説明

ポンプ装置

【課題】本考案は、完全水抜きを可能とし、かつ簡素な構成で信頼性が高く、しかも廉価に提供できポンプ装置を提供する。
【解決手段】たとえば水Mの吸上げをなすポンプ本体10と、このポンプ本体に接続されたとえば漏洩検知管7内に挿入して上記ポンプ本体を作用することにより水を吸上げ案内する水抜き管11と、この水抜き管の先端部に取付けられ水を吸上げ案内するとともにポンプ本体の作用を停止した状態で水抜き管内に残った水をそのまま水抜き管内に滞留させ外部への流出を阻止する逆流防止具12とを具備した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、ポンプ本体と、このポンプ本体に接続される吸上げ管体とを備えたポンプ装置に係わり、特に吸上げ管体内に残る流体の外部への逆流を阻止する逆流防止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば軽油を貯蔵するための地下タンクがある。この地下タンクは、直接的および間接的に細部に亘って種々の法規制のもとで構成されていて、その一つに、地下タンクに対する定期点検がある。
【0003】
すなわち、消防法第14条の3の2により、特定の貯蔵所などの所有者に対して、地下タンクなどの貯蔵所の位置、構造、設備について定期的(1年に1回以上)に点検を行い、その点検記録を作成し、これを保存(3年)する業務を課せられる。
【0004】
点検事項としては、消防法第10条第4項の技術上の基準に適合しているかどうか、外部から見て異常の有無を確認する目視による外部点検などが主となっている。
【0005】
そのため、地下タンクの周壁に所定の間隔を存して複数の漏洩検知管が埋設されている。何らかの原因で、タンク周壁に亀裂が入って内部の油が漏れた場合は、染み出た油の一部がいずれかの漏洩検知管の下端開口部から内部に侵入する。
やがては、亀裂部分およびその付近を介してタンク内部と漏洩検知管とが連通するところとなり、油面高さがほとんど同一になる。
【0006】
したがって、定期点検時において、漏洩検知管内にホースを挿入してポンプを駆動し、このとき油の吸上げを確認すれば、タンク壁に亀裂が入って軽油が漏れていることを検知できる。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、上記漏洩検知管の上端開口部はパッキンを介して蓋体で閉塞され、定期点検時のみ開放するようになってる。しかしながら、蓋体は地上に露出しているので風雨にさらされ、パッキンの性能が損なわれて管内に雨水が侵入することがある。
【0008】
あるいは、漏洩検知管内外の温度差からこの内周壁が結露し、結露水が流下して下端部に溜まったり、何らかの原因で管自体に亀裂が入ってそこから水分が侵入することがある。
【0009】
必ずしも全ての地下タンクの漏洩検知管下端部に水が溜まるとは限らないが、それでも半数近くの地下タンクの漏洩検知管に水が確認された。油は水よりも比重が軽いため、たとえタンクから油が染み出るようなことがあっても、漏洩検知管内に侵入した油はここに溜った水の上に浮いてしまう。
【0010】
定期点検時には漏洩検知管内の水を吸上げることとなり、油の存在に気がつかない事態も起こり得て危険である。そのため、定期的にポンプ装置である水抜き装置を用いて管内の水を排出する必要がある。
【0011】
上記水抜き装置は、ポンプ本体と、このポンプ本体に接続され、漏洩検知管内に挿入して上記ポンプ本体を駆動することにより水を吸上げ案内する水抜き管 (もしくはホース)とから構成される。
【0012】
ところが、ポンプ本体を駆動してから停止すると、水抜き管に対する吸上げ作用(負圧作用)が解消する。このとき、たとえば水抜き管内に水が残っていた場合には、水が逆流して水抜き管外部である漏洩検知管内に戻ってしまう。
【0013】
単純なパイプ状では完全な水抜きをすることができないので、たとえば水抜き管に機械式に作動する逆止弁を設けて、管内の水が逆流しないようにした構成が考えられる。
【0014】
ところが、漏洩検知管内に溜まる水は純粋ではなく、多くは砂やヘドロなどの不純物が混在している。水抜きにともなって、これら砂やヘドロの類が逆止弁を通過するところから、一部は逆止弁に付着したままとなる。
【0015】
上記逆止弁は、いわゆる砂を噛んだ状態となって完全に閉成しないことが多く、信頼性に劣るものである。現状では、この逆止弁構造以外に考えられず、したがってより簡素な構成で信頼性が高く、かつ廉価に提供できる完全水抜き構造を備えたポンプ装置が要望されている。
【0016】
本考案は上記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、完全水抜きを可能とし、かつ簡素な構成で信頼性が高く、しかも廉価に提供できるポンプ装置を提供しようとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を満足するため、本考案のポンプ装置は、請求項1として、流体の吸上げをなすポンプ本体と、このポンプ本体に接続され吸上げ対象部位に挿入して上記ポンプ本体を作用することにより流体を吸上げ案内する吸上げ管体と、この吸上げ管体の先端部に取付けられ流体を吸上げ案内するとともにポンプ本体の作用を停止した状態で吸上げ管体内に残った流体をそのまま吸上げ管体内に滞留させ外部への流出を阻止する逆流防止具とを具備したことを特徴とする。
【0018】
請求項2として、請求項1記載のポンプ装置において上記逆流防止具は、上記吸上げ管体の開口端に嵌め込まれ、この開口端を閉塞するプラグと、このプラグの軸方向に沿って貫通して設けられる取付け用孔と、この取付け用孔に嵌め込まれ一端部は吸上げ管体内に開口し他端部はプラグおよび吸上げ管体から外部へ突出する細管とからなることを特徴とする。
【0019】
請求項3として、請求項1記載のポンプ装置において上記逆流防止具は、吸上げ管体の先端開口部を閉塞するとともに、吸上げ管体直径よりも細径の細孔を有するプラグ体であることを特徴とする。
【0020】
請求項4として、請求項2および請求項3のいずれか記載のポンプ装置において上記逆流防止具は、上記吸上げ管体に対して着脱自在であることを特徴とする。
【0021】
このような課題を解決する手段を採用することにより、簡素な構成で、信頼性が高い完全水抜きが可能となる。
【0022】
【考案の実施の形態】
以下、図面を参照して本考案の実施の形態について説明する。 図1に示すように、地表Sから所定の平面形状で、かつ所定深さだけ掘り下げられたあと、ここにコンクリート壁で箱状に形成される地下タンクAが埋設されて、貯溜物であるたとえば軽油Kを貯蔵するようになっている。
【0023】
地下タンクA上面は地上面に露出し、ほぼ中央部にマンホール1が設けられ蓋体2で開閉自在に閉成される。マンホール1内には、軽油Kを地下タンクAへ供給する際に用いられる注入管3と、地下タンクAから軽油Kを取出す際に用いられる吸上げ管4とを取付けた取付け板5が嵌め込まれる。マンホール1の近傍には、タンクA内に溜まったガスを外部に排出する通気管6が設けられる。
【0024】
地下タンクAの周壁には、所定の間隔を存して複数の漏洩検知管7が埋設されている。これら漏洩検知管7の上端部は、地下タンクA上面から突出していて、蓋体8で開閉自在に閉成される。さらに、漏洩検知管7は、この上端部から周壁の下方向へ延出され、下端部は上記地下タンクA底部とほとんど同一位置に開口している。
【0025】
何らかの原因で、タンクA周壁に亀裂が入って内部の軽油Kが漏れた場合は、いずれかの漏洩検知管7の下端開口部から内部に侵入する。したがって、定期点検時において漏洩検知管7内の軽油Kの存在を確認したら、タンクAに亀裂が入っており軽油Kが漏れていることとなる。
【0026】
図2に示すように、種々の事情から漏洩検知管7底部に水Mが溜まることがある。この水Mには、砂やヘドロが混在して泥水状態となっており、かつタンクAに亀裂が入って軽油Kが漏れている場合は、この上に溜まる。
【0027】
そこで、後述するポンプ装置である水抜き装置Pを用いて、漏洩検知管7内の水を完全に抜き取ることとする。
【0028】
図3に示すように、水抜き装置Pは、ポンプ本体10と、このポンプ本体10に接続される吸上げ管体である水抜き管11と、この水抜き管11の先端部に取付けられる逆流防止具12とから構成される。
【0029】
上記ポンプ本体10は、従来から用いられる市販のポンプであってよい。上記水抜き管11は、全てがパイプ体である必要がなく、一部が柔軟なホースであってもよい。要は、漏洩検知管7内に挿入可能な直径(たとえば16mm)と、その先端部が漏洩検知管7下端部に到達する全長を有すればよく、したがって従来から用いられるもの、そのままでよい。
【0030】
図4および図5に示すように、上記逆流防止具12は、上記水抜き管11の下部開口端に嵌め込まれ、この開口端を閉塞するプラグ13と、このプラグ13の軸方向に沿って貫通して設けられる取付け用孔14と、この取付け用孔14に嵌め込まれ、一端部は水抜き管11内に開口し、他端部はプラグ13および水抜き管11から外部へ突出する細管15とから構成される。
【0031】
なお、上記プラグ13は、水抜き管11に嵌まり込む直径の市販のプラグ(栓体)を購入して、この中心線に沿って取付け用孔14を設ければよい。上記細管15は、取付け用孔14に嵌まり込む直径(たとえば7mm)でプラグ13の長さ以上の全長の、たとえばアクリル製透明パイプを用いる。
【0032】
そして、プラグ13と細管15とを接着剤で互いに接着固定すればよく、これら全ては市販品で用が足りる。新らたに購入するのはプラグ13と細管15および接着剤だけですみ、費用的には極くわずかである。
【0033】
このような逆流防止具12を水抜き管11に取付けることにより、水抜き管11の先端部はプラグ13を介して細管15と二重管構造となり、極めて簡素であると言える。
【0034】
そして、上記逆流防止具12は予め水抜き管11端部に取付け固定しておいてもよいが、後述する理由によって、水抜き管11に対して着脱自在とした方が都合がよい。
【0035】
すなわち、漏洩検知管7内の水抜き作業にあたっては、はじめから逆流防止具12を取付けず、水抜き管11をそのまま漏洩検知管7内に挿入する。この先端部が漏洩検知管7の下端部に到達するまで挿入(勿論、目視できないのでカンで行う)し、しかるのちポンプ本体10を駆動する。
【0036】
漏洩検知管7内に溜まった水Mは水抜き管11を介して吸上げられ、タンクA外部に排水される。水抜き管11は漏洩検知管7の直径に近い太さであるので吸上げ量が大であり、比較的短時間で全ての水Mを抜ける。
【0037】
所定時間経過後、ポンプ本体10を停止する。このとき、水抜き管11内に残った水は吸上げ作用(負圧作用)の解除によって水抜き管11内を逆流し、この下端開口から漏洩検知管7内に戻る。
【0038】
そこで、ポンプ本体10を停止したあと、一旦、漏洩検知管7から水抜き管11を完全に引出して、この先端部に逆流防止具12を嵌め込む。そして、再び水抜き管11を漏洩検知管7内に挿入し、逆流防止具12を構成する細管15を漏洩検知管7底部に接触させてからポンプ本体10を駆動する。
【0039】
図6(A)に示すように、漏洩検知管7内に逆流した水Mは細管15から水抜き管11内に吸込まれ、さらにポンプ本体10へ吸上げられる。たとえ、吸上げられる水Mにヘドロや砂が混在していても、細管15は所定の直径を確保しており、しかも弁機構などの機械的に作動する機構部を備えていないので、何らの支障もなく円滑な吸上げがなされる。
【0040】
全ての水Mを抜いたと判断したら、ポンプ本体10を停止する。このときも当然、ポンプ本体10に到達せずに水抜き管11内に水が残ることがあり、ポンプ本体10の停止にともなって水抜き管11内の負圧状態が解除される。
【0041】
図6(B)に示すように、水抜き管11を引上げる。この状態で水抜き管11の先端部に細管15を備えた逆流防止具12が嵌め込まれているので、水抜き管11は実質的に先細り状の管体となっている。
【0042】
換言すれば、水抜き管11はいわゆるスポイト状をなす。したがって、水抜き管11を引上げても細管15内の水Mに表面張力が作用して、スポイトと同様、先端部である細管15から内部の水Mが垂れ落ちることがない。
【0043】
このように、漏洩検知管7に対して完全な水抜きが行われる一方で、水抜き管11は内部に水を保持した状態で漏洩検知管7から引き抜かれる。そして、水抜き管11を外部に引上げたあと、逆流防止具12を取外す。水抜き管11はもとの状態となり、開口端直径が拡大して水Mの表面張力が作用しなくなり、ここに保持されていた水Mはただちに排出する。
【0044】
なお実測値として、従来のように水抜き管11単独で漏洩検知管7内の水を抜いた場合は、作業時間として25分必要であった。このときは、ポンプ本体10の停止にともなって水抜き管11に残った水Mが漏洩検知管7内に逆流することは、上述した通りである。
【0045】
また、はじめから水抜き管11の先端部に細管15を備えたプラグ13からなる逆流防止具12を嵌め込んでおき、これを漏洩検知管7内に挿入して水抜きをなした。
【0046】
このときは、いわゆるスポイトと同様の作用をなすので完全な水抜きができるとともに、水抜き管11の引き上げ時に内部に保持した水Mが逆流しない。その反面、本来の水抜き管11の直径よりも細い直径の細管15で終始吸上げをなすので時間がかかり、約40分必要とした。
【0047】
これに対して、上述のように、はじめは水抜き管11だけで水Mを抜き、一旦引き揚げて逆流防止具12を嵌め込んでから水抜きをなしたら、作業時間を含めて30分で済んだ。
【0048】
この場合、二度手間となるが、逆流防止具12の着脱だけの比較的容易な作業であり、作業上の悪影響はない。なによりも、漏洩検知管7内の完全水抜きを可能とした、高品質のサービスが行われることとなる。
【0049】
なお、上記実施の形態として、逆流防止具12をプラグ13と細管15との二部品から構成したが、これに限定されるものではない。
【0050】
図7に示すように、逆流防止具12Aは水抜き管15の先端開口部を閉塞するプラグ体の単独部品から構成してもよい。この場合、プラグ体12Aには細孔16が軸方向に沿って設けられていて、この両端面で開口している。
【0051】
当然、プラグ体12Aに設けられる細孔16の直径は、プラグ体12Aを嵌め込む水抜き管11の直径よりも細径であり、したがってポンプ本体10の停止時に水抜き管11内に水が残っていても、細孔16内の水の表面張力で逆流を阻止することには変わりがない。
【0052】
そして、水抜き管11の先端部内周にねじ穴部17を設け、逆流防止具12Aにはねじ部18を設けて、必要に応じて着脱できるようにすれば、先に説明したような作業時間の短縮化が得られることも同様である。
【0053】
また、ポンプ装置10として、漏洩検知管7の水抜きに用いるばかりでなく、要はポンプ本体に接続される吸上げ管体の中に残った流体が再び外部に流出するのを防止する、逆流防止効果を期待する分野全てに適用できる。
【0054】
その意味から、たとえば既存の家庭用灯油ポンプの先端部に上述の逆流防止具を取付けて用いれば、灯油缶内の灯油を全て吸上げることができるし、あるいは自動車のオイル交換時にホースの先端に上述の逆流防止具を取付ければ、完全なオイル抜き取りが可能となるなど、適用範囲はすこぶる大である。
【0055】
【考案の効果】
以上説明したように本考案によれば、ポンプ本体に接続される吸上げ管体に逆流防止具を取付けることで、吸上げ管体からの逆流を防止して完全な水抜きを可能とし、かつ簡素な構成で信頼性が高く、しかも廉価に提供できるなどの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施の形態の、地下タンクの構成図。
【図2】同実施の形態の、漏洩検知管の下端部の状態を説明する図。
【図3】同実施の形態の、漏洩検知管にポンプ装置を装着した状態を説明する図。
【図4】同実施の形態の、水抜き管に逆流防止具を装着した状態の断面図。
【図5】同実施の形態の、逆流防止具の構成を説明する図。
【図6】同実施の形態の、逆流防止具から水を吸上げる状態と、逆流防止具の逆流防止を説明する図。
【図7】他の実施の形態の、逆流防止具の構成を説明する図。
【符号の説明】
10…ポンプ本体、
7…漏洩検知管(吸上げ対象部位)、
11…水抜き管(吸上げ管体)、
12…逆流防止具、
13…プラグ、
14…取付け用孔、
15…細管、
16…細孔、
12A…プラグ体。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】流体の吸上げをなすポンプ本体と、このポンプ本体に接続され、吸上げ対象部位に挿入して上記ポンプ本体を作用することにより流体を吸上げ案内する吸上げ管体と、この吸上げ管体の先端部に取付けられ、流体を吸上げ案内するとともに、ポンプ本体の作用を停止した状態で吸上げ管体内に残った流体をそのまま吸上げ管体内に滞留させ外部への流出を阻止する逆流防止具と、を具備したことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】上記逆流防止具は、上記吸上げ管体の開口端に嵌め込まれ、この開口端を閉塞するプラグと、このプラグの軸方向に沿って貫通して設けられる取付け用孔と、この取付け用孔に嵌め込まれ、一端部は吸上げ管体内に開口し、他端部はプラグおよび吸上げ管体から外部へ突出する細管と、からなることを特徴とする請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】上記逆流防止具は、吸上げ管体の先端開口部を閉塞するとともに、吸上げ管体直径よりも細径の細孔を有するプラグ体であることを特徴とする請求項1記載のポンプ装置。
【請求項4】上記逆流防止具は、上記吸上げ管体に対して着脱自在であることを特徴とする請求項2および請求項3のいずれか記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図6】
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