説明

マイクロ波加熱装置

【課題】被加熱物の広い範囲にマイクロ波を直接放射することで加熱ムラを抑制しつつ効率の良い加熱を実現するマイクロ波加熱装置を提供すること。
【解決手段】加熱室50と、マグネトロン30と、マイクロ波を伝送する導波管35と、導波管35を接続し、導波管35から伝送されるマイクロ波を導出する導出孔41を備えた天面と底部が加熱室50に向かって開放した円周壁面を有する略円錐台形状のアンテナドーム44と、アンテナドーム44には、アンテナドーム44天面の導出孔41を貫通して設けた軸素子42および軸素子42に結合された略円形の平板素子43を有した回転アンテナ40を配し、回転アンテナ40の平板素子43は、略円形状の外形中心と偏心した位置で軸素子42と接続する水平面43aと、水平面43aから加熱室50側に向かって屈曲した傾斜面43bとを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物をマイクロ波で加熱するマイクロ波加熱装置に関するもので、特に食品を加熱調理する電子レンジあるいはオーブンレンジなどの加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロ波加熱装置は、一般的には電子レンジに代表されるように被加熱物を収容する加熱室を備え、この加熱室にマグネトロンなどのマイクロ波発生手段が発生するマイクロ波を供給して被加熱物を誘電加熱させる。
【0003】
マイクロ波を用いて加熱室内の被加熱物を均一加熱するための構成や方法として多くの発明が公開されている。それら主なものとしては、被加熱物を載置するターンテーブルを回転させる方法、加熱室に設けたスタラーを回転させてマイクロ波を攪拌する方法、アンテナを回転させてマイクロ波を分散させて放射する方法などであり、これらは当業者には一般的によく知られている。
【0004】
従来から被加熱物を載置して回転させるターンテーブル方式のものが多く採用されていたが、最近では加熱室の有効容積の拡大や装置の小型化により使い勝手の向上を図る意味からターンテーブルを用いずに加熱室の底面を平に構成し、被加熱物自体を回転させる代わりに回転アンテナを用いる方式が多く採用されるようになった。
【0005】
回転アンテナを用いてマイクロ波を加熱室内に供給する技術としては、マイクロ波を伝送する導波管を備え、導波管から加熱室へと貫通する開口部にアンテナを設けて、マイクロ波を加熱室内に導出して放射するものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
図5は特許文献1に記載された従来のマイクロ波加熱装置を示すものである。図5に示すように、導波管14と加熱室2との結合孔20のほぼ中央にアンテナ15と水平な回転成分17が設けられ、アンテナ15をモーター19で回転させながらマグネトロン8で発生したマイクロ波を加熱室2に放射するように構成されている。また、アンテナの周囲にはヒーター10が設けられている。図6は特許文献2に記載された従来の電子レンジの要部断面図を示すものであり、加熱室3の天井にすり鉢状の絞り部3a内にアンテナ7を設けて、絞り部3aを覆う開口カバー9を設けたものである。また、図5の構成と同様に、導波管14と加熱室2との結合孔20のほぼ中央にアンテナ15が設けられ、アンテナ15を回転させながらマグネトロン8で発生したマイクロ波を加熱室2に放射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−181289号公報
【特許文献2】特開2000−164339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来技術に示すように、回転アンテナの形状あるいはその周辺構成は、被加熱物の種類や加熱室の寸法などにあわせて種々決定されているのが現状である。また加熱装置毎の制約条件から、これらの従来技術を他の多くの装置に適用することも容易
ではない。たとえば図5に示す特許文献1の高周波加熱装置の構成に、図6に示す特許文献2の構成を適用する場合において、アンテナ15の周囲のヒーター10の配置上の制約により絞り部3aが構成できないことや、あるいは制約の範囲で絞り部3aの寸法を小さくして無理に構成した場合には所望の加熱分布が得られないことが考えられる。つまり被加熱物の加熱むらを抑制して効率の良い加熱装置の実現には、いまだ改善の余地がある。
【0009】
本発明は、回転アンテナを用いて加熱室内にマイクロ波を供給する場合において前記従来の課題を解決するもので、アンテナおよびその周囲の構成の小型化が図れ、異なる寸法の加熱室にも適応でき、マイクロ波を適正に放射しつつ被加熱物の広い領域に直接入射させることで、被加熱物に吸収されずに加熱室内に発生する定在波、すなわち電解分布の強弱を抑制することで加熱むらを抑制して効率が良いマイクロ波加熱装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納する加熱室と、マイクロ波を発生するマグネトロンと、前記マグネトロンで発生したマイクロ波を伝送する導波管と、前記導波管を接続し該導波管から伝送されるマイクロ波を導出する導出孔を備えた天面と底部が前記加熱室に向かって開放した円周壁面を有する略円錐台形状のアンテナドームと、を備え、前記アンテナドームには、該アンテナドーム天面の導出孔を貫通して設けた軸素子および前記軸素子に結合された略円形の平板素子を有した回転アンテナを配し、前記回転アンテナの前記平板素子は、略円形状の外形中心と偏心した位置で前記軸素子と接続する水平面と、前記水平面から前記加熱室側に向かって屈曲した傾斜面と、を有するものである。
【0011】
これによって、加熱室へのマイクロ波の放射は、回転アンテナの平板素子の傾斜面から直接放射される成分とアンテナドームの円周壁面を利用して放射する成分とにより被加熱物に対して適正に分散して、被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので、被加熱物に吸収されずに加熱室内で発生する低在波の影響を少なくできるので効果的に加熱ムラを抑制し、被加熱物を効率良く加熱することができる。さらに回転アンテナの平板素子は加熱室に向かって屈曲させることで回転アンテナの小型化が図れ、回転アンテナの回転スペースが小さくなるのでアンテナドームのコンパクト化が実現する。このことは寸法サイズの異なる加熱室に対しても傾斜角度を調整することで容易に適応が図れるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマイクロ波加熱装置は、回転アンテナから放射するマイクロ波を被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので効果的に加熱ムラを抑制し、さらに被加熱物にマイクロ波を直接入射させることは加熱室内で消費されずにマグネトロンに反射する割合を低減することになるのでマイクロ波の発生効率を高く維持して被加熱物を効率良く加熱することができる。またさらに回転アンテナおよびその周囲の構成の小型化が図れるので、マイクロ波を発生するマグネトロンをアンテナドームに近接して配置することができ導波管による伝送距離を短縮して伝送損失を低減することができて一層の加熱効率の向上が実現できる。このことは異なる寸法の加熱室にも容易に適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の断面模式図
【図2】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波加熱装置の回転アンテナおよびその周辺構成の拡大模式図
【図3】本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置の正面断面構成図
【図4】本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置の側面断面構成図
【図5】従来のマイクロ波加熱装置の正面断面図
【図6】従来のマイクロ波加熱装置の正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、被加熱物を収納する加熱室と、マイクロ波を発生するマグネトロンと、前記マグネトロンで発生したマイクロ波を伝送する導波管と、前記導波管を接続し該導波管から伝送されるマイクロ波を導出する導出孔を備えた天面と底部が前記加熱室に向かって開放した円周壁面を有する略円錐台形状のアンテナドームと、を備え、前記アンテナドームには、該アンテナドーム天面の導出孔を貫通して設けた軸素子および前記軸素子に結合された略円形の平板素子を有した回転アンテナを配し、前記回転アンテナの前記平板素子は、略円形状の外形中心と偏心した位置で前記軸素子と接続する水平面と、前記水平面から前記加熱室側に向かって屈曲した傾斜面と、を有するものである。
【0015】
これによって、加熱室へのマイクロ波の放射は、回転アンテナの平板素子の傾斜面から直接放射される成分とアンテナドームの円周壁面を利用して放射する成分とにより被加熱物に対して適正に分散して、被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので、被加熱物に吸収されずに加熱室内で発生する低在波の影響を少なくできるので効果的に加熱ムラを抑制し、被加熱物を効率良く加熱することができる。さらに回転アンテナの平板素子は加熱室に向かって屈曲させる効果として回転アンテナの小型化が図れ、回転アンテナの回転スペースが小さくなるのでアンテナドームのコンパクト化が実現する。さらには装置自体の小型化や装置を大型化せずとも加熱室容積の拡大が可能となり使い勝手の向上が図れるものである。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明における回転アンテナの平板素子の傾斜面が、加熱室底面の略中央に対向するように加熱室の高さ寸法との関係により決定されるものである。
【0017】
これによって、回転アンテナの平板素子の傾斜面から放射されるマイクロ波は、加熱室の高さ寸法に対応して収納した被加熱物の中央付近に向けて放射できる角度に設定することができる。これによりアンテナドームの円周壁面を利用して放射される成分とあいまって被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので、被加熱物に吸収されずに加熱室内で発生する低在波の影響を少なくできるので効果的に加熱ムラを抑制し、被加熱物を効率良く加熱することができる。このことは寸法サイズの異なる加熱室に対しても傾斜角度を調整することで容易に適応が図れるものである。さらに回転アンテナの平板素子は加熱室に向かって屈曲させることで回転アンテナの回転スペースが小さくなるのでアンテナドームのコンパクト化が実現する。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のアンテナドームの円周壁面の傾斜は、円周壁面の下方向への延長線が加熱室底面と交差する外径寸法は、該加熱室底面の幅寸法もしくは奥行き寸法と略同じになるように加熱室の底面寸法において決定されるものである。
【0019】
つまり円周壁面の下方向への延長線が加熱室底面と交差する外径寸法が、該加熱室底面の縦寸法もしくは横寸法もしくは縦横寸法と略同じになるようにすることによりアンテナドームの円周壁面を利用して放射される成分は被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので、被加熱物に吸収されずに加熱室内で発生する低在波の影響を少なくできるので効果的に加熱ムラを抑制し、被加熱物を効率良く加熱することができる。このことは寸法サイズの異なる加熱室に対しても傾斜角度を調整することで容易に適応が図れるものである。
【0020】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1つの発明におけるアンテナドームの円
周壁面は、回転アンテナの平板素子の傾斜面の下方向への延長線と交差するように設定されたものである。
【0021】
つまり平板素子からアンテナドームの円周壁面に向かって放射される成分は、アンテナドームの円周壁面によって確実に放射方向を規制することができる。このことによりコンパクトなアンテドームを実現しつつアンテナドームの円周壁面を利用して放射される成分と、平板素子から直接放射される成分は夫々最適になるように設定できるものである。つまり加熱室へのマイクロ波の放射は、回転アンテナの平板素子の傾斜面から直接放射されて被加熱物の中央付近に入射する成分とアンテナドームの円周壁面を利用して放射されて被加熱物の周囲に主に入射する成分とに適正に分散して、被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので、被加熱物に吸収されずに加熱室内で発生する低在波の影響を少なくできるので効果的に加熱ムラを抑制し、被加熱物を効率良く加熱することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置である電子レンジの構成を示す断面模式図である。図1において被加熱物である食品200を収納する加熱室50の上部壁面の略中央には円錐台形状のアンテナドーム44を配置する。アンテナドーム44の天面には加熱室にマイクロ波を供給する導出孔41を設けて導波管35が接続されている。アンテナドーム44の内側には、導出孔41を貫通して設けた金属棒からなる軸素子42と軸素子42に接続された金属板からなる平板素子43とにより構成された回転アンテナ40が設けられている。
【0024】
以上のように構成されたマイクロ波加熱装において以下、マイクロ波の放射について動作、作用を説明する。
【0025】
まず、マグネトロン30で発生する2450MHzのマイクロ波は導波管35により伝送され導出孔41から軸素子42を中心導体として加熱室50側に供給される。ここで軸素子42はアルミニウム等の良導電性の金属棒で直径15mmの円筒状に構成し、導波管35の伝送路高さ16.5mm内に11mm突出し、さらに内径30mmの導出孔41を貫通してアンテナドーム44内に15mm突出している。これにより導波管35から伝送されるマイクロ波は加熱室50側へと供給される構成となる。軸素子42と、該軸素子42のアンテナドーム44内に突出した一端に機械的かつ電気的に接続された平板素子43とにより回転アンテナ40を形成している。
【0026】
アンテナ駆動手段であるモーター45は導波管35内に突出した軸素子42の上部に備えられており、モーター45の回転子45aの回転により回転アンテナ40はアンテナドーム44の内側で回転する。
【0027】
ここで回転アンテナ40の平板素子43は直径62mmの円形であり厚み0.8mmのアルミニウム等の良導電性の金属板で構成し、円形の中心から12mm偏心した位置で軸素子42と接続して使用周波数に対する共振と、マイクロ波発生部とのインピーダンスの整合の双方が良好に得られるように設定されている。
【0028】
また、円形の平板素子43においてマイクロ波は平面に垂直方向に主に放射されるパッチアンテナの指向特性を有するものであるが、平板素子43を屈曲させて傾斜面43bを設けることで放射方向を加熱室に収容した被加熱物の中央付近に直接入射させるように設定することができ、同時に放射方向をアンテナドーム44の円周壁面側に広げるように作
用するので、アンテナドーム44を利用してマイクロ波を適正に放射することができる。
【0029】
したがって、回転アンテナ40から放射されるマイクロ波は図中A、Bの放射方向に広がり被加熱物の広い領域に直接入射させることができる。さらに軸素子42のアンテナドーム44側への突出長と平板素子43の軸素子42との接合部から外形までの寸法の合計を使用波長λの約1/2としている。
【0030】
つまり、軸素子42からの距離が最も遠くなる外形端でマイクロ波の放射量が最大となるように設定されているので放射特性は平板素子43と接地面となるアンテナドーム44の内面に立つ電界に垂直方向に放射される成分が生まれる。
【0031】
したがって、アンテナドーム44を利用してマイクロ波を適正に放射することが可能である。したがって、回転アンテナ40から放射されるマイクロ波は図中B方向に放射されるので、傾斜面43bから食品200の中央付近に向かう図中A方向の放射とともに被加熱物の広い領域に直接入射させることができる。
【0032】
さらに軸素子42のアンテナドーム44側への突出部の外周面から放射される成分の割合は突出寸法する寸法に応じて調整でき、放射されるマイクロ波はアンテナドーム44の円周壁面まで水平に広がるが、該円周壁面で反射することで図中A、Bの間に放射され被加熱物に直接入射させることができる。
【0033】
以上のように回転アンテナ40から放射されるマイクロ波は平板素子43の傾斜面43bの設定とアンテナドーム44の円周壁面の設定により適正に被加熱物の広い領域に直接入射させることができる。
【0034】
加熱室50の上部壁面の略中央には円錐台形状のアンテナドーム44を配置して回転アンテナ40は回転しつつマイクロ波を放射し効果的に加熱ムラを抑制することができる。
【0035】
さらに被加熱物にマイクロ波を直接入射させることは加熱室内で消費されずにマグネトロンに反射する割合を低減することになるのでマイクロ波の発生効率を高く維持して被加熱物を効率良く加熱することができる。
【0036】
また、さらに回転アンテナおよびその周囲の構成の小型化を図ことができる。ここで平板素子43の円形以外の別の形状としては正方形でも同様の放射指向性を得ることができる。この場合の実効寸法の理論値は一辺が53mmの正方形で対角寸法は約75mmとなり回転に必要な寸法は対角寸法により決定することになる。したがって平板素子43を円形にすることにより小型化を図ることができる。
【0037】
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の回転アンテナ40およびその周辺構成を示す拡大模式図である。図2においてモーター45の回転子45aを垂直かつ回転自在に支持する軸受け部47が設けているので、平板素子43はアンテナドーム44との間に所定の空間を設けてあり互いに接触することなく、マイクロ波を放射時にスパークすることなく安定して回転できる構成となっている。
【0038】
図2において二点鎖線143は平板素子43と同じ外形寸法で傾斜面を設けない場合の平板素子を示したものである。これに対して屈曲させて傾斜面43bを設けた本発明の平板素子の構成ではアンテナドーム44をより一層小型化がすることができる。
【0039】
導波管35を逆L字状にしてマグネトロン30のマイクロ波を放射するアンテナを水平にした配置により平面方向とあわせて高さ方向も低く抑えられているので、さらにコンパ
クトに構成が実現できる。
【0040】
このことは、電源や制御基板など周辺部品の配置の自由度が増えるので装置の小型化や加熱室容積の拡大などが可能となるものである。図1に示すようにマイクロ波を発生するマグネトロン30はアンテナドーム44に近接して配置することができ導波管35による伝送距離を短縮して伝送損失を低減することができて一層の加熱効率の向上が実現できる。このことは異なる寸法の加熱室にも容易に適応することができる。
【0041】
効果的には回転アンテナ40の平板素子43の傾斜面43bから放射されるマイクロ波は、加熱室50の高さ寸法(図1のh)に対応して収納した食品200の中央付近に向けて放射できる角度Cに設定することができる。
【0042】
例えば、加熱室50の高さが高くなるにしたがって角度Cを小さく設定すれば良い。逆に加熱室の高さが低い場合には角度Cを大きくすれば良い。ここで平板素子43を屈曲させる意味は軸素子42との接合面を水平にできるので機械的固定が良好かつ容易であることと、平板素子43の屈曲角度を変えることで例えば加熱室の容積の異なる他のマイクロ波加熱装置にも容易に適応できる効果がある。
【0043】
また、アンテナドーム44の円周壁面の傾斜Dを加熱室50の底面寸法および高さ寸法(図1のh)との関係において決定するものである。つまり円周壁面の下方向への延長線が加熱室50の底面と交差する外径寸法が、該加熱室底面の幅寸法(図1のw)もしくは奥行き寸法と略同じになるようにすることによりアンテナドーム44の円周壁面を利用して放射される成分は被加熱物の広い領域に直接入射させることができる。
【0044】
例えば、傾斜Dが小さくなるほど放射される範囲は広がり、逆に傾斜Dが大きくなれば放射範囲は絞られて狭くなる。さらに加熱室の底面が長方形の場合には幅と奥行きの両方の寸法に合わせて、アンテナドーム44の円周壁面に沿って加熱室底面に放射される範囲が楕円形状になるようにアンテナドーム44は楕円錐台形状にしても良いし、長円錐台形状にしても良い。
【0045】
アンテナドーム44を略円錐台形状とすることの意味は回転アンテナ40の周囲に近接して円周壁面を設けるためであるが、矩形台形よりも周囲の壁面の面積を小さくでき不要な電界もしないので回転アンテナ40からの放射方向を規制しても壁面によるマイクロ波の損失は極小さく抑えることができる。
【0046】
より効果的には、アンテナドーム44の円周壁面は、回転アンテナの平板素子の傾斜面の下方向への延長線と交差するように設定されたものである。このことによりコンパクトなアンテドームを実現しつつアンテナドーム44の円周壁面を利用して放射される成分と、平板素子43から直接放射される成分の夫々を最適になるように設定できるものである。
【0047】
つまり、平板素子43からアンテナドーム44の円周壁面に向かって放射される成分は、アンテナドーム44の円周壁面によって確実に放射方向を規制することができる。具体的には本実施例において傾斜面43bは、水平に対して約10°傾いて設定されており延長するとアンテナドーム44の円周壁面と交差する関係にある。またアンテナドーム44は底面が加熱室に向かって開放した円錐台形状で円周壁面が水平に対しては約57.5°傾斜した設定となっている。これにより図1に示す食品200のように扁平な被加熱物の広い領域に直接入射させることができる。
【0048】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の正面断面構成図、図4は、本発明の実施の形態2におけるマイクロ波加熱装置の側面断面構成図であり、本発明に係る実施の形態のマイクロ波加熱装置であるオーブンレンジの概略構成を示す。実施の形態1と異なる点は、回転アンテナの周囲にオーブン用ヒーターなどが配置されていることと、食品をのせる高さが選べるように棚が複数段設けられている点にある。なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0049】
図3、図4において、被加熱物である食品200は加熱室50に設けられた棚58に載置された網80に載せられる。棚58は使用者が食品の形態や加熱調理に応じて食品をのせる高さが選べるように両側の側面に複数段設けられている。加熱室50内の上部にはヒーター55が備えられてあり、マイクロ波による加熱以外にもヒーター55の輻射熱によって直接食品を加熱でき、複数の調理メニューに対応する。その他にも加熱室50の底面下側には下ヒーター62が備えられている。後面側には熱風調理するためのコンベクション用ヒーター61と、ファン60が備えられており加熱室50に熱風が送られる。また加熱時にはサーミスタ75により加熱室50の温度を検出している。
【0050】
食品は加熱室ドア110を開けて加熱室に入れられる。加熱室ドア110の上方には操作・表示部100が配され運転スイッチ(図示せず)と運転設定釦(図示せず)が設けられている。
【0051】
また、操作つまみ101で加熱時間(加熱温度)が使用者により任意に設定でき制御手段90に指示される。照明70が備えられ加熱運転中には加熱室50内を照らし食品の加熱状況が使用者により目視できる。照明70の前面には照明カバー71が備えられている。加熱室ドア110には開閉のドア検出スイッチ(図示せず)が備えられており、加熱室ドア110が完全に閉まった状態でなければ運転されない。
【0052】
また運転中にドアが開けられた場合には直ちに運転を停止するように安全装置として機能する。
【0053】
加熱室50の上面には、食品加熱により発生する臭気や煙を排気する排気ファン65が備えられる。換気ファン66が備えられマイクロ波加熱装置内部の加熱室50の周囲の換気をする。この換気ファン66は同時にマグネトロン30、導波管35さらに電源(図示せず)の冷却を兼ねるように換気通路67が構成されている。
【0054】
以上のように構成されたマイクロ波加熱装においては、制御手段90はマグネトロンや各ヒーターの通電を制御し、マイクロ波とヒーターの輻射熱や対流熱との少なくともいずれかを供給して食品を加熱処理することができるようになっている。以下、マイクロ波による加熱(運転)を中心にその動作、作用を説明する。
【0055】
まず、マグネトロン30で発生したマイクロ波は導波管35を伝送されマイクロ波導出孔(結合孔)41と軸素子42とによる同軸構成で導波管35から加熱室50側へと導出される。さらにマイクロ波は軸素子42と平板素子43からなる回転アンテナ40から直接およびアンテナドームの周壁を介して加熱室50に放射される。具体的には平板素子43の表面、外形端面、軸素子42外周表面からも放射される。
【0056】
ここで、アンテナドーム44を備えていることによる効果としては、アンテナ板の周囲にヒーター55やサーミスタ75を配していても、そこに直接的にマイクロ波は放射されずに電界が集中して発熱し損失となることを防止することができるところにある。
【0057】
つまり、放射されるマイクロ波が被加熱物である食品に直接入射することと同様の意味
を持つ。本実施の形態においては回転アンテナ40の周囲にはマイクロ波の放射を反射するアンテナドーム44を構成とすることにより、加熱室50内におけるマイクロ波の放射は回転アンテナ40の周囲の部材の有無、部材の形状や配置の影響を受け難くなり、放射されるマイクロ波は損失が少なく高い効率で被加熱物に供給される。本実施の形態では軸素子42の軸線に対して約45度の角度で台形円錐状のドーム面を構成しているが、この角度は給電部から被加熱物までの高さによってマイクロ波の最適な放射になるように決めれば良い。
【0058】
また、被加熱物の大きさに応じて、面積の大きな被加熱物においては下側の棚で加熱し、面積の小さなものではアンテナドーム44に近い上側の棚を選択することでより効果的に食品を加熱することができる。さらにアンテナドーム44を小型化する別の効果としては、加熱室50の上部壁面におけるアンテナドーム44の占有面積が小さくなるので、ヒーター55の配置を好適にでき輻射熱により食品を加熱する場合においても良好な加熱を実現することができる。ここでアンテナドーム44は特に別体に設ける必要はなく加熱室の壁面と一体的に成形(絞り加工など)することが容易である。なおアンテナドーム44の平面形状については平板素子43の回転に干渉しなければ円形限らず、楕円や多角形、またこれらの組み合わせた形状にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように本発明にかかるマイクロ波加熱装置は、加熱室内におけるマイクロ波の放射は回転アンテナの平板素子の傾斜面から直接放射される成分とアンテナドームの円周壁面を利用して放射する成分とにより被加熱物に対して適正に分散して、被加熱物の広い領域に直接入射させることができるので、被加熱物に吸収されずに加熱室内で発生する低在波の影響を少なくできるので効果的に加熱ムラを抑制し、被加熱物を効率良く加熱することができる。さらにマイクロ波を放射する回転アンテナ周囲の部材(たとえばヒーターなど)の影響を受け難くなり、放射されるマイクロ波は損失が少なく高い効率で被加熱物に供給される。さらに回転アンテナの平板素子は加熱室に向かって屈曲させることで回転アンテナの小型化が図れ、回転アンテナの回転スペースが小さくなるのでアンテナドームのコンパクト化が実現する。したがってマイクロ波を伝送する導波管の長さも短く構成できて伝送による損失も低減することができる。したがって寸法サイズの異なる加熱室に対しても傾斜角度を調整することで容易に適応が図れるものであり、電子レンジやオーブンレンジに広く適用できる。
【符号の説明】
【0060】
30 マグネトロン
35 導波管
40 回転アンテナ
41 導出孔
42 軸素子
43 平板素子
43a 水平面
43b 傾斜面
44 アンテナドーム
90 制御手段
200 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、
マイクロ波を発生するマグネトロンと、
前記マグネトロンで発生したマイクロ波を伝送する導波管と、
前記導波管を接続し該導波管から伝送されるマイクロ波を導出する導出孔を備えた天面と底部が前記加熱室に向かって開放した円周壁面を有する略円錐台形状のアンテナドームと、を備え、
前記アンテナドームには、該アンテナドーム天面の導出孔を貫通して設けた軸素子および前記軸素子に結合された略円形の平板素子を有した回転アンテナを配し、
前記回転アンテナの前記平板素子は、略円形状の外形中心と偏心した位置で前記軸素子と接続する水平面と、前記水平面から前記加熱室側に向かって屈曲した傾斜面と、
を有したマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
回転アンテナの平板素子の傾斜面が、加熱室底面の略中央に対向するように加熱室の高さ寸法との関係により決定される請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
アンテナドームの円周壁面の傾斜は、円周壁面の下方向への延長線が加熱室底面と交差する外径寸法は、該加熱室底面の幅寸法もしくは奥行き寸法と略同じになるように加熱室の底面寸法において決定される請求項1または2に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
アンテナドームの円周壁面は、回転アンテナの平板素子の傾斜面の下方向への延長線と交差するように設定された請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ波加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−37795(P2013−37795A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170675(P2011−170675)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】