説明

マイクロアレイ評価システム及び方法

試料中の複数の検体を検出するシステム及び方法が記載されている。評価システム(100)は、アパーチャアレイ(108)、及び、複数の励起ビームを生成し、かつ該複数の励起ビームを基板上の各異なる領域上に集束させるレンズアレイ(110)を有する。これらの領域には、前記試料中の様々な検体を結合する様々な結合位置が供されて良い。検出器内において様々な発光応答を検出することによって、様々な検体の存在又は量を同時に決定することができる。あるいはその代わりに、又はそれに加えて、前記発光応答を直接的に収集し、かつ該収集された発光応答を対応するアパーチャへ導光するレンズアレイを用いることによって、発光放射線の収集が行われても良い。好適実施例では、励起サブビームは前記レンズアレイに対向する前記基板の面上で集束され、かつ、前記レンズアレイと前記基板との間に浸漬流体が供されることで、前記発光放射線の収集効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学検出の分野に関する。より詳細には本発明は、蛍光評価システム、特に、試料の化学分析、生物分析、及び/若しくは生化学分析用バイオセンサ並びに/又はマイクロ流体デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは一般に、特定の標的分子の表面への選択的結合を検出するように設計されている。前記標的の存在は、物理的効果を生じさせるラベル−たとえば蛍光分子又は他のラベルのようなもの−の付着を介して認識可能となる。光学ラベルは広く用いられている。蛍光検出の場合では、ラベル分子は、そのラベル分子−たとえば色素分子−の吸収が最大となる波長を有する光ビームによって励起される。基礎となる生物結合事象を非常に高感度で測定することを可能にするため、前記波長とは異なる波長で放出される光は最大感度で測定される必要がある。医療診断分野におけるバイオセンサ及びマイクロ流体デバイスの用途の多くでは、相当数異なる標的分子の結合を検出する必要がある。これは、各異なる捕獲分子のアレイを基板上に固定することによって実現される。よって課題は、非常に希釈された濃度の試料中に存在する大多数の異なる標的分子を、高感度及び高再現性で、かつ迅速に検出することである。感度は、標的分子の表面への固定効率及びセンサの原理によって決定される。標的分子の固定効率が、標的分子の濃度、拡散及び反応動力学特性、並びに表面積に依存する一方で、センサの原理の感度は生成されたバックグラウンド信号に依存する。このバックグラウンドは様々な起源を有する。様々な起源とはたとえば、他の発生源からの信号、表面に選択的ではなく結合したラベルからの信号、センサの雑音等である。雑音レベルを減少させる測定は、その測定の品質及び感度を向上させ、かつ検出限界を改善する。医療診断用途では、少なくとも一部の使用部品は使い捨てとなるので、設計は低コストで解決されなければならない。
【0003】
既知の評価システムは、蛍光測定法において共焦点顕微鏡を用いており、そのようなシステムは特許文献1に開示されている。そのシステムは、観察対象上に複数の焦点を生成して、光の適切な偏光方向を生成するマイクロレンズアレイ及び液晶制御システムを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願1548481A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少なくとも1つ試料中の様々な検体からの発光を検出するための良好な方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、「特許請求の範囲」の請求項1と10に記載された本発明の方法及びデバイスによって実現される。
【0007】
本発明は、検出器を用いて基板の複数のサブ領域の各々からの発光応答を検出し、かつ基板と接する試料中の複数の検体を評価するシステムに関する。当該システムは、複数の励起放射線サブビーム及び/又は複数の発光放射線サブビームの制限するように備えられた複数のアパーチャ、並びに、前記複数のアパーチャに対応する複数のレンズを有するレンズアレイを有する。前記レンズアレイの各々は、前記アパーチャアレイの対応するアパーチャから励起放射線サブビームを受光して、前記励起放射線サブビームを前記基板のサブ領域上に直接集光し、及び/又は、前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを直接収集して、前記発光放射線サブビームを前記アパーチャアレイの対応するアパーチャへ直接導光するように備えられている。本発明の実施例の利点は、当該評価システムが多重測定−つまり同一試料中での様々な検体の測定−でさえも高励起効率での励起を可能にすることである。「直接集光」するとは、前記レンズアレイと前記基板との間に別なレンズ(素子)が存在しないことを意味する。
【0008】
当該評価システムはさらに、浸漬流体を用いることを可能とするような前記基板とレンズアレイの配置が得られるように、前記レンズアレイの付近に前記基板を供する試料ホルダを有して良い。前記浸漬流体は、前記レンズアレイのレンズから前記基板のサブ領域へ前記励起サブビームを導光するために、又は、前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを前記レンズアレイのレンズに収集するために、用いられる。本発明の実施例の利点は、基板表面のサブ領域からの発光放射線を効率的に収集することが可能となることである。後者については、収集用に浸漬液体を用いることによって有利に実現することができる。
【0009】
アパーチャアレイのアパーチャはレンズアレイのレンズと位置合わせされて良い。位置合わせは設定可能な位置合わせであって良いし、又は永続的な位置合わせであっても良い。本発明の実施例の利点は、発光ラベルの集光した励起を実現することが可能となることで、適切な発光の光子束となることである。本発明の実施例の利点は、発光応答を適切に収集することが可能となることである。後者はたとえば、ラベルがその飽和レベル(付近)で励起すると同時にそのラベルが漂白されないように集束されることで実現される。
【0010】
当該評価システムはさらに、励起放射線サブビームと基板との間の相対運動を供する走査手段を有して良い。本発明の実施例の利点は、発光放射線の効率的な収集と、(適切な感度を得るのに必要とされる)大表面積にわたる(適切な励起が得られるのに必要とされる)集束ビームでの動作を可能にする基板表面の走査とが両立可能なことである。後者はたとえば、浸漬液体の使用が可能となることで実現される。前記走査手段はさらに、前記基板上の対応するサブ領域内部での各励起放射線サブビームの相対的な走査運動を供するように備えられる。本発明の実施例の利点は、わずかな走査振幅しか必要とされないので、安定で信頼性のあるシステムとなることである。
【0011】
当該評価システムは、前記励起放射線サブビームの導光と、前記レンズアレイ及びアパーチャアレイを介した前記発光放射線サブビームの収集の両方を行うように備えられて良い。本発明の実施例の利点は、共焦点評価手法が用いられることで、試料カートリッジ中で生成された発光放射線が放出される位置に基づく、その生成された発光放射線のフィルタリングが実現することである。
【0012】
当該評価システムは検出器を有して良い。前記検出器は複数の画素を有する検出器であって良い。当該評価システムは、前記基板上の各異なるサブ領域からの発光応答を実質的にそれぞれ分離して検出するように備えられて良い。本発明の実施例の利点は、多重測定、つまり同一試料中の様々な検体の検出が可能となることである。
【0013】
前記レンズアレイは、前記基板表面のうち前記レンズアレイに対して対向する面上に励起放射線サブビームを集束させるように備えられて良い。前記の基板の対向する面は前記試料と接するように備えられて良い。本発明の実施例の利点は、単純なアッセイ手順及び評価システムが実現されることで、前記試料中の検体の評価を実行するのに基板の洗浄が不要となることである。
【0014】
当該評価システムはDNA又はタンパク質を検出するように備えられて良い。当該システムはさらに、前記基板上での前記レンズアレイの焦点を調節する集束手段を有して良い。本発明の実施例の利点は、当該システムが様々な厚さを有する基板との併用できることである。
【0015】
当該システムはさらに、前記基板を有する試料カートリッジの位置合わせを行う位置合わせ手段を有して良い。係る位置合わせは当該システム−たとえば前記レンズアレイ−との位置合わせであって良い。本発明の実施例の利点は、前記レンズアレイのレンズと前記基板上のサブ領域との位置合わせが実現可能となることである。
【0016】
当該システムはさらに、前記基板上の様々なサブ領域からの検出された発光応答を分析するように備えられた処理及び分析手段を有して良い。本発明の実施例の利点は、当該評価システムが自動的に動作可能となることである。
【0017】
前記アパーチャアレイは、励起放射線ビームを受光し、かつ前記励起放射線サブビームを生成するように備えられて良い。
【0018】
本発明はまた、基板と接する試料を評価する方法にも関する。当該方法は、アパーチャアレイを用いることによって、複数の励起放射線サブビーム及び/又は複数の発光放射線サブビームを同時に制限する手順、かつ前記レンズアレイの対応するレンズ内で、前記アパーチャアレイの対応するアレイからの励起放射線サブビームを受光する手順、前記基板上のサブ領域上に前記複数の励起サブビームの各々を直接集光する手順、又は、前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを直接収集する手順、かつ前記発光放射線サブビームを前記アパーチャアレイの対応するアパーチャへ導光する手順、を有する。当該方法はさらに前記の収集された発光放射線サブビームを検出する手順をさらに有して良い。当該方法は試料カートリッジと前記レンズアレイとの間に浸漬液体を供する手順をさらに有して良い。後者は前記発光のより効率的な収集を可能にする。
【0019】
当該方法は、診断に利用する目的でDNA及び/又はタンパク質を評価するように備えられて良い。
【0020】
本発明はさらに、試料中の複数の検体を評価するための試料カートリッジに関する。前記試料カートリッジは基板及び流体チャネルを有する。前記基板及び流体チャネルは、該流体チャネル内の流体と前記基板表面とが接触させるように備えられる。前記基板表面は複数のサブ領域を有し、前記複数のサブ領域は前記試料中の様々な検体を結合する様々な結合位置を有する。前記サブ領域はピッチを有する。前記ピッチは、アパーチャアレイとレンズアレイとを介して励起ビームを導光することによって生成した複数の励起サブビームによって、又は、前記基板のサブ領域からレンズアレイのレンズを介して発光放射線サブビームを収集し、かつ前記の収集された発光放射線サブビームを前記アパーチャアレイのアパーチャへ導光することによって特徴付けられる。
【0021】
前記カートリッジは、評価システムに対して前記基板を位置合わせするため、たとえば前記基板上に、位置合わせ部位をさらに有して良い。
【0022】
前記サブ領域はDNA又はタンパク質を結合するように備えられて良い。
【0023】
本発明はまた、基板と接する試料中の複数の検体を評価する評価システムと併用される制御装置にも関する。当該評価システムは、複数の励起放射線源によって生成される励起放射線サブビーム及び/又は複数の発光放射線サブビームを制限するように備えられた複数のアパーチャ、並びに、前記複数のアパーチャに対応する複数のレンズを有するレンズアレイを有する。前記レンズアレイの各レンズは、前記アパーチャアレイの対応するアパーチャから励起放射線サブビームを受光し、かつ前記基板のサブ領域上に前記励起サブビームを直接集光し、並びに/又は、前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを直接収集し、かつ前記アパーチャアレイの対応するアパーチャへ前記発光放射線サブビームを導光するように備えられる。当該評価システムはまた、前記基板の各サブ領域からの発光応答を検出する検出器をも有する。前記制御装置は、前記励起放射線源及び/又は前記検出器を制御するように備えられて良い。前記制御装置は、前記励起放射線源と前記検出器とを同期させるように備えられて良い。
【0024】
本発明の実施例の利点はたとえば、分子診断用、乱用薬物の検出用、環境パラメータの解析用、食品品質センサ等としてのバイオセンサとしても用いることができることである。本発明の実施例によるシステムは、多重測定、つまり大多数の検体の測定を同時に行うのに特に適している。したがって本発明の実施例によるシステムは、遺伝子解析−たとえば遺伝子表現解析−にも特に適している。
【0025】
本発明の特別な態様及び好適態様は、本願の「特許請求の範囲」の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の記載事項は、適切であれば、請求項中に明示されていなくても、独立請求項の記載事項及び他の従属請求項の記載事項と組み合わせられて良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施例の利点は小型システムが得られることである。本発明の実施例のさらなる利点は、走査−たとえば共焦点走査−と結像が組み合わせられたシステムが得られることで、良好な感度及び良好な測定速度が実現されることである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1態様の実施例による評価システムの概略的構成を図示している。
【図2】本発明の第1態様の実施例による典型的な評価システムである。
【図3】本発明の第1態様の特別な実施例による、浸漬液体を使用するように備えられた典型的な評価システムである。
【図4】本発明の第2態様の実施例による、試料の評価方法のフローダイヤグラムである。
【図5】本発明の第3態様の実施例による試料カートリッジの典型図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の教示によって、試料中の検体を検出する改善された方法及び装置の設計が可能となる。本発明の上記並びに他の特徴、事項、及び利点は、本発明の原理を例示によって示している添付図面と共に以降の本発明の詳細な説明を参照することによって明らかとなる。この説明は、本発明の技術的範囲を限定することなく単なる例示目的として与えられている。以降で引用される参照番号は添付図面を指称する。
【0029】
各異なる図中においても、同一参照番号は同一又は類似の素子を指称する。
【0030】
以降の語句又は定義はただ、本発明の理解を助けるために供される。「放射線」及び「発光」は典型的には、UV、可視、又は赤外放射線を意味するが、本発明はそれらに限定されるわけではなく、他の種類の電磁放射線が用いられても良い。本明細書にて用いられている放射線ビームの波長は、その放射線ビームの平均波長又は発光が最大となる波長であって良い。本明細書で用いられている「基板」という語は、(複数の)放射線ビームが集光されなければならない領域及び収集される発光放射線ビームが放出される領域を表す。本発明による検出が行われることが予想される発光位置は、少なくとも1つ(中心)発光ビーム波長を有する少なくとも1つの発光ビームを放出する基板上の各独立した位置又は点である。任意の発光信号−たとえば反射、散乱、蛍光、化学発光、エレクトロルミネッセンス、生物発光、又は他の発光も考えられる。発光位置は、基板上の占められた位置−たとえば発光ラベルが付された標的粒子によって占められた位置−に関係すると考えられる。放射線を放出する、又は放射線出力を変化させる−たとえば検体分子に近づいたときに、放射線の色を(少なくとも部分的に)消す又は変化させる−分子は、「光学的に可変な分子」として表される。基板から放出される発光には、基板から及び/又は基板を介して放出される放射線が含まれる。また基板から放出される発光は基板上に設けられた素子によって生成される。そのような素子とはたとえば、適切な波長の放射線による励起後に、たとえばマイクロアレイ内部にて蛍光放射線を生成する蛍光ラベルである。基板は、たとえばガラススライド、マイクロアレイ、シリコンチップ、膜−たとえばナイロン膜−、フィルタ−たとえばナイロンフィルタ−、マイクロ流体デバイス、粗くされた金属基板、ゲル−たとえばDNA又はタンパク質を含むアガロースゲル−、発光位置を供するのに適切な表面を有する他のデバイスのような如何なる適切な基板であっても良い。本明細書で用いられている「試料」という語は(複数の)関心検体を有する組成物に関する。本明細書で用いられている「検体」という語は、本発明の方法によって検出される物質を指称する。検体は固有の発光を供するものであって良いし、又は発光を生じるようにラベルが付されたものであっても良い。本明細書で用いられている「ラベル」という語は、検出可能な信号を生成することが可能な分子又は材料を指称する。ラベルは、検体に直接付着されても良いし、又はリンカー部分−たとえばラベルが付されたプローブ−を介して付着されても良い。検体へ選択的に結合することが意図されているこれらのプローブは、検体への選択的結合が可能な化合物又は検体の(特定の)一部に相当する化合物をラベルへ接続することによって得られる。検体選択性のプローブの特性は、検出される検体の性質によって決定される。最も一般的には、プローブは、検体との選択的な相互作用に基づいて開発される。そのような結合とはたとえば、抗原−抗体結合、相補的ヌクレオチド配列、炭水化物、相補的ペプチド配列結合、炭水化物−レクチン結合、相補的ペプチド配列結合、リガンド−受容体結合、補酵素−酵素結合、酵素抑制剤−酵素結合等であるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
第1態様では、本発明は、基板表面と接する試料中の複数の検体を評価する評価システムに関する。前記基板には、該基板表面の複数の異なるサブ領域が供されていることが好ましい。これらのサブ領域の少なくとも一部は各異なる検体と結合するように備えられている。試料が前記基板と接するとき、特定の検体が、前記基板表面の特定のサブ領域に結合する。本発明の実施例による評価システムは特に、そのような様々な検体の検出に適している。
【0032】
当該評価システムは、放射線源からの励起放射線ビームを受光し、かつ/又は発光放射線応答を収集するように備えられていることが好ましい。当該評価システムは、複数の励起放射線サブビーム及び/又は複数の発光放射線サブビームを制限するように備えられた複数のアパーチャを有するアパーチャアレイを有する。当該評価システムは回折手段−たとえば複数のレンズを有するレンズアレイ−をさらに有する。これらのレンズの各々はアパーチャアレイの対応するアパーチャに対して位置合わせされて良い。そのためレンズは、対応するアパーチャによって生成される励起サブビームを受光し、かつ、前記励起サブビームを前記基板表面上に直接集光し、又は、前記基板のサブ領域から放射線サブビームを直接収集し、かつ発光放射線サブビームをアパーチャアレイの対応するアパーチャへ導光するように備えられる。
【0033】
集光スポットが回折限界となるように集光されることで、焦点サイズは1μm以下となる。スポットの品質の改善を可能とすることで回折限界の集光を可能にするため、レンズ収差を回避する非球面レンズの表面を利用することが知られている。
【0034】
よって、様々な励起された検体から発生する発光放射線又は様々なサブ領域からの発光ラベルが検出を用いて検出可能となる。好適実施例では、前記基板の様々なサブ領域で発生する発光は、たとえば励起に用いられたレンズアレイと同一のレンズアレイを用いることによって、サブ領域毎に別個に収集及び検出される。本発明の第1態様の実施例による典型的なシステム100の様々な標準的及び任意の部品が図1に図示されている。様々な部品については以降で詳述する。
【0035】
評価システム100は放射線源102を有して良いが、放射線源102は評価システム100と分離していても良い。そのように分離することで、評価システム100は、励起ビームを受光するように備えられる。評価システム100は、励起ユニット104と併用するものと考えることもできるし、又は励起ユニット104を有するものと考えることもできる。また評価システム100は、検出ユニット118と併用するものと考えることもできるし、又は検出ユニット118を有するものと考えることもできる。放射線源102は励起ユニット104の一部であっても良いし、又はその一部でなくても良い。あるいはその代わりに、後述するように、評価システム100は励起放射線によって誘起されない発光応答を評価するのに用いられても良い。放射線源102は、発光ラベルの励起するように備えられた励起ビームを発生させることが好ましい。放射線源102は、複数の異なる波長の放射線を発生させるように備えられて良い。放射線源102は白色光放射線源であって良い。放射線源102は、1つ以上の(準)単色放射線源をも有して良い。放射線源102はたとえば、(複数の)発光ダイオード、(複数の)レーザー、チューナブルレーザー等であって良い。たとえば発生した放射線が蛍光放射線である場合、励起放射線の光学波長は一般的にはたとえば200nm〜2000nm又は400nm〜1100nmの範囲であって良い。しかし本発明はこれに限定されない。
【0036】
評価システム100−たとえば励起ユニット104−は、励起ビームをピンホールへ導光する光学素子106を1つ以上有して良い。前記励起ビームを導光するこれらの1つ以上の光学素子106は、レンズ、プリズム、コーティングされたプリズム等又はこれらの組み合わせから選ばれて良い。評価システム100は複数のアパーチャを有するアパーチャアレイ108を有する。アパーチャアレイ108は、前記励起ビームを受光し、かつ前記励起ビームを多数の励起サブビームへ分離するように備えられている。アパーチャアレイ108は、複数のサブビームを第1レンズアレイへ供するように備えられている。アパーチャアレイ108は、放射線ビームの減少、制限、又は成形を前記放射線路に垂直な断面において行うことを可能にするデバイスのアレイであって良い。アパーチャアレイ108は、従来のピンホールアレイ、ダイアフラムのアレイ等であって良い。アパーチャアレイ108はまたシャッターのアレイであっても良い。アパーチャアレイ108は、前記放射線を前記アパーチャ内に集中させるように備えられた1つ以上の追加のレンズアレイに隣接して良い。そのような1つ以上の追加のレンズアレイは、アパーチャアレイ108とともにモノリシックブロックを形成して良い。第1レンズアレイ110は、試料カートリッジ115が設置されるときに、前記励起サブビームを、基板112上の各異なるサブ領域へ直接集光するように備えられている。係る集光は第1レンズアレイ110のみで−つまり1つの有限の共役レンズ−又はピンホールアレイ108に近いアレイ素子と併用することで行われて良い。第1レンズアレイ110もまた、アパーチャアレイ108とモノリシック構造をなすように形成されて良い。レンズアレイ110はエッチング及びリソグラフィによってウエハスケールで作られて良い。読み出しシステム全体は、数百から数千の平行放射線路を有して良く、かつウエハスケールのプロセスで、非常に効率的に製造及び組み立て可能である。第1レンズアレイ110は、前記励起サブビームを基板112上に直接集光する。このことは、前記励起サブビームと基板112との間には追加のレンズ素子も集光素子も存在しないことを意味する。基板112に対向する第1レンズアレイ110は、基板の厚さを実用に適した厚さとすることが可能となるように、受容可能な焦点距離を有する最大開口数(NA)を有するように設計されることが好ましい。そのような基板の厚さはたとえば10〜100μmであって良い。以降で詳述するように、1よりも大きな開口数NAは、評価システム100と試料カートリッジ内の生体基板112との間に浸漬流体を用いることによって実現される。
【0037】
評価システム100は、試料カートリッジ115を保持する試料ホルダ116を有することが好ましい。原則として試料カートリッジ115は、評価システム100への挿入前又は評価前に前記試料と接していた基板112であって良い。他方好適実施例では、試料カートリッジ115は、基板112及び該基板112の生体表面と接する試料流体を含む流体チャネル114を有する。試料が流体チャネル114へ挿入されるとき、基板112の生体表面上の結合位置と検体との結合が起こる。基板112は複数のサブ領域を有して良い。基板上の様々なサブ領域へ様々な検体を結合することが可能となることで、多重測定が可能となるように、前記複数のサブ領域上では、標的を選択する結合を起こすことができる。
【0038】
試料カートリッジ115が評価位置に存在するときに、前記励起サブビームが、試料カートリッジ115内の基板112のサブ領域上に集光されるように、第1レンズアレイ110と試料ホルダ116は配置される。そのような基板の生体表面の一部であるサブ領域は、好適実施例では、レンズアレイ110に対して反対側を向く基板112の面に設けられる。そのため前記生体表面は前記の基板112の面で試料流体と接する。よって第1レンズアレイ110は、基板112上へ励起サブビームが入射する最初の面とは反対の基板表面で前記励起サブビームを集光する−つまり基板112を介して前記反対の基板表面上に前記励起サブビームが集束される−ように備えられていることが好ましい。後者は、前記励起放射線は試料流体を通過する必要がないので、前記流体中未結合発光ラベルの発光の生成は減少する、という利点を有する。後者はさらに、アパーチャアレイ108と第1レンズアレイ110の与えられた配置を用いることによって減少する結果、前記サブ領域上での励起放射線サブビームが適切に集光される。本実施例では、前記発光ラベルの励起を可能にするため、前記励起放射線は基板112を通過する必要があるので、基板112は、前記励起放射線に対して実質的に透明となるように選ばれなければならない。
【0039】
試料カートリッジ115−評価システム100の一部である必要はなく、評価システム100と協働すればよい−は使い捨てであって良い。ただし、本発明はそのことには限定されず、基板112を洗浄する洗浄手段が用いられても良い。とはいえ精度及び交差汚染の観点から、基板112が一度しか用いられない使い捨てカートリッジが好ましい。
【0040】
発光ラベルが基板112のサブ領域内の結合位置で対応する被検体と共に捕獲されている場合、前記サブ領域上に集光される様々な励起サブビームは発光ラベルを励起する。固定されたラベルが放出する放射線は、全方向に最高の強度で放出され、基板112へ導かれる。評価システム100はさらに、検出器122内での発光応答を検出するように備えられている。前記発光応答を収集するように備えられている部分は検出ユニット118と指称することができる。検出に際しては、評価システム100は追加の導光手段120−たとえばレンズ、ミラー、ラスタ、フィルタ、プリズム等−を有して良い。これらの光学素子のうちの1つ以上は、前記発光応答を選択し、かつ前記の収集された発光応答の信号対雑音比を改善するため、反射された励起放射線をフィルタリングするためのフィルタ−たとえば二色性フィルタ−を有して良い。前記基板表面を起源とする発光放射線だけが前記フィルタを通過して、検出器122に衝突する。反射又は散乱された励起放射線はフィルタリングされて、検出器122には到達しない。
【0041】
検出器122は、前記基板表面での発光ラベルからの発光応答を検出する任意の適切な検出器であって良い。どの検出器素子106が用いられるべきなのかは、試料中に生成する放射線(の成分)の種類に依存する。たとえば試料(の一部)中に蛍光放射線が生成される場合に使用可能な検出器122の典型例はたとえば、カメラ−たとえばCCD又はCMOSカメラ−、光検出器、光子検出器−たとえばフォトダイオード、フォトトランジスタ又はそのアレイ−である。基板上の様々なサブ領域からの発光、つまりは結合した様々な検体の発光を同時に検出するため、検出器122は複数の検出器素子を有することが好ましい。このことは換言すると、検出器122は検出器アレイであることが好ましい。そのような検出器122は評価システム100に取り付けられて良い。検出器122は、各サブ領域からの発光放射線が前記センサ上の1つの画素又は必要に応じて複数の画素上に集光されて良い。強度が大きくなることで信号対雑音比も増大するので、1つの画素が好ましい。1つの画素を有する検出器が用いられる場合、発光応答は走査される必要があり、多重測定のほとんどの利点は失われる。検出器122は読み出し回路124と接続することで、所与のサブ領域から得られる発光応答の読み出しが可能となることが好ましい。係る読み出し回路124は、得られた発光応答の結果を記憶するように備えられて良い。さらに読み出し回路124は、発光応答結果を処理及び/又は解析する処理及び解析ユニット126に接続して良い。後者は自動的に実行されて良い。
【0042】
試料又は基板上で捕獲された発光ラベルからの発光応答を収集するのに様々な検出器の全体構成が用いられて良い。評価システム100は、励起する面とは反対側の面からの発光応答を検出するように備えられて良い。つまり励起ユニット104は検出器ユニット118の反対側の面に設けられて良い。あるいはその代わりに、励起ユニット104は、検出器ユニット118と同一の面に設けられても良い。後者の結果、より小型化されたシステムが実現し、かつ、励起の生成/収集を行うために、励起ビームも発光ビームも試料を通過する必要がないという利点が得られる。好適実施例では、発光応答の収集は、励起ビームの集光に用いられた第1レンズアレイ110と同一の第1レンズアレイ110を用い、任意でアパーチャアレイ108をも用いることによって実行される。発光応答の収集にもアパーチャアレイ108を用いることによって、発光応答の原点でフィルタリングが生じ、その結果、基板112上の各異なるサブ領域間で大きなクロストークが生じる。様々なサブ領域からの発光が様々な検出された検体を表すので、より正確な検査結果が得られると同時に多重測定をも可能にするという利点が得られる。さらに以降において特別の実施例で述べられているように、浸漬流体を用いることで、基板内での内部全反射が抑制又は回避される結果、より多くの放射線が収集されるので、同一の光学系の設定によってより高い信号対雑音比が得られる。基板112の様々なサブ領域から放出される様々な発光応答はさらに、励起ビームを集光するのに用いられる光学素子の一部、及び/又は、上述したように追加の光学素子120を介して収集されて良い。第1レンズアレイ110及びアパーチャアレイ108が発光放射線の収集に用いられる実施例の特別例が図2に図示されている。放射線源104からの励起放射線は側方から入射して結合して、二色性フィルタ204によって覆われているプリズム202を用いることによって、アパーチャアレイ108と第1レンズアレイ110へ向かうように反射される。図2では例として、本発明は図2の実施例に限定されず、レンズアレイの積層体が図示されている。さらに第1レンズアレイ110に加えて、放射線をピンホールアレイ108へ最適化された状態で導光し−つまり放射線をアパーチャアレイ108内に集光する−、かつアパーチャアレイ108からの放射線を導光する−つまり基板112上に放射線を集光する第1レンズアレイ110を支援する−追加のレンズアレイ206,208がアパーチャアレイ108の近くに供される。
【0043】
評価システム100は、適切な位置に放射線の焦点を調節する集光手段128をさらに有して良い。適切な位置とはつまり結合位置を有するサブ領域が設けられている基板112の表面である。そのような集光手段126は、評価システム100(の一部)の軸方向での作動を供するため、アクチュエータ130を利用して良い。それにより第1レンズアレイ110は、基板112の表面に対応する焦点距離を有するため、適切な位置に備えられる。集光手段128は、たとえば試料カートリッジから、たとえば基板表面−たとえば基板の生体表面−から反射した励起放射線の強度を用いるように備えられて良い。この目的のため、特別な部分反射領域が基板上に含まれて良い。あるいはその代わりに基板と試料流体との界面での反射が用いられても良い。固定された発光ラベルによっては吸収されずに試料流体中を透過する励起放射線は、基板112の反対側面で流体チャネルを画定する被覆体にまで到達することができる。前記被覆体は励起放射線を吸収して良い。これは選択的に行われても良い。
【0044】
よって自動集光機能(又は能動的集光機能)は、基板がレンズアレイの最適焦点の位置に存在するように実装することができる。一般的には、このためには以下のことが必要とされる。
− 相対位置の調節が可能な作動するレンズアレイ及び/又は基板。理想的にはこの作動は、面内運動と組み合わせられた垂直方向の運動を実装することができる。
− 焦点誤差信号が、自動焦点及び面内補正用の入力として用いられる。前記焦点信号は、基板から反射される全ての集積された信号に対する様々な既知の集光手法(フーコーエッジ、フーコープリズム、非点収差等)によって得ることができる。
【0045】
自動焦点機能は、レンズアレイと基板との間での傾き検出と組み合わせられて良い。この傾き検出は、一次元における傾き検出に限定されても良い。完全な傾き制御を有するため、2つの直交する焦点/傾きセンサが必要となる(たとえば基板から反射される光信号を分離するため)。1つ以上の4象限検出器がこの目的に用いられても良い。
【0046】
自動焦点機能を実装する別法はピクセル化された検出器を用いることである。ここで反射光は、共焦点を有するように検出器上で直接的に結像される。像が解析されて良い。深さと傾きの完全な制御が画像解析から実現可能となる。
【0047】
評価システム100はさらに、励起サブビームを試料カートリッジ115に位置合わせする位置合わせ手段134を有して良い。係る位置合わせ手段134は、基板上−たとえば基板112上のサブ領域外部、つまり基板112の生物結合領域の外側−の位置合わせ印の検出に基づいて良い。係る検出はたとえば光学的に検出されて良い。ただし本発明はそれに限定されない。係る位置合わせ印はさらに、位置情報の推定及び/又は様々な方向−たとえば基板平面内又はさらには基板平面内及び該平面と垂直な方向−での位置合わせの改善のため、相対走査運動を同時に読み出すことの可能な位置情報又は他の情報を有して良い。
【0048】
さらなる好適実施例について詳述するように、評価システム100はさらに、励起放射線ビームと基板112上のサブ領域との間での相対運動を供する走査手段をも有して良い。
【0049】
好適実施例では、当該システムは、走査手段を内蔵することによって、試料カートリッジと励起サブビームとの間での相対運動を供するように備えられる。後者は任意の適切な方法によって供されて良い。任意の適切な方法とはたとえば、試料カートリッジ115に対して評価システム100を動かすこと、励起サブビームが基板112の表面全体を走査するように、試料カートリッジ115に対して評価システム100の光学部品を動かすこと、及び/又は、評価システム100に対して試料カートリッジ115を動かすことである。この好適実施例を用いると、励起サブビームで基板112上の対応するサブ領域を走査することによって、検出感度を実質的に向上させることが可能となる。レンズアレイ110を用いることによって基板の様々なサブ領域が同時に評価される本発明の有利な実施例を用いることによって、様々な励起サブビームの走査振幅を制限することができる。より具体的には、たとえばレンズアレイ110のピッチと基板112の表面上のサブ領域のピッチが同一又は同程度となるように備えられている場合には、サブ領域の面積内だけ走査すれば良い。つまりサブスポットの走査だけで良くなり、走査振幅と走査速度を小さくすることができる。これは、任意の適切な方法-たとえば圧電駆動-によって非常に高速かつ高い信頼性を保ったまま行うことができる。レンズアレイ110は画像検出器アレイ122に対して永続的に位置合わせされて良い。このようにして走査中に一の画素から他の画素へ放射線が交差する間、新たな雑音や変動が導入されることはない。走査振幅は非常に小さく、かつ速度は低いので、動く光学部品の質量は重要ではなくなる。小さな走査振幅及び走査速度は有利となる。なぜなら評価システム100内の安定性が増すからである。さらに本実施例とは別の特別の実施例で説明するように、走査振幅と走査速度が小さくなることで、放出された発光を効率的に収集するのに浸漬流体を用いることがさらに促進される。このようにして、放出された放射線の収集は内部反射による制限を受けなくなる。走査は断続的に行われても良いし、又は連続的に行われても良い。走査運動は、たとえば曲がりくねったパターン又はそれとは異なるパターンに従った系統的な運動であって良い。走査速度は、検出器と読み出し回路との間での可能なデータ転送速度に調節されて良い。例として、サブ領域についての典型的な滞留時間及び走査速度は以下のようにして決定されて良い。基板上のサブ領域の面積は100μmの範囲-たとえば上限が10000μm(好適には1000μm)で下限が1000μm(好適には5μm)-に属する寸法を有して良い。従って、焦点距離が1μmの励起サブビームを用いて100μm×100μmである1つのサブ領域全体を走査するための全走査長は、曲がりくねったパターンを仮定すると10mmとなる。走査時間が100sに選ばれる場合、走査速度は100μm/sとなる。それに伴って滞留時間は10msとなる。センサ画素の積分時間は10msから全走査時間が100sとなるまでの間で任意に選ばれて良い。その理由は、所与のサブ領域の走査に対応して検出された各発光スポットは一定の単一画素(又は選ばれた画素)に割り当てられて良いからである。
【0050】
一の特別な実施例では、本発明の評価システムは、図3に図示されているように、発光放射線を収集するのに浸漬流体250が使用できるように備えられる。従って第1レンズアレイ110と試料ホルダ116は、当該システムへ搬入されるときの第1レンズアレイ110と基板を配置が浸漬流体を使用するように備えられる。第1レンズアレイ110が励起放射線にとっての最後の集光素子となる、つまり第1レンズアレイ110が基板上に励起サブビームを直接集光するように、かかる配置はなされて良い。一般的には、第1レンズアレイ110と基板との間の距離は短ければ短いほど良い。第1レンズアレイ110と基板112が近接するように位置設定しようとすると、位置合わせが難しくなることに留意して欲しい。第1レンズアレイ110と基板112との間の距離は、30mmの上限(より好適には10mmで最も好適には2mm)及び0.01mmの下限(好適には0.1mm)を有して良い。この実施例では、励起サブビームは第1レンズアレイ110に対して反対側を向く基板112の表面で集光されるのが好ましく、かつ試料カートリッジ115は、前記基板の表面と分析される流体とが接するように設計されることが好ましい。このようにして、浸漬流体は試料と干渉しない。浸漬流体を用いることによって、発生する発光放射線の収集角度はもはや、基板内での全内部反射によっては制限されない。等方的な放出の場合でさえ、収集された放射線の強度は開口数(NA)の2乗に比例する。基板材料の屈折率が典型的な値である1.52の場合では、空気ギャップによる屈折の最大角度はスネルの法則に従って42°となる。浸漬を用いると、この角度は基板内での全内部反射によっては制限されない。発光ラベルが強い異方的放出を起こす場合では、収集効率は数桁増大する。浸漬液体を用いることで、NAを1よりも大きくすることが可能となる。
【0051】
浸漬液体250は図示されているようにレンズ上部に含まれて良い。しかしサブ領域の面積だけを走査することによって、一回の往復運動距離を短くして、速度を落とす必要がある。その結果、浸漬液体は高い粘性を有する(グリースと同程度)ことができるので、実際に封止する必要がなくなる。最も単純な実施例では、使用者は、試料がスキャナ上に設けられる前に、浸漬液体を塗布するだけで良い。
【0052】
たとえば試料と走査光学系との間の空間を封止して水を充填するような、より洗練された解決法も可能となる。これまでは、狭いギャップ中の流体によって生成される高い剪断速度及び剪断応力を取り扱うのに特別な設計が必要とされた。サブ走査を行うのに小さな往復運動距離しか要しない複数のレンズを用いることで、そのような複雑な解決法が不要となる。粘性が高すぎる場合には、気泡が容易に捕獲されるので、一部の可撓性封止は依然として必要となるかもしれない。
【0053】
本発明による実施例の利点は、放射線の収集を効率的に行うことができることである。本実施例ではまた、1つのアパーチャと1つの第1レンズしか存在しないシステムも考えられることに留意して欲しい。本発明の利点は、異なる光学系を必要とすることなく当該システムの開口数を増大させることが可能なことである。
【0054】
他の実施例では、本発明は、上述のようにレンズアレイとアパーチャアレイの両方が存在するが、発光ラベルは他の方法−これだけではないがたとえば化学発光−で励起される評価システム100に関する。よってレンズアレイ及びアパーチャアレイは上述したように、収集目的でのみ用いられる。評価システム100は、発光ラベルを励起する非放射性励起システムを有して良い。係るシステムは、各異なるサブビームによって各異なる発光応答を選択的に収集するという利点、及び、発光応答を共焦点技術により収集するのでクロストークが生じにくいという利点を有する。
【0055】
本発明による実施例の利点は、選択的な検出が行われることである。また集光された励起、大きな収集角度、及び反射における共焦点技術による読み出しを組み合わせることによって、試料中の複数の検体を検出する正確な多重測定を行うことが可能となる。本発明の実施例の利点は、効率的な並列走査が可能なことである。本発明による実施例の利点は、共焦点技術による読み出しが可能なことである。
【0056】
第2態様では、本発明は基板と接する試料を評価する方法に関する。当該方法は、1つの励起ビームから複数の励起サブビームを同時に生成する手順、及び前記複数の励起サブビームをレンズアレイ上へ同時に導光する手順を有する。当該方法は、前記複数の励起サブビームの各々を前記基板のサブ領域へ直接集光する手順をさらに有する。「直接集光」とは、前記基板に衝突する前に、前記レンズアレイのレンズが放射線路上の最後の集光素子すなわちレンズ素子であることを意味する。あるいはその代わりに又はそれに加えて、当該方法は、前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを直接収集する手順、及び前記発光放射線サブビームをアパーチャアレイの対応するアパーチャへ導光する手順を有する。よって前記発光放射線サブビームは制限される。つまり前記発光放射線サブビームの選択された部分を検出システムへ透過させることができる。そのような選択された部分は、前記基板上の所定の横方向位置、及び、発光ラベルが前記基板表面に対して−つまり前記基板に対して垂直な方向に−設定される所定の距離に対応させて良い。本発明の実施例による典型的な方法300が図4で概略的に表されている。図4は、方法300の標準的手順及び任意手順を表している。これらの様々な標準的及び任意の手順は以降で詳述する。
【0057】
第1の任意手順302では、方法300は励起放射線ビームを発生させる手順を有する。前記励起放射線サブビームは、検知用途で用いられる放射線ラベルを励起するように備えられていることが好ましい。あるいはその代わりに当該方法はまた、励起放射線ビームを導光することによって、又は励起放射線ビームを分裂させることによって励起放射線ビームを得る手順をも有して良い。
【0058】
第2手順304では、方法300は、前記励起放射線ビームから複数の励起サブビームを生成する手順を有する。後者はたとえば、アパーチャアレイを用いることによって行われて良い。よってこのようにして、複数の励起サブビームは同時に生成されうる。
【0059】
別個の手順306では、前記励起が行われる前に、前記試料が前記基板112と接する。前記試料はたとえば、前記基板に隣接する流体チャネル内に導入されて良い。前記試料中の検体が前記基板表面の様々なサブ領域と選択的に接することができる。このようにして、検出されるべき各異なる検体は、前記基板表面の各異なるサブ領域へ選択的に結合することができる。前記検体は前記各異なるサブ領域で検出可能である。そのような選択的結合は、前記基板表面の各異なるサブ領域内の所定の結合位置を用いることによって行われて良い。手順306は手順302及び手順304の前に実行されて良い。
【0060】
別な手順308は、前記レンズアレイと前記基板との間に浸漬流体を供する手順を有して良い。後者は、広い入射角で放出された発光放射線の収集を可能にする。つまりこれにより、前記基板内での発光放射線の全内部反射は減少する。
【0061】
さらなる手順310では、同時に生成される前記複数の励起サブビームが、前記基板の各異なるサブ領域上で直接集光されることで、前記基板の各異なるサブ領域上に結合する発光ラベルを励起する。後者はたとえばレンズアレイを用いて実行されて良い。集光は、前記レンズアレイとは反対側の前記基板の表面上での集光であって良い。
【0062】
さらなる手順312及び手順314では、前記励起に応答する前記複数の発光応答の収集及び検出が実行される。後者はたとえば、前記の励起を集光するのに用いられるレンズアレイ及び前記アパーチャ手段を用いることによって実行されることで、前記検出器上の所定位置−たとえば所定の検出器画素−に、前記基板の所定のサブ領域からの発光応答が適切に導光される。
【0063】
追加の手順316では、前記の検出された発光応答から、所定の検体の存在を決定することができる。後者は実現可能となる理由は、各異なる発光応答の各々は前記検出器上の所定の位置で収集されるので、各独立して検出可能であるためである。
【0064】
当該方法は任意で、前記基板のサブ領域内部で前記励起放射線ビームを走査させる手順をも有して良い。後者は、多重測定の感度を増大させるために実行されて良い。当該方法は、第1態様で述べたように、評価システムを用いて実行されることが好ましいと考えられる。
【0065】
たとえば化学発光ラベルが用いられる代替実施例では、前記発光ラベルを励起させる必要はない。よって当該方法は手順304と手順310を有する必要がない。しかし前記発光放射線サブビームを直接収集し、レンズアレイを各独立して用い、かつ前記発光放射線サブビームをアパーチャアレイへ導光することによって、発光応答の収集は実行される。前記発光放射線サブビームは、該サブビームの横方向位置と前記基板に対する垂直距離で制限されることが好ましい。
【0066】
第3態様では、本発明は試料中の様々な検体を検出する試料カートリッジに関する。当該試料カートリッジは、基板、及び、試料流体と基板表面との間で接触する流体チャネルを有する。当該試料カートリッジの例が図5に図示されている。上述したように、基板112は任意の適切な基板−たとえばガラス又はプラスチック−であって良い。検出は、励起放射線が最初に入射する基板面とは反対の基板面でなされることが好ましいので、前記基板は、励起放射線及び/又は発光放射線に対して高い透明度を有していることが好ましい。前記基板は複数のサブ領域402を有する。複数のサブ領域402は、検体又は該検体に結合するラベルを前記基板表面に結合させるように備えられることが好ましい。本発明の実施例によると、前記基板表面上の各異なるサブ領域402には、前記評価システムのレンズアレイ又はアパーチャアレイのピッチに対応するピッチが供される。各異なるサブ領域402は様々な検体を結合させるように備えられて良い。よって、たとえば第1態様で述べたように評価システムで読み出されるときに、多重測定を行うことが可能となる。換言すると、前記基板表面の各異なるサブ領域には、検体若しくは該検体に結合するラベルを前記基板表面に結合させる結合膜又は受容体(たとえば抗体のような)が付着位置に供されて良い。
【0067】
試料カートリッジ−たとえば基板112−はまた、評価システムに対して試料カートリッジ115を位置合わせする−より詳細には基板112上のサブ領域に対して前記励起サブビームを位置合わせする−位置合わせ部位をも有して良い。そのような位置合わせ部位404は、生物結合領域の外部に設けられ、かつ前記サブ領域の走査中に同時に読み出されることが好ましい。そのような位置合わせ部位404は位置情報又は他の情報を有して良い。位置合わせ部位404は、たとえば基板112の面方向だけではなく、前記基板面方向と該方向とは垂直な方向での試料カートリッジ115の位置合わせを改善させることができる。
【0068】
試料カートリッジ115は使い捨て良いし、又は再利用可能であっても良い。前記再利用可能なカートリッジは、試料カートリッジ115から結合した検体を除去するため、前記基板表面を洗浄するように備えられて良い。使い捨て試料カートリッジについては、本発明の実施例による利点は、試料カートリッジ115が微少光学系部位を有しないことである。後者は結果として、低コストの製造と製造時間の節約がもたらされる。
【0069】
本発明による実施例の利点は、高感度を有し、かつ高速検出と多重検出−つまり選択的検出−を可能にする評価システム−たとえばバイオセンサ−が得られることである。さらに本発明の実施例の利点は、耐久性に優れたシステムが得られることである。
【0070】
本発明による実施例の利点は、発光ラベルからの発光応答を高効率で収集できることである。後者は高い信号対雑音比に寄与する。
【0071】
本発明による実施例の利点は、小さな励起体積だけで済む共焦点技術による励起及び集光が実行可能なことである。後者の結果、バックグラウンド信号は減少し、信号対雑音比は増大する。
【0072】
よって本発明は、高励起強度、高収集効率、及び低バックグラウンド雑音を併せ持つことによって、高感度を可能にする。高NAレンズは、高励起強度、高収集効率、及び低バックグラウンド雑音を与える。本発明のシステムは、多数の関心領域の走査を可能にする。回折限界光学系は1μm以下の大きさのスポットサイズを与える。走査は、関心領域の像を連続モードで収集する。運動する多数のビームを用いることで、走査運動の往復運動距離は劇的に減少することが可能となる。また本実施例では、運動する多数のビームを用いることで、サブスポットを走査する方法を実施することによる「走査による画像化」方法を、より大きな面積について効率的なものとすることが可能となる。
【0073】
蛍光体が漂白されない限り高励起出力を利用することは有利である。漂白が回避される場合、同一スポットを観測することは難しい。サブスポットの走査は漂白問題を解決する。
【0074】
サブスポット光学走査系を用いることによって、浸漬液体の利用が可能となる。その理由は、サブスポット走査の往復運動距離しか必要とされず、その結果浸漬媒体は、高速又は高変形状態で剪断されないからである。このことによって、蛍光体から放出される光が高NAレンズに到達して、その結果レンズと基板との間の屈折率が整合する。高走査速度であるときには、走査と浸漬とを併せ持つことは非常に難しい仕事である。これはサブスポット走査方法によって解決される。
【0075】
回折限界光学系を備える連続走査画像化法と浸漬液体を備えるスポットのアレイとを組み合わせることで、
− 大面積の効率的な走査、
− 回折限界の空間分解能、
− 基板内での光の捕獲を回避することによる高収集効率、
− 試料との光学的な干渉を起こさずに、上部から自由にアクセスできる試料を介してして行う、アッセイ測定、
が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器を用いて基板の複数のサブ領域の各々からの発光応答を検出し、かつ基板と接する試料中の複数の検体を評価するシステムであって、当該システムは:
複数の励起放射線サブビーム及び/又は複数の発光放射線サブビームの制限するように備えられた複数のアパーチャ;並びに、
前記複数のアパーチャに対応する複数のレンズを有するレンズアレイ;
を有し、
前記レンズアレイは、前記レンズアレイとは反対の方向を向く前記基板の表面上に励起放射線サブビームを集光するように備えられ、
前記のレンズアレイとは反対の方向を向く基板の表面は前記試料と接するように備えられ、
前記レンズアレイの各々は、
前記アパーチャアレイの対応するアパーチャから励起放射線サブビームを受光して、前記励起放射線サブビームを前記基板のサブ領域上に直接集光し、かつ、
前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを直接収集して、前記発光放射線サブビームを前記アパーチャアレイの対応するアパーチャへ直接導光する、
ように備えられ、
当該評価システムはさらに、前記レンズアレイの付近に前記基板を供する試料ホルダ、及び浸漬流体を有し、
前記浸漬流体は、前記レンズアレイのレンズから前記基板のサブ領域へ前記励起サブビームを導光するために、又は、前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを前記レンズアレイのレンズに収集するために用いられ、
当該評価システムはさらに、励起放射線サブビームと基板との間の相対運動を供することで、前記基板上の対応するサブ領域内部での各回折限界スポットの相対走査運動を供する走査手段を有する、
システム。
【請求項2】
前記アパーチャアレイのアパーチャは、前記レンズアレイのレンズと位置合わせされている、請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記レンズアレイと前記アパーチャアレイを介して、前記励起放射線サブビームを導光し、かつ前記発光放射線サブビームを収集するように備えられている、請求項1又は2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記検出器が多画素検出器である請求項1乃至3のいずれかに記載の評価システムであって、前記基板上の各異なるサブ領域からの発光応答を実質的に各独立して検出するように備えられている、評価システム。
【請求項5】
前記レンズアレイの前記基板上での焦点を調節する集光手段をさらに有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の評価システム。
【請求項6】
前記基板を有する試料カートリッジを位置合わせする位置合わせ手段をさらに有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の評価システム。
【請求項7】
前記の基板上の各異なるサブ領域からの検出された発光応答を解析するように備えられた処理及び解析手段をさらに有する、請求項1乃至6のいずれかに記載の評価システム。
【請求項8】
前記アパーチャアレイが、励起放射線ビームを受光し、かつ前記励起放射線サブビームを生成するように備えられている、請求項7に記載の評価システム。
【請求項9】
前記レンズアレイの各レンズによる集光が回折限界スポット上での集光である、請求項1乃至8のいずれかに記載の評価システム。
【請求項10】
基板と接する試料を評価する方法であって、
当該方法は:
アパーチャアレイを用いることによって、複数の励起放射線サブビーム及び/又は複数の発光放射線サブビームを同時に制限する手順;
前記レンズアレイの対応するレンズ内で、前記アパーチャアレイの対応するアレイからの励起放射線サブビームを受光する手順;
前記基板上のサブ領域上に前記複数の励起サブビームの各々を直接集光する手順であって、前記レンズアレイは、前記レンズアレイとは反対の方向を向く前記基板の表面のスポット上に励起放射線サブビームを集光し、かつ前記のレンズアレイとは反対の方向を向く基板の表面は前記試料と接するように備えられる手順;
前記基板のサブ領域からの発光放射線サブビームを直接収集する手順;並びに、
前記発光放射線サブビームを前記アパーチャアレイの対応するアパーチャへ導光する手順;
を有し、
前記励起サブビームは、前記レンズアレイ内のレンズから浸漬流体を介して前記の基板のサブ領域へ導光され、
前記発光放射線サブビームは、前記の基板のサブ領域から前記浸漬流体を介して前記レンズアレイ内のレンズへ収集され、
当該方法はさらに、前記励起放射線サブビームと前記基板との間の相対走査運動を供することで、前記基板上の対応するサブ領域内部での各スポットの相対走査運動を供する走査手段を用いる手順を有する、
方法。
【請求項11】
前記レンズアレイの各レンズによる集光が回折限界スポット上での集光である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法を実施する、請求項1に記載のシステムと併用される制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−525629(P2011−525629A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515698(P2011−515698)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052683
【国際公開番号】WO2009/156942
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】