説明

マイクロ反応装置

【課題】分岐部での分岐後の試料濃度の不均一を抑える。
【解決手段】試料導入部は流れに沿った分岐部間の流路にそれぞれ濃度分布調整部24を備えている。濃度分布調整部24は、微粒子分散流体試料が流れる主流路32aと、主流路32aの両方の側壁側に主流路32aとは上流側で隔壁30a,30bにより分離され下流側で合流する副流路32b,32cとからなる。隔壁30a,30bには試料中の微粒子を通過させない大きさの隙間34が設けられていて、主流路32aから副流路32b,32cに輸送用流体のみが流れ込み、下流において副流路32b,32cの輸送用流体が主流路32aの流れの側方に合流するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、μTAS(Micro Total Analysis Systems)技術を用いた、微量な試料について多数の試験を行うためのマイクロ反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、細胞の薬剤や毒物に対する影響を評価するための細胞を対象とした分析装置についてみると、細胞に対して多種類の薬剤の反応を測定する場合、一般に、マイクロプレートと呼ばれる24〜384個の容器を1枚のプレート上に形成したものが用いられている。また近年、微細加工技術を用いて数cm程度のプレートの上に1000個以上の容器を形成し、細胞分析を行った報告もなされているが、いずれのプレートも個々の容器は開口部が開放された凹部として形成されている。
【0003】
そのような開放系の容器をもつマイクロプレート等の容器を分析容器としてそこに細胞を導入する場合、手動又はロボットによりマイクロピペット等の分注器具を用いて容器内に細胞を注入している。
【0004】
しかしながら、このような細胞導入方法の場合、容器個数に比例して細胞導入に要する時間が増える。また1プレート上の容器個数が増えるにしたがって、1容器あたりの体積が小さくなるため、細胞培養液が蒸発して培養液濃度が変化するまでの時間が短くなる。そのため、細胞導入に要する時間を短くしなければならなくなるので、1プレート上の容器個数が増えると細胞導入時間が問題になってくる。
【0005】
そのような開放系の容器の問題を解決するために、細胞培養液の蒸発を抑えながら複数の分析容器に細胞を分注することのできるようにするために、μTAS技術を用いて、微量な試料を効率よく分析するためのマイクロ反応装置が多く報告されている。そのようなマイクロ反応装置は、基体内に形成された複数個の細胞分析容器と、試料導入口から導入された細胞試料を基体内で流しながら全ての細胞分析容器に分配する試料導入部と、全ての細胞分析容器から試料排出口につながる試料排出流路とを備えている。
【0006】
そのようなマイクロ反応装置で、分析の効率をより向上させるには、集積する細胞分析容器数を増やすことが望ましいが、細胞分析容器数数を増加させると各細胞分析容器に分析細胞を均等に分配することが困難になってしまう。
【0007】
基体内に形成された複数の分析容器に試料を均等に分配することを目的として、本発明者らは受動的な試料導入法を提案している(特許文献1、非特許文献1参照。)。受動的な試料導入法とは、流路を流れる試料に相互作用する力やエネルギーを外部から与えることなく、流路を段階的に分岐させることによって流路を流れる試料を分配することを意味している。
【0008】
図6(A),(B)にその提案された方法の概念図を示す。一つの試料導入口(この場合は細胞導入口)2から基体内の細胞導入部4が均等に分岐を繰り返し、基体内の分析ウエルである複数の細胞分析容器6に接続されている。試料導入口2から導入された微粒子分散流体試料中の細胞は、細胞導入部4の流路を通って均等に分配されながら複数の細胞分析容器6に導入される。その際、導入された細胞は細胞導入部4の各分岐点においてほぼ均等に分配され、1回の導入操作によって複数の分析ウエル6にほぼ均等に細胞が導入される。
この方法は、マイクロプレートと異なり各分析容器は蓋をされた状態であるため、分析容器の体積が小さくなった場合でも細胞培養液などの液の蒸発が抑えられる。
【0009】
提案された図6の方法を用いることにより、一度の動作で多数の分析ウエル6に同時に試料を導入することが可能であるが、流体試料が細胞分散溶液のように、固体成分と輸送用液体からなり、かつ固体成分の拡散係数が十分に大きくない場合は、各分析ウエル6に導入される量(例えば細胞の数)にばらつきが生じてしまう。これは、図7(A),(B)に示されるように、1段目の分岐後に流路断面方向での試料の濃度に差が生じ、次段以降の分岐では均等な濃度で試料が分配されないことが原因となっている。すなわち、1段目の分岐部8では試料導入口2から導入された試料が流路断面方向の中央部で濃度が高くなる対称的な濃度分布14をもっている。これは流路壁面との摩擦のために流路中央部で多く試料が流れるためである。そのため、その分岐部8では試料が流路断面方向の中央で分割されて分岐するため均等に分割されるが、分岐された後の試料の流路断面方向での濃度分布16−1,16−2は非対称的な濃度分布となる。その濃度分布16−1,16−2を維持したまま次段の分岐部10で流路断面方向の中央で分割されるので、その分岐部10での分岐後は濃度分布18−1,18−2として示されるように試料の濃度に差が生じる。さらに、次段以降の分岐部が存在する場合は、分岐後の試料濃度の不均一が強調されることになる。
【0010】
そこで、このような試料分配方法を用いたマイクロ反応装置において分岐部での分岐後の試料濃度の不均一を抑えることを目的として、本発明者らは、各分岐の後に流路を一旦分岐させ、立体交差させた後に再度合流させることで、分岐後の流路断面方向の試料濃度の偏りを補正し、最終的に各分析ウエルに導入される試料の量の偏りを改善する方法を提案している(非特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2006−087336号公報
【非特許文献1】M.Kanai, et.al. “A Multi Cellular Diagnostic Device for High-throughput Analysis”,Proceeding of μTAS2004, pp.126-128, 2004
【非特許文献2】K.Kawai, et.al, “Improved Passive Cell Distributing Method for Micro Cellular Diagnostic Well Array”, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 45, No. 6B, 2006, pp. 5607-5613
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献2で提案している方法を用いることにより、分岐後の流路断面方向の試料濃度の偏りを補正し、最終的に各分析ウエルに導入される試料の量の偏りを改善することができる。
【0012】
本発明もこのような試料分配方法を用いたマイクロ反応装置を対象としたものであり、非特許文献2で提案している方法とは別の方法によって分岐部での分岐後の試料濃度の不均一を抑えることを目的とするものである。
【0013】
このような問題は、対象が細胞である場合に限らず、微粒子が液中に分散した微粒子分散流体試料を扱う場合の共通の問題であるので、本発明は細胞分散溶液も含めて広く微粒子分散流体試料を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基体内に形成された複数個の分析ウエルと、試料導入口から導入され輸送用流体中に微粒子が分散した微粒子分散流体試料を基体内で流しながら全ての分析ウエルに分配する試料導入部と、全ての分析ウエルから試料排出口につながる試料排出流路とを備えたマイクロ反応装置であって、試料導入部は、少なくとも2段階の分岐部を備えて試料導入口から全ての分析ウエルに対して段階的に、かつ均等に分岐する流路構造を有し、試料導入部における分岐部間の流路にはその流路での流路断面方向の微粒子濃度分布を調整する濃度分布調整部が設けられている。
【0015】
濃度分布調整部は微粒子分散流体試料が流れる主流路と、主流路の少なくとも一方の側壁側に主流路とは上流側で隔壁により分離され下流側で合流する副流路とからなり、前記隔壁には試料中の微粒子を通過させない大きさの隙間が設けられていて、主流路から副流路に輸送用流体のみが流れ込み、下流において副流路の輸送用流体が主流路の流れの側方に合流するようになっている。
【0016】
濃度分布調整部の一形態では、副流路は主流路の両方の側壁側に設けられており、主流路に入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度が高くなっている側の副流路から主流路に合流する流量の方が他方の副流路から主流路に合流する流量よりも多くなるように、副流路の大きさと前記隔壁の隙間の大きさの少なくとも一方が調整されている。
【0017】
濃度分布調整部の他の形態では、副流路は主流路に入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度が高くなっている側で、主流路の一方の側壁側にのみ設けられている。
試料排出流路は試料排出口に向かって段階的に、かつ均等に合流を繰り返す流路構造をもっていることが好ましい。
【0018】
このマイクロ反応装置の好ましい用途の1つは細胞分析装置である。その場合、試料が細胞培養液に生体細胞が分散した細胞分散溶液となり、分析ウエルが試料細胞を分析するための細胞分析容器となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、試料導入部における分岐部間の流路にその流路での流路断面方向の微粒子濃度分布を調整する濃度分布調整部が設け、濃度分布調整部を微粒子分散流体試料が流れる主流路と、主流路と下流側で合流する副流路とからなるように構成したので、主流路を流れる固体試料の流れが、副流路を流れる輸送用液体により流路の中央側に位置するよう補正され、各分岐後の流路断面方向の試料濃度の偏りが補正されて、最終的に各分析用容器に導入される試料の量の偏りを改善することができる。
【0020】
そして、本発明の濃度分布調整部は流れに沿って主流路の側方に副流路を配置したものとしたので、流路構造は同一平面状の流路構造により構成されるため、フォトリソグラフィー法とエッチング法を用いて作製を行う場合、流路形成に関しては1つのフォトマスクのみで作製を行うことが可能であり、立体交差等を含む構造にくらべて安価に作製することができる。また、樹脂材料を用いた射出成形法やホットエンボス法により作製することもでき、より安価に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の実施例を、以下、図面に基づいて説明する。
図1は一実施例の試料導入側の部分を示している。全体の概略的な構造は、図6(A),(B)に示されたものと同じく、基体内に形成された複数個の分析ウエル6と、試料導入口2から導入され輸送用流体中に微粒子が分散した微粒子分散流体試料を基体内で流しながら全ての分析ウエル6に分配する試料導入部4aと、全ての分析ウエル6から試料排出口7につながる試料排出流路9とを備えている。
【0022】
試料導入部は図1では符号4aとして示されている。試料導入部4aは、少なくとも2段階の分岐部8,10,12を備えて試料導入口2から全ての分析ウエル6に対して段階的に、かつ均等に分岐する流路構造を備えている。この実施例では、一例として8個の分析ウエル6が設けられているので、それら8個の分析ウエル6に試料を分配するために、3段階の分岐部8,10,12が設けられている。
【0023】
試料導入部4aは流れに沿った分岐部8,10間の流路20a,20b、及び分岐部10,12間の流路22a〜20dにそれぞれ濃度分布調整部24を備えている。濃度分布調整部24はそれが配置されている流路での流路断面方向の微粒子濃度分布が対称的になるように調整する機能を備えたものである。
【0024】
濃度分布調整部24の一例を図2に示す。濃度分布調整部24は、微粒子分散流体試料が流れる主流路32aと、主流路32aの両方の側壁側に主流路32aとは上流側で隔壁30a,30bにより分離され下流側で合流する副流路32b,32cとからなる。隔壁30a,30bには試料中の微粒子を通過させない大きさの隙間34が設けられていて、主流路32aから副流路32b,32cに輸送用流体のみが流れ込み、下流において副流路32b,32cの輸送用流体が主流路32aの流れの側方に合流するようになっている。図2中に符号36として大きさが誇張されて示されている粒子は、微粒子分散流体試料の輸送用流体中に分散した細胞などの微粒子を表しており、隔壁30a,30bの隙間34が微粒子36よりも小さいことを示している。
【0025】
この実施例では、副流路32b,32cは主流路32aの両方の側壁側に設けられており、主流路32aに入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度が高くなっている側の副流路32bから主流路32aに合流する流量の方が他方の副流路32cから主流路32aに合流する流量よりも多くなるように、副流路32bの幅の方が副流路32cの幅よりも大きく設定されている。この場合、分岐部8,10は1流路を2流路に分岐するT字型分岐部であるので、その分岐部での流体導入側の流路(分岐前の流路)から見て奥側の部分で微粒子濃度が相対的に高くなるので、その側の副流路32bの幅の方が副流路32cの幅よりも大きくなっている。隔壁30a,30bに設けられた隙間34は全てで同じ大きさであり、均一に配列されている。
【0026】
濃度分布調整部24では、流体試料中の固体試料は中央の流路、すなわち主流路32aのみを通過し、輸送用流体は隔壁に設けられた隙間34を通り、両側の副流路32b,32cを通過し、下流側において再び主流路32aに合流する。このとき、両側の副流路32b,32cの幅を、副流路32bの幅の方が副流路32cの幅よりも大きく設定しておくことにより、主流路32aへの合流地点での流量のバランスを調整することができる。3つの流路32a,32b,32cの合流後、固体微粒子の流れは両側の副流路32b,32cからの輸送用液体の流れに挟み込まれる。その際、輸送流体の流量バランスにより、流路断面方向の一方に偏っていた粒子の流れを流路中央に補正することができる。
【0027】
濃度分布調整部24がこのような主流路と副流路の構造をもつことによって、流体試料が濃度分布調整部24を通過することで、濃度の高い領域が流路中央に導かれ、その結果として非対称であった濃度分布16が符号17で示されるように補正される。
【0028】
本発明のマイクロ反応装置を製造する方法は特に限定されるものではなく、微細加工技術を使用して実現することができる。図3に実際に作製した流路構造体の例を走査型電子顕微鏡(SEM)による観察画像として示す。図中の枠で囲った画像は隔壁30a,30bと隙間34を拡大して示した画像である。
【0029】
この実施例では、シリコン基板の表面にフォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程により、図3に示されるように底をもつパターンとして分析ウエル6、試料導入部4の流路、濃度分布調整部24及び試料排出流路9を形成した。濃度分布調整部24では、断面が一辺10μmの正三角形で底面に対して垂直方向に50μmの高さに直立した棒状体が等間隔に2列に配列されたマイクロピラーとして隔壁30a,30bを形成した。各棒状体配列は断面の三角形の一辺が一直線上に5μmの間隔で配列されるように配置した。したがって、隔壁30a,30bの隙間34は5μmである。それぞれのマイクロピラーの配列である隔壁30a,30b間の距離、すなわち主流路32aの幅は50μmとした。このようにパターンを形成したシリコン基板の表面に試料導入口2と試料排出口7をあけたホウ珪酸ガラス板を陽極接合することによりこのマイクロ反応装置を形成した。
【0030】
分析ウエル6、試料導入部4、濃度分布調整部24及び試料排出流路9は基板の片面のみに形成することができるため、フォトリソグラフィー法を用いてレジスト層に流路形状を形成する工程は1つのマスクのみで作製を行うことが可能である。
またさらに安価な作製方法として樹脂材料を用いた射出成形やホットエンボス法を用いることができる。
【0031】
図4に図3の実施例のデバイス構造において、コンピュータシミュレーションにより流体の流れを計算した結果を示す。このミュレーションにより、主流路32aの流れに対し、主流路32aの下流側で両側の副流路32b,32cから流体が合流しているのがわかる。
【0032】
この実施例を細胞分析装置として使用し、試料導入口2から試料として細胞培養液に生体細胞が分散した細胞分散溶液を注入すると、導入された細胞分散溶液中の細胞は試料導入部4aの流路を通り、濃度分布調整部24で濃度分布が補正されながら均等に分配されていき、細胞分析容器である分析ウエル6に導入される。このように、1回の導入操作によって複数の分析ウエル6に均等に細胞が導入される。
【0033】
図5にはこの実施例のマイクロ反応装置を使用し、直径が20μmのポリスチレン製の蛍光ビーズを分散させた溶液を試料として実際に導入実験を10回測定行い、各分析ウエル6に導入された蛍光ビーズの量を比較した結果を示す。分析ウエル6の数は8であり、端から順に番号をつけた。(A)は濃度分布調整部24を設けなかった場合を示す比較例、(B)は実施例の濃度分布調整部24を設けた場合である。図5の結果から、8つの分析ウエル6での蛍光ビーズ導入数の平均値の変動係数は、濃度分布調整部を設けなかった場合(A)は94.9%であったのに対し、本実施例による濃度分布調整部24を設けた場合(B)は29.3%に改善された。濃度分布調整部24を設けることにより、分析ウエル6での蛍光ビーズ導入数のばらつきが小さくなっていることが明らかである。
【0034】
本実施例では、濃度分布調整部24において副流路32b,32cが主流路32aの両方の側壁側に設けられているが、副流路は主流路32aに入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度が高くなっている側にのみ、この場合は副流路32bのみを設けていてもよい。主流路32aに入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度は副流路32b側で高くなっているので、他方の副流路32cがなくても濃度分布調整部24の下流側で副流路32bから主流路32aに輸送用流体を合流させることにより微粒子濃度が流路の中央部で高くなるように補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のマイクロ反応装置は、微量な1つの試料について同時に多数の試験を行うための反応装置として、例えば細胞の薬剤や毒物に対する影響を評価するための細胞分析装置などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】一実施例のマイクロ反応装置の主要部を概略的に示す平面図であり、分析ウエルへの試料導入側を示したものである。
【図2】同実施例における1つの濃度分布調整部近傍を拡大して示した平面図である。
【図3】同実施例の1つの分岐部近傍を示すSEM画像である。
【図4】同実施例における流体の流れを示すシミュレーション図である。
【図5】同実施例における試料導入実験の結果を示す図であり、(A)は濃度分布調整部を設けなかった比較例、(B)は濃度分布調整部を設けた実施例の場合である。
【図6】提案中の受動的試料導入法を採用したマイクロ反応装置を概略的に示す図であり、(A)は透視図として示す斜視図、(B)は試料の流れを示す要部斜視図である。
【図7】同受動的試料導入法における濃度分布の変化を示す図であり、(A)は試料導入部を示す平面図、(B)は分岐部における濃度分布の変化を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0037】
2 試料導入口
4a 試料導入部
6 分析ウエル
7 試料排出口
9 試料排出流路
8,10,12 分岐部
20a,20b,22a〜20d 分岐部間の流路
24 濃度分布調整部
30a,30b 隔壁
32a 主流路
32b,32c 副流路
34 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体内に形成された複数個の分析ウエルと、試料導入口から導入され輸送用流体中に微粒子が分散した微粒子分散流体試料を基体内で流しながら全ての前記分析ウエルに分配する試料導入部と、全ての前記分析ウエルから試料排出口につながる試料排出流路とを備えたマイクロ反応装置において、
前記試料導入部は、少なくとも2段階の分岐部を備えて前記試料導入口から全ての前記分析ウエルに対して段階的に、かつ均等に分岐する流路構造を有し、
前記試料導入部における分岐部間の流路にはその流路での流路断面方向の微粒子濃度分布を調整する濃度分布調整部が設けられ、
前記濃度分布調整部は微粒子分散流体試料が流れる主流路と、主流路の少なくとも一方の側壁側に主流路とは上流側で隔壁により分離され下流側で合流する副流路とからなり、前記隔壁には試料中の微粒子を通過させない大きさの隙間が設けられていて、主流路から副流路に輸送用流体のみが流れ込み、下流において副流路の輸送用流体が主流路の流れの側方に合流するようになっていることを特徴とするマイクロ反応装置。
【請求項2】
前記副流路は主流路の両方の側壁側に設けられており、主流路に入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度が高くなっている側の副流路から主流路に合流する流量の方が他方の副流路から主流路に合流する流量よりも多くなるように、副流路の大きさと前記隔壁の隙間の大きさの少なくとも一方が調整されている請求項1に記載のマイクロ反応装置。
【請求項3】
前記副流路は主流路に入る前の流体試料における流路断面方向での微粒子濃度が高くなっている側で、主流路の一方の側壁側にのみ設けられている請求項1に記載のマイクロ反応装置。
【請求項4】
前記試料排出流路は前記試料排出口に向かって段階的に、かつ均等に合流を繰り返す流路構造をもっている請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ反応装置。
【請求項5】
前記試料が細胞培養液に生体細胞が分散した細胞分散溶液であり、分析ウエルが試料細胞を分析するための細胞分析容器であって、このマイクロ反応装置が細胞分析装置を構成している請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロ反応装置。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−111798(P2008−111798A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296367(P2006−296367)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】