説明

マイクロミラーアレーによる露光装置を用いた画像形成方法

【課題】マイクロミラー装置を用いて均一なグレー画像を実用的な記録速度および多諧調で形成し得る画像形成技術を開発し、高品質な映画用フィルムを提供する。
【解決手段】複数のマイクロミラーを含むマイクロミラー装置と、この装置に光を照射する光源とを備え、有効反射状態となった各マイクロミラーからの反射光をハロゲン化銀カラー写真感光材料上に投影して画像を露光する画像形成方法において、該写真感光材料が透過型支持体上に、赤感性、緑感性、および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有し、該乳剤層の少なくとも1層が、塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、かつ該乳剤が下記一般式(D1)および下記一般式(D2)で表される金属錯体を各々少なくとも1種含有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料である画像形成方法:一般式(D1)[MD1D1nD1(6−n)m、一般式(D2)[IrXD2nD2(6−n)m

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマイクロミラーをライン状に配列したマイクロミラー装置を用い、各マイクロミラーからの光で画像を露光する場合に好適な感光材料を用いた画像形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、サイズが極めて小さいミラー(以下、マイクロミラーという)をラインまたはマトリクスに配列し、各マイクロミラーの傾斜角を制御して入射光を変更するマイクロミラー方式の空間光変調器が提案されている。マイクロミラー方式の空間光変調器としては、静電気力でマイクロミラーを傾斜させるデジタルマイクロミラー装置(DMD)や、微小なピエゾ素子でマイクロミラーを傾斜させるピエゾ式マイクロミラー装置(AMA)等がある。これらのマイクロミラー装置は画像形成機能を備えているため、プロジェクターやプリンターへの利用が考えられている。なお、デジタルマイクロミラー装置の原理や応用例については、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0003】
例えば、デジタルマイクロミラー装置では、複数のマイクロミラーがライン状に配置されている。各マイクロミラーは、電源がOFFのときに水平状態となっており、メモリセルに書き込んだ1ビットのミラー駆動データの値に応じて、垂直線に対して+θだけ傾いた有効反射状態と、−θだけ傾いた無効反射状態とに変位する。
【0004】
このデジタルマイクロミラー装置を使用したマイクロミラー式プリンターでは、照明光が斜め方向からデジタルマイクロミラー装置に常時照射されている。マイクロミラーを有効反射状態にセットすると、反射された光が画像形成光路に入射する。この画像形成光路には、投影レンズが配置されており、1ライン分のスポット光が感光材料やスクリーンに投影される。マイクロミラーが無効反射状態にセットされている場合には、反射されたスポット光は、除去光路に入り、この除去光路に設けられた、例えば光吸収部材によって吸収され、画像形成に利用されない。
【0005】
上述のように、マイクロミラー装置では、スポット光を感光材料に投影するか否かの二値状態で制御されるため、多階調で画像を記録する場合には、マイクロミラーが有効反射状態となる時間を制御している。この制御には、周知のパルス幅変調が用いられる。パルス幅変調では、例えば1ラインを露光している間に、マイクロミラーを有効反射状態または無効反射状態に切り換えるタイミングを、順次に半減していくことにより、段階的に露光量を変化させることができる。
【0006】
ところで、マイクロミラー装置のマイクロミラーが有効反射状態と無効反射状態のいずれか一方の状態から他方の状態に変位する際には、有限な応答時間(変位期間)を必要とする。このため、マイクロミラーの反射状態を切り換える間隔を非常に短くした場合には、マイクロミラーが応答しきれなくなる。
【0007】
例えば、8ビットのパルス幅変調により1個のマイクロミラーで1個の画素を256階調を記録し、画素密度が600dpi,記録速度が1.75inch/secを達成しようとした場合、デジタルマイクロミラー装置の各マイクロミラーには1μs程度の応答時間が要求されるが、デジタルマイクロミラー装置の応答時間は15μs程度であるから、このような記録は実現が困難である。すなわち、階調レベルを細かく制御することは不可能であり、比較的大きな階調数を記録するこができないことになる。このような、問題を解消する方法として、空間光変調器を用いた濃度階調印刷方法が提供されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
特許文献1に記載された方法によれば、多数のマイクロミラーを多数ライン状に並べたマイクロミラーアレイを多数本配置し、これらのマイクロミラーアレイによって、各ライン毎に複数回の多重露光を行うことにより、デジタルマイクロミラー装置に要求される応答速度を低減(応答時間を長く)している。例えば、64本のマイクロミラーアレイを用いた場合に、上記例にあてはめるとデジタルマイクロミラー装置に要求される応答時間は約60μsecとなり、256階調レベルでの記録が可能となる。
【0009】
しかしながら、上記のような方法では、より高速な記録速度や大きな階調数を求めると、多重露光の回数を増やさねばならなくなる。このため、マイクロミラー装置または、マイクロミラー装置のマイクロミラーアレイを多数設けなければならず、コストの上昇を招くといった問題がある。したがって、製造コストを抑えて、より高速な記録速度、より多階調な記録に対応することが難しい。また、赤色,緑色,青色で3色露光をする場合には、1本のマイクロミラーアレイによる1回の露光時間に3色の露光時間を均等に割り当てるとすれば、要求されるマイクロミラー装置の応答速度は3倍(応答時間が1/3)となり、上記のように64本のマイクロミラーアレイを用いて記録する際には、20μsecの応答時間が要求される。したがって、パルス幅変調によって制御できる最小の露光時間が非常に短くなり、さらに高い階調数を望むことができない。なお、感光材料の搬送速度を低く設定すれば、その分要求される応答時間を長くすることができるが、この場合には記録速度が低下して実用に向かないといった問題がある。
【0010】
上記問題点を解消し、少ないマイクロミラーアレイのマイクロミラー装置を用いて実用的な記録速度及び多階調の画像を記録することができる露光方法として、例えば、特許文献2には有効反射状態に保持されているマイクロミラーを照射する光源の点灯時間を変える光源変調手段をそなえたプリンターにより露光する方法が提案されている。
【0011】
しかしながらこれらの装置と通常の映画用のフィルムで、全面グレーの画像を作成しようとした場合にフィルムの中央部と周辺部とで色味が異なり一様なグレー画像ができないという問題があった。
【0012】
一方レーザーを光源とする高照度デジタル露光適正を付与するために、例えば特許文献3では、本発明の新規ドーパントを用いる事が開示されている。しかしながらここではSe増感化合物と併用することにより高照度デジタル適正化が図られ、また、そもそも上記問題については一切言及されていない。
【特許文献1】特開平7−131648号公報
【特許文献2】特開平9−318892号公報
【特許文献3】特開2005−292822号公報
【非特許文献1】月刊誌「O plus E」、新技術コミュニケーションズ発行、1994年10月号、第90頁〜第94頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来における問題を解決し、マイクロミラーアレイのマイクロミラー装置を用いて均一なグレー画像を実用的な記録速度および多諧調で形成し得る画像形成技術を開発し、高品質な映画用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
【0015】
(1) 複数のマイクロミラーをライン状に配列した少なくとも1個のマイクロミラーアレイを有し、各マイクロミラーは、1ビットのミラー駆動データに応じて有効反射状態と無効反射状態とに変位可能なマイクロミラー装置と、このマイクロミラー装置に光を照射する光源とを備え、有効反射状態となった各マイクロミラーからの反射光を感光材料上に投影して画像を露光するプリンターとハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いた画像形成方法において、該ハロゲン化銀カラー写真感光材料が透過型支持体上に、赤感性ハロゲン化銀乳層、緑感性ハロゲン化銀乳層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、かつ該ハロゲン化銀乳剤が下記一般式(D1)および下記一般式(D2)で表される金属錯体を各々少なくとも1種含有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であることを特徴とする画像形成方法。
【0016】
一般式(D1)
[MD1D1nD1(6−n)m
(一般式(D1)中、MD1はCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、PdまたはPtを表し、XD1はハロゲンイオンを表す。LD1はXD1とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。ただし、一般式(D1)で表される金属錯体は、配位子としてCNイオンを有さないか、有しても1個である。)
一般式(D2)
[IrXD2nD2(6−n)m
(一般式(D2)中、XD2はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2はXD2とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
(2) 前記一般式(D1)で表される金属錯体が、ハロゲン化銀粒子に銀1モルあたり1×10-10〜1×10-6モル含有されていることを特徴とする(1)に記載の画像形成方法。
【0017】
(3) 前記一般式(D1)で表される金属錯体が、下記一般式(D1A)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の画像形成方法。
【0018】
一般式(D1A)
[MD1AD1AnD1A(6−n)m
(一般式(D1A)中、MD1AはRe、Ru、OsまたはRhを表し、XD1Aはハロゲンイオンを表す。LD1AはMD1AがRe、RuまたはOsの場合、NOまたはNSを表し、MD1AがRhの場合、H2O、OHまたはOを表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
(4) 前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2A)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0019】
一般式(D2A)
[IrXD2AnD2A(6−n)m
(一般式(D2A)中、XD2Aはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2AはXD2Aとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
(5) 前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2B)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)いずれか1項に記載の画像形成方法。
【0020】
一般式(D2B)
[IrXD2BnD2B(6−n)m
(一般式(D2B)中、XD2Bはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Bは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Bが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
(6) 前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2C)で表される金属錯体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0021】
一般式(D2C)
[IrXD2CnD2C(6−n)m
(一般式(D2C)中、XD2Cはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Cは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Cは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Cが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
(7) 前記プリンターの光源に、有効反射状態に保持されているマイクロミラーを照射する光源の点灯時間を変える光源変調手段を備えたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の画像形成方法によれば、マイクロミラーアレイを内蔵するプリンターとカラー感光材料を用いて、均一なグレー画像を有する高品質の画像を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に用いるプリンターの具体的な実施形態について説明する。図2は、マイクロミラー装置として用いられるデジタルマイクロミラー装置を示すものである。このデジタルマイクロミラー装置10は、1本のマイクロミラーアレイ11が配されており、このマイクロミラーアレイ11は、ライン状に並べられた微小な多数のマイクロミラー12から構成されている。
【0024】
図3に示すように、各マイクロミラー12は、その中央に位置するポスト13を介して、スタティックRAM(SRAM)14に揺動自在に保持されている。また、各マイクロミラー12は、一辺の長さが例えば16μmの四角形をしており、導電性を有するアルミ等の金属薄膜で作られている。
【0025】
ポスト13の両側には、アドレス電極15,16が形成されており、これらのアドレス電極15,16とマイクロミラー12との間に発生する静電気力で、マイクロミラー12が傾斜する。すなわち、ポスト13とアドレス電極15,16とを通る対角線上にある角12a,12bの一方が、SRAM14のシリコン基板に接触するようにマイクロミラー12が傾く。実際には、もう一方の対角線上の2個の角が、ネジリヒンジを介して一対の支持ポストに中空保持されている。なお、マイクロミラー12,ポスト13等の各要素は、周知の集積化技術によって作製される。
【0026】
図4に示すように、各マイクロミラー12は、SRAM14の各メモリセル14a上に配置されている。メモリセル14aは、2個のトランジスタを有するフリップフロップで構成され、1ビットのデータを記憶する。このフリップフロップは、駆動状態では一方のトランジスタがONで、他方のトランジスタがOFFである。このON・OFF状態は、パルス(入力データ) によって反転する。
【0027】
フリップフロップを構成する各トランジスタに、アドレス電極15,16が接続されている。したがって、アドレス電極15,16は一方が「+」で、他方が「−」となるが、どちらが「+」になるかはメモリセル14aに書き込んだミラー駆動データによって決まる。マイクロミラー12に所定のバイアス電圧を印加すると、マイクロミラー12のアドレス電極15,16との間に発生する静電気力によってどちらか一方へ傾く。
【0028】
電源がOFF状態では、2個のトランジスタのいずれもOFFであるから、アドレス電極15,16には電圧が印加されない。また、マイクロミラー12にもバイアス電圧が印加されない。このために、マイクロミラー12は、図4(A)に示すように水平な状態にある。なお、メモリセル14aにミラー駆動データを書き込んであっても、マイクロミラー12にバイアス電圧を印加しない場合は水平な状態となっている。
【0029】
SRAM14のメモリセル14aに「0」のミラー駆動データを書き込むと、アドレス電極15が「+」となり、アドレス電極16が「−」となる。マイクロミラー12に「+」のバイアス電圧を印加すると、アドレス電極15とマイクロミラー12との間に反発力が発生し、アドレス電極16とマイクロミラー12との間に吸引力が発生する。これらの静電気力により、図4(B)に示すように、マイクロミラー12は角12bがシリコン基板に接触するまで傾く。このときのマイクロミラー12の傾斜角度は−θとなる。
【0030】
SRAM14のメモリセル14aに「1」のミラー駆動データを書き込むと、アドレス電極15が「−」となり、アドレス電極16が「+」となる。この場合には、マイクロミラー12は、図4(C)に示すように+θだけ傾く。したがって、マイクロミラー12は、ミラー駆動データの値に応じて+θと−θとの間で傾くことになる。
【0031】
マイクロミラー12は、水平状態と、2つの傾斜状態とを持っているが、画像形成時には2つの傾斜状態が使用され、その一方の傾斜状態のときに、マイクロミラー12からのスポット光を取り出して画像を形成する。例えば、マイクロミラー12が+θのときに、マイクロミラー12で反射されたスポット光を画像形成光路に入れて感光材料に投影する。そして、−θのときには、スポット光が不要であるから除去光路に入れる。この場合には、+θのときには反射光が画像形成に利用される有効反射状態となる。マイクロミラー12が−θのときには、反射光が画像形成に利用されない無効反射状態となる。
【0032】
また、1個のマイクロミラー12は1個の画素を記録するから、このマイクロミラー12が有効反射状態となる連続時間,回数、あるいはパルス幅変調等による有効反射状態となる時間と回数との両方を変えることで、画素の階調を表現することができる。例えば、 「1」のミラー駆動データを画像データに応じた個数だけ発生し、このシリアルなミラー駆動データをメモリセル14aに順番に書き込むことで、有効反射状態の回数を変えることができる。また、ミラー駆動データを書き換えるタイミングを変化させることで、有効反射状態となっている時間を調節することができる。マイクロミラー12が有効反射状態と無効反射状態のいずれか一方の状態から他方の状態に変位する応答時間は、15μsec前後である。
【0033】
図5は、上記のデジタルマイクロミラー装置10を用いたデジタルカラープリンターを示すものである。デジタルマイクロミラー装置10を照明する光源として、多数の赤色LEDを基板上にライン状に形成した赤色LED装置20と、同様な構成の緑色LED装置21及び青色LED装置22とが用いられている。これらの各LED装置の点灯時間と、マイクロミラー12の有効反射状態となっている時間とを制御することにより、マイクロミラー12によって制御可能な最小の露光時間よりもさらに短い露光時間の制御を可能としている。LEDは、消灯状態から点灯状態に、または消灯状態から点灯状態に移る応答時間が短い、例えばマイクロミラー12の1/10程度であるので、点灯と消灯を短時間で制御するのに有効である。
【0034】
赤色LED装置20からの赤色光は、緑色光を反射するダイクロイックミラー24と、青色光を反射するダイクロイックミラー25とを透過し、拡散板26で拡散される。この拡散された赤色光は、レンズ27で平行光とされてから、デジタルマイクロミラー装置10に入射する。緑色LED装置21からの緑色光は、ダイクロイックミラー24で反射されてから、ダイクロイックミラー25,拡散板26,レンズ27を経てデジタルマイクロミラー装置10に入射する。青色LED装置22からの青色光は、ダイクロイックミラー25で反射されてデジタルマイクロミラー装置10に入射する。各色光は、デジタルマイクロミラー装置10のマイクロミラーアレイ11を均一に照射する。
【0035】
LEDドライバ28は、光源変調手段としての点灯制御回路29で制御され、これからの切換え信号が入力される毎に点灯する赤色LED装置20,緑色LED装置21,青色LED装置22を順番に切り換える。LEDドライバ28は、赤色露光シーケンス時に赤色LED装置20だけを点灯させ、緑色露光シーケンス時には緑色LED装置21だけを点灯させ、青色露光シーケンス時には青色LED装置22だけを点灯させる。
【0036】
露光シーケンス制御手段としてのコントローラ30は、各部を制御して、赤色,緑色,青色の各露光シーケンスを順番に行う。また、コントローラ30は、周知のパルス幅変調方式で印画紙41上の各画素の露光量を調節するために、書き込み同期信号としてのタイミングパルスをデータ書き込み制御回路35に送る。コントローラ30は、例えば32階調数で記録する場合には、ぞれぞれの露光シーケンス中に第1〜第5番目まで5個のタイミングパルスを発生する。
【0037】
タイミングパルスの発生間隔は、順次に半減されて徐々に短くされ、第1番目のタイミングパルスを発生した時点から露光シーケンスの時間Tの1/2,1/4,1/8,1/16の間隔で第2番目以降のタイミングパルスを順番に発生し、最後のタイミングパルスの発生の後から1/16・Tが経過した時点で次の露光シーケンスの第1番目のタイミングパルスを発生する。このようにして、発生されるタイミングパルスとタイミングパルスとの間がサブシーケンスとなり、各露光シーケンス中には5回のサブシーケンスが行われる。
【0038】
また、タイミングパルスは、各色の露光シーケンス中に行われる各LED装置20〜22の点灯制御を行うために、点灯制御回路29にも送られる。点灯制御回路29は、このタイミングパルスに基づいてLED点灯信号の送出と停止とを行いLED装置の点灯または消灯を制御する。
【0039】
具体的には、第1番目のタイミングパルスが発生した時点から第5番目のタイミングパルスが発生するまでの期間、すなわち第1〜第4サブシーケンスの実行中には、実行中の露光シーケンスに対応する色のLED装置を連続点灯し、最後の第5サブシーケンスでは、このサブシーケンス中にマイクロミラー12が有効反射状態になっている間に、所定の時間(この例では1/32・T)だけ実行中の露光シーケンスに対応する色のLED装置を点灯する。また、点灯制御回路29は、タイミングパルスの個数をカウントすることにより、1色分の露光完了を検知し、1ラインについて1色分の記録が行われる毎に切換え信号をLEDドライバ28に送る。
【0040】
赤色画像メモリ31,緑色画像メモリ32,青色画像メモリ33には、1フレーム分の3色画像データ(デジタル画像データ)が書き込まれており、露光する色に対応した画像メモリから記録すべき1ライン分の画像データが読み出される。例えば、赤色露光シーケンスでは、赤色画像メモリ31から1ライン分の赤色画像データが読み出されてデータ変換回路34に送られ、各赤色画像データがミラー駆動データに変換される。データ書込み制御回路35は、タイミングパルスに同期して、ミラー駆動データをデジタルマイクロミラー装置10のSRAM14に書き込む。
【0041】
マイクロミラー12は、「0」のミラー駆動データによって−θだけ傾斜したときには無効反射状態となり、その反射光が除去光路37に入射する。この反射光は不要なものであるから、光吸収板38で吸収する。
【0042】
ミラー駆動データが「1」の場合には、マイクロミラー12は+θだけ傾斜した有効反射状態となり、スポット状の反射光は画像形成光路39に入る。この画像形成光路39には、投影レンズ40が配置されており、1ライン分のスポット光を感光材料例えば、周知の銀塩式の印画紙41に投影する。図6に示すように、デジタルマイクロミラー装置10のマイクロミラーアレイ11は、各マイクロミラー12が主走査方向(搬送方向と直交する方向)に並ぶようにして配される。有効反射状態の各マイクロミラー12で反射された光は、投影レンズ40を経て、印画紙41の幅方向にライン状に投影され、1個のマイクロミラー12で1個の画素PSを記録する。
【0043】
図5において、印画紙41は、搬送ローラ対43にニップされて、供給ロール44から1ラインずつ間欠的に搬送方向(副走査方向)に引き出され、プロセッサ45に送られる。印画紙41の停止中に、3色の画像が1ライン分記録される。そして、印画紙41を順次送ることにより1フレーム分のカラー画像を記録する。搬送ローラ対43を回転させるためのパルスモータ46は、ドライバ47を介してコントローラ30によって回転が制御される。画像が記録された印画紙41はプロセッサ45で現像される。なお、符号49は、露光範囲を区画するマスク板である。
【0044】
次に、上記デジタルカラープリンターの作用について、図1及び図7を参照しながら説明する。なお、図1は、1回の赤色露光シーケンスにおけるタイミングパルス,マイクロミラー12の動作状態,赤色LED装置20の点灯状態の1例を示している。また、図7は、1ラインを記録する時のモータ駆動パルスと各LED装置20〜22の点灯状態の関係を示している。
【0045】
電源が投入されると、コントローラ30は、データ書込み制御回路35にデジタルマイクロミラー装置10をクリアすることを指示する。データ書込み制御回路35は、デジタルマイクロミラー装置10のSRAM14に「0」を書き込み、各マイクロミラー12を図4(B)に示すように、−θだけ傾斜させて無効反射状態にする。
【0046】
次に、コントローラ30は、連続的にモータ駆動パルスをモータドライバ47に供給して、印画紙41の記録開始位置(第1ライン目)がマイクロミラーアレイ11による投影位置に達するまで搬送する。コントローラ30は、印画紙41の第1ライン目が投影位置に達すると、印画紙41の搬送を停止してから、赤色露光シーケンスを開始する。まず、赤色露光シーケンスの第1サブシーケンスが開始され、赤色画像メモリ31から、第1ライン目の赤色画像データが読み出され、データ変換回路34に送られる。このデータ変換回路34は、パルス幅変調を行うために、各赤色画像データを例えば5ビットのミラー駆動データに変換する。このミラー駆動データは、画像データの値に応じた個数の「1」を含んでおり、各画像データが5ビットで対応する画素の階調を表しているのならば、画像データとミラー駆動データの内容とは同じになる。また、画像データとミラー駆動データのビット数が異なる場合には、このデータ変換回路34によって、画像データが伸長または圧縮されたものがミラー駆動データとなる。
【0047】
データ変換回路34は、各画素PS毎にミラー駆動データの最上位ビットを取り出してデータ書込み制御回路35に送る。そして、第1番目のタイミングパルスに同期して、デジタルマイクロミラー装置10の各メモリセル14aに1ライン分のミラー駆動データを書き込む。
【0048】
マイクロミラー12は、「0」のミラー駆動データが与えられた場合には、無効反射状態を維持する。また、「1」のミラー駆動データが与えられた場合には、マイクロミラー12は無効反射状態から有効反射状態に傾斜する。
【0049】
一方、点灯制御回路29は、第1番目のタイミングパルスを受け取ると、切換え信号をLEDドライバ28に送り、赤色LED装置20を指定するとともに、LED点灯信号をLEDドライバ28に送る。これにより、赤色LED装置20が点灯し、デジタルマイクロミラー装置10の全面が赤色光で照明される。
【0050】
有効反射状態の各マイクロミラー12に入射した赤色光は、スポット光として画像形成光路39に向けて反射される。この赤色スポット光は、ピントが合っている投影レンズ40によって印画紙41に投影される。これにより、印画紙41の第1ライン目の位置には、1ライン分の赤色スポット光が投影されて、第1サブシーケンスによる赤色のサブ露光が行われる。この露光は、第2番目のタイミングパルスが発生するまで行われる。結果として、この第1サブシーケンス中には、有効反射状態となった各マイクロミラー12により、時間1/2・Tの赤色露光が行われる。
【0051】
次に、データ変換回路34は、各ミラー駆動データの上位から2番目のビットを取り出してデータ書込み制御回路35に送る。コントローラ30は、第1番目のタイミングパルスを発生した時点から時間1/2・Tが経過すると、第2番目のタイミングパルスを発生する。データ書込み制御回路35は、この第2番目のタイミングパルスによって、1ライン分のミラー駆動データをデジタルマイクロミラー装置10に書き込む。この時点で、第1サブシーケンスが終了し、第2サブシーケンスが開始される。
【0052】
第2番目のタイミングパルスによって、「0」のミラー駆動データが与えられた第1マイクロミラーアレイ11のマイクロミラー12は、有効反射状態から無効反射状態に変位し、または無効反射状態を維持する。また、「1」のミラー駆動データが与えられたマイクロミラー12は、無効反射状態から有効反射状態に変位し、または有効反射状態を維持する。点灯制御回路29は、継続してLED点灯信号をLEDドライバ28に送出しているから、第2サブシーケンス中にも、デジタルマイクロミラー装置10に赤色光が照射されており、有効反射状態となったマイクロミラー12からの赤色スポット光により印画紙41の第1ライン目の位置に第2回目の赤色のサブ露光が行われる。この第2サブシーケンスでは、有効反射状態となった各マイクロミラー12により、時間1/4・Tの赤色露光が行われる。
【0053】
第2番目のタイミングパルスが発生してから、時間1/4・Tが経過すると、第3番目のタイミングパルスが発生して、第2サブシーケンスが終了し、第3サブシーケンスが開始される。この第3サブシーケンスでは、各ミラー駆動データの上位3ビット目で各マイクロミラー12が駆動される。そして、第3番目のタイミングパルスが発生してから、時間1/8・Tが経過すると、第4番目のタイミングパルスが発生し、第4サブシーケンスが開始され、各ミラー駆動データの上位4ビット目で各マイクロミラー12が駆動される。さらに、第4番目のタイミングパルスが発生してから、時間1/16・Tが経過すると、第5番目のタイミングパルスが発生する。
【0054】
このようにして、赤色露光シーケンス中の第1〜第4サブシーケンスでは、それぞれミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までのミラー駆動データに応じて、各マイクロミラー12の有効反射 状態となっている時間が1/2・T,1/4・T,1/8・T,1/16・Tの各露光時間に制御され、これらの時間を組み合わせることにより、各マイクロミラー12に対応する画素PSの露光量が16段階で調節される。
【0055】
第5番目のタイミングパルスが発生して、第5サブシーケンスになると、点灯制御回路29は、いったんLED点灯信号の送出を停止する。これにより、赤色LED装置20が消灯した状態になる。また、書き込み制御回路35は、各ミラー駆動データの下位1ビット目(最下位ビット)をデジタルマイクロミラー装置10に書き込む。これより、時間1/32・Tの赤色露光をする必要がある画像データに対応するマイクロミラー12が第5サブシーケンス中に有効反射状態となる。
【0056】
点灯制御回路29は、第5番目のタイミングパルスが入力されてから、所定の時間が経過すると、LED点灯信号を時間1/32・TだけLEDドライバ28に送る。この時にLED点灯信号は、マイクロミラー12の応答時間を考慮して、第5番目のタイミングパルスが発生してから、「1」のミラー駆動データに応じて無効反射状態にあったマイクロミラー12が完全に有効反射状態となるまでに必要な時間、すなわち応答時間以上の遅れを持って発生され、マイクロミラー12が完全に有効反射状態となっている期間中に、時間1/32・Tだけ赤色LED装置20が点灯する。
【0057】
これにより、第5サブシーケンスでは、時間1/32・Tだけ有効反射状態になっているマイクロミラー12から赤色スポット光が画像形成光路39に向けて反射され、投影レンズ40を介して印画紙41に投影される。これにより、時間1/32・Tの赤色のサブ露光が行われる。
【0058】
ところで、記録速度を高速にしたり、記録可能な階調数を多くしたりすると、パルス幅変調によって小さい露光量を与える際には、そのときのサブシーケンスの時間(サブ露光の時間)が短くなるので、マイクロミラーに要求される応答時間が短くなる。しかし、マイクロミラー12の応答時間は決まっているから、マイクロミラー12を駆動して調節することができる露光時間の最小値には限界がある。例えば、このデジタルカラープリンターにおけるマイクロミラー12の応答時間によって調節できる最小の露光時間が時間1/16・Tであるならば、マイクロミラー12の駆動によって、時間1/32・Tの露光を制御することができない。
【0059】
しかしながら、このデジタルカラープリンターでは、上述のように時間1/32・Tのサブ露光については、マイクロミラー12が応答できる範囲の時間(1/16・T)だけ、このサブ露光を行う必要がある画素PSに対応するマイクロミラー12を有効反射状態とし、その間に赤色LED装置20を時間1/32・Tだけ点灯するようにしているから、マイクロミラー12の応答時間に制限されることなく、応答時間に対応する最小露光時間よりも短い露光時間を制御することができる。結果として、印画紙41の第1ラインの各画素PS は32段階に赤色の露光量が調整され、32階調数で記録される。
【0060】
赤色露光シーケンスが終了すると、コントローラ30は、緑色露光シーケンスを開始する。まず、コントローラ30は、緑色露光シーケンスの第1サブシーケンスを開始し、緑色画像メモリ32から第1ライン目の緑色画像データを読み出してデータ変換回路34に送る。このデータ変換回路34は、1ライン分の各緑色画像データを5ビットのミラー駆動データに変換する。
【0061】
この後、各ミラー駆動データの最上位ビットを取り出してデータ書込み制御回路35に送り、第1番目のタイミングパルスでメモリセル14aに書き込む。各マイクロミラー12は、対応するミラー駆動データに応じて傾斜が変わる。また、点灯制御回路29は、第1番目のタイミングパルスが発生すると、LEDドライバ28に切換え信号を送り、緑色LED装置20を指定するとともに、LED点灯信号を送出して緑色LED装置21を点灯する。
【0062】
有効反射状態となった各マイクロミラー12は、緑色スポット光を印画紙41に向けて反射する。これにより、印画紙41の第1ライン目の位置に緑色光が露光される。以降、赤色露光と同様にして、緑色光による第2〜第4回サブシーケンスを行い、3回のサブ露光を行う。次に、第5番目のタイミングパルスが発生して、第5サブシーケンスが開始されると、緑色LED装置21がいったん消灯されるとともに、ミラー駆動データの下位1ビット目で各マイクロミラー12が駆動される。そして、この間に時間1/32・Tだけ緑色LED装置21が点灯される。これにより、第1ラインの各画素PSは32段階に緑色の露光量が調整されて露光される。
【0063】
緑色露光シーケンスが終了すると、青色露光シーケンスが開始され、上記と同様な手順で第1ライン目の青色画像データに基づいて、印画紙41の第1ラインの位置に青色露光が行われる。青色露光シーケンスが終了すると、モータドライバ47に1個のモータ駆動パルスが送られ、パルスモータ46が回転して印画紙41が1ライン分送られる。この後に、上記同様にして、赤色,緑色,青色の各シーケンスを順次に行って、第2ライン目を3色で記録する。さらに、印画紙41を1ライン分送る毎に、3色の露光シーケンスを順番に行い、第3ライン目以降を順次に記録して、1フレーム分のカラー画像を記録する。
【0064】
このようにして、印画紙41には1ラインずつフルカラー画像が潜像として記録される。この記録済の部分は、順次にプロセッサ45に送られ、周知のように写真現像することで、1フレーム分のカラー画像が発色する。
【0065】
以上のように、マイクロミラーの応答時間によって制限される最小の露光時間よりも、短い露光時間を制御できるから、少ない本数のマイクロミラーアレイで多階調を高速に記録できる。逆に、記録速度遅くすることなく階調数を大きくすることができる。
【0066】
なお、ポジーポジ方式の印画紙を用いる場合には、ポジ画像の画像データを用いてデジタルマイクロミラー装置10を駆動する。ネガ・ポジ反転する通常の印画紙を用いる場合には、ネガ像に反転した画像データが用いられる。
【0067】
図8ないし図10は、マイクロミラーアレイを2本とした例を示すものである。なお、以下に説明する以外に部分については、上記実施形態と同様であり、ほぼ同じ機能を持つ構成部材には同符号を付して説明する。
【0068】
図8に示すように、デジタルマイクロミラー装置50は、2本の第1〜第2マイクロミラーアレイ51,52が一定の間隔で並べられている。各マイクロミラーアレイ51,52は、ライン状に並べられた微小な多数のマイクロミラー12から構成されている。これらの各マイクロミラー12は、縦横が整列したマトリクスに配置されているが、第1マイクロミラーアレイ51に対して第2マイクロミラーアレイ52がマイクロミラー12のピッチの半分だけライン方向にずれるように千鳥状のマトリクスに配置してもよい。各マイクロミラーアレイ51,52のそれぞれから画像形成光路39に向けて反射された光は、印画紙41に投影される。これにより、印画紙41上には、第1マイクロミラーアレイ51による1ラインと、第2マイクロミラーアレイ52による1ラインとがそれぞれ投影される。
【0069】
データ変換回路34は、露光する色に対応する画像メモリ31〜33のいずれか1つから、連続した2ライン分の画像データを読み出し、これらを5ビットの各ミラー駆動データに変換し、データ書き込み制御回路35に送る。
【0070】
例えば、赤色露光シーケンスでは、第Mライン目と第(M−1)ライン目の赤色画像データを読み出して、これらをミラー駆動データに変換する。この変換に際して、データ変換回路34は、第Mライン目については、ミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までを画像データに応じた「1」または「0」にし、最下位ビットについては、画像データの大きさにかかわらず「0」にする。また、第(M−1)ライン目については、ミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までを画像データの大きさにかかわらず「0」にし、最下位ビットについては、画像データに応じて「1」または「0」にする。そして、次の赤色露光 シーケンスでは、第(M+1)ライン目と第Mライン目の赤色画像データを読み出し、これらを同様にしてミラー駆動データに変換する。なお、各色の画像メモリ31〜33には第0ライン目の画像データとして、画素PSを発色させるとがないダミーデータがそれぞれ1ライン分記憶されている。
【0071】
データ書き込み制御回路35は、第Mライン目と第(M−1)ライン目の画像データが画像メモリから読み出された時には、コントローラ30からのタイミングパルスに同期させて、第Mライン目に対応するミラー駆動データを順次に第1マイクロミラーアレイ51に対応するメモリセルに書き込む。また、第(M−1)ライン目に対応するミラー駆動データについては、同様にして第2マイクロアレイ52に対応するメモリセルに書き込む。
【0072】
上記構成の作用について、図10を参照しながら説明する。赤色画像メモリ31から第0ライン目と第1ライン目の赤色画像データが読み出され、これらがデータ変換回路34に送られる。データ変換回路34は、各赤色画像データをミラー駆動データに変換する。このときに、第0ライン目の各ミラー駆動データは、全てのビットが「0」に変換される。
【0073】
第1番目から第4番目のタイミングパルスが順番に発生すると、データ書込み制御回路35は、第1ライン目の各ミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までを順次に第1マイクロミラーアレイ51のメモリセルに書き込む。これにより第1マイクロミラーアレイ51の各マイクロミラー12が上記実施形態と同様にして駆動され、第1から第4サブシーケンス中に連続点灯された赤色LED装置20からの赤色光の照射を受けて、印画紙41の第1ラインに第1回目〜第4回目までの赤色のサブ露光が行われる。
【0074】
一方、第0ライン目の上位1ビット目から上位4ビット目の各ミラー駆動データは、第2マイクロミラーアレイ52のメモリセルに順次に書き込まれるが、各ビットは「0」であるから、第1〜第4サブシーケンス中には、第2マイクロミラーアレイ52の各マイクロミラー12は、無効反射状態が維持され、印画紙41の第1ライン目の前の部分には赤色露光が行われない。
【0075】
次に、第5番目のタイミングパルスが発生すると、第1マイクロミラーアレイ51の各メモリセルには、第1ライン目の各ミラー駆動データの「0」の最下位ビットが書き込まれるから、第1マイクロミラーアレイ51の各マイクロミラー51が無効反射状態となる。また、第2マイクロミラーアレイ52のメモリセルにもミラー駆動データの最下位ビットが書き込まれる。このようにして、各マイクロミラーアレイ51,52のメモリセルに最下位ビットが書き込まれると、点灯制御手段は時間1/32・Tだけ、赤色LED装置20を点灯するが、全てのメモリセルには、「0」が書き込まれているから、このときには印画紙41に対して赤色露光は行われない。
【0076】
この後、赤色露光シーケンスと同様にして、第0ライン目と第1ライン目の緑色画像データに基づいて、緑色露光シーケンスが行われる。さらに、第0ライン目と第1ライン目の青色画像データに基づいて、青色露光シーケンスが行われる。これにより、図9(a)にハッチングで示すように、印画紙41の第1ライン61は、3色のミラー駆動データの上位1ビット目から4ビット目によって駆動された第1マイクロミラーアレイ51によって露光された状態となる。
【0077】
第1ライン目の3色分露光が終了すると、印画紙41が1ライン分送られてから、2回目の赤色露光シーケンスが開始される。赤色画像メモリ33から第1ライン目と第2ライン目の赤色画像データが読み出され、データ変換回路34に送られ、それぞれミラー駆動データに変換される。
【0078】
次に、データ書込み制御回路35は、第1番目から第4番目のタイミングパルスに同期して、第2ライン目の各ミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までが順次に第1マイクロミラーアレイ51のメモリセルに書き込まれる。これにより第1マイクロミラーアレイ51の各マイクロミラー12が駆動され、連続点灯された赤色LED装置20からの赤色光の照射を受けて、印画紙41の第2ライン62に赤色の第1回目〜第4回目までの赤色のサブ露光が行われる。
【0079】
また、第1ライン目の上位1ビット目から上位4ビット目の各ミラー駆動データは、第2マイクロミラーアレイ52のメモリセルに順次に書き込まれるが、これらは「0」であるから、第1〜第4サブシーケンス中には、第2マイクロミラーアレイ52の各マイクロミラー12が無効反射状態が維持され、印画紙41の第1ライン61には赤色露光が行われない。
【0080】
第5番目のタイミングパルスが発生すると、ミラー駆動データの「0」の最下位ビットによって、第1マイクロミラーアレイ51の各マイクロミラー12が全て無効反射状態となる。また、第2マイクロミラーアレイ52のメモリセルには、第1ライン目の各ミラー駆動データの最下位ビットが書き込まれる。このときに、第1ライン目の画素PSのうちで時間1/32・Tの赤色露光をすべき画素PSに対応するミラー駆動データの最下位ビットは「1」となるから、この赤色画像データに対応するマイクロミラー12が有効反射状態となる。
【0081】
第5番目のタイミングパルスが発生してから所定の時間が経過すると、図10に示すように、点灯制御回路29は、点灯制御信号を送って時間1/32・Tだけ赤色LED装置20を点灯する。これにより、この第5サブシーケンス中に第2マイクロミラーアレイ52の有効反射状態となっているマイクロミラー12で反射されたスポット光が第1ライン61に投影され、この第1ライン61に時間1/32・Tの赤色のサブ露光が行われる。
【0082】
このようにして、赤色露光シーケンスが終了すると、同様な手順で緑色,青色の各露光シーケンスが順次行われる。これにより、図9(b)に示すように、第1ライン61には、前回の3色の露光シーケンスによる各サブ露光と、今回の3色の露光シーケンスによる時間1/32・Tのサブ露光とが行われた状態となる。したがって、第1ライン61の各画素PSは、3色の露光量がそれぞれが32段階で調節されている。また、第2ライン62については、3色のそれぞれが第2ライン目のミラー駆動データの上位1ビット目から4ビット目によって露光された状態となる。
【0083】
この後、印画紙41を1ライン分搬送してから、第2ライン目及び第3ライン目の各色の画像データに基づいて、上記同様にして各色の露光シーケンスを行う。これにより、図9(c)に示すように、第2ライン62が各色32段階で露光された状態となり、第3ライン63は、3色のそれぞれが第3ライン目のミラー駆動データの上位1ビット目から4ビット目によって露光された状態となる。以降同様にして、第3ライン目以降を順次に記録する。
【0084】
このようにして、2本のマイクロミラーアレイ51,52を用いても上記実施形態と同様な効果が得られる。また、マイクロミラー12の応答速度が遅い場合にでも、適当なタイミングで第2マイクロミラーアレイ52の各マイクロミラー12を駆動することができるから、露光シーケンスの時間を長くしなくても制御し得る露光時間をより小さくすることができる。すなわち、記録できる階調数を大きくしたとき、応答速度の遅いマイクロミラーを用いても、記録速度を遅くする必要がない。逆に、応答速度の速いマイクロミラーを用いた場合には、記録できる階調数を大きくしても、マイクロミラーアレイの本数を多数設けることなく高速記録を行うことができる。
【0085】
図11に示すように、3本の第1〜第3マイクロミラーアレイA1〜A3からなるAグループと、3本の第4〜第6マイクロミラーアレイB1〜B3からなるBグループとからを有したデジタルマイクロミラー装置60を用い、1色を露光する毎に印画紙を1ライン分送るようにして、より高速に画像記録を行うこともできる。
【0086】
以下に、上記デジタルマイクロミラー装置60を用いた場合について説明する。なお、以下に説明する以外に部分については、上記実施形態と同様であり、ほぼ同じ機能を持つ構成部材には同符号を付して説明する。
【0087】
各露光シーケンス中には、連続する6行分の露光する色に対応する画像データが画像メモリから読み出される。例えば、赤色露光シーケンスでは、第Mライン目から第(M−5)ライン目の赤色画像データが読み出され、これがデータ変換回路34に送られる。
【0088】
データ変換回路34は、第Mライン目から第(M−2)ライン目の各赤色画像データについては、ミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までを赤色画像データに応じた「1」または「0」にし、最下位ビットについては、赤色画像データの大きさにかかわらず「0」にする。また、第(M−3)ライン目から第(M−5)ライン目については、ミラー駆動データの上位1ビット目から上位4ビット目までを画像データの大きさにかかわらず「0」にし、最下位ビットについては、画像データに応じて「1」または「0」にする。なお、読み出されるラインの番号が「0」以下となる場合には、上記実施形態と同様にダミーデータが読み出される。
【0089】
書込み制御回路35は、第Mライン目の赤色画像データに基づいて作成されたミラー駆動データをAグループの第1マイクロミラーアレイA1のメモリセルに書き込んで、第1マイクロミラーアレイA1を駆動される。同様に、第(M−1)ライン目のミラー駆動データによって第2マイクロミラーアレイA2が駆動され、第(M−2)ライン目のミラー駆動データによって第3マイクロミラーアレイA3を駆動される。
【0090】
一方、第(M−3)ライン目の赤色画像データに基づいて作成されたミラー駆動データは、Bグループの第4マイクロミラーアレイB1のメモリセルに書き込まれる。これにより、第4マイクロミラーアレイB 1が駆動される。同様に、第(M−4)ライン目のミラー駆動データによって第5マイクロミラーアレイB2が 駆動され、第(M−5)ライン目のミラー駆動データによって第6マイクロミラーアレイB3が駆動される。
【0091】
赤色露光シーケンス中の第1〜第4サブシーケンスでは、赤色LED装置20が連続点灯されるため、第1〜第3マイクロミラーアレイA1〜A3により、それぞれ印画紙41の第Mライン目から第(M−2)ライン目について1/16・Tまでの赤色のサブ露光が行われる。
【0092】
また、第5サブシーケンスでは、Bグループの各マイクロミラーアレイB1〜B3が時間1/16・Tだけミラー駆動データの最下位ビットの応じて有効反射状態または無効反射状態にされている間に、時間1/32・Tだけ赤色LED装置20が点灯するから、Bグループの各マイクロミラーアレイB1〜B3によって、第(M−3)ライン目から第(M−5)ライン目までの時間1/32・Tの赤色のサブ露光が行われる。
【0093】
このようにして、赤色露光シーケンスが終了すると、印画紙41が1ライン分送られてから、緑色露光シーケンスが開始される。この緑色露光シーケンスでは、第(M+1)ライン目から第(M−4)ライン目までの緑色画像デーが読み出され、これらの緑色画像データに基づいて、上記同様にしてミラー駆動データが作成され、第1マイクロミラーアレイA1は、第(M+1)ライン目に対応するミラー駆動データによって駆動され、第2マイクロミラーアレイA2は、第Mライン目に対応するミラー駆動データによって駆動される。同様にして、各マイクロミラーアレイA3,B1〜B3は第(M−1)ライン目から第(M−4)ライン目までの緑色画像データに応じたミラー駆動データで駆動される。
【0094】
緑色露光シーケンスが終了すると、印画紙41が1ライン分送られ、この後に第(M+2)ライン目から第(M−3)ライン目までの青色画像デーが読み出され、これらの青色画像データに基づいて、作成されたミラー駆動データにより、各マイクロミラーアレイA1〜A3,B1〜B3が駆動される。そして、この青色露光シーケンスが終了すると、第(M+3)ライン目から第(M−2)ライン目までの赤色画像データを基にして、各マイクロミラーアレイA1〜A3,B1〜B3を駆動する。
【0095】
このようにして記録した時の印画紙41の第1ラインから第7ラインの記録状態と記録するマイクロアレイの符号を図12に示す。なお、図12中で「R,G,B」で示される露光状態は、第1〜第4サブシーケンスによる赤色,緑色,青色の露光がそのラインに対して行れていることを示している。また、「r,g,b」で示される露光状態は、第5サブシーケンスによる赤色,緑色,青色の1/32・Tの露光がそのラインに対して行われていることを示している。
【0096】
このように、各ラインは、3本のマイクロミラーアレイA1〜A3が通過することにより、3色分の第1〜第4サブシーケンスによるサブ露光が行われ、3本のマイクロミラーアレイB1〜B3が通過することにより、3色分の第5サブシーケンスによるサブ露光が行われる。これにより、印画紙41の各ラインの各画素PSは、各色32階調で記録される。
以上のようにして、Aグループの各マイクロミラーアレイA1〜A3を駆動して、第1〜第4サブシーケンス中の露光時間を調節し、Bグループの各マイクロミラーアレイB1〜B3の駆動と各光源の点灯時間の調節により、1/32・Tの露光時間の制御を行うようにしたから、印画紙41を1ライン送る毎に3色の露光を行うようにしたものに比べて、3倍の高速記録を行うことができる。逆に、応答速度が1/3のデジタルマイクロミラー装置を用いても、印画紙41を1ライン送る毎に3色の露光を行うようにしたものと同等な速度を得ることができる。
【0097】
なお、上記実施形態では、AグループとBグループのマイクロミラーアレイをそれぞれ3本としたが、3本以上としてもよい。各グループのマイクロミラーアレイを3本以上とする場合には、各ラインに実行される各色のシーケンスの回数が同じとするために、各グループのマイクロミラーアレイの本数を3の倍数にするのがよい。例えば各グループのマイクロミラーアレイを9本とした場合には、3本のものに比べて3倍高速に記録することが可能である。また、AグループとBグループの本数が異なってもよい。
【0098】
上記各実施形態では、時間1/16・Tの第5サブシーケンス中に、光源の点灯時間を調節して1/32・Tの露光を行っているが、これと同様なサブシーケンスをさらに実行して、各サブシーケンス中に光源の点灯時間を調節して、1/32・T,1/64・T,1/64・T,1/128・T,・・・の露光を行うこともできる。また、マイクロミラーの応答時間によって制限される最小露光時間がさらに短ければ、マイクロミラーの有効反射状態とする時間でさらに小さい露光時間、例えば時間1/32・Tまでの露光を制御し、光源の点灯時間で1/64・Tの露光を行ってもよい。上記各実施形態では、露光時間が長いサブシーケンスから順番に行っているが、例えば短い順に行ってもよい。
【0099】
さらに、上記各実施形態では、第5サブシーケンス中に、光源の点灯時間を1/32・Tに変調することで、この時間の露光を行っているが、LED装置の発光輝度を変調することにより露光時間1/32・Tに相当する露光量を感光材料に与えてもよい。例えば、第5サブシーケンス中にLED装置の発光輝度を他のサブシーケンスの1/2とし、点灯時間を1/16・Tとすれば、露光時間1/32・Tに相当する露光量を得ることができる。なお、LED装置の発光輝度は、これに供給する駆動パルスのデューティ比を変えることで調節することができる。
【0100】
上記各実施形態では、印画紙を間欠送りとしたが、連続送りとしてもよい。また本発明は、ピエゾ式のマイクロミラー装置を備えたプリンターにも利用することができる。更に、複数のマイクロミラーをマトリクスに配列したエリアタイプのマイクロミラー装置を備えたプリンターにも利用することができる。
【0101】
以下に、本発明に用いるハロゲン化銀カラー写真感光材料について詳細に説明する。
まず、本発明で使用する下記一般式(D1)で表される金属錯体について説明する。なお、一般式(D1)で表される金属錯体は、感光材料の階調を硬調にするために用いられる錯体(硬調化錯体)である。
【0102】
一般式(D1)
[MD1D1nD1(6−n)m
一般式(D1)中、MD1はCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、PdまたはPtを表し、XD1はハロゲンイオンを表す。LD1はXD1とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。ただし、一般式(D1)で表される金属錯体は、配位子としてCNイオンを有さないか、有しても1個である。
【0103】
一般式(D1)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D1A)で表される金属錯体が好ましい。
【0104】
一般式(D1A)
[MD1AD1AnD1A(6−n)m
一般式(D1A)中、MD1AはRe、Ru、OsまたはRhを表し、XD1Aはハロゲンイオンを表す。LD1AはMD1AがRe、RuまたはOsの場合、NOまたはNSを表し、MD1AがRhの場合、HO、OHまたはOを表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。XD1Aは一般式(D1)のXD1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0105】
以下に一般式(D1)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
[ReCl6]2-
[ReCl5(NO)]2-
[RuCl6]2-
[RuCl6]3-
[RuCl5(NO)]2-
[RuCl5(NS)]2-
[RuBr5(NS)]2-
[OsCl6]4-
[OsCl5(NO)]2-
[OsBr5(NS)]2-
[RhCl6]3-
[RhCl5(H2O)]2-
[RhCl4(H2O)2]-
[RhBr6]3-
[RhBr5(H2O)]2-
[RhBr4(H2O)2]-
[PdCl6]2-
[PtCl6]2-
これらの中でも、特に[OsCl5(NO)]2-あるいは[RhBr6]3-が好ましい。
本発明で使用される下記一般式(D2)で表される金属錯体について説明する。
一般式(D2)
[IrXD2nD2(6−n)m
一般式(D2)中、XD2はハロゲンイオンまたはシアン酸イオン以外の擬ハロゲンイオンを表し、LD2はXD2とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
【0107】
上記において、擬ハロゲン(ハロゲノイド)イオンとは、ハロゲンイオンに似た性質を有するイオンのことであり、例えば、シアン化物イオン(CN-)、チオシアン酸イオン(SCN-)、セレノシアン酸イオン(SeCN-)、テルロシアン酸イオン(TeCN-)、アジドジチオ炭酸イオン(SCSN3-)、シアン酸イオン(OCN-)、雷酸イオン(ONC-)、アジ化物イオン(N3-)等が挙げられる。
【0108】
D2として好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、イソシアン酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、または、アジ化物イオンであり、中でも塩化物イオン、および臭化物イオンであることが特に好ましい。LD2には特に制限はなく、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、電荷を持っていても無電荷であってもよいが、無電荷の無機化合物または有機化合物であることが好ましい。
【0109】
一般式(D2)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D2A)で表される金属錯体が好ましい。
【0110】
一般式(D2A)
[IrXD2AnD2A(6−n)m
一般式(D2A)中、XD2Aはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2AはXD2Aとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
【0111】
D2Aは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2Aとして好ましくは水、OCN、アンモニア、ホスフィン、カルボニルであり、特に水であることが好ましい。
【0112】
一般式(D2)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D2B)で表される金属錯体が更に好ましい。
【0113】
一般式(D2B)
[IrXD2BnD2B(6−n)m
一般式(D2B)中、XD2Bはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Bは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Bが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
【0114】
D2Bは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表すが、シアン化物イオンは含めない。LD2Bは複素環化合物が好ましい。より好ましくは5員環化合物であり、5員環化合物の中でも少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を5員環骨格の中に含有する化合物であることがさらに好ましい。
【0115】
一般式(D2B)で表される金属錯体の中でも、下記一般式(D2C)で表される金属錯体が更に好ましい。
【0116】
一般式(D2C)
[IrXD2CnD2C(6−n)m
一般式(D2C)中、XD2Cはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Cは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Cは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Cが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。
【0117】
D2Cは一般式(D2)のXD2と同義であり、好ましい範囲も同じである。LD2C中の環骨格中の炭素原子上の置換基としては、n−プロピル基より小さな体積を持つ置換基であることが好ましい。置換基としてメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ホルミル基、チオホルミル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、ヒドラジノ基、アジド基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドロキシアミノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、ハロゲン原子(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)が好ましい。
【0118】
以下に一般式(D2)で表される金属錯体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
[IrCl5(H2O)]2-
[IrCl4(H2O)2]-
[IrCl5(H2O)]-
[IrCl4(H2O)2]0
[IrCl5(OH)]3-
[IrCl4(OH)2]2-
[IrCl5(OH)]2-
[IrCl4(OH)2]-
[IrCl5(O)]4-
[IrCl4(O)2]5-
[IrCl5(O)]3-
[IrCl4(O)2]4-
[IrBr5(H2O)]2-
[IrBr4(H2O)2]-
[IrBr5(H2O)]-
[IrBr4(H2O)2]0
[IrBr5(OH)]3-
[IrBr4(OH)2]2-
[IrBr5(OH)]2-
[IrBr4(OH)2]-
[IrBr5(O)]4-
[IrBr4(O)2]5-
[IrBr5(O)]3-
[IrBr4(O)2]4-
[IrCl5(OCN)]3-
[IrBr5(OCN)]3-
[IrCl5(チアゾール)]2-
[IrCl4(チアゾール)2]-
[IrCl3(チアゾール)3]0
[IrBr5(チアゾール)]2-
[IrBr4(チアゾール)2]-
[IrBr3(チアゾール)3]0
[IrCl5(5−メチルチアゾール)]2-
[IrCl4(5−メチルチアゾール)2]-
[IrBr5(5−メチルチアゾール)]2-
[IrBr4(5−メチルチアゾール)2]-
これらの中でも特に、[IrCl5(5−メチルチアゾール)]2-が好ましい。
【0120】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。
【0121】
一般式(D1)で表される金属錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-11モルから1×10-6モル添加することが好ましく、1×10-10モルから1×10-6モルがより好ましく、1×10-10モルから1×10-7モル添加することが最も好ましい。一般式(D2)で表される金属錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モルから1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0122】
本発明において上記の金属錯体は、価数や配位子の変化を防ぐためにもpH4.0〜10.0かつ0〜25℃で溶解及び保温した溶液を添加することが好ましい。
【0123】
本発明において上記の金属錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0124】
これらの金属錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0125】
次に本発明の映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料の写真層等について記載する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、透過型支持体を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であり、該支持体上に、各々赤感性、緑感性および青感性を有する複数のハロゲン化銀乳剤層からなる感光性層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料である。本発明はカラーポジフィルム、映画用ポジフィルムなど一般用、映画用カラー写真感光材料に適用することができる。特に映画用カラーポジ感光材料に適用するのが好ましい。
【0126】
本発明において、感光性ハロゲン化銀乳剤層及び非感光性親水性コロイド層の層数及び層順に特に制限はない。イエロー、シアン、マゼンタの各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層は、一つの感光性ハロゲン化銀乳剤層からなっていても、感色性が同じで感度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層からなっていてもよい。
【0127】
各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層の発色性と感色性との間にも制限はなく、例えば、ある発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層が赤外域に感色性を有していてもかまわない。
【0128】
典型的な層順の例としては、支持体から順に染料の固体微粒子分散物および/または黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層、イエロー発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、シアン発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、マゼンタ発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(保護層)である。しかし、目的に応じて、上記設置順を変更しても、感光性ハロゲン化銀乳剤層又は非感光性親水性コロイド層の数を増減させてもかまわない。
【0129】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料中の鉄分(Fe)については、主にゼラチン、乳剤粒子中に故意にドープしたもの、染料などによって持ち込まれるが、本発明の感光材料におけるFe含有量としては、Fe量が2×10-5mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜2×10-5mol/m2)である事が必要であり、8×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8から8×10-6mol/m2)が好ましく、3×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜3×10-6mol/m2)が最も好ましい。
【0130】
本発明において、親水性コロイドとしてはゼラチンが好ましく用いられる。必要に応じて他の親水性コロイドを任意の比率でゼラチンに代えて用いることもできる。これらの例としては、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他のポリマーのグラフト重合体、アルブミンあるいはカゼイン等のタンパク質、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び硫酸セルロース等)、アルギン酸ナトリウム及びデンプン誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分アセタール体、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾールあるいはポリビニルピラゾール等の広範囲な合成ポリマー等を挙げることができる。
【0131】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子としては、塩化銀、臭化銀、(沃)塩臭化銀、沃臭化銀等がある。特に、本発明においては現像処理時間を速めるために、塩化銀含有率95モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀を好ましく用いることができる。この乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶系を有するもの、双晶面等の結晶欠陥を有するもの、あるいはその複合系でもよい。また、主平面が(111)面又は(100)面である平板粒子を用いると、発色現像の迅速化、処理混色の低減などの点で好ましい。主平面が(111)面又は(100)面である平板状高塩化銀乳剤粒子については、特開平6−138619号、米国特許第4,399,215号、同第5,061,617号、同第5,320,938号、同第5,264,337号、同第5,292,632号、同第5,314,798号、同第5,413,904号、国際公開WO94/22051号の各公報または明細書等に開示されている方法にて調製することができる。
【0132】
本発明において併用できるハロゲン化銀乳剤としては、任意のハロゲン組成のハロゲン化銀乳剤を用いてもよいが、迅速処理性の観点から、塩化銀含有率が95モル%以上の塩(沃)化銀、塩(沃)臭化銀が好ましく、さらには本発明に用いられる乳剤と同じく塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤が好ましい。
【0133】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤を構成するハロゲン化銀粒子の球相当径は、0.25μm以下であることが好ましく、0.20μm以下であることが更に好ましく、0.18μm以下であることが最も好ましく、下限は特に制限はないが通常0.05μmであり、0.10μm以上が好ましい。本明細書において球相当径は、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径で表される。球相当径0.25μmの粒子は辺長約0.20μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.20μmの粒子は辺長約0.16μmの立方体粒子に相当し、球相当径0.18μmの粒子は辺長約0.14μmの立方体粒子に相当する。
【0134】
本発明に用いられる乳剤は粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明に用いられる全粒子の球相当径の変動係数は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。球相当径の変動係数とは、個々の粒子の球相当径の標準偏差の、球相当径の平均に対する百分率で表される。
【0135】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが必要で、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0136】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。金増感を施すには、塩化金酸もしくはその塩、チオシアン酸金類あるいはチオ硫酸金類等の化合物を用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは1×10-6〜1×10-4モルである。本発明においては、金増感を他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよく、本発明においてはより好ましい。
【0137】
本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643(1978年12月),22〜23頁、“I.乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、及び同No.18716(1979年11月),648頁、同No.307105(1989年11月),863〜865頁、及びグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman,et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0138】
米国特許第3,574,628号、同第3,655,394号、及び英国特許第1,413,748号の各明細書に記載された単分散乳剤も好ましい。また、アスペクト比が約3以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Science and Engineering)、第14巻248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226号、同第4,414,310号、同第4,433,048号、同第4,439,520号及び英国特許第2,112,157号の各明細書に記載の方法により簡単に調製することができる。
【0139】
結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形粒子の混合物を用いてもよい。
【0140】
上記の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63−264740号公報に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59−133542号公報に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0141】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRDNo.17643、同No.18716及び同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができる。
【0142】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料における塗布銀量としては、6.0g/m2以下が好ましく、4.5g/m2以下がより好ましく、2.0g/m2以下が最も好
ましい。なお、塗布銀量は0.01g/m2以上、好ましくは0.02g/m2以上、さらに好ましくは0.5g/m2以上使用される。
【0143】
支持体上に設けられた感光性ハロゲン化銀乳剤層や非感光性親水性コロイド層(中間層や保護層など)からなる写真構成層中のいずれかの層、好ましくはハロゲン化銀乳剤層に、1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10-5〜5.0×10-2モル添加することが好ましく、さらには1.0×10-4〜1.0×10-2モル添加することが好ましい。この範囲で添加することによって、連続処理後の処理済みカラー写真表面への汚れをいっそう少なくすることができる。
【0144】
このような1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物としては、1位のアリール基が無置換又は置換フェニル基であるものが好ましく、この置換基の好ましい具体例としてはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、−NHCOC511(n)など)、ウ
レイド基(例えば、メチルウレイドなど)、アルコキシ基(例えばメトキシなど)、カルボン酸基、アミノ基、スルファモイル基などであって、これらの基はフェニル基に複数個(2〜3個など)結合していてもよい。また、これの置換基の位置はメタ又はパラ位が好ましい。これらの具体例としては、1−(m−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールや1−(m−アセチルアミノフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0145】
本発明に使用または併用できる写真用添加剤は以下のリサーチ・ディスクロージャー誌(RD)に記載されており、以下に関連する記載箇所を示した。
【0146】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料には、種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下の色素形成カプラーが特に好ましい。
【0147】
イエローカプラー:欧州特許EP502,424A号明細書の一般式(I)、(II)で表されるカプラー;欧州特許EP513,496A号明細書の一般式(1)、(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28);特開平5−307248号公報の請求項1の一般式(I)で表されるカプラー;米国特許第5,066,576号明細書のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー;特開平4−274425号公報の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー;欧州特許EP498,381A1号明細書の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35);欧州特許EP447,969A1号明細書の4頁の一般式(Y)で表されるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41頁));米国特許第4,476,219号明細書のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))。
【0148】
マゼンタカプラー:特開平3−39737号公報(L−57(11頁右下),L−68(12頁右下),L−77(13頁右下));欧州特許EP456,257号明細書のA−4−63(134頁),A−4−73,−75(139頁);欧州特許EP486,965号明細書のM−4,−6(26頁),M−7(27頁);特開平6−43611号の段落0024のM−45,特開平5−204106号公報の段落0036のM−1;特開平4−362631号公報の段落0237のM−22。
【0149】
シアンカプラー:特開平4−204843号公報のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁);特開平4−43345号公報のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42〜43頁);特開平6−67385号公報の請求項1の一般式(Ia)又は(Ib)で表されるカプラー。ポリマーカプラー:特開平2−44345号公報のP−1,P−5(11頁)。
【0150】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、独国特許GB2,125570号、欧州特許EP96,873B号、独国特許DE3,234,533号の各明細書に記載のものが好ましい。発色色素の不要吸収を捕正するためのカプラーは、欧州特許EP456,257A1号明細書の5頁に記載の一般式(CI),(CII),(CIII),(CIV)で表されるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC−86)、該欧州特許明細書に記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM−7(202頁、EX−1(249頁)、EX−7(251頁)、米国特許第4,833,069号明細書に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC−9(カラム8)、CC−13(カラム10)、US4,837,136の(2)(カラム8)、国際公開WO92/11575号明細書のクレーム1の一般式〔C−1〕で表される無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0151】
現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残基を放出する化合物(色素形成カプラーを含む)としては、以下のものが挙げられる。
現像抑制剤放出化合物:欧州特許EP378,236A1号明細書の11頁に記載の一般式(I),(II),(III),(IV)のいずれかで表される化合物(特にT−101(30頁),T−104(31頁),T−113(36頁),T−131(45頁),T−144(51頁),T−158(58頁)),欧州特許EP436,938A2号明細書の7頁に記載の一般式(I)で表される化合物(特にD−49(51頁))、特開平5−307248号公報の一般式(1)で表される化合物(特に段落0027の(23))、欧州特許EP440,195A2号明細書の5〜6頁に記載の一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される化合物(特に29頁のI−(1));
漂白促進剤放出化合物:欧州特許EP310,125A2号明細書の5頁の一般式(I)、(I’)で表される化合物(特に61頁の(60),(61))及び特開平6−59411号公報の請求項1の一般式(I)で表される化合物(特に段落0022の(7));リガンド放出化合物:米国特許第4,555,478号明細書のクレーム1に記載のLIG−Xで表される化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);
ロイコ色素放出化合物;米国特許第4,749,641号明細書のカラム3〜8の化合物1〜6;
蛍光色素放出化合物:米国特許第4,774,181号明細書のクレーム1のCOUP−DYEで表される化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);
現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:米国特許第4,656,123号明細書のカラム3の一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物(特にカラム25の(I−22))及び欧州特許EP450,637A2号明細書の75頁36〜38行目のExZK−2;離脱して初めて色素となる基を放出する化合物:米国特許第4,857,447号のクレーム1の一般式(I)で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY−1〜Y−19)。
【0152】
色素形成カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
【0153】
油溶性有機化合物の分散媒:特開昭62−215272号公報のP−3,5,16,19,25,30,42,49,54,55,66,81,85,86,93(140〜144頁);
油溶性有機化合物の含浸用ラテックス:米国特許第4,199,363号明細書に記載のラテックス;
現像主薬酸化体スカベンジャー:米国特許第4,978,606号明細書のカラム2の54〜62行の一般式(I)で表される化合物(特にI−(1),(2),(6),(12)(カラム4〜5))、米国特許第4,923,787号明細書のカラム2の5〜10行の式(特に化合物1(カラム3));
ステイン防止剤:欧州特許EP298321A号明細書の4頁30〜33行の一般式(I)〜(III)、特にI−47,72,III−1,27(24〜48頁);
褪色防止剤:欧州特許EP298321A号明細書のA−6,7,20,21,23,24,25,26,30,37,40,42,48,63,90,92,94,164(69〜118頁)、米国特許第5,122,444号明細書のカラム25〜38のII−1〜III−23,特にIII−10、欧州特許EP471347A号明細書の8〜12頁のI−1〜III−4,特にII−2、米国特許第5,139,931号明細書のカラム32〜40のA−1〜48,特にA−39,42;
発色増強剤又は混色防止剤の使用量を低減させる素材:欧州特許EP411324A号明細書の5〜24頁のI−1〜II−15,特にI−46;
ホルマリンスカベンジャー:欧州特許EP477932A号明細書の24〜29頁のSCV−1〜28,特にSCV−8;
硬膜剤:特開平1−214845号公報の17頁のH−1,4,6,8,14、米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の一般式(VII)〜(XII)で表される化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報の8頁右下の式(6)で表される化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物;
現像抑制剤プレカーサー:特開昭62−168139号公報のP−24,37,39(6〜7頁)、米国特許第5,019,492号明細書のクレーム1に記載の化合物,特にカラム7の28〜29;
防腐剤、防黴剤:米国特許第4,923,790号明細書のカラム3〜15のI−1〜III−43、特にII−1,9,10,18,III−25;
安定剤、かぶり防止剤:米国特許第4,923,793号明細書のカラム6〜16のI−1〜(14),特にI−1,60,(2),(13)、米国特許第4,952,483号明細書のカラム25〜32の化合物1〜65,特に36;
化学増感剤:トリフェニルホスフィンセレニド、特開平5−40324号公報の化合物50;
染料:特開平3−156450号公報の15〜18頁のa−1〜b−20,特にa−1、12,18,27,35,36,b−5,27〜29頁のV−1〜23,特にV−1、欧州特許EP445627A号明細書の33〜55頁のF−I−1〜F−II−43,特にF−I−11,F−II−8、欧州特許EP457153A号明細書の17〜28頁のIII−1〜36,特にIII−1,3、欧州特許EP319999A号明細書の6〜11頁の化合物1〜22,特に化合物1、欧州特許EP519306A号明細書の一般式(1)〜(3)で表される化合物D−1〜87(3〜28頁)、米国特許第4,268,622号明細書の一般式(I)で表される化合物1〜22(カラム3〜10)、米国特許第4,923,788号明細書の一般式(I)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9);
UV吸収剤:特開昭46−3335号公報の一般式(1)で表される化合物(18b)〜(18r),101〜427(6〜9頁)、欧州特許EP520938A号明細書の一般式(I)で表される化合物(3)〜(66)(10〜44頁)及び一般式(III)で表さ
れる化合物HBT−1〜HBT−10(14頁)、欧州特許EP521823号明細書の一般式(1)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9)。
【0154】
本発明には、非脱色性着色物が好ましく併用される。該非脱色性着色物は、現像処理時に浴出あるいは消色することがなく、処理前後でその膜中における光吸収特性が実用上変化しないものである。その種類については特に制限はなく、公知の物質を含む種々の染料、顔料を使用することができる。
【0155】
公知の染料については、例えば、オキソノール染料、アゾメチン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、ペリノン染料、メロシアニン染料、シアニン染料、インドアニリン染料、フタロシアニン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染料等を挙げることができる。
【0156】
公知の顔料については、例えば、アゾ顔料(不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料)、フタロシアニン顔料、染付けレーキ顔料(酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ)、縮合多環顔料(キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料)、その他(ニトロソ顔料、アリザリンレーキ顔料、アルカリブルー)等の有機顔料を挙げることができる。
【0157】
具体的な化合物については「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善、1970)、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編;朝倉書店、1989)、「改訂新版顔料便覧」等に記載されている。好ましい染料及び顔料の具体例として、特開平11−95371号の明細書段落番号0191〜段落番号0250に記載のD−1〜D−35及びP−1〜P−30を好ましく挙げることができ、またこれらの感光材料中への添加方法も該特許の段落番号0206〜0215に詳細に記載され、これらの記載部分は本願の明細書の一部として取り込まれる。
【0158】
尚、本発明においては、上記のうち、顔料よりも染料のほうが好ましく、その使用量は1〜100mg/m2が一般的であるが、5〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは10〜50mg/m2である。
【0159】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、界面活性剤として下記一般式(FS)で表わされる化合物が含まれることが好ましい。
【0160】
【化1】

【0161】
一般式(FS)中、A、Bは、各々独立に、フッ素原子又は水素原子を表す。a、bは、各々独立に、1〜6の整数を表す。c、dは、各々独立に、4〜8の整数を表す。xは、0又は1を表す。Mはカチオンを表す。
【0162】
A、Bは、各々独立に、フッ素原子又は水素原子を表し、A、Bが同じであっても、異なっていてもよい。A、Bとして好ましくは、A、B共にフッ素原子又は水素原子であり、より好ましくは、A、B共にフッ素原子である。
【0163】
a、bは、各々独立に、1〜6の整数を表す。a、bは1〜6の整数であれば、互いに異なっていても、同じであってもよい。a、bとして好ましくは、1〜6の整数で、かつa=bであり、より好ましくは、2又は3の整数で、かつa=bであり、更に好ましくはa=b=2である。
【0164】
c、dは、各々独立に、4〜8の整数を表す。c、dは4〜8の整数であれば、互いに異なっていても、同じであってもよい。c、dとして好ましくは、4〜6の整数で、かつc=dであり、より好ましくは、4又は6の整数で、かつc=dであり、更に好ましくは、c=d=4である。
【0165】
xは0又は1を表し、どちらも同様に好ましい。
Mはカチオンを表し、Mで表されるカチオンとしては、例えばアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン等が好ましく適用される。これらのうち、特に好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
【0166】
前記一般式(FS)で表される化合物の中でも、より好ましくは下記一般式(FS−a)で表される化合物である。
【0167】
【化2】

【0168】
一般式(FS−a)中、a、b、c、d、M、及びxは、前記一般式(FS)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0169】
前記一般式(FS)の中でも、より好ましくは下記一般式(FS−b)である。
【0170】
【化3】

【0171】
一般式(FS−b)中、a1は2〜3の整数を表す。c1は4〜6の整数を表す。Mはカチオンを表す。xは0又は1を表す。
【0172】
a1としては2が好ましい。c1としては4が好ましい。xとしては0及び1がともに好ましい。
【0173】
本発明に用いられる好ましい界面活性剤の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0174】
【化4】

【0175】
【化5】

【0176】
【化6】

【0177】
【化7】

【0178】
本発明において、上記界面活性剤を写真感光材料の層に用いる場合、界面活性剤を含む水性塗布組成物は、本発明に用いられる界面活性剤と水のみからなっていてもよく、目的に応じてその他の成分を適宜含んでいてもよい。
【0179】
上記の水性塗布組成物において、本発明に用いられる界面活性剤は本発明に規定された組み合わせによる2種類を用いてもよいし、また、3種以上を混合して用いてもよい。また、本発明に用いられる界面活性剤とともに本発明に規定された構造の範囲内で他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができ、高分子界面活性剤であってもよい。このうち、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。併用可能な界面活性剤の例としては、例えば特開昭62−215272号公報(649〜706頁)やリサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月)、同307105,875〜876頁(1989年11月)等を挙げることができる。
【0180】
上記水性塗布組成物中に含まれていてもよいものとして代表的なものはポリマー化合物である。ポリマー化合物は水性媒体可溶なポリマーであってもよく、ポリマーの水分散物(いわゆるポリマーラテックス)であってもよい。可溶性ポリマーとしては特に制限はないが、例えばゼラチン、ポリビニルアルコール、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができ、ポリマーラテックスとしては、種々のビニルモノマー(例えば、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、共役ジエン誘導体、N−ビニル化合物、O−ビニル化合物、ビニルニトリル、その他のビニル化合物(例えばエチレン、塩化ビニリデン))の単独もしくは共重合体、縮合系ポリマーの分散物(例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド)を挙げることができる。この種のポリマー化合物の詳細例については、例えば特開昭62−215272号公報(707〜763頁)やリサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,651頁(1978年12月)、同18716,650頁(1979年11月)、同307105,873〜874頁(1989年11月)等を挙げることができる。
【0181】
上記水性塗布組成物における媒体としては、水単独であってもよいし、水以外の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒であってもよい。水性塗布媒体における水の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
【0182】
上記水性塗布組成物中には、用いる写真感光材料の層に応じて種々の化合物を含んでいてもよく、またそれらは媒体に溶解していてもよく、分散されていてもよい。それらの例としては、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、かぶり防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤等を挙げることができる。また写真感光材料に用いて、効果的な帯電防止能と塗布の均一性を得るためには、最上層の親水性コロイド層に用いるのが好ましい。
【0183】
この場合、該層の塗布組成物中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)や本発明に用いられるフッ素系界面活性剤以外に、他の界面活性剤やマット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有することができる。
【0184】
前記一般式(FS)、(FS−a)または(FS−b)で表される界面活性剤の使用量に特に制約は無く、また界面活性剤の構造やその用途、水性組成物中に含まれる化合物の種類や量、媒体の構成等によって、その使用量を任意に変えることができる。例えば本発明に用いられる界面活性剤を、本発明の好ましい態様である写真感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液として用いる場合、塗布溶液中の濃度(質量%)としては、0.003〜2.0%であることが好ましく、またゼラチン固形分に対して0.03〜10%であることが好ましい。
【0185】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層において、膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましく、16μm以下が特に好ましい。なお、該膜厚の総和は、0.1μm以上であり、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。また、膜膨潤速度T1/2は、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で35℃、3分処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、その膜厚が1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr.ScI.Eng),19巻,2,124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。
【0186】
また、膨潤率は、180〜280%が好ましく、200〜250%がより好ましい。ここで、膨潤率とは、本発明のハロゲン化銀写真感光材料を27℃の蒸留水に浸し、膨潤させたときの平衡膨潤量を表す尺度であり、膨潤率(単位:%)=膨潤時の全膜厚/乾燥時の全膜厚×100と定義される。前記膨潤率は、ゼラチン硬化剤の添加量を調節することにより上記範囲とすることができる。
【0187】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料は、映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程で処理出来る。
【0188】
従来の映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程(乾燥以外)
(1)発色現像浴
(2)停止浴
(3)水洗浴
(4)第一定着浴
(5)水洗浴
(6)漂白促進浴
(7)漂白浴
(8)水洗浴
(9)サウンド現像(塗り付け現像)
(10)水洗
(11)第二定着浴
(12)水洗浴
(13)安定浴
本発明においては、上記処理工程のうち、発色現像時間(上記の(1)の工程)が2分30秒以下(下限は6秒以上が好ましく、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは20秒以上、最も好ましくは30秒以上)、より好ましくは2分以下(下限は2分30秒と同じ)である場合も好ましい結果が得られる。
【0189】
以下、支持体について説明する。
本発明においては、透明支持体が好ましく、プラスチックフィルム支持体がより好ましい。前記プラスチックフィルム支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンのフィルムが挙げられる。
【0190】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靱さなどの点からも特に好ましい。
【0191】
前記支持体の厚みとしては、特に制限はないが、15〜500μmが一般的で、特に40〜200μmが取扱易さ、汎用性などの点から有利なため好ましく、85〜150μmが最も好ましい。透過型支持体とは、好ましくは可視光が90%以上透過するものを意味し、光の透過を実質的に妨げない量であれば染料化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩などを含有していてもよい。
【0192】
上記プラスチックフィルム支持体の表面に、感光層を強固に接着させるために、一般に下記の表面処理が行なわれる。帯電防止層(バック層)が形成される側の表面も、一般に同様な表面処理が行なわれる。(1)薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸素処理、などの表面活性処理したのち直接に写真乳剤(感光層形成用塗布液)を塗布して接着力を得る方法と、(2)一旦これらの表面処理した後、下塗層を設けこの上に写真乳剤層を塗布する方法との二法がある。
【0193】
これらのうち(2)の方法がより有効であり、広く行われている。これらの表面処理は、いずれも、本来は疎水性であった支持体表面に、多少とも極性基を形成させること、表面の接着に対してマイナスの要因になる薄層を除去すること、表面の架橋密度を増加させ接着力を増加させるものと思われ、その結果として下塗層用溶液中に含有される成分の極性基との親和力が増加することや、接着表面の堅牢度が増加すること等により、下塗層と支持体表面との接着性が向上すると考えられる。
【0194】
上記プラスチックフィルム支持体上の感光層が設けられない側の表面には、導電性金属酸化物粒子を含有する非感光性層が設けられることが好ましい。上記非感光性層のバインダーとしては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリエステル樹脂が好ましく使用される。この非感光性層は硬膜されているのが好ましく、硬膜剤としては、アジリジン系、トリアジン系、ビニルスルホン系、アルデヒド系、シアノアクリレート系、ペプチド系、エポキシ系、メラミン系などが用いられるが、導電性金属酸化物粒子を強固に固定する観点からは、メラミン系化合物が特に好ましい。
【0195】
導電性金属酸化物粒子の材料としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO、MoO3及びV25及びこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物を挙げることができる。
【0196】
金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、MgO、及びV25が好ましく、さらにSnO2、ZnO、In23、TiO2及びV25が好ましく、SnO2及びV25が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、及びSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物又は複合酸化物に充分な導電性を付与することができず、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため感光材料用としては適さない。従って、導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物又は複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0197】
導電性金属酸化物粒子は、非感光性層全体に対し、体積比率が通常50%以下である必要があるが、好ましくは3〜30%である。塗設量としては特開平10−62905号に記載の条件に従うことが好ましい。体積比率が50%を超えると処理済カラー写真の表面に汚れが付着しやすく、また3%を下回ると帯電防止能が十分に機能しない。
【0198】
導電性金属酸化物粒子の粒子径は、光散乱をできるだけ小さくするために小さい程好ましいが、粒子と結合剤の屈折率の比をパラメーターとして決定されるべきものであり、ミー(Mie)の理論を用いて求めることができる。一般に、平均粒子径が0.001〜0.5μmであり、0.003〜0.2μmが好ましい。ここでいう、平均粒子径とは、導電性金属酸化物粒子の一次粒子径だけでなく高次構造の粒子径も含んだ値である。
【0199】
上記金属酸化物の微粒子を帯電防止層形成用塗布液へ添加する際は、そのまま添加して分散しても良いが、水等の溶媒(必要に応じて分散剤、バインダーを含む)に分散させた分散液の形で添加することが好ましい。
【0200】
非感光性層は、導電性金属酸化物粒子を分散、支持する結合剤として前記バインダーと硬膜剤との硬化物を含んでいるのが好ましい。本発明では、良好な作業環境の維持、及び大気汚染防止の観点から、バインダーも硬膜剤も、水溶性のものを使用するか、あるいはエマルジョン等の水分散状態で使用することが好ましい。また、バインダーは、硬膜剤との架橋反応が可能なように、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するのが好ましい。水酸基及びカルボキシル基が好ましく、特にカルボキシル基が好ましい。バインダー中の水酸基又はカルボキシル基の含有量は、0.0001〜1当量/1kgが好ましく、特に0.001〜1当量/1kgが好ましい。
【0201】
以下に、前記バインダーとして好ましく用いられる樹脂について説明する。アクリル樹脂としては、アクリル酸;アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類;アクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリル酸;メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類;メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体、又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が挙げられる。
【0202】
上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、硬膜剤との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであるのが好ましい。
【0203】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。
【0204】
上記ビニル樹脂は、硬膜剤との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びグリシジル基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより得られるポリマーとする。
【0205】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0206】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基を硬膜剤との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。勿論、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加しても良い。上記ポリマーの中で、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0207】
硬膜剤として好ましく用いられるメラミン化合物としては、メラミン分子内に二個以上(好ましくは三個以上)のメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を含有する化合物及びそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂などをあげることができる。メラミンとホルマリンの初期縮合物の例としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどがあり、その具体的な市販品としては、例えばスミテックス・レジン(Sumitex Resin)M−3、同MW、同MK及び同MC(住友化学(株)製、いずれも商品名)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0208】
上記縮重合体の例としては、ヘキサメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂、トリメチロールトリメトキシメチルメラミン樹脂等を挙げることができる。市販品としては、MA−1及びMA−204(住友ベークライト(株製、いずれも商品名)、ベッカミン(BECKAMINE)MA−S、ベッカミンAPM及びベッカミンJ−101(大日本インキ化学工業(株)製、いずれも商品名)、ユーロイド344(三井東圧化学(株)製、商品名)、大鹿レジンM31及び大鹿レジンPWP−8(大鹿振興(株)製、いずれも商品名)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0209】
メラミン化合物としては、分子量を1分子内の官能基数で割った値で示される官能基当量が50以上300以下であることが好ましい。ここで官能とはメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を示す。この値が300を超えると硬化密度が小さく高い強度が得られず、メラミン化合物の量を増やすと塗布性が低下する。硬化密度が小さいとスリ傷が発生しやすくなる。また硬化する程度が低いと導電性金属酸化物を保持する力も低下する。官能基当量が50未満では硬化密度は高くなるが透明性が損なわれ、減量しても良化しない。水性メラミン化合物の添加量は、上記ポリマーに対して0.1〜100質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0210】
帯電防止層には必要に応じて、マット剤、帯電調整剤、界面活性剤、滑り剤などを併用して使用することができる。マット剤としては、0.001〜10μm、より好ましくは0.2μm〜0.5μmの粒径をもつ酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等の重合体あるいは共重合体等が挙げられる。これらマット剤の好ましい添加量は2mg/m2〜15mg/m2である。
【0211】
帯電調整剤としては、後述の界面活性剤、フッ素原子を含有するポリマー類、無機塩類、有機塩類等が挙げられる。特に、フッ素原子を含有する界面活性剤やポリマー類、テトラアルキルアンモニウムイオンを含有する塩類などが好ましく用いられる。
【0212】
界面活性剤としては任意のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。滑り剤としては、炭素数8〜22の高級アルコールのリン酸エステル若しくはそのアミノ塩;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びそのエステル類;及びシリコーン系化合物等を挙げられる。
【0213】
前記帯電防止層の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、さらに0.01〜0.2μmが好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超えると、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。前記帯電防止層の上には、表面層を設けるのが好ましい。該表面層は、主として滑り性及び耐傷性を向上させるため、及び帯電防止層の導電性金属酸化物粒子の、脱離防止機能を補助するために設けられる。
【0214】
前記表面層の材料としては、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン及び4−メチル−1−ペンテン等の1−オレフィン系不飽和炭化水素の単独又は共重合体からなるワックス、樹脂及びゴム状物(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体及びプロピレン/1−ブテン共重合体)、(2)上記1−オレフィンの二種以上と共役又は非共役ジエンとのゴム状共重合体(例えば、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,5−ヘキサジエン共重合体及びイソブテン/イソプレン共重合体)、(3)1−オレフィンと共役又は非共役ジエンとの共重合体、(例えば、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/エチリデンノルボルネン共重合体)、(4)1−オレフィン、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体及びその完全若しくは部分ケン化物、(5)1−オレフィンの単独又は共重合体に上記共役若しくは非共役ジエン又は酢酸ビニル等をグラフトさせたグラフト重合体及びその完全若しくは部分ケン化物、などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。上記化合物は、特公平5−41656号公報に記載されている。
【0215】
これらの中でも、ポリオレフィンであって、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩基を有するものが好ましい。通常水溶液あるいは水分散液として使用する。
【0216】
前記表面層には、メチル基置換度2.5以下の水溶性メチルセルロースを添加してもよく、その添加量は表面層を形成する全結合剤に対して0.1〜40質量%が好ましい。上記水溶性メチルセルロースについては、特開平1−210947号公報に記載されている。
【0217】
前記表面層は、帯電防止層上に一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストル−ジョンコート法などにより上記バインダー等を含む塗布液(水分散液又は水溶液)を塗布することにより形成することができる。
【0218】
前記表面層の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、さらに0.01〜0.2μmが好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、塗布剤を均一に塗布しにくいため製品に塗布むらが生じやすく、1μmを超えると、帯電防止性能や耐傷性が劣る場合がある。
【0219】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜のpHは、4.6〜6.4が好ましく、さらに好ましくは5.5〜6.5である。経時の長い試料において、被膜pHが6.5を超える場合、セーフライト照射によるシアン画像、マゼンタ画像の増感が大きく、逆に被膜pHが4.5を下回る場合、感光材料を露光してから現像するまでの時間変化に対して、イエロー画像濃度が大きく変化する。いずれの場合も実用上問題である。
【0220】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜pHとは、塗布液を支持体上に塗布することによって得られた全写真層のpHであり、塗布液のpHとは必ずしも一致しない。その被膜pHは、特開昭61−245153号に記載されているような以下の方法で測定できる。即ち、(1)ハロゲン化銀乳剤が塗布された側の感光材料表面に純水を0.05ml滴下する。次に、(2)3分間放置後、表面pH測定電極(東亜電波製GS−165F、商品名)にて被膜pHを測定する。被膜pHの調整は、必要に応じて酸(例えば硫酸、クエン酸)又はアルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を用いて行うことができる。
【実施例】
【0221】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0222】
(実施例1)
[支持体の準備]
乳剤塗設面側に下塗りを施し、乳剤塗設面の反対側に下記の導電性ポリマー(0.05g/m2)と酸化スズ微粒子(0.20g/m2)を含有するアクリル樹脂層を塗設したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(厚さ120μm)を準備した。
【0223】
【化8】

【0224】
[ハロゲン化銀乳剤の準備]
−青感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(BO−01)
(立方体、平均球相当直径0.65μm、球相当直径の変動係数9%)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、沃化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合したハロゲン化カリウム水溶液を添加することにより調製した。粒子形成中反応容器の温度は60℃、pAgは6.6に保った。ハロゲン化銀粒子の形成開始から使用する全硝酸銀の80%が使用されるまでの間塩化カリウムだけからなるハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩化銀層を形成し、その後全硝酸銀の90%が使用されるまでの間、臭化カリウムと塩化カリウムをモル比2:98で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて臭塩化銀層を形成し、その後全硝酸銀の95%が使用されるまでの間、沃化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウムをモル比3:2:95で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩沃臭化銀層を形成し、その後全硝酸銀の100%が使用されるまでの間、沃化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウムをモル比1:2:97で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩臭化銀層を形成した。臭化銀層にイリジウム化合物を添加した。イリジウム含有量は4×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
【0225】
青色増感色素(A’);3.5×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);2.2×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);1.9×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0226】
中サイズ乳剤(BM−01)
(立方体、平均球相当直径0.52μm、球相当直径の変動係数9%)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、沃化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合したハロゲン化カリウム水溶液を添加することにより調製した。粒子形成中反応容器の温度は52℃、pAgは6.6に保った。ハロゲン化銀粒子の形成開始から使用する全硝酸銀の80%が使用されるまでの間塩化カリウムだけからなるハロゲン化カリウム水溶液をもちいて塩化銀層を形成し、その後全硝酸銀の90%が使用されるまでの間、臭化カリウムと塩化カリウムをモル比2:98で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩臭化銀層を形成し、その後全硝酸銀の100%が使用されるまでの間、沃化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウムをモル比2:2:96で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩沃臭化銀層を形成した。塩臭化銀層にイリジウム化合物を添加した。
【0227】
青色増感色素(A’);4.9×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);4.3×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);2.7×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0228】
小サイズ乳剤(BU−01)
(立方体、平均球相当直径0.31μm、球相当直径の変動係数8%)
BM−01乳剤の調製において、粒子形成温度を下げたこと以外はBM−01と同様に調製した。
【0229】
後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
【0230】
青色増感色素(A’):4.5×10-4モル/モル銀
青色増感色素(B’):4.1×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’):7.0×10-5モル/モル銀
−赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(RO−01)
(立方体、平均球相当直径0.22μm、球相当直径の変動係数11%)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、沃化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合したハロゲン化カリウム水溶液を添加することにより調製した。粒子形成中反応容器の温度は60℃、pAgは6.6に保った。ハロゲン化銀粒子の形成開始から使用する全硝酸銀の50%が使用されるまでの間塩化カリウムだけからなるハロゲン化カリウム水溶液をもちいて塩化銀層を形成し、その後全硝酸銀の75%が使用されるまでの間、臭化カリウムと塩化カリウムをモル比6:94で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩臭化銀層を形成し、その後全硝酸銀の100%が使用されるまでの間、臭化カリウム、塩化カリウムをモル比13:87で混合したハロゲン化カリウム水溶液を用いて塩臭化銀層を形成した。塩化銀層にイリジウム化合物を添加した。イリジウム含有量は4×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように添加し分光増感した。
【0231】
赤感性増感色素(D’):4.4×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):0.4×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.2×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した後、後述する構造式で表されるCpd−71をハロゲン化銀1モル当たり、9.4×10-4モル添加した。
【0232】
中サイズ乳剤(RM−01)
(立方体、平均球相当直径0.17μm、球相当直径の変動係数12%)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
【0233】
赤感性増感色素(D’):7.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.4×10-5モル/モル銀
小サイズ乳剤(RU−01)
(立方体、平均球相当直径0.12μm、球相当直径の変動係数13%)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
【0234】
赤感性増感色素(D’):8.9×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.5×10-5モル/モル銀
−緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(GO−01)
(立方体、平均球相当直径0.19μm、球相当直径の変動係数11%)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウムをモル比1:99で混合したハロゲン化カリウム水溶液を添加することにより調製した。K2[IrCl6]は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように添加し分光増感した。
【0235】
緑感性増感色素(G’):2.6×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):0.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.2×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0236】
中サイズ乳剤(GM−01)
(立方体、平均球相当直径0.14μm、球相当直径の変動係数13%)
サイズ調節をしたこと以外はGO−01と同様にしてGM−01を調製した。後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
【0237】
緑感性増感色素(G’):3.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.3×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.4×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0238】
小サイズ乳剤(GU−01)
(立方体、平均球相当直径0.094μm、球相当直径の変動係数19%)
サイズ調節をしたこと以外はGO−01と同様にしてGU−01を調製した。後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
【0239】
緑感性増感色素(G’):5.1×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.7×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.9×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0240】
本乳剤のハロゲン組成はBr/Cl=1/99(モル比)である。
【0241】
小サイズ乳剤(GU−02)
(立方体、平均球相当直径0.094μm、球相当直径の変動係数19%、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−01の調製において、ハロゲン組成がBr/Cl=3/97(モル比)となるように添加される液の組成を変更し、サイズ調節を行った以外はGU−01と同様にして乳剤GU−02を調製した。
【0242】
小サイズ乳剤(GU−03)
(立方体、平均球相当直径0.13μm、球相当直径の変動係数13%、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
乳剤GU−01の調製において、ハロゲン組成がBr/Cl=25/75(モル比)となるように添加される液の組成を変更し、サイズ調節を行い、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加した以外はGU−1と同様にしてGU−03を調製した。
【0243】
小サイズ乳剤(GU−04)
(立方体、平均球相当直径0.094μm、球相当直径の変動係数19%、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
乳剤GU−03の調製において、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(H2O)]に変更する以外は同様にして乳剤GU−04を調製した。
【0244】
小サイズ乳剤(GU−05)
(立方体、平均球相当直径0.13μm、球相当直径の変動係数13%、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
乳剤GU−03の調製において、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(H2O)]に変更する以外は同様にして乳剤GU−05を調製した。
【0245】
小サイズ乳剤(GU−06)
(立方体、平均球相当直径0.13μm、球相当直径の変動係数13%、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、粒子形成温度によりサイズ調節する以外は同様にして乳剤GU−06を調製した。
【0246】
小サイズ乳剤(GU−07)
(立方体、平均球相当直径0.094μm、球相当直径の変動係数19%、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(H2O)]に変更する以外は同様にして乳剤GU−07を調製した。
【0247】
小サイズ乳剤(GU−08)
(立方体、平均球相当直径0.13μm、球相当直径の変動係数13%、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−06の調製において、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(H2O)]に変更する以外は同様にして乳剤GU−08を調製した。
【0248】
小サイズ乳剤(GU−09)
(立方体、平均球相当直径0.13μm、球相当直径の変動係数13%、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
乳剤GU−02の調製において、K2[RhBr5(H2O)]を全銀量に対して5×10-8モル/モル銀添加し、K2[IrCl6]をK2[IrCl5(5−メチルチアゾール)]に変更し、粒子形成温度及び各種化合物の量をGU−02に対して変更する以外は同様にして乳剤GU−09を調製した。
【0249】
【表1】

【0250】
【化9】

【0251】
【化10】

【0252】
【化11】

【0253】
【化12】

【0254】
[染料固体微粒子分散物の調製]
化合物(HD−1)のメタノールウェットケーキを化合物の正味量が240gになるように秤量し、分散助剤として下記化合物(Pm−1)を48g秤量し、水を加えて4000gとした。‘流通式サンドグラインダーミル(UVM−2)’(アイメックスK.K製)にジルコニアビーズ(0.5mm径)を1.7リットル充填し、吐出量0.5リットル/min、周速10m/sで2時間粉砕した。その後、分散物を化合物濃度が3質量%となるように希釈し、下記構造式で表される化合物(Pm−1)を染料に対し質量比で3%添加した(分散物Aと称する)。この分散物の平均粒子サイズは0.45μmであった。
【0255】
さらに、同様な方法で化合物(HD−2)を5質量%含む分散物(分散物Bと称する)を得た。
【0256】
【化13】

【0257】
【化14】

【0258】
[試料101の作製]
支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー写真感光材料である試料101を作製した。
【0259】
−層構成−
以下に各層の組成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤塗布量は銀換算塗布量を表す。また、ゼラチン硬膜剤として、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩を用いた。
【0260】
[試料101の層構成]
支持体
・上記ポリエチレンテレフタレートフィルム
第1層(ハレーション防止層(非感光性親水性コロイド層))
ゼラチン 1.03
上記分散物A(染料塗布量として) 0.10
上記分散物B(染料塗布量として) 0.03。
【0261】
第2層(青感性ハロゲン化銀乳剤層)
塩臭化銀乳剤BO−01、乳剤BM−01、および
乳剤BU−01の3:1:6混合物(銀モル比) 0.57
ゼラチン 2.71
イエローカプラー(ExY’) 1.19
(Cpd−41) 0.0006
(Cpd−42) 0.01
(Cpd−43) 0.05
(Cpd−44) 0.003
(Cpd−45) 0.012
(Cpd−46) 0.001
(Cpd−54) 0.08
(Cpd−65) 0.02
溶媒(Solv−21) 0.26。
【0262】
第3層(混色防止層)
ゼラチン 0.59
(Cpd−49) 0.02
(Cpd−43) 0.05
(Cpd−53) 0.005
(Cpd−61) 0.02
(Cpd−62) 0.03
溶媒(Solv−21) 0.06
溶媒(Solv−23) 0.04
溶媒(Solv−24) 0.002。
【0263】
第4層(赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
塩臭化銀乳剤RO−01、乳剤RM−01および
乳剤RU−01の2:2:6混合物(銀モル比) 0.40
ゼラチン 2.79
シアンカプラー(ExC’) 0.80
(Cpd−47) 0.06
(Cpd−48) 0.06
(Cpd−50) 0.03
(Cpd−53) 0.03
(Cpd−57) 0.05
(Cpd−58) 0.01
(Cpd−60) 0.02
溶媒(Solv−21) 0.53
溶媒(Solv−22) 0.28
溶媒(Solv−23) 0.04。
【0264】
第5層(混色防止層)
ゼラチン 0.56
(Cpd−49) 0.02
(Cpd−43) 0.05
(Cpd−53) 0.005
(Cpd−62) 0.03
(Cpd−64) 0.002
溶媒(Solv−21) 0.06
溶媒(Solv−23) 0.04
溶媒(Solv−24) 0.002。
【0265】
第6層(緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
塩臭化銀乳剤GO−01、乳剤GM−01、乳剤GU−01
の混合比1:2:7の混合物(銀モル比) 0.54
ゼラチン 1.66
マゼンタカプラー(ExM’) 0.73
(Cpd−49) 0.013
(Cpd−51) 0.001
溶媒(Solv−21) 0.15。
【0266】
第7層(保護層)
ゼラチン 0.97
アクリル樹脂(平均粒径2μm) 0.002
(Cpd−55) 0.005
(Cpd−56) 0.08
(Cpd−59) 0.03。
【0267】
ここで使用した化合物を以下に示す。
【0268】
【化15】

【0269】
【化16】

【0270】
【化17】

【0271】
【化18】

【0272】
【化19】

【0273】
【化20】

【0274】
【化21】

【0275】
【化22】

【0276】
【化23】

【0277】
以上のように試料101を作製した。
<試料102〜109の作製>
次に、前記試料101の作製において第6層中の乳剤GU−01をそれぞれGU−02〜GU−09に変更したこと以外は全く同様の方法で、試料102〜109を作製した。
【0278】
<試料111〜119の作製>
更に、前記感光材料101〜109において第7層中の界面活性剤(Cpd−55)を(FS−1)に等質量置換したことのみ異なる感光材料の試料111〜119を作成した。
【0279】
<試験及び評価>
前記試料101〜109、111〜119について、デジタルマイクロミラーデバイスを用いた露光により均一ベタグレー露光の色むらを評価するために下記に示す評価を実施した。プリンターとして発明を実施するための最良の形態の本項において説明した構造及びシーケンスのプリンターを製作して用いた。このプリンターはデジタルデータから観賞用のプリントサンプルを作成することができ、またプロジェクターと連動して露光できるようにシステムを設計すれば投影画像をみながら好みの色味のプリントサンプルを容易に作成できるなど高効率のプリントシステムを構築する事ができるが、以下の比較例に示すように得られた画像の濃度がプリント面内で異なり色むらができてしまうという問題があった。
【0280】
図5において試料101〜109、111〜119を送り出しロール44からプロセッサー45に搬送できるようにロール状に加工し露光、プリント、現像処理を行った。現像処理はイーストマンコダック社から公表されているECP−2プロセスに従って実施した。
【0281】
グレー画像はロール状に加工された試料101の巾方向に65mmの巾でプリントした。試料の巾方向の両端から5mmの点の濃度点の濃度をマクベス濃度計で測定し濃度が高い方の点を基準点としもう一方の点を被検査点とする。基準点の濃度がマクベス濃度計で測定してY=0.3±0.03、M=0.3±0.03、C=0.3±0.03となるようなベタ露光画像をプリントした。次に被検査点の濃度を測定し基準点の濃度に対するマゼンタ濃度の増減△Mを求めた。
下表に測定結果を示す。
【0282】
【表2】

【0283】
表より本発明の化合物を用いた感光材料は複数のマイクロミラーをライン状に配列した少なくとも1個のマイクロミラーアレイを有し、各マイクロミラーは、1ビットのミラー駆動データに応じて有効反射状態と無効反射状態とに変位可能なマイクロミラー装置と、このマイクロミラー装置に光を照射する光源とを備え、有効反射状態となった各マイクロミラーからの反射光を感光材料上に投影して画像を露光するプリンターの色むらという問題点を解決し、高効率プリントシステムを提供する事ができる事が分かる。
【0284】
さらに(FS−1)を用いたサンプルは色味ムラ一層少なく、高品質な画像を得る事ができる事が分かる。
【図面の簡単な説明】
【0285】
【図1】マイクロミラーの動作状態とLED点灯信号の関係を示す波形図。
【図2】デジタルマイクロミラー装置を示す説明的平面図。
【図3】マイクロミラー構造を示す説明図。
【図4】マイクロミラーの動作を示す説明図。
【図5】カラーデジタルプリンターの概略図。
【図6】デジタルマイクロミラー装置による印画紙への投影状態を示す説明図。
【図7】1ラインを記録するときの各色LED装置の点灯状態を示す波形図。
【図8】マイクロミラーアレイを2本にした例のデジタルマイクロミラー装置を示す説明的平面図。
【図9】図8のデジタルマイクロミラー装置を用いた時の印画紙の記録状態を示す説明図。
【図10】図8のデジタルマイクロミラー装置を用いたときのマイクロミラーの動作状態とLED点灯信号の関係を示す波形図。
【図11】印画紙を1ライン送る毎に1色の露光を行う例のデジタルマイクロミラー装置を示す説明的平面図。
【図12】図11のデジタルマイクロミラー装置による露光状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0286】
10,50,60・・・デジタルマイクロミラー装置
11,51,52,A1〜A3,B1〜B3・・・マイクロミラーアレイ
12・・・マイクロミラー
20〜22・・・LED装置
29・・・点灯制御回路
30・・・コントローラ
41・・・印画紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロミラーをライン状に配列した少なくとも1個のマイクロミラーアレイを有し、各マイクロミラーは、1ビットのミラー駆動データに応じて有効反射状態と無効反射状態とに変位可能なマイクロミラー装置と、このマイクロミラー装置に光を照射する光源とを備え、有効反射状態となった各マイクロミラーからの反射光を感光材料上に投影して画像を露光するプリンターとハロゲン化銀カラー写真感光材料を用いた画像形成方法において、該ハロゲン化銀カラー写真感光材料が透過型支持体上に、各々少なくとも1層の赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤を含有し、かつ該ハロゲン化銀乳剤が下記一般式(D1)および下記一般式(D2)で表される金属錯体を各々少なくとも1種含有する映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であることを特徴とする画像形成方法。
一般式(D1)
[MD1D1nD1(6−n)m
(一般式(D1)中、MD1はCr、Mo、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、PdまたはPtを表し、XD1はハロゲンイオンを表す。LD1はXD1とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。ただし、一般式(D1)で表される金属錯体は、配位子としてCNイオンを有さないか、有しても1個である。)
一般式(D2)
[IrXD2nD2(6−n)m
(一般式(D2)中、XD2はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2はXD2とは異なる任意の配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2は互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2が存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
前記一般式(D1)で表される金属錯体が、ハロゲン化銀粒子に銀1モルあたり1×10-10〜1×10-6モル含有されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記一般式(D1)で表される金属錯体が、下記一般式(D1A)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
一般式(D1A)
[MD1AD1AnD1A(6−n)m
(一般式(D1A)中、MD1AはRe、Ru、OsまたはRhを表し、XD1Aはハロゲンイオンを表す。LD1AはMD1AがRe、RuまたはOsの場合、NOまたはNSを表し、MD1AがRhの場合、H2O、OHまたはOを表す。nは3、4、5または6を表し、mは金属錯体の電荷であって、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD1Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD1Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項4】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2A)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
一般式(D2A)
[IrXD2AnD2A(6−n)m
(一般式(D2A)中、XD2Aはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2AはXD2Aとは異なる任意の無機配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Aは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Aが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項5】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2B)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の画像形成方法。
一般式(D2B)
[IrXD2BnD2B(6−n)m
(一般式(D2B)中、XD2Bはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表し、LD2Bは鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団に置き換えられた配位子を表す。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Bは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Bが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項6】
前記一般式(D2)で表される金属錯体が、下記一般式(D2C)で表される金属錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
一般式(D2C)
[IrXD2CnD2C(6−n)m
(一般式(D2C)中、XD2Cはハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン(ただし、シアン酸イオンを除く)を表す。LD2Cは5員環配位子で、環骨格中に少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つの硫黄原子を含有する配位子を表し、該環骨格中の炭素原子上に任意の置換基を持ってよい。nは3、4または5を表し、mは金属錯体の電荷であって、5−、4−、3−、2−、1−、0または1+を表す。ここで、複数のXD2Cは互いに同一でも異なってもよく、複数のLD2Cが存在する場合、これらは同一でも異なってもよい。)
【請求項7】
前記プリンターの光源に、有効反射状態に保持されているマイクロミラーを照射する光源の点灯時間を変える光源変調手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−250193(P2008−250193A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94214(P2007−94214)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】