説明

マグネタイト粒子粉末およびその製造方法

【課題】
優れた分散性と優れた疎水性を有し、かつ凝集性の低いマグネタイト粒子粉末を提供する。
【解決手段】
マグネタイト粒子粉末の粒子表面が、1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤で被覆されている、平均粒径0.05〜1μmのマグネタイト粒子粉末であって、該マグネタイト粒子粉末とエタノール水溶液の混合物のpH変化値が下記式(1)に示される値で0.1以上1.5以下であることを特徴とするマグネタイト粒子粉末。
pH変化値 = |A|+|B|…(1)
A:pH5のエタノール水溶液とマグネタイト粒子粉末を混合した時のpHの変化値
B:pH12のエタノール水溶液とマグネタイト粒子粉末を混合した時のpHの変化値

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた疎水性と分散性を有するマグネタイト粒子粉末、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネタイト粒子粉末は、静電複写磁性トナー用材料粉、静電潜像現像用キャリア用材料粉等において汎用されているが、近年の電子写真技術の発達により、特にデジタル技術を用いた複写機、プリンターが急速に発達し、要求される特性がより高度なものになってきている。
【0003】
マグネタイト粒子粉末は、粒子表面に水酸基や吸着水分が存在しているため、一般に親水性であり、親油性が乏しく、有機媒体中への分散や樹脂中への練り込みが困難なため、粒子表面が疎水化され、有機媒体および樹脂中での分散に優れたマグネタイト粒子粉末が要求されている。
【0004】
更に、近年トナーの製造プロセスは、これまでの熱混練による乾式法に代わり、有機溶媒中等での化学的な反応による湿式法が注目されてきている。湿式法により得られるケミカルトナーは、乾式法により得られる混練トナーと比較し、強い分散力により処理されないため、マグネタイト粒子をトナー中に均一分散させることが容易ではない。
【0005】
一方、近年環境規制が厳しくなってきており、マグネタイト粒子粉末の製造プロセスにおいても低環境負荷で、有害なものを排出しないことが要求されている。
【0006】
従来、親水性のマグネタイト粒子表面を疎水化する手法として、マグネタイト粒子粉末と疎水化処理剤とを湿式又は乾式にて混合した後、加熱処理する方法が一般的に知られている。
【0007】
乾式にてマグネタイト粒子表面を疎水化する手法として、マグネタイト粒子粉末と疎水化処理剤を原材料として、ミキサー型混合機又はホイール型混合機等を用いる方法が開示されている(特許文献1、2参照)。しかし、マグネタイト粒子粉末は凝集性が強く、単純な乾式混合法では、疎水化処理剤が凝集粒子表面に被覆されやすく、一様な処理が困難であった。従って、そのような処理粉末を用いて製造されたトナーは、含有されるマグネタイト粒子の一部が粗大な凝集状態で存在し、トナー中での分散性が悪く、画像特性に悪影響を与えていた。
【0008】
また、湿式にてマグネタイト粒子表面を疎水化する手法として、有機溶媒中にマグネタイト粒子粉末及び疎水化処理剤を混合、分散、ろ過後、熱処理を行う方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0009】
さらに、湿式にてマグネタイト粒子表面を疎水化する手法として、マグネタイト粒子粉末を水中に分散後、疎水化処理剤と混合し、ろ過後、熱処理を行う方法が開示されている(特許文献4、5参照)。
【0010】
湿式にてマグネタイト粒子表面を疎水化する場合、マグネタイト粒子は磁気凝集性が強く、分散媒中において単純な攪拌等を行っても、良好な分散状態を得ることは困難である。従って、疎水化処理剤は、ある程度凝集した二次粒子上に被覆されることを免れず、やはり一様な処理が困難であった。
【0011】
また、特許文献3の様な有機溶剤を用いた表面処理方法では、有機溶媒の廃液処理が必要であり、且つ熱処理時に爆発、火災の発生の危険性を含んでいる。さらに特許文献4、5の様な水媒体中での表面処理方法においても、マグネタイト粒子粉末表面と未吸着、未反応の処理剤が、廃液中に流れ出てしまうため、廃液処理が必要となり、工業的に好ましくない。
【0012】
【特許文献1】特開平03−221965号公報
【特許文献2】特開2001−312095号公報
【特許文献3】特開昭59−200256号公報
【特許文献4】特開平11−314919号公報
【特許文献5】特開平2002−72546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消しうるマグネタイト粒子粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、マグネタイト粒子粉末が特定の分散媒中で、特定のpH変化量を示すことにより、良好な疎水性を呈することを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明のマグネタイト粒子粉末は、構成される粒子の表面が、1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤で被覆されている、平均粒径0.05〜1μmのマグネタイト粒子粉末であって、該マグネタイト粒子粉末とエタノール水溶液の混合物のpH変化値が式1に示される値で0.1以上1.5以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマグネタイト粒子粉末は、特定の分散媒中で、特定のpH変化量を示すことにより、良好な疎水性を呈しており、特に樹脂中での分散性に優れたケミカルトナー製造に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明でいうマグネタイト粒子とは、好ましくはマグネタイト(Fe3 4 )を主成分とするものであって、中間組成のベルトライド化合物(FeOx・Fe2
3 、0<X<1)、及びこれらの単独又は複合化合物にFe以外のSi、Al、Mn、Ni、Zn、Cu、Mg、Ti、Co、Zr、W、Mo、P等を少なくとも1種以上含むスピネルフェライト粒子等を必要な特性に応じて選択したものも包含される。
【0018】
本発明のマグネタイト粒子粉末は、粒子表面が、1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤で被覆されている、平均粒径0.05〜1μmのマグネタイト粒子粉末であって、該マグネタイト粒子粉末とエタノール水溶液の混合物のpH変化値が下記式(1)に示される値で0.1以上1.5以下であることを特徴とする。
pH変化値 = |A|+|B|…(1)
A:pH5のエタノール水溶液とマグネタイト粒子粉末を混合した時のpHの変化値
B:pH12のエタノール水溶液とマグネタイト粒子粉末を混合した時のpHの変化値
【0019】
上記pH変化値は、カップリング剤による疎水化のレベルを示す指標であり、この数値が大きいほど、粒子レベルの疎水化が不十分である。従って、粒子表面のカップリング剤被覆が不足しており、マグネタイト粒子表面が露出していること等が把握できる。
【0020】
このpH変化値が1.5を超える場合、疎水性が低く、極性の低い有機モノマー中での分散安定性が悪くなるため、特にケミカルトナーの製造の際、マグネタイト粒子粉末の分散性が悪化し、好ましくない。
なお、このpH変化値は低いほど好ましいのであるが、0.1未満とすることはカップリング剤起因のpH変動が起こるため事実上困難である。
【0021】
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、粒子表面が、1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤で被覆されていることが重要である。
【0022】
上記カップリング剤は、疎水化処理剤として用いられるもので、環境負荷の高い有機溶媒の廃液処理の回避や、熱処理時に爆発、火災の発生の危険性を減じるため、有機溶媒を含有しないものが好ましい。
【0023】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0024】
アルミネートカップリング剤としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、メチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセテートアルミニウムジブチレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0025】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等を挙げることができる。
【0026】
上記カップリング剤の被覆量は、1質量%以上10質量%以下が好ましい。カップリング剤の被覆量が1質量%未満であると、カップリング剤処理されていないマグネタイト粒子表面が露出するため、疎水性が不十分となり、好ましくない。また、カップリング剤の被覆量が10質量%を超えると、マグネタイト粒子表面と反応が出来ないカップリング剤が多くなり、カップリング剤の親水部が疎水性を阻害するため好ましくない。
【0027】
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、粒子表面が、ケイ素、アルミニウム、チタンの1種又は2種以上の化合物で被覆されていても良い。その理由は、カップリング剤との反応性は、マグネタイトを含む酸化鉄に対してよりもケイ素、アルミニウム、チタンからなる水酸化物、酸化物に対しての方が良好だからである。
【0028】
上記元素化合物の含有量は、元素換算量で、0.05〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜3質量%が好ましい。0.05質量%未満であると、含有させる効果が期待できず、また、5質量%を超えると、マグネタイト粒子粉末に要求されるその他特性を損なったり、元素化合物がマグネタイト粒子表面から脱落するおそれがあり、好ましくない。
【0029】
また、本発明のマグネタイト粒子粉末中のマグネタイト粒子の平均粒径は、ケミカルトナー製造に適した0.05〜1μmであると良い。また、昨今のケミカルトナーの平均粒径は微細化が進んでいるので、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0030】
また、本発明のマグネタイト粒子粉末は、スチレンモノマー中に懸濁させて、セルロース製の開口径1.2μmのメンブランフィルターを通した際に、全ての粒子が通過することが好ましい。上記フィルターを通過出来ないものは、粒子の凝集状態が著しく、特にケミカルトナーの製造の際、マグネタイト粒子粉末の分散性が悪化し、好ましくない。
【0031】
次に、本発明のマグネタイト粒子粉末の好ましい製造方法について述べる。
本発明のマグネタイト粒子粉末は、湿式反応後、洗浄、ろ過にて得られた固形分濃度60%以上90%以下のマグネタイトケーキに、1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤を加え、ケーキ粘度10kg/m・sec以上10kg/m・sec以下の条件下で、混練を行うことにより製造できる。
【0032】
上記製造方法における出発原料は、湿式反応後、洗浄、ろ過にて得られたマグネタイトケーキを使用する。これは、湿式反応後の後処理として、乾燥工程等を経たものを用いて、再度ケーキ化後、カップリング剤処理したものや、前述の乾式法にてカップリング剤処理したものでは、乾燥での水架橋により粒子が凝集を生じ、再分散させることが困難となり、粒子表面に均一にカップリング剤処理を行えないからである。なお、上記湿式反応については、公知の鉄塩水溶液をアルカリ中和後、酸素含有ガスにて酸化する製法が一般的である。
【0033】
また、混練にてカップリング剤処理を行うが、その際のケーキ粘度は、10kg/m・sec以上10kg/m・sec以下とする。10kg/m・sec未満であると、混練機の剪断力が粒子の分散に伝わらないのみならず、カップリング剤が粒子と結合する前に粒子の再凝集が起こりやすく、均一にカップリング剤処理できない。また、ケーキ粘度が10kg/m・sec以上であると、凝集粒子の分散が困難となり、カップリング剤がゆきわたらないため、均一に処理されない。
【0034】
また、混練にてカップリング剤処理を行うマグネタイトケーキの固形分濃度は、60%以上90%以下、好ましくは70%以上85%以下とする。固形分濃度が60%未満であると、混練機の剪断力が分散してしまい、均一なカップリング剤処理ができず、かつ後工程での乾燥での負荷が大きいため、工業的に好ましくない。また、90%を超えると、凝集粒子を分散させるのが困難となり、同じく均一にカップリング剤処理できない。固形分濃度が高い状態で、マグネタイト粒子粉末とカップリング剤の混練を行うことにより、ろ過等による固液分離工程が不要となり、未吸着、未反応のカップリング剤が、廃液中に流れ出ることが無くなるため、廃液処理が不要となる。
【0035】
また、混練の際に用いる混練装置は、剪断作用を有す装置を用いるのが好適である。固液分離したマグネタイトケーキを混練機の剪断作用により、粒子一粒一粒を分散させながらカップリング剤を添加することにより、カップリング剤が均一に混合されると共に、混練機特有の剪断によるメカノケミカル作用で、カップリング剤とマグネタイト粒子の反応が促進され、均一なカップリング剤処理が出来る。
【0036】
上記剪断作用のある混練機としては、ブレード型混練機、ロール型混練機等の固形分濃度の高い混合物に剪断を加えることのできる装置が好ましい。高粘度の状態で、剪断を与えながらカップリング剤を添加することにより、粒子間にカップリング剤が行きわたり、均一に処理されるからである。
【0037】
上記ブレード型混練機としては、万能混合機、プラネタリーミキサー、トリミックス、TKコンビミックス、TKハイビスミックス、TKハイビスディスパーミックス等がある。上記ロール型混練機としては、エクスルーダー、ニーダー、3本ロール等がある。
【0038】
マグネタイト粒子粉末とカップリング剤とを剪断力のある混練機で処理した後、熱処理を行う。熱処理は、混練ケーキの水分除去とカップリング反応を完結させるために行うものであり、処理温度は40℃以上300℃以下が好ましい。熱処理温度が、40℃未満であると水分が残存する事があり、またカップリング反応も完結しないため、高い疎水性を得る事が出来ず、好ましくない。また、300℃を超えるとカップリング剤の分解が起こることがあり、同じく、高い疎水性を得ることが困難となる。また、熱処理を行う際は、40℃以上300℃以下の範囲で温度変更をしながら段階的に行っても良い。
【0039】
本発明のマグネタイト粒子粉末製造に用いられるマグネタイトケーキ、及びマグネタイト粒子粉末の特性評価は以下のとおり行った。
【0040】
(a)粒子形状及び平均粒径
走査型電子顕微鏡を用い、倍率20000倍にて粒子形状観察、及び200個の粒子についてフェレ径の測定を行い、平均粒径を求めた。
【0041】
(b)ケイ素、アルミニウム含有分析
試料を溶解し、ICPにて測定した。
【0042】
(c)固形分濃度
マグネタイトケーキを50℃で10時間乾燥させた時の乾燥前後の重量変化から、固形分濃度を求めた。
【0043】
(d)カーボン分析
マグネタイト粒子へのカップリング剤の被覆程度をみるために、カップリング剤処理を施したマグネタイト粒子粉末中のカーボンを分析した。試料中のカーボン量の測定は、炭素分析装置(堀場製作所製、EMIA−110)を用いて行った。
【0044】
(e)フィルター通過性
試料0.2gとスチレンモノマー10gを試験管にとり、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、SONIFIER450)で1分間処理を行う。得られた懸濁液を直径25mm、目開き1.2μmのメンブランフィルター(ミリポア社製)にて加圧しながら通過させる。このとき、ろ液が透明にならず、懸濁液が全量通過したものを○とし、それ以外を×とした。
【0045】
(f)pH変化値
水100質量部の中に硝酸カリウム1.01質量部と0.1Nの硝酸1質量部を入れ、溶解、混合し、そこにエタノール118質量部を入れ混合して、調製液(1)とする。この調製液(1)100gに撹拌を行いながら、0.1Nの水酸化カリウムを0.4mL滴下し、pH5程度の調製液(2)を作製する。得られた調製液(2)に試料を1.6g投入、撹拌し、調製液(3)とする。
また、調製液(1)に0.1Nの水酸化カリウムを1.0mL滴下し、pH12程度の調製液(4)を作製する。同様に得られた調製液(4)に試料を1.6g投入、撹拌し、調製液(5)とする。
得られた調製液(2)〜(5)のpHを計測し、下記式(1)にて求まる値をpH変化値とする。この値は、0に近いほど疎水性が高いことを示す(疎水性が高いと、調製液が試料の疎水性被覆より内側に浸透しにくく、pHの変動が小さい)。
pH変化値=|A|+|B|…(1)
A:調製液(2)と(3)のpHの変化値
B:調製液(4)と(5)のpHの変化値
C:調製液(4)のpH
【0046】
(g)分散性
試料と樹脂との混練物中のムラ;試料と樹脂(三洋化成社製TB−1000F)を用いて質量比1:1でヘンシェルミキサーを用いて混合し、2軸のニーダーで180℃、1分間溶融混練した後、ローラーを用いて板状に成型、冷却した。この板状の成型物を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡にて観察し(倍率5,000倍)、切断面中の酸化鉄粒子が均一に分布しているものを○、少し分布に偏りがあるものを△、分布の偏りが著しいものを×として評価した。
【実施例】
【0047】
以下、実施例等により本発明を具体的に説明する。
〔マグネタイトケーキ製造例1〕
鉄塩水溶液をアルカリ中和後、酸素含有ガスにて酸化する公知の製法で行うことにより、マグネタイト粒子を含むスラリーを得た。このスラリーをフィルタープレスにて洗浄、ろ過し、更にエアブローを20分間行うことにより、固形分濃度75質量%であるマグネタイトケーキを得た。
【0048】
〔マグネタイトケーキ製造例2〕
エアブロー時間を60分間とした以外は、マグネタイトケーキ製造例1と同様にしてマグネタイトケーキを得た。得られたマグネタイトケーキの固形分濃度は、80質量%であった。
【0049】
〔マグネタイトケーキ製造例3〕
エアブロー時間を1分間とした以外は、マグネタイトケーキ製造例1と同様にしてマグネタイトケーキを得た。得られたマグネタイトケーキの固形分濃度は、64質量%であった。
【0050】
〔マグネタイトケーキ製造例4〕
エアブローを行わなかった以外は、マグネタイトケーキ製造例1と同様にしてマグネタイトケーキを得た。得られたマグネタイトケーキの固形分濃度は、49質量%であった。
【0051】
〔マグネタイトケーキ製造例5〕
湿式反応終了時にSi換算でマグネタイト粒子に対して0.2wt%となる様に珪酸ソーダを添加した以外は、マグネタイトケーキ製造例1と同様にしてマグネタイトケーキを得た。得られたマグネタイトケーキの固形分濃度は、74質量%であった。
【0052】
〔マグネタイトケーキ製造例6〕
湿式反応後のスラリーに、Al換算でマグネタイト粒子に対して0.2wt%となる様、硫酸アルミニウム水溶液を混合し、その後pHを6に調整して反応を終了させた以外は、マグネタイトケーキ製造例1と同様にしてマグネタイトケーキを得た。得られたマグネタイトケーキの固形分濃度は、75質量%であった。
【0053】
得られた製造例のマグネタイトケーキの特性を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
〔実施例1〕
製造例1で得られたマグネタイトケーキ100質量部とマグネタイト固形分に対して2.7質量%のデシルトリメトキシシランをハイビスミックス(特殊機化工業社製)で、50℃に加温しながら、容器を密閉した状態で2時間混練した。得られた混練物を50℃で10時間、90℃で2時間熱処理した後、粉砕し、粒子表面が疎水化されたマグネタイト粒子粉末を得た。混練処理の際のマグネタイトケーキの粘度は、VISCOMETETER、BH型(TOKIMEC社製)、測定用ローターNo7を用いて、回転数2rpmにて測定し、500kg/m・secに維持して処理を行った。
【0056】
〔実施例2〕
製造例2で得られたマグネタイトケーキを用い、混練中の粘度を1980kg/m・secに維持して処理を行った以外は、実施例1と同様に行った。
【0057】
〔実施例3〕
製造例3で得られたマグネタイトケーキを用い、混練中の粘度を120kg/m・secに維持して処理を行った以外は、実施例1と同様に行った。
【0058】
〔実施例4〕
カップリング剤をオクチルトリエトキシシランとした以外は、実施例1と同様に行った。
【0059】
〔実施例5〕
製造例5で得られたマグネタイトケーキを用い、混練中の粘度を520kg/m・secに維持して処理を行った以外は、実施例1と同様に行った。
【0060】
〔実施例6〕
製造例6で得られたマグネタイトケーキを用い、混練中の粘度を540kg/m・secに維持して処理を行った以外は、実施例1と同様に行った。
【0061】
〔比較例1〕
製造例1にて得られたマグネタイトケーキを乾燥、粉砕し、マグネタイト粒子粉末を得た。
【0062】
〔比較例2〕
製造例4で得られたマグネタイトケーキを用い、混練中の粘度を5kg/m・secに維持して処理を行った以外は、実施例1と同様に行った。なお、混練処理の際のマグネタイトケーキの粘度は、VISCOMETETER、BH型(TOKIMEC社製)、測定用ローターNo4を用いて、回転数10rpmにて測定した。
【0063】
〔比較例3〕
デシルトリメトキシシランの添加量をマグネタイト固形分に対して0.8質量%とした他は、実施例1と同様に行った。
【0064】
〔比較例4〕
製造例1のマグネタイトケーキ100質量部に相当する比較例1のマグネタイト粒子粉末に、マグネタイト固形分に対して2.7質量%のデシルトリメトキシシランを投入し、ヘンシェルミキサー、FM20B型(三井三池化工機株式会社製)にて50℃に加温しながら、回転数2000rpmで30分間処理した。90℃で2時間熱処理した後、粉砕し、マグネタイト粒子粉末を得た。
【0065】
〔比較例5〕
製造例1で得られた含水マグネタイトケーキ100質量部に水650質量部を加え、汎用の撹拌機にてスラリー化した。そこにマグネタイト固形分に対して2.7質量%のデシルトリメトキシシランを加え50℃に加温しながら、2時間混合した。得られた表面処理スラリーを濾紙にて固液分離し、50℃で10時間、90℃で2時間熱処理した後、粉砕し、マグネタイト粒子粉末を得た。
【0066】
〔比較例6〕
製造例1のマグネタイトケーキ100質量部に相当する比較例1のマグネタイト粒子粉末に、マグネタイト固形分に対して2.7質量%のデシルトリメトキシシランと製造例1のマグネタイトケーキの固形分濃度となるような相当量の水を投入し、実施例1と同様の混練処理、及び後処理を行い、マグネタイト粒子粉末を得た。
【0067】
〔比較例7〕
水をトルエンに変えた以外は、比較例6と同様にして、マグネタイト粒子粉末を得た。
【0068】
上記の製造条件を表2に、得られたマグネタイト粒子粉末の特性を表3に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
表3を見て分かるように、実施例のマグネタイト粒子粉末は、pH変化値が十分低いことから、粒子表面の疎水化が十分に行われており、その結果、分散性に非常に優れているものである。それに加え、フィルター通過性も良好で、凝集も非常に小さいことがうかがえる。
【0072】
それに比べ、比較例のマグネタイト粒子粉末は、pH変化値が高く、粒子表面の疎水化が不十分で、分散性に劣るものである。フィルター通過性も不良で、粒子の凝集が著しかった。
【0073】
本発明のマグネタイト粒子粉末は、特定の分散媒中で、特定のpH変化量を示すことにより、良好な疎水性を呈しており、特に樹脂中での分散性に優れたケミカルトナー製造に好適である。













【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネタイト粒子粉末の粒子表面が、1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤で被覆されている、平均粒径0.05〜1μmのマグネタイト粒子粉末であって、該マグネタイト粒子粉末とエタノール水溶液の混合物のpH変化値が下記式(1)に示される値で0.1以上1.5以下であることを特徴とするマグネタイト粒子粉末。
pH変化値 = |A|+|B|…(1)
A:pH5のエタノール水溶液とマグネタイト粒子粉末を混合した時のpHの変化値
B:pH12のエタノール水溶液とマグネタイト粒子粉末を混合した時のpHの変化値
【請求項2】
スチレンモノマー中に懸濁させて、セルロース製の開口径1.2μmのメンブランフィルターを通した際に、全ての粒子が通過することを特徴とする請求項1に記載されたマグネタイト粒子粉末。
【請求項3】
マグネタイトに対する1種又は2種以上のケイ素、アルミニウム、またはチタン含有のカップリング剤の被覆量が、1質量%以上10質量%以下である事を特徴とする請求項1乃至2に記載のマグネタイト粒子粉末。
【請求項4】
マグネタイト粒子粉末の粒子表面がケイ素、アルミニウム、チタンの1種又は2種以上の化合物からなる中間被覆層を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載のマグネタイト粒子粉末。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載のマグネタイト粒子粉末を用いた黒色磁性トナー。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のマグネタイト粒子粉末を用いた磁性キャリア。





















【公開番号】特開2006−232578(P2006−232578A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46334(P2005−46334)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】