説明

マイタゲートの扉体荷重伝達装置及び該扉体荷重伝達装置の施工方法

【課題】 精度のよい施工を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】 水路1の左右のコンクリート躯体2に設けた凹部3に、扉体4の支柱5を回転可能に設置し、扉体開閉用の油圧シリンダ10を備えてマイタゲートを形成する。凹部3のコーナ部3aに、扉体4の支柱5の中心より偏心して支柱5の外周面との隙間が扉体開放側回転方向へ行くにしたがって広くなる凹面部12aを備えた支承金物12を取り付ける。各扉体4を全閉位置に配した状態で、支柱5の外周面と支承金物12の凹面部12aに設けたオイルレスメタル13との間に湾曲した楔形状の柱当金物15を差し込み、その配置で柱当金物15を支柱5の外周面に取り付ける。各扉体4を全閉位置にするときには、柱当金物15が支承金物12のオイルレスメタル13に密着することで、各扉体4に作用する荷重を、それぞれの支柱5から左右のコンクリート躯体2へ伝達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路(河川)の左右位置に設置した左右2枚の扉体を平面的に合掌させるようにして水路を締め切るようにしてあるマイタゲートの締切時に各扉体に作用する荷重を水路の左右両側の躯体へ伝達するためのマイタゲートの扉体荷重伝達装置及び該扉体荷重伝達装置の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水路(河川)の途中位置に設けられて閘門等として用いられるゲートの1つとして、マイタゲートが知られている。かかるマイタゲートは、水路の幅方向両端部に、左右一対の平板状の扉体を、該各扉体の外側端部に設けた鉛直方向の回転軸を中心に回転自在に設置してなる構成として、上記左右の扉体を、水路の幅方向両端部でそれぞれ水路と平行な姿勢となるよう配置することで上記水路を開放し、一方、上記左右の扉体を水路中央部側へ回転させて、該各扉体の先端部同士を水路の中央部で平面的に合掌する形に合わせることで、上記水路を締め切ることができるようにしてある。
【0003】
上記マイタゲートの開閉装置としては、各扉体を回転させる方式の違いにより、揺動シリンダレバー式、ラック式、揺動直結式、固定リンク式等の開閉装置が知られている。
【0004】
ところで、上記マイタゲートにおいては、左右の扉体を合掌させるようにして水路を締め切るようにしてある構造上、上記合掌させて配置した全閉位置の各扉体に水圧が作用するときには、該各扉体に互いが受ける水圧を支え合う荷重が作用するため、各扉体には曲げモーメントの他に扉体に沿う方向の軸力も作用するようになる。そのために、上記マイタゲートでは、コンクリート構造物である水路の幅方向両側の躯体における上記左右の扉体の外側となる位置に、スラスト受金物を設けて、上記全閉位置に配した各扉体に沿う方向に作用する軸力と、各扉体に作用する水圧の該各扉体に垂直な方向の分力が合成された荷重を、上記スラスト受金物を介して、上記左右のコンクリート製躯体へ伝達して支持させるようにしてある(たとえば、非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】「ダム・堰施設技術基準(案)(基準解説編・マニュアル編)」,社団法人ダム・堰施設技術協会,平成11年3月,p472−483
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、マイタゲートの左右の扉体を全閉位置に配置した状態としたときに該各扉体に作用する荷重を左右の躯体へ伝達することができるようにするための荷重伝達装置には、全閉位置に配した各扉体の外側端部と、水路の左右の躯体の双方に密着した状態で介装させることが望まれる一方、上記各扉体を、水路全開位置から全閉位置まで回転させる間は、摩擦により該各扉体の回転が阻害されることがないようにすることが求められる。
【0007】
そのために、本出願人は、マイタゲートの各扉体の外側端部に、扉体の回転中心からの距離が扉体を全閉位置から水路開放側へ回転させるときの回転方向(以下、扉体開放側回転方向という)へ行くにしたがって徐々に拡がるように扉体の回転中心より偏心した円弧面に沿って外向きに突出する凸面を備えた柱当金物を取り付けると共に、水路の左右の躯体における対応する位置に、上記柱当金物の凸面に対応した凹面を備えたスラスト受金物を設けてなる構成の扉体荷重伝達装置を考えている。
【0008】
かかる扉体荷重伝達装置によれば、各扉体を全開位置から全閉位置の直前まで回転させる際には、上記柱当金物の凸面とスラスト受金物の凹面が互いに接触しないため、該各扉体の回転が摩擦により阻害される虞はない。又、上記各扉体を全閉位置に配置すると、該各扉体に取り付けてある柱当金物の凸面が、躯体側に設けてあるスラスト受金物の凹面に密着するようになるため、この互いに密着した柱当金物とスラスト受金物とを介して、全閉位置の各扉体に作用する荷重を、水路の左右の躯体へ伝達させることができると考えられる。
【0009】
しかし、上記のような凸面を備えた柱当金物と凹面を備えたスラスト受金物とからマイタゲートの扉体荷重伝達装置を構築するためには、現地で実際に扉体の据え付けを行った状態で、精度を出すことが要求されるが、その精度調整は別の位置決め治具や戸当り側のライナプレートで行う必要が生じたり、更には、マイタゲートの各扉体据付け後に、上記柱当金物やスラスト受金物を現物合わせで加工する必要が生じてしまう。
【0010】
そのために、上記したような扉体荷重伝達装置を設ける場合、マイタゲートの扉体の据付現場での作業が多くなるため、非常に多くの労力が必要とされると共に、精度の確保が難しいというのが実状である。
【0011】
そこで、本発明は、マイタゲートの扉体設置現場で容易に構築することができると共に高い精度を得ることができるマイタゲートの扉体荷重伝達装置、及び、該扉体荷重伝達装置の施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、水路の左右両端部に水平方向に回転可能に設けた左右2枚の扉体を水路中央部で合掌させることで該水路を全閉することができるようにしてあるマイタゲートにおける上記左右の扉体の各外側端部に設けた円柱形状の支柱を、水路の左右のコンクリート躯体の近傍に回転可能に設置し、上記左右のコンクリート躯体の所要個所に、上記各扉体の支柱の外周面との間に所要の隙間を有するように偏心した円弧形状の凹面部を備えた支承金物を、上下方向所要間隔で多段に設置し、更に、上記各扉体の支柱の外周面における上記各支承金物と対応する高さ位置に、上記扉体の支柱の外周面に沿う内側湾曲面を備え且つ扉体を開放側へ回転させる方向に行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状の柱当金物を、各扉体を全閉位置に配するときに該柱当金物の外側湾曲面が上記支承金物の内側に接するようにそれぞれ取り付けてなる構成を有するマイタゲートの扉体荷重伝達装置とする。
【0013】
又、請求項2に対応して、水路の左右両端部に水平方向に回転可能に設けた左右2枚の扉体を水路中央部で合掌させることで該水路を全閉することができるようにしてあるマイタゲートの左右のコンクリート躯体における上記左右の扉体の外側端部に設けた円柱形状の支柱の外周面と対峙する所要個所に、上記各扉体の支柱の外周面との間に所要の隙間を有するように偏心した円弧形状の凹面部を備えた支承金物を、上下方向所要間隔で多段に設け、次に、上記左右の扉体を全閉位置に配した状態で、上記各扉体の支柱の外周面と、上記各支承金物の凹面部との間に、上記扉体の支柱の外周面に沿う内側湾曲面を備え且つ扉体を開放側へ回転させる方向に行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状の柱当金物をそれぞれ差込み、該各扉体の支柱の外周面と上記各支承金物の凹面部との間に差し込まれた各柱当金物を、上記扉体の支柱の外周面に仮固定し、次いで、上記各扉体を開放側へ回転させて該各扉体の支柱の外周面に仮固定した各柱当金物を、上記各支承金物との間の隙間より引き出した後、該各柱当金物を、上記各扉体の支柱の外周面に固定するようにするマイタゲートの扉体荷重伝達装置の施工方法とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)水路の左右両端部に水平方向に回転可能に設けた左右2枚の扉体を水路中央部で合掌させることで該水路を全閉することができるようにしてあるマイタゲートにおける上記左右の扉体の各外側端部に設けた円柱形状の支柱を、水路の左右のコンクリート躯体の近傍に回転可能に設置し、上記左右のコンクリート躯体の所要個所に、上記各扉体の支柱の外周面との間に所要の隙間を有するように偏心した円弧形状の凹面部を備えた支承金物を、上下方向所要間隔で多段に設置し、更に、上記各扉体の支柱の外周面における上記各支承金物と対応する高さ位置に、上記扉体の支柱の外周面に沿う内側湾曲面を備え且つ扉体を開放側へ回転させる方向に行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状の柱当金物を、各扉体を全閉位置に配するときに該柱当金物の外側湾曲面が上記支承金物の内側に接するようにそれぞれ取り付けてなる構成を有するマイタゲートの扉体荷重伝達装置としてあるので、各扉体の支柱の外周面に取り付けた各柱当金物は、左右の扉体を全開位置から全閉位置の直前位置までの間で回転させるときは、水路の左右のコンクリート躯体に設けてある支承金物の凹面部と接することはないため、上記各扉体をスムーズ回転させることができる。一方、上記左右の扉体を水路の中央部で合掌させるようにする全閉位置まで回転させると、上記各扉体の支柱の外周面に取り付けてある各柱当金物の外側湾曲面が、上記水路の左右のコンクリート躯体に設けてある支承金物の凹面部に密着するようになるため、上記全閉位置に配置してある左右の扉体に作用する荷重は、該各扉体の支柱より、各柱当金物と支承金物を介して水路の左右のコンクリート躯体へ確実に伝達させることができる。
(2)水路の左右両端部に水平方向に回転可能に設けた左右2枚の扉体を水路中央部で合掌させることで該水路を全閉することができるようにしてあるマイタゲートの左右のコンクリート躯体における上記左右の扉体の外側端部に設けた円柱形状の支柱の外周面と対峙する所要個所に、上記各扉体の支柱の外周面との間に所要の隙間を有するように偏心した円弧形状の凹面部を備えた支承金物を、上下方向所要間隔で多段に設け、次に、上記左右の扉体を全閉位置に配した状態で、上記各扉体の支柱の外周面と、上記各支承金物の凹面部との間に、上記扉体の支柱の外周面に沿う内側湾曲面を備え且つ扉体を開放側へ回転させる方向に行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状の柱当金物をそれぞれ差込み、該各扉体の支柱の外周面と上記各支承金物の凹面部との間に差し込まれた各柱当金物を、上記扉体の支柱の外周面に仮固定し、次いで、上記各扉体を開放側へ回転させて該各扉体の支柱の外周面に仮固定した各柱当金物を、上記各支承金物との間の隙間より引き出した後、該各柱当金物を、上記各扉体の支柱の外周面に固定するようにするマイタゲートの扉体荷重伝達装置の施工方法とすることにより、マイタゲートの左右の扉体の支柱の外周面に、各柱当金物を、上記左右の扉体を全閉位置に配置した状態とするときに該各柱当金物の外側湾曲面が水路の左右のコンクリート躯体に設置した各支承金物の凹面部に確実に接触する位置に配置して取り付けることができる。したがって、上記各扉体の支柱の真円度や回転軸の精度の誤差を吸収することができるように上記各扉体の支柱の外周面に対する柱当金物の取付位置を位置決めすることができる。よって、マイタゲートの扉体荷重伝達装置の現地据え付け及び調整作業に要する手間を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1乃至図4(イ)(ロ)は本発明のマイタゲートの扉体荷重伝達装置及び該扉体荷重伝達装置の施工方法の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0017】
ここで、先ず、本発明を適用するマイタゲートの構成について説明する。
【0018】
上記マイタゲートは、図1乃至図3に示す如く、水路1の左右両側のコンクリート躯体2に左右の扉体4をそれぞれ収容するための凹部3を設ける。
【0019】
左右の扉体4は、たとえば、プレートガーダ構造としてあり、且つ左右方向の外側端部に、上下方向に延びる円柱状の支柱5を取り付けてなる構成とする。更に上記左右の扉体4は、それぞれの支柱5を、上記コンクリート躯体2の凹部3における水路長手方向の一端寄り位置に配置して、該各支柱5の下端面の中心部に設けた下部軸受6を、上記コンクリート躯体2の凹部3の底面より突設した下部支承軸7に水平方向に回転可能に嵌合させると共に、各支柱5の上部所要個所を、コンクリート躯体2に設置した上部軸受金物8に回転自在に挿通させてなる構成として、上記下部支承軸7と上部軸受金物8を介して上記各扉体4をそれぞれの支柱5を中心に水平方向に回転可能に据付ける。
【0020】
更に、上記各扉体4の支柱5における上記上部軸受金物8よりも上方に突出する上端部には、周方向に扉体4より所要角度隔てた配置で径方向に所要寸法突出するクランクアーム9が取り付けてあり、該クランクアーム9の先端部に、上記水路1の左右のコンクリート躯体2上にそれぞれ基端部を水平方向に揺動可能に取り付けた油圧シリンダ10の作動ロッドの先端部を、水平方向に揺動可能に連結してある。これにより、上記各油圧シリンダ10を共に伸長作動させて、上記各扉体4の支柱5の上端部に設けたクランクアーム9の先端部をそれぞれ押すことで、上記各支柱5をトルクチューブとして機能させて、図2に二点鎖線で示す如く、該各支柱5を中心に、左右の扉体4を、上記水路1の左右のコンクリート躯体2に設けた凹部3に収納される全開位置まで回転させることができるようにしてある。一方、上記各油圧シリンダ10を同期して収縮作動させて上記各扉体4の支柱5の上端部に設けたクランクアーム9の先端部を引くことで、図2に実線で示すように、上記各支柱5を中心に、左右の扉体4を、該各扉体4の先端部同士を上記水路1の中央部で合掌させるように当接させる全閉位置まで回転させることができるようにしてある。
【0021】
図3における11は上記プレートガーダ構造としてある扉体4の横主桁である。
【0022】
以上の構成としてあるマイタゲートに適用する本発明のマイタゲートの扉体荷重伝達装置は、図1及び図3に示す如く、上記水路1の左右のコンクリート躯体2に設けた凹部3の水路長手方向一端側のコーナ部3aにおける所要高さ位置、たとえば、上記各扉体4の横主桁11と対応する高さ位置に、スラスト受金物としての支承金物12を、それぞれ設置する。
【0023】
上記各支承金物12は、平面形状を略L字形状として、その内側に扉体4の支柱5の外周面よりも所要寸法大きな径で円弧状に湾曲する凹面部12aを備え、且つ該凹面部12aに湾曲方向に沿わせて取り付けるオイルレスメタル13の内側が、上記扉体4の支柱の外周面よりもやや大きな径で湾曲した円弧面となるようにしてある。
【0024】
更に、上記各支承金物12は、コンクリート躯体2の凹部3のコーナ部3aに取り付けた状態で、上記凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13の内側の円弧面と、上記各扉体4の支柱5の外周面との隙間(支柱5の中心からの距離)が、扉体開放側回転方向へ行くにしたがって徐々に拡がるように、該支承金物12の凹面部12aを、上記扉体4の支柱5の中心より偏心させて配置できるようにしてある。又、上記略L字形状としてある各支承金物12の二辺の外側を、対応するコンクリート躯体2の表面に取り付ける際、上記支承金物12とコンクリート躯体2の表面との間にそれぞれライナプレート14を介在させるようにしてあり、この両者の間に介在させるライナプレート14の厚みや枚数を適宜調整することで、上記各支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13の内側の円弧面と、対応する扉体4の支柱5の外周面との間隔、及び、上記扉体4の支柱5の中心に対するオイルレスメタル13の内側の円弧面の偏心度(偏心量)を調整できるようにしてある。
【0025】
更に、上記各扉体4の支柱5の外周面に沿う曲率で湾曲する内側湾曲面15aと、上記支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13の内側の円弧面に沿って湾曲する外側湾曲面15b、すなわち、上記支柱5の外周面に沿う曲率で湾曲している内側湾曲面からの寸法が扉体開放側回転方向へ行くにしたがって徐々に拡大するよう上記内側湾曲面15aよりもやや大きな径で且つ該内側湾曲面15aに対して偏心した外側湾曲面15bとを備えて、扉体開放側回転方向へ行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状となる柱当金物15を形成し、該柱当金物15を、上記各扉体4の支柱5の上下方向における上記各支承金物12の設置高さ位置と対応する高さ位置の外周面に取り付ける。
【0026】
具体的には、図4(イ)に示す如く、上記水路1の左右のコンクリート躯体2に設けた凹部3の水路長手方向一端寄り位置に、各扉体4の支柱5をそれぞれ回転可能に据付け、更に、上記コンクリート躯体2に設けた凹部3における水路長手方向一端側のコーナ部3aの所定の高さ位置に、オイルレスメタル13を取り付けた支承金物12をそれぞれ設置した後、各扉体4を全閉位置まで回転させた状態にて、該扉体4の外周面と、上記コンクリート躯体2の凹部3のコーナ部3aに取り付けてある各支承金物12の凹面部12aのオイルレスメタル13との隙間に、個別の上記湾曲した楔形状としてある柱当金物15を、図4(イ)に二点鎖線で示すように、該柱当金物15の内側湾曲面15aを扉体4の支柱5の外周面に沿わせた状態で、図4(イ)に実線で示す如く、それ以上差し込めなくなる位置まで差込み、この状態で、該各柱当金物15を、上記扉体4の支柱5の外周面に、仮付け溶接等により仮固定する。次いで、図4(ロ)に示す如く、上記各扉体4を支柱5を中心として扉体開放側回転方向に回転させて該各扉体4の支柱5の外周面に仮固定されている各柱当金物15を、上記各支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13と、扉体4の外周面との隙間より引出した後、該各柱当金物15を、上記各扉体4の支柱5の外周面に本溶接等により固定するようにしてある。これにより、上記各扉体4の支柱5の外周面と、水路1の左右のコンクリート躯体2側に設けてある支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13の内側円弧面との間隔に、設計寸法に対して多少の誤差が生じていても、上記各扉体4を全閉位置まで回転させるときに、該各扉体4の支柱5の外周面の所要個所に取り付けた各柱当金物15の外側湾曲面を、上記水路1の左右のコンクリート躯体2側に設けてある支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13の内側円弧面に密着させることができるようにしてある。
【0027】
なお、図1における16は、水路1の左右のコンクリート躯体2の凹部3の水路長手方向の一端部における全閉位置に配した各扉体4のスキンプレート17の左右方向外側端部と対応する位置に設けた上下方向に延びる戸当り、18は上記各扉体4のスキンプレート17の左右方向の外側端部位置に、上記戸当り16と対峙する位置に上下方向に設けた水密ゴム取付座、19は該水密ゴム取付座18に取り付けた上下方向に延びる側部水密ゴムであり、上記各扉体4を全閉位置まで回転させると、上記各扉体4の水密ゴム取付座18に取り付けてある側部水密ゴム19が、上記コンクリート躯体2側の戸当り16に押し付けられることで、左右の扉体4の外側端部とコンクリート躯体2との間に水密性が得られるようにしてある。又、図示してないが、上記各扉体4の下端部と、水路1の底部には、該各扉体4を全閉位置まで回転させることで両者の間を水密に閉止できる機構を備えているものとする。
【0028】
以上の構成としてある本発明のマイタゲートの扉体荷重伝達装置を備えたマイタゲートによれば、上記各扉体4の支柱5の外周面に内側湾曲面15aを取り付けてある各柱当金物15の外側湾曲面15bでは、上記各扉体の支柱5の中心からの距離が、扉体開放側回転方向へ行くにしたがって徐々に拡がるようにしてあるため、各油圧シリンダ10の伸縮作動によってそれぞれ対応する扉体4を全開位置から全閉位置の直前位置までの間で回転させるときは、上記各扉体4の支柱5の外周面に取り付けてある各柱当金物15の外側湾曲面15bが、上記水路1の左右のコンクリート躯体2の凹部3に設けてある支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13と接触することはないため、上記各扉体4をスムーズ回転させることができるようになる。
【0029】
更に、上記各油圧シリンダ10の同期した収縮作動により、左右の各扉体4を、該各扉体の先端部同士を水路1の中央部で合掌させる全閉位置まで回転させると、上記各扉体4の支柱5の外周面に取り付けてある各柱当金物15の外側湾曲面15bが、上記水路1の左右のコンクリート躯体2の凹部3に設けてある支承金物12の凹面部12aに取り付けたオイルレスメタル13の内側円弧面に密着するようになる。よって、上記全閉位置に配置してある各扉体4に作用する荷重は、上記各扉体の支柱5より、各柱当金物15、オイルレスメタル13、支承金物12とライナプレート14を介して水路1の左右のコンクリート躯体へ確実に伝達されるようになる。
【0030】
このように、本発明のマイタゲートの扉体荷重伝達装置、及び、該扉体荷重伝達装置の施工方法によれば、水路1に設置した左右の扉体4を全閉位置に配置した状態で、各扉体4の支柱5の外周面と、水路1の左右のコンクリート躯体2に設置した各支承金物12の凹面部12aに取り付けられているオイルレスメタル13の内側円弧面との間に、湾曲した楔形状の柱当金物15を、上記各扉体4の支柱5の外周面に沿わせてそれぞれ差し込むことで、該柱当金物15の位置決めを確実に行うことができる。
【0031】
したがって、上述した構成としてあるマイタゲートでは、左右の扉体4の支柱5が、該各扉体4をそれぞれ対応する油圧シリンダ10の伸縮作動に伴って回転させるときのトルクチューブとなるため、該各扉体4に作用する荷重の水路1の左右のコンクリート躯体2への伝達と、確実な開閉操作を実現するためには、上記各支柱5の真円度と回転軸の精度が求められるが、上気したような手順で柱当金物15の位置決めを行うことで、上記各支柱5の真円度や回転軸の精度の誤差を吸収することができる。よって、本発明のマイタゲートの扉体荷重伝達装置の現地据え付け及び調整作業に要する手間を削減することができる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、左右の扉体4を合掌させることで水路を締め切るようにしてある形式のマイタゲートであれば、各扉体4の開閉装置は、図2に示した如き油圧シリンダ10を用いた揺動シリンダ式以外のいかなる形式の開閉装置を用いたものにも適用してよい。
【0033】
又、柱当金物15及び支承金物12を設ける高さ位置は、扉体4の横主桁11の高さ位置に対応させることが望ましいが、扉体4の横主桁11と対応する高さ位置以外の位置に設けてもよい。更に、柱当金物15及び支承金物12の上下方向の設置数は、マイタゲートの扉体4の上下寸法や、該扉体4に作用すると想定される荷重の大小に応じて適宜増減してもよい。
【0034】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のマイタゲートの扉体荷重伝達装置の実施の一形態を示す概略切断平面図である。
【図2】図1の扉体荷重伝達装置を備えたマイタゲートを示す概略平面図である。
【図3】図1の扉体荷重伝達装置を備えたマイタゲートの一方の扉体の支柱部分を示す一部切断概略側面図である。
【図4】図1の扉体荷重伝達装置の施工手順を示すもので、(イ)は柱当金物を扉体の支柱の外周面とコンクリート躯体側の支承部材に取り付けてあるオイルレスメタルとの隙間に差し込んだ状態を、(ロ)は扉体の支柱の外周面に仮固定した柱当金物を、扉体を回転させることで支柱の外周面と支承部材のオイルレスメタルとの隙間より引き出した状態をそれぞれ示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 水路
2 コンクリート躯体
4 扉体
5 支柱
12a 凹面部
12 支承金物
15 柱当金物
15a 内側湾曲面
15b 外側湾曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の左右両端部に水平方向に回転可能に設けた左右2枚の扉体を水路中央部で合掌させることで該水路を全閉することができるようにしてあるマイタゲートにおける上記左右の扉体の各外側端部に設けた円柱形状の支柱を、水路の左右のコンクリート躯体の近傍に回転可能に設置し、上記左右のコンクリート躯体の所要個所に、上記各扉体の支柱の外周面との間に所要の隙間を有するように偏心した円弧形状の凹面部を備えた支承金物を、上下方向所要間隔で多段に設置し、更に、上記各扉体の支柱の外周面における上記各支承金物と対応する高さ位置に、上記扉体の支柱の外周面に沿う内側湾曲面を備え且つ扉体を開放側へ回転させる方向に行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状の柱当金物を、各扉体を全閉位置に配するときに該柱当金物の外側湾曲面が上記支承金物の内側に接するようにそれぞれ取り付けてなる構成を有することを特徴とするマイタゲートの扉体荷重伝達装置。
【請求項2】
水路の左右両端部に水平方向に回転可能に設けた左右2枚の扉体を水路中央部で合掌させることで該水路を全閉することができるようにしてあるマイタゲートの左右のコンクリート躯体における上記左右の扉体の外側端部に設けた円柱形状の支柱の外周面と対峙する所要個所に、上記各扉体の支柱の外周面との間に所要の隙間を有するように偏心した円弧形状の凹面部を備えた支承金物を、上下方向所要間隔で多段に設け、次に、上記左右の扉体を全閉位置に配した状態で、上記各扉体の支柱の外周面と、上記各支承金物の凹面部との間に、上記扉体の支柱の外周面に沿う内側湾曲面を備え且つ扉体を開放側へ回転させる方向に行くにしたがって徐々に厚みが増加する平面形状が湾曲した楔形状の柱当金物をそれぞれ差込み、該各扉体の支柱の外周面と上記各支承金物の凹面部との間に差し込まれた各柱当金物を、上記扉体の支柱の外周面に仮固定し、次いで、上記各扉体を開放側へ回転させて該各扉体の支柱の外周面に仮固定した各柱当金物を、上記各支承金物との間の隙間より引き出した後、該各柱当金物を、上記各扉体の支柱の外周面に固定するようにすることを特徴とするマイタゲートの扉体荷重伝達装置の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235818(P2009−235818A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84547(P2008−84547)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】