説明

マイクロ波平面アンテナ

【課題】高い指向性を確保しながら、視界を妨げ難い平面アンテナを提供する。
【解決手段】パッチアンテナは、薄板状のグランドパターン20と、グランドパターン20に対して所定の間隔をもって支持された薄板状のパッチパターン10とを備える。グランドパターン20には、複数の穴20bが、網目状に形成されている。グランドパターン20のパッチパターン10の直下の領域には、板部20aが設けられ、穴20bは形成されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信やRFID(Radio FrequencyIdentification)に用いられる、マ
イクロ波の平面アンテナ(パッチアンテナ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や倉庫では、RFIDタグを用いた自動認識システムが普及しつつある。たとえば、荷物にUHF(Ultra High Frequency)帯のRFIDタグが取付けられ、荷物運搬用のフォークリフトにRFID用のアンテナが取り付けられる。フォークリフトで荷物を運搬する際に、フォークリフトに取り付けたアンテナによってRFIDタグから荷物のIDが読み取られ、読み取られたIDにより荷物が管理される。
【0003】
UHF帯のRFIDに使用されるアンテナは、なるべく、1方向にのみ指向性を持つようにするのが好ましい。アンテナが目標方向以外にも指向性を持つと、フォークリフトで搬送しようとする荷物のIDだけでなく、後ろや周りに置かれた無関係な荷物のIDまで検知される惧れがある。
【0004】
RFIDの検知に好適なアンテナとして、たとえば、特許文献1に記載の平面アンテナ(マイクロストリップアンテナ)がある。このアンテナは、一般に、グランド板とパッチとの間に誘電体板が挟まれた構造となっている。グランド板は、パッチよりも数段広い面積を有する。かかる平面アンテナは、指向性が高く、上記自動認識システムに用いて好ましい特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−172321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記環境下において、フォークリフトの運転手が見ている荷物のIDをアンテナにより適正に検知するためには、指向性の方向が運転手の目線の方向と同じとなるように、アンテナを配置する必要がある。この場合、アンテナは、運転手の視界に掛かる位置の近傍に配置される。
【0007】
しかしながら、UHF帯のアンテナでは、グランド板が、通常30cm角程度と比較的大きいため、上記の位置にアンテナが配置されると、アンテナが運転手の視界を遮ってしまう惧れがある。このため、最適な位置にアンテナを取り付けることが難しくなる。
【0008】
このことから、上記システムでは、透明で視界を遮らないアンテナの開発が検討される。しかし、アンテナを透明にすると、狙った向きのRFIDタグのみを検知できるような鋭い指向性利得のあるアンテナが得られないという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、高い指向性を確保しながら、視界を妨げ難い平面アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係るマイクロ波平面アンテナは、薄板状のグランドパターンと、前記グランドパターンに対し所定の間隔をもって支持された薄板状のパッチパターンとを
備える。前記グランドパターンには、複数の穴が網目状に形成される。
【0011】
本態様に係るマイクロ波平面アンテナによれば、グランドパターンに複数の穴が形成されているため、穴を介してグランドパターンの向こう側を見ることができる。また、このように穴が形成されても、アンテナの指向性特性が大きく低下することはない。よって、高い指向性を確保しながら、視界を妨げ難い平面アンテナを提供することができる。
【0012】
本態様に係るマイクロ波平面アンテナは、前記グランドパターンの領域のうち少なくとも前記パッチパターンの真下の領域には、前記穴が形成されないよう構成され得る。こうすると、アンテナの指向性特性の低下を抑制することができる。
【0013】
また、本態様に係るマイクロ波平面アンテナにおいて、前記パッチパターンにも、複数の穴を網目状に形成しても良い。こうすると、パッチパターンの穴からもアンテナの向こうを見ることができるため、より視界が妨げられにくくなる。
【0014】
この場合、前記パッチパターンの中心と前記パッチパターンの給電点とを結ぶ直線を挟む前記パッチパターンの端縁部分には、前記穴を形成しないようにし、前記グランドパターンの前記端縁部分の直下の領域にも、前記穴を形成しないようにするのが望ましい。こうすると、アンテナの指向性特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0015】
また、パッチパターンにも穴を形成する場合には、前記パッチパターンの領域のうち、動作時に高周波電流が集中する領域には、前記穴を形成しないようにするのが望ましい。同様に、前記グランドパターンの領域のうち、動作時に高周波電流が集中する領域には、前記穴を形成しないようにするのが望ましい。こうすると、アンテナの指向性特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0016】
本態様に係るマイクロ波平面アンテナは、前記グランドパターンの給電部を除く全ての領域と、前記パッチパターンの給電部を除く全ての領域に、それぞれ、複数の穴が網目状に形成されるよう構成され得る。こうすると、より一層、アンテナの向こうが見え易くなり、アンテナにより視界が妨げられにくくなる。なお、このようにパッチパターンとグランドパターンに穴を形成しても、アンテナの指向性特性を確保することができる。これについては、実施例3において明らかにする。
【0017】
なお、パッチパターンにも穴を形成する場合は、前記グランドパターンに形成された前記穴の中心と、前記パッチパターンに形成された前記穴の中心が、前記グランドパターンと前記パッチパターンの重なり方向において一致するのが望ましい。こうすると、グランドパターンとパッチパターンの重なり方向に2つの穴が並ぶため、これらの穴を介してアンテナの向こうを良好に見ることができる。
【0018】
この場合、前記グランドパターンに形成された前記穴と、前記パッチパターンに形成された前記穴が、同じ形状を有するようにするのが望ましい。こうすると、一方の穴の縁が他方の穴の内側に掛からないため、無駄なく視界を確保できる。
【0019】
本態様に係るマイクロ波平面アンテナは、前記グランドパターンに形成された前記穴のピッチが、使用する電波の波長の1/10〜1/30であるのが望ましい。こうすると、穴による視界を確保しながら、アンテナの指向性特性を良好な状態に維持できる。
【0020】
この場合、前記グランドパターンに形成された前記穴のピッチが、使用する電波の波長の1/16程度であるのが最も望ましい。こうすると、アンテナの指向性特性を最も良好にすることができる。
【0021】
本発明の第2の態様に係るマイクロ波平面アンテナは、薄板状のグランドパターンと、前記グランドパターンに対し所定の間隔をもって支持された薄板状のパッチパターンとを備える。前記グランドパターンは、前記パッチパターンの給電点の直下の領域、および、前記パッチパターンの中心と前記パッチパターンの給電点とを結ぶ直線を挟む前記パッチパターンの端縁部分の直下の領域以外の領域に、切り欠きが設けられている。
【0022】
本態様に係るマイクロ波平面アンテナによれば、グランドパターンに切り欠きが設けられているため、切り欠きを介してグランドパターンの向こう側を見ることができる。また、このように切り欠きが形成されても、アンテナの指向性特性が大きく低下することはない。よって、高い指向性を確保しながら、視界を妨げ難い平面アンテナを提供することができる。
【0023】
第2の態様に係るマイクロ波平面アンテナにおいて、前記パッチパターンにも、前記端縁部分以外の領域に、切り欠きが設けられても良い。こうすると、パッチパターンの切り欠きからもアンテナの向こうを見ることができるため、より視界が妨げられにくくなる。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、高い指向性を確保しながら、視界を妨げ難い平面アンテナを提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】比較例に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図2】比較例に係るパッチアンテナの構成と利得特性を示す図である。
【図3】比較例に係るパッチアンテナの表面電流の分布状態を示す図である。
【図4】実施例1に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図5】実施例1に係るパッチアンテナの指向性および利得特性を示す図である。
【図6】実施例2に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図7】実施例2に係るパッチアンテナの構成と利得特性を示す図である。
【図8】実施例3に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図9】実施例3に係るパッチアンテナの構成と利得特性を示す図である。
【図10】実施例4および実施例5に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図11】実施例5の変更例に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図12】実施例5の変更例に係るパッチアンテナの構成を示す図である。
【図13】変更例に係るパッチアンテナの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
<比較例>
まず、比較例にかかる平面アンテナ(以下、「パッチアンテナ」という)について説明する。このパッチアンテナは、UHF帯のRFIDで使用されるものである。
【0029】
図1(a)、(b)は、比較例に係るパッチアンテナの斜視図である。図1(b)は、図1(a)よりも一段低い位置から見たときの斜視図である。
【0030】
図示の如く、比較例に係るパッチアンテナは、導電性の金属薄板からなるパッチパターン1と、同じく導電性の金属薄板からなるグランドパターン2とを備える。パッチパターン1およびグランドパターン2は、それぞれ、平面視において正方形の輪郭を有する。また、パッチパターン1およびグランドパターン2は、それぞれ、一様な厚みを有する。
【0031】
パッチパターン1は、グランドパターン2と平行となるように、グランドパターン2に支持される。具体的には、パッチパターン1の中央が、樹脂等の絶縁体または金属からなる円柱状のスペーサを介して、グランドパターン2に結合される。たとえば、スペーサの上面と下面に、パッチパターン1とグランドパターン2が、接着またはネジ止めされる。便宜上、図1では、パッチパターン1とグランドパターン2とを結合するための結合部材(スペーサを含む)が図示省略されている。なお、パッチパターン1の中心とグランドパターン2の中心は、アンテナ動作時の電位がゼロであるため、スペーサを金属としても問題ない。
【0032】
なお、この比較例では、パッチパターン1とグランドパターン2の間には、誘電体板が介在しておらず、空間となっている。すなわち、パッチパターン1とグランドパターン2の間には、空気が介在する。
【0033】
グランドパターン2の一辺の長さは、使用される電波の波長の近傍に設定される。ここでは、UHF帯のRFIDで使用される電波の波長λはλ=315mmであるため、グランドパターン2の一辺の長さは、300mmに設定される。パッチパターン1は、一辺の長さが132mmである。また、グランドパターン2とパッチパターン1の間隔は20mmである。グランドパターン2とパッチパターン1は、平面視において中心が一致し、また、対応する辺が互いに平行となっている。
【0034】
図1のようにグランドパターンの中心を原点とするXYZ軸を設定すると、パッチパターン1の中央からY軸方向に40mmの点には、給電点3となる穴が形成されている。また、グランドパターン2の中央からY軸方向に40mmの点には、同軸コネクタの誘電体と同じ直径(3mmφ〜9mmφ)の穴が形成される。この穴に、同軸コネクタが下向きに取り付けられる。同軸コネクタの内導体(1mmφ〜3mmφ)がパッチパターン1まで伸び、給電点3において電気的に連結されている。
【0035】
図2(a)は、比較例に係るパッチアンテナを真横から見たときの側面図である。
【0036】
図2(b)は、比較例に係るパッチアンテナの3次元指向性のシミュレーション結果である。かかるシミュレーションは、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSを使って行った。
【0037】
図2(b)を参照して、比較例に係るパッチアンテナには、パッチパターン1の表面に垂直な上向き方向(Z軸正方向)に、+9.6dBiと大きなアンテナ利得があり、反対向き(Z軸負方向)には、−10.8dBiと僅かな利得しか無い。パッチパターン1の上面をパッチアンテナの正面とすると、正面方向(Z軸正方向)への利得は、背面方向(Z軸負方向)への利得より、20dB(100倍)程度大きい。よって、このパッチアンテナを用いると、正面方向にあるRFIDタグのみを円滑に検知することができる。また、このパッチアンテナでは、アンテナ利得が+9.6dBiと大きいので、6m程度離れたRFIDタグも円滑に検知でき、十分な検知感度が得られる。
【0038】
ただし、比較例に係るパッチアンテナでは、グランドパターン2が、300mm角の金属から形成されており、光を通さないため、かかるパッチアンテナを、ユーザの視線の方向に向けて配置すると、広いグランドパターン2によって、ユーザの視界が遮られてしま
うという問題が起こり得る。
【0039】
以下、かかる問題を解消するために為された検討について説明する。
【0040】
図3(a)は、比較例に係るパッチアンテナを動作させたときのパッチパターン1に流れる高周波表面電流のシミュレーション結果を示す図である。かかるシミュレーションは、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSにより行った。図中、“High”と付記された破線の領域は、表面電流が最も多く現れる領域を示し、“Low”と付記された破線の領域は、表面電流が最も少ない領域を示す。また、図3(a)の左部には、1分当たりの電流量を色で示すスケールが付されている。
【0041】
図示の如く、表面電流は、パッチパターン1の上と下の縁の部分に集中しており、それ以外の部分の表面電流は1/4以下(電力に換算すると1/16以下)と少ないことが分かる。すなわち、比較例に係るパッチアンテナのようにパッチパターン1が正方形の場合、パッチパターン1の中心と給電点3とを結ぶ直線を挟む2つの辺の部分に表面電流が集中する。
【0042】
図3(b)は、比較例に係るパッチアンテナを動作させたときのグランドパターン2に流れる高周波表面電流を示す図である。図中、“High”と付記された破線の領域は、表面電流が最も多く現れる領域を示し、“Low”と付記された破線の領域は、表面電流が最も少ない領域を示す。また、図3(b)の左部には、1分当たりの電流量を色で示すスケールが付されている。
【0043】
図示の如く、表面電流は、グランドパターン2の全領域のうち、パッチアンテナ1の真下の部分に集中している。特に、表面電流は、給電点3の周辺部分と、グランドパターン2の中心を上下方向に挟む2つの部分に集中しており、それ以外の部分の表面電流は1/2以下(電力に換算すると1/4以下)と少ないことが分かる。
【0044】
図3(b)の結果から、グランドパターン2の、パッチパターン1の真下を除く領域(以下、「小電流領域」という)に流れる表面電流は、比較的小さいことが分かる。特に、小電流領域は、グランドパターン2の外縁に近づくにつれて表面電流が小さくなることが分かる。したがって、この小電流領域においてグランドパターン2に加工を施しても、パッチアンテナの特性は大きく変化することがないとも考えられる。
【0045】
本願発明者は、かかる検討に基づき、グランドパターン2の小電流領域に複数の穴を形成し、これらの穴を介して、グランドパターン2の向こうを見通せるようにすることを検討した。以下、この検討に基づくパッチアンテナの構成について説明する。
【0046】
<実施例1>
図4は、実施例1に係るパッチアンテナの構成を示す図である。図4(a)は、パッチアンテナの斜視図、図4(b)は、パッチアンテナの平面図である。
【0047】
パッチパターン10の構成は、上記比較例のパッチパターン1と同じである。
【0048】
グランドパターン20は、上記比較例と同様、導電性の金属薄板からなり、平面視において正方形の輪郭を有する。グランドパターン20の一辺の長さは、322mmであり、UHF帯のRFIDで使用される電波の波長λ(λ=315mm)よりも僅かに長い。グランドパターン20には、中央に板部20aが形成され、板部20aの周囲には、複数の穴20bが網目状に形成される。板部20aは、平面視において正方形であり、一辺の長さが164mmである。また、穴20bは、平面視において正方形であり、一辺の長さが
18mmである。穴20bは、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ20mmのピッチで形成されている。本実施例では、板部20aの上下左右に、それぞれ、4列の穴20bが形成されている。なお、板部20aは、パッチパターン10よりも一回り大きくなっている。
【0049】
パッチパターン10は、グランドパターン20と平行となるように、グランドパターン20に支持される。具体的には、上記比較例と同様、パッチパターン10の中央が、樹脂等の絶縁体または金属からなる円柱状のスペーサを介して、グランドパターン20に結合される。たとえば、スペーサの上面と下面に、パッチパターン10とグランドパターン20が、接着またはネジ止めされる。便宜上、図4では、パッチパターン10とグランドパターン20とを結合するための結合部材(スペーサを含む)が図示省略されている。
【0050】
なお、本実施例も、上記比較例と同様、パッチパターン10とグランドパターン20の間には、誘電体板が介在しておらず、空間となっている。すなわち、パッチパターン10とグランドパターン20の間には、空気が介在する。
【0051】
グランドパターン20とパッチパターン10の間隔は、上記比較例と同様、20mmである。グランドパターン20とパッチパターン10は、平面視において中心が一致し、また、対応する辺が互いに平行となっている。
【0052】
上記比較例と同様、パッチパターン10の中央からY軸方向に40mmの点には、給電点30となる穴が形成されている。また、グランドパターン20の中央からY軸方向に40mmの点には、同軸コネクタの誘電体と同じ直径(3mmφ〜9mmφ)の穴が形成される。この穴に、同軸コネクタが下向きに取り付けられる。同軸コネクタの内導体(1mmφ〜3mmφ)がパッチパターン10まで伸び、給電点30において電気的に連結されている。
【0053】
本実施例に係るパッチアンテナは、グランドパターン20の全領域のうち、上記比較例の小電流領域に対応する領域(本実施例においても、便宜上、この領域を「小電流領域」という)に、複数の穴20bが形成されている。小電流領域は、本来、表面電流が比較的少ない領域である。本実施例では、この小電流領域に、複数の穴20bが形成される。
【0054】
図5(a)、(b)は、本実施例に係るパッチアンテナの指向性のシミュレーション結果である。かかるシミュレーションは、上記比較例と同様、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSを使って行った。
【0055】
図示の如く、本実施例に係るパッチアンテナの指向性は、上記比較例のパッチアンテナと略同じである。また、本実施例のパッチアンテナでは、+9.5dBiのアンテナ利得が得られており、このアンテナ利得は、比較例のパッチアンテナに比べ、僅か0.1dB(2%)低下したに過ぎない。このように、本実施例に係るパッチアンテナでは、比較例と同等の指向性特性が得られる。
【0056】
加えて、本実施例では、グランドパターン20に形成された複数の穴20bを介して、パッチアンテナの向こう側を見ることができる。よって、かかるパッチアンテナを、ユーザの視線の方向に向けて配置した場合、視界を完全に遮るのは中央のパッチ10の部分だけとなる。グランドパターン20の7割の領域は、穴20bを介して、向こうの景色を見通すことができる。よって、このパッチアンテナをユーザの視線の方向に向けて配置しても、グランドパターン20によってユーザの視界が遮られにくく、ユーザは、目標とするRFIDタグを適正に検知することができる。
【0057】
<実施例2>
図6は、実施例2に係るパッチアンテナの構成を示す図である。図6(a)は、パッチパターンの平面図、図6(b)は、グランドパターンの平面図である。図7(a)は、実施例2に係るパッチアンテナの構成を示す斜視図である。
【0058】
パッチパターン11は、導電性の金属薄板からなり、平面視において正方形の輪郭を有する。パッチパターン11は、板部11aと、網目状に形成された複数の穴11bを有する。穴11bの形状は18mm角の正方形であり、穴11b間のピッチは、20mmである。
【0059】
図6(a)において、“High”と付記された破線の領域は、図3(a)の“High”と付記された領域に対応し、表面電流が最も多く現れる領域である。また、図6(a)において、“Low”と付記された破線の領域は、図3(a)の“Low”と付記された領域に対応し、表面電流が最も少ない領域を示す。図示の如く、穴11bは、パッチパターン11の表面電流が少ない部分に形成される。
【0060】
グランドパターン21は、上記実施例1と同様、導電性の金属薄板からなり、平面視において正方形の輪郭を有する。グランドパターン21の一辺の長さは、322mmである。グランドパターン21には、中央に板部21aが形成され、板部21aの周囲には、複数の穴21bが形成される。穴21bの形状および穴21b間のピッチは、上記実施例1の穴20と同様である。したがって、穴21bの形状とピッチは、穴11bの形状とピッチと同じである。
【0061】
上記実施例1では、グランドパターン20の板部20aがパッチパターン10よりも一回り大きかったが、本実施例では、板部21aが、パッチパターン21の真下の部分に対応する領域の範囲に制限される。平面視において、板部21aの形状と大きさは、図6(a)におけるパッチパターン11の板部11aの形状と大きさと同じである。
【0062】
図6(b)において、“High”と付記された破線の領域は、図3(b)の“High”と付記された領域に対応し、表面電流が最も多く現れる領域である。また、図6(b)において、“Low”と付記された破線の領域は、図3(b)の“Low”と付記された領域に対応し、表面電流が最も少ない領域を示す。図示の如く、穴21bは、グランドパターン21の表面電流が少ない部分に形成される。
【0063】
パッチパターン11は、グランドパターン21と平行となるように、グランドパターン21に支持される。具体的には、パッチパターン11の四隅が、樹脂等の絶縁体からなる円柱状のスペーサを介して、グランドパターン21の四隅に結合される。たとえば、スペーサの上面と下面に、パッチパターン11とグランドパターン21が、接着またはネジ止めされる。便宜上、図7(a)では、パッチパターン11とグランドパターン21とを結合するための結合部材(スペーサを含む)が図示省略されている。
【0064】
なお、本実施例も、上記実施例1と同様、パッチパターン11とグランドパターン21の間には、誘電体板が介在しておらず、空間となっている。すなわち、パッチパターン11とグランドパターン21の間には、空気が介在する。
【0065】
グランドパターン21とパッチパターン11の間隔は、上記実施例1と同様、20mmである。グランドパターン21とパッチパターン11は、平面視において中心が一致し、また、対応する辺が互いに平行となっている。このようにグランドパターン21とパッチパターン11を配置すると、平面視において、パッチパターン11の穴11bの中心と、これらの穴11bに対応するグランドパターン21の穴21bの中心とが一致する。これ
により、2つの穴11b、21bを通して向う側が見えるようになる。
【0066】
上記実施例1と同様、パッチパターン11の中央からY軸方向に40mmの点に、給電点31となる穴が形成されている。また、グランドパターン21の中央からY軸方向に41mmの点には、同軸コネクタの誘電体と同じ直径(3mmφ〜9mmφ)の穴が形成される。この穴に、同軸コネクタが下向きに取り付けられる。同軸コネクタの内導体(1mmφ〜3mmφ)がパッチパターン11まで伸び、給電点31において電気的に連結される。
【0067】
なお、本実施例では、パッチアンテナの特性が最適になるように、パッチパターン11の大きさが、124mm角に設定され、上記実施例1のパッチパターン10よりも一回り小さくなっている。
【0068】
図7(b)は、本実施例に係るパッチアンテナの指向性のシミュレーション結果である。かかるシミュレーションは、上記実施例1と同様、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSを使って行った。
【0069】
図示の如く、本実施例に係るパッチアンテナにおいても、正面方向(Z軸正方向)への利得が、背面方向(Z軸負方向)への利得より、顕著に大きい。本実施例のパッチアンテナでは、アンテナ利得が+9.0dBiと、上記比較例のパッチアンテナに比べ、若干低下(0.6dB=13%)したが、この利得によっても、十分な指向性特性が得られる。
【0070】
加えて、本実施例では、上記実施例1に比べ、パッチパターン11とグランドパターン21が一回り小さくなり、且つ、パッチパターン11とグランドパターン21の中央部にも穴11b、21bが形成されたため、グランドパターン21の輪郭内の全領域に対し約9割の領域において、穴21bを介して、パッチアンテナの向こう側を見ることができる。よって、かかるパッチアンテナを、ユーザの視線の方向に向けて配置した場合にも、パッチアンテナによってユーザの視界が遮られにくく、ユーザは、目標とするRFIDタグを適正に検知することができる。
【0071】
<実施例3>
図8は、実施例3に係るパッチアンテナの構成を示す図である。図8(a)は、パッチパターンの平面図、図8(b)は、グランドパターンの平面図である。図9(a)は、実施例3に係るパッチアンテナの構成を示す斜視図である。
【0072】
本実施例に係るパッチパターン12およびグランドパターン22は、穴12b、22bの数が増加している点の除き、上記実施例2のパッチパターン11およびグランドパターン21と同様の構成を有する。
【0073】
パッチパターン12には、全領域に亘って穴12bが網目状に形成されている。グランドパターン22には、給電点32に対応する位置に形成された板部22aを除く領域に、穴22bが網目状に形成されている。
【0074】
図8(a)において、“High”および“Low”と付記された破線の領域は、それぞれ、図3(a)の“High”および“Low”と付記された領域に対応し、また、図8(b)において、“High”および“Low”と付記された破線の領域は、それぞれ、図3(b)の“High”および“Low”と付記された領域に対応する。本実施例において、パッチパターン12の表面電流が大きい領域には、パッチパターン12の縁の部分が存在する。また、グランドパターン22の表面電流が大きい領域には、板部22aまたは穴22bと穴22bとの間の境界部分が存在する。
【0075】
パッチパターン12は、グランドパターン22と平行となるように、グランドパターン22に支持される。具体的には、矩形に並ぶ4つの穴12bを囲む程度の大きさの上面と下面を有する直方体のスペーサを、パッチパターン12の中央部分(図8(a)の太枠で囲まれた部分)とグランドパターン22の中央部分(図8(a)の太枠で囲まれた部分)に配置し、この部分において、パッチパターン12とグランドパターン22を、それぞれ、スペーサの上面と下面に固定する。スペーサは、樹脂等の絶縁体からなる。たとえば、スペーサの上面と下面に、パッチパターン12とグランドパターン22が、接着またはネジ止めされる。便宜上、図9(a)では、パッチパターン12とグランドパターン22とを結合するための結合部材(スペーサを含む)が図示省略されている。
【0076】
本実施例においても、上記実施例1、2と同様、パッチパターン12とグランドパターン22の間には、誘電体板が介在しておらず、空間となっている。すなわち、パッチパターン12とグランドパターン22の間には、空気が介在する。また、グランドパターン22とパッチパターン12の間隔は、上記実施例1、2と同様、20mmである。
【0077】
グランドパターン22とパッチパターン12は、平面視において中心が一致し、また、対応する辺が互いに平行となっている。このようにグランドパターン22とパッチパターン12を配置すると、平面視において、パッチパターン12の穴12bの中心と、これらの穴12bに対応するグランドパターン22の穴22bの中心とが一致する。これにより、2つの穴12b、22bを通して向う側が良好に見えるようになる。なお、給電点32の位置も、上記実施例1、2と同様である。
【0078】
本実施例においても、上記実施例2と同様、パッチアンテナの特性が最適になるように、パッチパターン21の大きさが、124mm角に設定され、上記実施例1のパッチパターン10よりも一回り小さくなっている。
【0079】
図9(b)は、本実施例に係るパッチアンテナの指向性のシミュレーション結果である。かかるシミュレーションは、上記実施例と同様、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSを使って行った。
【0080】
図示の如く、本実施例に係るパッチアンテナにおいても、正面方向(Z軸正方向)への利得が、背面方向(Z軸負方向)への利得よりも、顕著に大きい。本実施例のパッチアンテナでは、アンテナ利得が+8.3dBiと、上記比較例のパッチアンテナに比べ、若干低下(1.3dB=26%)したが、この利得によっても、十分な指向性特性が得られる。
【0081】
加えて、本実施例では、パッチパターン11とグランドパターン21の略全領域に穴12b、22bが形成されたため、グランドパターン21の全領域の約98%の領域において、穴22bを介して、パッチアンテナの向こう側を見ることができる。よって、かかるパッチアンテナを、ユーザの視線の方向に向けて配置した場合にも、パッチアンテナによってユーザの視界が遮られにくく、ユーザは、目標とするRFIDタグを適正に検知することができる。
【0082】
<実施例4>
図10(a)は、実施例4に係るパッチアンテナの斜視図である。
【0083】
上記実施例1〜3では、穴のピッチが20mmであった。このピッチは、UHF帯のRFIDで使用される電波の波長(λ=315mm)の1/16程度である。これに対し、本実施例では、穴13b、23bのピッチが30mmに設定されている。このピッチは、
上記電波の波長の1/10程度である。穴13b、23bは、それぞれ、28mm角となっている。
【0084】
パッチパターン13とグランドパターン23には、穴13b、23bの他、給電点33の周囲に、穴13b、23bの無い板部13a、23aが形成されている。パッチパターン13は、上記実施例3と同様、中央に直方体のスペーサを配置することにより、グランドパターン23に支持される。スペーサは、給電点33に掛からないように配置される。たとえば、スペーサの上面と下面に、パッチパターン13とグランドパターン23が、接着またはネジ止めされる。
【0085】
以上の構成を除き、本実施例のパッチアンテナの構成は、上記実施例3と同じである。本実施例において、パッチパターン13の表面電流が大きい領域には、パッチパターン13の縁の部分が存在する。また、グランドパターン23の表面電流が大きい領域には、板部23aまたは隣り合う穴23bとの間の境界部分が存在する。
【0086】
本実施例に係るパッチアンテナの指向性について、上記実施例と同様、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSを使ってシミュレーションしたところ、アンテナ利得は+7.6dBiであった。本実施例のパッチアンテナでは、上記比較例のパッチアンテナに比べ、利得(+7.6dBi)がやや低下(2dB=37%)するが、この利得によっても、十分な指向性特性が得られる。
【0087】
加えて、本実施例では、パッチパターン13とグランドパターン23の給電点33周辺(板部13a、23a)を除く領域に穴13b、23bが形成されたため、グランドパターン23の全領域の約96%の領域において、穴23bを介して、パッチアンテナの向こう側を見ることができる。よって、かかるパッチアンテナを、ユーザの視線の方向に向けて配置した場合にも、パッチアンテナによってユーザの視界が遮られにくく、ユーザは、目標とするRFIDタグを適正に検知することができる。
【0088】
なお、パッチアンテナの利得は、本実施例よりも上記実施例3の方が優れており、また、穴を通して見通し得る領域の広さも、本実施例よりも上記実施例3の方が優れている。このことから、穴のピッチは、電波の波長の1/10とするよりも、電波の波長の1/16程度とするのが有利であると言える。
【0089】
<実施例5>
上記実施例1ないし4では、パッチパターンやグランドパターンに穴を形成することにより、パッチアンテナの向こう側を見通せるよう構成された。これに対し、本実施例に係るパッチアンテナでは、パッチパターンとグランドパターンを切り欠くことにより、パッチアンテナの向こう側を見通せるよう構成されている。
【0090】
図10(a)は、実施例4に係るパッチアンテナの斜視図である。図示の如く、本実施例に係るパッチアンテナは、導電性の金属薄板からなるパッチパターン14と、同じく導電性の金属薄板からなるグランドパターン24とを備える。パッチパターン14およびグランドパターン24は、それぞれ、一様な厚みを有する。
【0091】
平面視において、パッチパターン14は、所定の大きさの長方形が外縁に接する形状を有し、また、グランドパターン24も、所定の長方形が外縁に接する形状を有する。パッチパターン14の外縁に接する長方形の中心(以下、「パッチパターン14の中心」という)とグランドパターン24の外縁に接する長方形の中心(以下、「グランドパターン24の中心」という)とが平面視において一致し、且つ、これら長方形の対応する辺が互いに平行となるように、パッチパターン14とグランドパターン24が、所定の間隔をおい
て配置される。
【0092】
なお、図10(b)には、便宜上、グランドパターン24の中心を原点とし、上記長方形の隣り合う2辺にそれぞれ平行な方向をX軸方向およびY軸方向とするX−Y−Z軸が設定されている。
【0093】
パッチパターン14は、長方形の薄板に、X軸負方向およびX軸正方向の切り欠きD11、D12が設けられた形状を有する。パッチパターン14は、Y軸方向に並ぶ一対の板部14aと、これら2つの板部14aをY軸方向に連結する連結部14bとを有する。2つの板部14aは同じ寸法を有する。板部14aのX軸方向の長さは130mm、Y軸方向の幅は20mmである。連結部14bのY軸方向の長さは130mmである。2つの板部14aは、それぞれX軸に平行となっている。
【0094】
グランドパターン24は、長方形の薄板に、X軸負方向およびX軸正方向の切り欠きD21、D22が設けられた形状を有する。グランドパターン24は、Y軸方向に並ぶ一対の板部24aと、これら2つの板部24aをY軸方向に連結する連結部24bとを有する。2つの板部24aは同じ寸法を有する。板部24aのX軸方向の長さは300mm、Y軸方向の幅は40mmである。連結部24bのY軸方向の長さは110mm、X軸方向の幅は40mmである。2つの板部24aは、それぞれX軸に平行となっている。
【0095】
パッチパターン14は、グランドパターン24と平行となるように、グランドパターン24に支持される。具体的には、パッチパターン14の外縁に接する長方形の四隅が、樹脂等の絶縁体からなる円柱状のスペーサを介して、グランドパターン24に結合される。たとえば、スペーサの上面と下面に、パッチパターン14とグランドパターン24が、接着またはネジ止めされる。便宜上、図10(b)では、パッチパターン14とグランドパターン24とを結合するための結合部材(スペーサを含む)が図示省略されている。
【0096】
なお、本実施例においても、パッチパターン14とグランドパターン24の間には、誘電体板が介在しておらず、空間となっている。すなわち、パッチパターン14とグランドパターン24の間には、空気が介在する。本実施例においても、グランドパターン24とパッチパターン14の間隔は20mmである。
【0097】
本実施例では、パッチパターン14の中心からY軸方向に55mmの点に、給電点34となる穴が形成されている。また、グランドパターン24の中心からY軸方向に55mmの点に、同軸コネクタの誘電体と同じ直径(3mmφ〜9mmφ)の穴が形成される。この穴に、同軸コネクタが下向きに取り付けられる。同軸コネクタの内導体(1mmφ〜3mmφ)がパッチパターン14まで伸び、給電点34において電気的に連結される。
【0098】
なお、図10(b)に示した形状および各部の寸法は、アンテナ利得の低下をできる限り防ぎながら、グランドパターン24とパッチパターン14の周囲を、上記比較例の構成から切り欠いて、アンテナ特性が好ましい値となるように調整したものである。図10(b)において、パッチパターン14に破線で示した領域は、図3(a)の“High”と付記された領域に対応し、また、グランドパターン24に破線で示した領域は、図3(b)の“High”と付記された領域に対応する。本実施例において、パッチパターン14の表面電流が大きい領域には、板部14aが存在し、また、グランドパターン24の表面電流が大きい領域には、板部24aまたは連結部24bが存在する。
【0099】
本実施例に係るパッチアンテナの指向性について、上記実施例と同様、アンソフト社の3次元電磁界シミュレータHFSSを使ってシミュレーションしたところ、アンテナ利得は+7.3dBiであった。本実施例のパッチアンテナでは、上記比較例のパッチアンテ
ナに比べ、利得(+7.3dBi)がやや低下(2.3dB=41%)するが、この利得によっても、十分な指向性特性が得られる。
【0100】
加えて、本実施例では、パッチパターン14とグランドパターン24が切り欠かれた構成であるため、切り欠かれた部分を介して向こう側を見ることができ、明快な視界を得ることができる。
【0101】
なお、本実施例において、パッチパターン14とグランドパターン24の形状は、種々の変更が可能である。
【0102】
たとえば、図11(a)に示すように、パッチパターン14の連結部14bをX軸正方向とX軸負方向に拡張し、連結部14bのX軸正側に切り欠きを設けないようにしても良い。また、図11(b)に示すように、パッチパターン14に切り欠きを設けないようにしても良い。図11(b)の場合、図示のように、グランドパターン24のX軸負側の切り欠きD22を小さくしても良い。また、図12(a)に示すように、パッチパターン14に切り欠きを形成せずに、グランドパターン24のX軸負側の切り欠きD22に対応するパッチパターン14の領域に、網目状に穴14cを形成しても良い。また、図12(b)のように、グランドパターン24のX軸正側の切り欠きを形成せずに、穴24cを形成しても良い。
【0103】
図11および図12の構成においても、表面電流が高い領域にパッチパターン14およびグランドパターンが存在するので、図10(b)と同様のアンテナ特性が得られるものと想定される。
【0104】
以上、実施例1ないし実施例5に係るパッチアンテナによれば、パッチアンテナの指向性を確保しながら、パッチアンテナの向こう側を見通すことが可能となる。よって、たとえば、かかるパッチアンテナを、工場や倉庫において、RFIDタグが付けられた荷物からIDを検知するために荷物運搬用のフォークリフトに取り付けたとしても、運転手の視界を良好に確保しながら、目標とする荷物にパッチアンテナをフォーカスさせることができる。
【0105】
以上、本発明に係る種々の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0106】
たとえば、上記実施例1〜4では、パッチパターンおよびグランドパターンの形状が正方形とされたが、これらの形状が長方形等の他の方形形状であっても良く、あるいは、円形や楕円形であっても良い。
【0107】
図13は、パッチパターンとグランドパターンを円形とした場合のパッチアンテナの平面図である。同図(a)は、パッチパターン15を示す図、同図(b)はグランドパターン25を示す図である。この場合、パッチパターン15の表面電流は、同図(a)に破線で模式的に示す領域に集中し、グランドパターン25の表面電流は、同図(b)に破線で模式的に示す領域に集中する。したがって、パッチパターン15またはグランドパターン25に穴や切り欠きを形成する場合には、これらの表面電流を妨げない領域に、穴や切り欠きを形成すれば良い。たとえば、同図(b)において、グランドパターン25の領域のうち、一点鎖線で示すパッチパターン15の直下の領域25aを除いた領域に、複数の穴を形成する。
【0108】
また、穴の形状は上記に限定されるものではなく、正方形の他、長方形や円形等、他の形状を用いても良い。
【0109】
さらに、パッチパターンとグランドパターンの寸法は、上記に限定されるものではなく、適宜、他の寸法を用いられ得る。
【0110】
また、上記実施例では、パッチパターンとグランドパターンの間を空気層としたが、パッチパターンとグランドパターンの間に誘電体板を介在させても良い。ただし、アンテナ利得を高めるためには、上記実施例のように、パッチパターンとグランドパターンの間を空気層とするのが望ましい。
【0111】
また、上記実施例1〜4では、穴のピッチとして、20mm(波長の1/16)と30mm(波長の1/10)を示したが、20mm(波長の1/16)よりも小さくしても良い。穴のピッチを小さくすると、パッチアンテナの利得を向上させることを期待できるが、ピッチを小さくしすぎると、穴のサイズが小さくなり、アンテナの向こうが見通しにくくなり、また、穴に塵埃が溜まり易くなる。よって、穴のピッチは10mm(波長の1/30)程度までに抑えるのが望ましい。上記シミュレーション結果からは、穴のピッチは20mm(波長の1/16)程度とするのが最良であると考えられる。
【0112】
また、パッチアンテナで使用する波長帯は、上記の波長帯に限らず、他に種々の変更が可能である。さらに、本発明は、フォークリフトに取り付けられるパッチアンテナの他、種々のシチュエーションにおいて用いられ得るものである。
【0113】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
10、11、12、13、14 … パッチパターン
10a、11a、12a、13a、14c … 穴
20、21、22、23、24 … グランドパターン
20a、21a、22a、23a、24c … 穴
30、31、32、33、34 … 給電点
D11、D12、D21、D22 … 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のグランドパターンと、
前記グランドパターンに対し所定の間隔をもって支持された薄板状のパッチパターンと、を備え、
前記グランドパターンに、複数の穴を網目状に形成した、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載したマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンの領域のうち少なくとも前記パッチパターンの真下の領域には、前記穴が形成されない、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記パッチパターンに、複数の穴を網目状に形成した、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記パッチパターンの中心と前記パッチパターンの給電点とを結ぶ直線を挟む前記パッチパターンの端縁部分には、前記穴が形成されず、
前記グランドパターンの前記端縁部分の直下の領域にも、前記穴が形成されない、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記パッチパターンの領域のうち、動作時に高周波電流が集中する領域には、前記穴が形成されない、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンの領域のうち、動作時に高周波電流が集中する領域には、前記穴が形成されない、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項7】
請求項3に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンの給電部を除く全ての領域と、前記パッチパターンの給電部を除く全ての領域に、それぞれ、複数の穴が網目状に形成される、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項8】
請求項3ないし5、7の何れか一項に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンに形成された前記穴の中心と、前記パッチパターンに形成された前記穴の中心が、前記グランドパターンと前記パッチパターンの重なり方向において一致している、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンに形成された前記穴と、前記パッチパターンに形成された前記穴が、同じ形状を有する、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンに形成された前記穴のピッチが、使用する電波の波長の1/10〜1/30である、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項11】
請求項1ないし9の何れか一項に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記グランドパターンに形成された前記穴のピッチが、使用する電波の波長の1/16である、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項12】
薄板状のグランドパターンと、
前記グランドパターンに対し所定の間隔をもって支持された薄板状のパッチパターンと、を備え、
前記グランドパターンは、前記パッチパターンの給電点の直下の領域、および、前記パッチパターンの中心と前記パッチパターンの給電点とを結ぶ直線を挟む前記パッチパターンの端縁部分の直下の領域以外の領域に、切り欠きが設けられている、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。
【請求項13】
請求項12に記載のマイクロ波平面アンテナにおいて、
前記パッチパターンは、前記端縁部分以外の領域に、切り欠きが設けられている、
ことを特徴とするマイクロ波平面アンテナ。

【図1】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249204(P2012−249204A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121124(P2011−121124)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】