説明

ポーチ

【課題】ポーチ内のポケットに血液測定器を収納したまま、ユーザが血液測定を行えるような仕様のポーチにおいて、検体のポーチ内壁への付着を防止し、かつ、測定器へのセンサ挿入などの測定操作が平易であるようなポーチを得る。
【解決手段】ポーチ1本体の内部に測定器2が取り付け可能になっているポーチであって、ポーチ1本体は一辺を関節にして自由に開口可能であり、ポーチ1内部側の関節部分に、測定器2のセンサ挿入部23を除く一部が連結可能となっており、ポーチ1内部を開口した際に測定器2が可動域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易血液測定器やペン型インスリン注入器等の糖尿病関連用具を収納して持ち運ぶのに便利なポーチに関する。なお、本発明のポーチの用途は、前記用途に限定されない。
【背景技術】
【0002】
インスリン依存型糖尿病患者は、自分自身で血糖値を管理し、必要に応じてインスリンを自己注射する必要があり、外出時等には、血液測定器やペン型インスリン注入器等の糖尿病関連用具を携帯する。このため、通常、糖尿病関連用具は、まとめてセットにして、ポーチやバッグ等に収納して持ち運ばれている。これら糖尿病関連用具を収納するためのポーチは、糖尿病関連用具のメーカがユーザに対して無料で配布されることもある。
【0003】
特許文献1には、簡易血液測定器と使い捨てチップ(試験片)とランセットデバイス(穿刺用具)をまとめたキットが開示されている。特に、特許文献1の図6および図7で明らかなように、それらキットをセット状態にすることは、通常行われている。
【0004】
また、特許文献2では、それら糖尿病関連用具をセットにし、持ち運ぶためのポーチが開示されている。これは、ポーチ本体の側面に掛紐が取り付けられたポーチであって、掛紐によりポーチ本体を略V字状の開口状態で吊り下げた場合、ポーチ本体の前記掛紐取り付け側と反対側が略水平状態となるポーチである。ポーチを吊り下げてもポーチの内容物が落下せず、机上に糖尿病関連用具を置くが如く利用できるものである。
【0005】
上記特許文献2に記載のポーチに限らず、糖尿病関連用具のメーカがユーザに対して無料または有料で配布するポーチは、その内側にポケットを有しており、そのポケット内に血液測定器やランセットデバイス、使い捨てチップやペン型インスリン注入器等が収納される。
【0006】
最近になって、これらポーチにおける付加機能として、ポーチ内のポケットに測定器を収納したまま、ユーザが直接に血糖測定を行えるような仕様のものが販売されるようになって来ている。それらポーチの特徴としては、
1)測定器の表面にある血糖値表示面における数値を読み取れるように、測定器を収納しているポケットが、透明部材かメッシュになっている
2)小型測定器の専用使い捨てチップが小型測定器へ挿入しやすいように、挿入孔がポーチの端部に位置するように設計されている
3)小型測定器へ挿入された使い捨てチップの検体適用部へ検体(ランセットデバイスで指先を穿刺して得られた血液滴)を適用しやすいように、検体適用部もポーチの端部に位置するように設計されている
といった点が挙げられる。
【0007】
【特許文献1】特許3202027号公報
【特許文献2】特開2004−097561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポーチ内のポケットに測定器を収納したまま、ユーザが血液測定を行えるような仕様のポーチは、確かに便利であるが、
1)検体を適用する際に、どうしても検体がポーチ内壁に付着する
2)ポーチ内壁に測定器背面が密着している格好になるために、センサ挿入などの測定操作がし難い
といった欠点が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、前記目的を達成するために、本発明はポーチ本体の内部に測定器が取り付け可能になっているポーチであって、前記ポーチ本体は一辺を関節にして自由に開口可能であり、前記ポーチ内部側の前記関節部分に、測定器のセンサ挿入部を除く一部が連結可能となっており、前記ポーチ内部を開口した際に前記測定器が可動域を有することを特徴とするポーチである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、この構成により、
1)ユーザはポーチ本体と離れた位置で、検体を測定器へ適用できるため、ポーチから測定器を取り外した状態と同様の利便さで測定が可能となる。
2)検体適用時に、ポーチ内部(ポーチ内壁)を検体で汚染する心配が無くなる。
3)測定終了後は、ポーチを閉じるだけでポーチ内部に測定器を収納した状態にすることが出来、ポーチ内部のポケットへ収納する煩わしさが無くなる。
といったメリットが生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポーチの一例を、各図に基づき説明する。図1は、本発明に係るポーチ1を閉じた状態を示すもの(図中左)と、収納すべき一般的な測定器2(図中右)との、おおよその大きさの比較を示した斜視図である。図1のように、ポーチ1内に測定器2が十分に収納される大きさへ、ポーチ1の大きさは調整されている。ポーチ1は、開口の際に関節となる一辺11を有し、測定器2は、その前面に測定結果表示部22を、下方にセンサ挿入部23を有する。
【0012】
本発明のポーチ1において、前記測定器2前面の少なくとも測定結果表示部22を隠さないように(すなわち使用者が表示部の表示を読み取れるように)透明で、幅を有するバンド3が前記測定器2を固定し、そのバンド3の一部が、前記ポーチ1の前記関節部分11と可動可能に連結していることが好ましい。図2は、本発明に係るポーチ1が、そのポーチ1本体における一辺を関節にして180°の角度で開口した状態を示している。そのポーチ1内部の関節部分11(いわゆる蝶番)に、幅を有する透明なバンド3の一部が接続されている。このバンド3は、その接続部31を介して、ポーチ1全体とは独立して可動可能である。開口したポーチ1が、関節部分11を介して更に開いて約300°の角度まで開いた状態であれば、図3(A)から(C)に示すように、このバンド3は露出することになる。この透明バンド3内部に測定器2が実際に収納された状態が図4、図5および図6である。バンド3へ測定器2を収納した状態は図4である。このままでももちろん測定器2へ血液検体を適用することは出来るが、ポーチ1内壁へ検体が付着する可能性が高い。そこで、図5(A)から(C)に示すようにポーチ1を更に開口することで測定器2を露出させ、更に図6に示すように360°まで開いて裏返すことで測定器2を完全に露出させることにより、測定器2におけるセンサ挿入部23へのセンサ(図示せず)の挿入、およびセンサへの検体適用が極めて平易になると同時に、ポーチ1内壁への検体付着の心配が完全に解消される。
【0013】
このとき、バンド3内部へ測定器2を確実に収納するために、また、サイズが各社で多少異なる測定器2でも収納できるように、前記幅を有する透明なバンド3が弾性および/または収縮性を有することが好ましい。バンド3の全体が弾性および/または収縮性を有する必要はなく、例えば測定器2の測定結果表示部22に位置する透明部分のバンド3は弾性および/または収縮性を有さずに単に可撓性を有しており、測定器2の背面に位置する部分が特に透明でなくても構わないゴムで成形されており、結果的にバンド3へ弾性および/または収縮性を付与していても問題ない。
【0014】
本発明のポーチ1において、前記測定器2前面の測定結果表示部22を隠さないように、少なくとも2本の紐状部材4が前記測定器2を固定し、その少なくとも2本の紐状部材4が、前記ポーチ1の前記関節部分11と可動可能に連結していることが好ましい。この状態を図7に示す。基本的に、2本の紐状部材4が測定器2前面の測定結果表示部22の上辺と下辺に結び付けられていればよく、その紐状部材4の一部がポーチ1内部の関節部分11に接続されている。ポーチ1とは独立して可動する点、開口したポーチ1が関節部分11を介して更に裏返した状態であれば測定器2が露出する点などは、紐状部材4と上記バンド3は同様の動きをする。もちろん、紐状部材4の長さは、測定器2のサイズが各社で多少異なる場合に、適宜調節することができる。
【0015】
本発明のポーチ1において、前記測定器2前面の測定結果表示部22を隠さないように、前記測定器2の背面及び側面及び前面の一部を覆う剛性部材5が、前記測定器2を保持して固定し、その剛性部材5の一部が、前記ポーチ1の前記関節部分11と可動可能に連結していることが好ましい。この状態を図8に示す(測定器2を排除した状態は図示せず)。測定器2前面の測定結果表示部22以外を覆うような幅広の爪状部で、測定器2は、剛性部材5に背面から抱え込まれた状態で固定される。各社の測定器2前面にある測定結果表示部22面は、前面よりも一段階凹んでいることが多く、そこに爪状部を引っ掛けると、より強固に固定されて好ましい。
【0016】
本発明のポーチ1において、前記ポーチ1の前記関節部分11から可動可能のアーム6が伸び、そのアーム6の先端が、前記測定器2の本体の一部と結合することも好ましい。この状態を図9(A)から(C)に示す。(A)が前面、(B)が背面からの斜視図、(C)が(B)での結合部位の詳細を示す拡大図である。基本的に、図中アーム6の先端が測定器2のいかなる部分と結合されていても問題は無いが、測定器2のセンサ挿入孔23を除いて結合することが、ユーザの使い勝手から好ましい。また、最近の各社の殆どの測定器2には、携帯電話と同様の提げ紐(ストラップ)を結び付けるための貫通孔61が装備されており、本態様では、そのストラップ用貫通孔61を利用することも出来る。すなわち、アーム6の先端部に金属製等の丈夫なリング62を備え、前記リング62をストラップ用貫通孔61へ通して、両者を結合することが出来る。
【0017】
本発明のポーチ1において、前記ポーチ1の前記関節部分11と、測定器2との間で、直接に専用ジョイント(例えば金属製蝶番)を設けることにより、可動可能に結合しても良い。(図示せず)
【0018】
前述のように、本発明のポーチ1は、糖尿病関連の用具を入れるのに使用されることが好ましい。この場合、前記ポーチ1本体内部に、測定器2収納部に加えて、測定器2付属用具収納部、ランセットデバイス収納部、採血針収納部、インスリン注入器収納部、インスリン針収納部および低血糖時摂取用グルコース収納部からなる群から選ばれる収納部を有することが好ましい。そのように各収納部(ポケット)へ糖尿病関連の用具を収納した状態を、図10に示す。図10においては、ランセットデバイス7、測定器2に対応する使い捨てセンサが入っている容器8、採血針(ランセット)容器9を収納した一例を図示している。
【0019】
また、本発明のポーチは、少なくともその表面が撥水性であることが好ましい。これは、本発明のポーチを糖尿病関連用具の収納に使用した場合、トイレで使用することが多いからである。撥水性を付与する手段としては、撥水性素材を使用してポーチを製造する方法やポーチを撥水性素材でコーティングする方法が挙げられる。また、万が一のことを考慮して、ポーチ内部も撥水性にしておき、何かの拍子で付着してしまった汚染血液を拭き取り易くすることが好ましい。
【0020】
本発明のポーチは、クッション性を有することが好ましい。これは、本発明のポーチを糖尿病関連用具の収納に使用した場合、測定器やペン型インスリン注入器等の用具を収納することとなり、ポーチを落としたりぶつけたりしたとき、これらの用具の破損を防止するためである。各図に示すように、ポーチ1を開口する際、ポーチ1は関節部分11を介して上面と下面に分かれるが、その上面および下面の両方がクッション性を有することが好ましい。
【0021】
本発明において、ポーチ1と測定器2が分離不可能な部材及び手段により直接に接続されていても問題は無いが、測定器2のメンテナンス、電池交換等を考慮して、ポーチ1と測定器2が分離可能であることが好ましい。
【0022】
本発明において、測定器2での測定対象物質としては、グルコースのほか、コレステロールや乳酸などの生体関連物質であることが好ましいが、それ以外の物質であっても、原理的に測定が可能であれば、特に問わない。測定器2での検体種についても、全血のほか、血漿,血清,尿,喀痰,髄液,生活廃液など、原理的に測定が可能であれば、特に問わない。また、測定器2での測定原理は、対応するセンサを用いるものであれば、酵素学的,免疫学的,電気化学検出,光学検出などの任意の技術が採用される。
【0023】
このポーチ1の大きさは、その用途や利用者の種類等に応じ適宜決定される。ポーチ1本体の大きさは、閉じた状態で、例えば、縦70〜230mm×横120〜300mm×幅20〜80mmであり、好ましくは、縦100〜200mm×横150〜270mm×幅30〜70mmであり、より好ましくは、縦130〜170mm×横180〜240mm×幅40〜60mmである。ポーチ1の素材は、特に制限されず、例えば、皮革、合成繊維等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明のポーチの一例を閉じた状態と、内部に収納される小型測定器の斜視図である。
【図2】図2は、前記ポーチを180°開口した状態の斜視図である。
【図3】図3は、前記ポーチをさらに300°まで開口した状態を、各角度から見た斜視図である。
【図4】図4は、測定器を結合した前記ポーチを180°開口した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、測定器を結合した前記ポーチをさらに300°まで開口した状態を、各角度から見た斜視図である。
【図6】図6は、測定器を結合した前記ポーチを360°まで開口した状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、測定器を二本の紐状部材で固定する態様の本発明のポーチを、360°まで開口した状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、測定器を剛性部材で固定する態様の本発明のポーチを、360°まで開口した状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、測定器に備わる貫通孔をアームで固定する態様のポーチを、300°まで開口した状態を、各角度から見た斜視図である。
【図10】図10は、本発明のポーチへ糖尿病関連の用具を収納した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ポーチ
11 関節
2 測定器
22 測定結果表示部
23 センサ挿入孔
3 幅を有する透明なバンド部
31 接続部
4 紐状部材
5 剛性部材
6 アーム
61 ストラップ用貫通孔
62 リング
7 ランセットデバイス
8 使い捨てセンサが入っている容器
9 採血針(ランセット)容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーチ本体の内部に測定器が取り付け可能になっているポーチであって、前記ポーチ本体は一辺を関節にして自由に開口可能であり、前記ポーチ内部側の前記関節部分に、測定器のセンサ挿入部を除く一部が連結可能となっており、前記ポーチ内部を開口した際に前記測定器が可動域を有することを特徴とするポーチ。
【請求項2】
少なくとも一部が透明であり幅を有するバンドが前記測定器を固定し、そのバンドの一部が、前記ポーチの前記関節部分と可動可能に連結していることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載のポーチ。
【請求項3】
前記バンドが弾性および/または収縮性を有する、特許請求の範囲第2項に記載のポーチ。
【請求項4】
前記測定器前面の測定結果表示部を隠さないように、少なくとも2本の紐状部材が前記測定器を固定し、その少なくとも2本の紐状部材が、前記ポーチの前記関節部分と可動可能に連結していることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載のポーチ。
【請求項5】
前記測定器前面の測定結果表示部を隠さないように、前記測定器の背面及び側面及び前面の一部を覆う剛性部材が、前記測定器を保持して固定し、前記剛性部材の一部が、前記ポーチの前記関節部分と可動可能に連結していることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載のポーチ。
【請求項6】
前記ポーチの前記関節部分から可動可能のアームが伸び、そのアームの先端が、前記測定器の本体の一部と結合することを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載のポーチ。
【請求項7】
前記測定器の本体の一部が、前記測定器にストラップを結びつけるための貫通孔である、特許請求の範囲第6項に記載のポーチ。
【請求項8】
ポーチ内部に、測定器付属用具収納部、ランセットデバイス収納部、採血針収納部、インスリン注入器収納部、インスリン針収納部および低血糖時摂取用グルコース収納部からなる群から選ばれる収納部を有する、特許請求の範囲第1項に記載のポーチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−51563(P2010−51563A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219967(P2008−219967)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】