径は、好ましくは、保持シース700の遠位部分702の外径、この例では、約10.5frと同一である。保持シース800の遠位部分702の近位端が挿入シース800の遠位端802に対して引き出されるとき、図25
に示されるように、滑らかな遷移が明らかである。従って、保持シース700および挿入シース800の組合せは、単一品として患者の大腿動脈内に挿入されてもよい。挿入シースが大腿動脈内に完全に挿入された後、保持シース700の近位部分704が、患者内に押圧され、これによって、保持シースの遠位端およびその内容物を患者の左心室内に押し出すことが可能となる。
【0126】
保持シース700の最遠位端710は、カニューレ625の取外し中に、保持シース遠位端のわずかな拡張を可能にする一連のスロット(図示せず)を有しているとよい。カニューレ625の拡張可能部分626は、このプロセス中、収縮していなければならないので、これらのスロットによって生じる漏斗形状およびシース材料の後続する曲げによってカニューレの拡張可能部分の収縮が容易になる。カニューレ625の拡張可能部分626の再収縮を容易にする代替的手段が設けられてもよい。
【0127】
駆動モータは、カニューレまたは保持シース700を回転させることなく、駆動シャフト630を回転させるようになっている。血液ポンプ600の運転は、状況を表示して種々の機能を制御する制御ユニット(図示せず)によって制御かつ監視されている。圧力センサおよび流量センサのようなセンサが、患者の種々の領域および/または血液ポンプ600に取り付けられているとよい。
【0128】
制御ユニットは、好ましくは、駆動モータの回転数、患者の血圧、血流量、左心室における血液ポンプの位置に関する情報、生理食塩水の注入率および放出率、生理食塩水注入温度、などを表示している。また、生理食塩水の排出流内の破片または血液の存在を示すために、フィルターが設けられてもよい。心拍数および血流量は、回復中、機械に対する患者の依存を低減させることができるようにするのに、有用である。
【0129】
心臓補助装置の展開の詳細な説明
血液ポンプ600は、例えば、左心室補助装置として用いられる場合、大腿動脈内に経皮的に挿入され、心臓の方に縫うようにして通されるとよい。血液ポンプ600は、従来のカニューレ挿入方法を用いて、患者内に挿入してもよい。次いで、装置のインペラ605が、その場で拡張可能とされ、これによって、従来の非拡張可能装置と比較して、血液ポンピング能力を高めることが可能となる。従って、外科的介入の必要性をなくすことができる。
【0130】
挿入は、当技術分野においてよく知られ、外科医および介入心臓医によって日常的に用いられているセルジンガー(Seldinger)技術を用いて、なされるとよい。このような技
術では、導入針(図示せず)が、大腿動脈内に挿入され、ガイドワイヤ680の導入に用いられている。ガイドワイヤ680が適所に配置された時点で、導入針が引き出される。動脈切開(大腿動脈の開口)を血液ポンプ600の挿入に適する大きさに拡げるために、任意選択的な予拡張器(図示せず)が、ガイドワイヤ680の周囲に沿って配置されてもよい。
【0131】
収縮したカニューレ625内に収容されるガイドワイヤ延長部(図26参照)は、ガイドワイヤ680の近位端において取付け装置に取り付けられるとよい。ガイドワイヤ延長部をガイドワイヤ680の近位端に固定することによって、組立体の全体が、予め形成された大腿動脈開口を通してガイドワイヤに沿って移動されることになる。このプロセス中、ガイドワイヤ延長部685へのガイドワイヤ680の取付け部は、収縮したカニューレ組立体内に入ることになる。導入シースを用いない挿入を容易にするために、装置の遠方位端は、図20および図22に示される先細の遠位端拡張器688を備えているとよい。この拡張器688は、カニューレ626の入口を圧縮した形態、具体的には、入口ストラット652を従来の拡張器先端と同様の先細の閉鎖断形状に折り畳んだ形態であるとよい

【0132】
次いで、収縮した状態の血液ポンプ600が、ガイドワイヤ680の周囲に沿って縫うように通され、動脈内に挿入される。血液ポンプ600が配置された時点で、ガイドワイヤ680が取り外されるとよい。インペラ605の遠位端におけるノーズ軸受またはシールによって、インペラのハブ610のガイドワイヤ開口をシールすることが可能となる。これによって、冷却および潤滑を行う目的で、さらに血液が血液ポンプ600の内腔670に入るのを防ぐために、生理食塩水をインペラ605内に噴射することが可能となる。
【0133】
挿入時に、カニューレ625の拡張可能部分626およびインペラ605は、収縮されて保持シース700内に収容されてもよい。前述したように、保持シース700の近位端704は、装置が適所に配置されるとき、別の導入シースの機能に取って代わる任意選択的な第2の一体挿入シース800を備えていてもよい。もし大腿動脈内への補助装置の挿入中に「導入」シースを用いない場合、このプロセスは、シースレス挿入と呼ばれる。図25には、挿入シース800の直径から保持シース700の最大直径への滑らかな移行が示されている。
【0134】
血液ポンプ600の挿入中には、事実上、移行領域は、その長さおよび外径変化が零である。移行領域は、保持シース700の拡大遠位部分702が挿入シース800の端802と接触する領域である。収縮したカニューレ組立体が大腿動脈内に挿入され、挿入シース800の位置が患者の境界に固定された後、移行領域は、大腿動脈開口を数cm越えて位置することになる。この時点で、開業医は、挿入シース800の外部を固定して保持し、ガイドワイヤ680の遠位端におけるカニューレの遠位端および保持シースが左心室空洞900内に位置するまで、保持シース組立体をガイドワイヤ680に沿って継続的に押し出している。
【0135】
LVADとして用いられる装置の予測位置が、図26に示されている。カニューレ625の非拡張可能部分623は、下行大動脈905から大腿動脈内に延び、次いで、大腿動脈から、宿体に存在している。ガイドワイヤ680は、任意選択的な案内カテーテル(図示せず)を用いて、左心室900内に前進するとよい。補助装置の適切な位置決めを確立するために、X線透視装置が用いられてもよい。
【0136】
血液ポンプ600が適切に位置決めされた時点で、保持シース700は、いくつかの実施形態では、約15cm後退され、これによって、カニューレ625の拡張可能部分626が展開形態に拡張することが可能となる。
【0137】
血液ポンプ600を展開する最終ステップでは、インペラ605が格納ハウジング660内の格納位置から押し出され、カニューレ625の拡張した部分626内の特定位置に位置決めされる。このステップは、保持シース700を固定位置に保持しながら、小さい力を駆動シャフト630に加えることによって、達成されるとよい。次いで、保持シース700がカニューレ625の拡張部分626を予め固定された位置に保持する。もはや格納ハウジング600によって拘束されなくなった時点で、インペラ605は、蓄えられた歪エネルギーの作用によって展開形態に拡張することになる。
【0138】
カニューレ625の拡張可能部分626は、蓄えられた歪エネルギー(潜在エネルギー)の作用によって、その展開形態を達成するとよい。このプロセスによって、カニューレ入口642、カニューレの拡張した部分626、およびカニューレ出口644が現れる。十分な運転を行うには、カニューレ入口642が心臓の左心室900内に位置すること、および出口644が大動脈内に位置することが必要である。流体シールは、カニューレが大動脈弁の近くに位置する箇所に配置されねばならなく、カニューレの表面平滑さは、好
ましくは、大動脈弁が臨床的に著しく摩耗するのを防ぐようなものであるとよい。また、遠位端ストラット652は、入口が左心室内の軟質組織によって閉塞されるのを防ぐ入口グリッド(格子)を形成している。
【0139】
インペラ605は、弁を通して心臓の左心室900内に湾曲するカニューレ625の遠位端に向かって移動するとよく、インペラ605に連結された駆動シャフト630の柔軟部分634は、患者の体外に延在し、駆動モータによって回転されるようになっている。カニューレ625の非拡張部分623は、同様に大腿動脈を通って患者の外側に延在している。カニューレ部分626の遠位端にある入口642およびストラット652によって、装置内への血液の実質的に自由な流れを可能にし、この血液は、インペラ605によって、カニューレ部分626の近位端648における放出メッシュまたはストラット654を通して装置の外部に押し出されるようになっている。
【0140】
インペラ605を拡張する他の方法が用いられてもよい。1つの有力な代替的な手法として、インペラ605を膨張させるために、液体またはガスをシャフトを通して注入する方法が挙げられる。他の手法として、回転力を用いて、ブレード612を所定の形状に付勢する方法が挙げられる。ブレード、特にブレード根元における潜在エネルギーを用いて、ブレードを自由位置に展開してもよいし、流体力学的力によって、ブレードを運転形態にさらに変形させてもよい。
【0141】
予め引き出された保持シース700は、組立体の全体の位置を患者内に固定する働きをしている。このようにして、血液ポンプ600が展開され、支持機器への接続および使用の準備が整えられる。
【0142】
患者が回復し、血液ポンプ介入の必要がなくなると、インペラ605は、格納ハウジング660またはカニューレ625の非拡張可能部分623内に引き込まれ、使用されない圧縮形態に戻されるとよく、カニューレの拡張可能部分626は、保持シース700内に引き込まれるとよい。カニューレ625の引込みを補助するために、スロット(図示せず)または外側フレア649(図9参照)が格納ハウジング660の遠位端に設けられるとよい。次いで、保持シース700が、挿入シース800の近傍に引っ張られ、挿入シース、保持シース、および保持シース内のカニューレが、元の大腿動脈部位を通して患者から取り出されるとよい。続いて、患者の傷口が従来の手法によって閉じられるとよい。血液ポンプ600によってポンピングされた血液の流量および圧力上昇は、同一直径の従来型非収縮型装置よりも大きく、血液損傷(溶血)率は、臨床的に許容される低レベルに維持される。装置をRVADとして用いた場合も、前述したのと同様である。
【0143】
血液ポンプ600の拡張可能な特徴は、非拡張可能な従来技術による装置を上回る利点を有している。装置が非拡張可能型の場合、最大断面積は、経皮的挿入を可能にするために、約3mmに制限されるだろう。しかし、この最大断面積は、患者の健康を維持するのに十分な血流を得るには、不十分である。
【0144】
本発明による装置の他の用途として、追加的な血流を他の器官にもたらす用途、鼓動している心臓を補助する用途、などが挙げられる。
【0145】
カニューレ625の拡張可能部分626は、どのような所望の方法によって拡張されてもよい。1つの手法では、例えば、六角形構造を有するメッシュ631を用いる拡張可能部分626が軸方向に沿って収縮するとき、メッシュ631は、半径方向に拡張することが可能となる。この手法では、張力を図21Aに示される球状グロメット684を通してガイドワイヤ680に加えることによって、カニューレ625の拡張可能部分626を軸方向に短縮し、半径方向に拡張状態まで拡張することが可能となる。カニューレの拡張可
能部分に形状記憶材料が用いられる場合、形状記憶材料が所定温度に達したとき、例えば、カニューレが患者の血管内に挿入されたとき、カニューレは、拡張状態に達する。格納形態にあるインペラ605およびカニューレ625の両方が、保持シース700内に保持され、保持シースから取り外されたときに、機械的に展開されるかまたは自己展開されるようになっていてもよい。
【0146】
カニューレ625は、格納形態および拡張(展開)形態を含む少なくとも2つの形態を有しているとよい。血液ポンプの一部として用いられるとき、展開形態のカニューレ625は、約20〜30cmの長さおよび約6〜7mmの直径を有しているとよい。格納形態では、カニューレ625は、約3mmの直径を有しているとよく、これによって、血液ポンプ600を大腿動脈を通して人体対象部内に非外科的に挿入することが可能になる。展開直径が大きいので、非外科的に挿入された非拡張可能型カニューレを有する血液ポンプと比較して、挿入後の流量を増大させ、摩擦圧力損失を低減させることが可能となる。
【0147】
生体内に血液をポンピングする改良されたプロセスは、拡張可能インペラを設け、インペラを(例えば、約3mmから約4mmの間の直径を有する)格納形態で患者に挿入し、インペラを患者の血管内の所望の位置に位置決めし、インペラを(例えば、約6mmと約7mmの間の直径に)展開し、インペラを運転形態で約1,000から約30,000の間、好ましくは、約2,000から約10,000の間のレイノルズ数で運転することを含んでいる。より高いレイノルズ数の運転およびより効率的なポンプ運転が、より高い回転速度によって可能であるが、ポンピングされる流体内の構造体、例えば、血球の破壊が大きくなる可能性がある。インペラの運転直径は、格納直径よりも少なくとも約50%大きいとよい。他の例では、運転直径は、格納直径よりも少なくとも約100%大きいとよい。動物の場合、ポンプ部品は、動物の大きさに従って、拡縮されるとよい。
【0148】
新規の形態および材料選択によって、改良された装置を患者内へのカニューレ挿入に適するように圧縮することが可能である。代表的な装置は、拡張可能インペラ、およびインペラが内部で回転する少なくとも部分的に拡張可能なカニューレを備えている。拡張可能インペラおよびカニューレは、いずれも、非外科的な方法を用いて、静脈または動脈内へのカニューレ挿入を可能にする格納状態を有している。装置の挿入および配置の後、拡張可能インペラおよびカニューレは、展開状態に拡張する。インペラは、柔軟な駆動シャフトを通して、宿主の外部の駆動モータによって、または可能であれば軸受システムと一体化されるインペラに近接するモータを用いて、駆動されることが可能である。
【0149】
他のポンプ用途
ここに記載される改良された流体ポンプ設計の用途は、心室補助装置に制限されるものではない。改良されたカニューレおよびインペラの設計は、小径を有する格納形態がポンプを所望の位置に配置するのに有用であるどのような用途に対しても有用である。例えば、埋設して運転される流体ポンプは、小径の開口を通してパイプ、通路、または開口内に導かれ、用いられる開口の直径よりも大きい直径で運転されてもよい。拡張可能カニューレ内で展開するインペラの用途として、一体型ブースタポンプを有する収縮可能な消防ホース、収縮可能な推進機、生物学的流体用の生物医学的ポンプ、などが挙げられる。
【0150】
他の例では、インペラは、例えば、折畳み可能な形態にある金属シート、プラスチックおよび非弾性材料から形成されてもよい。展開の例として、モータまたは他の機械的装置を用いるブレードの展開、遠心力による自動展開、などが挙げられる。
【0151】
ここでは、本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示にすぎないことを理解されたい。従って、例示的な実施形態に対して、多数の修正がなされてもよく、他の構成が、特許請求の範囲に記載される
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、考案されてもよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプのインペラを格納する方法において、
ハブおよび1つ以上のブレードを有する拡張可能インペラと、メッシュを備えた拡張可能部分を有するカニューレとを備えるポンプを設け、
前記ブレードを、展開形態から圧縮形態まで圧縮し、前記ブレードの遠位端は前記ハブに接近し、
前記ブレードを、前記カニューレの一部分内において前記圧縮形態で保持することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポンプは保持シースをさらに備え、前記カニューレの前記拡張可能部分を前記保持シースによって圧縮状態に保持するようにすることをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カニューレの前記拡張可能部分は、前記拡張可能部分の長さに沿って変化する剛性を有していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレードを、前記カニューレの前記拡張可能部分の少なくとも一部分内において前記圧縮形態に保持することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カニューレは非拡張可能部分をさらに備え、前記ブレードを、前記カニューレの前記非拡張可能部分の少なくとも一部分内において前記圧縮形態に保持することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メッシュは、複数の周方向リングを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の周方向リングは、軸方向コネクタによって接続されていることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メッシュにエラストマー被膜が施されていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カニューレの前記拡張可能部分の長さは、半径方向の拡張及び収縮の間、実質的に一定のままであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレードを保持することは、前記ブレードを完全に前記カニューレの前記拡張可能部分内において保持することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ブレードを保持することは、前記インペラを前記カニューレの前記非拡張可能部分内へと軸方向に移動させることを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記インペラを、前記展開形態と前記圧縮形態間で前記カニューレ内において軸方向に移動させることをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ブレードを圧縮することは、前記ブレードの直径を小さくすることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記保持シースを、前記カニューレの少なくとも一部分の周囲を移動させ、前記カニューレを前記圧縮状態に保持し、前記ブレードを前記圧縮形態に保持することをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ブレードの前記遠位端を、前記ハブの方に折り畳み、前記ブレードが小さい直径になるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記保持シースと前記カニューレとの間の相対運動を提供し、前記カニューレを前記圧縮状態まで圧縮するようにすることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記カニューレを前記保持シースに対して軸方向に移動させて、前記カニューレを前記圧縮状態まで圧縮させることをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ブレードは、前記保持シースと前記カニューレとの間の相反運動によって展開するように構成されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記インペラは、前記ブレードが圧縮されるときに潜在エネルギーを蓄え、前記潜在エネルギーを解除することによって展開するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
駆動シャフトの近位端に力を加えて相対運動を生じさせることをさらに含み、前記駆動シャフトは、前記ブレードとその遠位端において連結していることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記カニューレの前記拡張可能部分は、可逆的に拡張可能であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記圧縮状態の前記カニューレは、拡張状態の前記カニューレの直径の半分以下の直径を有していることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記ブレードを、展開直径の半分以下の小さい直径に圧縮することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ブレードの前記展開直径は、約6mmから約7mmの間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ブレードを、約3mmから約4mmの間の小径に圧縮することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ポンプ内の拡張可能インペラを格納する方法において、
ポンプに対して流体の運動を生じさせるように構成されたポンプを設け、前記ポンプは、カニューレと、拡張可能インペラとを備え、前記カニューレは、メッシュを備えた拡張可能部分を有し、前記拡張可能インペラは、ハブと、前記インペラの長さに沿って少なくとも部分的にずれている複数のブレードとを備え、
前記複数のブレードをハブの方に折り畳んで、前記インペラの直径を小さくすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記拡張可能インペラを、前記カニューレ内に摺動可能に位置決めすることをさらに含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記拡張可能部分は、近位端と遠位端とを有し、前記近位端における曲げ剛性は前記遠位端における曲げ剛性よりも大きいことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記カニューレの前記拡張可能部分は、蓄えられた潜在エネルギーを使用して半径方向に収縮または拡張するように構成されていることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
拡張可能ポンプを圧縮する方法において、
可変剛性拡張可能部分および非拡張可能部分を有するカニューレと、前記拡張可能部分内に配置された拡張可能インペラと、前記カニューレの前記非拡張可能部分の周囲に配置された保持シースとを備えたポンプを設け、
前記保持シースを、前記カニューレの前記拡張可能部分の周囲を移動させて、前記カニューレの前記拡張可能部分を圧縮状態まで圧縮し、前記インペラを圧縮して格納形態にし、前記格納形態は、相反運動によって展開形態へと可逆的であることを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記拡張可能インペラは、ハブと、前記ハブに取り付けられ且つ前記ハブから離れて延在する遠位端を有する少なくとも1つのブレードとを備えていることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記インペラは、前記少なくとも1つのブレードの前記遠位端を前記ハブの方に折り畳むことによって圧縮されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記カニューレの前記拡張可能部分は、メッシュを備えていることを特徴とする、請求項30に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−152566(P2012−152566A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83873(P2012−83873)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2009−501590(P2009−501590)の分割
【原出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(500273296)ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション (14)
【出願人】(510267982)ソラテック コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】