説明

マイクロ分析チップ

【課題】粘度や界面張力の異なる複数の液の順次送液の制御が可能で、血液中の特定タンパク質の測定が安定かつ簡易にできるマイクロ分析チップを提供する。
【解決手段】検出部及び/又は反応部を備えるメイン流路と、前記検出部及び反応部の何れよりも上流側から前記メイン流路に液を導入する第1の導入流路及び第2の導入流路と、
前記第1の導入流路及び第2の導入流路のそれぞれ設けられた、液の流れを開閉する第1のバルブ及び第2のバルブと、前記メイン流路の上流側に接続された空気孔と、前記空気孔への液の流入を防止する流入防止部と、前記メイン流路の下流側に接続された排出部と、を備え、毛細管力を駆動力として送液を行うマイクロ分析チップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質や、自然環境における物質等の微量化学分析に用いるマイクロ分析チップに関するものであり、より具体的には、粘性や界面張力の異なる複数の試験液をスムーズに移送することができるマイクロ分析チップに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の測定方法としては、ELISA(酵素免疫測定法)、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、LTIA(ラテックス免疫比濁法)等の免疫分析法が広く用いられている。
【0003】
免疫分析法は、医療分野、生化学分野、アレルゲンなどの測定分野等において、重要な分析・計測方法として知られている。しかし、従来の免疫分析法は、操作が煩雑である上に、分析に一日以上の時間を要するといった問題があった。
【0004】
このような中、基板にマイクロオーダーの流路を形成し、このマイクロ流路に抗体等を固定化するマイクロ分析チップが提案されている。
【0005】
マイクロ分析チップを用いて分析を行う場合には、導入口や導入流路からマイクロ分析チップの検出部や反応部に溶液を導入し、該溶液をマイクロ分析チップ内で反応させ、排出口や排出流路からマイクロ分析チップ外に溶液を排出するという一連の工程を行う必要がある。従来、マイクロ分析チップにおける溶液の移送は、ポンプやバルブ等の外部の動力源を用いて行っていた。しかし、ポンプやバルブは、マイクロ分析チップに比べて大型であるため、装置全体の小型化が難しいという問題がある。比較的小型のマイクロポンプやマイクロバルブをマイクロ分析チップの内側や外側に配置する方法も提案されているが、この方法は、複雑な微細加工技術を必要とするため、実用性に欠ける。
【0006】
他方、チップ内での簡便な溶液の移送方法として、親水性の流路の毛細管力を利用する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。図12に、毛細管力を利用したマイクロ分析チップの一例を示す。このようなマイクロ分析チップでは、入口401に溶液を滴下すると、毛細管力によって溶液が流路402を移動し、ポンプ等の外力を必要とせずに溶液を排出できる。流路内に充填された溶液を排出する方法としては、たとえば、特許文献4に示すように、排出口に溶液を吸収する吸収体を設置し、吸収体に溶液を吸わせて排出する方法が提案されている。
【0007】
また、簡便な溶液の移送切換(溶液の流れの開閉)方法として、特許文献1には、エレクロトウェッティングを利用したマイクロバルブ(エレクロトウエッティングバルブ)が提案されている。図13に、エレクロトウエッティングバルブを利用したマイクロ分析チップの一例を示す。このマイクロ分析チップの流路402内には、作動電極405と参照電極406とを備えたエレクロトウエッティングバルブが設けられている。作動電極405表面は、電圧を印加しない状態では、疎水性であり、電圧を印加したときには親水性となる。このため、電圧印加により溶液の停止と移動とを切換える(溶液の流れを開閉する)ことができる。
【0008】
図14に、エレクロトウエッティングバルブの動作原理を示す。図14(a)は、電圧を印加していない状態を示し、図14(b)は、作動電極405と参照電極406間に電圧を印加した状態を示す。電圧を印加していない状態では、作動電極405の表面には疎水性膜407が形成されているため、流路内を毛細管力により移動してきた溶液408は、作動電極405に到達した時点で停止する。電圧を印加することにより、エレクロトウェッティングの効果で作動電極405表面が親水化され、停止していた溶液408が作動電極405上を通過して、流路内を移動する。
【0009】
ところで、マイクロ分析チップの応用の1つとして、メタボリックシンドロームの判定用チップがある。
【0010】
メタボリックシンドロームは、内臓に脂肪が蓄積することにより、血糖を下げるホルモンであるインスリンの効果が弱くなり、糖や脂質の代謝異常が引き起こされた病態をいう。メタボリックシンドロームでは、動脈硬化性疾患の危険因子である内臓脂肪型肥満、高血圧症、糖尿病、高脂血症を重複して発症していることが多く、重複することによって動脈硬化性疾患のリスクがさらに上昇する。
【0011】
メタボリックシンドロームの診断基準としては、例えば、日本では、2005年に、日本内科学会において、診断基準が示された。その診断基準では、ウエストが規定値(男性で85センチ、女性で90センチ)以上であり、且つ、(a)最高血圧が130mmHg以上か、最低血圧が85mmHg以上、(b)空腹時の血糖値が110mg/dL以上、(c)中性脂肪が150mg/dL以上、またはHDL−コレステロールが40mg/dL未満、の3項目のうち、2項目以上が該当する場合に、メタボリックシンドロームと診断される。
【0012】
上記診断基準は、あくまでも、発症した後に、メタボリックシンドロームであることを診断するためのものである。しかし、メタボリックシンドロームは、生活習慣の改善により、発症を未然に防ぐことが可能な疾患である。そのため、メタボリックシンドロームを早期又は未然に発見し、早期治療、生活改善することはきわめて重要であり、メタボリックシンドロームの発症や進行を簡便に予知判定する方法の開発が強く望まれるようになっている。
【0013】
このような中、メタボリックシンドロームの判定方法として、メタボリックシンドロームの発症に関わるアディポネクチン等の特定タンパク質を検出する方法が提案されている(特許文献2)。アディポネクチンは、脂肪細胞から特異的に分泌されるインスリン感受性ホルモンであり、血中に比較的高濃度(5〜10μg/mL)存在している。アディポネクチンは、脂肪細胞特異的分泌タンパク質であるが、肥満者では血中濃度が有意に低い値をとり、たとえば冠動脈疾患や2型糖尿病において、アディポネクチン濃度の低下が認められている。また、アディポネクチンは、インスリン抵抗性及び動脈硬化双方にかかわる分子と捉えることができる。
【0014】
血液中のアディポネクチンの量を免疫分析法で測定する場合、血液サンプルに対して、赤血球の除去(分離)、多量体の単量化(分解)、希釈等の前処理を行う必要がある。分離方法としては、遠心分離やフィルタによる分離等の方法が用いられる。分解方法としては、煮沸処理や還元剤、界面活性剤、プロテアーゼ等との作用による分解等の方法が用いられる(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−220606号公報
【特許文献2】WO2005/038457
【特許文献3】WO2005/038458
【特許文献4】特開2000−297761号公報
【特許文献5】特開2003−149252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
メタボリックシンドロームの発症に関わるアディポネクチン等の特定タンパク質の検出を、マイクロ分析チップを用いて行うことができれば、短時間かつ簡便にメタボリックシンドロームの診断や、その危険レベルの判定が可能となる。
【0017】
しかし、上記のような従来の免疫分析法は、煩雑で多くの時間を必要とする。それゆえ、マイクロ分析チップを用いて、アディポネクチンのような血液中に含まれるタンパク質をELISA法等の免疫分析法により測定する場合、採取、前処理を行った血液サンプルに加えて、酵素標識した抗体溶液、洗浄液、基質溶液等の、粘度や界面張力の異なる複数の液を送る必要がある。よって、これらの液の送液制御技術が必要となる。
【0018】
特に、毛細管力を駆動力とするマイクロ分析チップでは、粘度や界面張力の異なる複数の液を送液する場合、液ごとに作用する毛細管力が異なるため、送液を制御することが難しい。また、エレクロトウェッティングを利用したマイクロバルブを、複数の液ごとに用いる場合、バルブ間で相互に影響を受けるため、粘度や界面張力の異なる複数の液を順次送液制御することが難しい。
【0019】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、粘度や界面張力の異なる複数の液を制御しつつ順次送液することが可能なマイクロ分析チップを提供し、もって血液中の特定タンパク質を簡易に且つ精度よく測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための本発明は、検出部及び/又は反応部を備えるメイン流路と、
前記検出部及び反応部の何れよりも上流側から前記メイン流路に液を導入する第1の導入流路及び第2の導入流路と、前記第1の導入流路及び第2の導入流路のそれぞれ設けられた、液の流れを開閉する第1のバルブ及び第2のバルブと、前記メイン流路の上流側に接続された空気孔と、前記空気孔への液の流入を防止する流入防止部と、前記メイン流路の下流側に接続された排出部と、を備え、毛細管力を駆動力として送液を行うマイクロ分析チップである。
【0021】
この構成では、メイン流路の上流側に空気孔が接続されており、この空気孔により毛細管力を用いた送液を安定させることができる。また、流入防止部を設けることにより、空気孔への液の流入を防止することができ、空気孔の機能を確実に果たすことが可能となる。
【0022】
上記構成において、前記メイン流路と前記空気孔とが、空気孔路を介して接続されている構成とすることができる。また、前記流入防止部は、疎水部からなり、且つ、前記空気孔路と前記メイン流路との境界近傍に設けられている構成とすることができる。
【0023】
上記構成において、前記メイン流路用の溝、前記第1の導入流路用の溝、前記第2の導入流路用の溝、及び前記第3の導入流路用の溝が形成された第1基板と、前記第1基板の蓋をする第2基板と、が重ね合わされてなる構成とすることができる。
【0024】
この構成を採用することにより、マイクロ分析チップの構成を簡易化できる。
【0025】
上記構成において、前記第1のバルブ及び第2のバルブが、それぞれエレクロトウエッティングバルブであるとすると、マイクロチップの小型化を図れる。
【0026】
エレクトロウエッティングバルブとしては、少なくとも作動電極と参照電極とを有する構成とすることが好ましく、さらに対極を備えていてもよい。このようなバルブの作動電極としては、金属薄膜からなる構成や、金属薄膜とその上に設けられた薄膜とからなる構成を採用できる。
【0027】
金属薄膜上の薄膜は、良好に動作させるために、厚みを100nm以下とすることが好ましい。また、25℃で比抵抗が18MΩ・cmである純水に対する前記薄膜の接触角が、80度以上であることが好ましい。また、薄膜が、フッ素含有物質又はチオール基を含む物質からなることが好ましい。
【0028】
エレクトロウエッティングバルブを備える導入流路は、停止させた液をメイン流路に流しやすくするために、下流側の溝幅を、上流側の溝幅よりも大きくすることが好ましい。
【0029】
エレクトロウエッティングバルブの動作電位は、それぞれ3V以下であることが好ましい。
【0030】
上記構成において、前記メイン流路と前記排出部とが、排出流路を介して接続されている構成とすることが好ましい。
【0031】
また、排出流路の下流端に、吸収体を接続させると、吸収体により安定した毛細管力が得られる。また、吸収体が液体を吸収するので、液体が外部環境を汚すことがない。
【0032】
排出流路に、液の流れを開閉するバルブを備えさせると、その上流側に位置するメイン流路において液体を停止させることができるので、検出や反応効率を高めることができる。
【0033】
本発明のマイクロ分析チップは、タンパク質、特にアディポネクチンの検出を行うのに適している。
【発明の効果】
【0034】
上記で説明したように、本発明によると、外部動力を必要とすることなく、マイクロ分析チップ内で複数の特性の異なる液の送液制御を安定に行うことが可能となり、特定タンパク質の測定が簡便かつ高精度に行うことができるマイクロ分析チップを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるマイクロ分析チップの平面図および断面図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかるマイクロ分析チップの第1基板と第2基板の構造図である。
【図3】図3は、実施例1にかかるマイクロ分析チップの平面図である。
【図4】図4は、実施例1にかかるマイクロ分析チップの第1基板と第2基板の構造図である。
【図5】図5は、実施例1にかかるマイクロ分析チップによるアディポネクチン濃度の測定結果である。
【図6】図6は、実施例3にかかるマイクロ分析チップの作動電極部の導入流路の構造図である。
【図7】図7は、実施の形態2にかかるマイクロ分析チップの平面図である。
【図8】図8は、実施の形態2にかかるマイクロ分析チップの前処理部の平面図および断面図である。
【図9】図9は、実施例4にかかるマイクロ分析チップの平面図である。
【図10】図10は、実施例4にかかるマイクロ分析チップの前処理部の平面図および断面図である。
【図11】図11は、実施例4にかかるマイクロ分析チップの前処理部の動作説明図である。
【図12】図12は、毛細管力を利用したマイクロ分析チップの従来例である。
【図13】図13は、エレクロトウエッティングバルブを利用したマイクロ分析チップの従来例である。
【図14】図14は、エレクロトウエッティングバルブの動作原理を示す。(a)が電圧を印加していない状態、(b)が作動電極と参照電極間に電圧を印加した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態にかかるマイクロ分析チップは、図1(a)に示すように、検出部13を備えるメイン流路14と、液体をチップ内に導入する開放孔1、2、3をそれぞれ備え、検出部13よりも上流側からメイン流路14に液を導入する第1〜第3の導入流路4,5,6と、メイン流路の下流側に設けられた排出流路9と、排出流路9の末端に設けられた排出部7と、空気孔11に接続された空気孔路12と、を備えている。また、第1〜第3の導入流路4,5,6にはそれぞれ、液の流れを開閉する第1〜第3のバルブが設けられている。
【0038】
図1(b)に、図1(a)のX−Y断面図を示す。本実施の形態にかかるマイクロ分析チップは、上記各流路用の溝が形成された第1基板15と、第1基板の蓋をする第2基板16と、貼り合せることにより構成されている。
【0039】
図2に、本実施の形態にかかるマイクロ分析チップの第1基板15と第2基板16の構造を示す。
図2(a)に示すように、第1基板15は、メイン流路14用の溝、第1〜第3の導入流路4、5、6用の溝、排出流路9用の溝、排出部7用の穴、空気孔路12用の溝、空気孔11用の貫通孔、開放孔1〜3用の貫通孔が形成されている。
【0040】
ここで、第1〜第3の導入流路4〜6、排出流路9、空気孔路12、メイン流路14の溝幅は、それぞれ流れ方向において幅に変化のない構成である。また、メイン流路14の溝幅が最も大きく、第1〜第3の導入流路4〜6のうち、第1の導入流路4の溝幅が最も広い。また、空気孔路12の溝幅は、第1の導入流路4より大きく、メイン流路14より小さい。
【0041】
図2(b)に示すように、第2基板16は、第1基板15に形成された溝、貫通孔を下方からシールする基板である。この第2基板には、検出部を構成する検出用電極17、18、19、エレクトロウエッティングバルブ用作動電極20、21、22、23、24、エレクトロウエッティングバルブ用参照電極26、27、28、29、電極パッド30、引き出し電極34、疎水部31が形成されている。また、排出流路の下流端に接するように吸収体32を排出部に載置する。
【0042】
第1基板15の厚みは0.1mm〜10mm程度であり、第2基板16の厚みは0.01mm〜10mm程度である。開放孔1、2、3および空気孔11は直径が10μm以上の貫通孔でよい。
【0043】
マイクロ分析チップの検出部で、光学的な検出を行う場合には、第1基板15および第2基板16に用いられる一方または両方の材料として、例えば、特許文献5に提案されるような、透明または半透明の材料を用いることが望ましい。なぜなら、メイン流路14内を流れる被検液に励起光を照射し、励起光により発生した蛍光を検出して目的物質の量を測定する必要があるため、蛍光の検出を妨げる材料を用いることができないためである。このような透明または半透明な材料として、ガラス、石英、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フィルム等が挙げられる。なかでも、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂は、透明性、成型性の観点から好ましい。なお、電気化学的検出を行う場合には、このような材料の制約はない。
【0044】
他方、マイクロ分析チップの検出部で電気的な制御や電気的な測定を行うためには、基板または基板の表面に電極を形成する必要がある。このため、基板または基板の一方または両方が電極形成可能な材料であることが好ましい。電極形成可能な材料としては、生産性、再現性の観点からガラス、石英、シリコン等が好ましい。なお、現在の技術では、凹凸のある部分に電極を形成することは難しいので、平坦な基板(第2基板)に電極を形成することが好ましい。
【0045】
流路の形成には、例えば、基板に直接加工を行う方法、機械加工による方法、レーザー加工による方法、薬品やガスによるエッチングによる方法、金型を用いた射出成型、プレス成型、鋳造による方法等がある。中でも、金型を用いる方法、エッチングを用いる方法は形状寸法の再現性が高く好ましい。
【0046】
メイン流路14の幅と高さは特に限定されないが、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。幅に関して好ましくは1μm〜5mm程度に設定される。
【0047】
第1〜第3の導入流路4、5、6用の溝の幅と高さは、流路を流れる溶液の粘度、界面張力等の特性に合わせて、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法にそれぞれ設定される。高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。幅に関して好ましくは1μm〜1mm程度に設定される。
【0048】
導入流路の個数は、3つに限定されるものではなく、検出に必要な液の数に合わせて設定される。免疫分析法で測定を行う場合、3つ以上の導入流路を設けるのが好ましい。また、導入流路の一部は、検出部よりも下流側からメイン流路に液を導入する構成であってもよい。
【0049】
第1〜第3の導入流路4、5、6には、それぞれ、液の流れを開閉するバルブとして、少なくとも参照電極と作動電極とを有するエレクロトウエッティングバルブが形成されている。
【0050】
第1〜第3の導入流路4、5、6には、それぞれ、エレクロトウエッティングバルブ用の作動電極20、21、22が設けられ、開放孔1、2、3の直下(作動電極の上流側)には、それぞれエレクロトウエッティングバルブ用の参照電極26、27、28が設けられている。
【0051】
作動電極、参照電極はそれぞれ、引き出し電極34により電極パッド30に配線されており、電極パッド30に接続される外部装置(図示せず)により印加電圧が制御されて、バルブの動作が行われる。
【0052】
作動電極上の導入流路は、液を確実に停止させるために、電圧を印加しない状態では疎水性であることが好ましい。そのために、基板15自体に疎水性の材料を用いるか、疎水性膜を形成する等により、基板15の一部もしくは全面を疎水性にするのが好ましい。
【0053】
作動電極20、21、22は、金薄膜で形成されている。金以外にカーボンやビスマスを用いてもよい。これらの材料は、作動電極に電圧を印加した状態において、水素等の発生が少なく電極が劣化しにくいという利点がある。
【0054】
作動電極20、21、22の表面に、25℃、比抵抗が18MΩ・cmの純水に対する接触角が80度以上の薄膜を設ける構成とすることができる。この構成を採用することにより、電圧印加しない状態で液を確実に停止することができ、バルブを安定に動作することが可能となる。
【0055】
この薄膜としては、フッ素含有物質もしくはチオール基を含む物質が適している。これらの物質を用いることにより、作動電極上の接触角を90度よりも大きくすることができ、電圧を印加しない状態で、バルブで液を停止しやすくなるので、バルブ動作をより安定に行うことができる。薄膜は、上記物質に限定されるものではなく、表面の接触角が金薄膜よりも大きなものであればよい。
【0056】
また、金薄膜上の薄膜の厚みは、100nm以下であることが好ましい。この構成によれば、バルブの動作に必要な電圧を低減することができ、システムの小型が可能となる。
【0057】
また、作動電極20、21、22は、金属薄膜のみを形成する構成とすることができる。
【0058】
金属表面を自然空気に曝すと、表面にカーボン堆積物などからなる薄膜(接触角60度〜85度)が形成される。この膜は、接触角が上記純水に対して90度より小さいが、上記純水に対する接触角が60〜85度と親水性度合いが低く、且つ1nm以下の極めて薄い膜である。よって、エレクトロウエッティングバルブの作動電極として十分に機能する。また、上記のような薄膜を形成する場合に比べ、バルブ動作に必要な印加電圧を小さくできる利点がある。
【0059】
導入流路の作動電極部の溝幅は、狭くすることが好ましい。この構成によると、電圧を印加しない状態で、作動電極上で液を停止させやすくなり、バルブ動作をより安定に行うことができる。また、導入流路の溝幅は、各導入流路に流れる液の特性に合わせて、それぞれ設定するのが好ましい。この場合、液の特性に合わせてバルブ部の毛細管力を調整することが可能となり、異なる複数の液に対してバルブ動作を安定に行うことができる利点がある。作動電極部の幅に関して、好ましくは1μm〜500μm程度とする。
【0060】
また、導入流路の溝幅は、一定ではなく、導入流路の上流より下流の方が大きくなるようにしてもよい。この場合、バルブで液を停止しやすく、且つ、導入流路とメイン流路との接続部で液が流れ易くなり、送液をより安定して行うことができる。
【0061】
エレクトロウエッティングバルブ用の参照電極26、27、28は、銀/塩化銀で形成されている。銀/塩化銀で形成することにより、電極に電流を流した場合に、電位の変化が少ないという利点がある。銀/塩化銀以外に、金、カーボン、ビスマスで形成してもよい。
【0062】
作動電極と参照電極の間に印加する電圧は、作動電極の構成により異なるが、3V以下が好ましい。特に、作動電極が金薄膜と金薄膜の表面を空気に曝して形成させた薄膜からなる構成の場合、印加電圧が1V以下で動作が可能である。印加電圧を低減することにより、システムの小型化が可能となり、携帯機器への応用が可能となる。
【0063】
本実施の形態では、エレクトロウエッティングバルブとして、作動電極と参照電極の2電極方式を用いたが、対極を加えた3電極方式を用いても良い。3電極にすることにより、電極数が増加し構造は複雑になるが、動作電圧のバラツキを抑えることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、マイクロバルブとしてエレクトロウエッティングバルブを用いているが、これに限定されるものではない。ダイアフラム型バルブなど、液体の流入を停止、または開始できるものを用いることができる。
【0065】
排出流路9の溝幅と溝高さは、特に限定はしないが、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。幅に関して好ましくは1μm〜5mm程度に設定される。
【0066】
本実施の形態では、排出部が1つ設けられているが、これに限定されるものではない。排出する液の数、量に合わせて、2つ以上の排出部を設けてもよい。
【0067】
排出部7は、第1基板15が大気開放されており、第2基板16に、排出流路の下流端と接続した吸収体32が備えられている。
【0068】
吸収体とは、液体の吸収体であって、高分子吸収体や、多孔性物質、親水性メッシュ、海綿体、綿、濾紙等、その他毛細管力を利用し液体を吸収する材料であれば何であっても構わない。
【0069】
本構成により、液の排出を短時間に行うことが可能となり、測定時間を短縮することができる。また、吸収体により液を吸収することにより、液の外部への流出を防ぐことできるという利点がある。
【0070】
また、排出流路には、エレクロトウエッティングバルブが設けられている。排出流路9に作動電極23が、メイン流路14の排出流路近傍に参照電極29が、それぞれ形成されている。
【0071】
排出流路にバルブを設けることにより、液のメイン流路14から排出部への排出を制御することができ、メイン流路14内に液を一定時間停止することが可能になる。また、一定量の排出を容易に行うことができるという利点がある。
【0072】
空気孔路12の溝幅と溝高さは、複数のバルブを用いて液をメイン流路14に順次送液した場合に、バルブ間の影響が小さくなるよう設定される。空気孔路12の溝幅は、メイン流路14の溝幅より狭く、第1〜第3の導入流路4、5、6の最小溝幅いずれよりも広いことが好ましい。
【0073】
空気孔路12を備えた本構成により、液を順次送液した場合に、バルブ間の影響が低減され、バルブの誤動作が防止され、バルブを安定に動作することができるという利点がある。高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。幅に関して好ましくは1μm〜1mm程度に設定される。
【0074】
また、空気孔路12とメイン流路14との境界近傍に疎水部31が設けられている。
【0075】
疎水部31は、第1基板15と第2基板16の接触角が90度以上となる部分であって、例えば、フッ素系の疎水剤やネガ型レジスト等の疎水性材料を第2基板16の一部に設けることにより形成できる。
【0076】
疎水部31を設けることにより、空気孔路12への液の流入を防止することができ、空気孔の機能を確実に果たすことが可能となり、複数のバルブを安定に動作することが可能となる。
【0077】
空気孔路12と排出流路9は、メイン流路14に設けられた検出部13に対して反対側、すなわち空気孔路12はメイン流路14の上流側、排出流路9はメイン流路14の下流側に配置されている。
【0078】
本構成により、メイン流路14内の液を確実に排出することが可能となり、排出されずに残った液の影響による検出信号の品質低下を抑えることができ、再現性の良い検出を行うことができるという利点がある。
【0079】
電極パッド30、引き出し電極34は、電気的制御信号の入力や、検出信号の出力などを行う。金電極を用いると、検出電極などと作成工程を併用できるので、工程を簡易化できる。その他、白金、アルミニウム、銅などの材料を含んだ導電性材料を用いて形成してもよい。
【0080】
図1に示したマイクロ分析チップは、複数の液の導入送液制御が可能であり、例えば、メイン流路14に抗体等を固定化し、抗原を含む液を流して抗原抗体反応させ、酵素標識抗体を含む液を流して抗原抗体反応させ、さらに基質溶液を流して酵素基質反応を行わせ、酵素基質反応により生じた電極活性物質の量を検出用電極で検出することにより、抗原の量を測定するという免疫分析法を利用した抗原の測定に利用することができる。
【0081】
本マイクロ分析チップを用いて、下記の手順を行うことにより、メタボリックシンドロームの発症に関わるアディポネクチン等の特定タンパク質を測定できるので、メタボリックシンドロームの判定を行うことができる。
【0082】
(1)検出用電極17上に抗体を固定
(2)第1の導入流路4から、前処理(分離、希釈、分解)後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液を、メイン流路14に導入し、一定時間停止後、排出。
(3)第2の導入流路5から、洗浄用バッファー溶液を、メイン流路14に導入し、排出。
(4)第3の導入流路6から、基質溶液を導入し、一定時間停止。
(5)電気化学検出により、血液サンプル中の特定タンパク質の量を測定。
【0083】
本構成により、免疫分析法による特定タンパク質の測定を簡便かつ短時間に行うことが可能となる。また、メタボリックシンドロームの発症に関わるアディポネクチンの量を測定することにより、メタボリックシンドロームの判定を簡便かつ精度良く行うことができる。さらに、マイクロ分析チップを用いることにより、システムの小型化、低コスト化が可能となり、携帯機器への応用が容易になるという利点がある。
【0084】
特に、第1〜第3の導入流路の最小径(最小溝幅)が異なっているので、例えば粘性の高い液(血液サンプル)には最小径の大きい第1の導入流路を用い、粘性の低い液(洗浄液、基質溶液)には最小径の小さい第2又は第3の導入流路を用いることにより、送液制御が容易となる利点がある。
【0085】
本実施の形態では、電気化学的検出を行う場合を示したが、光学的検出を行っても構わない。例えば、メイン流路14部に抗体等を固定化し、抗原を含む液を第1の導入流路から流して抗原抗体反応させ、洗浄液を第2の導入流路から流して洗浄し、蛍光色素を付けた標識抗体を含む液を第3の導入流路から流して抗原抗体反応させ、メイン流路14部に励起光を照射してその蛍光の量により抗原の量を測定するという光学的測定に利用できる。
【0086】
(実施の形態2)
次に、上記実施の形態1とは異なる構造のマイクロ分析チップについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0087】
図7に、本実施の形態にかかるマイクロ分析チップを示す。
本実施の形態によるマイクロ分析チップは、導入流路4に、液体の前処理(固形分の分離、多量体の分解等)を行う前処理部50を備えること以外は、上記実施の形態1と同様である。このため、前処理部50についてのみ、構造を詳細に説明し、その他の説明は省略する。
【0088】
前処理部50の平面図を図8(a)に、側面図を図8(b)にそれぞれ示す。第1基板15と第2基板16は、実施の形態1と同様の加工方法を用いて形成されている。
【0089】
前処理部50は、測定対象とする血液サンプルに含まれる赤血球の除去を行う分離処理部51と、多量体の単量化を行う分解処理部52と、を備えている。分解処理部52は流路71上に形成されており、注入孔72内に分離処理部51が形成されている。
【0090】
流路71の幅と高さは特に限定はしないが、溶液の濡れと毛細管力によって溶液が浸透していくことが可能な寸法に設定される。高さに関して好ましくは、1μm〜5mm程度に設定される。幅に関して好ましくは1μm〜5mm程度に設定される。注入孔72は、直径が10μm以上の貫通孔でよい。
【0091】
分離処理部51には、赤血球を除去するためのフィルタが設置されている。フィルタの材質としては、ガラス繊維、金属、ナイロン、ポリエステル、カーボン等を用いることができる。中でも、赤血球を除去するためには、ガラス繊維が特に適している。フィルタは、1枚であってもよく、2枚以上を重ね合わせていてもよい。2枚以上重ねることにより、分離性能を向上することができる。
【0092】
分離処理部51は、フィルタによる分離方法に限定されるものでは無く、赤血球の除去を行うことができれば、例えばピラー構造物等によって、赤血球をせき止めて分離する構成であってもよい。
【0093】
分解処理部52には、加熱処理により血液中のタンパク質を単量化するためのヒーターが設置されている。ヒーターの材質には、ニッケル、クロム、タンタル、ニッケルクロム合金等が用いられる。
【0094】
分解処理部52は、加熱処理による分解方法に限定されるものでは無く、還元剤や界面活性剤との作用による方法等を用いる構成であっても構わない。
【0095】
本実施の形態では、分離処理部と分解処理部の両方を備えた構成であるが、片方のみであっても良い。また、希釈を行うための希釈処理部等を前処理部に設けてもよい。
【0096】
本前処理部50を用いることにより、注入孔72から注入した血液からフィルタにより赤血球を分離し、血液中のアディポネクチンを加熱処理により単量化することができる。したがって、本実施の形態によるマイクロ分析チップにより、外部で前処理を行うことなく、血液中のアディポネクチン濃度を、簡単かつ精度良く測定することが可能となるので、測定にかかる手間を簡略化できる。
【0097】
(実施例)
次に、実施例により本発明の説明を行うが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
本実施例は、上記実施の形態1にかかるものである。
図3および図4に、本実施例にかかるマイクロ分析チップを示す。
本実施例のマイクロ分析チップは、図3に示すように、液体をチップ内に導入する開放孔1、2、3をそれぞれ備えた第1〜第3の導入流路4、5、6と、2つの排出部7、8にそれぞれ接続された排出流路9、10と、空気孔11に接続された空気孔路12が、検出部13を備えたメイン流路14にそれぞれ接続されている。
【0099】
上記のマイクロ分析チップは、図4に示すように、2つの基板から構成されている。第1基板15には、メイン流路14用の溝、開放孔1、2、3用の貫通孔、第1〜第3の導
入流路4、5、6用の溝、排出流路9、10用の溝、排出部7、8用の穴、空気孔路12用の溝、空気孔11用の貫通孔が形成されている。
【0100】
第2基板16には、検出用電極17、18、19、エレクトロウエッティングバルブ用作動電極20、21、22、23、24、エレクトロウエッティングバルブ用参照電極26、27、28、29、電極パッド30、疎水部31が形成され、排出部に吸収体32、33が載置されている。
【0101】
第1基板15内の、メイン流路14用の溝、開放孔1、2、3用の貫通孔、第1〜第3
の導入流路4、5、6用の溝、排出流路9、10用の溝、排出部7、8用の穴、空気孔路12用の溝、空気孔11用の貫通孔の作製には、金型による樹脂成型方法を用いた。金型の作製には、シリコン基板にフォトリソ法によりレジストパターン形成後、ドライエッチングプロセス法によるエッチングを行った。作製された金型型枠を設置し、シリコンゴム(ポリジメチルシロキサン)(東レダウコーニング社製 ジルポット184)を厚みが2mmになるまで流し込み、100℃、15分の加熱を行い、硬化させた。硬化後、金型と硬化したシリコンゴムを金型から分離させ、シリコンゴムを縦15mm、横30mm、厚み2mmに整形し、第1基板を作製した。
【0102】
第1基板15に、開放孔1、2、3は直径2mmの貫通孔、空気孔11は直径1mmの貫通孔としてポンチ加工によって形成した。また、排出部7、8は全体が第1基板15を貫通した形状をしており、金型により形成した。
【0103】
メイン流路14の幅は1000μm、排出流路9、10の幅は50μm、空気孔路12の幅を500μmに設定した。流路高さは全て50μmとした。
【0104】
導入流路は、流す液の粘度等の特性に合わせて幅を設定しており、第1の導入流路4の幅は400μm、第2の導入流路5の幅は300μm、第3の導入流路6の幅は300μmとした。(バルブ用作動電極部を除く。)
【0105】
第2基板は、厚み600μmの石英基板をダイシングソーで縦17mm、横34mmに切断して作製した。
【0106】
第2基板16にはあらかじめ、検出用電極17、18、19、エレクトロウエッティングバルブ用作動電極20、21、22、23、24、エレクトロウエッティングバルブ用参照電極26、27、28、29、電極パッド30を作製した。
【0107】
エレクトロウエッティングバルブ用作動電極20、21、22、23、24の作製には、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によってチタン層50nm、金層100nmを形成後、リフトオフ法によってパターニングされた電極を形成した。エレクトロウエッティングバルブ用作動電極のサイズは縦500μm、横500μmとした。
【0108】
金薄膜表面には、自然空気に曝すことで、表面にカーボン堆積物などからなる薄膜(接触角60°〜85°)が形成されている。
【0109】
エレクトロウエッティングバルブ用参照電極26、27、28、29の作製には、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によって銀層を1μm形成し、リフトオフ法によってパターニングされた電極を形成した。電極作製後、Agの表面の塩化処理を行い、Ag/AgCl層の電極を作製した。塩化処理には0.1M塩酸中で電極に+100mV、50秒の電圧印加を行った。エレクトロウエッティングバルブ用参照電極のサイズは縦1000μm、横1000μmとした。
【0110】
本実施例では、エレクトロウエッティングバルブとして、作動電極と参照電極の2電極方式を用いたが、対極を加えた3電極方式を用いても良い。また、マイクロバルブは、エレクトロウエッティングバルブ以外であってもよく、例えばダイアフラム型バルブなどの液体の流れを停止、または開始できるものであればよい。
【0111】
作動電極上の導入流路の幅は、他の部分より幅を狭くしており、流す液の粘度等の特性に合わせて幅を設定している。作動電極上の第1の導入流路4の幅は100μm、第2の導入流路5の幅は50μm、第3の導入流路6の幅は30μmとした。
【0112】
検出用電極17(作用電極)、検出用電極19(対極)および電極パッド30の作製には、同様に、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によってチタン層50nm、金層100nmを形成後、リフトオフ法によってパターニングされた電極を形成した。検出用電極17のサイズは縦1000μm、横1000μm、検出用電極19のサイズは縦1000μm、横1500μmとした。電極パッド30は、各電極のサイズが1000μm、横1500μmで、0.05インチ間隔で形成されている。
【0113】
検出用電極18(参照電極)の作製には、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によって銀層を1μm形成し、リフトオフ法によってパターニングされた電極を形成した。電極作製後、Agの表面の塩化処理を行い、Ag/AgCl層の電極を作製した。塩化処理には0.1M塩酸中で電極に+100mV、50秒の電圧印加を行った。
【0114】
本実施例では、縦2000μm、横6000μmの2つの排出部7、8が設けられている。排出部7、8は、第1基板15側が大気開放されており、第2基板16にコットン製の吸収体32、33が載置されている。
【0115】
排出流路9、10には、エレクロトウエッティングバルブが設けられている。排出流路9、10にバルブ用作動電極23、24が、メイン流路14の排出流路近傍にバルブ用参照電極29が、それぞれ形成されている。
【0116】
また、空気孔路12とメイン流路14との境界近傍に疎水部31が設けられている。疎水部31は、サイズが縦500μm、横200μmで、フッ素系の疎水剤(ハーベス社製
デュラサーフ)を第2基板16に設けることにより形成されている。
【0117】
第1基板15と第2基板16に100W、酸素流量30sccm、60秒の条件で酸素プラズマ処理を行い基板表面の親水性を高めた後、第1基板15と第2基板16とを自己吸着作用によって貼り合わせ、実施例1にかかるマイクロ分析チップを作製した。
【0118】
実施例1にかかるマイクロ分析チップを用いて、液を流す試験を行った。
【0119】
開放孔1から前処理後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液(第1液)、開放孔2から洗浄用バッファー溶液(第2液)、開放孔3から基質溶液(第3液)を、それぞれ2μLずつ注入した。
【0120】
注入した液は、毛細管現象によりそれぞれの導入流路を移動し、それぞれの導入流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。第1〜第3液は、それぞれ粘度等の特性が異なっているが、導入流路の幅を、流れる液の特性に合わせて設定していることにより、全ての液がそれぞれの導入流路をスムーズに移動することができた。
【0121】
次に、作動電極20と参照電極26の間に電圧印加することにより、第1の導入流路4内のバルブがONし、第1液がメイン流路14内に導入された。印加した電圧は1Vとした。メイン流路14内に導入された第1液は、毛細管現象によりメイン流路を移動し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0122】
次に、作動電極23と参照電極29の間に1Vの電圧を印加することにより、排出流路9内のバルブがONし、第1液が排出部7に排出された。排出された第1液は、排出部7内の吸収体32に吸収され、メイン流路内から全て排出された。
【0123】
空気孔11に接続された空気孔路12を設けていない場合、第1液の排出時に、第2ないし第3の導入流路5、6内の別の液が移動し、メイン流路内に誤って導入されることがあったが、空気孔路12を設けることにより、このような誤動作を防止することができ、安定して液の排出を行うことができた。
【0124】
次に、作動電極21と参照電極27の間に1Vの電圧印加することにより、第2の導入流路5内のバルブがONし、第2液がメイン流路14内に導入された。メイン流路14内に導入された第2液は、毛細管現象によりメイン流路を移動し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0125】
次に、作動電極24と参照電極29の間に1Vの電圧を印加することにより、排出流路10内のバルブがONし、第2液が排出部8に排出された。排出された第2液は、排出部8内の吸収体33に吸収され、他のバルブが誤動作することなく、メイン流路内から全て排出された。
【0126】
最後に、作動電極22と参照電極28の間に1Vの電圧印加することにより、導入流路6内のバルブがONし、第3液がメイン流路14内に導入し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0127】
よって、本発明によると、特性の異なる複数の液の送液および排出を、外部動力源なしで、安定に行うことができることがわかる。
【0128】
次に、実施例1にかかるマイクロ分析チップを用いて、免疫分析法による特定タンパク質の測定を行った。
【0129】
特定タンパク質としてメタボリックシンドロームの発症に関わるアディポネクチンの濃度の測定を行った。
【0130】
予め、メイン流路14内の検出電極17に、抗体(R&D MAB10651)を固体させた。抗体の固定方法は、37℃で10分間インキュベーションし物理吸着固定により行った。
【0131】
血液サンプルの代わりに、アディポネクチン(R&D 1065AP)の濃度を変えたサンプル液を用意し、下記の手順で測定を行った。
【0132】
(1)第1の導入流路4から、アディポネクチン(0、10、100、500ng/mL)と酵素(ALP)標識抗体(2.5μg/mL)の混合液2μLを、メイン流路14に導入し、5分間停止後、排出。
(2)第2の導入流路5から、洗浄用のトリス緩衝溶液(THAM(tris hydroxymethyl aminomethane):10mM、NaCl:137mM、MgCl:1mM、PH9.0)2μLを、メイン流路14に導入し、排出。
(3)第3の導入流路6から、基質(pAPP(p-Aminophenyl phosphate))溶液(1mM)2μLを、メイン流路14に導入し、停止。
(4)5分後に、酵素と基質とが反応して生成されるpAP(p-Aminophenol)を、検出部電極で電気化学的(サイクリックボルタンメトリー法)検出を行い、ピーク電流値のアディポネクチン濃度依存性を測定した。
【0133】
この測定結果を、図5に示す。アディポネクチン濃度が10〜500ng/mLの範囲で検量線が得られており、本発明により、免疫分析法による特定タンパク質の測定を簡便かつ短時間に行うことが可能であることがわかる。
【0134】
(実施例2)
次に、実施の形態1にかかる別の実施例について説明する。
本実施例にかかるマイクロ分析チップは、バルブ用作動電極とバルブ用作動電極部の導入流路形状以外は、図3および図4に示す実施例1と同様の構造である。
【0135】
実施例1と同様に、メイン流路14の幅を1000μm、排出流路9、10の幅を50μm、空気孔路12の幅を500μmに設定した。流路高さは全て50μmとした。
【0136】
それぞれの導入流路は、流す液の粘度等の特性に合わせて幅を設定しており、第1の導入流路4の幅は400μm、第2の導入流路5の幅は300μm、第3の導入流路6の幅は300μmとした。
【0137】
第2基板16にはあらかじめ、検出用電極17、18、19、エレクトロウエッティングバルブ用作動電極20、21、22、23、24、エレクトロウエッティングバルブ用参照電極26、27、28、29、電極パッド30を作製した。
【0138】
エレクトロウエッティングバルブ用作動電極20、21、22、23、24の作製には、フォトリソ法によりレジストをパターニング後、スパッタ法によってチタン層50nm、金層100nmを形成後、リフトオフ法によってパターニングされた電極を形成した。バルブ用作動電極のサイズは縦500μm、横500μmとした。
【0139】
電極作製後、フォトリソ法によって、エレクトロウエッティングバルブ用作動電極の内側に抜きパターンを形成後、プラズマ中でC48(八フッ化シクロブタン)ガスを導入し、フッ化炭素膜を50nm堆積させた。フッ化炭素膜の堆積には住友精密工業製のICP装置(MUC−21)を用いた。フッ化炭素膜を堆積後、リフトオフ法によってレジストおよびレジスト上に形成されたフッ化炭素膜を除去し、所望の形にフッ化炭素膜を形成した。フッ化炭素膜の接触角は、110°(室温25℃、純水(比抵抗18MΩ・cm)における)であった。
【0140】
作動電極上の導入流路の幅は、他の部分と同じにし、流す液の粘度等の特性に合わせて幅を設定している。作動電極上の第1の導入流路4の幅を400μm、第2の導入流路5の幅を300μm、第3の導入流路6の幅を300μmとした。
【0141】
実施例2にかかるマイクロ分析チップを用いて、実施例1と同様にして、液を流す試験を行った。
【0142】
開放孔1から前処理後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液(第1液)、開放孔2から洗浄用バッファー溶液(第2液)、開放孔3から基質溶液(第3液)を、それぞれ2μLずつ注入した。
【0143】
注入した液は、毛細管現象により導入流路を移動し、導入流路内のバルブ用作動電極の手前で停止した。それぞれの液で粘度等の特性が異なっているが、それぞれの導入流路の幅を、流れる液の特性に合わせて設定していることにより、全ての液が導入流路内をスムーズに移動することができた。
【0144】
次に、作動電極20と参照電極26との間に電圧印加することにより、第1の導入流路4内のバルブがONし、第1液がメイン流路14内に導入された。印加した電圧は1.5Vであった。メイン流路14内に導入された第1液は、毛細管現象によりメイン流路を移動し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0145】
次に、作動電極23と参照電極29の間に1.5Vの電圧を印加することにより、排出流路9内のバルブがONし、第1液が排出部7に排出された。排出された第1液は、排出部7内の吸収体32に吸収され、メイン流路内から全て排出された。
【0146】
次に、作動電極21と参照電極27の間に1.5Vの電圧印加することにより、第2の導入流路5内のバルブがONし、第2液がメイン流路14内に導入された。メイン流路14内に導入された第2液は、毛細管現象によりメイン流路を移動し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0147】
次に、作動電極24と参照電極29の間に1.5Vの電圧を印加することにより、排出流路10内のバルブがONし、第2液が排出部8に排出された。排出された第2液は、排出部8内の吸収体33に吸収され、他のバルブが誤動作することなく、メイン流路内から全て排出された。
【0148】
最後に、作動電極22と参照電極28の間に1.5Vの電圧印加することにより、第3の導入流路6内のバルブがONし、第3液がメイン流路14内に導入し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0149】
作動電極上にフッ化炭素膜を形成したことにより、作動電極上の接触角が90度よりも大きくなり、電圧を印加しない状態で、バルブで液を停止しやすくなり、バルブ動作をより安定に行うことができた。
【0150】
よって、本発明によると、特性の異なる複数の液の送液および排出を、外部動力源なしで、安定に行うことができることがわかる。
【0151】
実施例2にかかるマイクロ分析チップを用いて、実施例1と同様にして、免疫分析法による特定タンパク質の測定を行った。その結果、アディポネクチン濃度が10〜500ng/mLの範囲で検量線が得られた。よって、本発明により、免疫分析法による特定タンパク質の測定を簡便かつ短時間に行うことが可能であることがわかる。
【0152】
(実施例3)
次に、実施の形態1にかかるさらに別の実施例について説明する。
本実施例にかかるマイクロ分析チップは、バルブ用作動電極部の導入流路形状以外は、図3および図4に示す実施例1と同様の構造である。
【0153】
実施例1と同様に、メイン流路14の幅を1000μm、排出流路9、10の幅を50μm、空気孔路12の幅を500μmに設定した。流路高さは全て50μmとした。
【0154】
導入流路は、流す液の粘度等の特性に合わせて幅を設定しており、第1の導入流路4の幅は400μm、第2の導入流路5の幅は300μm、第3の導入流路6の幅は300μmとした。(バルブ用作動電極部を除く。)
【0155】
図6に示すように、作動電極部の導入流路の幅は、導入流路の上流より下流の方が大きくなるようにしており、流す液の粘度等の特性に合わせて幅を設定している。作動電極上の第1の導入流路4の幅を上流部で100μm、下流部で300μm、第2の導入流路5の幅を上流部で50μm、下流部で300μm、第3の導入流路6の幅を上流部で30μm、下流部で300μmとした。
【0156】
実施例3にかかるマイクロ分析チップを用いて、実施例1と同様にして、液を流す試験を行った。
【0157】
開放孔1から前処理後の血液サンプルと酵素標識抗体の混合液(第1液)、開放孔2から洗浄用バッファー溶液(第2液)、開放孔3から基質溶液(第3液)を、それぞれ2μLずつ注入した。
【0158】
注入した液は、毛細管現象によりそれぞれの導入流路を移動し、それぞれの導入流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。それぞれの液で粘度等の特性が異なっているが、導入流路の幅を、流れる液の特性に合わせて設定していることにより、全ての液が導入流路内をスムーズに移動することができた。
【0159】
次に、作動電極20と参照電極26に間に電圧印加することにより、第1の導入流路4内のバルブがONし、第1液がメイン流路14内に導入された。印加した電圧は1Vであった。メイン流路14内に導入された第1液は、毛細管現象によりメイン流路を移動し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0160】
次に、作動電極23と参照電極29の間に1Vの電圧を印加することにより、排出流路9内のバルブがONし、第1液が排出部7に排出された。排出された第1液は、排出部7内の吸収体32に吸収され、メイン流路内から全て排出された。
【0161】
次に、作動電極21と参照電極27の間に1Vの電圧印加することにより、第2の導入流路5内のバルブがONし、第2液がメイン流路14内に導入された。メイン流路14内に導入された第2液は、毛細管現象によりメイン流路を移動し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0162】
次に、作動電極24と参照電極29の間に1Vの電圧を印加することにより、排出流路10内のバルブがONし、第2液が排出部8に排出された。排出された第2液は、排出部8内の吸収体33に吸収され、他のバルブが誤動作することなく、メイン流路内から全て排出された。
【0163】
最後に、作動電極22と参照電極28の間に1Vの電圧印加することにより、第3の導入流路6内のバルブがONし、第3液がメイン流路14内に導入し、排出流路内のバルブ用作動電極に達した時点で停止した。
【0164】
作動電極部の導入流路幅をそれぞれ、上流より下流の方が大きくなるようにすることにより、バルブで液を停止しやすくなり、且つ、導入流路とメイン流路との接続部で液が流れ易くなり、送液をより安定して行うことができた。
【0165】
よって、本発明によると、特性の異なる複数の液の送液および排出を、外部動力源なしで、安定に行うことができることがわかる。
【0166】
実施例3にかかるマイクロ分析チップを用いて、実施例1と同様にして、免疫分析法による特定タンパク質の測定を行った。その結果、アディポネクチン濃度が10〜500ng/mLの範囲で検量線が得られた。よって、本発明により、免疫分析法による特定タンパク質の測定を簡便かつ短時間に行うことが可能であることがわかる。
【0167】
(実施例4)
図9に、実施の形態2にかかる本実施例にかかるマイクロ分析チップを示す。
本実施例によるマイクロ分析チップは、第1の導入流路4の上流に、液体の分離および分解処理を行う前処理部50を備える。前処理部50以外は、上記実施例1と同じ構成である。
【0168】
血液の前処理部50の、平面図を図10(a)に、側面図を図10(b)にそれぞれ示す。第1基板15と第2基板16は、上記実施例1と同様の加工方法を用いて形成されている。
【0169】
前処理部50は、血液サンプルに対して赤血球を除去するフィルタ54と、多量体の単量化を行うヒーター55と、を備えている。ヒーター55は流路71上に設けられており、フィルタ54は注入孔72内に設けられている。
【0170】
流路71の幅は1000μm、高さは50μmに設定した。注入孔72の直径を3mmに設定し、注入孔72内部に、フィルタ54を配置した。フィルタ54には、ワットマン製ガラス繊維ろ紙1GF/Dを外径3mmにカットし、2枚を重ねた物を使用した。
【0171】
流路71内には、加熱処理により血液中のタンパク質を単量化するためのヒーター55が設置されている。ヒーター55にはニッケルクロム合金薄膜ヒーターを用いており、通電させることにより加熱を行った。
【0172】
本実施例によるマイクロ分析チップを用いて、模擬血液サンプルによる前処理実験を行った。模擬血液には多量体ヒトアディポネクチンを含むウシアルブミン80mg/mL水溶液中に模擬血球としてpolyscience製マイクロビーズmicrosphereを4.5×106個/μL濃度で添加したものを用いた。
【0173】
注入孔72から模擬血液を注入した時の前処理部50の、平面図を図11(a)に、側面図を図11(b)にそれぞれ示す。
【0174】
注入孔72から注入した模擬血液サンプルから、フィルタ54により模擬血球を分離し、模擬血球成分が除去されたサンプル62を得た。血球成分が除去されたサンプル62を加熱処理することにより単量化されたサンプル63を得ることができる。血球成分が除去されたサンプル62中のアディポネクチンの単量化には、100℃、5分の条件で加熱処理を行った。本実施例によるマイクロ分析チップにより、血球の分離、単量化を行うことが可能であった。
【0175】
したがって、本実施例によるマイクロ分析チップにより、外部で前処理を行うことなく、血液中のアディポネクチン濃度を、簡単かつ精度良く測定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上説明したように、本発明によると、外部動力を必要とすることなく、マイクロ分析チップ内で複数の特性の異なる液の送液制御を安定に行うことが可能となり、血液中の特定タンパク質の測定が安定かつ簡易にできる。このようなマイクロ分析チップはメタボリックシンドローム判定用分析システム等として応用が可能であり、産業上の意義は大きい。
【符号の説明】
【0177】
1、2、3 開放孔
4 第1の導入流路
5 第2の導入流路
6 第3の導入流路
7、8 排出部
9、10 排出流路
11 空気孔
12 空気孔路
13 検出部
14 メイン流路
15 第1基板
16 第2基板
17、18、19 検出用電極
20、21、22、23、24 エレクトロウエッティングバルブ用作動電極
26、27、28、29 エレクトロウエッティングバルブ用参照電極
30 電極パッド
31 疎水部
32、33 吸収体
34 引き出し電極
50:前処理部
51:分離処理部
52:分解処理部
54:フィルタ
55:ヒーター
61:血液
62:血液(血球除去後)
63:血液(単量化処理後)
71:流路
72:注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出部及び/又は反応部を備えるメイン流路と、
前記検出部及び反応部の何れよりも上流側から前記メイン流路に液を導入する第1の導入流路及び第2の導入流路と、
前記第1の導入流路及び第2の導入流路のそれぞれ設けられた、液の流れを開閉する第1のバルブ及び第2のバルブと、
前記メイン流路の上流側に接続された空気孔と、
前記空気孔への液の流入を防止する流入防止部と、
前記メイン流路の下流側に接続された排出部と、を備え、
毛細管力を駆動力として送液を行うマイクロ分析チップ。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記メイン流路と前記空気孔とが、空気孔路を介して接続されている、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記流入防止部は、疎水部からなり、且つ、前記空気孔路と前記メイン流路との境界近傍に設けられている、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記メイン流路と前記排出部とが、排出流路を介して接続されている、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記排出部は、前記排出流路の下流端に接続された吸収体を備える、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記排出流路は、液の流れを開閉するバルブを備える、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブが、それぞれエレクロトウエッティングバルブである、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記メイン流路用の溝、前記第1の導入流路用の溝、及び前記第2の導入流路用の溝が形成された第1基板と、前記第1基板の蓋をする第2基板と、が重ね合わされてなる、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項9】
請求項7に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブの作動電極が、金属薄膜からなる、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項10】
請求項7に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブの作動電極が、金属薄膜と該金属薄膜上に形成された薄膜とからなる、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項11】
請求項10に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記薄膜の厚みが、100nm以下である、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項12】
請求項10に記載のマイクロ分析チップにおいて、
25℃で比抵抗が18MΩ・cmである純水に対する前記薄膜の接触角が、80度以上である、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項13】
請求項10に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記薄膜が、フッ素含有物質又はチオール基を含む物質からなる、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項14】
請求項7、9ないし13のいずれか1項に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブの動作電位が、何れも3V以下である、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記検出部でタンパク質の検出を行う、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。
【請求項16】
請求項15に記載のマイクロ分析チップにおいて、
前記タンパク質がアディポネクチンである、
ことを特徴とするマイクロ分析チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−174949(P2011−174949A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133129(P2011−133129)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【分割の表示】特願2008−331416(P2008−331416)の分割
【原出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】