説明

マイクロミキサー

【課題】小型でありながら構造が比較的単純で、かつ混合効率を有効に高めることができるマイクロミキサーを提供する。
【解決手段】第1流体が第1方向に指向した流れになるように案内する細溝部102aと太溝部102bとを連結して構成される第1区画溝102と、第1区画溝の太溝部内に、前記第1方向とは逆向きに指向した流れになるよう第2流体を案内する先端溝部103aを有し、第1区画溝内を流れる第1流体7と第2区画溝103内を流れる第2流体8とを向流で衝突させて得られる混合流体9を、前記第1方向と同じ向きに指向した流れに案内するとともに、前記混合流体の圧力を高める第3区画溝104と、第3区画溝と連通し、第3区画溝から吐出される混合流体9の流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体の混合を促進させる混合促進空間105と、混合促進空間内の混合流体を所定の回収手段へ案内する案内部材106とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、欧州ではμ−TAS(Micro Total Analysis Systemの略)、米国ではLab−on−A−chipと称されるマイクロリアクターに代表される微細構造をもつマイクロ流体素子を用いて行う、2種類の微量流体の混合・撹拌を可能にする新規なマイクロミキサーに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロミキサーの構造に関する従来技術としては、例えば特許文献1に記載されているように、Y字状に微小流路を形成した基板を用いたマイクロミキサーや、特許文献2に記載されているように、T字状に微小流路を形成した基板を用いたマイクロミキサーが知られている。
【特許文献1】特開2006−205080号公報
【特許文献2】特開2006−7063号公報
【0003】
これらY字状やT字状の微小流路を形成したマイクロミキサー内では、流れは層流状態である。よって、2つの供給口から供給された溶液は、微小流路では2層の流れとなり、これら2層の撹拌・混合は拡散に支配されるため、完全混合を短時間で行うことは難しく、ある程度の時間が必要であるという問題がある。
【0004】
また、混合時間の短縮を目的として、2液の界面の面積を大きくするための手段としては、例えば2層の流れを平面上で多数に分割して、多数の層流を形成し、混合・撹拌効率を向上させる方法が挙げられる。しかしながら、かかる方法は、流れを多数に分割するため、精密加工技術を用いて複雑なマルチ流路の形成が必要であり、これは、加工コストの高騰を招くため好ましくない。また、マルチ流路を用いた場合であっても、やはり平面的に形成された微小流路であるので、流体は依然として層流であり、撹拌・混合は拡散で支配されるため、混合効率に関して改良の余地があった。加えて、マルチ流路を平面上に形成するには、ある程度、大きな基板面積が必要となり、これは、マイクロミキサー全体を小型化する用途には使用できないという問題もあった。
【0005】
さらに、他のマイクロミキサーの従来技術としては、多孔フィルターを用いたミキサー、多層ミキサー、流体のらせん流れを利用したカオス混合によって混合を行うミキサー、流路壁に衝突させることで発生する擬似乱流を利用するミキサー、超音波、電場、磁場、微小な撹拌子を利用したマイクロミキサー(例えば特許文献3)等の多種多様なマイクロミキサーが報告されているが、これらのマイクロミキサーはいずれも、流路パターンや装置構成が複雑であるため、高価となり、大量生産には適さないという問題がある。
【特許文献3】特開2006−320877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、上述した問題点を鑑みなされたもので、小型でありながら構造が比較的単純で、かつ混合効率を有効に高めることができるマイクロミキサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明の要旨は以下のとおりである。
(1)第1流体が第1方向に指向した流れになるように案内する第1案内部と、該第1案内部に拡大寸法で連結される第2案内部とを有する第1案内流路と、該第1案内流路の第2案内部内に、前記第1方向とは逆向きに指向した流れになるよう第2流体を案内する吐出部分を有し、該吐出部分が第1案内流路の第2案内部の流路スペースよりも狭い流路スペースをもつ第2案内流路と、第1案内流路の第2案内部と第2案内流路の吐出部分とで区画され、第1案内流路内を流れる第1流体と第2案内流路内を流れる第2流体とを向流で衝突させて得られる混合流体を、前記第1方向と同じ向きに指向した流れに案内するとともに、前記混合流体の圧力を高める第3案内流路と、該第3案内流路と連通し、前記第3案内流路から吐出される混合流体の流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体の混合を促進させる混合促進空間と、該混合促進空間内の混合流体を所定の回収手段へ案内する第4案内流路とを有することを特徴とするマイクロミキサー。
【0008】
(2)前記マイクロミキサーは、第1〜第4案内流路を少なくとも3本の管状部材を連結して形成してなるマイクロミキサーであり、第1案内流路が、第1案内部である細管部と、第2案内部である太管部とを連結してなる第1管状部材であり、第2案内流路が、前記第1管状部材の太管部に挿入された管状先端部をもつ第2管状部材であり、第3案内流路が、前記第1管状部材の太管部と前記第2管状部材の管状先端部とで区画された第1環状空間であり、混合促進空間が、第2案内流路の流入口と吐出口の間に位置するブロック状部材内に形成された圧力緩和空間であり、そして、第4案内流路が、第3管状部材である上記(1)記載のマイクロミキサー(第1発明)。
【0009】
(3)前記マイクロミキサーは、少なくとも2枚の板状部材の積層体からなるマイクロミキサーであり、第1案内流路が、第1板状部材に底壁と第1溝壁とで区画形成され、第1案内部である細溝部と、第2案内部である太溝部とを連結してなる第1区画溝であり、第2案内流路が、前記第1板状部材に、前記第1区画溝の太溝部内に第2溝壁で区画形成された先端溝部をもつ第2区画溝であり、第3案内流路が、前記第1区画溝の太溝部と前記第2区画溝の先端溝部とで区画された第3区画溝であり、混合促進空間が、前記第1板状部材の第3区画溝から吐出する混合流体の流入が可能な位置に、前記第1板状部材とともに重ね合わされた第2板状部材に形成された圧力緩和空間であり、第4案内流路が、前記第2板状部材から流出する混合流体を所定の回収手段へ案内する案内部材である上記(1)記載のマイクロミキサー(第2発明)。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、小型でありながら構造が比較的単純で、かつ混合効率を有効に高めることができるマイクロミキサーを提供することが可能になった。
特に、この発明は、第1案内流路内を流れる第1流体と第2案内流路内を流れる第2流体とを向流で衝突させることにより、得られる混合流体の混合効率を高めることができ、また、衝突して得られた混合流体を、第2案内流路の吐出部分の吐出口で前記第1方向と同じ向きに指向した流れに案内することにより乱流を形成させて混合効率をさらに高めることができると共に、第3案内流路内で、流路を狭める等の構成に伴って混合流体の圧力を高めることにより、混合流体中の分子拡散距離を極力短くして混合効率をさらに高めることができ、さらに、第3案内流路から吐出される混合流体を混合促進空間に流入させて流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体の混合を促進させることができる結果、完全混合状態を形成しにくいような第1流体と第2流体とを混合する場合であっても、低流量(または低流速)であっても完全混合を容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明のマイクロミキサーは、第1流体が第1方向に指向した流れになるように案内する第1案内部と、該第1案内部に拡大寸法で連結される第2案内部とを有する第1案内流路と、該第1案内流路の第2案内部内に、前記第1方向とは逆向きに指向した流れになるよう第2流体を案内する吐出部分を有し、該吐出部分が第1案内流路の第2案内部の流路スペースよりも狭い流路スペースをもち、好適には、該吐出部分が第1案内流路の中心に位置するとともに、第1案内流路と同心に設けられた第2案内流路と、第1案内流路の第2案内部と第2案内流路の吐出部分とで区画され、第1案内流路内を流れる第1流体と第2案内流路内を流れる第2流体とを向流で衝突させて得られる混合流体を、前記第1方向と同じ向きに指向した流れに案内するとともに、前記混合流体の圧力を高める第3案内流路と、該第3案内流路と連通し、前記第3案内流路から吐出される混合流体の流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体の混合を促進させる混合促進空間と、該混合促進空間内の混合流体を所定の回収手段へ案内する第4案内流路とを有することにある。
【0012】
この発明に従う実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
図1および図2は、第1発明に従うマイクロミキサーの要部構成を示したものであって、図1は正面図、図2は分解図である。
【0013】
第1発明のマイクロミキサー1は、第1案内流路である第1管状部材2と、第2案内流路である第2管状部材3と、第3案内流路である第1環状空間4(図3)と、混合促進空間5と、第4案内流路である第3管状部材6とで主に構成され、少なくとも3本の管状部材、図1では3本の管状部材2、3および6を、好適にはT字状に連結して形成してなるマイクロミキサーである。
【0014】
第1管状部材2は、好適にはストレート状をなし、第1案内部である細管部2aと、第2案内部である太管部2bとを連結して構成され、第1流体7が第1方向xに指向した流れになるように案内するために設けられる。
【0015】
第2管状部材3は、好適にはストレート状をなし、第1管状部材2の太管部2b内に、前記第1方向xとは逆向きの方向、好適には第1方向xに対して150〜180°、最適には図1に示すように第1方向xに対して180°逆向きの方向yに指向した流れになるように第2流体8を案内する吐出部分である管状先端部3aを有し、この管状先端部3aが第1管状部材2の太管部2bの流路スペースS1よりも狭い流路スペースS2をもつ。図1では、第2管状部材3を、第1管状部材の太管部2bと同じサイズの外管部10と、その外管部10内に一端が挿入され他端が第1管状部材2内に挿入される内管部11とからなる2重管構造とするとともに、前記外管部10と内管部11との連結部12は、水密封鎖されるように構成した場合を示しているが、全長にわたって同径の1本の管で構成しても良い。
【0016】
第1環状空間4は、第1管状部材2の太管2bと第2管状部材3の管状先端部3aとで区画され、第1管状部材2内を流れる第1流体7と、第2管状部材3内を流れる第2流体8とを向流で衝突させて得られる混合流体9を、前記第1方向xと同じ向きの方向、好適には第1方向xに対して0〜30°、最適には図1に示すように第1方向xに対して0°の方向に指向した流れに案内するとともに、前記混合流体9の圧力を高めるために設けられている。第1環状空間4にて混合流体9の圧力を高めるための手段としては、例えば、図1および図3では、第1環状空間4の流路断面積を第2管状部材3の管状先端部3aの外径を第1管状部材2の内径にできる限り近づけることによって狭めることにより混合流体9の圧力を高める場合を示しているが、第1流体7または第2流体8の流量を大きくすることによって混合流体9の圧力を高めてもよく、かかる構成については、種々の態様が考えられる。
【0017】
混合促進空間5は、第2管状部材3の流入口13と吐出口14の間に位置するブロック状部材15内に形成される圧力緩和空間であって、第1環状空間4と連通し、この環状空間4から吐出される混合流体9の流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体9の混合を促進させるために設けられている。
【0018】
第3管状部材6は、この混合促進空間5内の混合流体9を所定の回収手段(図示せず)へ案内するために設けられ、図1では、環状空間4を流れる混合流体9をx方向に対し90°屈曲させた方向Zに延在するようにブロック状部材15に装着されている。
【0019】
図3は、第1管状部材2内を流れる第1流体7と、第2管状部材3内を流れる第2流体8とを向流で衝突させて得られる混合流体9の流れを説明するための概念図である。
【0020】
本発明のマイクロミキサーは、図3に示すように、第2流体8を吐出する第2管状部材3の吐出口14位置または吐出直後の位置で、第1流体7と第2流体8とが向流で供給され、衝突により混合が行われて混合流体9にすることができる。ただし、この混合流体9が、第1流体、例えば水と、第2流体、例えば10%ポリアクリル酸水溶液とを混合するような完全混合状態を形成しにくいような混合流体である場合、従来のマイクロミキサーでは、例えば0.1ml/min以下のような低流量(または低流速)での混合では完全混合状態は形成されない。
【0021】
次に、前記混合流体9は、第1管状部材2の太管部2bと第2管状部材3の管状先端部3aとで区画された第1環状空間4で、混合流体9の圧力を高めてから混合促進空間5内に排出される。このとき、第1環状空間4内を通る混合流体9の流れは、第1流体7の流れ方向(x方向)と同じ向きでかつ第2流体8の流れ方向(y方向)とは逆向きの方向になる。
【0022】
そして、本発明では、第1環状空間4から混合促進空間5内へ排出された混合流体9は、第1環状空間4内で高められた混合流体9の流体圧力を、混合促進空間5で圧力解放される際に発生する渦流により、混合・撹拌がより一層促進される結果、構造が比較的単純でありながら、流体の混合効率を有効に高めることができるのである。
【0023】
また、第1発明では、第1管状部材2の細管部2a、第2管状部材3の管状先端部3aおよび第1環状空間4の断面積の比率は、0.1〜5:1:1〜3とすることが好ましく、また、第1管状部材2の細管部2aの先端から第2管状部材3の管状先端部3aの先端までの距離が0.001〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜1mmであり、さらにより好ましくは0.05〜0.1mmであり、このように構成することが、衝突による混合に関わる2つの流体の運動エネルギーを増大せしめる点、縮流による混合に関わる分子拡散距離を減少せしめる点、混合流体圧力の上昇および圧力解放(混合流体圧力の降下)による混合に関わる渦流を有効に形成せしめる点で好ましい。
【0024】
第2管状部材3から吐出される第2流体8は、第1管状部材2を流れる第1流体7よりも流束が大きいことが好ましい。例えば、第1流体7が2%硫酸水溶液、第2流体8が10%水酸化ナトリウム水溶液の場合には、第2流体8と第1流体7の流束の差が20mm/s以上であることが好適である。
【0025】
さらに、第1環状空間4内を通る混合流体9の流体圧力P1は、0.2〜5MPaであることが好ましく、また、混合促進空間5内を通る混合流体9の流体圧力P2は0.1〜1MPaが好ましく、これらの圧力差P1-P2を0.1〜5MPaとすることが好適であり、より好適には、0.5〜1MPaである。なお、第1流体と第2流体の混合割合の調整方法は、例えば、第1流体および第2流体を供給するポンプの流量設定によって行う方法が挙げられる。
【0026】
さらにまた、第1管状部材2や第2管状部材3には、前記流体が逆流するのを防止するため、必要に応じて逆止弁(図示せず)を設けることができる。
【0027】
また、第1発明のマイクロミキサーは、図2では、第1、第2および第3管状部材2、3、6に、水密性を保持するためのシール材16、17、18を設けると共に、これら第1、第2および第3管状部材2、3、6に設けたボルトねじ19、20、21等の連結部を、第1環状空間を形成するブロック状部材15に設けたねじ切り穴22、23、24にそれぞれねじ連結する構成を示しているが、かかる構成には限定されない。前記シール材16、17、18の材質としては、水密性を保持できる材質であればよく、特に限定はしないが、例えば、アルミニウムのような金属、ステンレス鋼やニッケル基合金のような合金、テフロン(登録商標)のようなプラスチック樹脂等が挙げられる。
【0028】
図4は、第2発明に従うマイクロミキサーの要部構成を示した分解斜視図である。
【0029】
第2発明のマイクロミキサー101は、第1案内流路である第1区画溝102と、第2案内流路である第2区画溝103と、第3案内流路である第3区画溝104と、混合促進空間105と、第4案内流路である案内部材106とで主に構成され、少なくとも2枚の板状部材、図4では4枚の板状部材107、111、112,113の積層体からなるマイクロミキサーである。
【0030】
第1区画溝102は、第1流体7が第1方向xに指向した流れになるように案内するために設けられ、第1板状部材107に、1つの底壁108と第1溝壁109とで区画形成され、第1案内部である細溝部102aと、第2案内部である太溝部102bとを連結して構成されている。
【0031】
第2区画溝103は、第1区画溝102の太溝部102b内に、前記第1方向xとは逆向きの方向yに指向した流れになるよう第2流体8を案内する、第2溝壁110で区画形成された先端溝部103aを有し、該先端溝部103aが第1区画溝102の太溝部102bの流路スペースS1よりも狭い流路スペースS2を有している。
【0032】
第3区画溝104は、第1区画溝102の太溝部102bと第2区画溝103の先端溝部103aとで区画され、第1区画溝102内を流れる第1流体7と、第2区画溝103内を流れる第2流体8とを向流で衝突させて得られる混合流体9を、前記第1方向xと同じ向きに指向した流れに案内するとともに、前記混合流体9の流体圧力を高めるために設けられる。
【0033】
混合促進空間105は、第3区画溝104に連通し、この第3区画溝104から吐出される混合流体9の流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体9の混合を促進させる、前記第1板状部材107の第3区画溝104から吐出する混合流体9の流入が可能な位置に、前記第1板状部材107とともに重ね合わされた第2板状部材111に形成された圧力緩和空間である。なお、図4では、混合促進空間105は、第1板状部材107の上に、1枚の別の板状部材112を介して重ね合わせる構成が示されているが、第1板状部材107の上に直接重ね合わせても、あるいは、2枚以上の別の板状部材112を介して重ね合わせてもよく、加えて、第1板状部材107の下面側に、第1板状部材107に第1流体と第2流体を導入する貫通孔をそれぞれ設けた1枚以上の他の板状部材113を重ね合わせてもよく、それらの構成は必要に応じて適宜選択することができる。
【0034】
案内部材106は、前記第2板状部材111から流出する混合流体を所定の回収手段へ案内するために設けられる。
【0035】
そして、第2発明のマイクロミキサーもまた、上述した第1発明のマイクロミキサーと同様なメカニズムによって、構造が比較的単純でありながら、流体の混合効率を有効に高めることができるのである。
【0036】
また、第1および第2発明のマイクロミキサを構成する各部材の材質としては、例えば、ステンレス鋼やニッケル基合金のような合金、テフロンやアクリルのようなプラスチック樹脂、石英のようなガラス、ジルコニアや窒化ケイ素のようなセラミックス等を用いることが好ましいが、圧力による部材の破壊防止の観点から、ステンレス鋼やニッケル基合金のような合金を用いることが特に好適である。
【0037】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明(第1発明)に従うマイクロミキサーを試作し、このマイクロミキサーを用いて2種類の流体の混合を行ったので、以下で説明する。
【0039】
(実施例)
第1発明に従うマイクロミキサーは、図1に示すように、第1管状部材2(細管部2aのサイズ:長さ10mm、外径1.5mm、内径0.14mm、太管部2bのサイズ:長さ35mm、外径1.6mm、内径0.48mm)、第2管状部材3(外管部10のサイズ:長さ35mm、外径1.6mm、内径0.48mm、内管部11のサイズ:長さ48.9mm、外径0.44mm、内径0.14mm)および第3管状部材6(サイズ:長さ50mm、外径1.6mm、内径0.48mm)の3本の管状部材からなるマイクロミキサーであり、第1流体7として、2%の硫酸水溶液を用い、第2流体として、1.60%KI水溶液、0.41%KIO水溶液、3.34%HBO水溶液および0.80%NaOH水溶液を、体積比で、1:1:1:1の割合で混合した4種混合水溶液を用いた。なお、第3管状部材6には、紫外可視分光光度計に混合水溶液が直接流入するように構成した。第1管状部材2内を流れる第1流体7の流量は0.125〜0.5ml/minとし、第2管状部材3内を流れる第2流体8の流量は0.125〜0.5ml/minとし、第3管状部材6内を流れる混合流体9を構成する第1流体7と第2流体8の割合は、1:1とし、第3管状部材6内を流れる混合流体9の流量を0.25〜1.0ml/minの範囲内で変化させた。
【0040】
第1流体と第2流体の混合特性は、Villermaux/Dushman反応を利用して評価した。すなわち、2種の流体を混合するとき、混合特性が良い場合には速い反応が優先的に進み、逆に混合特性が悪い場合には遅い反応も進む現象を利用して、遅い反応により生成される物質の濃度を測定することで混合特性を評価することができる。具体的には、上記第1流体と第2流体の混合すると、酸−アルカリ中和反応あるいは混合特性が悪い場合の反応であるI生成反応が起こり、このI生成反応が起こった場合、生成したIは一部Iとなるが、このIは353nmの波長で吸収ピークを持つため、その吸光度を測定することで混合特性を評価した。この実施例では、353nmの波長での吸収ピークが小さいほど、混合特性が優れていることを示している。評価結果を図7に示す。
【0041】
(比較例)
比較のため、図6に示すように、第1管状部材202と第2管状部材203とを対向させて設け、第1管状部材202内を通る第1流体7と、第2管状部材203内を通る第2流体8とを対流で衝突させて混合流体とした後、この混合流体9は、第1環状空間や混合促進空間を経ることなく、直接、第3管状部材206を通って排出されることを除いて実施例と同じ構成のマイクロミキサー201を試作し、混合特性を評価したのでその評価結果を図7に示す。なお、図7に示す比較例1は、第1管状部材202および第2管状部材203のサイズをともに、長さ35mm、外径1.6mmおよび内径0.48mmとし、第3管状部材206のサイズを長さ50mm、外径1.6mmおよび内径0.48mmとした。比較例2は、第1管状部材202および第2管状部材203のサイズをともに、長さ35mm、外径1.6mmおよび内径0.14mmとし、第3管状部材206のサイズを長さ50mm、外径1.6mmおよび内径0.48mmとした。
【0042】
図7に示す結果から、実施例は、比較例1および2に比べて、いずれの流速においても、353nmの波長での吸収ピークが小さく、混合特性が優れているのがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明によれば、小型でありながら構造が比較的単純で、かつ混合効率を有効に高めることができるマイクロミキサーを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明(第1発明)に従うマイクロミキサーの正面図である。
【図2】図1のマイクロミキサーの分解図である。
【図3】図1のマイクロミキサーにおいて、第1管状部材内を通る第1流体と第2管状部材内を通る第2流体とが対流で衝突させて混合流体となることを説明するための概念図である。
【図4】この発明(第2発明)に従うマイクロミキサーの分解斜視図である。
【図5】図4のマイクロミキサーにおいて、第1区画溝内を通る第1流体と第2区画溝内を通る第2流体とが対流で衝突させて混合流体となることを説明するための概念図である。
【図6】比較例1および2のマイクロミキサーにおいて、第1区画溝内を通る第1流体と第2区画溝内を通る第2流体とが対流で衝突させて混合流体となることを説明するための概念図である。
【図7】実施例と比較例1および2について、第3管状部材出側の混合流体の流量に対する353nmの波長での吸光度を測定した評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1、101、201 マイクロミキサー
2 第1管状部材
3 第2管状部材
4 第1環状空間
5 混合促進空間
6 第3管状部材
7 第1流体
8 第2流体
10 外管部
11 内管部
12 連結部
13 第2管状部材の流入口
14 第2管状部材の吐出口
15 ブロック状部材
16、17、18 シール材
19、20、21 ボルトねじ
22、23、24 ブロック状部材のねじ切り穴
102 第1区画溝
103 第2区画溝
104 第3区画溝
105 混合促進空間
106 案内部材
107 第1板状部材
108 底壁
109 第1溝壁
110 第2溝壁
111 第2板状部材
112、113 板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が第1方向に指向した流れになるように案内する第1案内部と、該第1案内部に拡大寸法で連結される第2案内部とを有する第1案内流路と、
該第1案内流路の第2案内部内に、前記第1方向とは逆向きに指向した流れになるよう第2流体を案内する吐出部分を有し、該吐出部分が第1案内流路の第2案内部の流路スペースよりも狭い流路スペースをもつ第2案内流路と、
第1案内流路の第2案内部と第2案内流路の吐出部分とで区画され、第1案内流路内を流れる第1流体と第2案内流路内を流れる第2流体とを向流で衝突させて得られる混合流体を、前記第1方向と同じ向きに指向した流れに案内するとともに、前記混合流体の圧力を高める第3案内流路と、
該第3案内流路と連通し、前記第3案内流路から吐出される混合流体の流体圧力を下げ、これに伴って生じる渦流により混合流体の混合を促進させる混合促進空間と、
該混合促進空間内の混合流体を所定の回収手段へ案内する第4案内流路と
を有することを特徴とするマイクロミキサー。
【請求項2】
前記マイクロミキサーは、第1〜第4案内流路を少なくとも3本の管状部材を連結して形成してなるマイクロミキサーであり、
第1案内流路が、第1案内部である細管部と、第2案内部である太管部とを連結してなる第1管状部材であり、
第2案内流路が、前記第1管状部材の太管部に挿入された管状先端部をもつ第2管状部材であり、
第3案内流路が、前記第1管状部材の太管部と前記第2管状部材の管状先端部とで区画された第1環状空間であり、
混合促進空間が、第2案内流路の流入口と吐出口の間に位置するブロック状部材内に形成された圧力緩和空間であり、そして、
第4案内流路が、第3管状部材である請求項1記載のマイクロミキサー。
【請求項3】
前記マイクロミキサーは、少なくとも2枚の板状部材の積層体からなるマイクロミキサーであり、
第1案内流路が、第1板状部材に底壁と第1溝壁とで区画形成され、第1案内部である細溝部と、第2案内部である太溝部とを連結してなる第1区画溝であり、
第2案内流路が、前記第1板状部材に、前記第1区画溝の太溝部内に第2溝壁で区画形成された先端溝部をもつ第2区画溝であり、
第3案内流路が、前記第1区画溝の太溝部と前記第2区画溝の先端溝部とで区画された第3区画溝であり、
混合促進空間が、前記第1板状部材の第3区画溝から吐出する混合流体の流入が可能な位置に、前記第1板状部材とともに重ね合わされた第2板状部材に形成された圧力緩和空間であり、
第4案内流路が、前記第2板状部材から流出する混合流体を所定の回収手段へ案内する案内部材である請求項1記載のマイクロミキサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−12364(P2010−12364A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68751(P2007−68751)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(502089693)財団法人 岡山県産業振興財団 (14)
【Fターム(参考)】