説明

マイクロ波加熱装置

【課題】加熱室内に設けた可視光透過用部材でのマイクロ波の損失を効果的に低減して被加熱物の加熱効率を高く維持させることができるマイクロ波加熱装置を提供すること。
【解決手段】金属部材を含む複数の壁面と、被加熱物を出し入れする開口と、該開口を開閉するドア110と、を有し、内部に被加熱物を収容して加熱調理する加熱室50と、加熱室50を構成する前記ドア110を含む壁面の一部に加熱室側に面して設けられた可視光透過用部材と、前記被加熱物を加熱するマイクロ波を発生するマグネトロン30と、加熱室50にマイクロ波を給電する給電部40と、を備え、前記可視光透過用部材は、設けられる壁面の縦横辺の寸法比よりも縦長であり、さらに加熱室内に向かって光学的に略水平方向に視野角を広げる構成とすることにより、面積を小さくすることができるのでマイクロ波の損失を抑えて高い効率で被加熱物に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物をマイクロ波で加熱するマイクロ波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロ波加熱装置は、一般的には電子レンジに代表されるように被加熱物を収容する加熱室を備え、この加熱室にマグネトロンなどのマイクロ波発生手段が発生するマイクロ波を供給して被加熱物を誘電加熱させる。
【0003】
マイクロ波を加熱室内に給電する技術としては、マイクロ波を伝送する導波管を備え、導波管から加熱室へと貫通する開口部にアンテナを設けて、マイクロ波を加熱室内に導出して放射するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11は、特許文献1に記載された従来のマイクロ波加熱装置を示すものである。図11に示すように、導波管14と加熱室2との結合孔20のほぼ中央にアンテナ15と水平な回転成分17が設けられ、アンテナ15はモータ19で回転しながらマイクロ波を加熱室2に放射するように構成されている。またアンテナの周囲にはヒータ10が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−181289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、給電部は加熱室に置かれた被加熱物に対してマイクロ波が効率的に供給されるように加熱室の何れかの壁面に設けられるが、さらにその壁面の周辺には給電部以外にも他の部材の配置が必要な場合がある。
【0007】
たとえば加熱室内のアンテナ周辺には被加熱物を輻射熱により加熱する輻射発熱体(ヒータ)や、加熱室の温度を検知するための温度検知手段、あるいはこれらを支持固定するための金具などの部材が存在することで、アンテナからのマイクロ波の放射はそれらの部材の形状や配置に影響を受けて電界分布が偏り、あるいは吸収されることで熱損失となって被加熱物の加熱効率が悪化する。
【0008】
また使用者の使い勝手をよくするために、被加熱物を出し入れするドアを設けた前面には窓を設けて、加熱室内部の被加熱物の存在や加熱中の状態を確認できるようにしたものがある。また加熱室の内部を照らす照明用の光源と照明光を透過する照明窓が備えてあり、加熱室内部の視認性が良くなるようにしているものがある。
【0009】
これらはマイクロ波を加熱室に遮蔽しつつ可視光を透過させることができるように、金属板に複数の孔を配列したもの(パンチング板)が従来から広く用いられている。
【0010】
しかし、パンチング板表面が加熱室にそのまま露出するとマイクロ波加熱装置の使用により(食品などの被加熱物から加熱により油分などが飛び散り)汚れが付着した場合の清掃性が良くなく、放置しておくと加熱室が視認し難くなったり照明効果が低下したりするため使い勝手が良くなかった。このため、電波を遮蔽するためのパンチング板とともにガラス板を加熱室に面するように設けて清掃性を良くするものがあった。
【0011】
一方で、誘電体のガラスが加熱室に露出することでマイクロ波を吸収して被加熱物の加熱効率が低下してしまう。これは加熱室に露出するガラス表面積やガラスの体積が大きいほど、つまり加熱室照明用のガラスや加熱室視認用の窓では加熱効率に影響が大きい。
【0012】
また、近年の食品調理用の電子レンジでは複数段に食品を載置できる棚を設けて加熱室の容積が大型化する傾向にあり、これにともなってドア窓や照明窓も大型化する傾向がある。このように加熱効率の向上には可視光透過用部材を構成するにおいて改善の余地があった。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、マイクロ波の放射の損失を減らして被加熱物の加熱効率を高くするマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
金属部材を含む複数の壁面と、被加熱物を出し入れする開口と、該開口を開閉するドアとを有し、内部に被加熱物を収容して加熱調理する加熱室と、該加熱室を構成する前記ドアを含む壁面の一部に加熱室側に面して設けられた可視光透過用部材と、前記被加熱物を加熱するマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、加熱室にマイクロ波を給電する給電部と、を備え、前記可視光透過用部材は、設けられる壁面の縦横辺の寸法比よりも縦長であり、さらに加熱室内に向かって光学的に略水平方向に視野角を広げる構成としたものである。
【0015】
これによって、可視光透過用部材の横幅(水平方向)寸法を小さくすることができるので加熱室における可視光透過用部材の露出が少なくなり、マイクロ波の放射は可視光透過用部材に吸収されて損失する割合が少なくなるので、高い効率で被加熱物に供給される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を加熱室内に効果的に放射して被加熱物の加熱効率を高く維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の正面断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の側面断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の正面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置における視認窓のW−W断面図
【図5】本発明の実施の形態1における給電部の断面図
【図6】本発明の実施の形態1における給電部の概略構成図
【図7】本発明の実施の形態1における他のアンテナ形状を示す図
【図8】本発明の実施の形態1におけるアンテナ板の形状を示す断面図
【図9】本発明の実施の形態1における反射壁の構成を示す断面図
【図10】本発明の実施の形態1における給電部の詳細断面図
【図11】従来のマイクロ波加熱装置の正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、金属部材を含む複数の壁面と、被加熱物を出し入れする開口と、該開口を開閉するドアと、を有し、内部に被加熱物を収容して加熱調理する加熱室と、該加熱室を構成する前記ドアを含む壁面の一部に加熱室側に面して設けられた可視光透過用部材と、前記被加熱物を加熱するマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、加熱室にマイクロ波を給電する給電部と、を備え、前記可視光透過用部材は、設けられる壁面の縦横辺の
寸法比よりも縦長であり、さらに加熱室内に向かって光学的に略水平方向に視野角を広げる構成にするものである。
【0019】
これにより、可視光透過用部材の横幅(水平方向)寸法を小さくしても同様の効果を得ることができるので加熱室における可視光透過用部材の露出面積を少なくできるので、マイクロ波の放射は可視光透過用部材に吸収されて損失する割合が少なくなり、高い効率で被加熱物に供給される。
【0020】
第2の発明は、第1の発明における可視光透過用部材は、ガラスの略水平方向の厚みを変化することで視野角を広げる構成とし、ガラスの加熱室に面する表面には導電性金属酸化物からなる導電性皮膜層を設けた構成にするものである。
【0021】
これにより、マイクロ波によって生じる電界を導電性皮膜層で消失させることができるので、可視光透過用部材でのマイクロ波の吸収を少なくすることができる。さらに水平視野角を広げるためにガラスの厚みを変化させてガラスの体積が増加しても、それにともなうマイクロ波の損失の増加を抑えることができるので、高い効率で被加熱物に供給される。
【0022】
第3の発明は、第1もしくは第2の発明における可視光透過用部材は、光源からの加熱室の照明光を透過する照明窓としたものである。光源からの照明は可視光透過用部材を透過して光学的に略水平方向に広がることで照明窓の横幅を小さくしても加熱室の広い範囲を照射することができる。
【0023】
これにより、マイクロ波の吸収を抑えることができるので、高い効率で被加熱物に供給される。さらに加熱室に複数段に被加熱物を載置できる棚を設けた場合においても、壁面の縦横辺の寸法比よりも縦長に可視光透過用部材を構成することで、被加熱物を載せる台などで加熱室を仕切られる場合においても、どの高さにも照明を照射できるものである。
【0024】
第4の発明は、第1もしくは第2の発明における可視光透過用部材は、外部から加熱室の内部を視認する加熱室ドアに設けた視認窓としたものである。
【0025】
これにより、ドアを設けた加熱室の開口面に対して視認窓の横幅寸法を小さくすることができ、それにともなってマイクロ波の吸収を抑えることができるので、高い効率で被加熱物に供給される。さらに加熱室に複数段に被加熱物を載置できる棚を設けた場合においても、視認窓は開口面に対して縦長に構成しているので、どの高さの被加熱物も視認することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1から図2は、本発明に係る実施形態のマイクロ波加熱装置である電子レンジの概略構成を示す要部断面図であり、図1は正面(被加熱物を入れるドア側)から見た断面構成図、図2は側面から見た断面構成図である。
【0028】
図1、図2において、食品等の被加熱物を収納する加熱室50は、金属材料からなる壁面を有し、加熱室50の上部の略中央にはマイクロ波を給電する給電部40を構成するマイクロ波導出孔41、アンテナ軸42、アンテナ板43を配し加熱室50にマイクロ波を放射する。
【0029】
導波管35は、マイクロ波発生手段であるマグネトロン30から放射されるマイクロ波を給電部40に伝送する伝送手段である。
【0030】
被加熱物である食品200は加熱室50に設けられた棚58に載置された台80に載せられる。棚58は使用者が食品の形態や加熱調理に応じて食品をのせる高さが選べるように両側の側面に複数段設けられている。
【0031】
加熱室50内の上部にはヒータ55が備えられてあり、マイクロ波による加熱以外にもヒータ55の輻射熱によって直接食品を加熱でき、複数の調理メニューに対応する。
【0032】
ヒータ55は電熱線を充填材とともに銅パイプに封止した構成である。加熱室の後ろ壁面に一端(端子側)を固定し先端(加熱室に露出する発熱部)側はヒータ支持部材56で保持する構成となっている。
【0033】
ヒータ支持部材56は熱硬化性の樹脂材料で構成され、ヒータの熱膨張に対応して自由度をもたせて支持する構成となっている。なお、ヒータ支持部材56の材料としては樹脂でなくても耐熱要求温度に応じて碍子などセラミックで構成してもよく、金具に比べてマイクロ波への影響を小さく構成できる。
【0034】
なお、ヒータ支持部材56の構成はヒータ55を輸送時、使用時の衝撃やヒータ通電時の熱膨張や軟化により変形や位置ズレを防止するために設けているが、これらの目的に適うものであれば構成は限定されず、たとえば壁面に凹部や凸部を設けてヒータを直接もしくは間接的に支持あるいは挟持する構成としても良い。これにより構成の簡素化とマイクロ波の損失が期待できるものである。
【0035】
その他にも加熱室50の底面下側には下ヒータ62が備えられている。後面側には熱風調理するためのコンベクション用ヒータ61と、ファン60が備えられており加熱室50に熱風が送られる。また加熱時にはサーミスタ75により加熱室50の温度を検出している。
【0036】
食品はドア110を開けて加熱室に入れられる。ドア110の上方には操作・表示部100が配され運転スイッチ(図示せず)と運転設定釦(図示せず)が設けられている。また、操作つまみ101で加熱時間(加熱温度)が使用者により任意に設定でき制御手段90に指示される。
【0037】
照明70が備えられ加熱運転中には加熱室50内を照らし食品の加熱状況が使用者により目視できる。照明70の前面には可視光透過性部材である照明窓71が備えられている。
【0038】
なお、照明窓71は耐熱ガラスで構成されている。照明窓71は上下二段に設けたどちらの棚に食品200を載せる台80があっても光が遮られずに照明があたるように縦長であるが、横方向には光の屈折により広角となるレンズ効果を備えているので、これにより横幅を小さくしても照射範囲を広くすることが出来る。
【0039】
したがって形状は壁面52の縦横辺の寸法比よりも縦長となっている。本実施の形態では照明窓の寸法は縦150mm、横50mmとなっている。
【0040】
照明窓71の加熱室50に面する側には導電性皮膜72が設けてある。これによりマイクロ波によって生じる電界を導電性皮膜層で消失させることができるので照明窓71でのマイクロ波の吸収を少なくすることができる。
【0041】
導電性皮膜層の材料としては、導電性が高いことが好ましいが、導電性と耐久性の点で酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性金属酸化物が良い。なお照明70と照明窓71との間には光を通すように開孔を設けた金属板を構成してもよい。
【0042】
この場合開孔はマイクロ波を通さない孔径や間隔にすることで電波の損失を防止できる。また照明70は電球に限らずLED照明を備えてもよい。この場合、同様の照度が得られ消費電力を少なくすることができる。また光源や照明窓の配置上の制約が有る場合にも光学的に配慮することで回避できるので結果的に装置設計の自由度が増すものである。
【0043】
ドア110には開閉のドア検出スイッチ(図示せず)が備えられており、ドア110が完全に閉まった状態でなければ運転されない。また運転中にドアが開けられた場合には直ちに運転を停止するように安全装置として機能する。
【0044】
ドア110の加熱室に面する側の中央部には耐熱ガラスで構成する可視光透過性部材である視認窓111が設けてある。
【0045】
視認窓111は上下二段に設けたどちらの棚に食品200を載せる台80があっても視界が遮られずに加熱室の状態が見えるように縦長であるが、横方向には光の屈折により広角となるレンズ効果を備えているので、これにより横幅を小さくしても視野を広くすることが出来る。したがって形状は加熱室50の開口51の縦横辺の寸法比よりも縦長となっている。
【0046】
図3に示すように具体的には本実施の形態において加熱室50は幅450mm、高さ300mm、奥行き400mmの直方体であり、54リットルの実効容積を有している。
【0047】
加熱室の開口51の寸法は幅450mm、高さ300mmに対して視認窓の寸法は、幅220mm、高さ240mmであり加熱室50の開口の縦横寸法比よりも縦長になり、半分以下の面積になっている。面積が小さくなることで、マイクロ波の吸収を少なくすることができる。
【0048】
図4は図3における視認窓の水平方向(W−W)の断面図である。図4に示すように視認窓111の加熱室50に面する側には導電性皮膜層112が設けてある。これによりマイクロ波によって生じる電界を導電性皮膜層で消失させることができるので視認窓111でのマイクロ波の吸収を少なくすることができる。
【0049】
導電性皮膜層の材料としては、導電性が高いことが好ましいが、導電性と耐久性の点で酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性金属酸化物が良い。なお視認窓111の外側には光を通すように開孔を設けた金属板115を構成してもよい。
【0050】
この場合開孔はマイクロ波を通さない孔径や間隔にすることで電波の損失を防止できるように面積開口率は40%から50%として視認窓111に導電性皮膜層112を設けない場合や、導電性皮膜層112を設けていても、マイクロ波の遮蔽を2重にすることができるので信頼性が高い。
【0051】
視認窓の面積を小さくする効果としては、マイクロ波の損失を低減する以外にも装置のデザイン上の制約が減るため、従来は機能的に困難であった特徴的なデザインを採用したり、視認窓面以外のドア部に操作部を配置したりすることも考えられる。
【0052】
加熱室50の上面には、食品加熱により発生する臭気や煙を排気する排気ファン65が
備えられる。なお、排気ファン65の前後に脱臭剤を設けて臭いの放出を低減できる構成にしてもよい。換気ファン66が備えられマイクロ波加熱装置内部の加熱室50の周囲の換気をする。
【0053】
この換気ファン66は同時にマグネトロン30、導波管35さらに電源(図示せず)の冷却を兼ねるように換気通路67が構成されている。35aは導波管の側面に設けた開孔であり、この開孔35aに換気ファン66の送風を一部通すことによりマグネトロン30や導波管35の冷却の効果が向上する。
【0054】
モータ(アンテナ駆動手段)45はアンテナ軸42の上部に備えられており、モータ45の駆動軸45aの回転によりアンテナ板43はアンテナ軸42と一体に回転する。
【0055】
アンテナ板は回転中心に対して偏りのある形状にすることでマイクロ波は下方の加熱室に向かってムラ無く放射される構成になっている。給電部40においてアンテナ板43の周囲には反射壁44が設けてある。本実施の形態においてはアンテナ軸の回転は2秒間に1回転の速さで回転するが、ステップ駆動のような間欠動作でもよくこれに限定されない。
【0056】
以上のように構成されたマイクロ波加熱装においては、制御手段90はマグネトロンや各ヒータの通電を制御し、マイクロ波とヒータの輻射熱や対流熱との少なくともいずれかを供給して食品を加熱処理することができるようになっている。以下、マイクロ波による加熱(運転)を中心にその動作、作用を説明する。
【0057】
まず、マグネトロン30で発生したマイクロ波は導波管35を伝送されマイクロ波導出孔(結合孔)41とアンテナ軸42とによる同軸構成で導波管35から加熱室50側へと導出される。さらにマイクロ波はアンテナ軸42からアンテナ板43を介して加熱室50に放射される。
【0058】
マイクロ波はアンテナ板43の表面、外形端面、アンテナ軸42外周表面からも放射される。ここで反射壁44を備えているので、アンテナ板の周囲にヒータ55やサーミスタ75を配していても、そこに直接的にマイクロ波は放射されずに電界が集中して発熱し損失となることを防止することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては給電部40の周囲にはマイクロ波の水平方向の放射を反射する反射壁44を構成とすることにより、加熱室50内におけるマイクロ波の放射は給電部40の周囲の部材の有無、部材の形状や配置の影響を受け難くなり、放射されるマイクロ波は損失が少なく高い効率で被加熱物に供給される。
【0060】
また、本実施の形態では反射壁44を下方に傾斜した面に構成することにより、反射壁面で反射するマイクロ波は下方に置いた被加熱物である食品に高い効率で供給することもできる。
【0061】
本実施の形態ではアンテナ軸42の軸線に対して約45度の角度で円錐状の反射壁面を構成しているが、この角度は給電部から被加熱物までの高さ(棚58の位置)によって
マイクロ波の最適な放射になるように決めれば良い。角度を大きくすればマイクロ波の放射の広がりが期待でき、反射壁は特に別体に設ける必要はなく加熱室の壁面と一体的に成形(絞り加工など)することが容易である。
【0062】
逆に角度を小さくすることで指向性を強くすることができて被加熱物に集中して放射することができる。被加熱物が少量の時にも加熱室の壁面で反射したマイクロ波が再び給電
部からマグネトロン30に戻る割合を低減することができる。
【0063】
また、反射壁44は図5のように構成しても良い。図5において反射壁44は略垂直(アンテナ軸の軸線と略平行)に構成している。これによりアンテナ板43の可動範囲に近い小さい面積で加熱室50に面することになる。
【0064】
これにより少量の被加熱物を加熱する場合においても、加熱室50の壁面から反射してマイクロ波が再びアンテナ板43からマグネトロン30に戻る割合を少なくできるので、効率的に被加熱物を加熱することができる。
【0065】
図6は図5におけるL(下)方向からの矢視図である。図5、図6において反射壁44の開口には給電部の封口部材である給電カバー46を設けている。給電カバー46の材料としては低損失誘電体で構成することで、マイクロ波放射の損失が無く給電部を保護して汚れを防止することができる。
【0066】
本実施の形態ではマイカ板で構成されているが、これに限らずガラスやセラミックなどを用いても良い。給電カバー46は固定具47により着脱できるように構成しており汚れた場合には取り外して清掃や交換が可能である。
【0067】
また、図6に示すようにヒータ55は給電カバー46を囲むように2本の管を輪状に構成されておりヒータ固定板57により加熱室50の壁面に端子部が加熱室50の外に突出して取り付けされている。
【0068】
加熱室50内ではヒータ支持部材56により自由度をもって(完全に拘束されずに)支持されている。さらに、図5に示すように加熱室50の一部壁面(図中50r)はヒータ55の輻射熱を食品に向かって反射するような角度に構成してもよい。
【0069】
また反射壁44の平面形状についてはアンテナ板43の回転に干渉しなければ円形や正方形に限らず、楕円や多角形、またこれらの組み合わせた形状にしても良い。
【0070】
またアンテナ板43は、図7(a)、図7(b)に示すようにしても良い。図7(b)は図7(a)の断面構成図を矢印M(下側)から見た図である。図7(a)においてアンテナ板43は湾曲した面で構成されている。
【0071】
これによりアンテナ板43の回転とあいまって、加熱室50に放射されるマイクロ波は加熱室50の高さ方向にも攪拌される効果があり、高さ方向の分布が良くなり被加熱物の均一な加熱に効果がある。
【0072】
図7(b)においてアンテナ板43の外形は直線と(曲線)円弧を組み合わせたものであり、さらに異形孔43hを設けてありさらに攪拌効果が大きくなる。これにより加熱室50の容量を大きくしても加熱分布を均一化できる。
【0073】
さらにアンテナ板43は、図8のようにアンテナ板43をアンテナ軸42の軸線に対して傾斜して取付けてもよい。アンテナ板43から放射されるマイクロ波はアンテナ板43の回転によって加熱室50に放射され、高さ方向にもマイクロ波が攪拌されるので、加熱室50の高さを大きく拡大して容量を大きくしても加熱分布を均一化できる。
【0074】
なおアンテナ板43を傾斜させることで反射壁44の高さが大きくなるが、この場合図8のように導波管35の形状を(上下逆に)構成してもよく、マグネトロン30などの各部品をスペースに有効に使って配置することができる。
【0075】
図9のように反射壁44を加熱室50とは別体に構成してもよい。さらに反射壁44は給電カバー46と異なる材料で一体的に構成してもよい。反射壁44は金属材料で構成し給電カバーはマイクロ波が損失なく透過するように低損失誘電体で組み合わせて構成することで給電カバー46は反射壁44を枠体として補強されるので厚み薄く構成することが可能である。
【0076】
反射壁44は加熱室50の壁面に螺合して取り付けてあるので、取り外しての清掃や交換が容易に行うことができる。また図9において導波管35を構成する壁面は加熱室の壁面と兼ねて構成するようにしても良い。
【0077】
図10は給電部40の詳細断面図である。図10においてとアンテナ軸42とを一体的に固定する構成はモータ45により回転する回転軸48に対してアンテナ板固定部材49により締結する構成である。
【0078】
アンテナ軸42のアンテナ板43との接合部の当接部は中心部にアンテナ接合凹部42aを設けてあるので、アンテナ軸42とアンテナ板43とはアンテナ板固定部材によりアンテナ軸42の外周側でより強く接触することでマイクロ波導出孔41からアンテナ軸42の表面を伝わって導出するマイクロ波は損失なくアンテナ板に伝わる。
【0079】
アンテナ軸の高さ(結合長さ)においては図10において導波管側T1と、加熱室側T2が略同じになるように設定することで結合の効率的である。
【0080】
なお回転軸48は耐熱性と摺動性の面からフッ素樹脂材料で構成されていている。なおアンテナ板固定部材はねじを用いて締結しているが、これに限らずリベットを用いても良いしピンの圧入やカシメによるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかるマイクロ波加熱装置は、加熱室内に設ける可視光透過用部材の露出面積はレンズ効果で小さくすることで、あるいは可視光透過用部材の表面に導電性皮膜層を設けるものである。
【0082】
これにより、マイクロ波の吸収によるエネルギー損失を低減することができ、放射されるマイクロ波は損失が少なく高い効率で被加熱物に供給されるので、電子レンジで代表されるような誘電加熱を利用した加熱装置や解凍装置や乾燥装置、あるいは生ゴミ処理機、などの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0083】
30 マグネトロン
35 導波管
40 給電部
41 マイクロ波導出孔
42 アンテナ軸
43 アンテナ板
44 反射壁
45 モータ
50 加熱室
55 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材を含む複数の壁面と、被加熱物を出し入れする開口と、該開口を開閉するドアと、を有し、内部に被加熱物を収容して加熱調理する加熱室と、該加熱室を構成する前記ドアを含む壁面の一部に加熱室側に面して設けられた可視光透過用部材と、前記被加熱物を加熱するマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、加熱室にマイクロ波を給電する給電部と、を備え、前記可視光透過用部材は、設けられる壁面の縦横辺の寸法比よりも縦長であり、さらに加熱室内に向かって光学的に略水平方向に視野角を広げる構成としたマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
可視光透過用部材はガラスの略水平方向の厚みを変化することで視野角を広げる構成とし、ガラスの加熱室に面する表面には導電性金属酸化物からなる導電性皮膜層を設けた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
可視光透過用部材は、光源からの加熱室の照明光を透過する照明窓である、請求項1から2のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
可視光透過用部材は、外部から加熱室の内部を視認する開閉ドアに設けた視認窓である、請求項1から2のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−117753(P2012−117753A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268261(P2010−268261)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】