説明

マイクロカラムチップ

【課題】 分離に優れた分離ビーズを具備するマイクロカラムチップを提供すること。
【解決手段】本発明は、
(1)基板上に形成されたチャネルにメソポーラスシリカをベースとした分離ビーズが配置されてなるマイクロカラムチップ。
(2)前記メソポーラスシリカをベースとした分離ビーズは、メソポーラスシリカの表面をリガンド修飾したものである請求項1に記載のマイクロカラムチップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカラムチップに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーの領域では、従前からマイクロスケールのビーズをステンレス製、ガラス製のカラムに充填して物質(タンパク、核酸、中低分子化合物)の分析が行われてきた。このようなカラムのサイズは、通常、内径4.6mmで長さ15cmが標準的とされていた。
液体クロマトグラフィーでは、周知のとおり、溶剤を多く使う。このことが古くから技術者に抵抗感があった。一例を示すと、ひとつのサンプルを分析するのに、最適条件を決定するまで100mlの溶剤を何度も繰り返し調整しなければならないか、ポンプで、自動的に溶剤の組成を変化させるとしても、原液を多量に使用しなければならない。更には、分析の安定性・再現性を確保するためにカラム容積の数倍の量の溶剤を流すので実際の分析では、より多くの溶剤を使用せざるを得ない実情がある。
【0003】
更に、生体機構の解明のために極微量の物質の分析が求められるようになってきたが、カラム内での物質の拡散の影響が比較的大きい従前のカラムでは、極微量の物質測定には、蛍光修飾などにより検出感度を上げるなどの工夫をして対処せざるを得なかった。
このようなニーズに応えるものとして、キヤピラリーカラムがある。これは、フューズドシリカの内面をリガンド修飾したものである。
或いは、キヤピラリー状のカラム管に従前の分離ビーズを充填したタイプのものがある。これらのものでも、溶剤使用量の削減、感度の向上を図ることはある程度可能である。その反面、配管接続や、検出器との接続の面などで煩雑さは否めなかった。
このようなカラムのマイクロ化とマイクロTAS(MICROTOTAL ANALITICAL SYSTEM)の技術とを融合し、接続の問題を解決し得る技術として、下記非特許文献に記載されたチップ上に形成されたマイクロカラムがある。これは、カラムへのインジェクションと分離と検出器への注入(場合によっては、検出自体)を一枚のチップ上で実施するというコンパクトな液体クロマトグラフィーを実現したものである。
【0004】
【非特許文献1】アジレント社ホームページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記マイクロチップで使用するカラム用の分離ビーズは、孔径が300オングストロームのもので、被表面積が小さい、タンパク質分析用に特化された分離ビーズである。これでは、理論段数も低く、特に、中低分子化合物の優れた分離能を得る事が難しい。そこで、本発明は、分離に優れた分離ビーズを具備するマイクロカラムチップを提供することを目的としてなされた発明である。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
(1)基板上に形成されたチャネルにメソポーラスシリカをベースとした分離ビーズが配置されてなるマイクロカラムチップ。
(2)前記メソポーラスシリカをベースとした分離ビーズは、メソポーラスシリカの表面をリガンド修飾したものである請求項1に記載のマイクロカラムチップ。
(3)前記マイクロカラムは、マイクロチャネルに分離ビーズが密に充填されてなる請求項1又は2に記載のマイクロカラムチップ。
とした。
【発明の効果】
【0007】
これまでの分離ビーズは、多孔性のものを用いても充填することによって、圧力上昇してしまって、カラムへの適用を考えた場合、細孔径を大きくするなどして、分離を犠牲にしなければならなかった。それに対して、本発明では、上記のようにして得た細孔径が大きく、被表面積が大きいメソポーラスシリカをベースとする分離ビーズを用いるので、圧力上昇を抑制しつつかつ分離能も高いマイクロカラムが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明のマイクロカラムチップについて具体的に説明する。なお、本発明が下記に限定されないことは言うまでもないことである。
【実施例1】
【0009】
マイクロカラムチップは、基板上に形成されたマイクロチャネルにメソポーラスシリカをベースとした分離ビーズが充填されたものである。
メソポーラスシリカ製造;界面活性剤N−ラウロイル−L−グルタミン酸0.7gをイオン交換水110gに加え、均一な溶液となるまで60℃で攪拌した後、3−aminopropyltrimethoxysilane(APTMS)を0.9gとtetraethyl orthosilicate(TEOS)7.5gの混合物を加えてさらに20分間攪拌した。水溶液の攪拌を止めて60℃で一日間静置したところ、水溶液中に白色沈殿が析出した。この沈殿を吸引濾過により濾別し、100℃で一夜乾燥して多孔メソポーラスシリカ複合体を得た。このメソポーラスシリカ複合体を600℃で6時間焼成して目的のメソポーラスシリカを得た。
リガンド導入;上記のようにして作製したシリカに有機シラン剤を用いてリガンド修飾をした。リガンドには、HPLCに広く使用されるものを用いた。
このようにして得たビーズをマイクロチャネルに密に充填してマイクロカラムチップを作製した。
これまでの分離ビーズは、多孔性のものを用いても充填することによって、圧力上昇してしまって、カラムへの適用を考えた場合、細孔径を大きくするなどして、分離を犠牲にしなければならなかった。それに対して、本発明では、上記のようにして得た細孔径が300Aでありながら、被表面積が1000平方メートル/g程度のメソポーラスシリカをベースとする分離ビーズを用いるので、圧力上昇を抑制しつつかつ分離能も高いマイクロカラムが実現される。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、医療、臨床、創薬、バイオなどさまざまな領域で使用するマイクロカラムチップとして広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたチャネルにメソポーラスシリカをベースとした分離ビーズが配置されてなるマイクロカラムチップ。
【請求項2】
前記メソポーラスシリカをベースとした分離ビーズは、メソポーラスシリカの表面をリガンド修飾したものである請求項1に記載のマイクロカラムチップ。
【請求項3】
前記マイクロカラムは、マイクロチャネルに分離ビーズが密に充填されてなる請求項1又は2に記載のマイクロカラムチップ。