説明

マグネシウム豊富な飲料水

本発明は、マグネシウム化合物層を通して水を循環させることを含むマグネシウム強化飲料水を供給するためのシステムを提供する。この健康促進水は、濃度が10〜500mg/lの間のマグネシウムを含有し、更に、ナトリウムを含まないが、他の追加的な健康促進塩類を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、マグネシウム化合物層(a bed of magnesium compound)を通して循環する水流の閉鎖流れ回路と、新鮮な水をその流れに供給し、そこから強化水を回収する開放流れ回路とを備える、マグネシウム強化飲料水を供給するためのシステムに関する。マグネシウムで強化された健康促進飲料水が提供される。
【0002】
[発明の背景]
マグネシウムは、カルシウム、カリウム、及びナトリウムと共に、体内に最も豊富に存在する4つの金属元素のうちに属している。マグネシウム不足に伴う障害は複雑で、通常は複数の代謝障害と栄養障害とが伴う。マグネシウム不足の臨床症状には、食欲不振、吐き気、嘔吐、けん怠感、虚弱、人格変化、テタニー、並びにふるえ及び筋肉のけいれんがある[The Merck Manual,17th Ed.(1999)]。低マグネシウム血症、つまり血しょう中マグネシウムの減少は、神経筋系統の易興奮性の原因になる。マグネシウムの不足は、体液の損失、過度の腎排泄の際生じることがあり、栄養不良、下痢、糖尿病、膵臓炎などと関係していることがある。マグネシウムの減少は、更に低カルシウム血症及びその結果として生じる全ての深刻な症状の原因になることがある。マグネシウムが不足している水を飲んでいる人は、一般に様々な病状、主に循環器疾患の影響をより受けやすいと思われることが判明した。
【0003】
好ましくは水を飲んで、食物中に供給されるマグネシウムを1日所要値まで確保するべきである。成人に推奨される1日のマグネシウム摂取量は、200〜400mgの間であるが[The Merck Manual、17th Ed.(1999)]、それを超える量である場合もある。しかしながら、水道水は、マグネシウムをほとんど含有していないことが多い。例えば、米国の大都市で利用されている水道水には、10mg/l未満のマグネシウムしか有していないことが多い[Azoulay A.et al.:J.Intern.Med.16(2001)168−75]。したがって、予防医学及び健康的な栄養摂取に関する現代の原理は、マグネシウムのより高い摂取量を必要とするが、このことは大抵、マグネシウム含量のより高いミネラルウォーター又は他のボトル入り水を飲むことにより容易に達成できる。市販されているボトル入り水の多くは、マグネシウムの含量が極めて低く、更にボトル入り水のなかには、一部の水道水と同様にあまりにも多量のナトリウムを含有しているものもある[同書]が、健康食では、可能な限りナトリウム含量を低く保つべきである。したがって本発明の目的は、マグネシウムで強化されたナトリウム含量が低い飲料水を提供することである。
【0004】
欧州特許第1460042号は、マグネシウム塩を溶解させ、好ましくは炭酸マグネシウムと炭酸カリウムとを混合させることによりマグネシウムの含量がより高い飲用水を製造する方法に関する。この複雑なシステムは、多くのコンパートメント及び分離された溶解前工程を含んでおり、カリウム等の他のカチオンが取り入れられている。米国特許第6,761,289号は、圧力が30〜70気圧の範囲の下で、ナトリウム塩などの添加剤を更に含有する、カルシウム及びマグネシウムの重炭酸溶液を調製するための圧力容器に関する。この高圧技術は、余りに複雑であり、低めのマグネシウム濃度をもたらす。米国特許出願公開第2005/0255174号は、炭酸水中で炭酸マグネシウム懸濁液を混合することを含む重炭酸マグネシウムの調製に関する。この複雑なシステムは、懸濁液の撹拌、基質粉末の添加、及びpHの調整に関して問題を呈する。したがって、本発明の他の目的は、先行技術の欠点なく飲料水をマグネシウムで補う方法を提供することである。
【0005】
本発明の更なる他の目的は、マグネシウムで強化された商業量の飲料水を供給できる方法を提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、マグネシウム濃度は増加し、他のカチオンは低濃度の飲料水を製造するためのシステムを提供することである。
【0007】
本発明のその上更なる目的は、健康促進飲料水を供給するための非加圧で技術的に簡単なシステムを提供することである。
【0008】
本発明の目的はまた、少なくとも500mg/lの重炭酸マグネシウムを含有する飲料水を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的及び利点は、以下説明が進むにつれて明らかになる。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、マグネシウム強化飲料水を製造する方法であって、i)マグネシウム化合物の層を用意する工程と、ii)前記層を通して水流をポンプ移送する工程と、iii)二酸化炭素(CO)を前記水流に注入する工程とを含み、これにより重炭酸マグネシウムの水溶液を得る方法を提供する。本発明による方法は、好ましくは前記水流における電気伝導率を測定する工程を含む。前記層は通常、流通式反応器内に閉じ込められており、この反応器中で前記水流が前記COを溶解し、また更に前記水流は、前記層を通して流れる時に前記マグネシウム化合物を溶解し、この結果、前記重炭酸マグネシウム水溶液が生じる。反応器は、注入口及び排出口が適切に配置されたクロマトグラフィーカラムの形態をとってもよい。本発明による方法の好ましい実施形態では、前記重炭酸マグネシウム水溶液を、前記層を通して再循環させ、ここで、前記水流は前記層、及び更に所望の循環流速を確保するポンプを備える閉回路を規定する。前記回路は、新鮮な水を前記水流に供給する注入口と、前記溶液を前記水流から取り出して回収し、マグネシウム強化飲料水を得る排出口とを備え、ここで、前記注入口及び前記排出口は、前記所望の循環流速より遅い所望の供給流速を確保する1つ又は2つのポンプを更に場合により備える開回路を規定する。前記注入口及び前記排出口は、例えば前記反応器の外側に配置してもよい。前記COは、前記水流中にガスの微分散を確保する注入手段を通してシリンダーから注入され、この注入手段は、水、CO及び前記マグネシウム化合物が、反応して重炭酸マグネシウムを生成するのに必要な化学量論量以上の所望のガス流速を確保する通気孔を備える。過剰量は、例えば少なくとも10%でもよい。前記循環流速は、前記供給流速より、例えば約10倍速い。前記開回路は、他の成分を前記マグネシウム強化飲料水に取り入れる注入口を更に備える。前記他の成分は、例えば塩、健康促進物質、塩類、ミネラル、味又は風味付与物質、又は殺菌剤から成る群より選択されてもよい。重炭酸マグネシウムは、水に対していかなる味又は風味ももたらさないことに留意されたい。前記水流と接触するあらゆる物質は、人間が消費する飲用水との接触が容認できるものとすべきである。本発明の1つの態様において、ナトリウムを水流に取り入れずに、本質的にナトリウムを含まない飲料水を提供し、又は代替として、ナトリウムを約10ppm以下などの低濃度に保つ。本発明の好ましい実施形態では、制御された濃度のマグネシウムを含むマグネシウム強化飲料水を製造する方法であって、i)酸化マグネシウム(MgO)層を用意する工程と、ii)前記MgO層を通して水流をポンプ移送する工程と、iii)二酸化炭素(CO)を前記水流に注入する工程とを含み、これにより制御された濃度で重炭酸マグネシウム水溶液を得る方法を提供する。濃度は、少なくとも0.06g/lでもよい。本発明は、最大250ppmの濃度に至るまでのマグネシウムで強化された飲料水を提供することができる。様々な状況下で、且つ必要に応じて、本発明は、マグネシウム含量が250ppmを超える飲料水を提供することができる。本発明は、水中のマグネシウム含量を任意の値から任意の所望する他の値にまで増やすことができる。例えば、本発明を使用して、マグネシウム約10ppm又は30ppmを含有し、脱イオン水から供給し得る水においてマグネシウム含量を増やすことができ、或いは、本発明を使用して、最大50ppmのマグネシウム又は100ppmのマグネシウム、又は最大130ppmのマグネシウムを含有し、塩分含量が少ない水から供給し得る飲料水を提供することができる。
【0011】
本発明によるマグネシウム強化水中の前記マグネシウム濃度は、少なくとも200ppmの濃度で溶解マグネシウムを含有してもよい。前記溶解マグネシウムは、約250ppmの濃度を有してもよい。
【0012】
本発明は、マグネシウム強化健康促進飲料水を製造するための装置及びシステムを対象とし、この装置及びシステムは、i)水流が流れるマグネシウム化合物層及び所望の循環流速を確保するポンプを備える本質的に閉じた水流回路と、ii)二酸化炭素(CO)を前記水流に取り入れるための注入手段と、iii)新鮮な水を前記水流に供給するための注入口及びマグネシウム強化水を前記水流から取り出すための排出口を備え、更に前記所望の循環流速より遅い所望の供給流速を確保するポンプ移送手段を備える開放流れ回路と、iv)前記マグネシウム化合物の未使用部分を前記層に供給するための手段と、前記水流における電気伝導率を連続的に測定するための伝導率測定器と、v)前記伝導率測定器から伝導率データを受け取り、前記供給流速及び場合により前記循環流速を制御して、前記水流中に所望の溶解マグネシウム量を確保する調整ユニットとを備える。本発明による装置及びシステムは、種々の有用な成分を水性中間体又は最終生成物に添加するための処理手段を備えることができる。このような成分は、中間体又は生成物を殺菌すること、追加の塩類を添加すること、健康促進ミネラル及び塩類を添加すること、所望の味又は風味を生成物に添加することに役立つことがある。本発明の好ましい態様では、本発明の装置は、溶融MgOなどの酸化マグネシウムの層を備える。
【0013】
本発明は、少なくとも10mg/l、好ましくは少なくとも200mg/lのマグネシウムを含む健康促進飲料水を提供する。本発明は、約500mg/l以上のマグネシウムを含むマグネシウム強化飲料水を提供することができる。本発明による飲料水は、重炭酸マグネシウムを30mg/l〜3000mg/lの濃度又はそれを超える濃度で含むことができる。本発明は、マグネシウムが強化されており、場合によりナトリウムイオンを含まず、他の追加的な健康促進塩類を場合により更に含む健康飲料水を提供することができる。このような塩類は、ヨウ素、フッ素、カルシウム及び他の元素を含んでもよい。健康飲料水は、種々の添加剤と共に任意の飲料用手段でパッケージして、健康促進ミネラルウォーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記の及び他の特性及び利点は、以下の実施例を通して、また添付の図面を参照することにより容易に明らかとなる。ここで、
【図1】本発明の一実施形態におけるマグネシウム強化水を製造する際の装置の概略図である。
【図2】本条件下で決定された2つの温度におけるCOの溶解度を示すグラフである。
【図3】温度の関数としてMgOの溶解度を示すグラフである。
【図4】本システムにおける、マグネシウム濃度の関数として伝導率を示すグラフである。図4Aは、水道水に関し、図4Bは、脱イオン水に関する。
【図5】表1を含む図である。
【0015】
[発明の詳細な説明]
人間が消費するための高度マグネシウム強化水は、流通式反応器で、炭化した水(carbonized water)による酸化マグネシウムの溶解を用いて、工業的規模で処理容易な方法で得ることができることが今や見出された。更に、新鮮な水を供給し、生成物を回収する回路に加えて、第2の回路、つまりMgO層を通した水流の急速な再循環を伴う回路がこのシステムに取り入れられれば、溶解プロセスはより効率的になることが判明した。本発明の説明に関わるマグネシウム化合物層、簡潔に言うと層は、好ましくは1200℃を超える温度で酸化マグネシウムを溶融、焼結、又は焼成することにより生成した粒状の酸化マグネシウムの層、又は水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムを含む粒状又は錠剤状の層を意味する。
【0016】
したがって本発明は、マグネシウム強化飲料水を製造するためのシステム及びマグネシウム強化飲料水を製造する方法に関し、該システム及び方法は、マグネシウム化合物層、好ましくはMgO層を通したマグネシウム含有水の再循環を伴う閉回路と、閉回路と接続しており、システムへの新鮮な水の流入及びシステムからのマグネシウム強化水の回収を伴う開回路との少なくとも2つの回路を備える。これを説明するために、閉曲線を含む質量流に関する場合は「閉回路」という用語が使用されるが、他のケースでは「開回路」という用語が使用される。前記閉回路に接続された別の回路は、シリンダーからの水流への二酸化炭素の流れを伴い、この二酸化炭素の流れは、注入口を経由して水流へ、好ましくは、層付近に設けられた通気孔を経由する。この全プロセスは、回路内の流速を調整するためにフィードバックすることができる電気伝導率の測定を利用して自動化することができる。
【0017】
更なる態様では、本発明はマグネシウムで強化された飲料水を提供する。米国の都市の水道水に含まれているマグネシウム含量は、通常1〜10mg/lの間(1〜10ppm)であり、高くても、30ppmに満たないことに留意されたい。米国及び欧州のボトル入り水のマグネシウム含量は、決して130ppmを上回ることはない[Azoulay A.et al.:J.Intern.Med.16(2001)168−75]。本発明は、濃度が10ppm〜200ppmであるマグネシウムを含有する飲料水を提供することができる。別の態様では、本発明は200ppmより高い濃度のマグネシウムを含有する飲料水を提供することができる。好ましい実施形態では、本発明はマグネシウム含量が150〜250ppmである健康促進飲料水を提供する。他の好ましい実施形態では、本発明は200〜300ppmのマグネシウムを含むマグネシウム豊富な水を提供する。更なる他の好ましい実施形態では、本発明は濃度が150〜300ppmのマグネシウムを含み、カルシウムを場合により含み、低含量のナトリウムを場合により更に含む飲料水を提供する。本明細書では、50ppmに満たないナトリウム含量を、低含量のナトリウムとする。本発明によれば、カルシウムをマグネシウム強化水に取り入れてもよく、又はカルシウムは水をマグネシウムで強化する以前から存在してもよい。本発明の飲料水では、カルシウムは米国の水道水と同様に1〜100ppmの濃度、又はいくつかのミネラルウォーターと同様に100〜600の濃度で存在してもよい。本発明は、マグネシウム、及びカルシウム、鉄、カリウム、ヨウ素、フッ素、亜鉛、又はリン酸塩などのアニオンから選択される他の元素で強化された健康促進型飲料水を供給することができる。水は、いかなるタイプの飲料用手段でもパッケージが可能であり、製品はビタミンで強化されることもあり得る。
【0018】
本発明の方法及び装置は、流通式反応器での酸化マグネシウムの溶解を含む。好ましい実施形態では、該反応器はMgOの層を備え、この層を通して炭化水流が流れる。好ましい実施形態では、水流は第1の流れ回路(閉回路)でMgO層を通してポンプ移送され循環し、第2の流れ回路(開回路)で新鮮な水を水流に供給し、そこから回収される。この場合、第1の流れ回路を通る流速は、第2の流れ回路を通る速度よりも速い。試行実験で試験した一構成では、流速の比率は10であった。
【0019】
本発明は、以下の実施例で更に説明及び例示される。
【0020】
[実施例]
材料及び設備
脱イオン水を使用した。いくつかの実演では水道水を使用した。1mmの篩上で篩分けた溶融MgOを使用した。
【0021】
直径10cm、高さ150cmのPVCカラムに、カラム内で液体の滞留時間の影響を評価できるように5つのタップを異なった高さで取り付けた。カラムに3.5kgの溶融MgOを32cmの高さまで充填した。カラムを通して、様々な速度で水を供給した。シリンダーからCOを供給し、流れをバルブで制御し、カラムの底にCOのパイプの注入口を設けた。リサイクル流により、溶液中のマグネシウムの収率が増加した。使用したシステムの概略図を図1に示す。
【0022】
伝導率を有利に使用して、溶液中のマグネシウム濃度を決定することができる(図4)。この試験から、カラムを通る水の流速は6〜48l/hの範囲が適当であることが判明した。30l/hが通常、適用された。リサイクル流により、MgOの溶解速度は増加した。その速度は通常は約200l/hであった。CO/水の比率が増加すると、マグネシウムの溶解速度が限界値にまで上昇したが、一方で、過剰COを不必要に失った。Mg(O)を24l/hでの水の供給に伴う250ppmの濃度に溶解するための最低CO量は、約12l/hのCOであった(図5の表も参照されたい)。通常は、12l/h、つまり化学量論を近似的に僅かに上回る程度の量を供給した。試験の開始時には、固体の高さは、約30cmで一定に保たれていた。最後の長時間試験では、固体の高さは、反応の進行に伴って最初の約半分の高さになるまで減少した。
【0023】
大気圧よりも大きな圧力でCOを供給すれば、マグネシウムの溶解速度が上昇するが、COの圧力によるマグネシウム濃度の増加は漸近的であり、COの消費効率の低下を伴う。しかしながら、本発明のシステムでは、COのより高い圧力下でもマグネシウムによる水の強化が可能である。
【0024】
プロセスの制御
伝導率を測定した。伝導率を測定することにより、水の流れ、したがって滞留時間も制御した。図2に示すように、水中のCOの溶解度はCOの圧力と共に増加し、温度と共に減少する。MgOは、以下の式に従って溶解する。
MgO+2CO+HO→Mg(HCO (1)
マグネシウム濃度と伝導率との間の直線関係は、図4に示すように求められた。図中、水道水(マグネシウムの追加なしで、伝導率650μS)を用いた較正及び脱イオン水を用いた較正が示されており、測定値は本プロセスに関係する範囲、つまりマグネシウム200ppm付近に対して示されている。伝導率に及ぼす温度の影響は、約1.8%/1°Cであった。この影響は測定結果の較正補正により相殺された。
【0025】
以下のパラメータは、マグネシウム強化水の生成速度の決定に関して重要である。
水の流れ:水の流れは、滞留時間に関係する。これは支配パラメータとして現れる。
リサイクル:リサイクル流の導入により伝導率の測定及びその結果としてプロセスを安定させることが可能となった。マグネシウム濃度を250ppmに到達させるために、大規模なリサイクル(約10:1の比率、つまりリサイクル流速と新鮮な水の供給流速との比率)が更に要求された。
CO/水の比率は、式(1)で示す反応の化学量論に対してCOが僅かに過剰でなければならない。COを更に増加させても、効果は小さかった。
温度:本実施例は、温度範囲が10〜25℃の水に関する。所定のCO圧力におけるMgOの溶解度は、温度と共に減少するが、通常の稼働条件下では、いずれにしてもCOによる飽和には至ることはない。これらの条件下では、温度の影響により、より高い温度では、より多量のマグネシウム、つまり1℃につき約3.6%以上が溶解した。伝導率に対する温度の効果が、較正測定システムにより「相殺」されたと推定された。
カラム内の固体の高さ:本パラメータは滞留時間に関係するが、流体力学的挙動にも影響する。HCOとマグネシウムとの間の重量比(表1を参照されたい)約5は、理論上のモル比率2(上記の式(1)を参照されたい)と良く一致している。
【0026】
本発明の長期稼働
温度及び流量が一定ではない条件下で上記のパラメータを監視することにより本発明のロバスト性を評価した。リサイクルを200l/hで一定に保った。温度の効果を補正した後に算出されたマグネシウム濃度は比較的安定して、約250ppmであった。
【0027】
補正された伝導率は極めて安定な状態を保った。伝導率は、水の流れ及びその結果として滞留時間を制御し、これらを一定に保った。伝導率が1960±20μSの範囲である場合(温度は約27℃で安定していた)、測定されたマグネシウム濃度は、280±3ppmであった。
【0028】
この試験は、リサイクルを閉じることにより継続した。水の流速を低下させて、低レベルのMgO(供給されたMgOの約半分が溶解した)を相殺した。本プロセスは、主に滞留時間により制御されることが確認された。リサイクルを閉じれば、流れを大きく減らす必要があった。
【0029】
滞留時間と再循環との両方が、本プロセスに対して重要な効果を及ぼす。マグネシウムの溶解速度は、リサイクルがなければ非常に遅く、再循環はシステム内で混乱を増大させ、その結果、固体の表面からの拡散速度も増加するように思われる。更に、リサイクル流が増加しても、MgOの溶解速度は改善しなかった。CO/水が増加しても、影響は小さく、本プロセスの実用設計では、CO流を直接水流に関連付けてもよい。温度の効果は、温度較正を伴う伝導率測定で効率的に制御することにより「相殺」できる。
【0030】
最後の長時間試験の終了時には、MgOの重量は最初の重量の半分であった。本システムにおいて、ストークスの方程式(F=6πrηv)を使用して、流れが同伴できる粒子の最大サイズは、本システムにおいて、200l/hにおける球状粒子の直径で約70μmであると見積もられた。これは、初期サイズ約1000μmに対して、99.9%を超えるMgOが同伴前に溶解できることを意味しよう。原材料中の不溶性不純物の濃度は、極めて低い。流速を急激に上げることで、カラムの出口で研磨フィルタ上にある不純物を除去できる。
【0031】
この予備試験では、約30cmの高さまで充填された直径10cmのカラムを使用したが、更に1.2mの高さまで充填されたカラムも検討した。本プロセスの実現可能性は、次のように証明された。主要なパラメータは、カラム中の水の滞留時間であり、リサイクル流が必要である(本研究では、リサイクルと供給との比率は10:1)のに対し、CO2/水の比率の影響はより小さくなり、温度の上昇は約3.5%/1°Cの増加というMgO溶解の増加をもたらす。工業プロセスへのスケールアップの基盤として、より大きなユニットの設計は、当業者が行うことができる。
【0032】
本発明をいくつかの具体例を挙げて説明してきたが、多くの変更形態及び変形形態が可能である。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載したようなもの以外にも実現できると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム強化飲料水を製造する方法であって、
i)マグネシウム化合物層を用意する工程と、
ii)水流を前記層を通してポンプ移送する工程と、
iii)二酸化炭素(CO)を前記水流に注入する工程と
を含み、
これにより重炭酸マグネシウム水溶液を得る、方法。
【請求項2】
前記水流における電気伝導率を測定する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム化合物がMgOであり、前記MgO層が、流通式反応器内に閉じ込められており、前記水流が、前記層を通して流れる時に、前記COを溶解し更に前記マグネシウム化合物も溶解して、前記重炭酸マグネシウム溶液を生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記重炭酸マグネシウム溶液が前記層を通して循環され、前記水流は、前記層及び更に所望の循環流速を確保するポンプを備える閉回路を規定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記回路が、新鮮な水を前記水流に供給する注入口と、前記溶液を前記水流から取り出して回収し、マグネシウム強化飲料水を得る排出口とを備え、前記注入口及び前記排出口は、前記所望の循環流速よりも遅い所望の供給流速を確保する1つ又は2つのポンプを更に場合により備える開回路を規定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記COが、前記水流中にガスの微分散を確保する注入手段を通してシリンダーから注入され、前記注入手段は、水、CO及び前記マグネシウム化合物が、反応して重炭酸マグネシウムを生成するのに必要な化学量論量以上の所望のガス流速を確保する通気孔を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記循環流速が、前記供給流速より約10倍速い、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記開回路が、別の成分を前記マグネシウム強化飲料水に取り入れる注入口を更に備える、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記成分が、塩、ミネラル、健康促進物質、及び味又は風味付与物質から成る群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
使用する全ての原材料は、人間が消費する飲用水との接触が容認でき、更に本質的にナトリウムを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも10ppm濃度のマグネシウムを含むマグネシウム強化飲料水を製造する請求項1に記載の方法であって、
i)酸化マグネシウム(MgO)の層を用意する工程と、
ii)水流を前記MgO層を通してポンプ移送する工程と、
iii)二酸化炭素(CO)を前記水流に注入する工程と
を含み、
これにより少なくとも0.006g/lの濃度の重炭酸マグネシウム水溶液を得る方法。
【請求項12】
前記マグネシウム強化水が、制御されたマグネシウム濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
マグネシウム強化飲料水を製造するための装置であって、
i)水流が通過して流れるマグネシウム化合物層及び所望の循環流速を確保するポンプを備える本質的に閉じた水流回路と、
ii)二酸化炭素(CO)を前記水流に取り入れるための注入手段と、
iii)新鮮な水を前記水流に供給するための注入口及びマグネシウム強化水を前記水流から取り出すための排出口を備え、更に前記所望の循環流速より遅い所望の供給流速を確保するポンプ移送手段を備える開放流れ回路と、
iv)前記マグネシウム化合物の未使用部分を前記層に供給するための手段と、
v)前記水流における電気伝導率を、連続して測定するための伝導率測定器と、
vi)前記伝導率測定器から伝導率データを受け取り、前記供給流速及び場合により前記循環流速を管理して、前記水流中に所望の溶解マグネシウム量を確保する調整ユニットと
を備える装置。
【請求項14】
マグネシウム強化健康促進飲料水を製造するための請求項13に記載の装置であって、前記層が酸化マグネシウムを含む装置。
【請求項15】
少なくとも10mg/l、好ましくは少なくとも200mg/lのマグネシウムを含む健康促進飲料水。
【請求項16】
マグネシウムが強化されており、本質的にナトリウムを含まず、他の追加的な健康促進塩類を場合により更に含む、請求項15に記載の飲料水。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−508126(P2013−508126A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533739(P2012−533739)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000843
【国際公開番号】WO2011/045795
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512092586)デッド シー ブロミン カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】