ポンプ及び弁を利用したハイブリダイぜーションチャンバの撹拌装置
【課題】ポンプ及び弁を利用したハイブリダイぜーションチャンバの撹拌装置を提供する。
【解決手段】ハイブリダイぜーションチャンバと、ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備えるハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌するのに使われる撹拌装置及び該装置を利用した撹拌方法である。これにより、DNAチップを利用したハイブリダイぜーション時に、サンプルをさらに効率的に拡散させ、プローブと標的物質とのハイブリダイぜーションの効果を向上させられる。
【解決手段】ハイブリダイぜーションチャンバと、ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備えるハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌するのに使われる撹拌装置及び該装置を利用した撹拌方法である。これにより、DNAチップを利用したハイブリダイぜーション時に、サンプルをさらに効率的に拡散させ、プローブと標的物質とのハイブリダイぜーションの効果を向上させられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップのハイブリダイぜーションチャンバに使われる撹拌装置に係り、さらに具体的には、ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液を効率的に撹拌する撹拌装置及び該装置を利用した撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップとは、基板上に分析しようとする生体分子プローブを高密度に付着させることによって製造される。前記生体分子プローブは、DNAまたは蛋白質などでありうる。前記プローブとサンプル内の標的物質とのハイブリダイぜーションいかんを検出することにより、遺伝子発現の様相、遺伝子の欠陥、蛋白質の分布、または反応の様相などを分析することができる。バイオチップは、プローブの種類により、DNAチップ及び蛋白質チップなどに分けられ、プローブの付着形態により、固体基板上に付着されたマイクロアレイチップと、微細チャンネル上に付着されたLOC(Lab−On−a−Chip)に分けることが可能である。かかるバイオチップでは、サンプル内の標的物質とプローブとのハイブリダイぜーションのためのチャンバ内で、効果的なハイブリダイぜーションをなすために撹拌システムが必要である。
【0003】
従来のハイブリダイぜーションシステムに係る発明は、ポンプを利用するハイブリダイぜーションシステムと、空気と溶液とを利用するハイブリダイぜーションシステムとに大別できる。前記ポンプを使用するハイブリダイぜーションシステムの例は、特許文献1に開示されているテカン(Tecan)社の2個の膜ポンプ(membrane pump)を利用するハイブリダイぜーションシステム、及び特許文献2に開示されているアフィメトリックス(Affymetrix)社の流動システムポンプを利用するハイブリダイぜーションシステムを含む。前記空気及び溶液を利用するハイブリダイぜーションシステムの例は、特許文献3に開示されている回転式オーブンを利用するハイブリダイぜーションシステム、及び特許文献4に開示されている回転式カートリッジを利用するハイブリダイぜーションシステムを含む。
【0004】
図1A及び図1Bに図示されているように、前記特許文献2に開示されているアフィメトリックス社の流動システムポンプを利用する従来のハイブリダイぜーションシステムにおいて、ハイブリダイぜーションチャンバは、流体伝達システムによりポンプと連結されており、流体の循環によりハイブリダイぜーションが促進される。しかし、この場合において、連動ポンプ(peristaltic pump)と循環流体チャンネルとを使用するために、使われるサンプル量が多くなってしまうという問題点がある。このために、ハイブリダイぜーションシステムを利用して16時間ハイブリダイぜーションを行った後、使われたDNAチップは、回転式オーブンを利用して必ず洗浄及び乾燥されねばならない。
【0005】
図2A及び図2Bに示されているように、前記特許文献1に開示されているテカン社の2個の膜ポンプを利用する従来のハイブリダイぜーションシステムにおいて、2個のチャンネルの末端が前記ハイブリダイぜーションチャンバの末端に連結されている。前記各チャンネルは、撹拌用の膜及び2個のマイクロポンプを含み、それにより標的溶液は、チップ上でプローブと効果的にハイブリダイぜーションされうる。しかし、前記チャンバ内で効果的な撹拌を得るために、前記標的溶液をチャンバカバーまで満たしてサンプルを混合しなければならない。従って、チャンバの汚染がはなはだしいという問題点がある。
【0006】
図3に図示されているように、前記特許文献3に開示されている従来のハイブリダイぜーションシステムは、回転式オーブンを利用する。この場合において、前記回転式オーブン内で16時間ハイブリダイぜーションが行われる。
【0007】
図4A及び4Bに図示されているように、前記特許文献4に開示されている回転式カートリッジを利用する従来のハイブリダイぜーションシステムにおいて、前記ハイブリダイぜーションは、前記カートリッジを回転させることによって行われる。すなわち、チップカートリッジを製造した後、遠心力を利用してハイブリダイぜーションを行う。
【0008】
図5に図示されている従来のメモレック(Memorec)社のA−hybは、隔膜ポンプ(diaphragm pump)によるアクティブ循環を利用する。この場合において、前記サンプルは循環されるために、使用されるサンプルの量が、例えば約220μlと多くなってしまう。
【0009】
本発明者らは、前記従来技術等の問題点を克服するために鋭意研究して努力した結果、統合されたチャンネル上の1つのポンプと2つの弁とを利用すれば、効果的にハイブリダイぜーションチャンバを撹拌できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0013184号明細書
【特許文献2】米国特許第6391623号明細書
【特許文献3】欧州特許第0933126号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0001803号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、必要なサンプルの量を減少させ、ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液を効果的にハイブリダイぜーションさせることができる撹拌装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記撹拌装置を利用し、前記ハイブリダイぜーションチャンバ内に含まれている溶液を効果的に撹拌する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、ハイブリダイぜーションチャンバと、前記ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備えるハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌するのに使われる撹拌装置が提供される。
【0013】
前記装置を利用し、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ロックされた核酸(LNA:Locked Nucleic Acid)、ペプチド及び蛋白質からなる群から選択されたすくなくとも一つの生体分子がハイブリダイぜーションされうる。かかる生物分子のうち一部は、プローブとしてハイブリダイぜーションチャンバ内の固体基板に固定化され、他の一部は、標的物質として溶液内に含まれうる。
【0014】
前記撹拌装置のハイブリダイぜーションチャンバは、前記撹拌装置に固定されて、分離可能なカートリッジ形態で装着されることが望ましい。バイオチップ、すなわち、プローブ分子が固定されている固体基板は、前記カートリッジ内に挿入されうる。
【0015】
電気的信号に反応し、開放及び閉鎖されうる全ての弁が本発明に使われうる。望ましくは、ソレノイド弁(例えば、Bio−Chemvalve社のseries 075P)が使われうる。
【0016】
電気的信号に反応して作動されうる全ての弁が本発明に使われうる。特に、前記ポンプは、ステッピングモータ方式のマイクロポンプでありうる。
【0017】
本発明の他の側面によれば、第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を送るステップと、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を抜くステップと、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を送るステップと、第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を送るステップとを含むハイブリダイぜーションチャンバと、前記ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備える撹拌装置を利用してハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌する方法が提供される。
【0018】
本発明において、ポンプを上昇または下降させるという意味は、ポンプにより空気を送る、または抜くということを意味し、ポンプ自らの上昇または下降を意味するものではない。
【0019】
本発明の撹拌方法は、従来のハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液の循環による撹拌方式と異なり、チャンバ内の溶液がチャンネルを介した循環が行われず、エアチャンネル内の空気により両端が閉鎖されたシステムで撹拌されるということを特徴とする。従って、従来とは異なって多くのサンプル量を必要とせずに、少ないサンプルだけでもハイブリダイぜーション反応を行うことができるという長所がある。
【0020】
ポンプを上昇させた後、さらにポンプを上昇させるまでのブレーク周期が1分ないし3分でありうる。前記時間範囲のブレーク周期をおくことがハイブリダイぜーション効率を高め、ハイブリダイぜーションチップの強度係数変化(CV:Coefficient Variation)を減らすのに有利である。
【0021】
本発明は、ハイブリダイぜーションシステムにおいて、チップに標的溶液を効果的に拡散するための方式に係り、標的溶液がチップに固定化されているプローブに効果的に結合できるように、マイクロポンプの上下移動と弁の調節とによって閉鎖システム内で溶液にフローを与えることができる方式である。
【0022】
本発明は、ポンプの大きさに関係ないが、マイクロアレイまたはLOCなどに使用するのに適するように、弁及びポンプの大きさは、数μmから数十μmに小型化することが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、DNAチップを利用したハイブリダイぜーション時に、サンプルをさらに効率的に拡散させ、プローブと標的物質とのハイブリダイぜーションの効果を向上させることができる。また、ハイブリダイぜーションシステムにおいて、本発明に係る方法を使用することにより、少量(約45μl)のサンプルでもって撹拌方式を利用してハイブリダイぜーションでき、2つのポンプを利用した既存のハイブリダイぜーションシステムに比べて低廉なシステムを構築でき、ポンプ及び弁だけで閉鎖システム内で混合が可能であることにより、既存の隔膜ポンプ及び連動ポンプを利用したハイブリダイぜーションシステムを代替することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0025】
図6は、テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の概略図である。図6を参照すれば、ハイブリダイぜーションチャンバ1は、それぞれ2個のチャンネル2,2’に連結される2両端を備える。前記2個のチャンネル2,2’は、2枚の膜3,3’によりハイブリダイぜーションチャンバ1から分離され、それにより、前記ハイブリダイぜーションチャンバ1の汚染を防止できる。前記チャンネル2,2’の各末端は、それぞれ2個のポンプ4,4’と連結されている。前記ポンプ4,4’に印加された機械力(Fmech.)は、前記チャンネル2,2’の内部に空気を供給させる。前記供給された空気は、前記膜3,3’を介して前記ハイブリダイぜーションチャンバ1に含まれている溶液を撹拌させる。この場合において、前記ポンプ4,4’により生成される力を正確に制御し難く、前記チャンネル2,2’が汚染しうるために、前記膜3,3’が備えられなければならない。
【0026】
図7は、本発明の一実施形態によるハイブリダイぜーション装置内において、溶液を撹拌するのに使われるハイブリダイぜーション装置の概略図である。図7を参照すれば、本発明のハイブリダイぜーションチャンバの撹拌装置は、ハイブリダイぜーションチャンバ101、前記ハイブリダイぜーションチャンバ101の両端に連結された2つのエアチャンネル102,102’、前記エアチャンネル102,102’に設置された2つの弁103,103’、前記2つのエアチャンネル102,102’が連結された1つの統合エアチャンネル104、及び前記統合エアチャンネル104上に設置された1つのポンプ105を備える。本発明のハイブリダイぜーション装置は、前記テカン社のハイブリダイぜーション装置とは異なり、サンプルに撹拌を与えるために2個のシリンジポンプを使用せずに、三方向(3−way)弁を連結して一個のポンプでバブルの流れを制御する。従って、ポンプを一つだけ使用するので、コストが廉価となり、ポンプ一つだけを制御すればいいので、チャンネル汚染の可能性が低く、膜が必要ない。
【0027】
図8は、本発明の一実施形態によるハイブリダイぜーションチャンバを撹拌する方法を例示する概略的なフローチャートである。図8を参照すれば、本発明のハイブリダイぜーションチャンバの撹拌方法は、一方の弁である第1弁を開放させて他方の弁である第2弁を閉鎖させた状態でポンプを上昇させる(即ち、空気を送る)ステップ(図8の1に図示される)と、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態でポンプを下降させる(即ち空気を抜く)ステップ(図8の2に図示される)と、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態でポンプを上昇させる(即ち、空気を送る)ステップ(図8の3に図示される)と、第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態でポンプを下降させる(即ち空気を抜く)ステップ(図8の4に図示される)とを含む。図8において、閉鎖弁は、内部に「+」が表示されている円で表示され、開放弁は、円で表示され、ハイブリダイぜーションチャンバの充填された部位の変化は、溶液の動きを表す。かかる4つのステップのサイクルが反復されつつ、ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液を撹拌する。
【0028】
以下、実施例を介して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されると解釈されてはならない。
【実施例】
【0029】
<実施例1:静置と撹拌との間の拡散時間の測定>
アクリル材質の構造物を利用し、カートリッジを挿入できる構造物を作製した。チャンバを密封パッドにより覆い包んだ後、前記密封パッドをねじで固定し、150μmの高さのチャンバを形成した。前記密封パッドに孔を形成し、そこに2個の弁(Bio−Chemvlave社製のseries 075P)と1個のポンプ(Uniflow社製のステッピングモータ方式ポンプ)とを連結し、図7のような本発明の撹拌装置を作製した。完成した構造物の流入ホールに、脱イオン水45μlを入れて1μlのインクを入れた後に撹拌ポンプを連結した。実験進行にあたり、速度を異なるようポンプの上昇及び下降(空気を送る及び空気を抜く)を反復し、インクの拡散を観測した。
【0030】
直径17.3mm、高さ150μmの正四角形のチャンバを脱イオン水で充填した後にインク5μlを入れ、撹拌方式による拡散時間を前記記載方式を適用して測定した。ポンプを一回上昇するときの体積である上昇体積を4μlに固定し、上昇周期を変化させて撹拌速度を変化させた。
【0031】
表1は、撹拌速度による拡散時間の変化を記録した表である。
【0032】
【表1】
【0033】
前記表1から、撹拌速度によってサンプルの拡散速度に大きく差が出ることが分かる。
【0034】
<実施例2:上昇時間及びブレーク周期によるハイブリダイぜーションチップの強度係数変化(CV)>
実施例1で使用した撹拌装置を使用し、上昇時間/ブレーク時間によるハイブリダイぜーションチップ強度の係数変化(CV)を測定した。このときに使われたチップは、アミンをシリコンウェーハにコーティングした後、作製された構造物に合うように切り、この後にスポッタを利用し、同一プローブ(配列:TGT TCT CTT GTC TTG)を固定した。このように作製されたチップをアクリル構造物に固定するために、チップの安定性を高めるべくプラスチック構造物に接着剤を利用してカートリッジ形態に作製した(韓国特許出願第2004−0039981号公報参照)。これをアクリル構造物に装着した後、標的溶液(Cy3が標識されたプローブ(CAA GAC AAG AGA ACA)をハイブリダイぜーションバッファに混合した溶液)をチャンバに注入した後に、ポンプを利用して撹拌した。ハイブリダイぜーション過程の終了後、カートリッジを3X SSPETバッファと1X SSPETバッファとでそれぞれ5分間洗浄した後、レーザスキャナを利用してチップのイメージを分析した。分析後、各スポットの強度を定量し、これをもとにスポット間の強度CVを測定した。ブレーク周期は、ポンプを利用して空気を押し込んだ後、再びポンプが空気を押し込む周期までにかかる時間である。
【0035】
図9は、本発明の実施例で製造されたハイブリダイぜーションチップの上昇時間とブレーク周期とによる強度CVを表したグラフである。CVは、低いほど望ましい。図9を参照すれば、4μlの体積を上昇させるとき、上昇時間=0.1秒、ブレーク周期=2.3分であり、X値を設定したときのスポット強度CVとPM/MM比率のCVとが最小値を有することを確認することができた。ブレーク周期は必要であり、1分から3分ほど程度が望ましかった。
【0036】
<実施例3:ハイブリダイぜーションシステムの適用実験>
本発明の撹拌装置をMODY3チップに適用し、既存のカバースライドパッチ方式と比較した。実験に使われたプローブは、次の表2の通りである。
【0037】
【表2】
【0038】
まず、標的核酸MODY3に対して前記プローブを基板上に固定化させてマイクロアレイを完成した。すなわち、分子量10,000のポリエチレングリコール(PEG)、0.025M、炭酸ナトリウムバッファ(pH10)、ホルムアミドを1:1:2で混合した溶液に、WP(野生型プローブ)またはMP(突然変異プローブ)を入れた後、その最終溶液をシリコンウェーハの表面にバイオロボットプリンタ(モデル:PixSys 5500;Cartesian Technologies,Inc.,CA、米国)を利用してスポッティングした。その後、37℃で4時間ウェットなインキューベータに放置し、次いで背景ノイズの制御に必要な工程、すなわち、標的核酸をウェーハ表面に付着させないために、スポッティングされていない位置のウェーハ表面のアミン基が負電荷を帯びるように反応を実行して乾燥器に保管した。
【0039】
本実施例では、標的核酸(tgggttctgccctttgcgctgggatggtgaagcttccagcc)の本体、または両端に蛍光物質としてCy3−dUTPを標識した。前記の通りに標識された標的核酸のハイブリダイぜーション条件は、0.1%の6xSSPET(0.1%のTrition X−100を含むサリン燐酸ナトリウムEDTAバッファ)溶媒に溶解された187nM濃度の標的核酸とマイクロアレイとを37℃で16時間反応させたチップと、本発明による撹拌装置を利用して反応させたチップとを0.05%の6xSSPET及び0.05%の3xSSPETでそれぞれ5分ずつ常温で洗浄し、5分間常温で乾燥させた後、スキャニングした。このときのスキャニングは、アクソン(Axon)スキャナ(モデル:GenePix 4000B;Axon Instrument,Inc.,CA、米国)を利用し、スキャニングデータを解析するプログラムとしては、同一社のGenePix Pro 3.0を使用して比率成分と強度成分とを計算した。表3は、両方式の実験条件を比較した表である。
【0040】
【表3】
【0041】
試験チップを従来方法及び本発明の方法ごとに、それぞれ20枚ずつ試験し、スポット強度とPM/MM比率の平均とCVとを求めた結果は、表4の通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
表4から分かるように、本発明による方法が従来の方法より強度CVとPM/MM比率のCVとがはるかに少ないことが分かった。
【0044】
以上、具体的な実施例を参照して本発明を説明したが、当業者は、特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨及び範囲を外れずに多様な修正及び変形がなされうるということを理解できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のポンプ及び弁を利用したハイブリダイぜーションチャンバの撹拌装置は、例えば試料分析関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】アフィックスメトリックス社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図1B】アフィックスメトリックス社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図2A】テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図2B】テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図3】回転式オーブンを含む従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図4A】回転式カートリッジを含む従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図4B】回転式カートリッジを含む従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図5A】メモレック社で作製されたアクティブ循環方式を利用する従来のハイブリダイぜーション装置を図示した写真である。
【図5B】メモレック社で作製されたアクティブ循環方式を利用する従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図6】テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の概略図である。
【図7】本発明の一具現例によるハイブリダイぜーション装置内で溶液を撹拌するのに使われるハイブリダイぜーション装置の概略図である。
【図8】本発明の一具現例によるハイブリダイぜーションチャンバを撹拌する方法を例示する概略的なフローチャートである。
【図9】本発明の実施例で製造されたハイブリダイぜーションチップの上昇時間とブレーク周期とによる強度CVを表したグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1,101 ハイブリダイぜーションチャンバ
2,2’ チャンネル
3,3’ 膜
4,4’,105 ポンプ
102,102’ エアチャンネル
103,103’ 弁
104 統合エアチャンネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップのハイブリダイぜーションチャンバに使われる撹拌装置に係り、さらに具体的には、ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液を効率的に撹拌する撹拌装置及び該装置を利用した撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップとは、基板上に分析しようとする生体分子プローブを高密度に付着させることによって製造される。前記生体分子プローブは、DNAまたは蛋白質などでありうる。前記プローブとサンプル内の標的物質とのハイブリダイぜーションいかんを検出することにより、遺伝子発現の様相、遺伝子の欠陥、蛋白質の分布、または反応の様相などを分析することができる。バイオチップは、プローブの種類により、DNAチップ及び蛋白質チップなどに分けられ、プローブの付着形態により、固体基板上に付着されたマイクロアレイチップと、微細チャンネル上に付着されたLOC(Lab−On−a−Chip)に分けることが可能である。かかるバイオチップでは、サンプル内の標的物質とプローブとのハイブリダイぜーションのためのチャンバ内で、効果的なハイブリダイぜーションをなすために撹拌システムが必要である。
【0003】
従来のハイブリダイぜーションシステムに係る発明は、ポンプを利用するハイブリダイぜーションシステムと、空気と溶液とを利用するハイブリダイぜーションシステムとに大別できる。前記ポンプを使用するハイブリダイぜーションシステムの例は、特許文献1に開示されているテカン(Tecan)社の2個の膜ポンプ(membrane pump)を利用するハイブリダイぜーションシステム、及び特許文献2に開示されているアフィメトリックス(Affymetrix)社の流動システムポンプを利用するハイブリダイぜーションシステムを含む。前記空気及び溶液を利用するハイブリダイぜーションシステムの例は、特許文献3に開示されている回転式オーブンを利用するハイブリダイぜーションシステム、及び特許文献4に開示されている回転式カートリッジを利用するハイブリダイぜーションシステムを含む。
【0004】
図1A及び図1Bに図示されているように、前記特許文献2に開示されているアフィメトリックス社の流動システムポンプを利用する従来のハイブリダイぜーションシステムにおいて、ハイブリダイぜーションチャンバは、流体伝達システムによりポンプと連結されており、流体の循環によりハイブリダイぜーションが促進される。しかし、この場合において、連動ポンプ(peristaltic pump)と循環流体チャンネルとを使用するために、使われるサンプル量が多くなってしまうという問題点がある。このために、ハイブリダイぜーションシステムを利用して16時間ハイブリダイぜーションを行った後、使われたDNAチップは、回転式オーブンを利用して必ず洗浄及び乾燥されねばならない。
【0005】
図2A及び図2Bに示されているように、前記特許文献1に開示されているテカン社の2個の膜ポンプを利用する従来のハイブリダイぜーションシステムにおいて、2個のチャンネルの末端が前記ハイブリダイぜーションチャンバの末端に連結されている。前記各チャンネルは、撹拌用の膜及び2個のマイクロポンプを含み、それにより標的溶液は、チップ上でプローブと効果的にハイブリダイぜーションされうる。しかし、前記チャンバ内で効果的な撹拌を得るために、前記標的溶液をチャンバカバーまで満たしてサンプルを混合しなければならない。従って、チャンバの汚染がはなはだしいという問題点がある。
【0006】
図3に図示されているように、前記特許文献3に開示されている従来のハイブリダイぜーションシステムは、回転式オーブンを利用する。この場合において、前記回転式オーブン内で16時間ハイブリダイぜーションが行われる。
【0007】
図4A及び4Bに図示されているように、前記特許文献4に開示されている回転式カートリッジを利用する従来のハイブリダイぜーションシステムにおいて、前記ハイブリダイぜーションは、前記カートリッジを回転させることによって行われる。すなわち、チップカートリッジを製造した後、遠心力を利用してハイブリダイぜーションを行う。
【0008】
図5に図示されている従来のメモレック(Memorec)社のA−hybは、隔膜ポンプ(diaphragm pump)によるアクティブ循環を利用する。この場合において、前記サンプルは循環されるために、使用されるサンプルの量が、例えば約220μlと多くなってしまう。
【0009】
本発明者らは、前記従来技術等の問題点を克服するために鋭意研究して努力した結果、統合されたチャンネル上の1つのポンプと2つの弁とを利用すれば、効果的にハイブリダイぜーションチャンバを撹拌できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0013184号明細書
【特許文献2】米国特許第6391623号明細書
【特許文献3】欧州特許第0933126号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0001803号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、必要なサンプルの量を減少させ、ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液を効果的にハイブリダイぜーションさせることができる撹拌装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記撹拌装置を利用し、前記ハイブリダイぜーションチャンバ内に含まれている溶液を効果的に撹拌する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、ハイブリダイぜーションチャンバと、前記ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備えるハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌するのに使われる撹拌装置が提供される。
【0013】
前記装置を利用し、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)、ロックされた核酸(LNA:Locked Nucleic Acid)、ペプチド及び蛋白質からなる群から選択されたすくなくとも一つの生体分子がハイブリダイぜーションされうる。かかる生物分子のうち一部は、プローブとしてハイブリダイぜーションチャンバ内の固体基板に固定化され、他の一部は、標的物質として溶液内に含まれうる。
【0014】
前記撹拌装置のハイブリダイぜーションチャンバは、前記撹拌装置に固定されて、分離可能なカートリッジ形態で装着されることが望ましい。バイオチップ、すなわち、プローブ分子が固定されている固体基板は、前記カートリッジ内に挿入されうる。
【0015】
電気的信号に反応し、開放及び閉鎖されうる全ての弁が本発明に使われうる。望ましくは、ソレノイド弁(例えば、Bio−Chemvalve社のseries 075P)が使われうる。
【0016】
電気的信号に反応して作動されうる全ての弁が本発明に使われうる。特に、前記ポンプは、ステッピングモータ方式のマイクロポンプでありうる。
【0017】
本発明の他の側面によれば、第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を送るステップと、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を抜くステップと、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を送るステップと、第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を送るステップとを含むハイブリダイぜーションチャンバと、前記ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備える撹拌装置を利用してハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌する方法が提供される。
【0018】
本発明において、ポンプを上昇または下降させるという意味は、ポンプにより空気を送る、または抜くということを意味し、ポンプ自らの上昇または下降を意味するものではない。
【0019】
本発明の撹拌方法は、従来のハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液の循環による撹拌方式と異なり、チャンバ内の溶液がチャンネルを介した循環が行われず、エアチャンネル内の空気により両端が閉鎖されたシステムで撹拌されるということを特徴とする。従って、従来とは異なって多くのサンプル量を必要とせずに、少ないサンプルだけでもハイブリダイぜーション反応を行うことができるという長所がある。
【0020】
ポンプを上昇させた後、さらにポンプを上昇させるまでのブレーク周期が1分ないし3分でありうる。前記時間範囲のブレーク周期をおくことがハイブリダイぜーション効率を高め、ハイブリダイぜーションチップの強度係数変化(CV:Coefficient Variation)を減らすのに有利である。
【0021】
本発明は、ハイブリダイぜーションシステムにおいて、チップに標的溶液を効果的に拡散するための方式に係り、標的溶液がチップに固定化されているプローブに効果的に結合できるように、マイクロポンプの上下移動と弁の調節とによって閉鎖システム内で溶液にフローを与えることができる方式である。
【0022】
本発明は、ポンプの大きさに関係ないが、マイクロアレイまたはLOCなどに使用するのに適するように、弁及びポンプの大きさは、数μmから数十μmに小型化することが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、DNAチップを利用したハイブリダイぜーション時に、サンプルをさらに効率的に拡散させ、プローブと標的物質とのハイブリダイぜーションの効果を向上させることができる。また、ハイブリダイぜーションシステムにおいて、本発明に係る方法を使用することにより、少量(約45μl)のサンプルでもって撹拌方式を利用してハイブリダイぜーションでき、2つのポンプを利用した既存のハイブリダイぜーションシステムに比べて低廉なシステムを構築でき、ポンプ及び弁だけで閉鎖システム内で混合が可能であることにより、既存の隔膜ポンプ及び連動ポンプを利用したハイブリダイぜーションシステムを代替することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0025】
図6は、テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の概略図である。図6を参照すれば、ハイブリダイぜーションチャンバ1は、それぞれ2個のチャンネル2,2’に連結される2両端を備える。前記2個のチャンネル2,2’は、2枚の膜3,3’によりハイブリダイぜーションチャンバ1から分離され、それにより、前記ハイブリダイぜーションチャンバ1の汚染を防止できる。前記チャンネル2,2’の各末端は、それぞれ2個のポンプ4,4’と連結されている。前記ポンプ4,4’に印加された機械力(Fmech.)は、前記チャンネル2,2’の内部に空気を供給させる。前記供給された空気は、前記膜3,3’を介して前記ハイブリダイぜーションチャンバ1に含まれている溶液を撹拌させる。この場合において、前記ポンプ4,4’により生成される力を正確に制御し難く、前記チャンネル2,2’が汚染しうるために、前記膜3,3’が備えられなければならない。
【0026】
図7は、本発明の一実施形態によるハイブリダイぜーション装置内において、溶液を撹拌するのに使われるハイブリダイぜーション装置の概略図である。図7を参照すれば、本発明のハイブリダイぜーションチャンバの撹拌装置は、ハイブリダイぜーションチャンバ101、前記ハイブリダイぜーションチャンバ101の両端に連結された2つのエアチャンネル102,102’、前記エアチャンネル102,102’に設置された2つの弁103,103’、前記2つのエアチャンネル102,102’が連結された1つの統合エアチャンネル104、及び前記統合エアチャンネル104上に設置された1つのポンプ105を備える。本発明のハイブリダイぜーション装置は、前記テカン社のハイブリダイぜーション装置とは異なり、サンプルに撹拌を与えるために2個のシリンジポンプを使用せずに、三方向(3−way)弁を連結して一個のポンプでバブルの流れを制御する。従って、ポンプを一つだけ使用するので、コストが廉価となり、ポンプ一つだけを制御すればいいので、チャンネル汚染の可能性が低く、膜が必要ない。
【0027】
図8は、本発明の一実施形態によるハイブリダイぜーションチャンバを撹拌する方法を例示する概略的なフローチャートである。図8を参照すれば、本発明のハイブリダイぜーションチャンバの撹拌方法は、一方の弁である第1弁を開放させて他方の弁である第2弁を閉鎖させた状態でポンプを上昇させる(即ち、空気を送る)ステップ(図8の1に図示される)と、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態でポンプを下降させる(即ち空気を抜く)ステップ(図8の2に図示される)と、第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態でポンプを上昇させる(即ち、空気を送る)ステップ(図8の3に図示される)と、第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態でポンプを下降させる(即ち空気を抜く)ステップ(図8の4に図示される)とを含む。図8において、閉鎖弁は、内部に「+」が表示されている円で表示され、開放弁は、円で表示され、ハイブリダイぜーションチャンバの充填された部位の変化は、溶液の動きを表す。かかる4つのステップのサイクルが反復されつつ、ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液を撹拌する。
【0028】
以下、実施例を介して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されると解釈されてはならない。
【実施例】
【0029】
<実施例1:静置と撹拌との間の拡散時間の測定>
アクリル材質の構造物を利用し、カートリッジを挿入できる構造物を作製した。チャンバを密封パッドにより覆い包んだ後、前記密封パッドをねじで固定し、150μmの高さのチャンバを形成した。前記密封パッドに孔を形成し、そこに2個の弁(Bio−Chemvlave社製のseries 075P)と1個のポンプ(Uniflow社製のステッピングモータ方式ポンプ)とを連結し、図7のような本発明の撹拌装置を作製した。完成した構造物の流入ホールに、脱イオン水45μlを入れて1μlのインクを入れた後に撹拌ポンプを連結した。実験進行にあたり、速度を異なるようポンプの上昇及び下降(空気を送る及び空気を抜く)を反復し、インクの拡散を観測した。
【0030】
直径17.3mm、高さ150μmの正四角形のチャンバを脱イオン水で充填した後にインク5μlを入れ、撹拌方式による拡散時間を前記記載方式を適用して測定した。ポンプを一回上昇するときの体積である上昇体積を4μlに固定し、上昇周期を変化させて撹拌速度を変化させた。
【0031】
表1は、撹拌速度による拡散時間の変化を記録した表である。
【0032】
【表1】
【0033】
前記表1から、撹拌速度によってサンプルの拡散速度に大きく差が出ることが分かる。
【0034】
<実施例2:上昇時間及びブレーク周期によるハイブリダイぜーションチップの強度係数変化(CV)>
実施例1で使用した撹拌装置を使用し、上昇時間/ブレーク時間によるハイブリダイぜーションチップ強度の係数変化(CV)を測定した。このときに使われたチップは、アミンをシリコンウェーハにコーティングした後、作製された構造物に合うように切り、この後にスポッタを利用し、同一プローブ(配列:TGT TCT CTT GTC TTG)を固定した。このように作製されたチップをアクリル構造物に固定するために、チップの安定性を高めるべくプラスチック構造物に接着剤を利用してカートリッジ形態に作製した(韓国特許出願第2004−0039981号公報参照)。これをアクリル構造物に装着した後、標的溶液(Cy3が標識されたプローブ(CAA GAC AAG AGA ACA)をハイブリダイぜーションバッファに混合した溶液)をチャンバに注入した後に、ポンプを利用して撹拌した。ハイブリダイぜーション過程の終了後、カートリッジを3X SSPETバッファと1X SSPETバッファとでそれぞれ5分間洗浄した後、レーザスキャナを利用してチップのイメージを分析した。分析後、各スポットの強度を定量し、これをもとにスポット間の強度CVを測定した。ブレーク周期は、ポンプを利用して空気を押し込んだ後、再びポンプが空気を押し込む周期までにかかる時間である。
【0035】
図9は、本発明の実施例で製造されたハイブリダイぜーションチップの上昇時間とブレーク周期とによる強度CVを表したグラフである。CVは、低いほど望ましい。図9を参照すれば、4μlの体積を上昇させるとき、上昇時間=0.1秒、ブレーク周期=2.3分であり、X値を設定したときのスポット強度CVとPM/MM比率のCVとが最小値を有することを確認することができた。ブレーク周期は必要であり、1分から3分ほど程度が望ましかった。
【0036】
<実施例3:ハイブリダイぜーションシステムの適用実験>
本発明の撹拌装置をMODY3チップに適用し、既存のカバースライドパッチ方式と比較した。実験に使われたプローブは、次の表2の通りである。
【0037】
【表2】
【0038】
まず、標的核酸MODY3に対して前記プローブを基板上に固定化させてマイクロアレイを完成した。すなわち、分子量10,000のポリエチレングリコール(PEG)、0.025M、炭酸ナトリウムバッファ(pH10)、ホルムアミドを1:1:2で混合した溶液に、WP(野生型プローブ)またはMP(突然変異プローブ)を入れた後、その最終溶液をシリコンウェーハの表面にバイオロボットプリンタ(モデル:PixSys 5500;Cartesian Technologies,Inc.,CA、米国)を利用してスポッティングした。その後、37℃で4時間ウェットなインキューベータに放置し、次いで背景ノイズの制御に必要な工程、すなわち、標的核酸をウェーハ表面に付着させないために、スポッティングされていない位置のウェーハ表面のアミン基が負電荷を帯びるように反応を実行して乾燥器に保管した。
【0039】
本実施例では、標的核酸(tgggttctgccctttgcgctgggatggtgaagcttccagcc)の本体、または両端に蛍光物質としてCy3−dUTPを標識した。前記の通りに標識された標的核酸のハイブリダイぜーション条件は、0.1%の6xSSPET(0.1%のTrition X−100を含むサリン燐酸ナトリウムEDTAバッファ)溶媒に溶解された187nM濃度の標的核酸とマイクロアレイとを37℃で16時間反応させたチップと、本発明による撹拌装置を利用して反応させたチップとを0.05%の6xSSPET及び0.05%の3xSSPETでそれぞれ5分ずつ常温で洗浄し、5分間常温で乾燥させた後、スキャニングした。このときのスキャニングは、アクソン(Axon)スキャナ(モデル:GenePix 4000B;Axon Instrument,Inc.,CA、米国)を利用し、スキャニングデータを解析するプログラムとしては、同一社のGenePix Pro 3.0を使用して比率成分と強度成分とを計算した。表3は、両方式の実験条件を比較した表である。
【0040】
【表3】
【0041】
試験チップを従来方法及び本発明の方法ごとに、それぞれ20枚ずつ試験し、スポット強度とPM/MM比率の平均とCVとを求めた結果は、表4の通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
表4から分かるように、本発明による方法が従来の方法より強度CVとPM/MM比率のCVとがはるかに少ないことが分かった。
【0044】
以上、具体的な実施例を参照して本発明を説明したが、当業者は、特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨及び範囲を外れずに多様な修正及び変形がなされうるということを理解できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のポンプ及び弁を利用したハイブリダイぜーションチャンバの撹拌装置は、例えば試料分析関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】アフィックスメトリックス社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図1B】アフィックスメトリックス社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図2A】テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図2B】テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の写真である。
【図3】回転式オーブンを含む従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図4A】回転式カートリッジを含む従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図4B】回転式カートリッジを含む従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図5A】メモレック社で作製されたアクティブ循環方式を利用する従来のハイブリダイぜーション装置を図示した写真である。
【図5B】メモレック社で作製されたアクティブ循環方式を利用する従来のハイブリダイぜーション装置を図示した図面である。
【図6】テカン社で作製された従来のハイブリダイぜーション装置の概略図である。
【図7】本発明の一具現例によるハイブリダイぜーション装置内で溶液を撹拌するのに使われるハイブリダイぜーション装置の概略図である。
【図8】本発明の一具現例によるハイブリダイぜーションチャンバを撹拌する方法を例示する概略的なフローチャートである。
【図9】本発明の実施例で製造されたハイブリダイぜーションチップの上昇時間とブレーク周期とによる強度CVを表したグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1,101 ハイブリダイぜーションチャンバ
2,2’ チャンネル
3,3’ 膜
4,4’,105 ポンプ
102,102’ エアチャンネル
103,103’ 弁
104 統合エアチャンネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリダイぜーションチャンバと、
前記ハイブリダイゼーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、
前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、
前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、
前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、
前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプと、
を備えるハイブリダイゼーションチャンバ内で溶液を撹拌するのに使用される撹拌装置。
【請求項2】
DNA、RNA、PNA、LNA、ペプチド及び蛋白質からなる群から選択されたすくなくとも一つの生体分子がハイブリダイぜーションされることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記ハイブリダイぜーションチャンバは、分離可能なカートリッジ形態で装着されることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記弁は、ソレノイド弁であることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記ポンプは、ステッピングモータ方式のマイクロポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項6】
(請求項6につきましては別途テクニカルクエスチョン)(請求項6は英語の明細書の説明と図8と一致しません)
第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を送るステップと、
第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を抜くステップと、
第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を送るステップと、
第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を抜くステップとを含む
ハイブリダイぜーションチャンバと、
前記ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、
前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、
前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、
前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、
前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備える撹拌装置を利用してハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌する方法。
【請求項7】
ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液がチャンネルを介した循環なしに閉鎖システムで撹拌されることを特徴とする、請求項6に記載の撹拌方法。
【請求項8】
ポンプを上昇させた後、さらにポンプを上昇させるまでのブレーク周期が1分ないし3分であることを特徴とする、請求項6に記載の撹拌方法。
【請求項1】
ハイブリダイぜーションチャンバと、
前記ハイブリダイゼーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、
前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、
前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、
前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、
前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプと、
を備えるハイブリダイゼーションチャンバ内で溶液を撹拌するのに使用される撹拌装置。
【請求項2】
DNA、RNA、PNA、LNA、ペプチド及び蛋白質からなる群から選択されたすくなくとも一つの生体分子がハイブリダイぜーションされることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記ハイブリダイぜーションチャンバは、分離可能なカートリッジ形態で装着されることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記弁は、ソレノイド弁であることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記ポンプは、ステッピングモータ方式のマイクロポンプであることを特徴とする、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項6】
(請求項6につきましては別途テクニカルクエスチョン)(請求項6は英語の明細書の説明と図8と一致しません)
第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を送るステップと、
第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を抜くステップと、
第1弁を閉鎖させて第2弁を開放させた状態で空気を送るステップと、
第1弁を開放させて第2弁を閉鎖させた状態で空気を抜くステップとを含む
ハイブリダイぜーションチャンバと、
前記ハイブリダイぜーションチャンバの両端に連結された第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルと、
前記第1エアチャンネル上に設置された第1弁と、
前記第2エアチャンネル上に設置された第2弁と、
前記第1エアチャンネル及び第2エアチャンネルを連結する統合エアチャンネルと、
前記統合エアチャンネル上に設置されたポンプとを備える撹拌装置を利用してハイブリダイぜーションチャンバ内で溶液を撹拌する方法。
【請求項7】
ハイブリダイぜーションチャンバ内の溶液がチャンネルを介した循環なしに閉鎖システムで撹拌されることを特徴とする、請求項6に記載の撹拌方法。
【請求項8】
ポンプを上昇させた後、さらにポンプを上昇させるまでのブレーク周期が1分ないし3分であることを特徴とする、請求項6に記載の撹拌方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−162624(P2006−162624A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352700(P2005−352700)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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