説明

ポータブルトイレ

【課題】歩行困難な老人または障害者等の使用者の排泄を容易にするのに有利なポータブルトイレを提供する。
【解決手段】ポータブルトイレは、使用者が着座する着座部1と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器3と、着座部1及び排泄物容器3を有する基体4とを備える。基体4は、着座部1に着座している使用者が前かがみ姿勢となったときにおいて使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部100を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用者が着座して排泄するポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを備えるポータブルトイレが開示されている。排泄物容器は、使用者から排出された排泄物等の排泄物を受けるものである。このものによれば、着座部に着座している使用者の尻部の排泄後の局部を洗浄する局部洗浄ノズルが使用者の局部に対面可能となるように基体に据え付けられている。また特許文献3には、着座部、前脚部、後脚部、背もたれ部をもつ支柱付き椅子が開示されており、更に、この椅子はポータブルトイレに適用できる旨が開示されている。
【特許文献1】特開2002−78640号公報
【特許文献2】特開2002−85290号公報
【特許文献3】特開平11−197187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1,2に係るポータブルトイレは、歩行困難な老人、障害者、病人等が使用する場合が多い。このような使用者は便秘気味であることが多く、排泄に要する時間が長いのが一般的である。しかしこれらの使用者は腰部の筋肉が弱いため、ポータブルトイレの着座部に長時間着座できないことが多い。そこで背もたれ部に寄りかかって着座姿勢を保持する必要があるが、背もたれ部に寄りかかると、排泄の際にりきむことができない。この場合、歩行困難な老人、障害者、病人等の使用者の排泄の支障となり易い。また、上記した特許文献3に係る椅子をポータブルトイレに適用する場合には、前脚部が着座部の先端に取り付けられているため、着座部に着座しようとする使用者の脚、着座部に着座している使用者の脚が椅子の前脚部に干渉しやすい。この場合、歩行困難な老人、障害者、病人等の使用者の排泄の支障となり易い。
【0004】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、歩行困難な老人、障害者、病人等の使用者の排泄を容易にするのに有利なポータブルトイレを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)様相1に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、基体は、着座部に着座して排泄する使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部を備えていることを特徴とするものである。
【0006】
着座部に着座している使用者が前かがみ姿勢となったとき、前かがみ姿勢支持部は、使用者の前かがみ姿勢を支える。使用者は、排泄の際に、前かがみ姿勢で前かがみ姿勢支持部に寄りかかれば、前かがみ姿勢を長時間にわたり維持し易くなる。このため着座部に着座している使用者は、排泄の際に、良好にりきむことができ、排泄が容易となる。
【0007】
(2)様相2に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、基体は、前記着座部に着座している使用者の腕部を支えるアームレスト部と、アームレスト部の前部に繋がる前支柱と、基体の前部側に設けられた前脚部と、基体の後部側に設けられた後脚部とを備えており、前脚部は、前支柱の延設方向に沿って配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
様相2によれば、前脚部の突出が抑制されるため、使用者の脚がポータブルトイレの前脚部に干渉することが抑えられる。更に様相2によれば、排泄物容器を保持すると共に前端部に引き出し操作部をもつスライド部材が基体に引き出し可能に設けられている形態を例示することができる。この場合、前脚部は、ポータブルトイレの前後方向においてスライド部材の前端部の引き出し操作部よりも後方に退避していることが好ましい。また様相2によれば、使用者の排泄を促進させるため、基体は、着座部に着座して排泄している使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部を備えていることが好ましい。また、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、局部洗浄部及び排泄物容器洗浄部に給水する水タンクとが基体に設けられていることが好ましい。
【0009】
(3)様相3に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、基体は、着座部に着座している使用者の腕部を支えるアームレスト部と、アームレスト部の前部に繋がると共に縦方向に沿って設けられた前支柱と、基体の前部側に設けられた前脚部と、基体の後部側に設けられた後脚部とを備えており、更に、排泄物容器を保持すると共に前端部に引き出し操作部をもつスライド部材が基体に引き出し可能に設けられており、前脚部は、ポータブルトイレの前後方向においてスライド部材の引き出し操作部よりも後方に退避していることを特徴とするものである。
【0010】
様相3によれば、ポータブルトイレの前脚部は、ポータブルトイレの前後方向においてスライド部材の引き出し操作部よりも後方に退避している。これによりポータブルトイレの前脚部の前方への突出が抑制されるため、使用者の脚がポータブルトイレの前脚部に干渉することが抑えられる。更に様相3によれば、使用者の排泄を促進させるため、基体は、着座部に着座して排泄している使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部を備えていることが好ましい。また、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、局部洗浄部及び排泄物容器洗浄部に給水する水タンクとが基体に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
様相1に係るポータブルトイレによれば、使用者は、排泄の際に、前かがみ姿勢で前かがみ姿勢支持部に寄りかかれば、前かがみ姿勢を長時間にわたり維持し易くなる。このため着座部に着座している使用者は、排泄の際に、良好にりきむことができ、排泄が容易となる。従って歩行困難な老人、障害者、病人等の使用者の排泄作業を容易にするのに有利である。更に、健常者が使用するのにも適する。
【0012】
また様相2、3に係るポータブルトイレによれば、ポータブルトイレの前脚部の前方への突出が抑制される。従って、使用者が排泄のためにポータブルトイレに移乗したり、着座して排泄したり、あるいは、排泄後に離脱したりするとき等において、使用者の脚がポータブルトイレの前脚部に干渉することが抑えられる。従って歩行困難な老人、障害者、病人等の使用者の排泄作業を容易にするのに有利である。更に、健常者が使用するのにも適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、着座部及び排泄物容器を有する基体とを備えており、基体は、着座部に着座して排泄している使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部を備えている。着座部は使用者が着座するものであれば良い。好ましくは、前かがみ姿勢支持部は、着座部に着座している使用者が前かがみ姿勢となったときにおいて使用者の前かがみ姿勢を支える使用位置と、使用位置に対して退避している退避位置とに変更可能に設定されている。前かがみ姿勢支持部を退避位置にすれば、使用者が着座部に着座する作業、あるいは、着座している使用者が着座部から立ち上がる作業を良好に行うことができる。
【0014】
好ましくは、基体は、着座部に着座している使用者の左腕部を支える第1アームレスト部と、着座部に着座している使用者の右腕部を支える第2アームレスト部とを備えている。この場合、前かがみ姿勢支持部は、第1アームレスト部の前部と第2アームレスト部の前部との間に架設可能とされていることが好ましい。好ましくは、前かがみ姿勢支持部は、第1アームレスト部及び第2アームレスト部のうちの少なくとも一方に揺動可能に枢支具により枢支されている。
【0015】
前かがみ姿勢支持部としては、その長手方向に伸縮可能とされている形態を例示できる。不使用の際(退避位置)には、前かがみ姿勢支持部を収縮させておけば、スペースを節約できる。そして使用の際(使用位置)に、前かがみ姿勢支持部を伸長させれば、使用者の前かがみ姿勢を良好に維持できる。また、前かがみ姿勢支持部としては、基体に対して分離可能とされている形態を例示できる。不使用の際(不使用位置)には、前かがみ姿勢支持部をポータブルトイレの基体から分離させて別の場所に保管しておけば、ポータブルトイレのスペースを節約できる。
【0016】
また、前かがみ姿勢支持部としては、第1アームレスト部に揺動可能に第1枢支具により枢支された第1分割部と、第2アームレスト部に揺動可能に第2枢支具により枢支された第2分割部とで形成されている形態を例示できる。この場合、使用位置では、第1分割部の端部及び第2分割部の端部は互いに重なるか、突き合わせ状態に維持される。このように第1分割部の端部及び第2分割部の端部は互いに重なるか、突き合わせ状態に維持されれば、着座部に着座している使用者の前かがみ姿勢を良好に維持することができる。また、前かがみ姿勢支持部は凹または凸からなる第1係合部を有し、基体は凸または凹からなる第2係合部を有する形態を例示できる。この場合、第1係合部及び第2係合部は互いに係合可能とされている。第1係合部及び第2係合部を係合させれば、前かがみ姿勢支持部を着脱可能に基体に取り付けることができる。第1係合部及び第2係合部の係合を解除すれば、前かがみ姿勢支持部を基体から分離させることができる。
【0017】
水タンクが基体に、殊に基体の後部側に、固定的または着脱可能に設けられている形態を例示できる。また、水タンクと着座部との間に位置すると共に水タンクへの給水作業を保護する仕切部材が基体に設けられている形態を例示できる。更に、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部を備えている形態を例示できる。排泄物容器洗浄部は、水を吐出させて排泄物容器の壁面に付着している汚れを清掃するためのものである。排泄物容器洗浄部については、ポータブルトイレに搭載されている水タンク等の給水源から給水しても良いし、あるいは、ポータブルトイレとは別体の給水源(例えば水道管)から直接に給水しても良い。
【0018】
好ましくは、排泄物容器洗浄部に給水可能な水タンクと、水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水する第1給水手段とが、基体に設けられている。水タンクは基体に対して着脱可能な着脱式でも良いし、あるいは、基体に固定されている固定式でも良い。水タンクは、基体の後部側に設けられていても良いし、基体の底部側または側面側に設けられていても良い。第1給水手段は水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水するものであり、モータを有する電動ポンプ、あるいは、手動ポンプを例示できる。好ましくは、着座部に着座している使用者の局部を洗浄する局部洗浄部が基体に設けられている。この場合、水タンクの水を局部洗浄部に給水する第2給水手段が、基体に設けられていることが好ましい。
【0019】
排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、局部洗浄部に繋がる給水経路とは互いに独立している形態を例示できる。この場合、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路に第1給水手段が設けられている形態を採用できる。また、局部洗浄部に繋がる給水経路に第2給水手段が設けられている形態を採用できる。排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられておらず、局部洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられている形態を例示することができる。この場合、使用者の局部を洗浄する水を加熱して温水にできるため、使用者の局部を温水で洗浄でき、局部洗浄する際における不快感を無くし得る。また排泄物容器を洗浄する水を加熱しないため、熱エネルギーを節約することができる。場合によっては、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にヒータが設けられていることにしても良い。この場合、排泄物容器を温水で洗浄することができる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について図1〜図11を参照して具体的に説明する。図1はポータブルトイレから排泄物容器、容器蓋、外バケツを外した状態を示す。図2は排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した状態を示す。図3は水タンク付近を示す。図4はスライダ部材の平面図を示す。図5は排泄物容器を収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せている状態を模式的に示す。図6は排泄物容器を収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せつつ、スライダ部材を前方にスライドさせた状態を模式的に示す。図7は排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを前方から視認した状態を示す。図8は着座部を上方に揺動させた状態のポータブルトイレを前方から視認した状態を示す。図9は着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせた状態のポータブルトイレを前方から視認した状態を示す。図10は着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせ、更に容器蓋を排泄物容器から外す状態のポータブルトイレを前方から視認した状態を示す。図11は着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせ、更に排泄物容器を外バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した状態を示す。
【0021】
本実施例に係るポータブルトイレは、図1に示すように、使用者の尻部が着座する着座部1を有する局部洗浄装置2と、排泄物を受ける排泄物容器3と、着座部1及び排泄物容器3を有する基体4とを備える。基体4は、木質の固定フレーム40と、固定フレーム40に前方(矢印F方向)に引き出し可能に設けられた木質のスライド部材7とを備える。ここで前方とは、着座部1に着座する使用者の顔が向く方向を意味する。後方とは、着座部1に着座する使用者の背中が向く方向を意味する。基体4の固定フレーム40は、外バケツ5を収容可能な容器収容室42と、床面側に配置された底板部43と、基体4の前部側に縦方向に沿って設けられた前支柱として機能する前板部44と、底板部43よりも上側に設けられたシート部として機能する中板部45と、使用者の肘掛けとして機能するアームレスト部46と、基体4の後部4r側において底板部43から上方に向けて縦方向に延設された後支柱として機能する背板部47と、背板部47に架設され使用者の背中に対面する比較的厚肉のクッション性を有する背もたれ部48と、着座部1の高さ位置を調整する機能を有する高さ調整機構49とを有する。ここで、中板部45は着座部1を揺動可能に枢支している。高さ調整機構49は底板部43に接続されており、基体4の前部に位置する前脚部として機能する前側の高さ調整機構49fと、基体4の後部に位置する後脚部として機能する後側の高さ調整機構49rとを備えている。アームレスト部46は、着座部1に着座している使用者の左腕部を支える第1アームレスト部46fと、着座部1に着座している使用者の右腕部を支える第2アームレスト部46sとを備えている。なお、固定フレーム40は後部側に、移動用の転動可能なキャスター40w(図2参照)を有する。固定フレーム40の前側を持ち上げれば、キャスター40wによりポータブルトイレを容易に移動させることができる。
【0022】
局部洗浄装置2は、局部洗浄部20を搭載する本体部21と、本体部21に上下方向に揺動可能に枢支された便座で形成された着座部1とを備える。局部洗浄部20は、使用者の排泄後の局部(便局部)を洗浄する第1局部洗浄部20fと、女性局部を洗浄するビデ用の第2局部洗浄部20sとで形成されている。この局部洗浄部20はノズル式とされており、基体4のうち着座部1の後部側に設けられており、着座部1に着座する使用者の局部に対面可能とされている。但し、第1局部洗浄部20f及びビデ用の第2局部洗浄部20sとのうちのいずれか一方のみが装備されていることにしても良い。
【0023】
図1に示すように、排泄物容器3は、上面に開口30を有する排泄物収容室31をもつ内バケツで形成されており、後部3r側に凹部35を有する。排泄物容器3は回動可能な取っ手32を有する。排泄物容器3の開口30を閉鎖する着脱可能な容器蓋36が設けられている。容器蓋36は、指先で摘む摘み部37を有する。更に、外バケツ5は、上面に形成された開口50を有すると共に排泄物容器3を収容可能な収容室51と、上面の開口50から外方に鍔状に延設されたフランジ部52と、フランジ部52の後部に設けられた凹部55とを有する。凹部55は排泄物容器3の凹部35と対面する。凹部35,55は、主として、局部洗浄部20(20f,20s)との衝突を避けるために凹んでいるものである。フランジ部52の上面には、着座部1を載せて支持する載置面53が形成されている。外バケツ5は基体4の固定フレーム40の容器収容室42内に着脱可能に収容される。排泄物容器3は外バケツ5の収容室51内に着脱可能に収容される。
【0024】
図2に示すように、排泄物容器3内に挿入されて排泄物容器3内を洗浄する棒状をなす排泄物容器洗浄部8が設けられている。排泄物容器洗浄部8は基体4に対して別体をなしており、所定距離持ち運び可能とされており、先端部に水を噴出するノズル部8kと、指先で掴むことが可能な把手部8hとを有する。ノズル部8kは、棒状の排泄物容器洗浄部8の軸芯PA方向に沿って水を吐出する。この場合、ノズル部8kから吐出される水の水圧は、設計の単純化を図るため一段でも良いし、あるいは、複数段に切替可能であっても良い。ノズル部8kから吐出される水としては、水の噴出の拡開角度が大きいシャワー噴出の形態でも良いし、あるいは、シャワー噴出でない形態でも良い。周囲への水の飛散を抑えるためには、水の噴出の拡開角度はあまり大きくない方が良いといえる。
【0025】
排泄物容器洗浄部8は、水の噴出停止、水の噴出を切り替えるスイッチ部80を有する。排泄物容器洗浄部8に給水可能な水タンク84が基体4に設けられている。水タンク84は基体4の後部4r、つまり、着座部1に着座する使用者の背中側においてタンクホルダ部4xを介して設けられている。水タンク84は後方を向いている。水タンク84は、縦長の偏平容器状をなす四角タンク形状をなしており、上面84u、側面84s、後面84r、前面84fとをもつ。水タンク84は、厚み寸法t1は幅寸法、高さ寸法に比較して小さいので、水タンク84がポータブルトイレに搭載されていても、ポータブルトイレの設置スペースの増大は防止されている。水タンク84は、水タンク84の上部に設けられ水道水等の水を補給する補給口85と、補給口85を開閉する着脱可能な蓋部材86とを有する。補給口85は水タンク84の上部に設けられているため、給水作業に有利である。補給口85の高さ位置は、背もたれ部48の上面48u、背板部47の上端47uよりも低く設定されている。このため介助者が水タンク84の補給口85に給水しているとき、背もたれ部48は、着座部1に着座している使用者と、介助者による給水作業との分離性を高めることができ、水タンク84の補給口85への給水作業を良好にできる。また図2に示すように、背もたれ部48が着座部1と水タンク84との間に設けられているため、使用者の背中が水タンク84に直接的に接触することが抑制される。図2に示すように、水タンク84には水量を示すインジケータ84wが設けられている。ワイヤ等の線状体で形成された支持部87が水タンク84の後面84rに掛けられて水タンク84の支持性が高められている。水タンク84の側面84sの下部には給水具88が設けられている。なお、水タンク84の側面84sには、排泄物容器洗浄部8を引っかけて仮保持するホルダー84xが設けられている。
【0026】
図2に示すように、可撓性を有する給水管としての給水ホース89の一端部89aは給水具88に接続されており、給水ホース89の他端部89cは排泄物容器洗浄部8の基端部に接続されている。給水ホース89は3次元的な可撓性を有すると共に、所定の長さを有する。従って、排泄物容器洗浄部8は給水ホース89の長さに相当するぶん移動可能とされている。なお、排泄物容器3を基体4から外したときであっても、排泄物容器3が基体4の近傍に設置されていれば、給水ホース89により排泄物容器洗浄部8は排泄物容器3に届くようになっている。
【0027】
図3に模式的に示すように、水タンク84は、上側に設けられ水を収容可能なタンク室84aと、タンク室84aの下側に設けられた制御室84cとを有する。タンク室84aの水容量は、排泄物容器3の洗浄処理と使用者の局部洗浄処理とをそれぞれ所定回数実行できるように設定されている。図3に示すように、制御室84cは、タンク室84aに互いに独立して繋がる第1給水経路91及び第2給水経路92と、第1給水経路91に設けられ排泄物容器洗浄部8に給水可能な第1給水手段93と、第2給水経路92に設けられ局部洗浄部20(20f、20s)に給水可能な第2給水手段96と、コントローラ99とを有する。コントローラ99は、第1信号線93sを介して第1給水手段93を制御すると共に、第2信号線96sを介して第2給水手段96を制御する。第1給水手段93は、給水機能を有する第1電動ポンプ94と、第1電動ポンプ94を駆動させる第1モータ95とを備えている。第2給水手段96は、給水機能を有する第2電動ポンプ97と、第2電動ポンプ97を駆動させる第2モータ98とを備えている。コントローラ99にはアダプタ90を介して商用電源(AC100ボルト)が接続される。
【0028】
上記した第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、互いに独立して駆動する。故に、第1電動ポンプ94が故障等により停止したとしても、第2電動ポンプ97は駆動可能である。第2電動ポンプ97が故障等により停止したとしても、第1電動ポンプ94は駆動可能である。上記したように本実施例によれば、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97とは互いに独立して駆動するように設定されている。このため排泄物容器洗浄部8に給水する水圧と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧とを同じとしても良いし、異なる値にとすることもでき、水圧設定の自由度を高めることができる。また、排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間あたりの水量と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量とを同じとしても良いし、異なる値とすることもでき、水量設定の自由度を高めることができる。換言すると、排泄物容器洗浄部8に給水する水圧P1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧P2とを、排泄物容器3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、P1=P2またはP1≒P2でも良いし、P1>P2でも良いし、P1<P2でも良い。また排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間当たりの水量V1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量V2とを、排泄物容器3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、V1=V2またはV1≒V2でも良いし、V1>V2でも良いし、V1<V2でも良い。なお、コストダウンを考慮すると、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、同種のものを採用できる。
【0029】
タンク室84aには水位検知手段84eが設けられている。水位検知手段84eの水位信号は信号線84fを介してコントローラ99に入力される。水タンク84内の水は局部洗浄部20と排泄物容器洗浄部8の双方に共用される。なお、タンク室84aの水位が過剰に低減すると、コントローラ99は第1給水手段93及び第2給水手段96を停止させ、表示LED等の報知手段によりその旨を報知する。第2給水経路92は、水タンク84のタンク室84aと局部洗浄部20(20f、20s)とを繋ぐ給水通路であり、局部洗浄装置2に内蔵されている。第2給水経路92の水を加熱する電気式のヒータ25が局部洗浄装置2内に設けられている。本実施例によれば、局部洗浄部20(20f、20s)に供給させる水をヒータ25により加熱して温水にできるため、使用者の局部を温水により洗浄することができる。このため局部洗浄時における不快感を発生させない。これに対して、第1給水経路91は排泄物容器洗浄部8に繋がるものであるが、第1給水経路91の水は使用者の局部に直接触れるものではないため、水を加熱する要請は少なく、ヒータは設けられていない。従って、排泄物容器洗浄部8に供給される水の温度は基本的にはタンク室84aの水温である。このため電気エネルギの低減に貢献できる。
【0030】
本実施例によれば、図4はスライド部材7の平面視を示す。図4に示すようにスライド部材7は枠状をなしており、前側に形成された引き出し操作部70と、外バケツ5を収容する開口72mを有する枠部72とを備えている。スライド部材7の枠部72の上面には、外バケツ5のフランジ部52が載置可能される載置面73が形成されている。従ってスライド部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5のフランジ部52を載せ得るようにされている。図5は、スライド部材7の開口72mに外バケツ5を嵌め込みつつ、スライド部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5のフランジ部52を載せた状態の概念を示す。
【0031】
本実施例によれば、使用者が着座部1に着座するときには、着座部1に着座している荷重は着座部1を介して外バケツ5のフランジ部52に伝わる。ここで、スライド部材7は前後に分割した分割部品ではなく、単一部品である。このため外バケツ5のフランジ部52の全体を単一部品であるスライド部材7の載置面53に載せるため、荷重の支持性を高めることができる。スライド部材7の引き出し操作部70は、基体4の固定フレーム40に対して前方(矢印F方向)に引出し可能とされている。スライド部材7の引き出し操作部70を前方(矢印F方向)に引き出せば、スライド部材7は基体4の固定フレーム40から引き出し可能とされているため、スライド部材7に保持されている外バケツ5も前方(矢印F方向)に引き出され、また、外バケツ5に収容されている排泄物容器3も前方(矢印F方向)に引き出される。
【0032】
ところで、局部洗浄機能を有しない従来のポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられていない。このため従来のポータブルトイレによれば、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄部20との干渉が発生しないため、着座部1を上方に揺動させた状態で、排泄物容器3を基体4の固定フレーム40に対してそのまま上方に持ち上げれば、排泄物容器3を固定フレーム40から取り外すことができるものであった。
【0033】
しかしながら、局部洗浄機能を有するタイプのポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられており、ノズル式の局部洗浄部20が排泄物容器3の排泄物収容室31に臨むように配置されることが多い。更に、局部洗浄部20から吐出される水を排泄物収容室3が受け止める必要があるため、排泄物収容室3の後部3rは局部洗浄部20の先端部の水吹出口の後方に位置することになる。この場合、着座部1を上方に揺動させた状態で、排泄物容器3をそのまま上方に持ち上げれば、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20とが干渉する(図5参照)。そこで本実施例によれば、前方(矢印F方向)にスライド可能なスライド部材7の載置面73に外バケツ5のフランジ部52を載せると共に、その外バケツ5内に排泄物容器3を収容する方式が採用されている。そして排泄物容器3内の排泄物を廃棄するとき、図6に示すように、排泄物容器3を収容する外バケツ5のフランジ部52を載せたスライド部材7の引き出し操作部70を介助者等が前方(矢印F方向)に向けて少しスライド(ΔS)させる。このスライドに伴い、図6に示すように、外バケツ5の後部5r、排泄物容器3の後部3rが前方(矢印F方向)に移動し、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。更に、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。
【0034】
上記のように干渉を回避した状態で、介助者等が排泄物容器3を上方(矢印Y1方向)に持ち上げれば、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄部20とを干渉させることなく、排泄物容器3を持ち上げて外バケツ5から離脱させることができる。そして、離脱させた排泄物容器3内に溜まっている排泄物Wを廃棄することができ、排泄物容器3の清掃処理に便利である。また、上記のように干渉を回避した状態で、外バケツ5を上方(矢印Y1方向)に持ち上げれば、局部洗浄部20と外バケツ5の後部5rとを干渉させることなく、外バケツ5を持ち上げて基体4の容器収容室42から離脱させることができる。従って、外バケツ5の清掃処理も便利である。
【0035】
ところで、スライド部材7を前方に引き出す際に、スライド部材7に支持されている排泄物容器3や外バケツ5の全体が基体4の固定フレーム40から完全に離脱するまで、スライド部材7を前方に移動させる方式も考えられる。しかしながらこの場合には、排泄物容器3を前方にスライドさせる距離が長い関係上、排泄物容器3の排泄物収容室31内に貯留されている汚水の水面WAがスライドに伴い過剰に揺動して、排泄物収容室31内の汚水が排泄物容器3の周囲に飛散するおそれがあり、好ましくない。この点本実施例によれば、スライド部材7に支持されている排泄物容器3や外バケツ5の全体が基体4の固定フレーム40から離脱するまでスライド部材7を前方に移動させずとも良い。即ち、前記したようにスライド部材7のスライド(スライド量ΔS)により、排泄物容器3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避でき、また、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避できる。上記のように干渉を回避した状態で、排泄物容器3を上方に持ち上げたり、外バケツ5を上方に持ち上げる方式が採用されている。このため排泄物容器3を載せたスライド部材7をスライドさせる距離 (ΔS)が少しで済み、スライド部材7に支持されている排泄物容器3の排泄物収容室31内の汚水の水面WAの過剰の揺動を抑えることができ、当該汚水の飛散を抑えることができる。
【0036】
本実施例に係るポータブルトイレの一般的な清掃方法について説明を加える。まず、排泄物容器3の開口30が露出している状態において、図7に示すように、棒状の排泄物容器洗浄部8を排泄物容器3の排泄物収容室31に対面させるか挿入する。そして、排泄物容器洗浄部8のスイッチ80を操作し、第1給水手段93を駆動させる。これにより第1電動ポンプ94により排泄物容器洗浄部8に給水し、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を吐出させる。このように排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出した水により、排泄物容器3内を洗浄することができ、排泄物容器3を衛生的にできる。また外バケツ5を清掃したいときには、外バケツ5を露出させる。この状態において、棒状の排泄物容器洗浄部8を外バケツ5の収容室51に挿入し、排泄物容器洗浄部8から噴出した水により外バケツ5内を洗浄する。給水ホース89は可撓性を有するため、排泄物容器洗浄部8の位置および向きを三次元的に任意に変えることができるため、排泄物容器3や外バケツ5の清掃に便利である。排泄物容器3に水を貯めておきたいときには、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を排泄物容器3内に吐出させれば良い。なお、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水は、局部洗浄の場合とは異なり、ヒータ25で加熱されていないため、一般的には常温水である。但し、場合によっては、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水をヒータ25で加熱して温水とする方式を採用しても良い。
【0037】
更に説明を加える。図8に示すように、排泄物容器3に容器蓋36が被着されているときには、排泄物容器3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20(20f,20s)とが干渉し、容器蓋36を上方に持ち上げることができず、ひいては容器蓋36を外すことができないおそれがある。そこで前述したように、図9に示すように、着座部1を上方に揺動させて退避位置にさせた状態で、容器蓋36を被着した排泄物容器3をセットしているスライド部材7を前方(矢印F方向)に少しスライド(スライド量=ΔS)させれば、排泄物容器3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20(20f,20s)との干渉が直ちに回避される(図9参照)。このため図10に示すように容器蓋36を上方に持ち上げて排泄物容器3から外すことができる。そして、容器蓋36を外した状態で、排泄物容器洗浄部8を排泄物容器3内に挿入し、排泄物容器洗浄部8から吐出した水により排泄物容器3を洗浄することができる。必要に応じて、図11に示すように排泄物容器3を持ち上げて外バケツ5の収容室51から取り外すこともできる。
【0038】
本実施例によれば、図2に示すように、水タンク84は基体4の後部4rの背もたれ部48の後方に、つまり、着座部1に着座する使用者の背中側において設けられている。更に、背もたれ部48の上面48uの高さ位置は補給口85の高さ位置よりも高く設定されている。このため、背もたれ部48の後方においてやかん等の貯水容器または水道ホース等を用いて水タンク4の補給口85へ介助者等が給水作業している作業中において、着座部1に着座している使用者が動いたとしても、使用者の身体がやかん等の貯水容器または水道ホース等に当たることが抑制され、水タンク84の補給口85への給水作業を損なうことが抑えられている。従って背もたれ部48は、使用者に対する背もたれ機能と、仕切部材としての機能との双方を兼務する。
【0039】
さて本実施例によれば、図1に示すように、着座部1に着座している使用者の腕部を支える前かがみ姿勢支持部100が設けられている。前かがみ姿勢支持部100は、第1アームレスト部46fの前部と、第2アームレスト部46sの前部との間に架設可能とされている。前かがみ姿勢支持部100は、図1に示すように、使用位置WAでは、着座部1に着座している使用者の前面に対面する。前かがみ姿勢支持部100の長手方向の一端部100aは、第1アームレスト部46fの前部に設けた枢支具100bに枢支されている。これにより枢支具100bを回動中心として前かがみ姿勢支持部100の他端部100cを上方向及び下方向に(矢印U1及びU2方向)に揺動可能としている。排泄時には、一般的に、使用者は前かがみの姿勢で長い時間、着座部1に着座することが多い。特に動作が制限される高齢者や障害者は便秘気味な者が多く、便秘気味の使用者は、着座部1に着座しつつ、長い時間、前かがみの姿勢となることが多い。このため、着座部1に着座している使用者の腕部を支える前かがみ姿勢支持部100が基体4の前部4f側に設けられている。前かがみ姿勢支持部100は、着座部1に着座している使用者の腕部を支える使用位置WA(図1参照)と、着座部1に着座している使用者の腕部を支えない退避位置WB(図2参照)とに切替可能とされている。このため本実施例によれば、前かがみ姿勢支持部100を使用位置WAに切り替えれば、使用者は前かがみの姿勢で長い時間着座部1に着座するときであっても、使用者の前かがみの姿勢を前かがみ姿勢支持部100により良好に維持できるため、便秘気味の高齢者、身体障害者の排泄に適する。使用者が前かがみの姿勢となると、ポータブルトイレの重心が前方に寄るが、水を貯留する水タンク84が基体4の固定フレーム40の後部側に設けられているため、基体4の安定性は確保される。
【0040】
使用者がポータブルトイレの移乗するとき、または、着座している使用者がポータブルトイレから立ち上がるときには、前かがみ姿勢支持部100が使用者の邪魔になる。このため介助者等により、前かがみ姿勢支持部100は、着座部1に着座している使用者の腕部を支えない退避位置WB(図2参照)に切替られる。この場合、枢支具100bを回動中心として、前かがみ姿勢支持部100の他端部100cを上方向(矢印U1方向)に最初揺動させ、その後、下方に回動させることにより、他端部100cを約270度程度回動させると、前かがみ姿勢支持部100は退避位置WBとなる。図2に示すように、退避位置WBでは、前かがみ姿勢支持部100は重力により下方に垂下状態に吊持されており、他端部100cは前かがみ姿勢支持部100の下端となる。このように前かがみ姿勢支持部100が退避位置WBに設定されたときにも、前かがみ姿勢支持部100は基体4に接続されているため、前かがみ姿勢支持部100の紛失等の不具合が抑制される。また本実施例によれば、スライド部材7を前方(矢印F方向)に引き出すときにおいて、退避位置WBの前かがみ姿勢支持部100は、引き出されるスライド部材7の邪魔にならないように、スライド部材7に対面しないように設定されている。なお、前かがみ姿勢支持部100の長手方向の他端部100cを、第2アームレスト部46sの前部に設けた枢支具に枢支しても良い。
【実施例2】
【0041】
図12は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。本実施例においても、着座部1に着座している使用者の腕部を支える前かがみ姿勢支持部100Bが設けられている。前かがみ姿勢支持部100Bは、長手方向の嵌合量が調整可能とされた第1分割部101と第2分割部102とで形成されている。第1分割部101及び第2分割部102の長手方向(矢印E方向)の嵌合量を調整することにより、前かがみ姿勢支持部100Bはその長手方向に伸縮可能な構造とされている。前かがみ姿勢支持部100Bを使用位置に切り替えるときには、前かがみ姿勢支持部100Bは長手方向に伸長され、第1アームレスト部46fと第2アームレスト部46sとの間に架設される。これに対して、前かがみ姿勢支持部100Bを退避位置WBに切り替えるときには、前かがみ姿勢支持部100Bは長手方向に収縮される。この場合、前かがみ姿勢支持部100Bは第1アームレスト部46fと第2アームレスト部46sとの間の間隔よりも短くなるため、邪魔になりにくい。従って、使用者がポータブルトイレの移乗するとき、または、着座している使用者がポータブルトイレから離れるときには、介助者等は前かがみ姿勢支持部100Bを退避位置WBに設定すると共に長手方向に収縮させると良い。また、前かがみ姿勢支持部100Bの長さが短くなるため、前かがみ姿勢支持部100Bの揺動半径を小さくできる。
【実施例3】
【0042】
図13は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。本実施例においても、着座部1に着座している使用者の腕部を支える前かがみ姿勢支持部100Cが設けられている。図13に示すように、前かがみ姿勢支持部100Cは、第1アームレスト部46fの先端部に第1枢支具100bにより揺動可能に設けられた第1分割部105と、第2アームレスト部46sの先端部に第2枢支具100hにより上下方向に揺動可能に設けられた第2分割部106とで形成されている。第1分割部105及び第2分割部106は互いに独立して回動できる。
【0043】
図13に示すように、使用位置WAに切り替えるときには、介助者等が第1枢支具100bを中心として第1分割部105を上方に回動させると共に、第2枢支具100hを中心として第2分割部106を上方に回動させ、これにより第1分割部105の端部105xと第2分割部106の端部106xとを互いに重ねつつ、突き合わせ状態とする。使用位置WAでは、前かがみ姿勢支持部100Cに使用者は寄りかかることができるため、使用者は、排泄に適する前かがみ姿勢をとり易くなる。使用者がポータブルトイレの移乗するとき、または、着座している使用者がポータブルトイレから離れるときには、前かがみ姿勢支持部100Cが使用者の邪魔になるため、介助者等により退避位置に切り替える。この場合、特に図示はしないものの、介助者等が枢支具100bを中心として第1分割部105を下方(退避方向)に回動させると共に、第2枢支具100hを中心として第2分割部106を下方(退避方向)に回動させる。これにより第1分割部105を第1アームレスト部46fに吊持させるとともに、第2分割部106を第2アームレスト部46sに吊持させる。
【実施例4】
【0044】
図14は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心として説明する。本実施例においても、着座部1に着座している使用者の腕部を支える前かがみ姿勢支持部100Dが設けられている。前かがみ姿勢支持部100Dは、第1アームレスト部46fの前部と、第2アームレスト部46sの前部との間に架設可能とされている。前かがみ姿勢支持部100Dの長手方向の両端部には、孔状をなす第1係合部110が形成されている。第1アームレスト部46fの前部には突起状の第2係合部460が上向きに形成されている。また、第2アームレスト部46sの前部には突起状の第2係合部460が上向きに形成されている。着座部1に着座している使用者の腕部を支える使用位置WAにおいては、図14に示すように、前かがみ姿勢支持部100Dの孔状をなす第1係合部110は、第1アームレスト部46f、第2アームレスト部46sの突起状の第2係合部460が嵌って係合する。このため本実施例によれば、前かがみ姿勢支持部100Dを使用位置WAに切り替えれば、使用者は前かがみの姿勢で長い時間、着座部1に着座するときであっても、使用者の前かがみの姿勢を前かがみ姿勢支持部100Dにより良好に維持できるため、便秘気味の高齢者、身体障害者の排泄に適する。
【0045】
また、使用者がポータブルトイレの移乗するとき、または、着座している使用者がポータブルトイレから離れるときには、前かがみ姿勢支持部100Dが使用者の邪魔になるため、介助者等により、前かがみ姿勢支持部100Dは、着座部1に着座している使用者の腕部を支えない退避位置に切替られる。即ち、前かがみ姿勢支持部100Dの孔状をなす第1係合部110と突起状の第2係合部460とを離脱させ、前かがみ姿勢支持部100Cを着脱可能に基体4から分離させる。なお、前かがみ姿勢支持部100Cの第1係合部を孔状ではなく突起状としても良い。アームレスト部46f,46sの第2係合部460を突起状ではなく孔状としても良い。
【実施例5】
【0046】
図15は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。本実施例においても、図15に示すように、基体4の固定フレーム40は、床面側に配置された底板部43と、基体4の前部側に縦方向に沿って設けられた前支柱として機能する前板部44と、底板部43よりも上側に設けられた中板部45と、使用者の肘掛けとして機能するアームレスト部46と、基体4の後部4r側において底板部43から上方に向けて縦方向に延設された後支柱として機能する背板部47と、背板部47に架設され使用者の背中に対面する比較的厚肉のクッション性を有する背もたれ部48と、着座部1の高さ位置を調整する機能を有する高さ調整機構49とを有する。
【0047】
ここで図15に示すように、前板部44の上部44uは、アームレスト部46の前部46xに接続されている。中板部45は着座部1を揺動可能に枢支している。高さ調整機構49は底板部43に接続されており、基体4の前部に位置する前脚部として機能する前側の高さ調整機構49fと、基体4の後部に位置する後脚部として機能する後側の高さ調整機構49rとを備えている。
【0048】
図15に示すように、前脚部として機能する前側の高さ調整機構49fは、ポータブルトイレの前後方向(矢印FR方向)において、前支柱として機能する前板部44と同じ位置に設定されている。換言すると、高さ調整機構49fは前板部44の下方において前板部44の延設方向に沿って配置されており、つまり、前板部44の下方において前板部44の中心線KAの延長線状またはほぼ延長線状に設定されている。
【0049】
このような本実施例によれば、前側の高さ調整機構49f(前脚部)は前方へ突出することが抑えられており、ポータブルトイレの前後方向(矢印FR方向)においてスライド部材7の前端部に設けられている引き出し操作部70よりも後方(矢印R方向)に退避している。このように基体4の前脚部として機能する高さ調整機構49fは後方に退避しているため、使用者が排泄のためにポータブルトイレに移乗したり、着座して排泄したり、あるいは、排泄後に離脱したりするとき等において、ポータブルトイレの高さ調整機構49fに使用者の脚等が干渉することが抑えられる。従って歩行困難な老人、障害者、病人等の使用者の排泄作業を容易にするのに有利である。
【0050】
なお本実施例においては、実施例1と同様に、着座部1に着座している使用者の腕部を支える前かがみ姿勢支持部100が設けられている。前かがみ姿勢支持部100は、前かがみ姿勢支持部100は、図15に示すように、使用位置WAでは、着座部1に着座している使用者の前面に対面する。前かがみ姿勢支持部100の長手方向の一端部100aは、第1アームレスト部46fの前部に設けた枢支具100bに枢支されている。これにより枢支具100bを回動中心として前かがみ姿勢支持部100の他端部100cを上方向及び下方向に(矢印U1及びU2方向)に揺動可能としている。更に本実施例によれば、排泄物容器洗浄部、排泄物容器洗浄部に繋がる給水ホース89、水タンクが設けられている。但し、場合によっては、前かがみ姿勢支持部100、排泄物容器洗浄部、給水ホース89、水タンク等を廃止することもできる。
【0051】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態および実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は高齢者、障害者、負傷者、健常者等が使用するポータブルトイレに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ポータブルトイレから排泄物容器、容器蓋、外バケツを外した状態を示す斜視図である。
【図2】排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図3】水タンク付近を示す構成図である。
【図4】スライダ部材の平面図である。
【図5】排泄物容器を収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せている状態を模式的に示す断面図である。
【図6】排泄物容器を収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せつつ、スライダ部材を前方にスライドさせた状態を模式的に示す断面図である。
【図7】排泄物容器、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図8】着座部を上方に揺動させた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図9】着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図10】着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせ、更に容器蓋を排泄物容器から外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図11】着座部を上方に揺動させた状態で、スライド部材を前方にスライドさせ、更に排泄物容器を外バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図12】実施例2にかかり、ポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図13】実施例3にかかり、ポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図14】実施例4にかかり、ポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図15】実施例5にかかり、ポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
図中、1は着座部、2は局部洗浄装置、20は局部洗浄部、21は本体部、3は排泄物容器、31は排泄物収容室、36は容器蓋、4は基体、40は固定フレーム、44は前板部(前支柱)、45は中板部、48は背もたれ部(仕切部材)、49fは高さ調整機構(前脚部)、49rは高さ調整機構(後脚部)、5は外バケツ、52はフランジ部、8は排泄物容器洗浄部、80はスイッチ、84は水タンク、89は給水ホース、93は第1給水手段、96は第2給水手段、100は前かがみ姿勢支持部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、前記着座部及び前記排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記基体は、前記着座部に着座して排泄している使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部を備えていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項2】
請求項1において、前記前かがみ姿勢支持部は、前記着座部に着座している使用者が前かがみ姿勢となったときにおいて使用者の前かがみ姿勢を支える使用位置と、前記使用位置に対して退避している退避位置とに変更可能に設定されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記基体は、前記着座部に着座している使用者の左腕部を支える第1アームレスト部と、前記着座部に着座している使用者の右腕部を支える第2アームレスト部とを備えており、
前記前かがみ姿勢支持部は、前記第1アームレスト部の前部と前記第2アームレスト部の前部との間に架設可能とされていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項4】
請求項3において、前記前かがみ姿勢支持部は、前記第1アームレスト部及び前記第2アームレスト部のうちの少なくとも一方に揺動可能に前記枢支具により枢支されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、前記前かがみ姿勢支持部はその長手方向に伸縮可能とされていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、前記前かがみ姿勢支持部は前記基体に対して分離可能とされていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項において、前記前かがみ姿勢支持部は凹または凸からなる第1係合部を有し、前記基体は凸または凹からなる第2係合部を有しており、前記第1係合部及び前記第2係合部は互いに係合可能とされていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項において、前記前かがみ姿勢支持部は、前記第1アームレスト部に揺動可能に第1枢支具により枢支された第1分割部と、前記第2アームレスト部に揺動可能に第2枢支具により枢支された第2分割部とで形成されており、前記前かがみ姿勢支持部が使用されるとき、前記第1分割部の端部及び前記第2分割部の端部は互いに重なるか、突き合わせ状態に維持されることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちのいずれか一項において、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、前記排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、前記局部洗浄部及び前記排泄物容器洗浄部に給水する水タンクとが前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項10】
使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、前記着座部及び前記排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記基体は、前記着座部に着座している使用者の腕部を支えるアームレスト部と、前記アームレスト部の前部に繋がると共に縦方向に沿って設けられた前支柱と、前記基体の前部側に設けられた前脚部と、前記基体の後部側に設けられた後脚部とを備えており、前記前脚部は、前記前支柱の延設方向に沿って配置されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項11】
請求項10において、前記排泄物容器を保持すると共に前端部に引き出し操作部をもつスライド部材が前記基体に引き出し可能に設けられており、前記前脚部は、ポータブルトイレの前後方向において前記スライド部材の前記引き出し操作部よりも後方に退避していることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項12】
使用者が着座する着座部と、使用者の排泄物を受ける排泄物容器と、前記着座部及び前記排泄物容器を有する基体とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記基体は、前記着座部に着座している使用者の腕部を支えるアームレスト部と、前記アームレスト部の前部に繋がると共に縦方向に沿って設けられた前支柱と、前記基体の前部側に設けられた前脚部と、前記基体の後部側に設けられた後脚部とを備えており、更に、
前記排泄物容器を保持すると共に前端部に引き出し操作部をもつスライド部材が前記基体に引き出し可能に設けられており、
前記前脚部は、ポータブルトイレの前後方向において前記スライド部材の前記引き出し操作部よりも後方に退避していることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項13】
請求項10〜12のうちのいずれか一項において、前記基体は、前記着座部に着座して排泄している使用者の前かがみ姿勢を支える前かがみ姿勢支持部を備えていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項14】
請求項10〜13のうちのいずれか一項において、前記前かがみ姿勢支持部は、前記着座部に着座している使用者が前かがみ姿勢となったときにおいて使用者の前かがみ姿勢を支える使用位置と、前記使用位置に対して退避している退避位置とに変更可能に設定されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項15】
請求項10〜14のうちのいずれか一項において、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、前記排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、前記局部洗浄部及び前記排泄物容器洗浄部に給水する水タンクとが前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate