マイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法
【課題】電波吸収体の温度をより高精度に制御することができるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法を得る。
【解決手段】電波吸収体62の温度を検出する温度検出装置102の検出温度と目標温度との差から、電波吸収体62を加熱する第1の加熱装置101への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、算出した供給電力量に応じて、単位時間を複数に分けた区分時間ごとに、第1の加熱装置101へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチ22を制御するスイッチ制御工程とを備えている。
【解決手段】電波吸収体62の温度を検出する温度検出装置102の検出温度と目標温度との差から、電波吸収体62を加熱する第1の加熱装置101への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、算出した供給電力量に応じて、単位時間を複数に分けた区分時間ごとに、第1の加熱装置101へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチ22を制御するスイッチ制御工程とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工衛星等の宇宙機に搭載されるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星に回転可能に取り付けられた構体と、構体に対して固定され観測対象から入射する観測用マイクロ波を反射する主反射鏡と、人工衛星に対して固定され深宇宙から入射する低温校正用マイクロ波を反射する低温校正用反射鏡と、人工衛星に対して固定され高温校正用マイクロ波を放射する高温校正源と、構体に対して固定され、主反射鏡により反射された観測用マイクロ波、低温校正用反射鏡により反射された低温校正用マイクロ波および高温校正源により放射された高温校正用マイクロ波を受信する一次放射器とを備えたマイクロ波放射計が知られている。
【0003】
高温校正源は、高温校正用マイクロ波を放射する電波吸収体と、電波吸収体の温度を検出する温度センサと、電波吸収体に取り付けられたヒータと、ヒータへの電力の供給を制御するヒータ制御装置とを有している。ヒータ制御装置は、単位時間ごとに温度センサの検出温度と目標温度とを比較して、温度センサの検出温度が目標温度よりも低い場合には、単位時間の間、ヒータへ電力を供給しつづけ、温度センサの検出温度が目標温度よりも高い場合には、単位時間の間、ヒータへの電力の供給を停止する。これにより、電波吸収体の温度が目標温度に近い温度となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−162287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマイクロ波放射計では、単位時間の間、ヒータに電力が常に供給されるか、または、ヒータへの電力の供給が常に停止されるので、目標温度を中心に電波吸収体の温度のオーバーシュートや温度変動(ハンチング)が生じてしまい、電波吸収体の温度を高精度に制御することができないという問題点があった。
【0006】
この発明は、電波吸収体の温度をより高精度に制御することができるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法は、ベースに対して回転可能に設けられた構体と、前記構体に対して固定され、観測対象からの観測用マイクロ波を反射する主反射鏡と、前記構体に対して固定され、前記構体が回転するとともに移動して、前記主反射鏡に反射された前記観測用マイクロ波を受信する一次放射器と、前記ベースに対して固定され、深宇宙からの低温校正用マイクロ波を反射して、低温校正位置にある前記一次放射器に前記低温校正用マイクロ波を入射させる低温校正用反射鏡と、前記ベースに対して固定され、高温校正用マイクロ波を放射し、高温校正位置にある前記一次放射器に前記高温校正用マイクロ波を入射させる高温校正源とを備え、前記高温校正源は、前記高温校正位置にある前記一次放射器に対向する開口部が形成された収容箱と、前記収容箱の内側に設けられ、前記高温校正用マイクロ波を放射する電波吸収体と、前記収容箱の外側を覆った断熱材と、電力が供給されることにより前記電波吸収体を加熱する第1の加熱装置と、前記第1の加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチと、前記電波吸収体の温度を検出する温度検出装置と、前記温度検出装置の検出温度に基づいて、前記電波吸収体の温度が目標温度となるように前記第1のスイッチを制御する温度制御装置とを有し、前記一次放射器が受信した前記観測用マイクロ波の強度の値を用いて前記観測対象の温度を測定し、前記一次放射器が受信した前記低温校正用マイクロ波の強度の値と、前記深宇宙の温度の値と、前記一次放射器が受信した前記高温校正用マイクロ波の強度の値と、そのときの前記温度検出装置の検出温度の値とを用いて、前記一次放射器が受信する前記観測用マイクロ波の強度の値から測定される前記観測対象の温度の値を校正するマイクロ波放射計における前記高温校正源の制御方法であるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法であって、前記検出温度と前記目標温度との差から前記第1の加熱装置への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、前記供給電力量に応じて、前記単位時間を複数に分けた区分時間ごとに前記第1のスイッチを制御するスイッチ制御工程とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、電波吸収体の温度を検出する温度検出装置の検出温度と目標温度との差から電波吸収体を加熱する第1の加熱装置への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、算出した供給電力量に応じて、単位時間を複数に分けた区分時間ごとに第1のスイッチを制御するスイッチ制御工程とを備えているので、単位時間ごとに第1のスイッチを制御する場合と比較して、第1の加熱装置に供給される電力量を、算出された供給電力量に近づけることができる。その結果、電波吸収体の温度をより高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るマイクロ波放射計を示す斜視図である。
【図2】図1の高温校正源本体および熱制御パネル装置を示す縦断面図である。
【図3】図1のマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。
【図4】図3の第1の加熱装置へ供給される電力の時間変化と電波吸収体の温度の時間変化とを示す図である。
【図5】図3の温度制御装置に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【図6】従来装置により加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図である。
【図7】図3の電力供給制御装置により第1の加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図である。
【図8】図3の温度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】図3の電波吸収体の温度の実測値の時間変化を示す図である。
【図10】図3の第1の加熱装置への供給電力量の実測値の時間変化を示す図である。
【図11】図5の第1の供給電力パターンテーブルの変形例を示す図である。
【図12】実施の形態2に係るマイクロ波放射計の温度制御装置に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【図13】図12の第1の供給電力パターンテーブルにより第1の加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図である。
【図14】実施の形態3に係るマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。
【図15】図14の温度制御装置に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【図16】図14の温度制御装置に記憶されている第2の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るマイクロ波放射計を示す斜視図である。図において、マイクロ波放射計は、地球表面や大気などの観測対象から放射される観測用マイクロ波を受信して、この観測用マイクロ波の波長成分を測定することにより、水蒸気量、海面水温、海氷密接度等の物理量の分布を算出することを目的とした輝度温度分布測定装置である。
【0012】
マイクロ波放射計は、人工衛星(ベース)1に取り付けられた構体2と、構体2に取り付けられたトラス構造の連結棒3と、観測対象から放射された観測用マイクロ波を反射する主反射鏡4と、深宇宙から放射された低温校正用マイクロ波を反射する低温校正用反射鏡5と、高温校正用マイクロ波を放射する高温校正源本体6とを備えている。また、マイクロ波放射計は、主反射鏡4により反射された観測用マイクロ波、低温校正用反射鏡5により反射された低温校正用マイクロ波および高温校正源本体6により放射された高温校正用マイクロ波を受信する一次放射器7と、高温校正源本体6を加熱する熱制御パネル装置8とを備えている。
【0013】
構体2は、構体2の中心を通る回転中心軸線9を中心に人工衛星1に対して回転可能となっている。構体2には、高温校正源本体6および熱制御パネル装置8へ電力を供給する電力供給制御装置20が設けられている。
【0014】
高温校正源本体6と、熱制御パネル装置8と、電力供給制御装置20とから、高温校正源100が構成されている。
【0015】
主反射鏡4は、連結棒3を介して構体2に対して固定されている。したがって、主反射鏡4は、構体2の回転に連動して、回転中心軸線9を中心に回転する。
【0016】
低温校正用反射鏡5および高温校正源本体6のそれぞれは、人工衛星1に対して固定されている。したがって、低温校正用反射鏡5および高温校正源本体6のそれぞれは、構体2の回転により、構体2に対する相対位置が変化する。
【0017】
一次放射器7は、構体2に対して固定されている。したがって、一次放射器7は、構体2の回転に連動して、回転中心軸線9を中心に回転する。一次放射器7の位置は、一次放射器7が回転中心軸線9を中心に回転することにより、主反射鏡4により反射された観測用マイクロ波を受信する観測位置と、低温校正用反射鏡5により反射された低温校正用マイクロ波を受信する低温校正位置と、高温校正源本体6により放射される高温校正用マイクロ波を受信する高温校正位置とに変化する。
【0018】
熱制御パネル装置8は、構体2と高温校正源本体6との間に配置されるようにして、構体2に固定されている。また、熱制御パネル装置8は、環状に形成されている。また、熱制御パネル装置8は、回転中心軸線9が熱制御パネル装置8の中心を通るように配置されている。また、熱制御パネル装置8は、構体2の回転に連動して、回転中心軸線9を中心に回転する。
【0019】
図2は図1の高温校正源本体6および熱制御パネル装置8を示す縦断面図である。高温校正源本体6は、人工衛星1(図1)に対して固定された収容箱61と、収容箱61に収容された複数の電波吸収体62と、電波吸収体62の温度を検出する電波吸収体温度センサ63と、収容箱61を加熱する複数の収容箱ヒータ64と、収容箱61の温度を検出する複数の収容箱温度センサ65と、収容箱61を外側から覆った断熱材であるMLI(Multilayer Insulator)66とを有している。
【0020】
収容箱61は、構体2から離れて設けられ収容箱61の天井部分となるトッププレート611と、トッププレート611から構体2側に延び収容箱61の側壁部分となる4枚の側面プレート612とから構成されている。つまり、収容箱61の形状は、構体2側に開口部613が形成された中空直方体形状となっている。収容箱61は、開口部613が熱制御パネル装置8に対向するように配置されている。また、収容箱61は、熱制御パネル装置8が構体2の回転に連動して回転しても、開口部613が熱制御パネル装置8に常に対向するようになっている。
【0021】
電波吸収体62の形状は、四角錐形状となっている。電波吸収体62は、電波吸収体62の底面がトッププレート611に面接触するようにトッププレート611に固定されている。また、電波吸収体62は、電波吸収体62の先端部が開口部613に指向するように配置されている。電波吸収体62を構成する材料は、誘電体材料となっている。したがて、電波吸収体62による不要な電波の反射が抑制される。
【0022】
電波吸収体温度センサ63は、電波吸収体62の表面に貼り付けられている。なお、電波吸収体温度センサ63は、電波吸収体62の内部に取り付けられてもよい。
【0023】
収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65のそれぞれは、トッププレート611および側面プレート612のそれぞれに取り付けられている。また、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65のそれぞれは、収容箱61の外側に配置されている。また、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65それぞれは、収容箱61とMLI66とに挟まれるようにして配置されている。なお、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65は、収容箱61の内側に配置されてもよい。
【0024】
電波吸収体62は、収容箱ヒータ64が収容箱61を加熱することにより、加熱される。つまり、収容箱ヒータ64は、電波吸収体62を間接的に加熱する。収容箱ヒータ64が収容箱61を介して電波吸収体62を加熱するので、電波吸収体62を直接的に加熱する場合と比較して、電波吸収体62の温度のばらつきを抑制することができる。収容箱61と電波吸収体62との間では、熱伝導や放射により、熱の交換が行われる。したがって、収容箱温度センサ65は、収容箱61を介して電波吸収体62の温度を検出する。つまり、収容箱温度センサ65は、電波吸収体62の温度を間接的に検出する。
【0025】
MLI66は、最表層に、太陽光吸収率の小さい銀蒸着PEI(ポリエーテルイミド)が使用されている。これにより、太陽光がMLI66に入射することによるMIL66の温度上昇が抑制される。なお、MLI66の最表層には、銀蒸着PEIに限らず、例えば、銀蒸着テフロン(テフロンは登録商標)が使用されてもよい。MLI66が収容箱61、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65を覆うことにより、太陽光の熱が、収容箱61、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65に影響することが抑制され、また、収容箱61、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65の熱が深宇宙へ漏れてしまうことが抑制される。
【0026】
熱制御パネル装置8は、熱制御パネル本体81と、熱制御パネル本体81を加熱する複数の熱制御パネルヒータ82と、熱制御パネル本体81の温度を検出する熱制御パネル温度センサ83と、構体2に固定され熱制御パネル本体81を支持する断熱材のスペーサ84とを有している。熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83のそれぞれは、熱制御パネル本体81の構体2側の面に取り付けられている。なお、熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83は、熱制御パネル本体81の電波吸収体62側の面に取り付けられてもよい。
【0027】
熱制御パネル本体81は、太陽光吸収率が小さく、かつ、赤外放射率の大きい白色塗装で表面処理されている。これにより、太陽光が熱制御パネル本体81に入射する時における熱制御パネル本体81の温度上昇が抑制される。
【0028】
電波吸収体62は、熱制御パネルヒータ82が熱制御パネル本体81を加熱することにより、加熱される。つまり、熱制御パネルヒータ82は、電波吸収体62を間接的に加熱する。熱制御パネルヒータ82が熱制御パネル本体81を介して電波吸収体62を加熱するので、電波吸収体62を直接的に加熱する場合と比較して、電波吸収体62の温度のばらつきを抑制することができる。電波吸収体62と熱制御パネル本体81との間では、放射により、熱の交換が行われる。したがって、熱制御パネル温度センサ83は、熱制御パネル本体81を介して電波吸収体62の温度を検出する。つまり、熱制御パネル温度センサ83は、電波吸収体62の温度を間接的に検出する。
【0029】
構体2と熱制御パネル本体81との間にスペーサ84が配置されているので、構体2の熱が、熱制御パネル本体81、熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83に影響することが抑制され、また、熱制御パネル本体81、熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83の熱が、構体2へ漏れてしまうことが抑制される。これにより、熱制御パネル本体81の温度を構体2から独立して制御することができる。
【0030】
収容箱ヒータ64および熱制御パネルヒータ82は、電熱器やペルチェ素子など、電力が供給されることにより加熱対象部材を加熱することができる部材から構成されている。
【0031】
図3は図1のマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。図において、収容箱ヒータ64(図1)および熱制御パネルヒータ82(図1)から、電波吸収体62を加熱する第1の加熱装置101が構成されている。収容箱温度センサ65および熱制御パネル温度センサ83から、電波吸収体62の温度を検出する温度検出装置102が構成されている。電力供給制御装置20は、第1の加熱装置101への電力を供給する電源装置21と、電源装置21から第1の加熱装置101へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチ22と、第1のスイッチ22を制御する温度制御装置23とを有している。第1のスイッチ22の状態がON状態の場合に電源装置21から第1の加熱装置101へ電力が供給され、第1のスイッチ22の状態がOFF状態の場合に電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給が停止される。
【0032】
温度制御装置23には、温度検出装置102の検出温度が入力されるようになっている。温度制御装置23には、第1のスイッチ22を制御する温度制御プログラム231が組み込まれている。温度制御装置23は、温度制御プログラム231により、温度検出装置102の検出温度に基づいて、電波吸収体62の温度が目標温度となるように第1のスイッチ22の状態をON状態またはOFF状態に切り替える制御であるON/OFF制御を行う。温度制御装置23は、トッププレート611(図2)、側面プレート612(図2)および熱制御パネル本体81(図2)のそれぞれの温度を独立して制御することができるようになっている。
【0033】
次に、マイクロ波放射計の校正について説明する。図1に示すように、構体2は、回転中心軸線9を中心に、1.5秒に一回転の速度で人工衛星1に対して回転する。これにより、一次放射器7が回転中心軸線9を中心に移動して、さらに、主反射鏡4および熱制御パネル装置8が回転中心軸線9を中心に回転する。
【0034】
一次放射器7が移動して、一次放射器7の位置が高温校正位置となった場合に、一次放射器7は、高温校正源本体6から放射された高温校正用マイクロ波を受信する。その後、一次放射器7が移動して、一次放射器7の位置が低温校正位置となった場合に、一次放射器7は、低温校正用反射鏡5により反射された低温校正用マイクロ波を受信する。
【0035】
マイクロ波放射計は、一次放射器7が受信した高温校正用マイクロ波の強度の値と、そのときに電波吸収体温度センサ63が検出した電波吸収体62の温度の値と、一次放射器7が受信した低温校正用マイクロ波の強度の値と、深宇宙の温度の値とを用いて、観測用マイクロ波の強度と、観測対象の温度との相関式を算出する。
【0036】
マイクロ波放射計は、算出した相関式を用いて、一次放射器7が受信する観測用マイクロ波の強度の値から測定される観測対象の温度の値を校正する。構体2が一回転する間に、一次放射器7は、観測用マイクロ波、高温校正用マイクロ波および低温校正用マイクロ波のそれぞれを受信するので、一次放射器7が受信する観測用マイクロ波の強度の値から測定される観測対象の温度の値は、1.5秒毎に繰り返して校正される。これにより、測定される観測対象の温度の精度が向上する。
【0037】
次に、第1の加熱装置101への電力の供給の制御について説明する。図4は図3の第1の加熱装置101へ供給される電力の時間変化と電波吸収体62の温度の時間変化とを示す図である。図4では、任意の時間における温度検出装置102の検出温度および第1の加熱装置101へ供給される電力が示されている。温度制御装置23(図3)は、単位時間Δtごとに第1の加熱装置101(図3)への供給電力量を算出する。以降、単位時間Δtをフレームと呼ぶ。1フレームは、さらにi個に区分けされている。以降、区分けされた部分をセグメントと呼ぶ。各セグメントの長さ(時間)は、Δt/iである。
【0038】
この例では、連続する3つのフレームの番号をn−1、n、n+1とする。ただし、nは任意の自然数である。この例で用いる配列名や変数名は、一例であり、これら以外にどのような配列名や変数名であっても問題ない。また、この例では、変数の数が1個であるT(n)等の配列を用いて説明するが、これは、説明を容易にするためであり、プログラム上、問題なければ複数の変数を用いた配列であっても問題ない。
【0039】
温度検出装置102(図3)の検出温度は、各フレームの始まりの時刻であるサンプル時刻n−1、n、n+1・・・ごとにサンプルされ、温度制御装置23に入力される。ここで、時刻の計測は、人工衛星1内からの時間情報によって行われる。なお、時刻の計測は、これに限らず、例えば、温度制御装置23内に時間計測装置を設けて、この時間計測装置による時間情報によって行われてもよい。
【0040】
温度制御装置23は、温度制御プログラム231により、予め設定された目標温度T0および温度検出装置102の検出温度に基づいて、第1のスイッチ22に信号を送り、電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給を制御する。
【0041】
ここで、第1のスイッチ22の状態は、電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給がされるON状態と、電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給が遮断されるOFF状態との何れか一方の状態のみとなるので、電源装置21から第1の加熱装置101へ供給される電力は、電源装置21の電力の0%または100%の何れかとなる。
【0042】
温度制御装置23の動作は、基本的には一般的なPID制御プログラムによる動作に類似する。本発明は、第1の加熱装置101への供給電力量の算出を各サンプル時刻nで1フレームごとに行い、さらに、算出された供給電力量に応じてセグメントごとに第1のスイッチ22が制御されるように、予めパターン化されていることに特徴がある。
【0043】
温度制御装置23には、温度制御パラメータである、目標温度T0、ゲインKP、積分時間τI、微分時間τDが設定されている。これらの温度制御パラメータの値は、最適値を持つが、電波吸収体62の熱容量や放熱特性などにより異なるため、温度制御ケースごとに最適化をする必要がある。
【0044】
温度制御装置23は、目標温度T0と、各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける温度検出装置102の検出温度との差(偏差)en−2、en−1、enを算出し、算出された差en−2、en−1、enを用いて、下記の式(1)、(2)から、フレームnにおける第1の加熱装置101への供給電力量Qnを算出するようになっている。
【0045】
Qn=Qn−1+ΔQn (1)
ΔQn=KP{(en−en−1)+(Δt/τI)en+(ΔD/Δt)(en−2en−1+en−2)} (2)
【0046】
温度制御装置23は、第1のスイッチ22のための第1の供給電力パターンテーブルを記憶している。図5は図3の温度制御装置23に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。この例では、1フレームあたりのセグメント数をi=5としている。セグメント数が大きいほど、温度制御装置23による温度制御の精度が向上する。セグメント数の上限値は、温度制御装置23の処理能力や第1のスイッチ22の切替速度などによって決められる。
【0047】
図において、Qmaxは、1フレームの全時間に渡って、第1の加熱装置101に電力を供給した場合、つまり、全てのセグメントにおいて第1のスイッチ22の状態がON状態であった場合の1フレームあたりの供給電力量である。したがって、Qmaxは、1フレームにおいて第1の加熱装置101へ供給できる最大供給電力量である。
【0048】
上記の式(1)、(2)から算出される供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって、各セグメントでの第1の加熱装置101へ電力が供給される第1の供給電力パターンが第1の供給電力パターンテーブルから決められる。この例では、第1の供給電力パターンは、Qn/Qmaxの値が大きくなるにつれて、第1のスイッチ22の状態をON状態とするセグメント数が0から1つずつ大きくなっている。第1の供給電力パターンのパターン数は、セグメント数+1であり、この例では、パターン数は、6である。
【0049】
図6は従来装置により加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図、図7は図3の電力供給制御装置20により第1の加熱装置101へ供給される電力の時間変化を示す図である。図6および図7では、1フレームごとの平均電力を示している。従来装置では、加熱装置へ電力が供給される回路を開閉するスイッチがフレームごとに制御される。したがって、加熱装置へ電力が供給されるフレームでは、常に加熱装置へ電力が供給される。つまり、そのフレームにおける供給電力の平均値は、電源装置21の電力の100%となる。また、加熱装置へ電力が供給されないフレームでは、供給電力の平均値は、電源装置21の電力の0%となる。
【0050】
これに対して、電力供給制御装置20では、フレームを区分けしたセグメントごとに第1のスイッチ22が制御される。したがって、第1の加熱装置101への供給電力のフレームごとの平均値は、従来装置と異なり、電源装置21の電力の0%〜100%の中間の値を持つようになる。すなわち、セグメントごとに第1のスイッチ22を制御することにより、第1の加熱装置101に供給される電力量を、算出された供給電力量Qnに近づけることができ、一般的なPID制御に類似した電波吸収体62の温度制御が可能となる。その結果、電波吸収体62の温度のオーバーシュートや温度変動(ハンチング)が生じにくくなるため、電波吸収体62の温度を高精度に制御することができる。
【0051】
図8は図3の温度制御装置23の動作を示すフローチャートである。まず始めに、フレームの長さであるサンプル時刻間隔Δtおよび1フレームあたりのセグメント数iを決定する(ステップS1)。さらに、各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける温度検出装置102の検出温度が入力されるために、T(n−2)、T(n−1)、T(n)を配列として確保し、T(n−2)、T(n−1)には、初期値を入力する(ステップS2)。ここで、T(n−2)、T(n−1)に入力される初期値としては、何℃であっても問題はない。
【0052】
次に、温度制御装置23が使用する温度制御パラメータである、目標温度T0、ゲインKP、積分時間τI、微分時間τDに変更があるか否かを判定し(ステップS3)、ステップS3で温度制御パラメータに変更がある場合には、目標温度T0、ゲインKP、積分時間τI、微分時間τDが入力される(ステップS4)。ステップS3で温度制御パラメータに変更がない場合には、ステップS4が省略されて、次へ進む。
【0053】
その後、温度検出装置102の検出温度を温度制御装置23が読み込み(ステップS5)、さらに、現在の時刻TIMEを人工衛星1内から温度制御装置23が読み込む(ステップS6)。その後、前回のサンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtだけ経過したか否かを温度制御装置23が判定する(ステップS7)。ステップS7で前回のサンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtが経過していないと温度制御装置23が判定した場合には、ステップS5に戻る。
【0054】
一方、ステップS7で、ステップS7で前回のサンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtだけ経過したと温度制御装置23が判定した場合には、サンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtだけ経過した時刻をサンプル時刻nとし、サンプル時刻nにおける温度検出装置102の検出温度をT(n)に入れ、また、サンプル時刻nを変数STIMEに入れる(ステップS8)。
【0055】
その後、各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける目標温度T0と各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける温度検出装置102の検出温度であるT(n−2)、T(n−1)、T(n)とのそれぞれの差(偏差)をen−2、en−1、enとし(ステップS9)、フレームnにおける第1の加熱装置101への供給電力量Qnを上記の式(1)、式(2)から求める(供給電力量算出工程)(ステップS10、ステップS11)。
【0056】
求められた供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって、第1の供給電力パターンを決定し(ステップS12)、セグメントごとに、第1のスイッチ22が制御され(スイッチ制御工程)、第1の加熱装置101に電力が供給される(ステップS13)。最後に、T(n−1)の値をT(n−2)に入力し、T(n)の値をT(n−1)に入力し(ステップS14)、ステップS3へ戻る。
【0057】
図9は図3の電波吸収体62の温度の実測値の時間変化を示す図、図10は図3の第1の加熱装置101への供給電力量Qnの実測値の時間変化を示す図である。図9では電波吸収体62の温度と目標温度T0との差(偏差)eを示し、図10では1フレームあたりの第1の加熱装置101への供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比に100を乗じた値を示している。
【0058】
図9および図10では、時刻0秒のときに外部から電波吸収体62へ熱を加えた場合の応答を計測している。図9に示すように、外部から電波吸収体62への熱入力の有無に関わらず、電波吸収体62の温度と目標温度T0との差は、±0.2K以内となっており、電力供給制御装置20により電波吸収体62の温度が高精度に制御されている。図10に示すように、外部熱入力後に、Qn/Qmaxの値の低下が見られ、外部からの熱の入力による電波吸収体62の温度上昇が抑制されており、電波吸収体62の温度の制御が正常に行われている。1フレームあたりのQn/Qmax×100の値は、0〜100の中間値をとり、フレームごとに加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する従来装置のように、0、100のどちらかをとることはないことがわかる。
【0059】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るマイクロ波放射計によれば、温度制御装置23は、温度検出装置102の検出温度と目標温度T0との差から第1の加熱装置101への供給電力量Qnをフレームごとに算出し、算出した供給電力量Qnに応じて、セグメントごとに第1のスイッチ22を制御するので、フレームごとに第1のスイッチ22を制御する場合と比較して、第1の加熱装置101に供給される電力量を、算出された供給電力量Qnに近づけることができる。その結果、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0060】
この発明に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、電波吸収体62の温度を検出する温度検出装置102の検出温度と目標温度T0との温度差から第1の加熱装置101への供給電力量Qnをフレームごとに算出する供給電力量算出工程と、算出した供給電力量Qnに応じて、セグメントごとに第1のスイッチ22を制御するスイッチ制御工程とを備えているので、フレームごとに第1のスイッチ22を制御する場合と比較して、第1の加熱装置101に供給される電力量を、算出された供給電力量Qnに近づけることができる。その結果、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態1では、Qn/Qmaxの値を、0〜0.2、0.2〜0.4・・・のように分割した第1の供給電力パターンテーブルを用いたが、例えば、図11に示すように、Qn/Qmaxの値を、0〜0.1、0.1〜0.3・・・ように分割した第1の供給電力パターンテーブルを用いても特に問題はなく、Qn/Qmaxの値の分割の仕方は任意である。ただし、Qn/Qmaxの値を均等に分割した方が、温度制御精度を向上させることができる。
【0062】
実施の形態2.
図12は実施の形態2に係るマイクロ波放射計の温度制御装置23に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図、図13は図12の第1の供給電力パターンテーブルにより第1の加熱装置101へ供給される電力の時間変化を示す図である。第1の加熱装置101へ電力が供給されるセグメントが複数ある第1の供給電力パターンでは、第1の加熱装置101へ電力が供給されるセグメントがフレームの中で均等に分散されている。つまり、第1のスイッチ22の状態がON状態となるセグメントが同一のフレームの中に複数ある場合に、第1のスイッチ22の状態がON状態となる各セグメントが、同一のフレームの中で偏らないように配置されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、第1の供給電力パターンは、第1の加熱装置101へ電力が供給されるセグメントがフレームにおいて均等に分散されていれば、どのような供給電力パターンであってもよい。
【0063】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、第1の加熱装置101への電力が供給される複数のセグメントは、フレームの中で分散されているので、フレームの中で第1の加熱装置101への電力が分散されて供給される。これにより、電波吸収体62の温度変動(ハンチング)が低減され、実施の形態1に係るマイクロ波放射器と比較して、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0064】
実施の形態3.
図14は実施の形態3に係るマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。図において、高温校正源100は、電波吸収体62を加熱する第2の加熱装置103をさらに備えている。第2の加熱装置103は、第1の加熱装置101のように間接的に電波吸収体62を加熱してもよく、または、第1の加熱装置101とは異なり、直接的に電波吸収体62を加熱してもよい。第2の加熱装置103の発熱量は、第1の加熱装置101の発熱量のほぼ1/5の値となっている。
【0065】
電源装置21は、第2の加熱装置103へ電力を供給するようになっている。電力供給制御装置20は、電源装置21から第2の加熱装置103へ電力が供給される回路を開閉する第2のスイッチ24をさらに有している。第2のスイッチ24の状態がON状態の場合に電源装置21から第2の加熱装置103へ電力が供給され、第2のスイッチ24の状態がOFF状態の場合に電源装置21から第2の加熱装置103への電力の供給が停止される。温度制御装置23は、温度制御プログラム231により、温度検出装置102の検出温度に基づいて、電波吸収体62の温度が目標温度となるように第1のスイッチ22および第2のスイッチ24のそれぞれをON/OFF制御する。温度制御装置23は、第1のスイッチ22のための第1の供給電力パターンテーブルと、第2のスイッチ24のための第2の供給電力パターンテーブルとを記憶している。温度制御プログラム231は、第1のスイッチ22および第2のスイッチ24の両方を制御するようになっている。
【0066】
図15は図14の温度制御装置23に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図、図16は図14の温度制御装置23に記憶されている第2の供給電力パターンテーブルを示す図である。第1の加熱装置101へ電力が供給される第1の供給電力パターンは、実施の形態1と同様にして、供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって決定される。
【0067】
第2の加熱装置103へ電力が供給される第2の供給電力パターンのパターン数は、第1の供給電力パターンのパターン数よりも大きく、30となっている。第2の供給電力パターンは、第1の供給電力パターンと同様に、供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって決定される。第1の加熱装置101の発熱量に対する第2の加熱装置103の発熱量が小さい程、第2の供給電力パターンのパターン数を大きくすることができる。これにより、第2の供給電力パターンを詳細化することができる。
【0068】
温度制御装置23は、第1の加熱装置101と第2の加熱装置103とを組み合わせて、電波吸収体62の温度を制御する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、実施の形態2のように、第1の加熱装置101への電力が供給される複数のセグメントや第2の加熱装置103への電力が供給される複数のセグメントがフレームの中で分散された構成であってもよい。
【0069】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、高温校正源100は電力が供給されることにより電波吸収体62を加熱し第1の加熱装置101よりも発熱量が小さい第2の加熱装置103と、第2の加熱装置103へ電力が供給される回路を開閉する第2のスイッチ24とをさらに備え、供給電力量算出工程では、温度制御装置23は、温度検出装置102の検出温度と目標温度との差から第1の加熱装置101および第2の加熱装置103への供給電力量Qnをフレームごとに算出し、スイッチ制御工程では、算出した供給電力量Qnに応じて、セグメントごとに第1のスイッチおよび21第2のスイッチ24を制御するので、実施の形態1に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法と比較して、供給される電力量を、算出された供給電力量Qnにさらに近づけることができる。その結果、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0070】
なお、各上記実施の形態では、収容箱61に収容箱ヒータ64が設けられ、収容箱ヒータ64が収容箱61を加熱することにより、電波吸収体62が間接的に加熱され、また、熱制御パネル本体81に熱制御パネルヒータ82が設けられ、熱制御パネルヒータ82が熱制御パネル本体81を加熱することにより、電波吸収体62が間接的に加熱される構成について説明したが、電波吸収体62に電波吸収体ヒータが設けられ、電波吸収体ヒータが電波吸収体62を直接的に加熱する構成であってもよい。この場合、電波吸収体62の温度を検出する電波吸収体温度センサの検出温度に基づいて、電波吸収体62の温度が目標温度となるように電波吸収体温度センサへ電力が供給される回路を開閉するスイッチが温度制御装置23により制御される。
【0071】
また、各上記実施の形態では、収容箱ヒータ64および熱制御パネルヒータ82から構成された第1の加熱装置101について説明したが、収容箱ヒータ64および熱制御パネルヒータ82の何れか一方から構成された第1の加熱装置101であってもよい。
【0072】
また、各上記実施の形態では、温度検出装置102が電波吸収体62の温度を検出し、検出温度が目標温度となるように電波吸収体62の温度が制御される構成について説明したが、温度検出装置102が収容箱61や熱制御パネル本体81の温度を検出して、検出温度が目標温度となるように収容箱61や熱制御パネル本体81の温度が制御される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 人工衛星(ベース)、2 構体、3 連結棒、4 主反射鏡、5 低温校正用反射鏡、6 高温校正源本体、7 一次放射器、8 熱制御パネル装置、9 回転中心軸、20 電力供給制御装置、21 電源装置、22 第1のスイッチ、23 温度制御装置、24 第2のスイッチ、61 収容箱、62 電波吸収体、63 電波吸収体温度センサ、64 収容箱ヒータ、65 収容箱温度センサ、66 MLI、81 熱制御パネル本体、82 熱制御パネルヒータ、83 熱制御パネル温度センサ、84 スペーサ、100 高温校正源、101 第1の加熱装置、102 温度検出装置、103 第2の加熱装置、231 温度制御プログラム、611 トッププレート、612 側面プレート、613 開口部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工衛星等の宇宙機に搭載されるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工衛星に回転可能に取り付けられた構体と、構体に対して固定され観測対象から入射する観測用マイクロ波を反射する主反射鏡と、人工衛星に対して固定され深宇宙から入射する低温校正用マイクロ波を反射する低温校正用反射鏡と、人工衛星に対して固定され高温校正用マイクロ波を放射する高温校正源と、構体に対して固定され、主反射鏡により反射された観測用マイクロ波、低温校正用反射鏡により反射された低温校正用マイクロ波および高温校正源により放射された高温校正用マイクロ波を受信する一次放射器とを備えたマイクロ波放射計が知られている。
【0003】
高温校正源は、高温校正用マイクロ波を放射する電波吸収体と、電波吸収体の温度を検出する温度センサと、電波吸収体に取り付けられたヒータと、ヒータへの電力の供給を制御するヒータ制御装置とを有している。ヒータ制御装置は、単位時間ごとに温度センサの検出温度と目標温度とを比較して、温度センサの検出温度が目標温度よりも低い場合には、単位時間の間、ヒータへ電力を供給しつづけ、温度センサの検出温度が目標温度よりも高い場合には、単位時間の間、ヒータへの電力の供給を停止する。これにより、電波吸収体の温度が目標温度に近い温度となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−162287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマイクロ波放射計では、単位時間の間、ヒータに電力が常に供給されるか、または、ヒータへの電力の供給が常に停止されるので、目標温度を中心に電波吸収体の温度のオーバーシュートや温度変動(ハンチング)が生じてしまい、電波吸収体の温度を高精度に制御することができないという問題点があった。
【0006】
この発明は、電波吸収体の温度をより高精度に制御することができるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法は、ベースに対して回転可能に設けられた構体と、前記構体に対して固定され、観測対象からの観測用マイクロ波を反射する主反射鏡と、前記構体に対して固定され、前記構体が回転するとともに移動して、前記主反射鏡に反射された前記観測用マイクロ波を受信する一次放射器と、前記ベースに対して固定され、深宇宙からの低温校正用マイクロ波を反射して、低温校正位置にある前記一次放射器に前記低温校正用マイクロ波を入射させる低温校正用反射鏡と、前記ベースに対して固定され、高温校正用マイクロ波を放射し、高温校正位置にある前記一次放射器に前記高温校正用マイクロ波を入射させる高温校正源とを備え、前記高温校正源は、前記高温校正位置にある前記一次放射器に対向する開口部が形成された収容箱と、前記収容箱の内側に設けられ、前記高温校正用マイクロ波を放射する電波吸収体と、前記収容箱の外側を覆った断熱材と、電力が供給されることにより前記電波吸収体を加熱する第1の加熱装置と、前記第1の加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチと、前記電波吸収体の温度を検出する温度検出装置と、前記温度検出装置の検出温度に基づいて、前記電波吸収体の温度が目標温度となるように前記第1のスイッチを制御する温度制御装置とを有し、前記一次放射器が受信した前記観測用マイクロ波の強度の値を用いて前記観測対象の温度を測定し、前記一次放射器が受信した前記低温校正用マイクロ波の強度の値と、前記深宇宙の温度の値と、前記一次放射器が受信した前記高温校正用マイクロ波の強度の値と、そのときの前記温度検出装置の検出温度の値とを用いて、前記一次放射器が受信する前記観測用マイクロ波の強度の値から測定される前記観測対象の温度の値を校正するマイクロ波放射計における前記高温校正源の制御方法であるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法であって、前記検出温度と前記目標温度との差から前記第1の加熱装置への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、前記供給電力量に応じて、前記単位時間を複数に分けた区分時間ごとに前記第1のスイッチを制御するスイッチ制御工程とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、電波吸収体の温度を検出する温度検出装置の検出温度と目標温度との差から電波吸収体を加熱する第1の加熱装置への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、算出した供給電力量に応じて、単位時間を複数に分けた区分時間ごとに第1のスイッチを制御するスイッチ制御工程とを備えているので、単位時間ごとに第1のスイッチを制御する場合と比較して、第1の加熱装置に供給される電力量を、算出された供給電力量に近づけることができる。その結果、電波吸収体の温度をより高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るマイクロ波放射計を示す斜視図である。
【図2】図1の高温校正源本体および熱制御パネル装置を示す縦断面図である。
【図3】図1のマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。
【図4】図3の第1の加熱装置へ供給される電力の時間変化と電波吸収体の温度の時間変化とを示す図である。
【図5】図3の温度制御装置に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【図6】従来装置により加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図である。
【図7】図3の電力供給制御装置により第1の加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図である。
【図8】図3の温度制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】図3の電波吸収体の温度の実測値の時間変化を示す図である。
【図10】図3の第1の加熱装置への供給電力量の実測値の時間変化を示す図である。
【図11】図5の第1の供給電力パターンテーブルの変形例を示す図である。
【図12】実施の形態2に係るマイクロ波放射計の温度制御装置に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【図13】図12の第1の供給電力パターンテーブルにより第1の加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図である。
【図14】実施の形態3に係るマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。
【図15】図14の温度制御装置に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【図16】図14の温度制御装置に記憶されている第2の供給電力パターンテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るマイクロ波放射計を示す斜視図である。図において、マイクロ波放射計は、地球表面や大気などの観測対象から放射される観測用マイクロ波を受信して、この観測用マイクロ波の波長成分を測定することにより、水蒸気量、海面水温、海氷密接度等の物理量の分布を算出することを目的とした輝度温度分布測定装置である。
【0012】
マイクロ波放射計は、人工衛星(ベース)1に取り付けられた構体2と、構体2に取り付けられたトラス構造の連結棒3と、観測対象から放射された観測用マイクロ波を反射する主反射鏡4と、深宇宙から放射された低温校正用マイクロ波を反射する低温校正用反射鏡5と、高温校正用マイクロ波を放射する高温校正源本体6とを備えている。また、マイクロ波放射計は、主反射鏡4により反射された観測用マイクロ波、低温校正用反射鏡5により反射された低温校正用マイクロ波および高温校正源本体6により放射された高温校正用マイクロ波を受信する一次放射器7と、高温校正源本体6を加熱する熱制御パネル装置8とを備えている。
【0013】
構体2は、構体2の中心を通る回転中心軸線9を中心に人工衛星1に対して回転可能となっている。構体2には、高温校正源本体6および熱制御パネル装置8へ電力を供給する電力供給制御装置20が設けられている。
【0014】
高温校正源本体6と、熱制御パネル装置8と、電力供給制御装置20とから、高温校正源100が構成されている。
【0015】
主反射鏡4は、連結棒3を介して構体2に対して固定されている。したがって、主反射鏡4は、構体2の回転に連動して、回転中心軸線9を中心に回転する。
【0016】
低温校正用反射鏡5および高温校正源本体6のそれぞれは、人工衛星1に対して固定されている。したがって、低温校正用反射鏡5および高温校正源本体6のそれぞれは、構体2の回転により、構体2に対する相対位置が変化する。
【0017】
一次放射器7は、構体2に対して固定されている。したがって、一次放射器7は、構体2の回転に連動して、回転中心軸線9を中心に回転する。一次放射器7の位置は、一次放射器7が回転中心軸線9を中心に回転することにより、主反射鏡4により反射された観測用マイクロ波を受信する観測位置と、低温校正用反射鏡5により反射された低温校正用マイクロ波を受信する低温校正位置と、高温校正源本体6により放射される高温校正用マイクロ波を受信する高温校正位置とに変化する。
【0018】
熱制御パネル装置8は、構体2と高温校正源本体6との間に配置されるようにして、構体2に固定されている。また、熱制御パネル装置8は、環状に形成されている。また、熱制御パネル装置8は、回転中心軸線9が熱制御パネル装置8の中心を通るように配置されている。また、熱制御パネル装置8は、構体2の回転に連動して、回転中心軸線9を中心に回転する。
【0019】
図2は図1の高温校正源本体6および熱制御パネル装置8を示す縦断面図である。高温校正源本体6は、人工衛星1(図1)に対して固定された収容箱61と、収容箱61に収容された複数の電波吸収体62と、電波吸収体62の温度を検出する電波吸収体温度センサ63と、収容箱61を加熱する複数の収容箱ヒータ64と、収容箱61の温度を検出する複数の収容箱温度センサ65と、収容箱61を外側から覆った断熱材であるMLI(Multilayer Insulator)66とを有している。
【0020】
収容箱61は、構体2から離れて設けられ収容箱61の天井部分となるトッププレート611と、トッププレート611から構体2側に延び収容箱61の側壁部分となる4枚の側面プレート612とから構成されている。つまり、収容箱61の形状は、構体2側に開口部613が形成された中空直方体形状となっている。収容箱61は、開口部613が熱制御パネル装置8に対向するように配置されている。また、収容箱61は、熱制御パネル装置8が構体2の回転に連動して回転しても、開口部613が熱制御パネル装置8に常に対向するようになっている。
【0021】
電波吸収体62の形状は、四角錐形状となっている。電波吸収体62は、電波吸収体62の底面がトッププレート611に面接触するようにトッププレート611に固定されている。また、電波吸収体62は、電波吸収体62の先端部が開口部613に指向するように配置されている。電波吸収体62を構成する材料は、誘電体材料となっている。したがて、電波吸収体62による不要な電波の反射が抑制される。
【0022】
電波吸収体温度センサ63は、電波吸収体62の表面に貼り付けられている。なお、電波吸収体温度センサ63は、電波吸収体62の内部に取り付けられてもよい。
【0023】
収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65のそれぞれは、トッププレート611および側面プレート612のそれぞれに取り付けられている。また、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65のそれぞれは、収容箱61の外側に配置されている。また、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65それぞれは、収容箱61とMLI66とに挟まれるようにして配置されている。なお、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65は、収容箱61の内側に配置されてもよい。
【0024】
電波吸収体62は、収容箱ヒータ64が収容箱61を加熱することにより、加熱される。つまり、収容箱ヒータ64は、電波吸収体62を間接的に加熱する。収容箱ヒータ64が収容箱61を介して電波吸収体62を加熱するので、電波吸収体62を直接的に加熱する場合と比較して、電波吸収体62の温度のばらつきを抑制することができる。収容箱61と電波吸収体62との間では、熱伝導や放射により、熱の交換が行われる。したがって、収容箱温度センサ65は、収容箱61を介して電波吸収体62の温度を検出する。つまり、収容箱温度センサ65は、電波吸収体62の温度を間接的に検出する。
【0025】
MLI66は、最表層に、太陽光吸収率の小さい銀蒸着PEI(ポリエーテルイミド)が使用されている。これにより、太陽光がMLI66に入射することによるMIL66の温度上昇が抑制される。なお、MLI66の最表層には、銀蒸着PEIに限らず、例えば、銀蒸着テフロン(テフロンは登録商標)が使用されてもよい。MLI66が収容箱61、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65を覆うことにより、太陽光の熱が、収容箱61、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65に影響することが抑制され、また、収容箱61、収容箱ヒータ64および収容箱温度センサ65の熱が深宇宙へ漏れてしまうことが抑制される。
【0026】
熱制御パネル装置8は、熱制御パネル本体81と、熱制御パネル本体81を加熱する複数の熱制御パネルヒータ82と、熱制御パネル本体81の温度を検出する熱制御パネル温度センサ83と、構体2に固定され熱制御パネル本体81を支持する断熱材のスペーサ84とを有している。熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83のそれぞれは、熱制御パネル本体81の構体2側の面に取り付けられている。なお、熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83は、熱制御パネル本体81の電波吸収体62側の面に取り付けられてもよい。
【0027】
熱制御パネル本体81は、太陽光吸収率が小さく、かつ、赤外放射率の大きい白色塗装で表面処理されている。これにより、太陽光が熱制御パネル本体81に入射する時における熱制御パネル本体81の温度上昇が抑制される。
【0028】
電波吸収体62は、熱制御パネルヒータ82が熱制御パネル本体81を加熱することにより、加熱される。つまり、熱制御パネルヒータ82は、電波吸収体62を間接的に加熱する。熱制御パネルヒータ82が熱制御パネル本体81を介して電波吸収体62を加熱するので、電波吸収体62を直接的に加熱する場合と比較して、電波吸収体62の温度のばらつきを抑制することができる。電波吸収体62と熱制御パネル本体81との間では、放射により、熱の交換が行われる。したがって、熱制御パネル温度センサ83は、熱制御パネル本体81を介して電波吸収体62の温度を検出する。つまり、熱制御パネル温度センサ83は、電波吸収体62の温度を間接的に検出する。
【0029】
構体2と熱制御パネル本体81との間にスペーサ84が配置されているので、構体2の熱が、熱制御パネル本体81、熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83に影響することが抑制され、また、熱制御パネル本体81、熱制御パネルヒータ82および熱制御パネル温度センサ83の熱が、構体2へ漏れてしまうことが抑制される。これにより、熱制御パネル本体81の温度を構体2から独立して制御することができる。
【0030】
収容箱ヒータ64および熱制御パネルヒータ82は、電熱器やペルチェ素子など、電力が供給されることにより加熱対象部材を加熱することができる部材から構成されている。
【0031】
図3は図1のマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。図において、収容箱ヒータ64(図1)および熱制御パネルヒータ82(図1)から、電波吸収体62を加熱する第1の加熱装置101が構成されている。収容箱温度センサ65および熱制御パネル温度センサ83から、電波吸収体62の温度を検出する温度検出装置102が構成されている。電力供給制御装置20は、第1の加熱装置101への電力を供給する電源装置21と、電源装置21から第1の加熱装置101へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチ22と、第1のスイッチ22を制御する温度制御装置23とを有している。第1のスイッチ22の状態がON状態の場合に電源装置21から第1の加熱装置101へ電力が供給され、第1のスイッチ22の状態がOFF状態の場合に電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給が停止される。
【0032】
温度制御装置23には、温度検出装置102の検出温度が入力されるようになっている。温度制御装置23には、第1のスイッチ22を制御する温度制御プログラム231が組み込まれている。温度制御装置23は、温度制御プログラム231により、温度検出装置102の検出温度に基づいて、電波吸収体62の温度が目標温度となるように第1のスイッチ22の状態をON状態またはOFF状態に切り替える制御であるON/OFF制御を行う。温度制御装置23は、トッププレート611(図2)、側面プレート612(図2)および熱制御パネル本体81(図2)のそれぞれの温度を独立して制御することができるようになっている。
【0033】
次に、マイクロ波放射計の校正について説明する。図1に示すように、構体2は、回転中心軸線9を中心に、1.5秒に一回転の速度で人工衛星1に対して回転する。これにより、一次放射器7が回転中心軸線9を中心に移動して、さらに、主反射鏡4および熱制御パネル装置8が回転中心軸線9を中心に回転する。
【0034】
一次放射器7が移動して、一次放射器7の位置が高温校正位置となった場合に、一次放射器7は、高温校正源本体6から放射された高温校正用マイクロ波を受信する。その後、一次放射器7が移動して、一次放射器7の位置が低温校正位置となった場合に、一次放射器7は、低温校正用反射鏡5により反射された低温校正用マイクロ波を受信する。
【0035】
マイクロ波放射計は、一次放射器7が受信した高温校正用マイクロ波の強度の値と、そのときに電波吸収体温度センサ63が検出した電波吸収体62の温度の値と、一次放射器7が受信した低温校正用マイクロ波の強度の値と、深宇宙の温度の値とを用いて、観測用マイクロ波の強度と、観測対象の温度との相関式を算出する。
【0036】
マイクロ波放射計は、算出した相関式を用いて、一次放射器7が受信する観測用マイクロ波の強度の値から測定される観測対象の温度の値を校正する。構体2が一回転する間に、一次放射器7は、観測用マイクロ波、高温校正用マイクロ波および低温校正用マイクロ波のそれぞれを受信するので、一次放射器7が受信する観測用マイクロ波の強度の値から測定される観測対象の温度の値は、1.5秒毎に繰り返して校正される。これにより、測定される観測対象の温度の精度が向上する。
【0037】
次に、第1の加熱装置101への電力の供給の制御について説明する。図4は図3の第1の加熱装置101へ供給される電力の時間変化と電波吸収体62の温度の時間変化とを示す図である。図4では、任意の時間における温度検出装置102の検出温度および第1の加熱装置101へ供給される電力が示されている。温度制御装置23(図3)は、単位時間Δtごとに第1の加熱装置101(図3)への供給電力量を算出する。以降、単位時間Δtをフレームと呼ぶ。1フレームは、さらにi個に区分けされている。以降、区分けされた部分をセグメントと呼ぶ。各セグメントの長さ(時間)は、Δt/iである。
【0038】
この例では、連続する3つのフレームの番号をn−1、n、n+1とする。ただし、nは任意の自然数である。この例で用いる配列名や変数名は、一例であり、これら以外にどのような配列名や変数名であっても問題ない。また、この例では、変数の数が1個であるT(n)等の配列を用いて説明するが、これは、説明を容易にするためであり、プログラム上、問題なければ複数の変数を用いた配列であっても問題ない。
【0039】
温度検出装置102(図3)の検出温度は、各フレームの始まりの時刻であるサンプル時刻n−1、n、n+1・・・ごとにサンプルされ、温度制御装置23に入力される。ここで、時刻の計測は、人工衛星1内からの時間情報によって行われる。なお、時刻の計測は、これに限らず、例えば、温度制御装置23内に時間計測装置を設けて、この時間計測装置による時間情報によって行われてもよい。
【0040】
温度制御装置23は、温度制御プログラム231により、予め設定された目標温度T0および温度検出装置102の検出温度に基づいて、第1のスイッチ22に信号を送り、電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給を制御する。
【0041】
ここで、第1のスイッチ22の状態は、電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給がされるON状態と、電源装置21から第1の加熱装置101への電力の供給が遮断されるOFF状態との何れか一方の状態のみとなるので、電源装置21から第1の加熱装置101へ供給される電力は、電源装置21の電力の0%または100%の何れかとなる。
【0042】
温度制御装置23の動作は、基本的には一般的なPID制御プログラムによる動作に類似する。本発明は、第1の加熱装置101への供給電力量の算出を各サンプル時刻nで1フレームごとに行い、さらに、算出された供給電力量に応じてセグメントごとに第1のスイッチ22が制御されるように、予めパターン化されていることに特徴がある。
【0043】
温度制御装置23には、温度制御パラメータである、目標温度T0、ゲインKP、積分時間τI、微分時間τDが設定されている。これらの温度制御パラメータの値は、最適値を持つが、電波吸収体62の熱容量や放熱特性などにより異なるため、温度制御ケースごとに最適化をする必要がある。
【0044】
温度制御装置23は、目標温度T0と、各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける温度検出装置102の検出温度との差(偏差)en−2、en−1、enを算出し、算出された差en−2、en−1、enを用いて、下記の式(1)、(2)から、フレームnにおける第1の加熱装置101への供給電力量Qnを算出するようになっている。
【0045】
Qn=Qn−1+ΔQn (1)
ΔQn=KP{(en−en−1)+(Δt/τI)en+(ΔD/Δt)(en−2en−1+en−2)} (2)
【0046】
温度制御装置23は、第1のスイッチ22のための第1の供給電力パターンテーブルを記憶している。図5は図3の温度制御装置23に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図である。この例では、1フレームあたりのセグメント数をi=5としている。セグメント数が大きいほど、温度制御装置23による温度制御の精度が向上する。セグメント数の上限値は、温度制御装置23の処理能力や第1のスイッチ22の切替速度などによって決められる。
【0047】
図において、Qmaxは、1フレームの全時間に渡って、第1の加熱装置101に電力を供給した場合、つまり、全てのセグメントにおいて第1のスイッチ22の状態がON状態であった場合の1フレームあたりの供給電力量である。したがって、Qmaxは、1フレームにおいて第1の加熱装置101へ供給できる最大供給電力量である。
【0048】
上記の式(1)、(2)から算出される供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって、各セグメントでの第1の加熱装置101へ電力が供給される第1の供給電力パターンが第1の供給電力パターンテーブルから決められる。この例では、第1の供給電力パターンは、Qn/Qmaxの値が大きくなるにつれて、第1のスイッチ22の状態をON状態とするセグメント数が0から1つずつ大きくなっている。第1の供給電力パターンのパターン数は、セグメント数+1であり、この例では、パターン数は、6である。
【0049】
図6は従来装置により加熱装置へ供給される電力の時間変化を示す図、図7は図3の電力供給制御装置20により第1の加熱装置101へ供給される電力の時間変化を示す図である。図6および図7では、1フレームごとの平均電力を示している。従来装置では、加熱装置へ電力が供給される回路を開閉するスイッチがフレームごとに制御される。したがって、加熱装置へ電力が供給されるフレームでは、常に加熱装置へ電力が供給される。つまり、そのフレームにおける供給電力の平均値は、電源装置21の電力の100%となる。また、加熱装置へ電力が供給されないフレームでは、供給電力の平均値は、電源装置21の電力の0%となる。
【0050】
これに対して、電力供給制御装置20では、フレームを区分けしたセグメントごとに第1のスイッチ22が制御される。したがって、第1の加熱装置101への供給電力のフレームごとの平均値は、従来装置と異なり、電源装置21の電力の0%〜100%の中間の値を持つようになる。すなわち、セグメントごとに第1のスイッチ22を制御することにより、第1の加熱装置101に供給される電力量を、算出された供給電力量Qnに近づけることができ、一般的なPID制御に類似した電波吸収体62の温度制御が可能となる。その結果、電波吸収体62の温度のオーバーシュートや温度変動(ハンチング)が生じにくくなるため、電波吸収体62の温度を高精度に制御することができる。
【0051】
図8は図3の温度制御装置23の動作を示すフローチャートである。まず始めに、フレームの長さであるサンプル時刻間隔Δtおよび1フレームあたりのセグメント数iを決定する(ステップS1)。さらに、各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける温度検出装置102の検出温度が入力されるために、T(n−2)、T(n−1)、T(n)を配列として確保し、T(n−2)、T(n−1)には、初期値を入力する(ステップS2)。ここで、T(n−2)、T(n−1)に入力される初期値としては、何℃であっても問題はない。
【0052】
次に、温度制御装置23が使用する温度制御パラメータである、目標温度T0、ゲインKP、積分時間τI、微分時間τDに変更があるか否かを判定し(ステップS3)、ステップS3で温度制御パラメータに変更がある場合には、目標温度T0、ゲインKP、積分時間τI、微分時間τDが入力される(ステップS4)。ステップS3で温度制御パラメータに変更がない場合には、ステップS4が省略されて、次へ進む。
【0053】
その後、温度検出装置102の検出温度を温度制御装置23が読み込み(ステップS5)、さらに、現在の時刻TIMEを人工衛星1内から温度制御装置23が読み込む(ステップS6)。その後、前回のサンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtだけ経過したか否かを温度制御装置23が判定する(ステップS7)。ステップS7で前回のサンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtが経過していないと温度制御装置23が判定した場合には、ステップS5に戻る。
【0054】
一方、ステップS7で、ステップS7で前回のサンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtだけ経過したと温度制御装置23が判定した場合には、サンプル時刻n−1からサンプル時刻間隔Δtだけ経過した時刻をサンプル時刻nとし、サンプル時刻nにおける温度検出装置102の検出温度をT(n)に入れ、また、サンプル時刻nを変数STIMEに入れる(ステップS8)。
【0055】
その後、各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける目標温度T0と各サンプル時刻n−2、n−1、nにおける温度検出装置102の検出温度であるT(n−2)、T(n−1)、T(n)とのそれぞれの差(偏差)をen−2、en−1、enとし(ステップS9)、フレームnにおける第1の加熱装置101への供給電力量Qnを上記の式(1)、式(2)から求める(供給電力量算出工程)(ステップS10、ステップS11)。
【0056】
求められた供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって、第1の供給電力パターンを決定し(ステップS12)、セグメントごとに、第1のスイッチ22が制御され(スイッチ制御工程)、第1の加熱装置101に電力が供給される(ステップS13)。最後に、T(n−1)の値をT(n−2)に入力し、T(n)の値をT(n−1)に入力し(ステップS14)、ステップS3へ戻る。
【0057】
図9は図3の電波吸収体62の温度の実測値の時間変化を示す図、図10は図3の第1の加熱装置101への供給電力量Qnの実測値の時間変化を示す図である。図9では電波吸収体62の温度と目標温度T0との差(偏差)eを示し、図10では1フレームあたりの第1の加熱装置101への供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比に100を乗じた値を示している。
【0058】
図9および図10では、時刻0秒のときに外部から電波吸収体62へ熱を加えた場合の応答を計測している。図9に示すように、外部から電波吸収体62への熱入力の有無に関わらず、電波吸収体62の温度と目標温度T0との差は、±0.2K以内となっており、電力供給制御装置20により電波吸収体62の温度が高精度に制御されている。図10に示すように、外部熱入力後に、Qn/Qmaxの値の低下が見られ、外部からの熱の入力による電波吸収体62の温度上昇が抑制されており、電波吸収体62の温度の制御が正常に行われている。1フレームあたりのQn/Qmax×100の値は、0〜100の中間値をとり、フレームごとに加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する従来装置のように、0、100のどちらかをとることはないことがわかる。
【0059】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るマイクロ波放射計によれば、温度制御装置23は、温度検出装置102の検出温度と目標温度T0との差から第1の加熱装置101への供給電力量Qnをフレームごとに算出し、算出した供給電力量Qnに応じて、セグメントごとに第1のスイッチ22を制御するので、フレームごとに第1のスイッチ22を制御する場合と比較して、第1の加熱装置101に供給される電力量を、算出された供給電力量Qnに近づけることができる。その結果、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0060】
この発明に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、電波吸収体62の温度を検出する温度検出装置102の検出温度と目標温度T0との温度差から第1の加熱装置101への供給電力量Qnをフレームごとに算出する供給電力量算出工程と、算出した供給電力量Qnに応じて、セグメントごとに第1のスイッチ22を制御するスイッチ制御工程とを備えているので、フレームごとに第1のスイッチ22を制御する場合と比較して、第1の加熱装置101に供給される電力量を、算出された供給電力量Qnに近づけることができる。その結果、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態1では、Qn/Qmaxの値を、0〜0.2、0.2〜0.4・・・のように分割した第1の供給電力パターンテーブルを用いたが、例えば、図11に示すように、Qn/Qmaxの値を、0〜0.1、0.1〜0.3・・・ように分割した第1の供給電力パターンテーブルを用いても特に問題はなく、Qn/Qmaxの値の分割の仕方は任意である。ただし、Qn/Qmaxの値を均等に分割した方が、温度制御精度を向上させることができる。
【0062】
実施の形態2.
図12は実施の形態2に係るマイクロ波放射計の温度制御装置23に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図、図13は図12の第1の供給電力パターンテーブルにより第1の加熱装置101へ供給される電力の時間変化を示す図である。第1の加熱装置101へ電力が供給されるセグメントが複数ある第1の供給電力パターンでは、第1の加熱装置101へ電力が供給されるセグメントがフレームの中で均等に分散されている。つまり、第1のスイッチ22の状態がON状態となるセグメントが同一のフレームの中に複数ある場合に、第1のスイッチ22の状態がON状態となる各セグメントが、同一のフレームの中で偏らないように配置されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、第1の供給電力パターンは、第1の加熱装置101へ電力が供給されるセグメントがフレームにおいて均等に分散されていれば、どのような供給電力パターンであってもよい。
【0063】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、第1の加熱装置101への電力が供給される複数のセグメントは、フレームの中で分散されているので、フレームの中で第1の加熱装置101への電力が分散されて供給される。これにより、電波吸収体62の温度変動(ハンチング)が低減され、実施の形態1に係るマイクロ波放射器と比較して、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0064】
実施の形態3.
図14は実施の形態3に係るマイクロ波放射計の要部を示す構成図である。図において、高温校正源100は、電波吸収体62を加熱する第2の加熱装置103をさらに備えている。第2の加熱装置103は、第1の加熱装置101のように間接的に電波吸収体62を加熱してもよく、または、第1の加熱装置101とは異なり、直接的に電波吸収体62を加熱してもよい。第2の加熱装置103の発熱量は、第1の加熱装置101の発熱量のほぼ1/5の値となっている。
【0065】
電源装置21は、第2の加熱装置103へ電力を供給するようになっている。電力供給制御装置20は、電源装置21から第2の加熱装置103へ電力が供給される回路を開閉する第2のスイッチ24をさらに有している。第2のスイッチ24の状態がON状態の場合に電源装置21から第2の加熱装置103へ電力が供給され、第2のスイッチ24の状態がOFF状態の場合に電源装置21から第2の加熱装置103への電力の供給が停止される。温度制御装置23は、温度制御プログラム231により、温度検出装置102の検出温度に基づいて、電波吸収体62の温度が目標温度となるように第1のスイッチ22および第2のスイッチ24のそれぞれをON/OFF制御する。温度制御装置23は、第1のスイッチ22のための第1の供給電力パターンテーブルと、第2のスイッチ24のための第2の供給電力パターンテーブルとを記憶している。温度制御プログラム231は、第1のスイッチ22および第2のスイッチ24の両方を制御するようになっている。
【0066】
図15は図14の温度制御装置23に記憶されている第1の供給電力パターンテーブルを示す図、図16は図14の温度制御装置23に記憶されている第2の供給電力パターンテーブルを示す図である。第1の加熱装置101へ電力が供給される第1の供給電力パターンは、実施の形態1と同様にして、供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって決定される。
【0067】
第2の加熱装置103へ電力が供給される第2の供給電力パターンのパターン数は、第1の供給電力パターンのパターン数よりも大きく、30となっている。第2の供給電力パターンは、第1の供給電力パターンと同様に、供給電力量Qnと最大供給電力量Qmaxとの比によって決定される。第1の加熱装置101の発熱量に対する第2の加熱装置103の発熱量が小さい程、第2の供給電力パターンのパターン数を大きくすることができる。これにより、第2の供給電力パターンを詳細化することができる。
【0068】
温度制御装置23は、第1の加熱装置101と第2の加熱装置103とを組み合わせて、電波吸収体62の温度を制御する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、実施の形態2のように、第1の加熱装置101への電力が供給される複数のセグメントや第2の加熱装置103への電力が供給される複数のセグメントがフレームの中で分散された構成であってもよい。
【0069】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法によれば、高温校正源100は電力が供給されることにより電波吸収体62を加熱し第1の加熱装置101よりも発熱量が小さい第2の加熱装置103と、第2の加熱装置103へ電力が供給される回路を開閉する第2のスイッチ24とをさらに備え、供給電力量算出工程では、温度制御装置23は、温度検出装置102の検出温度と目標温度との差から第1の加熱装置101および第2の加熱装置103への供給電力量Qnをフレームごとに算出し、スイッチ制御工程では、算出した供給電力量Qnに応じて、セグメントごとに第1のスイッチおよび21第2のスイッチ24を制御するので、実施の形態1に係るマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法と比較して、供給される電力量を、算出された供給電力量Qnにさらに近づけることができる。その結果、電波吸収体62の温度をより高精度に制御することができる。
【0070】
なお、各上記実施の形態では、収容箱61に収容箱ヒータ64が設けられ、収容箱ヒータ64が収容箱61を加熱することにより、電波吸収体62が間接的に加熱され、また、熱制御パネル本体81に熱制御パネルヒータ82が設けられ、熱制御パネルヒータ82が熱制御パネル本体81を加熱することにより、電波吸収体62が間接的に加熱される構成について説明したが、電波吸収体62に電波吸収体ヒータが設けられ、電波吸収体ヒータが電波吸収体62を直接的に加熱する構成であってもよい。この場合、電波吸収体62の温度を検出する電波吸収体温度センサの検出温度に基づいて、電波吸収体62の温度が目標温度となるように電波吸収体温度センサへ電力が供給される回路を開閉するスイッチが温度制御装置23により制御される。
【0071】
また、各上記実施の形態では、収容箱ヒータ64および熱制御パネルヒータ82から構成された第1の加熱装置101について説明したが、収容箱ヒータ64および熱制御パネルヒータ82の何れか一方から構成された第1の加熱装置101であってもよい。
【0072】
また、各上記実施の形態では、温度検出装置102が電波吸収体62の温度を検出し、検出温度が目標温度となるように電波吸収体62の温度が制御される構成について説明したが、温度検出装置102が収容箱61や熱制御パネル本体81の温度を検出して、検出温度が目標温度となるように収容箱61や熱制御パネル本体81の温度が制御される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 人工衛星(ベース)、2 構体、3 連結棒、4 主反射鏡、5 低温校正用反射鏡、6 高温校正源本体、7 一次放射器、8 熱制御パネル装置、9 回転中心軸、20 電力供給制御装置、21 電源装置、22 第1のスイッチ、23 温度制御装置、24 第2のスイッチ、61 収容箱、62 電波吸収体、63 電波吸収体温度センサ、64 収容箱ヒータ、65 収容箱温度センサ、66 MLI、81 熱制御パネル本体、82 熱制御パネルヒータ、83 熱制御パネル温度センサ、84 スペーサ、100 高温校正源、101 第1の加熱装置、102 温度検出装置、103 第2の加熱装置、231 温度制御プログラム、611 トッププレート、612 側面プレート、613 開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに対して回転可能に設けられた構体と、
前記構体に対して固定され、観測対象からの観測用マイクロ波を反射する主反射鏡と、
前記構体に対して固定され、前記構体が回転するとともに移動して、前記主反射鏡に反射された前記観測用マイクロ波を受信する一次放射器と、
前記ベースに対して固定され、深宇宙からの低温校正用マイクロ波を反射して、低温校正位置にある前記一次放射器に前記低温校正用マイクロ波を入射させる低温校正用反射鏡と、
前記ベースに対して固定され、高温校正用マイクロ波を放射し、高温校正位置にある前記一次放射器に前記高温校正用マイクロ波を入射させる高温校正源とを備え、
前記高温校正源は、
前記高温校正位置にある前記一次放射器に対向する開口部が形成された収容箱と、
前記収容箱の内側に設けられ、前記高温校正用マイクロ波を放射する電波吸収体と、
前記収容箱の外側を覆った断熱材と、
電力が供給されることにより前記電波吸収体を加熱する第1の加熱装置と、
前記第1の加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチと、
前記電波吸収体の温度を検出する温度検出装置と、
前記温度検出装置の検出温度に基づいて、前記電波吸収体の温度が目標温度となるように前記第1のスイッチを制御する温度制御装置とを有し、
前記一次放射器が受信した前記観測用マイクロ波の強度の値を用いて前記観測対象の温度を測定し、
前記一次放射器が受信した前記低温校正用マイクロ波の強度の値と、前記深宇宙の温度の値と、前記一次放射器が受信した前記高温校正用マイクロ波の強度の値と、そのときの前記温度検出装置の検出温度の値とを用いて、前記一次放射器が受信する前記観測用マイクロ波の強度の値から測定される前記観測対象の温度の値を校正するマイクロ波放射計における前記高温校正源の制御方法であるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法であって、
前記検出温度と前記目標温度との差から前記第1の加熱装置への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、
前記供給電力量に応じて、前記単位時間を複数に分けた区分時間ごとに前記第1のスイッチを制御するスイッチ制御工程とを備えたことを特徴とするマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法。
【請求項2】
前記第1の加熱装置へ電力が供給される複数の前記区分時間は、前記単位時間の中で分散されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法。
【請求項3】
前記高温校正源は、
電力が供給されることにより前記電波吸収体を加熱し、前記第1の加熱装置よりも発熱量が小さい第2の加熱装置と、
前記第2の加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する第2のスイッチとをさらに有し、
前記供給電力量算出工程では、前記検出温度と前記目標温度との差から前記第1の加熱装置および前記第2の加熱装置への供給電力量を前記単位時間ごとに算出し、
前記スイッチ制御工程では、前記供給電力量に応じて、前記区分時間ごとに前記第2のスイッチを制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法。
【請求項1】
ベースに対して回転可能に設けられた構体と、
前記構体に対して固定され、観測対象からの観測用マイクロ波を反射する主反射鏡と、
前記構体に対して固定され、前記構体が回転するとともに移動して、前記主反射鏡に反射された前記観測用マイクロ波を受信する一次放射器と、
前記ベースに対して固定され、深宇宙からの低温校正用マイクロ波を反射して、低温校正位置にある前記一次放射器に前記低温校正用マイクロ波を入射させる低温校正用反射鏡と、
前記ベースに対して固定され、高温校正用マイクロ波を放射し、高温校正位置にある前記一次放射器に前記高温校正用マイクロ波を入射させる高温校正源とを備え、
前記高温校正源は、
前記高温校正位置にある前記一次放射器に対向する開口部が形成された収容箱と、
前記収容箱の内側に設けられ、前記高温校正用マイクロ波を放射する電波吸収体と、
前記収容箱の外側を覆った断熱材と、
電力が供給されることにより前記電波吸収体を加熱する第1の加熱装置と、
前記第1の加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する第1のスイッチと、
前記電波吸収体の温度を検出する温度検出装置と、
前記温度検出装置の検出温度に基づいて、前記電波吸収体の温度が目標温度となるように前記第1のスイッチを制御する温度制御装置とを有し、
前記一次放射器が受信した前記観測用マイクロ波の強度の値を用いて前記観測対象の温度を測定し、
前記一次放射器が受信した前記低温校正用マイクロ波の強度の値と、前記深宇宙の温度の値と、前記一次放射器が受信した前記高温校正用マイクロ波の強度の値と、そのときの前記温度検出装置の検出温度の値とを用いて、前記一次放射器が受信する前記観測用マイクロ波の強度の値から測定される前記観測対象の温度の値を校正するマイクロ波放射計における前記高温校正源の制御方法であるマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法であって、
前記検出温度と前記目標温度との差から前記第1の加熱装置への供給電力量を単位時間ごとに算出する供給電力量算出工程と、
前記供給電力量に応じて、前記単位時間を複数に分けた区分時間ごとに前記第1のスイッチを制御するスイッチ制御工程とを備えたことを特徴とするマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法。
【請求項2】
前記第1の加熱装置へ電力が供給される複数の前記区分時間は、前記単位時間の中で分散されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法。
【請求項3】
前記高温校正源は、
電力が供給されることにより前記電波吸収体を加熱し、前記第1の加熱装置よりも発熱量が小さい第2の加熱装置と、
前記第2の加熱装置へ電力が供給される回路を開閉する第2のスイッチとをさらに有し、
前記供給電力量算出工程では、前記検出温度と前記目標温度との差から前記第1の加熱装置および前記第2の加熱装置への供給電力量を前記単位時間ごとに算出し、
前記スイッチ制御工程では、前記供給電力量に応じて、前記区分時間ごとに前記第2のスイッチを制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロ波放射計用高温校正源の温度制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−233823(P2012−233823A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103673(P2011−103673)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】
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