マグネトロン駆動用電源
【課題】マグネトロンの温度が上昇しても常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないマグネトロン駆動用電源を提供することを目的としている。
【解決手段】インバータ回路4の入力電流を入力電流検出部12で検出し、目標波形発生部14の目標波形となるようにパルス変調部16で調整して半導体スイッチ素子3を駆動するようにしたものである。これにより、マグネトロン7の温度変化によるマグネトロン7の発振開始電圧の変化や、マグネトロン7の種類に起因する発振開始電圧の差異によらず、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【解決手段】インバータ回路4の入力電流を入力電流検出部12で検出し、目標波形発生部14の目標波形となるようにパルス変調部16で調整して半導体スイッチ素子3を駆動するようにしたものである。これにより、マグネトロン7の温度変化によるマグネトロン7の発振開始電圧の変化や、マグネトロン7の種類に起因する発振開始電圧の差異によらず、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどのマグネトロンを負荷とするマグネトロン駆動用電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネトロン駆動用電源としては、次のような構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、交流である商用電源を一旦直流電圧に変換し、この直流電圧を半導体スイッチ素子のオンオフによってインバータ回路が高圧トランスの1次巻線に高周波電圧を発生させ、高圧トランスは2次巻線に高周波高電圧を励起する。この高周波高電圧は高圧整流回路によって直流高電圧に整流され、マグネトロンに印加される。マグネトロンはこの直流高電圧で駆動され、2.45GHzの電波を発生するものである。
【特許文献1】特開平7−176375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、マグネトロンが連続動作などによって温度上昇した場合は、電流波形にひずみが生じてしまう。これは、マグネトロンの発振開始電圧が温度特性をもっていることに起因するものであり、マグネトロンの発振開始電圧はマグネトロンの温度上昇に伴って低下し、この結果、半導体スイッチ素子のオン信号と入力電圧波形のバランスが崩れ、入力電流波形に歪みを生じてしまうものである。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、連続動作などによってマグネトロンの温度が上昇しても常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないマグネトロン駆動用電源を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマグネトロン駆動用電源は、インバータ回路の入力電流を検出し、目標波形となるように調整して半導体スイッチ素子を駆動するようにしたものである。
【0007】
これにより、マグネトロンの温度変化によるマグネトロンの発振開始電圧の変化や、マグネトロンの種類に起因する発振開始電圧の差異によらず、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマグネトロン駆動用電源は、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、半導体スイッチ素子のオンオフによって高周波電圧を発生するインバータ回路と、この高周波電圧を直流高電圧に整流する高圧整流回路と、この直流高電圧により駆動され電波を発生するマグネトロンと、前記半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記インバータ回路の入力電流を検出する入力電流検出部と、出力指令部の信号によって目標波形を形成する目標波形発生部と、入力電流検出部と目標波形発生部との信号を入力し目標波形と入力電流波形の波形誤差を演算する誤差演算部と、入力電流波形が目標波形となるように調整するパルス幅変調部と、パルス幅変調部の出力信号によって半導体スイッチ素子を駆動する駆動部とを有するマグネトロン駆動用電源とすることにより、マグネトロンの温度変化によるマグネトロンの発振開始電圧の変化や、マグネトロンの種類に起因する発振開始電圧の差異によらず、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、入力電流検出部は抵抗器によって構成したことにより、入力電流を小型な構成で検出することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第2の発明において、抵抗器の出力電圧を反転増幅し入力電流検出部の検出信号とすることにより、抵抗器から検出される負方向の電圧を正方向の電圧に反転増幅するため、制御部の電源を単方向電源にて構成でき、インバータ回路を小型化することが可能となる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1の発明において、入力電流検出部はカレントトランスと整流部によって構成したことにより、カレントトランスは電流の検出位置を限定することなく電流検出が可能で、かつ、制御部は単方向電源にて構成することができるので、インバータ回路の設計の自由度が上がりインバータ回路の小型化を実現することが可能となる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1の発明において、目標波形発生部は商用電源の電圧を全波整流して目標波形を得る構成としたことにより、目標波形を常にマグネトロン駆動用電源の入力電圧源と同期させることができ、確実に入力電流波形が略正弦波状となるような駆動パルスで半導体スイッチ素子を駆動するため、マグネトロンの状態によらず入力電流波形の歪みを抑制し、高調波成分が少ない入力電流でマグネトロン駆動用電源を動作させることが可能となる。
【0014】
第6の発明は、特に、第5の発明において、目標波形発生部は出力指令部の信号によって振幅を可変する構成としたことにより、いかなる電流レベルであってもそれぞれの入力電流レベルに応じた駆動パルスで半導体スイッチ素子を駆動するため、入力電流レベルの変化によらず、常に高力率でインバータ回路を動作させることが可能となる。
【0015】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、パルス幅変調部の出力パルス幅に最大値制限を設ける構成としたことにより、電源電圧の異常などによってオン時間が長くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子のオン時間が制限されるため、半導体スイッチ素子の破壊を招くような長いオン時間となることはなくインバータ回路の損傷を防止することができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、パルス幅変調部の出力パルス幅に最小値制限を設ける構成としたことにより、電源電圧の異常などによってオン時間が異常に短くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子のオン時間の最小値が設定されるため、入力電流が途切れるようなことはなく制御の不安定性を解消することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態)
図1〜図3は、本発明の実施の形態におけるマグネトロン駆動用電源を示している。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態においては、交流である商用電源1と、これを直流電圧に変換する整流部のダイオードブリッジ2と、半導体スイッチ素子3のオンオフによって高周波電圧を発生するインバータ回路4と、この高周波電圧を直流高電圧に整流する高圧整流回路6と、この直流高電圧により駆動され2.45GHzの電波を発生するマグネトロン7と、前記半導体スイッチ素子3のオンオフを制御する制御部11とを備えている。
【0020】
前記インバータ回路4は、半導体スイッチ素子3のほかに、高圧トランス5、平滑回路を構成するインダクタ8とコンデンサ9、高圧トランス5の1次巻線と共振回路を構成し2次巻線に高周波高電圧を励起するコンデンサ10を有し、20kHz〜50kHzで動作する。
【0021】
また、前記制御部11は、前記インバータ回路4の入力電流を検出する入力電流検出部12と、出力指令部13の信号によって目標波形を形成する目標波形発生部14と、入力電流検出部12と目標波形発生部14との信号を入力し目標波形と入力電流波形の波形誤差を演算する誤差演算部15と、入力電流波形が目標波形となるように調整するパルス幅変調部16と、パルス幅変調部16の出力信号によって半導体スイッチ素子3を駆動する駆動部17とを有する。
【0022】
そして、制御部11の入力電流検出部12は、抵抗器18によって構成しており、この出力電圧を反転増幅器19で反転増幅し入力電流検出部12の検出信号としている。これにより、入力電流を小型な構成で検出することができるとともに、抵抗器18から検出される負方向の電圧を正方向の電圧に反転増幅するため、制御部11の電源を単方向電源にて構成でき、インバータ回路4を小型化することが可能となる。
【0023】
また、目標波形発生部14は、商用電源1の電圧を全波整流して目標波形を得る構成とするとともに、出力指令部13の信号によって振幅を可変する構成としたものである。これにより、目標波形を常にマグネトロン駆動用電源の入力電圧源と同期させることができ、確実に入力電流波形が略正弦波状となるような駆動パルスで半導体スイッチ素子3を駆動するため、マグネトロン7の状態によらず入力電流波形の歪みを抑制し、また、いかなる電流レベルであってもそれぞれの入力電流レベルに応じた駆動パルスで半導体スイッチ素子3を駆動するため、入力電流レベルの変化によらず、常に高力率でインバータ回路を動作させることが可能となる。
【0024】
また、パルス幅変調部16は、誤差演算部15によって演算された誤差の値が正の場合はパルス幅を減じ、逆に誤差の値が負の場合はパルス幅を増加するように駆動部17に与えるパルス列をパルス幅変調する。この結果、目標波形に対し入力電流波形が低い場合はより入力電流を増加させ、逆に入力電流が目標波形に対して大きい場合は入力電流を減ずることができ、入力電流波形を目標波形に整形する制御ができる。この動作はインバータ回路4を連続動作させることによって、マグネトロン7が発熱しマグネトロン7の発振開始電圧が変化しても、半導体スイッチ素子3を駆動するパルス列のパルス幅変調の変調度が変化することによって吸収することができ、マグネトロン7の発振電圧の変化によらず常に入力電流波形を目標とする波形に整形するパルス列でインバータ回路4を駆動することができる。
【0025】
さらに、パルス幅変調部16は、少なくとも出力するパルス幅の最大値、最小値の1つを制限する構成としており、例えば、電源電圧の異常などによってオン時間が長くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子3のオン時間が制限されるため、半導体スイッチ素子3の破壊を招くような長いオン時間となることはなくインバータ回路4の損傷を防止することができる。逆に、オン時間が異常に短くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子3のオン時間の最小値が設定されるため、入力電流が途切れるようなことはなく制御の不安定性を解消している。
【0026】
次に、図2(a)はインバータ回路4の入力電流波形を示しており、同(b)は入力電流検出手段12の検出信号と目標波形発生部14の出力信号を重ね合わせた波形を示している。また、同(c)は誤差演算部15によって演算された波形誤差を示し、同(d)は誤差演算部15によって演算された誤差によってパルス幅変調されたパルス列のオン時間の変化を示している。このように誤差が正の値を示している期間ではパルス幅を短くし、逆に誤差が負の値の場合はパルス幅を長くするように制御することによって、入力電流波形を略正弦波状に保つことができる。このような動作をすることによって、マグネトロン7の動作特性の変化とは関係なく目標とする電流波形を作成し、目標電流波形に入力電流波形が一致するように半導体スイッチ素子3の駆動信号をパルス幅変調するので、マグネトロン7の動作特性の変化に一切関係なく入力電流波形を略正弦波状に保つ制御を可能とする。これによって搭載するマグネトロン7の種類によってインバータ回路4の回路定数の設計を変更する必要がなくなるので、インバータ回路4の設計が容易になる。また、入力電流の値によって目標電流波形を変化させることで、常に電流波形を正弦波状に維持できるため、入力電流の値によって力率が変化することなく常に高力率でインバータ回路4を動作することができる。さらに、高力率で動作することによって入力電流波形のピーク値を軽減できるので、電流実効値を低減できインバータ回路4を構成する素子の発熱を軽減し、素子の冷却設計を容易にすることができるという効果を発揮することができる。
【0027】
なお、図3は、本実施の形態の他例を示したものであり、入力電流検出部12は、カレントトランス20と整流部21によって構成した。このように構成することによって、入力電流検出手段12を挿入する位置をダイオードブリッジ2の整流前後の任意位置にすることができるので、インバータ回路4の実装の自由度を向上することができ、インバータ回路4の小型化を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかるマグネトロン駆動用電源は、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができるので、電子レンジなどのマグネトロンを負荷とするものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態におけるマグネトロン駆動用電源のブロック図
【図2】(a)同マグネトロン駆動用電源におけるインバータ回路の入力電流波形図(b)入力電流検出手段と目標波形発生部の電圧波形図(c)誤差演算部で演算された波形誤差を示す図(d)パルス幅変調部の出力するパルス幅の変化を示す図
【図3】同マグネトロン駆動用電源の他例を示すブロック図
【符号の説明】
【0030】
1 商用電源
2 ダイオードブリッジ
3 半導体スイッチ素子
4 インバータ回路
5 高圧トランス
6 高圧整流回路
7 マグネトロン
10 コンデンサ
11 制御部
12 入力電流検出部
13 出力指令部
14 目標波形発生部
15 誤差演算部
16 パルス幅変調部
17 駆動部
18 抵抗器
19 反転増幅器
20 カレントトランス
21 整流部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジなどのマグネトロンを負荷とするマグネトロン駆動用電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネトロン駆動用電源としては、次のような構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、交流である商用電源を一旦直流電圧に変換し、この直流電圧を半導体スイッチ素子のオンオフによってインバータ回路が高圧トランスの1次巻線に高周波電圧を発生させ、高圧トランスは2次巻線に高周波高電圧を励起する。この高周波高電圧は高圧整流回路によって直流高電圧に整流され、マグネトロンに印加される。マグネトロンはこの直流高電圧で駆動され、2.45GHzの電波を発生するものである。
【特許文献1】特開平7−176375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、マグネトロンが連続動作などによって温度上昇した場合は、電流波形にひずみが生じてしまう。これは、マグネトロンの発振開始電圧が温度特性をもっていることに起因するものであり、マグネトロンの発振開始電圧はマグネトロンの温度上昇に伴って低下し、この結果、半導体スイッチ素子のオン信号と入力電圧波形のバランスが崩れ、入力電流波形に歪みを生じてしまうものである。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、連続動作などによってマグネトロンの温度が上昇しても常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないマグネトロン駆動用電源を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のマグネトロン駆動用電源は、インバータ回路の入力電流を検出し、目標波形となるように調整して半導体スイッチ素子を駆動するようにしたものである。
【0007】
これにより、マグネトロンの温度変化によるマグネトロンの発振開始電圧の変化や、マグネトロンの種類に起因する発振開始電圧の差異によらず、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマグネトロン駆動用電源は、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、半導体スイッチ素子のオンオフによって高周波電圧を発生するインバータ回路と、この高周波電圧を直流高電圧に整流する高圧整流回路と、この直流高電圧により駆動され電波を発生するマグネトロンと、前記半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記インバータ回路の入力電流を検出する入力電流検出部と、出力指令部の信号によって目標波形を形成する目標波形発生部と、入力電流検出部と目標波形発生部との信号を入力し目標波形と入力電流波形の波形誤差を演算する誤差演算部と、入力電流波形が目標波形となるように調整するパルス幅変調部と、パルス幅変調部の出力信号によって半導体スイッチ素子を駆動する駆動部とを有するマグネトロン駆動用電源とすることにより、マグネトロンの温度変化によるマグネトロンの発振開始電圧の変化や、マグネトロンの種類に起因する発振開始電圧の差異によらず、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、入力電流検出部は抵抗器によって構成したことにより、入力電流を小型な構成で検出することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第2の発明において、抵抗器の出力電圧を反転増幅し入力電流検出部の検出信号とすることにより、抵抗器から検出される負方向の電圧を正方向の電圧に反転増幅するため、制御部の電源を単方向電源にて構成でき、インバータ回路を小型化することが可能となる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1の発明において、入力電流検出部はカレントトランスと整流部によって構成したことにより、カレントトランスは電流の検出位置を限定することなく電流検出が可能で、かつ、制御部は単方向電源にて構成することができるので、インバータ回路の設計の自由度が上がりインバータ回路の小型化を実現することが可能となる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1の発明において、目標波形発生部は商用電源の電圧を全波整流して目標波形を得る構成としたことにより、目標波形を常にマグネトロン駆動用電源の入力電圧源と同期させることができ、確実に入力電流波形が略正弦波状となるような駆動パルスで半導体スイッチ素子を駆動するため、マグネトロンの状態によらず入力電流波形の歪みを抑制し、高調波成分が少ない入力電流でマグネトロン駆動用電源を動作させることが可能となる。
【0014】
第6の発明は、特に、第5の発明において、目標波形発生部は出力指令部の信号によって振幅を可変する構成としたことにより、いかなる電流レベルであってもそれぞれの入力電流レベルに応じた駆動パルスで半導体スイッチ素子を駆動するため、入力電流レベルの変化によらず、常に高力率でインバータ回路を動作させることが可能となる。
【0015】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、パルス幅変調部の出力パルス幅に最大値制限を設ける構成としたことにより、電源電圧の異常などによってオン時間が長くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子のオン時間が制限されるため、半導体スイッチ素子の破壊を招くような長いオン時間となることはなくインバータ回路の損傷を防止することができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、パルス幅変調部の出力パルス幅に最小値制限を設ける構成としたことにより、電源電圧の異常などによってオン時間が異常に短くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子のオン時間の最小値が設定されるため、入力電流が途切れるようなことはなく制御の不安定性を解消することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態)
図1〜図3は、本発明の実施の形態におけるマグネトロン駆動用電源を示している。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態においては、交流である商用電源1と、これを直流電圧に変換する整流部のダイオードブリッジ2と、半導体スイッチ素子3のオンオフによって高周波電圧を発生するインバータ回路4と、この高周波電圧を直流高電圧に整流する高圧整流回路6と、この直流高電圧により駆動され2.45GHzの電波を発生するマグネトロン7と、前記半導体スイッチ素子3のオンオフを制御する制御部11とを備えている。
【0020】
前記インバータ回路4は、半導体スイッチ素子3のほかに、高圧トランス5、平滑回路を構成するインダクタ8とコンデンサ9、高圧トランス5の1次巻線と共振回路を構成し2次巻線に高周波高電圧を励起するコンデンサ10を有し、20kHz〜50kHzで動作する。
【0021】
また、前記制御部11は、前記インバータ回路4の入力電流を検出する入力電流検出部12と、出力指令部13の信号によって目標波形を形成する目標波形発生部14と、入力電流検出部12と目標波形発生部14との信号を入力し目標波形と入力電流波形の波形誤差を演算する誤差演算部15と、入力電流波形が目標波形となるように調整するパルス幅変調部16と、パルス幅変調部16の出力信号によって半導体スイッチ素子3を駆動する駆動部17とを有する。
【0022】
そして、制御部11の入力電流検出部12は、抵抗器18によって構成しており、この出力電圧を反転増幅器19で反転増幅し入力電流検出部12の検出信号としている。これにより、入力電流を小型な構成で検出することができるとともに、抵抗器18から検出される負方向の電圧を正方向の電圧に反転増幅するため、制御部11の電源を単方向電源にて構成でき、インバータ回路4を小型化することが可能となる。
【0023】
また、目標波形発生部14は、商用電源1の電圧を全波整流して目標波形を得る構成とするとともに、出力指令部13の信号によって振幅を可変する構成としたものである。これにより、目標波形を常にマグネトロン駆動用電源の入力電圧源と同期させることができ、確実に入力電流波形が略正弦波状となるような駆動パルスで半導体スイッチ素子3を駆動するため、マグネトロン7の状態によらず入力電流波形の歪みを抑制し、また、いかなる電流レベルであってもそれぞれの入力電流レベルに応じた駆動パルスで半導体スイッチ素子3を駆動するため、入力電流レベルの変化によらず、常に高力率でインバータ回路を動作させることが可能となる。
【0024】
また、パルス幅変調部16は、誤差演算部15によって演算された誤差の値が正の場合はパルス幅を減じ、逆に誤差の値が負の場合はパルス幅を増加するように駆動部17に与えるパルス列をパルス幅変調する。この結果、目標波形に対し入力電流波形が低い場合はより入力電流を増加させ、逆に入力電流が目標波形に対して大きい場合は入力電流を減ずることができ、入力電流波形を目標波形に整形する制御ができる。この動作はインバータ回路4を連続動作させることによって、マグネトロン7が発熱しマグネトロン7の発振開始電圧が変化しても、半導体スイッチ素子3を駆動するパルス列のパルス幅変調の変調度が変化することによって吸収することができ、マグネトロン7の発振電圧の変化によらず常に入力電流波形を目標とする波形に整形するパルス列でインバータ回路4を駆動することができる。
【0025】
さらに、パルス幅変調部16は、少なくとも出力するパルス幅の最大値、最小値の1つを制限する構成としており、例えば、電源電圧の異常などによってオン時間が長くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子3のオン時間が制限されるため、半導体スイッチ素子3の破壊を招くような長いオン時間となることはなくインバータ回路4の損傷を防止することができる。逆に、オン時間が異常に短くなるよう制御パルスを設定しようとしても半導体スイッチ素子3のオン時間の最小値が設定されるため、入力電流が途切れるようなことはなく制御の不安定性を解消している。
【0026】
次に、図2(a)はインバータ回路4の入力電流波形を示しており、同(b)は入力電流検出手段12の検出信号と目標波形発生部14の出力信号を重ね合わせた波形を示している。また、同(c)は誤差演算部15によって演算された波形誤差を示し、同(d)は誤差演算部15によって演算された誤差によってパルス幅変調されたパルス列のオン時間の変化を示している。このように誤差が正の値を示している期間ではパルス幅を短くし、逆に誤差が負の値の場合はパルス幅を長くするように制御することによって、入力電流波形を略正弦波状に保つことができる。このような動作をすることによって、マグネトロン7の動作特性の変化とは関係なく目標とする電流波形を作成し、目標電流波形に入力電流波形が一致するように半導体スイッチ素子3の駆動信号をパルス幅変調するので、マグネトロン7の動作特性の変化に一切関係なく入力電流波形を略正弦波状に保つ制御を可能とする。これによって搭載するマグネトロン7の種類によってインバータ回路4の回路定数の設計を変更する必要がなくなるので、インバータ回路4の設計が容易になる。また、入力電流の値によって目標電流波形を変化させることで、常に電流波形を正弦波状に維持できるため、入力電流の値によって力率が変化することなく常に高力率でインバータ回路4を動作することができる。さらに、高力率で動作することによって入力電流波形のピーク値を軽減できるので、電流実効値を低減できインバータ回路4を構成する素子の発熱を軽減し、素子の冷却設計を容易にすることができるという効果を発揮することができる。
【0027】
なお、図3は、本実施の形態の他例を示したものであり、入力電流検出部12は、カレントトランス20と整流部21によって構成した。このように構成することによって、入力電流検出手段12を挿入する位置をダイオードブリッジ2の整流前後の任意位置にすることができるので、インバータ回路4の実装の自由度を向上することができ、インバータ回路4の小型化を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかるマグネトロン駆動用電源は、常に入力電流の歪みを抑制し高力率で入力電流の高調波の少ないものとすることができるので、電子レンジなどのマグネトロンを負荷とするものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態におけるマグネトロン駆動用電源のブロック図
【図2】(a)同マグネトロン駆動用電源におけるインバータ回路の入力電流波形図(b)入力電流検出手段と目標波形発生部の電圧波形図(c)誤差演算部で演算された波形誤差を示す図(d)パルス幅変調部の出力するパルス幅の変化を示す図
【図3】同マグネトロン駆動用電源の他例を示すブロック図
【符号の説明】
【0030】
1 商用電源
2 ダイオードブリッジ
3 半導体スイッチ素子
4 インバータ回路
5 高圧トランス
6 高圧整流回路
7 マグネトロン
10 コンデンサ
11 制御部
12 入力電流検出部
13 出力指令部
14 目標波形発生部
15 誤差演算部
16 パルス幅変調部
17 駆動部
18 抵抗器
19 反転増幅器
20 カレントトランス
21 整流部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチ素子のオンオフによって高周波電圧を発生するインバータ回路と、この高周波電圧を直流高電圧に整流する高圧整流回路と、この直流高電圧により駆動され電波を発生するマグネトロンと、前記半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記インバータ回路の入力電流を検出する入力電流検出部と、出力指令部の信号によって目標波形を形成する目標波形発生部と、入力電流検出部と目標波形発生部との信号を入力し目標波形と入力電流波形の波形誤差を演算する誤差演算部と、入力電流波形が目標波形となるように調整するパルス幅変調部と、パルス幅変調部の出力信号によって半導体スイッチ素子を駆動する駆動部とを有するマグネトロン駆動用電源。
【請求項2】
入力電流検出部は抵抗器によって構成した請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項3】
抵抗器の出力電圧を反転増幅し入力電流検出部の検出信号とする請求項2に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項4】
入力電流検出部はカレントトランスと整流部によって構成した請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項5】
目標波形発生部は商用電源の電圧を全波整流して目標波形を得る構成とした請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項6】
目標波形発生部は出力指令部の信号によって振幅を可変する構成とした請求項5に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項7】
パルス幅変調部の出力パルス幅に最大値制限を設ける構成とした請求項1〜6のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項8】
パルス幅変調部の出力パルス幅に最小値制限を設ける構成とした請求項1〜7のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項1】
半導体スイッチ素子のオンオフによって高周波電圧を発生するインバータ回路と、この高周波電圧を直流高電圧に整流する高圧整流回路と、この直流高電圧により駆動され電波を発生するマグネトロンと、前記半導体スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記インバータ回路の入力電流を検出する入力電流検出部と、出力指令部の信号によって目標波形を形成する目標波形発生部と、入力電流検出部と目標波形発生部との信号を入力し目標波形と入力電流波形の波形誤差を演算する誤差演算部と、入力電流波形が目標波形となるように調整するパルス幅変調部と、パルス幅変調部の出力信号によって半導体スイッチ素子を駆動する駆動部とを有するマグネトロン駆動用電源。
【請求項2】
入力電流検出部は抵抗器によって構成した請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項3】
抵抗器の出力電圧を反転増幅し入力電流検出部の検出信号とする請求項2に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項4】
入力電流検出部はカレントトランスと整流部によって構成した請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項5】
目標波形発生部は商用電源の電圧を全波整流して目標波形を得る構成とした請求項1に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項6】
目標波形発生部は出力指令部の信号によって振幅を可変する構成とした請求項5に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項7】
パルス幅変調部の出力パルス幅に最大値制限を設ける構成とした請求項1〜6のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【請求項8】
パルス幅変調部の出力パルス幅に最小値制限を設ける構成とした請求項1〜7のいずれか1項に記載のマグネトロン駆動用電源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−66194(P2006−66194A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246659(P2004−246659)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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