マイクロ流体チップの駆動制御方法
【課題】熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得られるマイクロ流体チップの駆動方法を得る。
【解決手段】基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップ100に対して、液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、液処理部で液処理を行うマイクロ流体チップ100の駆動制御方法であって、液流路の特定位置において液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、この検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定する。
【解決手段】基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップ100に対して、液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、液処理部で液処理を行うマイクロ流体チップ100の駆動制御方法であって、液流路の特定位置において液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、この検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ内に供給された液体の送液を制御するマイクロ流体チップの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の分子生物学の進歩により、血液等の生体物質を分析することにより、病気の治療における薬剤投与の効果や副作用の体質による個人差を予知することが可能であることが示されてきており、これを利用して、個人個人にとって最適な治療を施していこうという気運が高まっている。例えば、特定の遺伝子と、特定の治療薬剤の効果や副作用が強く相関することがわかっている場合、この情報を特定の患者の治療に役立てるためには、患者の遺伝子の塩基配列を知る必要がある。内因性遺伝子の変異又は一塩基多型(SNP)に関する情報を得るための遺伝子診断は、そのような変異又は一塩基多型を含む標的核酸の増幅及び検出により行なうことができる。このため、サンプル中の標的核酸を迅速且つ正確に増幅及び検出し得る簡便な方法が求められる。
【0003】
この場合、被検出物質と特異的に結合する抗体又は抗原等のタンパク質或いは一本鎖の核酸をプローブに使い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定し、被検出物質と抗原抗体反応又は核酸ハイブリダイゼーションを行う。そして、酵素等の検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等を用いて、抗原抗体化合物や2本鎖の核酸を検出して、被検物質の有無の検出或いは被検物質の定量を行っている。
【0004】
この種の技術として、例えば特許文献1に開示される生体物質検査デバイスは、試薬類・送液系用のエレメントを搭載した、検体ごとのマイクロリアクタなるチップ・コンポーネント、デバイス本体である制御・検出コンポーネントとを別個にシステム構成することにより、極微量分析、増幅反応に対して、クロス・コンタミネーション、キャリーオーバー・コンタミネーションが生じ難く図られている。
【0005】
また、特許文献2に開示される生化学処理装置は、チャンバとチャンバ間を連通する流路とを有する生化学反応カートリッジを載置するステージと、流路を介して液体を移動させるための移動手段と、チャンバ内の液体の有無或いは液量を検出する検出手段と、検出手段により検出されたチャンバ内の液体の情報により液体の移動の結果を判定する判定手段とを設けることにより、詰まり、漏れなどの異常を無くし、液体が正常に流れたことを簡単な構成で確実に検知できるように図られている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−125990号公報
【特許文献2】特開2006−170654号公報
【特許文献3】特開2005−160387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特定の遺伝子の塩基配列を知る従来の方法としては、DNAシーケンサーや、NDAマイクロアレイ等が知られているが、これらには、一般的に装置やチップのコストが高く、検査に要する時間も長いという問題があった。すなわち、特許文献1においては、液体試薬類を分岐、送液する方法が開示されているが、予め設定された圧力に達すると液体の通過を許可するための送液制御部や、流路内の液体の逆流を防止する逆流防止部など、立体的に複雑な構造を必要とするため、マイクロ流体チップの構造が複雑になり、結果的にチップが高価になってしまうという問題があった。また、これらの機構は、可動機構により構成されるため、製造条件のバラツキの影響により、動作の信頼性が不足するという問題があった。
また、特許文献2においては、マイクロ流体チップと、このチップ内において流体を検出する方法が開示されているが、この検出は、送液動作の制御のためのものではなく、送液の結果が正常であるか、異常であるかを判定するためのものであり、高度な送液制御による正確かつ信頼性の高い分析結果を得るための手段としては利用されていなかった。また、検出はチャンバーで行われるものであり、マイクロ流路において、液体の位置を検出する方法については開示されていない。さらに、検出方法は、光の液体による散乱を利用したものであり、水などの散乱の小さい液体の検出や、試薬や検体に含まれている物質の種類やその濃度が変化した場合に、安定的に検出することができないという問題があった。
一方、特許文献3にはターゲット遺伝子のみを増幅し、これを比較的簡便な検出系で分析する核酸の増幅法及び核酸増幅用プライマーセットが提案されているが、この反応を一般の生化学分析で用いられているマイクロチューブを用いたピペット操作による方法で行う場合、試薬類の準備、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等、操作が煩雑であるとともに、熟練が必要であるという問題があった。特に、複数のターゲット遺伝子を分析する場合、操作の煩雑さにより薬液のとり間違いやコンタミの危険性が増大し、検査結果の信頼性が不足するという問題があった。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得られるマイクロ流体チップの駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップに対して、前記液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、前記液処理部で液処理を行うマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の特定位置において前記液流路内の前記液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、該検出のされたタイミングに応じて前記液体の制御動作条件を決定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【0010】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかが検出され、液体端部の検出タイミングに応じ、液体の制御動作条件が決定される。これにより、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、液流路内での検体中のDNAの抽出或いは増幅等の反応が可能となる。
【0011】
(2) (1)項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体の制御動作条件が、前記液体に対する移動の方向、移動速度、移動のための駆動力のうち、少なくとも1つを含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0012】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液体に対する移動の方向、移動速度、駆動力の少なくとも1つが制御されることで、液流路内における送液の移動制御が可能となる。そして、液体移動の方向、移動速度、駆動力の全てを制御可能とした構成によれば、これらの動作条件が自在に切り替えられることで、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等を行うのと同等の送液制御が可能となる。
【0013】
(3) (1)項又は(2)項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液処理の制御動作条件が、前記液体を前記液処理部で加熱処理するための加熱設定温度を含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0014】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法による核酸増幅反応等において、液流路内の送液制御により、鋳型DNA、プライマー、基質、耐熱性ポリメラーゼ酵素等の混合された反応液が温度調節され、所定の3種類の温度に順次変化されることを繰り返すことで、目的とするDNAが増幅可能となる。
【0015】
(4) (1)項又は(2)項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の前記特定位置に光を照射して前記液流路からの反射光を検出し、前記特定位置おける液流路内の液体の有無を、前記反射光の空気と液体との屈折率変化に基づく光量変化から判定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0016】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液体の有無を知りたい液流路に、マイクロ流体チップの外部から光りを照射し、その反射光の屈折率変化によって判定が可能となるので、液流路にセンサ等が露出せず、検体液の汚染されることがない。
【0017】
(5) (4)項記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置を照射する光を投光側光ファイバーを通じて供給し、前記液流路からの反射光を受光側光ファイバーに導入して検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0018】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、照射光と反射光を、投光側光ファイバーと受光側光ファイバーを統合した小面積なファイバー先端面で行うことができ、小面積の被検出領域に対する光照射及び当該照射領域からの反射光の受光が可能となり、微小な液流路特定位置における液体の有無が検出可能となる。
【0019】
(6) (4)項又は(5)項記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置への光照射方向と、前記特定位置からの反射光の検出方向とが、前記特定位置の光照射面の法線に対してそれぞれ傾斜する方向に設定されることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0020】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、光照射方向と反射光の検出方向が光照射面の法線に対してそれぞれ傾斜され、空気の存在時に反射光が受光側光ファイバーから外れ、液体存在時に反射光が受光側光ファイバーへ入射する傾斜角度とされることで、屈折率変化に基づいた液体の検出が簡素な構造で、さらに安定して検出できるようになる。
【0021】
(7) (1)項〜(6)項のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記物理的作用力が、前記液流路の始点と終点に設けた接続ポートからエア供給又はエア吸引することにより発生する空気圧作用力であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【0022】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液流路内に供給された液体が、液流路の始点と終点とに作用されるエア供給又はエア吸引により、液流路内の所望位置へ移動制御可能となる。この際、液体は、始点と先端部、後端部と終点との間に介在する気体に挟持された状態で保持され、引っ張り力の作用により途中で分断されることがない。
【0023】
(8) (1)項〜(7)項のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体が生態細胞を有する検体液、前処理試薬、反応増幅試薬を含み、
前記液処理部の一つには核酸の断片であるプライマーが実装されており、この液処理部に前記液体を定量分注し、加熱しながら励起光を照射する事により、前記液処理部内で発生する蛍光を検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【0024】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液処理部の一つに、被検出物質と特異的に結合する核酸の断片であるプライマーが液状の試薬を乾燥、固化させて実装され、この液処理部に液体が定量分注されることで、被検出物質の核酸増幅反応が行われる。この際、検知感度の高い標識物質である発光性物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等が用いられる。サイバーグリーンは、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることにより、強い蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無が検出可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップに対して、液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、液処理部で液処理を行い、液流路の特定位置において液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定するので、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作が不要になり、熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るマイクロ流体チップの駆動制御方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るマイクロ流体チップを検査装置の概略構成と共に表したブロック図である。
本発明に係るマイクロ流体チップ(以下、単に「チップ」とも称す。)100は、検査装置11にセットされて使用され、一回の使用後に廃棄される。本実施の形態は、検体である血液(全血)がマイクロ流体チップ100に注入される。マイクロ流体チップ100は、検査装置11にセットされることで、チップ外部からの物理的作用力によって検体液がハンドリングされ、例えば一塩基多型の複数ターゲット遺伝子が検査されるものであり、特開2005-160387に示されているような、ターゲット配列の核酸を等温で特異的に増幅するための反応とその検出をチップ100上で実現可能とするものである。これにより、例えば、標的核酸を増幅してこれを検出することで、感染症の原因となる病原体に特異的な標的核酸の増幅及び検出が可能となり、検体中の該病原体の存否等が判定可能となる。
【0027】
本実施の形態において、物理的作用力は、液流路の始点と終点に設けたポート部PTからエア供給又はエア吸引することにより発生する空気圧作用力(空圧駆動力)である。したがって、液流路内に供給された液体が、液流路の始点と終点とに作用されるエア供給又はエア吸引により、液流路内の所望位置へ移動制御可能となる。この際、液体は、始点と先端部、後端部と終点との間に介在する気体に挟持された状態で保持され、引っ張り力の作用により途中で分断されることがない。
【0028】
なお、DNA増幅反応は、等温増幅反応により、使用する酵素の活性が一定に維持できる温度に保たれる。ここで、「等温」とは、酵素およびプライマーが実質的に機能しうるような、ほぼ一定の温度をいう。さらに、「ほぼ一定の温度」とは、酵素及びプライマーの実質的な機能を損なわない程度の温度変化であれば許容されることを意味する。
【0029】
検査装置11は、作動流体として空気が使用されるポンプPMPと、バルブSV1,SV2,SV3,SV4,SV5と、検体加熱部13と、温調部15と、液位置検出部16と、蛍光検出部17と、これらに接続され検出信号が入力され、或いは制御信号を送出する制御部19とが基本構成要素として設けられている。バルブSV4はポンプPMPとバルブSV2との間に介装され、バルブSV2は作動流体制御側がチップ100の第4ポートPT−Cと、バルブSV1は作動流体制御側がチップ100の第2ポートPT−Dと、バルブSV3は作動流体制御側が第1ポートPT−Aとに接続され、バルブSV2の作動流体制御側とバルブSV1の作動流体入力側はチップ100の第3ポートPT−Bに接続される。また、検体加熱部13は、チップ100の被加熱部Bを加熱し、温調部15はチップ100の反応部Fの温度調節を行い、蛍光検出部17は反応部Fの蛍光を検出可能としている。これら各構成要素の動作については後に詳述する。
【0030】
図2は図1に示したマイクロ流体チップの分解斜視図、図3はマイクロ流体チップの上面視を(a)、下面視を(b)に表した平面図である。
マイクロ流体チップ100は、図2に示すように、流路基板21と、この流路基板21の一方の面(下面)22に貼着される蓋材23とにより構成されている。流路基板21は、熱可塑性の高分子ポリマーの射出成形により製作される。使用する高分子ポリマーは、特に限定されないが、光学的に透明であり、耐熱性が高く、化学的に安定であり、射出成形が容易なものが望ましく、COP、COC、PMMA等が好適である。光学的に透明とは、検出に用いる励起光や蛍光の波長において透過性が高く、散乱が小さく、自家蛍光が少ないことである。チップ100は、蛍光を検出可能とする透光性を有していることで、検出試薬に例えばサイバーグリーンが用いられ、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることで発する蛍光が測定可能となる。これにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無が検出可能となる。
【0031】
流路基板21の他方の面(上面)28には掘り込み29,31が形成され、掘り込み29,31は被加熱部B、反応部Fに対応して位置している。また、流路基板21の下面22には図3に示すように、上記の第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cに連通する開口33,35,37,39が設けられている。流路基板21は、外形が例えば縦横W2,W1が55×91mmであり、厚みtが2mm程度で形成される。
【0032】
蓋材23は、流路基板21の流路面(下面22)に形成されたポート、セル、流路(溝)に蓋をするための部材であり、蓋材23と流路基板21は接着剤や粘着剤により接合される。蓋材23としては、流路基板同様、光学的に透明であり、耐熱性が高く、化学的に安定であるシート状の高分子ポリマーを用いる。本実施の形態では、100μmの厚みのPCR用プレートシールを用いた(プラスチックフィルムに粘着剤が塗布されている)。
【0033】
図4は図3(b)の拡大図、図5は閉塞部材の貼着前のチップ下面を表した分解斜視図、図6はポート出口流路の近傍を表す要部拡大平面図である。
流路基板21には、液体に必要な操作(詳しくは後述)するためのポート、セル、流路等が構成されている。すなわち、図4に示すように、流路基板21は、生体細胞を含む検体液と前処理試薬とを投入する第1ポートPT−Aと、反応増幅試薬を投入する第2ポートPT−Dと、流路内に空気圧を供給する第3ポートPT−Bと、減圧される流路終端の第4ポートPT−Cと、第1ポートPT−Aから投入された検体液と前処理試薬とを混合して第1混合液を生成する第1の流路(検体混合部)Aと、第1混合液を加熱して生体細胞よりDNAを抽出し1本鎖に分解する第2の流路(被加熱部)Bと、被加熱部Bで処理された第1混合液に反応増幅試薬を合流させる第3の流路(試薬合流部)Cと、試薬合流部Cで合流された第2混合液が通過することにより溶解が進む酵素を固化実装した第4の流路(酵素保持部)Dと、酵素保持部Dで処理される第2混合液への酵素の混合を助長する第5の流路(酵素混合部)Eと、酵素混合部Eに接続され、流路内に固化実装されたプライマーの溶解、加熱によるDNA増幅、DNA増幅の検出を同一位置で行う複数の第6の流路(反応部)Fと、反応部Fの流路に接続され酵素混合部Eで処理された第2混合液を反応部Fの複数の反応検出セル27それぞれに定量分注するための第7の流路(定量分注流路)Gとを備える。
【0034】
第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−C(ポート部PT)は、流路基板21を上下面に貫通した穴により構成され、蓋材23を貼り付けることにより、流路と連結した凹部が形成される。各ポート部PTは、流路基板21の他の部分より若干厚みが大きくなっており、この部分に検査装置11の送液用のポートパッド(図示せず)が接続される。各ポートパッドは、配管を経由してバルブSV1,SV2,SV3,SV4(バルブSV)に接続される。このバルブSVには送液駆動のための上記したポンプPMPが接続されている。これらバルブSVとポンプPMPの動作を制御部19によって制御することにより、ポート部PTの空気を減圧、加圧、大気開放、密閉状態にすることができ、流路内の液滴を自在に搬送することができる。
【0035】
また、マイクロ流体チップ100は、所望の搬送が完了した時点で、ポート部PTからポートパッドを脱離し、図5に示すラベルRa,Rb,Rc,Rdを貼り付けることにより、チップ100を密閉状態にすることができるようになっている。チップ100を密閉しない状態で増幅反応を行った場合、増幅されたDNAがチップ外に流出して環境を汚染し、キャリーオーバーの危険性があり、これを防止するために増幅反応前にチップ100を密閉状態にする。チップ100を密閉する手段としては、上記のラベルRa,Rb,Rc,Rdを貼り付ける方法以外に、密閉性のある不図示のキャップによりポート部PTに栓をする方法や、UV硬化樹脂をポート部PTに流し込んでからUV光を照射して固化させる等、公知の密閉方法を用いることができる。
【0036】
第1ポートPT−Aは、検体ポートとして使用され、血液1μLと前処理試薬3μLとが投入される。前処理試薬は、血液中の白血球から核酸成分を単離するために用いられる。界面活性剤や強アルカリを用いて化学的に溶解処理が行われる。例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。また、血液の凝固を防ぐために、へパリンやEDTA等の凝固防止剤を添加しても良い。
【0037】
第2ポートPT−Dは、液体試薬ポートとして使用され、反応増幅試薬が56μL投入される。反応増幅試薬には、酵素、プライマー以外の増幅反応と検出に必要とする試薬が含まれている。例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の触媒、dNTPミックス等の基質、トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液を使用することができる。さらに、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)やベタイン(N,N,N-trimethylglycine)等の添加物、国際公開第99/54455号パンフレットに記載の酸性物質、陽イオン錯体等を使用してもよい。
【0038】
検出試薬にはサイバーグリーンを用いることができる。サイバーグリーンは、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることにより、強い蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無を検出する。
【0039】
第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cは、送液ポートとして使用され、ポンプPMPやバルブSVによって、減圧、加圧や大気開放状態、閉状態に切り替えられるにより流路内の液滴を駆動する。
【0040】
図6に示すように、検体混合部Aは、第1ポートPT−Aに投入した血液と前処理試薬の全量より大きな亀の甲状セルが複数連結した流路になっており、この流路を通過させることにより、第1ポートPT−Aに投入した血液と前処理試薬を均一に混合する。すなわち、検体混合部Aの流路は、液体の流動方向に直交する方向の断面積が他の流路における断面積に比して大きい広幅流路部41と、該広幅流路部41より断面積が小さい狭幅流路部43とが交互に形成されている。したがって、第1ポートPT−Aに投入された血液が、検体混合部Aに到達すると、液体が流動する方向に沿って広幅流路部4と狭幅流路部43とが交互に形成された流路を通過することで、オリフィス作用による撹拌が複数回行われ、血液と前処理試薬とが均一に混合される。
【0041】
被加熱部Bは、図1に示す検体加熱部13により98℃に加熱される。すなわち、マイクロ流体チップ100は、液処理の制御動作条件が、液体を液処理部で加熱処理するための加熱設定温度を含む条件となる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法による核酸増幅反応等において、液流路内の送液制御により、鋳型DNA、プライマー、基質、耐熱性ポリメラーゼ酵素等の混合された反応液が温度調節され、所定の3種類の温度に順次変化されることを繰り返すことで、目的とするDNAが増幅可能となる。本実施の形態では、この部分を血液と前処理試薬が通過することにより、前処理試薬により白血球から抽出されたDNA2本鎖が1本鎖になる。被加熱部Bは、加熱を均一に行うために、流路基板21には掘り込み29が設けられ、この部分の厚みが1.2mm程度に薄くなっている。
【0042】
試薬合流部Cは、加熱処理された血液と前処理試薬に反応増幅試薬を合流させる。第2ポートPT−Dにおける流路の毛細管力の大小関係は、ポートD出口流路45>主流路47>ポートD流路(第2ポートPT−D) という関係になっており、ポートD出口流路45と主流路47の接続部はラプラス圧バルブが構成されている。第2ポートPT−Dに投入した反応増幅試薬は主流路47に流出することなく、ポートD出口流路45と主流路47の接続面で留まる。また、後述する操作により血液と前処理試薬の混合液がポートD出口流路45に到着すると、ラプラス圧バルブが破壊され、上記の2液体が合流する。
【0043】
酵素混合部Eは、図4に示すように、液溜め室である第1混合部49と第2混合部51とを有する。酵素保持部Dは、第1混合部49と第2混合部51との間に設けられ、第1保持部53と第2保持部55とからなる。第1保持部53は、第1混合部49と第2混合部51の間に設置された、試薬保持用のセルであり、ポリミラーゼとデキストリンの水溶解液を点着後、凍結乾燥により乾燥、固化した試薬57が保持される。
【0044】
この保持部の上流と下流の流路は、その保持部より細くなっており、乾燥固化した試薬57の流路への密着力が無い場合でも、チップ100の保存、運搬等の振動により固化試薬57が剥がれ落ちて前後の流路へ流出してしまうことを防いでいる。
【0045】
ポリメラーゼは、鎖置換(strand displacement)活性(鎖置換能)を有するものであればよく、常温性、中温性、もしくは耐熱性のいずれのものも好適に使用できる。また、このポリメラーゼは、天然体もしくは人工的に変異を加えた変異体のいずれであってもよい。このようなポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼが挙げられる。さらに、このDNAポリメラーゼは、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないものであることが好ましい。このようなDNAポリメラーゼとしては、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus、以下「B.st」という)、バチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax、以下「B.ca」という)等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体、大腸菌(E.coli)由来DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント等が挙げられる。
【0046】
デキストリンは酵素の安定化剤として用いられる。これにより、酵素の長期保存が可能になると共に、増幅反応においても、反応液中の酵素が安定化されるため、核酸の増幅効率を高めることが可能となる。その他の酵素安定化剤として、グリセロール、ウシ血清アルブミン、糖類などを用いることができる。
【0047】
第2保持部55は第1保持部53の下流に設置され、第1保持部53と同様の構造になっている。第2保持部55には、MutSとデキストリンの水溶液を点着後、凍結乾燥により乾燥、固化させた試薬59が保持される。MutSは、「ミスマッチ結合タンパク質」(「ミスマッチ認識タンパク質」とも称される)と呼ばれるタンパク質群の1つである。これは、DNAの2本鎖において部分的に対合できない(ミスマッチ)塩基対が生じたときに、これを修復する機能を有するタンパク質群であり、MutSタンパク質(特表平9−504699号公報)以外に、MutMタンパク質(特開2000−300265号公報)などの様々なミスマッチ結合タンパクが知られている。
【0048】
酵素混合部Eは、血液、前処理試薬、反応増幅試薬の合流液を第1混合部49、第2混合部51の間を往復させることにより、第1の酵素である試薬57、第2の酵素である試薬59を溶解し、前記液体を均一に混合する。往復時に液滴が気泡を巻き込まないように安定に搬送するために、酵素混合部Eは混合液に対して撥水的であることが望ましく、本実施の形態では流路基板21の材料にCOP(水の接触角約110°)を選択した。
【0049】
反応部Fには、ターゲットDNAのプライマーとゼラチンの水溶解液が点着後冷却固化、固定されている。プライマーは、ターゲットDNAの特定部分に相補的な塩基配列を有する20塩基長程度のオリゴヌクレオチドであり、ポリメラーゼによるDNAの合成の起点となる。本実施の形態では13個の反応検出セル27a〜27mが構成されており、検査対象の遺伝子に対して、wildとmutantの配列に特異的に増幅反応を行うために、wildを増幅させるプライマー61及び、mutantを増幅させるためのプライマー63を一対として、それぞれ異なる反応・検出セルに固定している。
【0050】
すなわち、12個の反応検出セル27a〜27lで6ケ所D1〜D6の遺伝子を検査対象としている。残りの1ケ所PDの反応検出セル27mには、多型の存在しない遺伝子配列を増幅させるためのプライマー65が固定されており、このセルはポジコンとして用いられる。第1混合部49、第2混合部51で混合された検体は、各反応検出セル27a〜27mに定量分注される。
【0051】
図7はプライマーが混合拡散された図4のP2−P2断面視を(a)、その要部拡大図を(b)に表した反応検出セルの説明図である。
この反応検出セル27a〜27mを60℃に加熱することにより、固化したゼラチンが溶解し、各反応検出セル27a〜27m内に分散し、等温増幅反応が行われる。プライマーの水溶液のみを反応検出セル27に点着し、乾燥固定化することもできるが、この場合、セル内に液体が流入した際に、プライマーが流れ方向に流されてしまい、セル内での反応、検出が行えない。このため、常温の水溶液では溶解しにくいゼラチンを0.5%含有させて点着、固化した。
【0052】
プライマーとゼラチンの水溶液は流路基板21側のセルに点着固定しており、マイクロチップ使用状態では図7に示すように、流路の上面に配置されている。液体が流入後、蓋材23側すなわち下面から加熱されることにより、液体の温度上昇に伴って溶解したプライマー61を含むゼラチンgeは、その比重が大きいため重力により流路内下側に流動する。また、液体は下面より加熱されることにより、セル内で対流67を起こす。このゼラチンgeの重力による流路下側への流動と、液体の加熱による対流67の相乗効果により、プライマー61及びゼラチンgeは反応検出セル27内に短時間で均一に混合拡散される。
【0053】
図8は反応検出セルの拡大平面図である。
各反応検出セル27a〜27mの前後には反応検出セル入り口流路69と反応検出セル出口流路71が配置され、この入り口出口流路69,71は細い流路となっている。分注後の液体の端面は、入り口流路69と主流路73の接続面、及び出口流路71と排気流路75の接続面に留まっている。反応部Fには加熱部77が形成され、加熱部77は、加熱を均一に行うために、上記の掘り込み31によって、流路基板21の厚みが1.2mm程度に薄くなっている。加熱部77は、反応検出セル27全体と、入り口出口流路69,71の一部分までを加熱する配置になっており、加熱部77以外は、他の温度調整手段によって常温に温度調節されている。すなわち、反応検出セル27内の液体の両端面は、加熱されることなく、常温に保持される。このことにより、加熱により水分が蒸発することを防ぐことができる。この加熱部77及びその周りの温度調節手段が、図1の温調部15を構成している。
【0054】
入り口出口流路69,71、主流路73、排気流路75は、定量分注流路Gを構成している。定量分注流路Gは、酵素混合部Eで処理された第2混合液を反応部Fの複数の反応検出セル27それぞれに定量分注する。
【0055】
反応検出セル27に定量分注された液体は、生態細胞を有する検体液、前処理試薬、反応増幅試薬を含む。反応検出セル27には核酸の断片であるプライマー61、63、…が実装されており、この反応検出セル27に液体を定量分注し、加熱しながら励起光を照射する事により、液処理部内で発生する蛍光を検出する。反応検出セル27では、被検出物質の拡散増幅反応が行われる。この際、検知感度の高い標識物質である発光性物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等が用いられる。サイバーグリーンは、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることにより、強い蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無が検出可能となる。
【0056】
図9はターゲット配列がある場合を(a)、ターゲット配列が無い場合を(b)に表した蛍光測定結果のグラフである。
反応検出セル27a〜27mは、光学系により、約490nmの波長で励起し、インターカレートしたサイバーグリーンの約520nmの蛍光を測定することにより、ターゲットDNAの増幅が確認される。すなわち、図9に示すように、ターゲットとする核酸配列が存在する場合には、蛍光強度Iの増加が確認され、存在しない場合には蛍光強度Iの増加が確認されない。
【0057】
反応部Fでは、反応検出セル27a〜27mへの分注時に液体がスムーズに進入し、出口部でのラプラス圧バルブによる停止が安定に行えるためには、反応検出セル27とその前後の細い入り口出口流路69,71は適度に親水的であることが望ましい。本実施の形態では、少なくとも入り口出口流路69,71が、プラズマ照射により親水化されている(水の接触角約70°)。
【0058】
流路基板21を部分的に親水化、又は撥水化する方法としては、プラズマ照射以外に公知の方法(親水化/撥水化処理液を塗布する方法、UV照射、蒸着やスパッタにより親水化/撥水化材料の薄膜を形成する方法、2色成形やインサート成形により、濡れ性の異なる樹脂を用いて成形する方法等)を用いることができる。本実施の形態では、各流路(少なくとも入り口出口流路69,71)の流路内壁面が、少なくとも2段階以上の濡れ性を有している。これにより、各反応検出セル27a〜27mへの分注時に液体がスムーズに進入し、出口部でのラプラス圧バルブによる停止が安定に行えるようになっている。
【0059】
ここで、反応検出部内における発泡について説明する。
図10は反応検出部の発泡状況を(a)〜(c)に表した平面図、図11は反応検出部の発泡防止策を表した要部断面図である。
反応検出セル27a〜27mを加熱する際、反応検出セル27内に気泡が発生すると、蛍光検出の精度が低下するという問題がある。このため、流路では気泡発生を防止する必要がある。気泡の発生メカニズムは、図10に示すように、反応検出セル27内に混合液が流入する際に、反応検出セル27に、流路断面R(流路隅部の面取り半径)、接着剤塗布ムラ、ウエルドライン等の何らかの原因により微小空間が形成されていると、この微小空間内に混合液が流入することができず、微小な濡れ残り、すなわち、微小な空気だまりができることによる。この空気だまりが加熱により膨張、増大することによって気泡が発生する。
【0060】
微小空間の代表的な例としては、図11のa部に示す流路の断面Rと蓋材23の接合部で構成される微小空間81が挙げられる。これを防止する手段としては、図11のb部に示すように、流路83の断面Rを極力小さくする(100μm以下が望ましく、10μm以下がさらに望ましい)ことが有効である。
【0061】
また、別の手段としては、図11のc部に示すように、接着剤79の塗布条件や貼り付け条件を最適化することにより、流路83の断面Rと蓋材23により構成される微小空間81を接着剤79により充填してしまうという方法もある。
【0062】
微小空間81の他の例として、図11のd部に示すように、蓋材23の接着剤79や、接着剤79の塗布ムラがある。接着剤面の塗布ムラにより、微小空間81が形成されていると、流路断面のR同様に微小空間81が形成され、発泡の原因となる。他の例としては、図11のe部に示すように、射出成形によって製作された流路基板21のウエルドライン85があり、このウエルドライン85が同様の微小空間81を形成していると発泡の原因となる。このため、特に反応部Fの流路内壁面は、流路内を液体が流れる際に該液体により充填されない微小な隙間空間の形成を防止する連続した円滑面からなることが好ましい。これにより、加熱の際に流路内に気泡が発生しなくなり、蛍光検出精度の低下が防止される。このように、発泡を防止するために、上記した解決手段から適宜なものを選択することにより、液体が流入する時、液体の流入可能な微小空間81が形成されていないようにすることが必要となる。
【0063】
本実施の形態では、上記のように、6組の一塩基多型を判定するための12個の反応検出セル27a〜27lと、ポジコン用の1個の反応検出セル27mにより構成されている。ポジコン用反応検出セル27mには、多型が存在しない遺伝子配列部をターゲットとするプライマー65が実装されており、どんな検体を検査しても、蛍光強度の増大が確認される。このポジコン用反応検出セル27mの蛍光を確認することにより、一連の送液操作が正常に行われ、且つ正常な反応が行われたことを確認することができ、検査結果の信頼性を保障することが可能となる。
【0064】
また、ネガコンの保障方法としては、血液の代わりに水を投入して一連の反応を行わせ、蛍光強度の増大が無いことを確認しても良いし、同一基板上に2組の回路を形成し、検査とネガコンの保障を同時に行っても良い。
【0065】
有限な液体をマイクロ流体チップ100で操作する場合、特に、能動的なバルブやポンプを内蔵していないシンプルな流路により構成されているマイクロ流体チップ100で、液体の複雑なハンドリングをチップ外部からの空圧駆動で行うには、液体の位置を正確に検出することが不可欠となる。液体の位置を検出しないで、例えば駆動空気の流量で制御しようとすると、ポンプからマイクロ流体チップ100のポート部PTまでの配管や、チップ内の流路の空気の体積(デッドボリューム)の温度変化による膨張や収縮、流路内の微小な傷や静電気による流量抵抗の変化、或いは流体を加熱した時に流体が蒸発することによる蒸気圧の影響などの外乱により、再現性良く液体をハンドリングすることは困難となる。このため、液体の位置を正確に検出することは非常に重要となる。
【0066】
マイクロ流体チップ100は、液流路の特定位置において液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定する。これにより、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、液流路内での検体中のDNAの抽出或いは増幅等の反応が可能となる。液体の制御動作条件は、液体に対する移動の方向、移動速度、移動のための駆動力のうち、少なくとも1つを含むものであれば、液流路内における送液の移動制御が可能となる。また、液体移動の方向、移動速度、駆動力の全てを制御可能とした構成によれば、これらの動作条件が自在に切り替えられることで、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等を行うのと同等の送液制御が可能となる。
【0067】
本実施の形態では、液体の位置を検出することにより、液体の駆動速度、駆動方向、駆動力の制御を、検査装置11の制御部19によって切り替えている。ここで駆動力とは、一定圧力による吸引や加圧以外に、ポート部PTの大気開放、閉状態、及び複数ポート部PTの連結状態を含むものとする。
【0068】
図12は液位置検出部の平面視を(a)、そのP1−P1断面視を(b)に表した説明図、図13は液位置検出部の入反射光を表した模式図、図14は反射率と入射角度との相関を表したグラフである。
マイクロ流体チップ100には液位置検出のためのセンシング部PH1〜5(図1,図4参照)が配置されている。本実施の形態では、このセンシング部PH1〜5に対向する位置に、液位置検出部16が配置される。図1には纏めて1つの液位置検出部16を示しているが、センシング部PH1〜5の合計5箇所それぞれに対向して配置される。この液位置検出部16の具体例として、図12に示す反射型光ファイバーセンサー87が使用されている。各ファイバーセンサー87の先端は、図12に示すように、チップ100の蓋材23側から流路83に向けて配置されている。
【0069】
反射型光ファイバーセンサー87は、流路83の特定位置に光を照射して流路83からの反射光を検出し、特定位置おける流路内の液体の有無を、反射光の空気と液体との屈折率変化に基づく光量変化から判定する。したがって、チップ100の外部から光を照射し、その反射光の屈折率変化によって判定が可能となるので、流路83にセンサー等が露出せず、検体液の汚染されることがない。
【0070】
具体的には、反射型光ファイバーセンサー87は、特定位置を照射する光を投光側光ファイバー89を通じて供給し、流路83からの反射光を受光側光ファイバー91に導入して検出する。この反射型光ファイバーセンサー87によれば、照射光と反射光を、投光側光ファイバー89と受光側光ファイバー91を統合した小面積なファイバー先端面で行うことができ、小面積の被検出領域に対する光照射及び当該照射領域からの反射光の受光が可能となり、微小な流路83の特定位置における液体の有無が検出可能となる。
【0071】
反射型光ファイバーセンサー87の受光側光ファイバー91は、チップ100より反射される反射光の強度を検出する。
流路83中の液滴のあり/なしは、主に蓋材23の流路側面からの反射率が流路中に空気がある場合と、水がある場合の反射率の違いにより検出することができる。
【0072】
一般に、図13に示すような入射光に対する反射率は次式で表される。
【0073】
【数1】
ここで、Rp:p偏光、Rs:s偏光であり、n=n2/n1とおいた。
【0074】
【数2】
【0075】
とおき、蓋材23の屈折率をn1=1.49、流路83中の流体の屈折率を
液滴なしの場合・・・n2(空気)=1.00
液滴ありの場合・・・n2(水)=1.33
とおいて計算すると、流路83中の流体が空気の場合と水の場合とで図14のような反射率の違いを求めることができる。
【0076】
使用している投光側光ファイバー89の投光の広がり角が60°の場合、図14の0°から30°の範囲で考えればよく、流路83中の流体が空気の場合は反射率が約4%、水の場合は0.5%以下になる。この違いにより、液滴の有り無しで反射型光ファイバーセンサー87の受光量が変化し、液滴の到着や通過を検出することができる。
【0077】
また、図14から読み取れるように、入射角度が大きくなるにつれて、空気と水の反射率の差は大きくなることより、反射型光ファイバーセンサー87は、図15のように投光側と受光側のファイバー89,91を分離タイプとして、チップ100に対して角度を持たせた配置とすることができる。ここで、図15は投光側光ファイバーと受光側光ファイバーとが傾斜配置された液位置検出部の側面図である。同図の構成では、流路83の特定位置への光照射方向と、特定位置からの反射光の検出方向とが、特定位置の光照射面の法線93に対してそれぞれ傾斜する方向に設定されている。このような構成によれば、空気の存在時に反射光が受光側光ファイバー91から外れ、液体存在時に反射光が受光側光ファイバー91へ入射する傾斜角度とされることで、屈折率変化に基づいた液体の検出が簡素な構造で、さらに安定して検出できるようになる。投光側光ファイバーと受光側光ファイバーのファイバー径、出射光・入射光角度、ファイバーの配置、使用本数等は、検出する流路の形状に応じて実験的あるいは光学シミュレーションにより最適化する事ができる。
【0078】
このように、反射型光ファイバーセンサー87による検出は、空気と流体の屈折率の差を検出するものであり、流体の光透過率や、光の散乱を検出する原理による検出方法と比較して、流体中の溶解物質の種類やその濃度変化があっても、安定して検出することができるという利点を備えている。
【0079】
上記の構成を有する本実施の形態によるマイクロ流体チップ100によれば、
(1)検体液と理試薬とを投入する第1ポートPT−Aと、
(2)反応増幅試薬を投入する第2ポートPT−Dと、
(3)流路内に空気圧を供給する第3ポートPT−Bと、
(4)第1ポートPT−Aから投入された検体液と前処理試薬とを混合して第1混合液を生成する検体混合部Aと、
(5)第1混合液を加熱して生体細胞よりDNAを抽出し1本鎖に分解する被加熱部Bと、
(6)被加熱部Bで処理された第1混合液に反応増幅試薬を合流させる試薬合流部Cと、
(7)試薬合流部Cで合流された第2の混合液が通過することにより溶解が進む酵素を固化実装した酵素保持部Dと、
(8)酵素保持部Dで処理される第2の混合液への酵素の混合を助長する酵素混合部Eと、
(9)酵素混合部Eに接続され、流路内に固化実装されたプライマーの溶解、加熱によるDNA増幅、このDNA増幅の検出を同一位置で行う複数の反応検出セル27からなる反応部Fと、
(10)複数の反応検出セル27に接続され酵素混合部Eで処理された第2混合液を複数の反応検出セル27のそれぞれに定量分注するための定量分注流路Gと、
を備えたので、立体的に複雑な構造を必要とせず、簡単な構造で複雑な送液制御が行えるとともに、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作が不要になり、熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得ることができる。
【0080】
次に、上記のマイクロ流体チップ100を使用した送液フローについて説明する。
図16はマイクロ流体チップの駆動制御に伴う各要素の作動状態を時間軸に沿って表したタイムチャート、図17は液セットから最初の加熱までの動作説明図、図18は酵素混合までの動作説明図、図19は反応部注入までの動作説明図、図20は分注から検査完了までの動作説明図である。
以下の説明においては、図16の制御動作V1〜V13と図17〜図20の各ステップS1〜S20における状態を対応させて説明する。
先ず、チップ100を準備し、検査装置11のREADYスイッチを押す(V1、S1)。そして、第2ポートPT−Dに反応増幅試薬を投入する(S2)。第2ポートPT−Dにおける流路の毛細管力の大小関係は、ポートD出口流路45>主流路47>第2ポートPT−Dという関係になっており、ポートD出口流路45と主流路47の接続部はラプラス圧バルブが構成されている。このため、反応増幅試薬は主流路47に流出することなく、ポートD出口流路45と主流路47の接続面で留まる。
【0081】
次いで、第1ポートPT−Aに血液と前処理試薬を投入する(S3)。チップ100を検査装置11にセットし、検査装置11のSTARTスイッチを押す(V2)。すると、第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cにポートパッドが押し付けられる。この時、第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cに対応するパッドは大気開放状態になっており、パッドが押し付けられる事によりチップに投入されている液体が移動する事がない。そして、パッド押し付けが完了すると、第3ポートPT−Bが減圧され(V3)、血液と前処理試薬Lが検体混合部Aを高速(100μL/min)に通過することにより均一に混合される(S4)。第2ポートPT−Dは、第3ポートPT−Bと同一の減圧で吸引されており、血液と前処理試薬の送液抵抗が大きくても、第2ポートPT−D内の前処理試薬が流路に流出することがない。
【0082】
液がセンシング位置PH1に到達し、液位置検出部のセンサーPH−1がONし(V4)、吸引速度が低速(30μl/min)に切り替えられる(S5)。
被加熱部Bを液が低速(30μl/min)で通過することにより(S6)、血液と前処理試薬の混合液Lは一定時間(例えば15秒間)、98℃に加熱され、白血球中のDNAが抽出され、1本鎖となる。
液がセンシング位置PH2に到達し、センサーPH−2がONすると(V5)、第2ポートPT−Dが大気開放となり、同時に第1ポートPT−Aが閉となり、吸引により、第2ポートPT−Dのみから増幅反応試薬が流出し(S7)、血液と前処理試薬の混合液Lと泡を含むことなく合流する(S8)。
【0083】
液がセンシング位置PH3に到達し、センサーPH−3がONすると(V6)、吸引速度が高速(100μl/min)に切り替えられ、一定流量(45μl)が吸引される(S9,S10)。
そして、第1ポートPT−Aが大気開放となり(V7)、さらに15μL吸引され、第2ポートPT−Dは空になり、第1混合部49で混合される(S11)。
さらに高速(500μl/min)で80μL吸引されることにより(V8)、混合液Lは第1保持部53、第2保持部55を通過し、酵素が溶解され、第2混合部51で混合される(S12)。
【0084】
さらに高速(500μl/min)で80μL加圧されることにより(V9)、混合液Lは第1混合部49に搬送され、未溶解の酵素が溶解され、第1混合部49で混合される(S13)。
さらに高速(500μl/min)で80μL吸引されることにより(V10)、第1保持部53、第2保持部55の酵素は完全に溶解され、また液体は第2混合部51で均一に混合される(S14)。
次に、第3ポートPT−Bより、0.2kPaで吸引することにより(V11)、第2混合部51の混合液Lは、反応部Fの流路に搬送される(S15)。
【0085】
液がセンシング位置PH5に到達し、センサーPH−5がONすると(V12)、第3ポートPT−Bは閉状態になり、第4ポートPT−Cが0.3kPaで吸引され、この状態が5秒間保持される。混合液Lは、反応検出セル27内に搬送され、セル下流の細い反応検出セル出口流路71で停止する(S16,S17,S18)。
【0086】
この時、各反応検出セル27は常温に保たれており、予めゼラチンにより固定化されているプライマーは溶解することなくセル内に保持されている。
次に、第4ポートPT−Cを閉状態とし(V13)、第3ポートPT−Bより100μl/minの速度で加圧することにより、反応検出セル27を連結している主流路73内の混合液は第2混合部51に押し戻され(S19)、各反応検出セル27には、2.5μLの混合液Lが秤量分注され、これらはお互いに液で連結していない状態となる(S20)。
【0087】
次に、検査装置11のパッドデバイスが離脱し、図示しないシールデバイスにより、-各ポート部PT−A,B,C,Dには、ラベルRa,Rb,Rc,Rd(図5参照)が貼り付けられ、チップ100は密閉状態となり、幅反応による増幅産物がチップ外に流出することにより、環境を汚染する心配がなくなる。
【0088】
次に反応部Fは、図示しない温調デバイスにより、60℃に急速に加熱される。加熱により、ゼラチンにより固定化されていたプライマーは、反応検出セル27内に均一に拡散し、等温増幅反応が始まる。
このとき、反応検出セル27両端の細い反応検出セル入り口流路69と反応検出セル出口流路71との液体端面は60℃に加熱されることなく、常温に保たれており、反応検出セル27内の液体が蒸発してしまうことがない。
【0089】
各反応検出セル27a〜27mを図1に示す蛍光検出部17で励起光を照射し一定時間間隔で蛍光測定することにより、各反応検出セル27a〜27mに予め実装していたプライマーに対応するターゲット遺伝子配列が存在しているかどうかを知ることができる。ターゲット遺伝子配列が存在している場合には、蛍光強度の増大が確認されるのに対して、ターゲット遺伝子配列が存在していない場合には、蛍光強度の増大がない。
【0090】
したがって、本実施の形態によるマイクロ流体チップ100の駆動制御方法によれば、検体液と前処理試薬とを投入する第1ポートPT−A、反応増幅試薬を投入する第2ポートPT−D、流路内に空気圧を供給する第3ポートPT−Bに加え、各種試薬との混合、混合液の定量分注のための流路を構成手段として備え、液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、この検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定することにより、有限な液体が、特に、能動的なバルブやポンプを内臓していないシンプルな流路によって、チップ100の外部からの空圧駆動で複雑にハンドリング可能となる。つまり、立体的に複雑な構造を必要とせず、簡単な構造で送液制御が可能となる。これにより、検体と液体試薬を投入するだけで、自動的に所望の液滴操作、化学反応を行い、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、高い分析結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るマイクロ流体チップの駆動制御方法は、流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、液体端部の検出タイミングに応じ、液体の制御動作条件を決定するものであり、これにより、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、液流路内での検体中のDNAの抽出或いは増幅等の反応を可能できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係るマイクロ流体チップを検査装置の概略構成と共に表したブロック図である。
【図2】図1に示したマイクロ流体チップの分解斜視図である。
【図3】マイクロ流体チップの上面視を(a)、下面視を(b)に表した平面図である。
【図4】図3(b)の拡大図である。
【図5】閉塞部材の貼着前のチップ下面を表した分解斜視図である。
【図6】ポート出口流路の近傍を表す要部拡大平面図である。
【図7】プライマーが混合拡散された図4のP2−P2断面視を(a)、その要部拡大図を(b)に表した反応検出セルの説明図である。
【図8】反応検出セルの拡大平面図である。
【図9】ターゲット配列がある場合を(a)、ターゲット配列が無い場合を(b)に表した蛍光測定結果のグラフである。
【図10】反応検出部の発泡状況を(a)〜(c)に表した平面図である。
【図11】反応検出部の発泡防止策を表した要部断面図である。
【図12】液位置検出部の平面視を(a)、そのP1−P1断面視を(b)に表した説明図である。
【図13】液位置検出部の入反射光を表した模式図である。
【図14】反射率と入射角度との相関を表したグラフである。
【図15】投光側光ファイバーと受光側光ファイバーとが傾斜配置された液位置検出部の側面図である。
【図16】マイクロ流体チップの駆動制御に伴う各要素の作動状態を時間軸に沿って表したタイムチャートである。
【図17】液セットから最初の加熱までの動作説明図である。
【図18】酵素混合までの動作説明図である。
【図19】反応部注入までの動作説明図である。
【図20】分注から検査完了までの動作説明図である。
【符号の説明】
【0093】
21 流路基板
61,63,65 プライマー
83 流路
89 投光側光ファイバー
91 受光側光ファイバー
93 法線
100 マイクロ流体チップ
PT−A 第1ポート(接続ポート)
PT−B 第3ポート(接続ポート)
PT−C 第4ポート(接続ポート)
PT−D 第2ポート(接続ポート)
PH−1 センシング位置PH1のセンサー
PH−2 センシング位置PH2のセンサー
PH−3 センシング位置PH3のセンサー
PH−4 センシング位置PH4のセンサー
PH−5 センシング位置PH5のセンサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ内に供給された液体の送液を制御するマイクロ流体チップの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の分子生物学の進歩により、血液等の生体物質を分析することにより、病気の治療における薬剤投与の効果や副作用の体質による個人差を予知することが可能であることが示されてきており、これを利用して、個人個人にとって最適な治療を施していこうという気運が高まっている。例えば、特定の遺伝子と、特定の治療薬剤の効果や副作用が強く相関することがわかっている場合、この情報を特定の患者の治療に役立てるためには、患者の遺伝子の塩基配列を知る必要がある。内因性遺伝子の変異又は一塩基多型(SNP)に関する情報を得るための遺伝子診断は、そのような変異又は一塩基多型を含む標的核酸の増幅及び検出により行なうことができる。このため、サンプル中の標的核酸を迅速且つ正確に増幅及び検出し得る簡便な方法が求められる。
【0003】
この場合、被検出物質と特異的に結合する抗体又は抗原等のタンパク質或いは一本鎖の核酸をプローブに使い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定し、被検出物質と抗原抗体反応又は核酸ハイブリダイゼーションを行う。そして、酵素等の検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等を用いて、抗原抗体化合物や2本鎖の核酸を検出して、被検物質の有無の検出或いは被検物質の定量を行っている。
【0004】
この種の技術として、例えば特許文献1に開示される生体物質検査デバイスは、試薬類・送液系用のエレメントを搭載した、検体ごとのマイクロリアクタなるチップ・コンポーネント、デバイス本体である制御・検出コンポーネントとを別個にシステム構成することにより、極微量分析、増幅反応に対して、クロス・コンタミネーション、キャリーオーバー・コンタミネーションが生じ難く図られている。
【0005】
また、特許文献2に開示される生化学処理装置は、チャンバとチャンバ間を連通する流路とを有する生化学反応カートリッジを載置するステージと、流路を介して液体を移動させるための移動手段と、チャンバ内の液体の有無或いは液量を検出する検出手段と、検出手段により検出されたチャンバ内の液体の情報により液体の移動の結果を判定する判定手段とを設けることにより、詰まり、漏れなどの異常を無くし、液体が正常に流れたことを簡単な構成で確実に検知できるように図られている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−125990号公報
【特許文献2】特開2006−170654号公報
【特許文献3】特開2005−160387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特定の遺伝子の塩基配列を知る従来の方法としては、DNAシーケンサーや、NDAマイクロアレイ等が知られているが、これらには、一般的に装置やチップのコストが高く、検査に要する時間も長いという問題があった。すなわち、特許文献1においては、液体試薬類を分岐、送液する方法が開示されているが、予め設定された圧力に達すると液体の通過を許可するための送液制御部や、流路内の液体の逆流を防止する逆流防止部など、立体的に複雑な構造を必要とするため、マイクロ流体チップの構造が複雑になり、結果的にチップが高価になってしまうという問題があった。また、これらの機構は、可動機構により構成されるため、製造条件のバラツキの影響により、動作の信頼性が不足するという問題があった。
また、特許文献2においては、マイクロ流体チップと、このチップ内において流体を検出する方法が開示されているが、この検出は、送液動作の制御のためのものではなく、送液の結果が正常であるか、異常であるかを判定するためのものであり、高度な送液制御による正確かつ信頼性の高い分析結果を得るための手段としては利用されていなかった。また、検出はチャンバーで行われるものであり、マイクロ流路において、液体の位置を検出する方法については開示されていない。さらに、検出方法は、光の液体による散乱を利用したものであり、水などの散乱の小さい液体の検出や、試薬や検体に含まれている物質の種類やその濃度が変化した場合に、安定的に検出することができないという問題があった。
一方、特許文献3にはターゲット遺伝子のみを増幅し、これを比較的簡便な検出系で分析する核酸の増幅法及び核酸増幅用プライマーセットが提案されているが、この反応を一般の生化学分析で用いられているマイクロチューブを用いたピペット操作による方法で行う場合、試薬類の準備、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等、操作が煩雑であるとともに、熟練が必要であるという問題があった。特に、複数のターゲット遺伝子を分析する場合、操作の煩雑さにより薬液のとり間違いやコンタミの危険性が増大し、検査結果の信頼性が不足するという問題があった。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得られるマイクロ流体チップの駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップに対して、前記液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、前記液処理部で液処理を行うマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の特定位置において前記液流路内の前記液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、該検出のされたタイミングに応じて前記液体の制御動作条件を決定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【0010】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかが検出され、液体端部の検出タイミングに応じ、液体の制御動作条件が決定される。これにより、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、液流路内での検体中のDNAの抽出或いは増幅等の反応が可能となる。
【0011】
(2) (1)項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体の制御動作条件が、前記液体に対する移動の方向、移動速度、移動のための駆動力のうち、少なくとも1つを含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0012】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液体に対する移動の方向、移動速度、駆動力の少なくとも1つが制御されることで、液流路内における送液の移動制御が可能となる。そして、液体移動の方向、移動速度、駆動力の全てを制御可能とした構成によれば、これらの動作条件が自在に切り替えられることで、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等を行うのと同等の送液制御が可能となる。
【0013】
(3) (1)項又は(2)項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液処理の制御動作条件が、前記液体を前記液処理部で加熱処理するための加熱設定温度を含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0014】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法による核酸増幅反応等において、液流路内の送液制御により、鋳型DNA、プライマー、基質、耐熱性ポリメラーゼ酵素等の混合された反応液が温度調節され、所定の3種類の温度に順次変化されることを繰り返すことで、目的とするDNAが増幅可能となる。
【0015】
(4) (1)項又は(2)項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の前記特定位置に光を照射して前記液流路からの反射光を検出し、前記特定位置おける液流路内の液体の有無を、前記反射光の空気と液体との屈折率変化に基づく光量変化から判定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0016】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液体の有無を知りたい液流路に、マイクロ流体チップの外部から光りを照射し、その反射光の屈折率変化によって判定が可能となるので、液流路にセンサ等が露出せず、検体液の汚染されることがない。
【0017】
(5) (4)項記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置を照射する光を投光側光ファイバーを通じて供給し、前記液流路からの反射光を受光側光ファイバーに導入して検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0018】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、照射光と反射光を、投光側光ファイバーと受光側光ファイバーを統合した小面積なファイバー先端面で行うことができ、小面積の被検出領域に対する光照射及び当該照射領域からの反射光の受光が可能となり、微小な液流路特定位置における液体の有無が検出可能となる。
【0019】
(6) (4)項又は(5)項記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置への光照射方向と、前記特定位置からの反射光の検出方向とが、前記特定位置の光照射面の法線に対してそれぞれ傾斜する方向に設定されることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【0020】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、光照射方向と反射光の検出方向が光照射面の法線に対してそれぞれ傾斜され、空気の存在時に反射光が受光側光ファイバーから外れ、液体存在時に反射光が受光側光ファイバーへ入射する傾斜角度とされることで、屈折率変化に基づいた液体の検出が簡素な構造で、さらに安定して検出できるようになる。
【0021】
(7) (1)項〜(6)項のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記物理的作用力が、前記液流路の始点と終点に設けた接続ポートからエア供給又はエア吸引することにより発生する空気圧作用力であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【0022】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液流路内に供給された液体が、液流路の始点と終点とに作用されるエア供給又はエア吸引により、液流路内の所望位置へ移動制御可能となる。この際、液体は、始点と先端部、後端部と終点との間に介在する気体に挟持された状態で保持され、引っ張り力の作用により途中で分断されることがない。
【0023】
(8) (1)項〜(7)項のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体が生態細胞を有する検体液、前処理試薬、反応増幅試薬を含み、
前記液処理部の一つには核酸の断片であるプライマーが実装されており、この液処理部に前記液体を定量分注し、加熱しながら励起光を照射する事により、前記液処理部内で発生する蛍光を検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【0024】
このマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、液処理部の一つに、被検出物質と特異的に結合する核酸の断片であるプライマーが液状の試薬を乾燥、固化させて実装され、この液処理部に液体が定量分注されることで、被検出物質の核酸増幅反応が行われる。この際、検知感度の高い標識物質である発光性物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等が用いられる。サイバーグリーンは、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることにより、強い蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無が検出可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るマイクロ流体チップの駆動制御方法によれば、基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップに対して、液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、液処理部で液処理を行い、液流路の特定位置において液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定するので、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作が不要になり、熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るマイクロ流体チップの駆動制御方法の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るマイクロ流体チップを検査装置の概略構成と共に表したブロック図である。
本発明に係るマイクロ流体チップ(以下、単に「チップ」とも称す。)100は、検査装置11にセットされて使用され、一回の使用後に廃棄される。本実施の形態は、検体である血液(全血)がマイクロ流体チップ100に注入される。マイクロ流体チップ100は、検査装置11にセットされることで、チップ外部からの物理的作用力によって検体液がハンドリングされ、例えば一塩基多型の複数ターゲット遺伝子が検査されるものであり、特開2005-160387に示されているような、ターゲット配列の核酸を等温で特異的に増幅するための反応とその検出をチップ100上で実現可能とするものである。これにより、例えば、標的核酸を増幅してこれを検出することで、感染症の原因となる病原体に特異的な標的核酸の増幅及び検出が可能となり、検体中の該病原体の存否等が判定可能となる。
【0027】
本実施の形態において、物理的作用力は、液流路の始点と終点に設けたポート部PTからエア供給又はエア吸引することにより発生する空気圧作用力(空圧駆動力)である。したがって、液流路内に供給された液体が、液流路の始点と終点とに作用されるエア供給又はエア吸引により、液流路内の所望位置へ移動制御可能となる。この際、液体は、始点と先端部、後端部と終点との間に介在する気体に挟持された状態で保持され、引っ張り力の作用により途中で分断されることがない。
【0028】
なお、DNA増幅反応は、等温増幅反応により、使用する酵素の活性が一定に維持できる温度に保たれる。ここで、「等温」とは、酵素およびプライマーが実質的に機能しうるような、ほぼ一定の温度をいう。さらに、「ほぼ一定の温度」とは、酵素及びプライマーの実質的な機能を損なわない程度の温度変化であれば許容されることを意味する。
【0029】
検査装置11は、作動流体として空気が使用されるポンプPMPと、バルブSV1,SV2,SV3,SV4,SV5と、検体加熱部13と、温調部15と、液位置検出部16と、蛍光検出部17と、これらに接続され検出信号が入力され、或いは制御信号を送出する制御部19とが基本構成要素として設けられている。バルブSV4はポンプPMPとバルブSV2との間に介装され、バルブSV2は作動流体制御側がチップ100の第4ポートPT−Cと、バルブSV1は作動流体制御側がチップ100の第2ポートPT−Dと、バルブSV3は作動流体制御側が第1ポートPT−Aとに接続され、バルブSV2の作動流体制御側とバルブSV1の作動流体入力側はチップ100の第3ポートPT−Bに接続される。また、検体加熱部13は、チップ100の被加熱部Bを加熱し、温調部15はチップ100の反応部Fの温度調節を行い、蛍光検出部17は反応部Fの蛍光を検出可能としている。これら各構成要素の動作については後に詳述する。
【0030】
図2は図1に示したマイクロ流体チップの分解斜視図、図3はマイクロ流体チップの上面視を(a)、下面視を(b)に表した平面図である。
マイクロ流体チップ100は、図2に示すように、流路基板21と、この流路基板21の一方の面(下面)22に貼着される蓋材23とにより構成されている。流路基板21は、熱可塑性の高分子ポリマーの射出成形により製作される。使用する高分子ポリマーは、特に限定されないが、光学的に透明であり、耐熱性が高く、化学的に安定であり、射出成形が容易なものが望ましく、COP、COC、PMMA等が好適である。光学的に透明とは、検出に用いる励起光や蛍光の波長において透過性が高く、散乱が小さく、自家蛍光が少ないことである。チップ100は、蛍光を検出可能とする透光性を有していることで、検出試薬に例えばサイバーグリーンが用いられ、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることで発する蛍光が測定可能となる。これにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無が検出可能となる。
【0031】
流路基板21の他方の面(上面)28には掘り込み29,31が形成され、掘り込み29,31は被加熱部B、反応部Fに対応して位置している。また、流路基板21の下面22には図3に示すように、上記の第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cに連通する開口33,35,37,39が設けられている。流路基板21は、外形が例えば縦横W2,W1が55×91mmであり、厚みtが2mm程度で形成される。
【0032】
蓋材23は、流路基板21の流路面(下面22)に形成されたポート、セル、流路(溝)に蓋をするための部材であり、蓋材23と流路基板21は接着剤や粘着剤により接合される。蓋材23としては、流路基板同様、光学的に透明であり、耐熱性が高く、化学的に安定であるシート状の高分子ポリマーを用いる。本実施の形態では、100μmの厚みのPCR用プレートシールを用いた(プラスチックフィルムに粘着剤が塗布されている)。
【0033】
図4は図3(b)の拡大図、図5は閉塞部材の貼着前のチップ下面を表した分解斜視図、図6はポート出口流路の近傍を表す要部拡大平面図である。
流路基板21には、液体に必要な操作(詳しくは後述)するためのポート、セル、流路等が構成されている。すなわち、図4に示すように、流路基板21は、生体細胞を含む検体液と前処理試薬とを投入する第1ポートPT−Aと、反応増幅試薬を投入する第2ポートPT−Dと、流路内に空気圧を供給する第3ポートPT−Bと、減圧される流路終端の第4ポートPT−Cと、第1ポートPT−Aから投入された検体液と前処理試薬とを混合して第1混合液を生成する第1の流路(検体混合部)Aと、第1混合液を加熱して生体細胞よりDNAを抽出し1本鎖に分解する第2の流路(被加熱部)Bと、被加熱部Bで処理された第1混合液に反応増幅試薬を合流させる第3の流路(試薬合流部)Cと、試薬合流部Cで合流された第2混合液が通過することにより溶解が進む酵素を固化実装した第4の流路(酵素保持部)Dと、酵素保持部Dで処理される第2混合液への酵素の混合を助長する第5の流路(酵素混合部)Eと、酵素混合部Eに接続され、流路内に固化実装されたプライマーの溶解、加熱によるDNA増幅、DNA増幅の検出を同一位置で行う複数の第6の流路(反応部)Fと、反応部Fの流路に接続され酵素混合部Eで処理された第2混合液を反応部Fの複数の反応検出セル27それぞれに定量分注するための第7の流路(定量分注流路)Gとを備える。
【0034】
第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−C(ポート部PT)は、流路基板21を上下面に貫通した穴により構成され、蓋材23を貼り付けることにより、流路と連結した凹部が形成される。各ポート部PTは、流路基板21の他の部分より若干厚みが大きくなっており、この部分に検査装置11の送液用のポートパッド(図示せず)が接続される。各ポートパッドは、配管を経由してバルブSV1,SV2,SV3,SV4(バルブSV)に接続される。このバルブSVには送液駆動のための上記したポンプPMPが接続されている。これらバルブSVとポンプPMPの動作を制御部19によって制御することにより、ポート部PTの空気を減圧、加圧、大気開放、密閉状態にすることができ、流路内の液滴を自在に搬送することができる。
【0035】
また、マイクロ流体チップ100は、所望の搬送が完了した時点で、ポート部PTからポートパッドを脱離し、図5に示すラベルRa,Rb,Rc,Rdを貼り付けることにより、チップ100を密閉状態にすることができるようになっている。チップ100を密閉しない状態で増幅反応を行った場合、増幅されたDNAがチップ外に流出して環境を汚染し、キャリーオーバーの危険性があり、これを防止するために増幅反応前にチップ100を密閉状態にする。チップ100を密閉する手段としては、上記のラベルRa,Rb,Rc,Rdを貼り付ける方法以外に、密閉性のある不図示のキャップによりポート部PTに栓をする方法や、UV硬化樹脂をポート部PTに流し込んでからUV光を照射して固化させる等、公知の密閉方法を用いることができる。
【0036】
第1ポートPT−Aは、検体ポートとして使用され、血液1μLと前処理試薬3μLとが投入される。前処理試薬は、血液中の白血球から核酸成分を単離するために用いられる。界面活性剤や強アルカリを用いて化学的に溶解処理が行われる。例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。また、血液の凝固を防ぐために、へパリンやEDTA等の凝固防止剤を添加しても良い。
【0037】
第2ポートPT−Dは、液体試薬ポートとして使用され、反応増幅試薬が56μL投入される。反応増幅試薬には、酵素、プライマー以外の増幅反応と検出に必要とする試薬が含まれている。例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の触媒、dNTPミックス等の基質、トリス塩酸バッファー、トライシンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー等の緩衝液を使用することができる。さらに、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)やベタイン(N,N,N-trimethylglycine)等の添加物、国際公開第99/54455号パンフレットに記載の酸性物質、陽イオン錯体等を使用してもよい。
【0038】
検出試薬にはサイバーグリーンを用いることができる。サイバーグリーンは、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることにより、強い蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無を検出する。
【0039】
第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cは、送液ポートとして使用され、ポンプPMPやバルブSVによって、減圧、加圧や大気開放状態、閉状態に切り替えられるにより流路内の液滴を駆動する。
【0040】
図6に示すように、検体混合部Aは、第1ポートPT−Aに投入した血液と前処理試薬の全量より大きな亀の甲状セルが複数連結した流路になっており、この流路を通過させることにより、第1ポートPT−Aに投入した血液と前処理試薬を均一に混合する。すなわち、検体混合部Aの流路は、液体の流動方向に直交する方向の断面積が他の流路における断面積に比して大きい広幅流路部41と、該広幅流路部41より断面積が小さい狭幅流路部43とが交互に形成されている。したがって、第1ポートPT−Aに投入された血液が、検体混合部Aに到達すると、液体が流動する方向に沿って広幅流路部4と狭幅流路部43とが交互に形成された流路を通過することで、オリフィス作用による撹拌が複数回行われ、血液と前処理試薬とが均一に混合される。
【0041】
被加熱部Bは、図1に示す検体加熱部13により98℃に加熱される。すなわち、マイクロ流体チップ100は、液処理の制御動作条件が、液体を液処理部で加熱処理するための加熱設定温度を含む条件となる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法による核酸増幅反応等において、液流路内の送液制御により、鋳型DNA、プライマー、基質、耐熱性ポリメラーゼ酵素等の混合された反応液が温度調節され、所定の3種類の温度に順次変化されることを繰り返すことで、目的とするDNAが増幅可能となる。本実施の形態では、この部分を血液と前処理試薬が通過することにより、前処理試薬により白血球から抽出されたDNA2本鎖が1本鎖になる。被加熱部Bは、加熱を均一に行うために、流路基板21には掘り込み29が設けられ、この部分の厚みが1.2mm程度に薄くなっている。
【0042】
試薬合流部Cは、加熱処理された血液と前処理試薬に反応増幅試薬を合流させる。第2ポートPT−Dにおける流路の毛細管力の大小関係は、ポートD出口流路45>主流路47>ポートD流路(第2ポートPT−D) という関係になっており、ポートD出口流路45と主流路47の接続部はラプラス圧バルブが構成されている。第2ポートPT−Dに投入した反応増幅試薬は主流路47に流出することなく、ポートD出口流路45と主流路47の接続面で留まる。また、後述する操作により血液と前処理試薬の混合液がポートD出口流路45に到着すると、ラプラス圧バルブが破壊され、上記の2液体が合流する。
【0043】
酵素混合部Eは、図4に示すように、液溜め室である第1混合部49と第2混合部51とを有する。酵素保持部Dは、第1混合部49と第2混合部51との間に設けられ、第1保持部53と第2保持部55とからなる。第1保持部53は、第1混合部49と第2混合部51の間に設置された、試薬保持用のセルであり、ポリミラーゼとデキストリンの水溶解液を点着後、凍結乾燥により乾燥、固化した試薬57が保持される。
【0044】
この保持部の上流と下流の流路は、その保持部より細くなっており、乾燥固化した試薬57の流路への密着力が無い場合でも、チップ100の保存、運搬等の振動により固化試薬57が剥がれ落ちて前後の流路へ流出してしまうことを防いでいる。
【0045】
ポリメラーゼは、鎖置換(strand displacement)活性(鎖置換能)を有するものであればよく、常温性、中温性、もしくは耐熱性のいずれのものも好適に使用できる。また、このポリメラーゼは、天然体もしくは人工的に変異を加えた変異体のいずれであってもよい。このようなポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼが挙げられる。さらに、このDNAポリメラーゼは、実質的に5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないものであることが好ましい。このようなDNAポリメラーゼとしては、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus、以下「B.st」という)、バチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax、以下「B.ca」という)等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体、大腸菌(E.coli)由来DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント等が挙げられる。
【0046】
デキストリンは酵素の安定化剤として用いられる。これにより、酵素の長期保存が可能になると共に、増幅反応においても、反応液中の酵素が安定化されるため、核酸の増幅効率を高めることが可能となる。その他の酵素安定化剤として、グリセロール、ウシ血清アルブミン、糖類などを用いることができる。
【0047】
第2保持部55は第1保持部53の下流に設置され、第1保持部53と同様の構造になっている。第2保持部55には、MutSとデキストリンの水溶液を点着後、凍結乾燥により乾燥、固化させた試薬59が保持される。MutSは、「ミスマッチ結合タンパク質」(「ミスマッチ認識タンパク質」とも称される)と呼ばれるタンパク質群の1つである。これは、DNAの2本鎖において部分的に対合できない(ミスマッチ)塩基対が生じたときに、これを修復する機能を有するタンパク質群であり、MutSタンパク質(特表平9−504699号公報)以外に、MutMタンパク質(特開2000−300265号公報)などの様々なミスマッチ結合タンパクが知られている。
【0048】
酵素混合部Eは、血液、前処理試薬、反応増幅試薬の合流液を第1混合部49、第2混合部51の間を往復させることにより、第1の酵素である試薬57、第2の酵素である試薬59を溶解し、前記液体を均一に混合する。往復時に液滴が気泡を巻き込まないように安定に搬送するために、酵素混合部Eは混合液に対して撥水的であることが望ましく、本実施の形態では流路基板21の材料にCOP(水の接触角約110°)を選択した。
【0049】
反応部Fには、ターゲットDNAのプライマーとゼラチンの水溶解液が点着後冷却固化、固定されている。プライマーは、ターゲットDNAの特定部分に相補的な塩基配列を有する20塩基長程度のオリゴヌクレオチドであり、ポリメラーゼによるDNAの合成の起点となる。本実施の形態では13個の反応検出セル27a〜27mが構成されており、検査対象の遺伝子に対して、wildとmutantの配列に特異的に増幅反応を行うために、wildを増幅させるプライマー61及び、mutantを増幅させるためのプライマー63を一対として、それぞれ異なる反応・検出セルに固定している。
【0050】
すなわち、12個の反応検出セル27a〜27lで6ケ所D1〜D6の遺伝子を検査対象としている。残りの1ケ所PDの反応検出セル27mには、多型の存在しない遺伝子配列を増幅させるためのプライマー65が固定されており、このセルはポジコンとして用いられる。第1混合部49、第2混合部51で混合された検体は、各反応検出セル27a〜27mに定量分注される。
【0051】
図7はプライマーが混合拡散された図4のP2−P2断面視を(a)、その要部拡大図を(b)に表した反応検出セルの説明図である。
この反応検出セル27a〜27mを60℃に加熱することにより、固化したゼラチンが溶解し、各反応検出セル27a〜27m内に分散し、等温増幅反応が行われる。プライマーの水溶液のみを反応検出セル27に点着し、乾燥固定化することもできるが、この場合、セル内に液体が流入した際に、プライマーが流れ方向に流されてしまい、セル内での反応、検出が行えない。このため、常温の水溶液では溶解しにくいゼラチンを0.5%含有させて点着、固化した。
【0052】
プライマーとゼラチンの水溶液は流路基板21側のセルに点着固定しており、マイクロチップ使用状態では図7に示すように、流路の上面に配置されている。液体が流入後、蓋材23側すなわち下面から加熱されることにより、液体の温度上昇に伴って溶解したプライマー61を含むゼラチンgeは、その比重が大きいため重力により流路内下側に流動する。また、液体は下面より加熱されることにより、セル内で対流67を起こす。このゼラチンgeの重力による流路下側への流動と、液体の加熱による対流67の相乗効果により、プライマー61及びゼラチンgeは反応検出セル27内に短時間で均一に混合拡散される。
【0053】
図8は反応検出セルの拡大平面図である。
各反応検出セル27a〜27mの前後には反応検出セル入り口流路69と反応検出セル出口流路71が配置され、この入り口出口流路69,71は細い流路となっている。分注後の液体の端面は、入り口流路69と主流路73の接続面、及び出口流路71と排気流路75の接続面に留まっている。反応部Fには加熱部77が形成され、加熱部77は、加熱を均一に行うために、上記の掘り込み31によって、流路基板21の厚みが1.2mm程度に薄くなっている。加熱部77は、反応検出セル27全体と、入り口出口流路69,71の一部分までを加熱する配置になっており、加熱部77以外は、他の温度調整手段によって常温に温度調節されている。すなわち、反応検出セル27内の液体の両端面は、加熱されることなく、常温に保持される。このことにより、加熱により水分が蒸発することを防ぐことができる。この加熱部77及びその周りの温度調節手段が、図1の温調部15を構成している。
【0054】
入り口出口流路69,71、主流路73、排気流路75は、定量分注流路Gを構成している。定量分注流路Gは、酵素混合部Eで処理された第2混合液を反応部Fの複数の反応検出セル27それぞれに定量分注する。
【0055】
反応検出セル27に定量分注された液体は、生態細胞を有する検体液、前処理試薬、反応増幅試薬を含む。反応検出セル27には核酸の断片であるプライマー61、63、…が実装されており、この反応検出セル27に液体を定量分注し、加熱しながら励起光を照射する事により、液処理部内で発生する蛍光を検出する。反応検出セル27では、被検出物質の拡散増幅反応が行われる。この際、検知感度の高い標識物質である発光性物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質、例えば標識化抗体や標識化抗原又は標識化核酸等が用いられる。サイバーグリーンは、反応によって増幅された2本鎖DNAにインターカレートすることにより、強い蛍光を発する。この蛍光強度を測定することにより、ターゲットとする遺伝子配列の存在の有無が検出可能となる。
【0056】
図9はターゲット配列がある場合を(a)、ターゲット配列が無い場合を(b)に表した蛍光測定結果のグラフである。
反応検出セル27a〜27mは、光学系により、約490nmの波長で励起し、インターカレートしたサイバーグリーンの約520nmの蛍光を測定することにより、ターゲットDNAの増幅が確認される。すなわち、図9に示すように、ターゲットとする核酸配列が存在する場合には、蛍光強度Iの増加が確認され、存在しない場合には蛍光強度Iの増加が確認されない。
【0057】
反応部Fでは、反応検出セル27a〜27mへの分注時に液体がスムーズに進入し、出口部でのラプラス圧バルブによる停止が安定に行えるためには、反応検出セル27とその前後の細い入り口出口流路69,71は適度に親水的であることが望ましい。本実施の形態では、少なくとも入り口出口流路69,71が、プラズマ照射により親水化されている(水の接触角約70°)。
【0058】
流路基板21を部分的に親水化、又は撥水化する方法としては、プラズマ照射以外に公知の方法(親水化/撥水化処理液を塗布する方法、UV照射、蒸着やスパッタにより親水化/撥水化材料の薄膜を形成する方法、2色成形やインサート成形により、濡れ性の異なる樹脂を用いて成形する方法等)を用いることができる。本実施の形態では、各流路(少なくとも入り口出口流路69,71)の流路内壁面が、少なくとも2段階以上の濡れ性を有している。これにより、各反応検出セル27a〜27mへの分注時に液体がスムーズに進入し、出口部でのラプラス圧バルブによる停止が安定に行えるようになっている。
【0059】
ここで、反応検出部内における発泡について説明する。
図10は反応検出部の発泡状況を(a)〜(c)に表した平面図、図11は反応検出部の発泡防止策を表した要部断面図である。
反応検出セル27a〜27mを加熱する際、反応検出セル27内に気泡が発生すると、蛍光検出の精度が低下するという問題がある。このため、流路では気泡発生を防止する必要がある。気泡の発生メカニズムは、図10に示すように、反応検出セル27内に混合液が流入する際に、反応検出セル27に、流路断面R(流路隅部の面取り半径)、接着剤塗布ムラ、ウエルドライン等の何らかの原因により微小空間が形成されていると、この微小空間内に混合液が流入することができず、微小な濡れ残り、すなわち、微小な空気だまりができることによる。この空気だまりが加熱により膨張、増大することによって気泡が発生する。
【0060】
微小空間の代表的な例としては、図11のa部に示す流路の断面Rと蓋材23の接合部で構成される微小空間81が挙げられる。これを防止する手段としては、図11のb部に示すように、流路83の断面Rを極力小さくする(100μm以下が望ましく、10μm以下がさらに望ましい)ことが有効である。
【0061】
また、別の手段としては、図11のc部に示すように、接着剤79の塗布条件や貼り付け条件を最適化することにより、流路83の断面Rと蓋材23により構成される微小空間81を接着剤79により充填してしまうという方法もある。
【0062】
微小空間81の他の例として、図11のd部に示すように、蓋材23の接着剤79や、接着剤79の塗布ムラがある。接着剤面の塗布ムラにより、微小空間81が形成されていると、流路断面のR同様に微小空間81が形成され、発泡の原因となる。他の例としては、図11のe部に示すように、射出成形によって製作された流路基板21のウエルドライン85があり、このウエルドライン85が同様の微小空間81を形成していると発泡の原因となる。このため、特に反応部Fの流路内壁面は、流路内を液体が流れる際に該液体により充填されない微小な隙間空間の形成を防止する連続した円滑面からなることが好ましい。これにより、加熱の際に流路内に気泡が発生しなくなり、蛍光検出精度の低下が防止される。このように、発泡を防止するために、上記した解決手段から適宜なものを選択することにより、液体が流入する時、液体の流入可能な微小空間81が形成されていないようにすることが必要となる。
【0063】
本実施の形態では、上記のように、6組の一塩基多型を判定するための12個の反応検出セル27a〜27lと、ポジコン用の1個の反応検出セル27mにより構成されている。ポジコン用反応検出セル27mには、多型が存在しない遺伝子配列部をターゲットとするプライマー65が実装されており、どんな検体を検査しても、蛍光強度の増大が確認される。このポジコン用反応検出セル27mの蛍光を確認することにより、一連の送液操作が正常に行われ、且つ正常な反応が行われたことを確認することができ、検査結果の信頼性を保障することが可能となる。
【0064】
また、ネガコンの保障方法としては、血液の代わりに水を投入して一連の反応を行わせ、蛍光強度の増大が無いことを確認しても良いし、同一基板上に2組の回路を形成し、検査とネガコンの保障を同時に行っても良い。
【0065】
有限な液体をマイクロ流体チップ100で操作する場合、特に、能動的なバルブやポンプを内蔵していないシンプルな流路により構成されているマイクロ流体チップ100で、液体の複雑なハンドリングをチップ外部からの空圧駆動で行うには、液体の位置を正確に検出することが不可欠となる。液体の位置を検出しないで、例えば駆動空気の流量で制御しようとすると、ポンプからマイクロ流体チップ100のポート部PTまでの配管や、チップ内の流路の空気の体積(デッドボリューム)の温度変化による膨張や収縮、流路内の微小な傷や静電気による流量抵抗の変化、或いは流体を加熱した時に流体が蒸発することによる蒸気圧の影響などの外乱により、再現性良く液体をハンドリングすることは困難となる。このため、液体の位置を正確に検出することは非常に重要となる。
【0066】
マイクロ流体チップ100は、液流路の特定位置において液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定する。これにより、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、液流路内での検体中のDNAの抽出或いは増幅等の反応が可能となる。液体の制御動作条件は、液体に対する移動の方向、移動速度、移動のための駆動力のうち、少なくとも1つを含むものであれば、液流路内における送液の移動制御が可能となる。また、液体移動の方向、移動速度、駆動力の全てを制御可能とした構成によれば、これらの動作条件が自在に切り替えられることで、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等を行うのと同等の送液制御が可能となる。
【0067】
本実施の形態では、液体の位置を検出することにより、液体の駆動速度、駆動方向、駆動力の制御を、検査装置11の制御部19によって切り替えている。ここで駆動力とは、一定圧力による吸引や加圧以外に、ポート部PTの大気開放、閉状態、及び複数ポート部PTの連結状態を含むものとする。
【0068】
図12は液位置検出部の平面視を(a)、そのP1−P1断面視を(b)に表した説明図、図13は液位置検出部の入反射光を表した模式図、図14は反射率と入射角度との相関を表したグラフである。
マイクロ流体チップ100には液位置検出のためのセンシング部PH1〜5(図1,図4参照)が配置されている。本実施の形態では、このセンシング部PH1〜5に対向する位置に、液位置検出部16が配置される。図1には纏めて1つの液位置検出部16を示しているが、センシング部PH1〜5の合計5箇所それぞれに対向して配置される。この液位置検出部16の具体例として、図12に示す反射型光ファイバーセンサー87が使用されている。各ファイバーセンサー87の先端は、図12に示すように、チップ100の蓋材23側から流路83に向けて配置されている。
【0069】
反射型光ファイバーセンサー87は、流路83の特定位置に光を照射して流路83からの反射光を検出し、特定位置おける流路内の液体の有無を、反射光の空気と液体との屈折率変化に基づく光量変化から判定する。したがって、チップ100の外部から光を照射し、その反射光の屈折率変化によって判定が可能となるので、流路83にセンサー等が露出せず、検体液の汚染されることがない。
【0070】
具体的には、反射型光ファイバーセンサー87は、特定位置を照射する光を投光側光ファイバー89を通じて供給し、流路83からの反射光を受光側光ファイバー91に導入して検出する。この反射型光ファイバーセンサー87によれば、照射光と反射光を、投光側光ファイバー89と受光側光ファイバー91を統合した小面積なファイバー先端面で行うことができ、小面積の被検出領域に対する光照射及び当該照射領域からの反射光の受光が可能となり、微小な流路83の特定位置における液体の有無が検出可能となる。
【0071】
反射型光ファイバーセンサー87の受光側光ファイバー91は、チップ100より反射される反射光の強度を検出する。
流路83中の液滴のあり/なしは、主に蓋材23の流路側面からの反射率が流路中に空気がある場合と、水がある場合の反射率の違いにより検出することができる。
【0072】
一般に、図13に示すような入射光に対する反射率は次式で表される。
【0073】
【数1】
ここで、Rp:p偏光、Rs:s偏光であり、n=n2/n1とおいた。
【0074】
【数2】
【0075】
とおき、蓋材23の屈折率をn1=1.49、流路83中の流体の屈折率を
液滴なしの場合・・・n2(空気)=1.00
液滴ありの場合・・・n2(水)=1.33
とおいて計算すると、流路83中の流体が空気の場合と水の場合とで図14のような反射率の違いを求めることができる。
【0076】
使用している投光側光ファイバー89の投光の広がり角が60°の場合、図14の0°から30°の範囲で考えればよく、流路83中の流体が空気の場合は反射率が約4%、水の場合は0.5%以下になる。この違いにより、液滴の有り無しで反射型光ファイバーセンサー87の受光量が変化し、液滴の到着や通過を検出することができる。
【0077】
また、図14から読み取れるように、入射角度が大きくなるにつれて、空気と水の反射率の差は大きくなることより、反射型光ファイバーセンサー87は、図15のように投光側と受光側のファイバー89,91を分離タイプとして、チップ100に対して角度を持たせた配置とすることができる。ここで、図15は投光側光ファイバーと受光側光ファイバーとが傾斜配置された液位置検出部の側面図である。同図の構成では、流路83の特定位置への光照射方向と、特定位置からの反射光の検出方向とが、特定位置の光照射面の法線93に対してそれぞれ傾斜する方向に設定されている。このような構成によれば、空気の存在時に反射光が受光側光ファイバー91から外れ、液体存在時に反射光が受光側光ファイバー91へ入射する傾斜角度とされることで、屈折率変化に基づいた液体の検出が簡素な構造で、さらに安定して検出できるようになる。投光側光ファイバーと受光側光ファイバーのファイバー径、出射光・入射光角度、ファイバーの配置、使用本数等は、検出する流路の形状に応じて実験的あるいは光学シミュレーションにより最適化する事ができる。
【0078】
このように、反射型光ファイバーセンサー87による検出は、空気と流体の屈折率の差を検出するものであり、流体の光透過率や、光の散乱を検出する原理による検出方法と比較して、流体中の溶解物質の種類やその濃度変化があっても、安定して検出することができるという利点を備えている。
【0079】
上記の構成を有する本実施の形態によるマイクロ流体チップ100によれば、
(1)検体液と理試薬とを投入する第1ポートPT−Aと、
(2)反応増幅試薬を投入する第2ポートPT−Dと、
(3)流路内に空気圧を供給する第3ポートPT−Bと、
(4)第1ポートPT−Aから投入された検体液と前処理試薬とを混合して第1混合液を生成する検体混合部Aと、
(5)第1混合液を加熱して生体細胞よりDNAを抽出し1本鎖に分解する被加熱部Bと、
(6)被加熱部Bで処理された第1混合液に反応増幅試薬を合流させる試薬合流部Cと、
(7)試薬合流部Cで合流された第2の混合液が通過することにより溶解が進む酵素を固化実装した酵素保持部Dと、
(8)酵素保持部Dで処理される第2の混合液への酵素の混合を助長する酵素混合部Eと、
(9)酵素混合部Eに接続され、流路内に固化実装されたプライマーの溶解、加熱によるDNA増幅、このDNA増幅の検出を同一位置で行う複数の反応検出セル27からなる反応部Fと、
(10)複数の反応検出セル27に接続され酵素混合部Eで処理された第2混合液を複数の反応検出セル27のそれぞれに定量分注するための定量分注流路Gと、
を備えたので、立体的に複雑な構造を必要とせず、簡単な構造で複雑な送液制御が行えるとともに、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作が不要になり、熟練を要さない簡単な操作で、正確かつ信頼性の高い分析結果を低コスト、短時間で得ることができる。
【0080】
次に、上記のマイクロ流体チップ100を使用した送液フローについて説明する。
図16はマイクロ流体チップの駆動制御に伴う各要素の作動状態を時間軸に沿って表したタイムチャート、図17は液セットから最初の加熱までの動作説明図、図18は酵素混合までの動作説明図、図19は反応部注入までの動作説明図、図20は分注から検査完了までの動作説明図である。
以下の説明においては、図16の制御動作V1〜V13と図17〜図20の各ステップS1〜S20における状態を対応させて説明する。
先ず、チップ100を準備し、検査装置11のREADYスイッチを押す(V1、S1)。そして、第2ポートPT−Dに反応増幅試薬を投入する(S2)。第2ポートPT−Dにおける流路の毛細管力の大小関係は、ポートD出口流路45>主流路47>第2ポートPT−Dという関係になっており、ポートD出口流路45と主流路47の接続部はラプラス圧バルブが構成されている。このため、反応増幅試薬は主流路47に流出することなく、ポートD出口流路45と主流路47の接続面で留まる。
【0081】
次いで、第1ポートPT−Aに血液と前処理試薬を投入する(S3)。チップ100を検査装置11にセットし、検査装置11のSTARTスイッチを押す(V2)。すると、第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cにポートパッドが押し付けられる。この時、第1ポートPT−A、第2ポートPT−D、第3ポートPT−B、第4ポートPT−Cに対応するパッドは大気開放状態になっており、パッドが押し付けられる事によりチップに投入されている液体が移動する事がない。そして、パッド押し付けが完了すると、第3ポートPT−Bが減圧され(V3)、血液と前処理試薬Lが検体混合部Aを高速(100μL/min)に通過することにより均一に混合される(S4)。第2ポートPT−Dは、第3ポートPT−Bと同一の減圧で吸引されており、血液と前処理試薬の送液抵抗が大きくても、第2ポートPT−D内の前処理試薬が流路に流出することがない。
【0082】
液がセンシング位置PH1に到達し、液位置検出部のセンサーPH−1がONし(V4)、吸引速度が低速(30μl/min)に切り替えられる(S5)。
被加熱部Bを液が低速(30μl/min)で通過することにより(S6)、血液と前処理試薬の混合液Lは一定時間(例えば15秒間)、98℃に加熱され、白血球中のDNAが抽出され、1本鎖となる。
液がセンシング位置PH2に到達し、センサーPH−2がONすると(V5)、第2ポートPT−Dが大気開放となり、同時に第1ポートPT−Aが閉となり、吸引により、第2ポートPT−Dのみから増幅反応試薬が流出し(S7)、血液と前処理試薬の混合液Lと泡を含むことなく合流する(S8)。
【0083】
液がセンシング位置PH3に到達し、センサーPH−3がONすると(V6)、吸引速度が高速(100μl/min)に切り替えられ、一定流量(45μl)が吸引される(S9,S10)。
そして、第1ポートPT−Aが大気開放となり(V7)、さらに15μL吸引され、第2ポートPT−Dは空になり、第1混合部49で混合される(S11)。
さらに高速(500μl/min)で80μL吸引されることにより(V8)、混合液Lは第1保持部53、第2保持部55を通過し、酵素が溶解され、第2混合部51で混合される(S12)。
【0084】
さらに高速(500μl/min)で80μL加圧されることにより(V9)、混合液Lは第1混合部49に搬送され、未溶解の酵素が溶解され、第1混合部49で混合される(S13)。
さらに高速(500μl/min)で80μL吸引されることにより(V10)、第1保持部53、第2保持部55の酵素は完全に溶解され、また液体は第2混合部51で均一に混合される(S14)。
次に、第3ポートPT−Bより、0.2kPaで吸引することにより(V11)、第2混合部51の混合液Lは、反応部Fの流路に搬送される(S15)。
【0085】
液がセンシング位置PH5に到達し、センサーPH−5がONすると(V12)、第3ポートPT−Bは閉状態になり、第4ポートPT−Cが0.3kPaで吸引され、この状態が5秒間保持される。混合液Lは、反応検出セル27内に搬送され、セル下流の細い反応検出セル出口流路71で停止する(S16,S17,S18)。
【0086】
この時、各反応検出セル27は常温に保たれており、予めゼラチンにより固定化されているプライマーは溶解することなくセル内に保持されている。
次に、第4ポートPT−Cを閉状態とし(V13)、第3ポートPT−Bより100μl/minの速度で加圧することにより、反応検出セル27を連結している主流路73内の混合液は第2混合部51に押し戻され(S19)、各反応検出セル27には、2.5μLの混合液Lが秤量分注され、これらはお互いに液で連結していない状態となる(S20)。
【0087】
次に、検査装置11のパッドデバイスが離脱し、図示しないシールデバイスにより、-各ポート部PT−A,B,C,Dには、ラベルRa,Rb,Rc,Rd(図5参照)が貼り付けられ、チップ100は密閉状態となり、幅反応による増幅産物がチップ外に流出することにより、環境を汚染する心配がなくなる。
【0088】
次に反応部Fは、図示しない温調デバイスにより、60℃に急速に加熱される。加熱により、ゼラチンにより固定化されていたプライマーは、反応検出セル27内に均一に拡散し、等温増幅反応が始まる。
このとき、反応検出セル27両端の細い反応検出セル入り口流路69と反応検出セル出口流路71との液体端面は60℃に加熱されることなく、常温に保たれており、反応検出セル27内の液体が蒸発してしまうことがない。
【0089】
各反応検出セル27a〜27mを図1に示す蛍光検出部17で励起光を照射し一定時間間隔で蛍光測定することにより、各反応検出セル27a〜27mに予め実装していたプライマーに対応するターゲット遺伝子配列が存在しているかどうかを知ることができる。ターゲット遺伝子配列が存在している場合には、蛍光強度の増大が確認されるのに対して、ターゲット遺伝子配列が存在していない場合には、蛍光強度の増大がない。
【0090】
したがって、本実施の形態によるマイクロ流体チップ100の駆動制御方法によれば、検体液と前処理試薬とを投入する第1ポートPT−A、反応増幅試薬を投入する第2ポートPT−D、流路内に空気圧を供給する第3ポートPT−Bに加え、各種試薬との混合、混合液の定量分注のための流路を構成手段として備え、液流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、この検出のされたタイミングに応じて液体の制御動作条件を決定することにより、有限な液体が、特に、能動的なバルブやポンプを内臓していないシンプルな流路によって、チップ100の外部からの空圧駆動で複雑にハンドリング可能となる。つまり、立体的に複雑な構造を必要とせず、簡単な構造で送液制御が可能となる。これにより、検体と液体試薬を投入するだけで、自動的に所望の液滴操作、化学反応を行い、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、高い分析結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るマイクロ流体チップの駆動制御方法は、流路内の液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、液体端部の検出タイミングに応じ、液体の制御動作条件を決定するものであり、これにより、ピペッティングの操作、装置への出し入れ等の煩雑な操作を不要にして、液流路内での検体中のDNAの抽出或いは増幅等の反応を可能できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係るマイクロ流体チップを検査装置の概略構成と共に表したブロック図である。
【図2】図1に示したマイクロ流体チップの分解斜視図である。
【図3】マイクロ流体チップの上面視を(a)、下面視を(b)に表した平面図である。
【図4】図3(b)の拡大図である。
【図5】閉塞部材の貼着前のチップ下面を表した分解斜視図である。
【図6】ポート出口流路の近傍を表す要部拡大平面図である。
【図7】プライマーが混合拡散された図4のP2−P2断面視を(a)、その要部拡大図を(b)に表した反応検出セルの説明図である。
【図8】反応検出セルの拡大平面図である。
【図9】ターゲット配列がある場合を(a)、ターゲット配列が無い場合を(b)に表した蛍光測定結果のグラフである。
【図10】反応検出部の発泡状況を(a)〜(c)に表した平面図である。
【図11】反応検出部の発泡防止策を表した要部断面図である。
【図12】液位置検出部の平面視を(a)、そのP1−P1断面視を(b)に表した説明図である。
【図13】液位置検出部の入反射光を表した模式図である。
【図14】反射率と入射角度との相関を表したグラフである。
【図15】投光側光ファイバーと受光側光ファイバーとが傾斜配置された液位置検出部の側面図である。
【図16】マイクロ流体チップの駆動制御に伴う各要素の作動状態を時間軸に沿って表したタイムチャートである。
【図17】液セットから最初の加熱までの動作説明図である。
【図18】酵素混合までの動作説明図である。
【図19】反応部注入までの動作説明図である。
【図20】分注から検査完了までの動作説明図である。
【符号の説明】
【0093】
21 流路基板
61,63,65 プライマー
83 流路
89 投光側光ファイバー
91 受光側光ファイバー
93 法線
100 マイクロ流体チップ
PT−A 第1ポート(接続ポート)
PT−B 第3ポート(接続ポート)
PT−C 第4ポート(接続ポート)
PT−D 第2ポート(接続ポート)
PH−1 センシング位置PH1のセンサー
PH−2 センシング位置PH2のセンサー
PH−3 センシング位置PH3のセンサー
PH−4 センシング位置PH4のセンサー
PH−5 センシング位置PH5のセンサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップに対して、前記液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、前記液処理部で液処理を行うマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の特定位置において前記液流路内の前記液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、該検出のされたタイミングに応じて前記液体の制御動作条件を決定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体の制御動作条件が、前記液体に対する移動の方向、移動速度、移動のための駆動力のうち、少なくとも1つを含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液処理の制御動作条件が、前記液体を前記液処理部で加熱処理するための加熱設定温度を含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の前記特定位置に光を照射して前記液流路からの反射光を検出し、前記特定位置おける液流路内の液体の有無を、前記反射光の空気と液体との屈折率変化に基づく光量変化から判定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項5】
請求項4記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置を照射する光を投光側光ファイバーを通じて供給し、前記液流路からの反射光を受光側光ファイバーに導入して検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置への光照射方向と、前記特定位置からの反射光の検出方向とが、前記特定位置の光照射面の法線に対してそれぞれ傾斜する方向に設定されることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記物理的作用力が、前記液流路の始点と終点に設けた接続ポートからエア供給又はエア吸引することにより発生する空気圧作用力であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体が生態細胞を有する検体液、前処理試薬、反応増幅試薬を含み、
前記液処理部の一つには核酸の断片であるプライマーが実装されており、この液処理部に前記液体を定量分注し、加熱しながら励起光を照射する事により、前記液処理部内で発生する蛍光を検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【請求項1】
基板内に形成された液流路に沿って液処理部が配設されたマイクロ流体チップに対して、前記液流路内に供給された液体を物理的作用力の印加により移動させ、前記液処理部で液処理を行うマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の特定位置において前記液流路内の前記液体の先端部、後端部の少なくともいずれかを検出し、該検出のされたタイミングに応じて前記液体の制御動作条件を決定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体の制御動作条件が、前記液体に対する移動の方向、移動速度、移動のための駆動力のうち、少なくとも1つを含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液処理の制御動作条件が、前記液体を前記液処理部で加熱処理するための加熱設定温度を含む条件であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液流路の前記特定位置に光を照射して前記液流路からの反射光を検出し、前記特定位置おける液流路内の液体の有無を、前記反射光の空気と液体との屈折率変化に基づく光量変化から判定することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項5】
請求項4記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置を照射する光を投光側光ファイバーを通じて供給し、前記液流路からの反射光を受光側光ファイバーに導入して検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載のマイクロ流体チップの駆動方法であって、
前記液流路の前記特定位置への光照射方向と、前記特定位置からの反射光の検出方向とが、前記特定位置の光照射面の法線に対してそれぞれ傾斜する方向に設定されることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記物理的作用力が、前記液流路の始点と終点に設けた接続ポートからエア供給又はエア吸引することにより発生する空気圧作用力であることを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のマイクロ流体チップの駆動制御方法であって、
前記液体が生態細胞を有する検体液、前処理試薬、反応増幅試薬を含み、
前記液処理部の一つには核酸の断片であるプライマーが実装されており、この液処理部に前記液体を定量分注し、加熱しながら励起光を照射する事により、前記液処理部内で発生する蛍光を検出することを特徴とするマイクロ流体チップの駆動制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−128906(P2008−128906A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316128(P2006−316128)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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