説明

マイコトキシンの生成抑制方法

【課題】人体及び動物の健康に深刻な影響を与える、菌類が生産するマイコトキシンの生成を顕著に抑制する方法や、マイコトキシンの生成抑制剤を提供する。
【解決手段】麦類等の食用植物に、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系殺菌化合物を有効成分とする殺菌剤を散布し、収穫後の作物中のデオキシニバレノール(DON)等のマイコトキシン含量を、菌類の防除効果とは相関せずに減少せしめることができる。ベンズイミダゾール系殺菌化合物に、テブコナゾール等のステロール生合成阻害剤(SBI剤)を併用し、更にその効果を増大することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌類の生成するマイコトキシンの生成抑制方法やマイコトキシンの生成抑制剤等に関し、より詳しくは、食用植物にベンズイミダゾール系殺菌化合物を散布し、収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめる菌類の生成するマイコトキシンの生成抑制方法や、ベンズイミダゾール系殺菌化合物を有効成分とするマイコトキシンの生成抑制剤に関する。
本願は、2005年3月31日に出願された日本国特許出願第2005−102646号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
菌類が生産するマイコトキシンは人体及び動物の健康に深刻な影響を与えることが知られており、例えば、下痢や嘔吐等の中毒症状を引き起こすもの、発ガン性のもの、早産や流産を引き起こす可能性があるもの等あり、食用植物に感染した菌類のマイコトキシンの生成を如何に抑制するかは長年の課題であった。特に近年、食用植物がその成長過程において菌類に感染すると、その収穫された作物がマイコトキシンに汚染され、収穫物を食用に供することが出来なくなるという問題があった。
【0003】
その予防のため、植物の生育条件をよくし、輪作を避け、品種の改良を行ったり、植物自体をマイコトキシンに抵抗性を有する形質転換植物(例えば、特許文献1、2参照)とすることや、また、菌類に感染しないように、様々な殺菌剤が食用植物に施用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−540787号公報
【特許文献2】特表2002−533057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、人体及び動物の健康に深刻な影響を与える、菌類が生産するマイコトキシンの生成を顕著に抑制する方法や、マイコトキシンの生成抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、多岐に亘る多数の殺菌剤を食用植物に散布し検討する過程で、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系殺菌化合物が、殺菌効果と相関せずに、収穫後の作物中におけるマイコトキシン生成を抑制することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(1)チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない食用植物に殺菌剤としてチオファネートメチル剤を散布し、菌類の防除効果とは相関せずに収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめることを特徴とするマイコトキシンの生成抑制方法や、(2)殺菌剤としてチオファネートメチル剤を食用植物の開花形成期以降収穫前に散布することを特徴とする前記(1)記載のマイコトキシン生成抑制方法や、(3)殺菌剤が、チオファネートメチル剤と、ステロール生合成阻害剤、ストロビルリン系剤及びグアニジン系殺菌剤のいずれか1種との混合剤であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のマイコトキシン生成抑制方法や、(4)食用作物が、麦類であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のマイコトキシン生成抑制方法に関する。
【0008】
また本発明は、(5)チオファネートメチルを有効成分とし、チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない作物に対する殺菌剤であって、菌類の防除効果とは相関せずに、収穫後の作物中のマイコトキシンの生成を抑制することを特徴とする収穫後の作物中のマイコトキシンの生成抑制剤や、(6)殺菌剤が、チオファネートメチル剤と、ステロール生合成阻害剤、ストロビルリン系剤及びグアニジン系殺菌剤のいずれか1種との混合剤であることを特徴とする前記(5)記載のマイコトキシンの生成抑制剤や、(7)作物が、麦類であることを特徴とする前記(5)又は(6)記載のマイコトキシンの生成抑制剤や、(8)チオファネートメチル剤の、チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない作物に対し、菌類の防除効果とは相関せずに、収穫後の当該作物中のマイコトキシン含量を減少せしめるための使用や、(9)チオファネートメチル剤が、チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない作物に対して、菌類の防除効果とは相関せずに、収穫後の当該作物中のマイコトキシンの生成抑制のために用いられる旨の表示がされた農薬に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、菌類が生産する有害物質であるマイコトキシンの生成自体を抑制し、たとえ菌類の防除が不完全な場合であっても、極めて安全な作物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】チオファネートメチル(商品名CercobinM)散布における小麦赤カビ病の防除効果及びマイコトキシンであるデオキシニバレノール(DON)の含有量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のマイコトキシンの生成抑制方法としては、食用植物、特に麦類にベンズイミダゾール系殺菌化合物を散布し、収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめるマイコトキシンの生成抑制方法や、食用植物にベンズイミダゾール系殺菌化合物と、ステロール生合成阻害剤、ストロビルリン系剤又はグアニジン系殺菌剤との混合剤とを散布し、収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめるマイコトキシンの生成抑制方法であれば特に制限されるものでなく、また、本発明のベンズイミダゾール系殺菌化合物を食用植物の開花形成期以降収穫前に散布するマイコトキシン生成抑制方法である。さらに、本発明は、ベンズイミダゾール系殺菌剤を食用作物に散布することによって、菌類の防除効果とは相関せずに収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめるものであり、マイコトキシン生成抑制剤としては、ベンズイミダゾール系殺菌化合物を有効成分とするものや、ベンズイミダゾール系殺菌化合物と、ステロール生合成阻害剤、ストロビルリン系剤又はグアニジン系殺菌剤との混合剤とを有効成分とするものであれば特に制限されるものでなく、ここで、マイコトキシンとは、菌類が生産する有害物質のことで、具体的にはトリコテセン、エルゴアルカロイド、フモニシン、ゼラノニン、オクラトキシン等を例示することができ、その中でも、穀類への混入が特に問題となっているトリコテセンの1種であるデオキシヴァレノール(DON)を好適に例示することができる。
【0012】
これらマイコトキシンは、通常、食用植物に感染するカビ類、具体的には、フサリウム(Fusarium)属菌、ペニシリウム(Penicillium)属菌、アスペルギルス(Aspergillus)属菌等によって生産され、中でも、麦類赤かび病(フサリウム属菌)による麦類へのマイコトキシンの混入が問題となっている。また、収穫後の作物中のマイコトキシン含量は、ELISA法、HPLC法、ガスクロマトグラフィー検出法などにより、定量することができる。
【0013】
上記ベンズイミダゾール系殺菌剤としては、ベノミル、カーベンダジン、フベンダゾール、サイペンダゾール、チオファネートメチル、チオファネート等を具体的に例示することができ、中でも、チオファネートメチル剤(トップジンM(商標名)、CercobinM(商標名))を好適に例示することができる。これらベンズイミダゾール系殺菌剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。使用されるベンズイミダゾール系殺菌剤は、実際に使用する際に他の成分を加えず純粋な形で使用できるし、また農薬として使用する目的で一般農薬の取り得る形態、即ち水和剤、粒剤、粉剤、水和剤、懸濁剤、顆粒水和剤等の形態で使用することもできる。
【0014】
上記ステロール生合成阻害剤(SBI剤)としては、テブコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、ビテルタノール、ミクロブタニル、ヘキサコナゾール、プロピコナゾール、トリフルミゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、フェナリモール、ピリフェノックス、トリホリン、フルシラゾール、エタコナゾール、ジクロブトラゾール、フルオトリマゾール、フルトリアフェン、ペンコナゾール、ジニコナゾール、イマザリル、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、ブチオベート、エポキシコナゾール、メトコナゾール、プロチオコナゾール等を具体的に挙げることができるが、中でも、テブコナゾールを好適に例示することができる。これら1種又は2種以上のSBI剤を、ベンズイミダゾール系殺菌剤と併用することにより、ベンズイミダゾール系殺菌剤の有するマイコトキシン生成抑制作用を増幅することができる。
【0015】
また、ベンズイミダゾール系殺菌剤は単剤でも使用できるが、上記のようにSBI剤と併用することができるほか、他の農薬、例えば各種の殺菌剤、殺虫剤・殺ダニ剤・殺線虫剤、植物生長調節剤の1種又は2種以上と併用することもできる。これら農薬とベンズイミダゾール系殺菌剤、又は、これら農薬とベンズイミダゾール系殺菌剤とSBI剤とを併用することにより、マイコトキシンの生成の抑制と共に、菌類やダニ類等の防除も行うことができる。また、ベンズイミダゾール系殺菌化合物とストロビルリン系化合物とを併用したり、ベンズイミダゾール系殺菌化合物とグアニジン系殺菌剤とを併用することにより、有利にマイコトキシンの生成を抑制することができる。
【0016】
上記殺菌剤としては、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅等の銅剤;チウラム、ジネブ、マンネブ、マンコゼブ、ジラム、プロピネブ、ポリカーバメート等の硫黄剤;キャプタン、フォルペット、ジクロルフルアニド等のポリハロアルキルチオ剤;クロロタロニル、フサライド等の有機塩素剤;IBP、EDDP、トリクロホスメチル、ピラゾホス、ホセチル等の有機リン剤;イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン、フルオルイミド等のジカルボキシイミド剤;オキシカルボキシン、メプロニル、フルトラニル、テクロフタラム、トリクラミド、ペンシクロン等のカルボキシアミド剤;メタラキシル、オキサジキシル、フララキシル等のアシルアラニン剤;クレソキシムメチル(ストロビー)、アゾキシストロビン、メトミノストロビン、トリフロキシストロビルリン、ピラクロストロビルリン等のメトキシアクリレート剤;アンドプリン、メパニピリム、ピリメタニル、ジプロジニル等のアニリノピリミジン剤;ポリオキシン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、バリダマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン等の抗生物質剤;などを具体的に例示することができる。
【0017】
その他、プロパモカルブ塩酸塩、キントゼン、ヒドロキシイソオキサゾール、メタスルホカルブ、アニラジン、イソプロチオラン、プロベナゾール、キノメチオナート、ジチアノン、ジノカブ、ジクロメジン、フェルムゾン、フルアジナム、ピロキロン、トリシクラゾール、オキソリニック酸、ジチアノン、イミノクタジン酢酸塩、イミノクタジンアルベシル酸塩、シモキサニル、ピロールニトリン、メタスルホカルブ、ジエトフェンカルブ、ビナパクリル、レシチン、重曹、フェナミノスルフ、ドジン、ジメトモルフ、フェナジンオキシド、カルプロパミド、フルスルファミド、フルジオキソニル、ファモキサドン等の殺菌剤も併用することができる。
【0018】
上記殺虫剤としては、フェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、ESP、バミドチオン、フェントエート、ジメトエート、ホルモチオン、マラソン、トリクロルホン、チオメトン、ホスメット、ジクロルボス、アセフェート、EPBP、メチルパラチオン、オキシジメトンメチル、エチオン、サリチオン、シアノホス、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、ホサロン、メチダチオン、スルプロホス、クロルフェンビンホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、プロパホス、イソフェンホス、エチルチオメトン、プロフェノホス、ピラクロホス、モノクロトホス、アジンホスメチル、アルディカルブ、メソミル、チオジカルブ、カルボフラン、カルボスルファン、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、プロポキスル、BPMC、MTMC、MIPC、カルバリル、ピリミカーブ、エチオフェンカルブ、フェノキシカルブ等の有機燐及びカーバメート系殺虫剤;ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメスリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、ピレトリン、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、ジメスリン、プロパスリン、フェノトリン、プロトリン、フルバリネート、シフルトリン、シハロトリン、フルシトリネート、エトフェンプロクス、シクロプロトリン、トロラメトリン、シラフルオフェン、ブロフェンプロクス、アクリナスリン等のピレスロイド系殺虫剤;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、トリフルムロン、テトラベンズロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、メトプレン、ベンゾエピン、ジアフェンチウロン、アセタミプリド、イミダクロプリド、ニテンピラム、フィプロニル、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、硫酸ニコチン、ロテノン、メタアルデヒド、機械油、BTや昆虫病原ウイルスなどの微生物農薬等のベンゾイルウレア系その他の殺虫剤;などを具体的に例示することができる。
【0019】
上記殺ダニ剤としては、クロルベンジレート、フェニソブロモレート、ジコホル、アミトラズ、BPPS、ベンゾメート、ヘキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ポリナクチン、キノメチオネート、CPCBS、テトラジホン、アベルメクチン、ミルベメクチン、クロフェンテジン、シヘキサチン、ピリダベン、フェンピロキシメート、テブフェンピラド、ピリミジフェン、フェノチオカルブ、ジエノクロル等を、殺線虫剤としては、フェナミホス、ホスチアゼート等を、植物生長調節剤としては、ジベレリン類(例えばジベレリンA3 、ジベレリンA4 、ジベレリンA7 )、IAA、NAA等を、それぞれ具体的に例示することができる。
【0020】
本発明の方法において、他の殺菌剤等と混合して使用する場合、ベンズイミダゾール系殺菌剤と他の殺菌剤等との混合比は、広範にわたって変えることができるが、通常重量比で、1:0.01〜1000であり、好ましくは1:0.1〜100の範囲である。
【0021】
上記食用植物や作物としては、穀類、好ましくはイネ科作物、中でも麦類を好適に例示することができる。また、麦類としては、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、ライ小麦等を具体的に例示することができる。
【0022】
ベンズイミダゾール系殺菌剤等の食用作物への散布時期は、適用する食用植物の種類や対象病害の種類により異なるが、例えば麦類赤カビ病に適用する場合、防除時期(GS49〜52)のみでなく、GS53〜収穫時期、特に好ましくは、ほぼ開花形成期(GS60〜71)の時期に散布することにより効果的にマイコトキシンの生成を抑制することができる。ここで、GSは植物の生育段階を表し、農業現場においてはBBCH法の名称で採用され、00〜99の2桁の十進法(2桁コード two-digit code)で表したものである。このBBCH法は、全ての作物、雑草に適用できるものとして、ヨーロッパの公的及び民間の試験研究機関が協力して作成され、現在それをさらに改良したもの(The extended BBCH法 1992、2nd ed.1997)がヨーロッパ及びカナダを中心に普及しており(「植調」 Vol.36,No.2 p11-20参照)、上記GSは、「植調」の20頁の「改良BBCHスケール(一般)」に準拠した。
【0023】
本発明の方法において、ベンズイミダゾール系殺菌剤の施用量は、他の殺菌剤等との混合比、気象条件、製剤状態、施用方法、対象場所などにより異なるが、通常1ヘクタール当たり、有効成分量1〜10000g、好ましくは10〜1000gである。
【0024】
本発明には、ベンズイミダゾール系殺菌化合物の、収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめるための使用や、ベンズイミダゾール系殺菌化合物を有効成分として含有し、収穫後の作物中のマイコトキシンの生成抑制のために用いられる旨の表示をした農薬が含まれる。収穫後の作物中のマイコトキシンの生成抑制のために用いられる旨の表示は、通常包装容器や包装袋に表示されるが、製品説明書に表示されていてもよい。
【0025】
次に実施例を挙げて本発明が有効であることを説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
小麦赤カビ病の接種源としてFusarium graminearum、Fusarium culmorum、Fusarium avenaceumを含む罹病小麦(品種 Bandit)粒を圃場に播種し、小麦がほぼ開花形成期(GS65からGS71)に生育したときに希釈したチオファネートメチル(商品名CercobinM)懸濁剤を、250,375,500g ai/haの各量を1回散布した。また、チオファネートメチル(商品名CercobinM)500g ai/haとテブコナゾール(商品名Folicur)120ai/haを併用散布した(なお、ai/ha中のaiは、「active ingredient」の略で、「活性成分自体で」又は「原体換算で」という意味を表す)。収穫時に小麦粒をサンプリングし、1000粒あたりの感染粒の数(薬効)を調査した。デオキシニバレノール(DON)の定量分析はドイツR−Biopharm社製のELISAテストキットを用いた。その結果を表1及び図1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1及び図1から、チオファネートメチルの薬効(1000粒あたりの感染粒の数)は、未処理の場合と殆ど差がなかったが、マイコトキシンの生成量(DON濃度)は、用量依存的に抑制されていた。すなわち、チオファネートメチルの赤かび病防除効果とDON低減効果の間に相関性は認められなかった。一方、チオファネートメチルとテブコナゾールを併用した場合、小麦赤カビ病の防除効果に加えて、マイコトキシンの生成量(DON濃度)の抑制効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、菌類が生産する有害物質であるマイコトキシンの生成自体を抑制することができ、たとえ菌類の防除が不完全な場合であっても、極めて安全な作物を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない食用植物に、殺菌剤としてチオファネートメチル剤を散布し、菌類の防除効果とは相関せずに収穫後の作物中のマイコトキシン含量を減少せしめることを特徴とするマイコトキシンの生成抑制方法。
【請求項2】
殺菌剤としてチオファネートメチル剤を食用植物の開花形成期以降収穫前に散布することを特徴とする請求項1記載のマイコトキシン生成抑制方法。
【請求項3】
殺菌剤が、チオファネートメチル剤と、ステロール生合成阻害剤、ストロビルリン系剤及びグアニジン系殺菌剤のいずれか1種との混合剤であることを特徴とする請求項1又は2記載のマイコトキシン生成抑制方法。
【請求項4】
食用作物が、麦類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のマイコトキシン生成抑制方法。
【請求項5】
チオファネートメチルを有効成分とし、チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない作物に対する殺菌剤であって、菌類の防除効果とは相関せずに、収穫後の作物中のマイコトキシンの生成を抑制することを特徴とする収穫後の作物中のマイコトキシンの生成抑制剤。
【請求項6】
殺菌剤が、チオファネートメチル剤と、ステロール生合成阻害剤、ストロビルリン系剤及びグアニジン系殺菌剤のいずれか1種との混合剤であることを特徴とする請求項5記載のマイコトキシンの生成抑制剤。
【請求項7】
作物が、麦類であることを特徴とする請求項5又は6記載のマイコトキシンの生成抑制剤。
【請求項8】
チオファネートメチル剤の、チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない作物に対し、菌類の防除効果とは相関せずに、収穫後の当該作物中のマイコトキシン含量を減少せしめるための使用。
【請求項9】
チオファネートメチル剤が、チオファネートメチルを散布した場合と未処理の場合とで赤カビ病防除効果に差がない作物に対して、菌類の防除効果とは相関せずに、収穫後の当該作物中のマイコトキシンの生成抑制のために用いられる旨の表示がされた農薬。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105756(P2011−105756A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21003(P2011−21003)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2007−512796(P2007−512796)の分割
【原出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】