説明

マイクロチップの流体制御機構及び流体制御方法

【課題】複数の試料を反応させ、化学試料の反応・混合・分離・分析や、遺伝子解析を行うマイクロチップの移送手段において、構造が簡単かつ安価で信頼性の高い流量制御機構を提供する。
【解決手段】試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御機構であって、試料を充填するための試料部と、前記試料を混合反応させるための第1及び第2の反応部と、前記試料又は気体を廃棄するための廃棄部と、前記試料部と前記第1の反応部を連接する第1の流路と、前記第1の反応部と前記第2の反応部を連接する第2の流路と、前記第1の反応部と前記廃棄部を連接する第3の流路と、を備える。前記第1及び第2の流路は、前記試料部、前記第1及び前記第2の反応部の下方に設け、前記第3の流路は前記第1の反応部と前記廃棄部の上方に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップの流体制御機構及び流体制御方法に関し、特に、化学試料の反応・混合・分離・分析や、遺伝子分析等に用いられる複数の反応槽及び試料槽を有し、さらに反応槽及び試料槽間を微細な流路で接続したマイクロ分析用チップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、庄子習一「生化学マイクロ化学分析システムマイクロマシン技術」(非特許文献1)や特開2002−214241号(特許文献1)に記載されているように、マイクロリアクタ、マイクロアレイ及び「Lab on a chip」と称される一枚の微細なチップ上で、サンプルや液体試料を反応させ、遺伝子分析を行う研究が数多くなされ、微量な液体試料を順次移送する機構や制御する機構が研究されている。
【0003】
非特許文献1は、「2.マイクロ機械素子を用いたμTAS」として、一枚の基盤上に「試料導入機構やキャリア溶液、サンプル流れを制御するポンプ及び試薬との混合/反応器、成分分離部及びセンサ部」から成る構成を開示している。この非特許文献1には、「しかし、総合的な実用例はまだ少なく、マイクロバルブやマイクロポンプなどのマイクロ流体制御素子が実用上重要な研究課題」と示されている。
【0004】
さらに、非特許文献1には、基盤上に移送手段であるマイクロポンプやサンプルインジェクションなど多くの複雑な移送手段が一枚の基盤上に搭載される構成が開示されている。
【0005】
また、上記特許文献1には、「流路21,23にはマイクロポンプ30が組み込まれ」(段落番号「0039」参照)と記載されており、マイクロチップ内に移送手段が設けられている。
【0006】
また、別の従来技術として、特開2004−226207号(特許文献2)がある。特許文献2には、ダイアフラムを用いた移送機構が開示されている。具体的には、可能な弾性を有する隔壁で構成されていると共に、隔壁の外面に接するダイアフラム部材と、ダイアフラム部材を駆動する非圧縮性媒質が使用されている。そして、特許文献2では、「非圧縮性媒質」の密閉容器の体積変化を正確にコントロールし、その体積変化がダイアフラム部材を駆動し、液体の流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−214241号公報
【特許文献2】特開2004−226207号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】庄子習一「生化学 マイクロ化学分析システム マイクロマシン技術」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1及び特許文献1に示されている従来技術は、試料の移送手段をマイクロチップ内又はマイクロチップ上に設けており、連続して行われる遺伝子分析の際、相互汚染を防止するために入念な洗浄工程が必要とされる。さらに、マイクロチップが大型化し、高価になっていた。この相互汚染を防止するためには、使い捨てのマイクロチップが望まれていた。
【0010】
また、特許文献2に示されている従来技術は、非圧縮性媒質の使用が必須であり圧縮性媒質は使用できない。
【0011】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、移送手段をマイクロチップと独立して設けることにより、チップは高機能化せず安価な使い捨てとすることが可能となり、装置は小型・軽量化、高速化、低消費電力化、回路・装置構成簡易化、低価格、信頼性および操作性の向上が達成可能なマイクロチップの流体制御機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的をするために、本発明は、試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御機構であって、
試料を充填するための試料部と、
前記試料を混合反応させるための第1及び第2の反応部と、
前記試料又は気体を廃棄するための廃棄部と、
前記試料部と前記第1の反応部を連接する第1の流路と、
前記第1の反応部と前記第2の反応部を連接する第2の流路と、
前記第1の反応部と前記廃棄部を連接する第3の流路と、を備え、
前記第1及び第2の流路は、前記試料部、前記第1及び前記第2の反応部の下方に設け、
前記第3の流路は前記第1の反応部と前記廃棄部の上方に設けることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御方法であって、
試料部に試料を充填し、
第1及び第2の反応部で前記試料を混合反応させ、
廃棄部で前記試料又は気体を廃棄し、
第1の流路により前記試料部と前記第1の反応部を連接し、
第2の流路により前記第1の反応部と前記第2の反応部を連接し、
第3の流路により前記第1の反応部と前記廃棄部を連接し、
前記第1及び第2の流路を、前記試料部、前記第1及び前記第2の反応部の下方に設け、
前記第3の流路を、前記第1の反応部と前記廃棄部の上方に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来マイクロチップ内に設けられていたバルブ機構を廃止し、簡易な流路構成とすることにより、使い捨てが可能でありかつ安価なマイクロチップを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの移送機構構成を示す断面斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの移送機構構成を示す断面である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの初期状態を示す断面斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示す断面斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図15】本発明の他の実施形態の動作状態を示す断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態の動作状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロチップの動作状態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップを使用し、化学試料を反応させる装置の構成を示す断面斜視図である。
【0018】
機枠1にはテーブル3が支柱2を介し設けられ、さらにテーブル3にはOリング6a、6b、6cに周囲をシールされた廃棄穴5a、5b、5c、チューブ7a、7b、7cが設けられている。また、廃棄穴5a、5b、5cは、廃棄電磁弁18a、18b、18cを介し機枠1上に設けられた廃棄槽8に接続されている。また、テーブル3の上面にはマイクロチップ50を所定の位置に案内するためのピン10a、10bが凸状に設置されている。また、テーブル3にはヒンジ9を介し、締結ネジ25と周囲をOリング26でシールされ貫通した加圧穴22a、22b、22c、22d、22e、22fを有するカバー20が、A及びB方向に回動可能に設けられている。さらに、テーブル3上の一端には該締結ネジ25と一致する位置にネジ穴4が設けられている。
【0019】
一方、マイクロチップ50は板状をなし、複数の試料を混合するための反応槽51a、51b、51cと反応試料を充填する試料槽52a、52b、52c、52d、52e、52f、が設けられると共に、反応槽51a、51b、51cからオーバフローした試料を廃棄するための廃棄穴53a、53b、53cが流路56で連接されている。また、マイクロチップ50の両端にはテーブル3に搭載する際の位置を案内するためのピン穴55a、55bが空けられている。
【0020】
さらに、カバー20を貫通する状態で設けられた加圧穴22a、22b、22c、22d、22e、22fは、チューブ17c、17d、17e、17fにより加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16e、16fの二次側に導接されている。また。加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16e、6fの一次側は蓄圧器11に接続されている。さらに、蓄圧器11にはモータ13により駆動されるポンプ12と内部圧力を検出する圧力センサ14が接続されている。
【0021】
一方、あらかじめ設定されたプログラムを実行するコントローラ15には加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16e、16fおよび廃棄電磁弁18a、18b、18cが動作制御可能に接続されている。さらに、コントローラ15には、蓄圧器11内の圧力を所定圧に制御可能なようにポンプ12を駆動するモータ13及び蓄圧器11内の圧力を検出しフィードバックを行う圧力センサ 14が接続されている。以上の構成によりコントローラ15からの指令により、蓄圧器11内の圧力は常に所定の圧力に保たれている。
【0022】
図2はマイクロチップ50の詳細を示す斜視図である。
【0023】
マイクロチップ50はメインプレート50a、下面プレート50bおよび上面プレート50cからなる三層構成をなし、メインプレート50aおよび上面プレート50cを貫通し、容器形状をなす試料槽52a、52b、52c、52d、52e、52fを有する。さらに、メインプレート50aを貫通し、下面プレート50bおよび上面プレート50cにより封じられた容器穴形状をなす反応槽51a、51b、51cおよびメインプレート50a、下面プレート50bを貫通した廃棄口53a、53b、53cを有する。また、試料槽52a、52bと反応槽51aは、メインプレート50aの下面プレート50b側に設けた微細な流路56a、56b、56gにより連接されている。また、廃棄口53aと反応槽51aはメインプレート50aの上面プレート50c側に設けられた微細な流路56jで連接されている。さらに、廃棄口53a、53b、53cの上端部にはフィルタ58a、58b、58cが流通する液体を透過可能に設けられている。
【0024】
さらには、反応槽51a、51bと試料槽52c、52dはメインプレート50aの下面プレート50b側の流路56h、56c、56dにより連接され、廃棄口53bと反応槽51bはメインプレート50aの上面プレート50c側の流路56kにて連接されている。
【0025】
さらには、反応槽51b、51cと試料槽52e、52fはメインプレート50aの下面プレート50b側の流路56i、56e、56fにより連接され、廃棄口53cと反応槽51cはメインプレート50aの上面プレート50c側の流路56lにて連接されている。
【0026】
一方、マイクロチップ50の端面には、搭載する際の案内手段としてメインプレート50a、下面プレート50b、上面プレート50cを貫通するピン穴55a、55bが設けられている。
【0027】
さらに、試料槽52a、52b、52c、52d、52e、52fには予め所定の試料57a、57b、57c、57d、57e、57fが所定量充填される。一般的には、試料57aは解析されるべき遺伝子等の化学試料を含むサンプル液とし、試料57b、57c、57d、57e、57fはサンプルの試料57aを順次反応させ特定の遺伝子を抽出するための試料液となる。その際、試料52a、52b、52c、52d、52e、52fは表面張力により流出出来ない充分微細な流路56a、56b、56c、56d、56e、56fに移送され漏れ出すことは無い。
【0028】
次に、本発明の第1の実施の形態の動作を図1から図11及び図17を用いて説明する。
【0029】
第1段階の動作を図1に示す(図17のステップ1701)。
【0030】
テーブル3上にマイクロチップ50をピン10a、10bにピン穴55a、55bに挿入し搭載する。さらに、カバー20をB方向に回動し、締結ネジ25を ネジ穴4に係合し締結する。その際には、マイクロチップ50上の試料槽52a、52b、52c、52d、52e、52fとカバー20上の加圧穴22a、22b、22c、22d、22e、22fはOリング26でシールされると共に合致した位置を成す。また、廃棄口53a、53b、53c、53d、53e、53fはOリング6a、6b、6cによりテーブル3上でシールされると共に、廃棄穴5a、5b、5cと合致した位置に固定される。
【0031】
第2段階の動作を図3に示す(図17のステップ1701)。
【0032】
図3はマイクロチップ50がテーブル3上に搭載された初期状態を示す。加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16e、16fは無励磁の状態であり、図1で示す蓄圧器11内の圧力を遮断している。さらに廃棄電磁弁18a、18b、18cも無励磁の状態であり、廃棄口53a、53b、53cから廃棄槽8への回路のチューブ7a、7b、7cを遮断している。また、試料槽52a、52b、52c、52d、52e、52fには、試料57a、57b、57c、57d、57e、57dが充填されていると共に、反応槽51a、51b、51cは空の状態である。
【0033】
第3段階の動作を図4に示す(図17のステップ1702、1703)。
【0034】
加圧電磁弁16a及び廃棄電磁弁18aを励磁 させると、図1で示す蓄圧器11の圧力が加圧電磁弁16a、チューブ17aを介して加圧穴22aへ導かれる。一方、加圧穴22b、22c、22d、22e、22fは加圧電磁弁16b、16c、16d、16e、16fが無励磁のため回路構成をなすチューブ17b、17c、17d、17e、17fが遮断されている。さらに、廃棄電磁弁18b、18cが無励磁で回路構成をなすチューブ7b、7cが遮断されている。回路構成を成すチューブ7aが廃棄槽8に開放されている唯一の回路となるため、試料槽52a内の試料57aは流路56a、56gを介し、反応槽51aおよび廃棄穴53a、フィルタ58a、チューブ7a、廃棄電磁弁18aを経由し廃棄槽8に導かれる。この際、流路56a、56gは反応槽52aの下側に位置する。また、流路56jは反応槽51aの上方からの流出口となっていると共に、フィルタ58aの通過抵抗が発生するために、試料57aを反応槽52aに導いた後、すなわち試料52aを反応槽51aに残したまま供給される加圧気体のみを流路56j、廃棄穴53a、フィルタ58a、チューブ7a、廃棄電磁弁18aを介し廃棄槽8へ導く。すなわち、試料槽52aに充填されていた試料57aをC方向の反応槽51aへ移送する。その後、図1で示すコントローラ15が制御するあらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16a、廃棄電磁弁18aは無励磁となり回路は遮断される。
【0035】
第4段階の動作を図5に示す(図17のステップ1704、1705)。
【0036】
次に、図1で示すコントローラ15からの信号により加圧電磁弁16b、廃棄電磁弁18aを励磁すると、加圧電磁弁16b、チューブ17b、加圧穴22bを介し加圧気体は反応槽52bに導かれ、試料57bを押出す状態となる。さらに、回路は加圧電磁弁16a、16c、16d、16e、16f及び廃棄電磁弁18b、18cが閉ざされているため、試料57bは前記で示した動作と同様に、唯一開放されている回路すなわち、流路56b、56gを通り反応槽51a、流路56j、廃棄口53a、フィルタ58a、チューブ7a、廃棄電磁弁18aを介し廃棄槽8へ流出される状態となる。しかし、前述した動作ですでに反応槽51aは移送された試料57aが充填されているため、試料57aと新たに移送された資料57bが混合し混合試料57abを形成すると共に、反応槽51aの容積以上の混合試料57abおよびさらに供給される圧縮気体をD方向へ導き、流路56j、廃棄口53a、フィルタ58a、チューブ7a、廃棄電磁弁18aを介し廃棄槽8へ廃棄する。その後、あらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16b、廃棄電磁弁18aは無励磁となり回路は遮断される。その結果、反応層51aには混合試料57abが充填され相互間の反応が行われる。
【0037】
第5段階の動作を図6に示す(図17のステップ1706、1707)。
【0038】
次に、あらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16b、廃棄電磁弁18bを励磁すると、加圧電磁弁16b、チューブ17bを介し試料槽52bが加圧される。そのとき試料槽52aは加圧電磁弁16aが閉鎖されているため、加圧気体は流路56b、56gを介し反応槽51aに導かれる。一方、流路56j、廃棄口53a、チューブ7aは廃棄電磁弁18aが閉ざされているため閉回路となっており、反応槽51aに導かれた加圧気体は内部に蓄積し、上方に溜りすでに反応槽51a内に充填されている混合試料57abを加圧する。また、試料槽52cと試料層52dも加圧電磁弁 16c、16dが閉ざされ、さらに反応槽51bの上位にある試料槽52e、52fも加圧電磁弁16e、16fが閉ざされると共に、反応槽51cの流路56l、廃棄口53c、チューブ7cも廃棄電磁弁18cが閉ざされている状態となる。その結果、反応槽51a内の混合試料57abはE方向すなわち流路56h、反応槽51b、流路56k、廃棄口53b、フィルタ58b、チューブ7bを介し、唯一開放されている廃棄電磁弁18bを経由して廃棄槽8に導かれる。さらに、反応槽51bに送られる混合試料57abは反応槽51bの下方から流入するが、排出は流路56kが反応槽51bの上方にあると共に、フィルタ58bで通過抵抗が発生するため、反応槽51b内に残り加圧気体のみが流路56k、廃棄口53b、フィルタ58b、チューブ7b、廃棄電磁弁18bを介し、廃棄槽8に排出される。その結果、反応槽51a内に充填されていた混合試料57abを反応槽51bに移送することとなる。その後、あらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16bおよび廃棄電磁弁18bは、無励磁とされる。
【0039】
第6段階の動作を図7に示す(図17のステップ1708、1709)。
【0040】
加圧電磁弁16cと廃棄電磁弁18bを励磁すると、チューブ17cを介し試料槽52cに充填された試料57cが加圧され、唯一開放されているF方向への回路、すなわち流路56c、56h、反応槽51b、流路56k、廃棄口53b、フィルタ58b、チューブ7b、廃棄電磁弁18b、廃棄槽8へ導かれる。その際、すでに混合試料57abが充填された反応層51b内へ試料57cは流路56hを経由し流入するが、流出する流路56kは反応槽51bの上方に設けられているため、すでに充填されていた混合試料57abにさらに混合され、混合試料57abcを生成すると共に、溢れ出した混合試料57abcは、さらに供給される圧縮気体と共に流路56k、廃棄口53b、フィルタ58b、チューブ7b、廃棄電磁弁18bを介し廃棄槽8へ廃棄される。その結果、反応層51b内には混合試料57abcが残されることとなる。その後、あらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16cおよび廃棄電磁弁18bは無励磁とされる。
【0041】
第7段階の動作を図8に示す(図17のステップ1710、1711)。
【0042】
加圧電磁弁16dと廃棄電磁弁18bが励磁されると、試料槽52dに充填された試料57dがチューブ17dを介し加圧され、唯一開放されているG方向への回路、すなわち流路56d、56h、反応槽51b、流路56k、廃棄口53b、フィルタ58b、チューブ7b、廃棄電磁弁18b、廃棄槽8へ導かれる。その際、すでに混合試料57abcが充填された反応層51b内へ試料57dは、流路56dを経由し流入し混合試料57abcdを生成する。さらに、流路56kが反応槽51bの上方に設けられているため、溢れ出した混合試料57abcdとさらに供給される圧縮気体は流 路56k、廃棄口53b、フィルタ58b、チューブ7b、廃棄電磁弁18bを介し廃棄槽8へ廃棄される。その結果、反応層51b内には混合試料57abcdが残され充填されることとなる。その後、あらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16bおよび廃棄電磁弁18bは無励磁とされる。
【0043】
第8段階の動作を図9に示す(図17のステップ1712、1713)。
【0044】
加圧電磁弁16d、廃棄電磁弁18cを励磁すると、加圧電磁弁16d、チューブ17dを介し、すでに試料57dを移送した試料槽52dが加圧される。そのとき、試料槽52dを加圧した圧縮気体は、加圧電磁弁16a、16b、16d、16e、16f、廃棄電磁弁18a、18bが閉ざされているため、H方向に唯一開放された回路、すなわち流路56d、反応槽51b、流路56i、反応槽51c、流路56l、廃棄口53c、フィルタ58c、チューブ7c、廃棄電磁弁18cを介し廃棄槽8へ導かれる。一方、反応槽51bにはすでに混合試料57abcd充填されているが、流路56hから流入した圧縮気体は反応槽51bの上方に溜り、混合試料57abcdを押出し流路56iに導き、さらに反応槽51cへと流入せしめる。その際、排出回路である流路56lは反応槽51cの上部に設けられていると共にフィルタ58cの通過抵抗が発生するため、押出した圧縮気体は、混合試料57abcdを反応槽51c内に残し、流路56lを通り、廃棄穴53c、フィルタ58c、チューブ7c、廃棄電磁弁18cを介し廃棄槽8へ導かれる。その結果、反応槽51bに充填されていた混合試料57abcdは反応槽51cに移送されて充填されることとなる。その後、あらかじめ設定されたプログラムにより加圧電磁弁16dおよび廃棄電磁弁18cは無励磁とされる。
【0045】
第9段階の動作を図10に示す(図17のステップ1714、1715)。
【0046】
加圧電磁弁16e、廃棄電磁弁18cを励磁する。加圧電磁弁16eおよびチューブ17eを介し試料57eが充填された試料槽52eが加圧されると、加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16f及び廃棄電磁弁18a、18bが閉ざされているため、試料57eは、I方向へ唯一開放された回路すなわち流路56e、56i、反応槽51c、流路 56l、廃棄口53c、フィルタ58c、チューブ7c、廃棄電磁弁18cを介し廃棄槽8へ導かれる。押出された試料52eは、反応槽51cにはすでに前工程で混合試料57abcdが充填されているが、反応槽51cの下方に連接された流路56iから流入し反応を行い混合試料57abcdeを生成する。また、溢れた混合試料57abcdeとさらに供給される圧縮気体は、反応槽51c上部に設けられた流路56lから廃棄口53c、フィルタ58c、チューブ7c、廃棄電磁弁18cを介して廃棄槽8へ廃棄される。その結果、反応槽51c内には混合試料57abcdeが充填されることとなる。その後、加圧電磁弁16e、廃棄電磁弁18cは無励磁の状態とされる。
【0047】
第10段階の動作を図11に示す(図17のステップ1716、1717)。
【0048】
加圧電磁弁16f、廃棄電磁弁18cを励磁する。加圧電磁弁16fおよびチューブ17fを介し試料槽52fが加圧されると、試料57fは加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16e及び廃棄電磁弁18a、18bが閉ざされているため、J方向に唯一開放された回路すなわち流路56f、56i、反応槽51c、流路56l、廃棄口53c、フィルタ58c、チューブ7c、廃棄電磁弁18cを介し廃棄槽8へ導かれる。反応槽51cには、すでに前工程で混合試料57abcdeが充填されているが、さらに試料57fが反応槽51cの下方に連接された流路56iから移送され混合試料57abcdefを生成する。また、溢れた混合試料57abcdefおよびさらに供給される圧縮気体は、反応槽51c上部に設けられた流路56lから廃棄口53c、フィルタ58c、チューブ7c、廃棄電磁弁18cを介して廃棄槽8へ廃棄される。その結果、反応槽51c内には混合試料57abcdefが残され充填されることとなる。その後、加圧電磁弁16f、廃棄電磁弁18cは無励磁の状態とされる。
【0049】
以上の説明から、結果として、試料57a及び57bは反応槽51a内で混合し、一定時間反応させた後、反応槽51bへ移送される。さらに、試料57c、57dを反応槽51bへ追加移送して一定時間反応させた後、反応槽51cへ移送する。さらに、試料57eおよび57fを追加し反応させ、最終生成物を反応槽51c内に得ることが出来て、一連の移送処理が終了する(図17のステップ1718)。
【0050】
(発明の他の実施形態)
次に、本発明の他の実施の形態を図12に示す。
【0051】
マイクロチップ150上には、図1で示す反応槽51a、51b、51c、試料槽52a、52b、52c、52d、52e、52f、廃棄穴53a、53b、53c及び流路56より構成される反応ライン151が設けられている。さらに、反応ライン151と同等の機構構成をなす反応ライン152、153が併設されている。また、カバー220には、図1で示す加圧穴22a、22b、22c、22d、22e、22f及びOリング26より構成される加圧穴群251、252、253が設けられている。さらに、テーブル303上には、図1で示す廃棄穴5a、5b、5c及びOリング6a、6b、6cから構成される廃棄穴群351、352、353が併設されている。
【0052】
一方、カバー220上の加圧穴群251、252、253には、チューブ17a、17b、17c、17d、17e、17fから分岐された回路が、図1で示す回路と同等の状態で係合されている。また、廃棄電磁弁18a、18b、18cから接続されたチューブ7a、7b、7cは分岐され、図1で示す回路の同等な状態で廃棄穴群351、352、353に接続されている。以上の構成を設けることにより、前述した単独の試料の移送を行うことにより、複数の反応ライン151、152、153を同時に駆動可能となると。さらに、駆動手段である廃棄電磁弁18a、18b、18c及び図1で示す加圧電磁弁16a、16b、16c、16d、16e、16fが共用出来るので、より多数の反応工程を一度に実施できるという利点がある。説明において反応ライン数を3系統で説明したが、より多数の反応ラインを併設しても同等の結果を得ることが可能である。
【0053】
以上、第1段階から第10段階動作まで説明したが、試料57a、57b、57c、57d、57e、57fの粘性等の特性によっては、廃棄流路途上に設けたフィルタ58a、58b、58cを省いても同様の結果が得られるのは明らかである。
【0054】
次に、本発明のさらに他の実施の形態を図13に示す。
【0055】
廃棄槽8は密閉構造とし、内部を負圧に動作させるための負圧ポンプ412および駆動モータ413が設けられ、さらに廃棄槽8内の圧力を検出し、フィードバックするための圧力センサ414が接続されている。また、モータ413および圧力センサ414はコントローラ15に接続され、廃棄槽8内の圧力を所定の負圧に制御する構成となっている。以上の構成を設けることにより、廃棄槽8内へ廃棄される試料及び圧縮気体は、廃棄槽8内が大気圧の場合と比較しより確実になると共に、廃棄時間が短縮され生産性が向上する。
【0056】
次に、本発明のさらに他の実施の形態を図14に示す。
【0057】
マイクロチップ50内の試料槽52a、52bには試料57a、57bが充填されており、さらにその上面は、伸縮性を有する皮膜59が設置されている。図15は試料槽52a内に充填された試料57aおよび前述したカバー20、加圧穴22a、Oリング26、流路56a、皮膜59の構成断面図を示す。
【0058】
次に、この実施の形態の動作を図16を用いて説明する。
【0059】
カバー20に設けられた加圧穴22aから供給された圧縮気体は、皮膜59がOリング26で密閉されているため、試料槽52aの下方に膨隆する。その際、試料槽52a内の試料57aは加圧され、流路56a方向に押出される。これによって、過剰な気体を送ることを防ぐことができ、高価な流量精度の高いマイクロポンプを使用せずとも移送量の精度を向上させることができる。試料槽52aのサイズや皮膜59を材質や供給する圧縮気体の圧力の組み合わせを変化させることにより、移送量を制御することが可能となる。
【0060】
大気中などで本装置を動作させる場合、マイクロチップ50の試料槽52aに試料を充填し、その上面に伸縮性を有する皮膜59を設置した後に、カバー20を覆いかぶせると、カバー20に設けられた加圧穴22aの辺りに空気などの気体が存在する。しかしながら、カバー20に設けられた加圧穴22aから圧縮気体を供給し動作せしめるので、周囲の空気(気体)の混入は問題となることは無い。このような取り外し可能な構成とすることによって、各解析に於いて、マイクロチップ50を取り替えることが可能になり、検査試料が混ざり合うことによる汚染を防ぐことが出来る。この結果、装置の簡便化、耐故障性及び信頼性が向上する。
【0061】
上記のように、カバー20は取外し可能なので、マイクロチップ50の試料槽52aの上面に設置する伸縮性を有する皮膜59も取外し可能に構成することが出来る。これによって、試料槽52aへの試料の導入を、マイクロチップ50の上面から行うことが可能となる。加えて、試料槽52aの下部に流路56aを設置しているために、試料槽52aへの試料の導入が完全でなく試料槽52aの上部に多少の気体が混入しようとも、流路56aには、まず試料槽52aの下部に導入された試料が押出される。試料槽52aのサイズ、皮膜59の材質、供給する圧縮気体の圧力の組み合わせを変化させることにより、試料槽52aの上部に混入のおそれがある気体を残したまま、試料のみを移送することが可能となる。この結果、装置を取り扱う際の簡便化や耐故障性が向上する。
【0062】
本発明の形態に係る移送機構によれば、簡易的な構成と制御により、マイクロチップ内で複数の化学試料を複数の反応槽へ順次移送し、それぞれの反応を行い遺伝子分析に必要な生成物を効率良く得ることが可能となる。また、小型化により軽量化、高速化、低消費電力化がはかれる。
【0063】
また、本発明の形態に係る試料は、移送機構により、移送可能な全ての形態の物質を対象とすることが出来る。すなわち、マイクロチップ内で移送可能な化学試料の形態としては、液体、気体、ゲル状、粉体状等の化学試料を取り扱うことが可能である。この機能を勘案すれば、細菌などを含んだ気体などの分析に適用可能であることが解る。
【0064】
さらに、このようなマイクロチップの移送機構によれば、移送に係わる駆動手段をマイクロチップの内部に設ける必要が無く、使い捨て可能な安価で小型なマイクロチップを提供でき、従来のように継続再使用における洗浄作業が不要で遺伝子分析を安価に出来ると共に信頼性も向上する。
【0065】
さらに、このようなマイクロチップの移送機構によれば、移送に係わる単一の駆動手段を用い、多くの反応ラインを同時に動作することが可能となり、作業の大幅な効率向上と信頼性向上および操作性向上をもたらす。
【0066】
以上述べてきたように、本発明は、上方を開放されかつ試料を充填するための複数の試料槽と、試料を混合反応させるための複数の反応槽とを有し、試料槽と反応槽を流路で連接し、加圧手段を介して試料を順次移送することにより、試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御機構であって、上記試料槽からの移送流路及び反応槽への移送流路を試料槽及び反応槽の下部に設けたことを特徴とする。
【0067】
ここで、前記予め定められた処理は、前記試料を反応、混合、分離あるいは分析する処理又は遺伝子を抽出、反応あるいは分析する処理である。
【0068】
好ましくは、前記加圧手段により、前記試料槽の上部に設けられた開放口から圧縮気体を加圧供給し、前記試料を圧縮気体と共に前記反応槽へ移送する。
【0069】
好ましくは、前記反応槽からの移送流路を前記反応槽の上部に設けると共に、前記マイクロチップの下方に向け移送流路を開放する。
【0070】
また、前記試料槽からの移送流路及び反応槽への移送流路を一つの反応ラインとして構成した場合に、この反応ラインを前記マイクロチップ上に複数設けると共に、一つの加圧手段を分岐させて複数の反応ラインを駆動することが好ましい。
【0071】
好ましくは、前記マイクロチップの移送機構は、さらに、負圧発生手段と、加圧気体及び試料を廃棄及び回収する廃棄槽とを有し、負圧発生手段によって前記反応槽からの移送流路を駆動することにより、廃棄槽の内部を負圧に設定する。
【0072】
また、前記反応槽からの移送経路にフィルタを設けて、前記反応槽内に試料を残存させるようにすることが好ましい。
【0073】
好ましくは、前記試料槽の上面に伸縮性皮膜を設け、前記試料を移送する際に、伸縮性皮膜を介して前記試料槽を加圧して送り出す。ここで、前記伸縮性皮膜を取り外し可能に構成するのが好ましい。
【0074】
また、本発明は、上方を開放されかつ試料を充填するための複数の試料槽と、試料を混合反応させるための複数の反応槽とを有し、試料槽と反応槽を流路で連接し、試料を順次移送することにより、試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御機構であって、
上記試料槽の上方より圧縮気体を供給することにより試料を移送し、反応槽への移送流路をマイクロチップの下方に設けると共に、反応槽からの移送流路をマイクロチップの上方に設け、マイクロチップを挟持する部材から圧縮気体を供給する加圧手段をマイクロチップの外側に設けたことを特徴とする。
【0075】
ここで、前記予め定められた処理は、前記試料を反応、混合、分離あるいは分析する処理あるいは遺伝子を抽出、反応あるいは分析する処理である。
【0076】
また、本発明では、上方を開放されかつ試料を充填するための複数の試料槽と、試料を混合反応させるための複数の反応槽とを有し、試料槽と反応槽を流路で連接し、加圧手段を介して試料を順次移送することにより、試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御機構であって、
上記マイクロチップは、下面プレートと上面プレート及び下面プレートと上面プレートとの間に挟まれたメインプレートから成り、
上記試料槽は、メインプレート及び上面プレートを貫通した容器形状を成し、
上記反応槽は、メインプレートを貫通しかつ下面プレート及び上面プレートにより封じられた容器穴形状を成し、
上記メインプレート及び下面プレートを貫通するように複数の廃棄口が設けられており、
上記試料槽と反応槽とは、メインプレートの下面プレート側に設けた第1の流路により連接され、
上記廃棄口と反応槽とは、メインプレートの上面プレート側に設けられた第2の流路により連接されていることを特徴とする。
【0077】
ここで、前記予め定められた処理は、前記試料を反応、混合、分離あるいは分析する処理あるいは遺伝子を抽出、反応あるいは分析する処理である。
【0078】
前記加圧手段は、前記マイクロチップの外側に設けられていることが好ましい。
【0079】
また、本発明の好ましい形態では、複数の試料容器穴から吐出され試料反応容器穴へ注入される流路を、マイクロチップの厚み方向に対し底面部に設け、さらに複数の資料が注入される試料反応容器からオーバーフローし廃棄される流路を、マイクロチップの上面近傍に設ける。このような構成により、所定の試料容量が試料反応容器内に残留するようにする。
【0080】
また、本発明の他の好ましい形態では、マイクロチップに設けられた試料容器穴の上面を開放し、さらにマイクロチップを上方から挟持する押さえカバーに開放された試料容器と合致する位置に圧縮気体印加回路穴を設け、圧縮気体により試料容器に充填された試料を押出す構成とする。
【0081】
また、本発明の他の好ましい形態では、複数の試料容器から移送され反応槽に供給された試料がオーバーフローする際に、試料自体が必要量廃棄されるのを防止するため、反応槽上部から下方に向け廃棄流路口を設け、カバーと共にマイクロチップを挟持するテーブルの廃棄流路口と一致する位置に貫通する廃棄流路を設け、圧縮気体により押出された試料が必要量だけ反応槽に残留し、余分な試料のみを廃棄する構成とする。
【0082】
また、本発明の他の好ましい形態では、生産性を向上させるために、一つの移送駆動手段を分岐し複数の試料反応流路対を同時に駆動する構成とする。
【0083】
また、本発明の他の好ましい形態では、オーバーフローした廃棄されるべき試料を確実にマイクロチップから隔離するために、テーブルに設けられた廃棄流路をさらに負圧で吸い込む吸引手段を設ける構成とし、生産性を向上させるために、一つの移送駆動手段を分岐し複数の試料反応流路対を同時に駆動する構成とする。
【0084】
また、本発明の他の好ましい形態では、反応槽に効率良く試料を充填するために、反応槽からの流出する流路途上にフィルタを設け、気体通過と液体通過の抵抗に差を生じさせる構成とする。
【0085】
また、本発明の他の好ましい形態では、移送量を安定させると共に試料によっては不要な過剰な気体を送ることを防止するため、試料槽上面に伸縮性を有する皮膜を設け、皮膜を介し加圧し皮膜の膨張による容積変化により、試料を移送する構成とする。
【0086】
本発明によれば、従来マイクロチップ内に設けられていたバルブ機構を廃止し、簡易な流路構成とすることにより、使い捨てが可能でありかつ安価なマイクロチップを供給することができる。
【0087】
また、本発明の好ましい形態では、従来マイクロチップ内に設けられたバルブ機構を廃止し、マイクロチップを挟持する部材から圧縮気体により試料を移送するため、使い捨てが可能であり、安価なマイクロチップを供給することができる。
【0088】
ここで、圧縮性媒質(気体)を使用したとした時の効果として以下の点が挙げられる。つまり、装置の周囲は空気(気体)であふれている。しかしながら、非圧縮性媒質を使用(特許文献3参照)した場合には、非圧縮性媒質中に気泡(空気などの気体)の混入がないようにする必要がある。そのために幾つかの工夫が必要となる。これに対して、本発明のように、圧縮性媒質(気体)を使用すれば、媒質として空気(気体)を加圧穴から供給する際に、周囲は空気(気体)が混入しても動作する。この結果、装置の簡便化や耐故障性が向上する。
【0089】
また、本発明の好ましい形態では、装置を小型化可能としさらに廃棄された試料を確実に回収することができ、高価な試料の分析を最小限量で行うことが出来る。さらに、繰り返し行う分析において、以前行った分析との相互汚染を確実に防止することができる。
【0090】
また、本発明の好ましい形態では、簡易な移送駆動手段を用いて、複数の試料反応流路対を同時に駆動することが可能である。これにより、安価で小型化された機構を使用してさらに生産性を向上させた移送を行うことができる。
【0091】
また、本発明の好ましい形態では、使用後の廃棄された試料を確実に回収でき、繰り返し行う分析において以前おこなった分析との相互汚染を防止することが可能となる。
【0092】
また、本発の好ましい形態では、簡易な移送駆動手段を用いて複数の試料反応流路対を同時に駆動することが可能であり、安価で小型化された機構を使用して、さらに生産性を向上させた移送を行うことができる。
【0093】
また、本発明の好ましい形態では、試料が充填されたマイクロチップの試料槽の上に伸縮性の皮膜を設け、皮膜を介し加圧し膨張させて試料を移送することにより、流量の精度を向上させると共に過剰な気体を送ることを防止できる。
【0094】
以上、実施形態に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に制限されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができ、これらの変更例も本願に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、一枚のチップ上で、試料や液体試薬を反応させる。これにより、化学精製・生成・分析、遺伝子分析、細胞増殖を行うことにより、医療・診断ツール、バイオ研究ツール、食品・環境検査システムなどに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御機構であって、
試料を充填するための試料部と、
前記試料を混合反応させるための第1及び第2の反応部と、
前記試料又は気体を廃棄するための廃棄部と、
前記試料部と前記第1の反応部を連接する第1の流路と、
前記第1の反応部と前記第2の反応部を連接する第2の流路と、
前記第1の反応部と前記廃棄部を連接する第3の流路と、を備え、
前記第1及び第2の流路は、前記試料部、前記第1及び前記第2の反応部の下方に設け、
前記第3の流路は前記第1の反応部と前記廃棄部の上方に設けることを特徴とするマイクロチップの流体制御機構。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロチップの流体制御機構において、
前記第3の流路を制御する流路制御部を備え、
前記流路制御部は、
前記第1の流路を通して試料を移送する際には、前記第3の流路を開け、
前記第2の流路を通して試料を移送する際には、前記第3の流路を閉じることを特徴とするマイクロチップの流体制御機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマイクロチップの流体制御機構において、
前記試料を加圧し移送する加圧手段を備え、
前記加圧手段は、前記試料部の上部に設けられた開放口から圧縮気体を加圧供給し、試料を前記反応部へ移送することを特徴とするマイクロチップの流体制御機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のマイクロチップの流体制御機構において、
前記第3の流路又は前記廃棄部の少なくとも一方にフィルタを設けたことを特徴とするマイクロチップの流体制御機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のマイクロチップの流体制御機構において、
前記廃棄部の内部を負圧する負圧発生手段を備えることを特徴とするマイクロチップの流体制御機構。
【請求項6】
試料に対して予め定められた処理を行うマイクロチップの流体制御方法であって、
試料部に試料を充填し、
第1及び第2の反応部で前記試料を混合反応させ、
廃棄部で前記試料又は気体を廃棄し、
第1の流路により前記試料部と前記第1の反応部を連接し、
第2の流路により前記第1の反応部と前記第2の反応部を連接し、
第3の流路により前記第1の反応部と前記廃棄部を連接し、
前記第1及び第2の流路を、前記試料部、前記第1及び前記第2の反応部の下方に設け、
前記第3の流路を、前記第1の反応部と前記廃棄部の上方に設けることを特徴とするマイクロチップの流体制御方法。
【請求項7】
請求項6記載のマイクロチップの流体制御方法において、
流路制御部により前記第3の流路を制御し、
前記流路制御部は、
前記第1の流路を通して試料を移送する際には、前記第3の流路を開け、
前記第2の流路を通して試料を移送する際には、前記第3の流路を閉じることを特徴とするマイクロチップの流体制御方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載のマイクロチップの流体制御方法において、
加圧手段により前記試料を加圧して移送し、
前記加圧手段は、前記試料部の上部に設けられた開放口から圧縮気体を加圧供給し、前記試料を前記反応部へ移送することを特徴とするマイクロチップの流体制御方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一つに記載のマイクロチップの流体制御方法において、
前記第3の流路又は前記廃棄部の少なくとも一方にフィルタを設けたことを特徴とするマイクロチップの流体制御方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一つに記載のマイクロチップの流体制御方法において、
負圧発生手段により前記廃棄部の内部を負圧することを特徴とするマイクロチップの流体制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−7760(P2013−7760A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227066(P2012−227066)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2009−502635(P2009−502635)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】