説明

マグネシウム製歯車及びその製造方法

【課題】 本発明は、マグネシウムが発火しないように処理して、安全にマグネシウム製歯車を製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 本発明は、軽量なマグネシウムを主成分とする材料を円盤状に切断する切断加工工程と、切断加工済材料をチャックに嵌め込み中心を突き通す内径下穴加工、端面及び外周面を粗く削る端面及び外径荒引加工、端面及び外周面を細かく削る端面及び外径仕上加工、内周面を細かく削る内径仕上加工、反対側端面及び外周面を粗く削る反対側端面及び外径荒引加工、及び反対側端面及び外周面を細かく削る反対側端面及び外径仕上加工からなる旋盤加工工程と、旋盤加工済材料の外周面にホブを回転させながら歯を刻むことで歯車を形成する歯切加工工程とからなることを特徴とするマグネシウム製歯車及びその製造方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量なマグネシウムを主成分とするマグネシウム製歯車及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムは、鉄やアルミニウム等に比べ格段に軽く、強度に関しても十分であるため、自動車、航空機又は産業用機器等の幅広い工業製品に利用できれば、性能を格段に向上させることができる。
【0003】
マグネシウムは、アルミニウムを約3%、亜鉛を約1%添加したAZ31や、アルミニウムを約6%、亜鉛を約1%添加したAZ61等の合金として利用されるが、比較的塑性加工しやすいため、圧延又は押出加工により成形される。
【0004】
特許文献1に記載されているように、マグネシウム合金素材の液体化処理工程と、予歪を与えるための第1の鍛造加工工程と、鍛造加工後の時効処理工程と、結晶粒を微細化するための第2の鍛造加工工程とからなるマグネシウム合金部材の製造方法という発明も公開されている。
【特許文献1】特開2003−277899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マグネシウムは爆発しやすい、又は発火しやすい等の弱点があり、切削時に切粉が燃えないように、取り扱いに十分注意する必要がある。また、切粉が水分を含むと水素が発生して爆発する可能性もある。
【0006】
そこで、本発明は、マグネシウムが発火しないように処理して、安全にマグネシウム製歯車を製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、軽量なマグネシウムを主成分とする円柱状の材料を円盤状に切断する切断加工工程2と、前記切断加工工程2後に切断加工済材料5をチャック6に嵌め込み中心をドリル7で突き通す内径下穴加工3a、前記内径下穴加工3aした切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bを超硬バイト7aで粗く削る端面及び外径荒引加工3b、前記端面及び外径荒引加工3bした切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bをダイヤモンドバイト7bで細かく削る端面及び外径仕上加工3c、前記端面及び外径仕上加工3cした切断加工済材料5の内周面5fを超硬バイト7cで細かく削る内径仕上加工3d、前記内径仕上加工3dした切断加工済材料5を反対側にしてチャック6に嵌め込み反対側端面5c及び外周面5bを超硬バイト7aで粗く削る反対側端面及び外径荒引加工3e、及び前記反対側端面及び外径荒引加工3eした切断加工済材料5の反対側端面5c及び外周面5bをダイヤモンドバイト7bで細かく削る反対側端面及び外径仕上加工3fからなる旋盤加工工程3と、前記旋盤加工工程3後に旋盤加工済材料9の外周面9bにホブ10を回転させながら歯9eを刻むことで歯車11を形成する歯切加工工程4とからなり、前記切断加工工程2、旋盤加工工程3及び歯切加工工程4の各工程において、切削時にカバー及び切粉受けを設け、切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで、温度がマグネシウム発火点に達しないように制御することを特徴とするマグネシウム製歯車の製造方法1、並びに前記マグネシウム製歯車の製造方法1により製造されたマグネシウム製歯車1a、1bの構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。第1に、マグネシウムを主成分とすることで、アルミニウムを主成分とする歯車の3分の2の重さ、鉄を主成分とする歯車の4分の1の重さという非常に軽量な歯車を製造することができる。
【0009】
第2に、切削時に切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで、マグネシウムが温度や水分等の原因により発火するのを防止し、安全に加工することができる。
【0010】
第3に、マグネシウムは、軽量で切削性が良く加工しやすいにもかかわらず、強度も十分にあるため、自動車、航空機又は産業用機器等の幅広い工業製品の性能を格段に向上させることができる。
【0011】
第4に、マグネシウムは、天然資源が豊富でリサイクル性が良く、環境的にも非常に優れているので、マグネシウム製歯車が広く普及すれば、全世界的に問題となってくるエコロジー対策にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
切削時に温度がマグネシウム発火点に達しないように制御するという目的を、カバー及び切粉受けを設け、切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで実現した。
【実施例1】
【0013】
以下に、添付図面に基づいて、本発明であるマグネシウム製歯車及びその製造方法について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の流れを示すフローチャートであり、図2は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0015】
マグネシウム製歯車の製造方法1は、軽量なマグネシウムを主成分とする円柱状の材料を円盤状に切断する切断加工工程2と、前記切断加工工程2後に切断加工済材料5をチャック6に嵌め込み中心をドリル7で突き通す内径下穴加工3a、前記内径下穴加工3aした切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bを超硬バイト7aで粗く削る端面及び外径荒引加工3b、前記端面及び外径荒引加工3bした切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bをダイヤモンドバイト7bで細かく削る端面及び外径仕上加工3c、前記端面及び外径仕上加工3cした切断加工済材料5の内周面5fを超硬バイト7cで細かく削る内径仕上加工3d、前記内径仕上加工3dした切断加工済材料5を反対側にしてチャック6に嵌め込み反対側端面5c及び外周面5bを超硬バイト7aで粗く削る反対側端面及び外径荒引加工3e、及び前記反対側端面及び外径荒引加工3eした切断加工済材料5の反対側端面5c及び外周面5bをダイヤモンドバイト7bで細かく削る反対側端面及び外径仕上加工3fからなる旋盤加工工程3と、前記旋盤加工工程3後に旋盤加工済材料9の外周面9bにホブ10を回転させながら歯9eを刻むことで歯車11を形成する歯切加工工程4とからなり、前記切断加工工程2、旋盤加工工程3及び歯切加工工程4の各工程において、切削時にカバー及び切粉受けを設け、切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで、温度がマグネシウム発火点に達しないように制御することを特徴とする。
【0016】
図1に示すように、マグネシウム製歯車の製造方法1は、切断加工工程2、旋盤加工工程3及び歯切加工工程4からなる。
【0017】
切断加工工程2は、軽量なマグネシウムを主成分とする円柱状の材料を円盤状に切断する。尚、切断加工工程2については、図3において詳細に説明する。
【0018】
旋盤加工工程3は、切断加工工程2後に、旋盤その他の器具により精度を上げて切削加工し、所定の寸法に仕上げる。尚、旋盤加工工程3については、図2及び図4から図11において詳細に説明する。
【0019】
歯切加工工程4は、旋盤加工工程3後に、旋盤加工済材料9の外周面9bにホブ10を回転させながら歯9eを刻むことで歯車11を形成する。尚、歯切加工工程4については、図12から図15において詳細に説明する。
【0020】
切断加工工程2、旋盤加工工程3及び歯切加工工程4の各工程においては、切削時にカバー及び切粉受けを設け、切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで、温度がマグネシウム発火点に達しないように制御する。
【0021】
図2に示すように、旋盤加工工程3は、内径下穴加工3a、端面及び外径荒引加工3b、端面及び外径仕上加工3c、内径仕上加工3d、反対側端面及び外径荒引加工3e及び反対側端面及び外径仕上加工3fからなる。
【0022】
内径下穴加工3aは、切断加工済材料5をチャック6に嵌め込み中心をドリル7で突き通す。尚、内径下穴加工3aについては、図5において詳細に説明する。
【0023】
端面及び外径荒引加工3bは、内径下穴加工3aした切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bを超硬バイト7aで粗く削る。尚、端面及び外径荒引加工3bについては、図6において詳細に説明する。
【0024】
端面及び外径仕上加工3cは、端面及び外径荒引加工3bした切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bをダイヤモンドバイト7bで細かく削る。尚、端面及び外径仕上加工3cについては、図7において詳細に説明する。
【0025】
内径仕上加工3dは、端面及び外径仕上加工3cした切断加工済材料5の内周面5fを超硬バイト7cで細かく削る。尚、内径仕上加工3dについては、図8において詳細に説明する。
【0026】
反対側端面及び外径荒引加工3eは、内径仕上加工3dした切断加工済材料5を反対側にしてチャック6に嵌め込み反対側端面5c及び外周面5bを超硬バイト7aで粗く削る。尚、反対側端面及び外径荒引加工3eについては、図9において詳細に説明する。
【0027】
反対側端面及び外径仕上加工3fは、反対側端面及び外径荒引加工3eした切断加工済材料5の反対側端面5c及び外周面5bをダイヤモンドバイト7bで細かく削る。尚、反対側端面及び外径仕上加工3fについては、図10において詳細に説明する。
【0028】
図3は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の切断加工工程において切断加工された材料を示す斜視図である。
【0029】
マグネシウム製歯車の材料は、マグネシウムにアルミニウムを約3%、亜鉛を約1%添加したAZ31合金、又はアルミニウムを約6%、亜鉛を約1%添加したAZ61合金を押出加工により円柱状にしたものである。
【0030】
マグネシウム製歯車を製造するにあたり、予め、製品に応じた材質及び外径の選定を行っておく。切断加工工程2において、材料の外径が大きい場合にはノコ盤などで材料を輪切りに切断し、小さい場合には旋盤などで材料を輪切りに切断する。
【0031】
円柱状の材料を円盤状に切断したものが切断加工済材料5である。切断加工済材料5は、単に切断しただけで、端面5a及び外周面5bは粗い状態のままであるので、旋盤加工工程3でバイト等を使用して細かく仕上げる。
【0032】
尚、バイトとは、旋盤等に用いる切削用の刃物のことであり、材質によりハイスバイト、超硬バイト又はダイヤモンドバイト等の種類があり、用途により荒引バイト、仕上バイト又は穴ぐりバイト等の種類がある。
【0033】
図4は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程において使用するチャックを示す斜視図である。尚、チャックとは、旋盤に加工する材料を取り付けるための器具のことである。
【0034】
チャック6は、チャック本体6aに三本の爪6bを等間隔に配置したもので、旋盤加工工程3において、粗い状態の切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bを仕上げるために利用する。
【0035】
チャック本体6aは、円盤状のチャック6の本体部材である。チャック本体6aの表面は、切断加工済材料5を固定する側であり、チャック本体6aの裏面は、旋盤に取り付けられ、チャック本体6aの中心を軸として回転する。
【0036】
爪6bは、凸部6cと凹部6dからなるL字状の部材で、凹部6dに切断加工済材料5を嵌め込み、凸部6cで切断加工済材料5を押さえることで、チャック6を介して旋盤に切断加工済材料5を取り付ける。
【0037】
三本の爪6bは、凸部6cがチャック本体6aの外周側に立つように、チャック本体6aの表面に120°の間隔を空けて取り付けられる。チャック6の中心に嵌め込まれた切断加工済材料5は、爪6bにより三方からしっかりと押さえ付けられる。
【0038】
図5は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における内径下穴加工の状況を示す断面図である。
【0039】
切断加工済材料5を旋盤加工するに際して、切断加工済材料5をチャック本体6aに設けられた爪6bの凹部6dに嵌め込み、爪6bの凸部6cで押さえることで、チャック6に取り付ける。
【0040】
切断加工済材料5の一方の端面5aが加工を行う表面となり、反対側端面5cがチャック6に接する裏面となる。切断加工済材料5の外周面5bには、反対側端面5cの側にチャック6の爪6bが掛けられる。
【0041】
尚、図5では、上側の爪6bと下側の爪6bによって切断加工済材料5をチャック6に固定するように示しているが、実際には、三本の爪6bによって切断加工済材料5をチャック6に固定する。
【0042】
内径下穴加工3aでは、切断加工済材料5に対してドリル7を垂直に当て、切断加工済材料5の中心の穴5eとなる突通箇所5dを、ドリル7を回転させながら突貫8する。穴5eを貫通させるだけで、内周面5fの仕上げは後で行う。
【0043】
図6は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における端面及び外径荒引加工の状況を示す断面図である。
【0044】
端面及び外径荒引加工3bでは、切断加工済材料5の端面5aと、外周面5bの端面5aの側を、超硬バイト7aを使用して粗削りする。まず、端面5aの切削箇所5gを端面切削8aし、その後、外周面5bの切削箇所5gを外径切削8bする。
【0045】
旋盤を回転させることで、チャック6に取り付けられた切断加工済材料5も回転するので、切断加工済材料5の端面5a及び外周面5bの切削箇所5gに超硬バイト7aを当てることで、端面切削8a及び外径切削8bが行われる。
【0046】
外径切削8bに関しては、端面5aの側からチャック6の爪6bが押さえている箇所の前までを切削する。爪6bの高さは、切断加工済材料5の厚さの半分以下であり、外周面5bの半分以上を削ることができる。
【0047】
尚、超硬バイト7aは、タングステンカーバイトとコバルトの微粉末を焼き固めて刃先形状としたもので、ハイスバイトよりも硬度が高く、高い温度でも刃先強度が落ちないという特徴がある。
【0048】
図7は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における端面及び外径仕上加工の状況を示す断面図である。
【0049】
端面及び外径仕上加工3cでは、切断加工済材料5の端面5aと、外周面5bの端面5aの側を、ダイヤモンドバイト7bを使用して細かく削って綺麗に仕上げる。端面及び外径荒引加工3bの場合と同様に、端面5aの切削箇所5gを端面切削8aし、外周面5bの切削箇所5gを外径切削8bする。
【0050】
尚、ダイヤモンドバイト7bは、刃先がダイヤモンドで出来た主に仕上加工に使用するバイトである。ダイヤモンドバイト7bを使用すれば、超精密に加工して鏡面を形成することも可能である。
【0051】
図8は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における内径仕上加工の状況を示す断面図である。
【0052】
内径仕上加工3dでは、切断加工済材料5の内周面5fの切削箇所5hを、穴ぐり用の超硬バイト7cを使用して内径切削8cし、切断加工済材料5の内径が製品の仕様となるように仕上げる。
【0053】
尚、穴ぐり用の超硬バイト7cは、予めドリル7等で開けておいた穴5eを、任意の径に拡げていくバイトである。切断加工済材料5を回転させながら、内周面5fの切削箇所5hに当てることで、内径切削8cが行われる。
【0054】
図9は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における反対側端面及び外径荒引加工の状況を示す断面図である。
【0055】
端面5aの加工が完了したら、一旦、切断加工済材料5をチャック6から取り外す。切断加工済材料5を裏返しにし、反対側端面5cが表面、端面5aが裏面となるようにチャック6へ再び付け直す。
【0056】
反対側端面及び外径荒引加工3eでは、端面及び外径荒引加工3bの場合と同様に、切断加工済材料5の反対側端面5cと、外周面5bの反対側端面5cの側を、超硬バイト7aを使用して粗削りする。
【0057】
外周面5bの反対側端面5cの側で、かつ、端面及び外径荒引加工3b及び端面及び外径仕上加工3cにおいて切削されていない部分である切削箇所5iを一度に反対側端面及び外径切削8dする。
【0058】
反対側端面及び外径切削8dでは、端面及び外径荒引加工3b及び端面及び外径仕上加工3cにおいてチャック6の爪6bが押さえていた反対側端面5cの側を切削する。爪6bの高さは、切断加工済材料5の厚さの半分以下であるので、切削箇所5iが爪6bで隠れることはない。
【0059】
図10は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における反対側端面及び外径仕上加工の状況を示す断面図である。
【0060】
反対側端面及び外径仕上加工3fでは、切断加工済材料5の反対側端面5cと、外周面5bの反対側端面5cの側を、ダイヤモンドバイト7bを使用して細かく削って綺麗に仕上げる。反対側端面及び外径荒引加工3eの場合と同様に、切削箇所5iを反対側端面及び外径切削8dする。
【0061】
図11は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程において旋盤加工された材料を示す斜視図である。
【0062】
旋盤加工済材料9は、切断加工済材料5に対して旋盤加工工程3を行ったもので、中央には円形の穴9cが空けられ、ドーナツ状である。旋盤加工済材料9は、旋盤加工工程3により全周測定でプラスマイナス0.03ミリメートル以内の精度で仕上げられる。
【0063】
旋盤加工済材料9の端面9a、外周面9b及び内周面9dは、切削した箇所が研磨された状態であるが、外周面9bについては、歯切加工工程4において歯9eが形成される。
【0064】
図12は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の歯切加工工程において使用するホブを示す斜視図である。尚、ホブとは、円筒外周に多くの切歯を付けた切削具の一つであり、ホブ盤に取り付けて回転させることで切削を行う。
【0065】
ホブ10は、ホブ本体10aに複数の切歯10cを設けたもので、鉄材やステンレス材を切削しているのと同一のものを使用することができる。ホブ10は、歯切加工工程4において、切歯10cにより旋盤加工済材料9の外周面9bを切削して歯9eを形成するために使用する。
【0066】
ホブ本体10aは、円筒状の部材であり、外周上には切歯10cが並べられ、内周側は中空の軸穴10bである。ホブ本体10aの軸穴10bには、ホブ盤の回転軸を通し、ホブ10を回転8eさせることができる。
【0067】
切歯10cは、長い板状の部材に、略三角状の山型の突起10dと谷型の溝10eを繰り返して複数の凹凸を付けたもので、ホブ本体10aの外周上を縦断するように長手方向に取り付ける。
【0068】
複数の切歯10cをホブ本体10aの外周上を回るように並べて配置することで、ホブ10を回転8eさせた際に、連続して切歯10cの突起10dを旋盤加工済材料9に当てることができる。
【0069】
図13は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の歯切加工工程における歯切加工の状況を示す斜視図である。
【0070】
歯切加工工程4では、ホブ10を使用して旋盤加工済材料9に歯9eを形成する。ホブ10は軸穴10bが水平となるように配置し、旋盤加工済材料9を横向きにして外周面9bを垂直に当てる。
【0071】
ホブ10を縦に回転8eさせると、ホブ10の切歯10cが次々に旋盤加工済材料9に当たり、切歯10cの形状が転写されるように切削され、外周面9bに突起9fと溝9gが生じる。
【0072】
ホブ10を当てた箇所が切削されたら、旋盤加工済材料9を少し横に回転8fさせ、外周面9bの別の箇所を切削していく。外周面9b全てを切削すると、旋盤加工済材料9に歯9eが形成される。
【0073】
図14及び図15は、本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の歯切加工工程において歯切加工された歯車を示す斜視図である。
【0074】
マグネシウム製歯車1a及びマグネシウム製歯車1bは、共に旋盤加工済材料9に歯切加工工程4を行ったもので、マグネシウム製歯車1aは大きなサイズに、マグネシウム製歯車1bは小さなサイズに形成したものである。
【0075】
マグネシウム製歯車1a又はマグネシウム製歯車1bの歯車11は、中央には円状の穴11aが空いており、略ドーナツ状の縁側には突起11cと溝11dによる凹凸が繰り返された歯11bを有する。
【0076】
歯車11の穴11aには回転軸が通され、歯11bには別の歯車が噛み合わせられる。マグネシウム製歯車1a又はマグネシウム製歯車1bを回転させることで、回転力を別の歯車に伝達することができる。
【0077】
マグネシウム製歯車の製造方法1では、切断加工工程2、旋盤加工工程3及び歯切加工工程4を通じて、切削時には、切粉及び粉塵が発火しないように、暖房、静電気又はその他の発火原因となるようなものに充分注意して作業する必要がある。
【0078】
特に、歯切加工工程4は、ホブ10による断続切削になり、非常に細かな切粉が発生するため、少量の切粉でも製造装置からすぐに排出して製造装置内に溜まらないように処置しなければならない。
【0079】
マグネシウムの発火点は150〜200℃であり、発火点に達しないようにするため、マグネシウムと反応しない材料を用いてカバー及び切粉受けを作成し、切粉が飛散しないようにする。
【0080】
切粉を集積するため、カバー内全体、ホブ10又は非切削物に対し、切削油を空気と共に吹き付け、切粉を流動させる。尚、切削油は、水溶性、非水溶性又はその他のものを条件に応じて使い分ける。
【0081】
集積した切粉は、切削油で満たしたタンク内に一時的に保存し、その後、液切り及び小分けして保管する。尚、切削油を使用するのは、切粉を水中に投入すると水素が発生し、爆発する可能性があるので、水分を排除するためである。
【実施例2】
【0082】
図14及び図15は、本発明であるマグネシウム製歯車の斜視図である。
【0083】
マグネシウム製歯車の製造方法1で製造されたマグネシウム製歯車1aは、重さが約6グラムであり、同形状の鉄(S45C)製歯車の重さが約28グラムであることから、4分の1から5分の1に軽量化することができる。
【0084】
また、マグネシウム製歯車の製造方法1で製造されたマグネシウム製歯車1bは、重さが約1グラムであり、同形状のステンレス(SUS304)製歯車の重さが約10グラムであることから約10分の1に軽量化することができる。
【0085】
図16は、本発明であるマグネシウム製歯車の化学成分を示す表である。
【0086】
成分表12に示すように、マグネシウム製歯車1a又はマグネシウム製歯車1bは、マグネシウムにアルミニウムを約3%、亜鉛を約1%など添加したAZ31、又はマグネシウムにアルミニウムを約6%、亜鉛を約1%など添加したAZ61の合金を材料として使用する。
【0087】
AZ31は、マグネシウムに対し、アルミニウムを2.5〜3.5%、亜鉛を0.50〜1.5%、マンガンを0.20%以上、鉄を0.03%以下、ケイ素を0.20%以下、銅を0.10%以下、ニッケルを0.005%以下、カルシウムを0.04%以下、及びその他合計を0.30%以下添加した合金である。
【0088】
AZ61は、マグネシウムに対し、アルミニウムを5.5〜7.2%、亜鉛を0.50〜1.5%、マンガンを0.15〜0.40%、鉄を0.03%以下、ケイ素を0.10%以下、銅を0.10%以下、ニッケルを0.005%以下、及びその他合計を0.30%以下添加した合金である。
【0089】
尚、マグネシウム製歯車の製造方法1は、マグネシウム製歯車1a又はマグネシウム製歯車1bのような外歯に限らず、ウォームギア、内歯ギア、ホブカッター、シングルカッター、シェービングカッターなど、切削によるマグネシウムの歯形成型技術に応用することができる。
【0090】
以上のように、本発明であるマグネシウム製歯車及びその製造方法1は、マグネシウムを主成分とすることで、アルミニウムを主成分とする歯車の3分の2の重さ、鉄を主成分とする歯車の4分の1の重さという非常に軽量な歯車を製造することができる。
【0091】
また、切削時に切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで、マグネシウムが温度や水分等の原因により発火するのを防止し、安全に加工することができる。
【0092】
更に、マグネシウムは、軽量で切削性が良く加工しやすいにもかかわらず、強度も十分にあるため、自動車、航空機又は産業用機器等の幅広い工業製品の性能を格段に向上させることができる。
【0093】
最後に、マグネシウムは、天然資源が豊富でリサイクル性が良く、環境的にも非常に優れているので、マグネシウム製歯車が広く普及すれば、全世界的に問題となってくるエコロジー対策にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程の詳細な流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の切断加工工程において切断加工された材料を示す斜視図である。
【図4】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程において使用するチャックを示す斜視図である。
【図5】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における内径下穴加工の状況を示す断面図である。
【図6】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における端面及び外径荒引加工の状況を示す断面図である。
【図7】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における端面及び外径仕上加工の状況を示す断面図である。
【図8】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における内径仕上加工の状況を示す断面図である。
【図9】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における反対側端面及び外径荒引加工の状況を示す断面図である。
【図10】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程における反対側端面及び外径仕上加工の状況を示す断面図である。
【図11】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の旋盤加工工程において旋盤加工された材料を示す斜視図である。
【図12】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の歯切加工工程において使用するホブを示す斜視図である。
【図13】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の歯切加工工程における歯切加工の状況を示す斜視図である。
【図14】本発明であるマグネシウム製歯車の製造方法の歯切加工工程において歯切加工された歯車を示す斜視図である。
【図15】本発明であるマグネシウム製歯車の斜視図である。
【図16】本発明であるマグネシウム製歯車の化学成分を示す表である。
【符号の説明】
【0095】
1 マグネシウム製歯車の製造方法
1a マグネシウム製歯車
1b マグネシウム製歯車
2 切断加工工程
3 旋盤加工工程
3a 内径下穴加工
3b 端面及び外径荒引加工
3c 端面及び外径仕上加工
3d 内径仕上加工
3e 反対側端面及び外径荒引加工
3f 反対側端面及び外径仕上加工
4 歯切加工工程
5 切断加工済材料
5a 端面
5b 外周面
5c 反対側端面
5d 突通箇所
5e 穴
5f 内周面
5g 切削箇所
5h 切削箇所
5i 切削箇所
6 チャック
6a チャック本体
6b 爪
6c 凸部
6d 凹部
7 ドリル
7a 超硬バイト
7b ダイヤモンドバイト
7c 超硬バイト
8 突貫
8a 端面切削
8b 外径切削
8c 内径切削
8d 反対側端面及び外径切削
8e 回転
8f 回転
9 旋盤加工済材料
9a 端面
9b 外周面
9c 穴
9d 内周面
9e 歯
9f 突起
9g 溝
10 ホブ
10a ホブ本体
10b 軸穴
10c 切歯
10d 突起
10e 溝
11 歯車
11a 穴
11b 歯
11c 突起
11d 溝
12 成分表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量なマグネシウムを主成分とする円柱状の材料を円盤状に切断する切断加工工程と、前記切断加工工程後に切断加工済材料をチャックに嵌め込み中心をドリルで突き通す内径下穴加工、前記内径下穴加工した切断加工済材料の端面及び外周面を超硬バイトで粗く削る端面及び外径荒引加工、前記端面及び外径荒引加工した切断加工済材料の端面及び外周面をダイヤモンドバイトで細かく削る端面及び外径仕上加工、前記端面及び外径仕上加工した切断加工済材料の内周面を超硬バイトで細かく削る内径仕上加工、前記内径仕上加工した切断加工済材料を反対側にしてチャックに嵌め込み反対側端面及び外周面を超硬バイトで粗く削る反対側端面及び外径荒引加工、及び前記反対側端面及び外径荒引加工した切断加工済材料の反対側端面及び外周面をダイヤモンドバイトバイトで細かく削る反対側端面及び外径仕上加工からなる旋盤加工工程と、前記旋盤加工工程後に旋盤加工済材料の外周面にホブを回転させながら歯を刻むことで歯車を形成する歯切加工工程とからなり、前記切断加工工程、旋盤加工工程及び歯切加工工程の各工程において、切削時にカバー及び切粉受けを設け、切粉に空気とともに切削油を吹き付けながら切粉が飛散しないように集積することで、温度がマグネシウム発火点に達しないように制御することを特徴とするマグネシウム製歯車の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマグネシウム製歯車の製造方法により製造されたことを特徴とするマグネシウム製歯車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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