説明

マスク

【課題】着用位置のずれの生じにくいマスクの提供。
【解決手段】着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部10と、前記本体部10に結合され、前記本体部10を着用者の顔面下部に固定する固定部90とを具備し、前記本体部10が、主シート部20と、前記主シート部20の内側の下部において、前記主シート部20の左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の下顎を保持するための下部帯状体30、及び/又は、前記主シート部20の内側の上部において、前記主シート部20の左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の鼻を保持するための上部帯状体40とを有する、マスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマスクにおいては、呼気の漏れや、外気の侵入を防止すべく、マスクの周縁部を着用者の肌に密着させようとする手段が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、マスク本体の左右両側部に耳掛け紐を取着してなる衛生マスクにおいて、当該マスク本体の上方部を一旦内側下方へ折れ曲げた上で、再び、内側上方へ折れ曲げ形成し、当該上部折り畳み部の先端縁には屈曲自在な針金を取り付け、当該先端縁の中央部分を拡開して鼻の部分から頬の部分にかけて密着させて固定支持するように構成したことを特徴とする衛生マスクが記載されている。
特許文献2には、顔面を覆う本体部と、この本体部に取り付けられた耳掛け紐とを有し、前記本体部の内側に、本体部と顔面との隙間に介在する通気性素材の補助片が設けられていることを特徴とするマスクが記載されている。
特許文献3には、左右一対の不織布シートを接合して形成されたマスク本体と、このマスク本体の両側部に設けられた耳掛け部とを具備し、装着時に前記マスク本体が左右に開かれて前記不織布シートの接合部が前方へと突出する立体型マスクであって、前記マスク本体の不織布シートの上部には、折り目部を介して前記マスク本体の裏面側へと折り返された折り返し片の少なくとも一部がそれぞれ接合され、これら折り返し片は、左右に互いに連接され、前記マスク本体の左右への開き動作に連動して前記マスク本体の裏面側から前記折り目部にて立ち上がるように形成されたことを特徴とした立体型マスクが記載されている。
【0003】
特許文献4には、通気性素材により形成された表面側部材、通気性素材により形成された裏面側部材、および、これら表面側部材と裏面側部材との間に挟持され頂部を有する凸型部材を備え、表面側に突出するように形成されたマスク本体と、このマスク本体の両側に設けられ装着者の耳に係合される耳掛け部とを具備し、前記マスク本体は、前記凸型部材の下端部よりも下方にこの凸型部材が配設されない不存在領域を有し、前記マスク本体の下端部には、前記表面側部材と前記裏面側部材との間に伸縮性を有する弾性部材が配設され、この弾性部材の収縮により顎収容部が形成されたことを特徴とした立体型マスクが記載されている。
特許文献5には、マスク本体の裏面の側部の上部と左右に立体のギャザーを設け、上部の上側にはワイヤーを設けたギャザー付きマスクが記載されている。
【0004】
特許文献6には、不織布等のフィルタ部材からなるマスク本体の背面にこのマスク本体と同じ素材よりなる鼻部覆い片と顎部覆い片とを重ね合わせ状態に配設して、鼻部覆い片の上端縁部をマクス本体の上端部に該マクス本体の幅方向の中央部から両側端部に向かって下方に円弧状に湾曲した線状の融着部によって取り付けていると共に、顎部覆い片の下端縁部をマスク本体の下端部に該マスク本体の幅方向の中央部から両側端部に向かって上方に円弧状に湾曲した融着部によって取り付けていて、これらの鼻部覆い片と顎部覆い片との自由端部をそれぞれの融着部を支点として後方に拡開可能に形成してあり、さらに、マスク本体の両側端部に紐取付具を装着してこの紐取付具に耳掛け紐を取り付けていることを特徴とするマスクが記載されている。
特許文献7には、顔面覆い部中央の上辺または下辺のすくなくとも一方にV字型の切り欠けを設け、該切り欠きの両斜辺を接合して立体性を付与された顔面覆い部と耳かけ部から構成される不織布製マスクであって、顔面覆い部が連続一体の不織布からなり、顔面覆い部の中央上辺に上方に張り出した襟部を設けてなることを特徴とする立体形マスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−5360号公報
【特許文献2】特開平10−15091号公報
【特許文献3】特開2007−54270号公報
【特許文献4】特開2007−68827号公報
【特許文献5】特開2008−12248号公報
【特許文献6】実用新案登録第3138154号公報
【特許文献7】特開2007−054381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者がこれらのマスクの性能について鋭意研究したところ、いずれも実際の着用時には、着用位置のずれが生じやすいことが分かった。特に、着用者が会話時に口を開閉したりして、顎が上下に動く場合に、ずれが生じることが分かった。
このような着用位置のずれは、呼気の漏れや外気の侵入の防止を目的とするマスクにおいては、その目的の達成を阻害するため問題となる。また、呼気の漏れや外気の侵入の防止を目的としないマスクであっても、着用位置のずれは着用者の不快感を与えるなど問題となる。
したがって、本発明は、着用位置のずれの生じにくいマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、新規構造を有するマスクを完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(20)を提供する。
(1)着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部と、前記本体部に結合され、前記本体部を着用者の顔面下部に固定する固定部と
を具備し、
前記本体部が、主シート部と、前記主シート部の内側の下部において、前記主シート部の左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の下顎を保持するための下部帯状体、及び/又は、前記主シート部の内側の上部において、前記主シート部の左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の鼻を保持するための上部帯状体とを有する、マスク。
(2)前記下部帯状体、及び/又は、前記上部帯状体が、着用時において、前記主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられている、上記(1)に記載のマスク。
(3)前記下部帯状体が、顔面の下顎から顎骨を経由して両頬に至る部分において着用者の顔面に接触するように設けられ、及び/又は、前記上部帯状体が、顔面の鼻頭から小鼻を経由して両頬に至る部分において着用者の顔面に接触するように設けられている、上記(2)に記載のマスク。
(4)着用時において、前記主シート部の内側の表面と着用者の肌とが接触しない、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のマスク。
(5)着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の鼻の本体部と接触する部分のうち左右方向の中央最下部との最短距離が0.5mm以上である、上記(4)に記載のマスク。
(6)着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の上唇の左右方向の中央最下部との距離が3mm以上である、上記(4)又は(5)に記載のマスク。
(7)着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の顎の本体部と接触する部分のうち左右方向の中央最上部との最短距離が0.5mm以上である、上記(4)〜(6)のいずれかに記載のマスク。
(8)着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の頬との距離が1mm以上である、上記(4)〜(7)のいずれかに記載のマスク。
(9)前記下部帯状体及び/又は前記上部帯状体が、左右方向の最大伸張率が1.5以上である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のマスク。
【0009】
(10)前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体が、その下側の辺縁部の全部において、前記主シート部と結合しておらず、着用者の下顎に引っ掛かる伸縮顎バンドを構成する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のマスク。
(11)前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体が、その下側の辺縁部の全部又は一部において、前記主シート部と結合しており、着用者の下顎を収容する顎ラップポケットを構成する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のマスク。
(12)前記下部帯状体が、着用時において、折り返され、前記主シート部と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じる、上記(12)に記載のマスク。
(13)前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体とその外側のシート状物とが下側の縁部及び左右両辺において結合している、上側に開口を有する袋状部材を、前記下部帯状体が前記主シート部の内側の下部に位置するように前記シート状物において結合させて、着用者の下顎を収容する顎ラップポケットを構成する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のマスク。
(14)前記顎ラップポケットが、深さ20mm以上である、上記(11)〜(13)のいずれかに記載のマスク。
(15)前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体が、スリット又は穴を有し、前記スリット又は前記穴に着用者の下顎を収容する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のマスク。
(16)前記本体部が、前記上部帯状体を有し、
前記上部帯状体が、その上側の辺縁部の全部において、前記主シート部と結合しておらず、着用者の鼻に引っ掛かる伸縮鼻バンドを構成する、上記(1)〜(15)のいずれかに記載のマスク。
(17)前記本体部が、前記上部帯状体を有し、
前記上部帯状体が、その上側の辺縁部の全部又は一部において、前記主シート部と結合しており、着用者の鼻を収容する鼻ラップポケットを構成する、上記(1)〜(15)のいずれかに記載のマスク。
(18)前記上部帯状体が、着用時において、折り返され、前記主シート部と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じる、上記(17)に記載のマスク。
(19)前記本体部が、前記上部帯状体を有し、
前記上部帯状体とその外側のシート状物とが上側の縁部及び左右両辺において結合している、下側に開口を有する袋状部材を、前記上部帯状体が前記主シート部の内側の上部に位置するように前記シート状物において結合させて、着用者の鼻を収容する鼻ラップポケットを構成する、上記(1)〜(15)のいずれかに記載のマスク。
(20)前記鼻ラップポケットが、深さ20mm以上である、上記(17)〜(19)のいずれかに記載のマスク。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマスクは、着用位置のずれが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のマスクの一例を示す模式的な平面図である。
【図2】帯状の伸縮性材料の例を示す模式的な平面図である。
【図3】種々の帯状の伸縮性材料の例を示す模式図である。
【図4】本発明のマスクの別の一例を示す模式的な平面図である。
【図5】着用時における下部帯状体及び上部帯状体並びに主シート部の状態を示す模式図である。
【図6】左右両端部のみが主シート部に直接結合する上部帯状体を示す模式的な平面図である。
【図7】左右両端部のみが主シート部に直接結合する別の上部帯状体を示す模式的な平面図である。
【図8】左右両端部及び上縁部の全部が主シート部に直接結合する上部帯状体を示す模式的な平面図である。
【図9】左右両端部及び上縁部の全部が主シート部に直接結合する別の上部帯状体を示す模式的な平面図である。
【図10】種々の材料及び形状の鼻ラップポケットを有するマスクを示す模式的な平面図である。
【0012】
【図11】種々の顎ラップポケットの模式的な平面図である。
【図12】鼻ラップポケットを構成する上部帯状体が主シート部と間接的に結合するマスクの模式的な平面図である。
【図13】上部帯状体を含む鼻ラップポケット構造体を示す模式図である。
【図14】鼻ラップポケット構造体を構成する複合シート及び伸縮性複合シートを示す模式的な平面図である。
【図15】顎ラップポケットを構成する下部帯状体が主シート部と間接的に結合するマスクの模式的な平面図である。
【図16】下部帯状体を含む顎ラップポケット構造体を示す模式図である。
【図17】顎ラップポケット構造体を構成する不織布シート及び伸縮性複合シートを示す模式的な平面図である。
【図18】種々の顎ラップポケットの模式的な平面図である。
【図19】下部帯状体及び上部帯状体が、着用時において、主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられている本発明のマスクの着用時の左右方向の中央部における模式的な端面図である。
【図20】従来公知の超立体型マスクの着用時の左右方向の中央部における模式的な端面図である。
【0013】
【図21】本発明のマスクの更に別の一例を示す模式図である。
【図22】図21に示される本発明のマスクの着用時の模式図である。
【図23】マスク内空間の説明図である。
【図24】図23中の上部帯状体と着用者の鼻との接触部位付近の拡大説明図である。
【図25】マスクの着用者の顔面の動きによる寸法変化を示す模式的な説明図である。
【図26】従来公知の超立体型マスクの着用者の顔面の動きによる着用状態の変化を示す模式的な説明図である。
【図27】従来公知のプリーツ型マスクの着用者の顔面の動きによる着用状態の変化を示す模式的な説明図である。
【図28】本発明のマスクの着用者の顔面の動きによる着用状態の変化を示す模式的な説明図である。
【図29】本発明のマスクの別の一例を示す模式的な平面図である。
【図30】実施例1で得られたマスクの模式的な平面図である。
【0014】
【図31】市販のプリーツ型マスクの模式的な平面図である。
【図32】実施例2で得られたマスクの模式的な平面図である。
【図33】市販の超立体型マスクの模式的な平面図である。
【図34】実施例3で得られたマスクの模式的な平面図である。
【図35】市販のガーゼマスクの模式的な平面図である。
【図36】実施例8で得られたマスクの模式的な平面図である。
【図37】実施例8のマスクを製造する際に用いた鼻ラップポケット構造体を有しないマスクの模式的な平面図である。
【図38】実施例8のマスクを製造する際に用いた上部帯状体を含む鼻ラップポケット構造体を示す模式図である。
【図39】実施例8のマスクを製造する際に用いた鼻ラップポケット構造体を構成するPE/PPスパンボンド不織布及び伸縮性複合シートを示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のマスクを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書においては、本発明のマスクを実際に着用した場合に、着用者の肌に近い側を「内」といい、遠い側を「外」という。また、本発明のマスクを実際に着用した場合に、着用者の体の上側に対応する側を「上」といい、下側に対応する側を「下」という。
【0016】
図1は、本発明のマスクの一例を示す模式的な平面図である。なお、添付した図面中の各平面図は、いずれも内側から見たものであり、図の上側にマスクの上側が位置するように図示してある。
【0017】
本発明のマスク100は、基本的に、着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部10と、本体部10に結合され、本体部10を着用者の顔面下部に固定する固定部90とを具備する。
本体部10は、主シート部20と、主シート部20の内側の下部において、主シート部20の左右両端部と直接結合し、前記左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の下顎を保持するための下部帯状体30、及び、主シート部20の内側の上部において、主シート部20の左右両端部と直接結合し、前記左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の鼻を保持するための上部帯状体40とを有する。
本発明のマスク100は、本体部10が下部帯状体30及び上部帯状体40のいずれも有しているが、本発明はこれに限定されず、本体部が下部帯状体のみを有していてもよく、また、本体部が上部帯状体のみを有していてもよい。本体部が下部帯状体及び上部帯状体のいずれも有している場合には、着用位置のずれがより生じにくくなる点で、好ましい。
【0018】
主シート部20は、特に限定されず、例えば、従来公知のマスクの本体部として用いられているものを用いることができる。
主シート部20は、左右方向に延在するプリーツを有している。プリーツの数は特に限定されず、1個であってもよく、2個以上であってもよい。
本発明においては、主シート部の構造は、特に限定されない。主シート部は、プリーツを有しない平面状のものであってもよい。また、主シート部は、左右方向の中央部において外側に凸状となった立体構造であってもよい。
【0019】
主シート部20は、内面シートと、病原体不活性化層と、外面シートとが着用者側からこの順で積層された積層体を有するのが好ましい態様の一つである。病原体不活性化層は、後述するように、複数枚のシート状材料から構成されているのが好ましい。
【0020】
内面シートは、特に材料を限定されない。例えば、乾式不織布、湿式不織布、スパンメルト不織布、スパンレース不織布等の不織布類;化合繊製織物;ニット類を用いることができる。中でも、目付量の低いものが、通気性が優れたものになる点で好ましい。
中でも、内面シートが多孔性であるのが好ましい態様の一つである。多孔性の材料としては、具体的には、例えば、ネット状、メッシュ状又はガーゼ状の不織布;開口フィルム;化合繊フィラメントを交織し又は編織して得られるネット、メッシュ又はレース類が挙げられる。内面シートが多孔性であると、皮膚との接触面積が小さくなり、着用者の装着感が優れたものになる。
また、内面シートが表面に畝状の凹凸構造を有するのも好ましい態様の一つである。この態様においては、皮膚との接触面積が小さくなり、かつ、クッション性を有するため、いわゆる「ソフトタッチ」な感触を得ることができ、着用者の装着感が優れたものになる。
さらに、内面シートが、本発明者が特開2002−238946号公報で提案したような漏斗型の開口フィルムであるのも好ましい態様の一つである。この態様においては、排出された呼気を分配整流化する効果があり、積層体の表面の全体を効率的に利用することが容易となる。
【0021】
内面シートを構成する材料は、親水性であってもよく、疎水性であってもよい。
内面シートを構成する材料としては、防汚処理、抗菌処理、撥水処理等を施した材料を用いることもできる。
内面シートを構成する材料は、その材料が着用者の口から体内に摂取される可能性もあるので、安全性の高いものであるのが好ましい。
内面シートを構成する材料は、使用中に摩擦等によって粉塵、脱落繊維くず等を発生させないものであるのが好ましい。
内面シートを構成する材料は、着用者の口唇に接して体脂肪や口紅などの化粧品が付着したり汚れたりしにくいものであるのが好ましい。
内面シートを構成する材料は、その表面で着用者から排出された病原体や常在菌が繁殖しにくいものであるのが好ましい。
【0022】
内面シートは、積層体の全面にわたって配置することもでき、例えば、積層体のうち口唇部周辺に当接する部分のみに配置するなど、部分的に配置することもできる。
内面シートは、病原体不活性化層の上に単に積層して配置されていてもよく、内面シートの表面と病原体不活性化層の表面とは接合されて一体化されていてもよい。
内面シートと病原体不活性化層とが単に積層されている場合には、両者を分離して、内面シートを交換しうる態様とすることが容易である。この態様は、例えば、本発明のマスクを長時間継続して使用する場合に、食事、入浴等のためにマスクを取り外す際に内面シートを交換することにより、清潔な状態を保持するとともに、未使用品の優れた装着感を得ることができる。
【0023】
外面シートは、特に材料を限定されない。例えば、乾式不織布、湿式不織布、スパンメルト不織布、スパンレース不織布等の不織布類;化合繊製織物;ニット類を用いることができる。これらの中でも、緻密な組織を有し、構成繊維繊度の比較的細かいものが、着用者の呼気が外部に排出される際の飛沫等を捕捉するため、また、着用者が外気を吸い込む際の塵等を捕捉するため、好ましい。
中でも、PE、PP、PET、EVA、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維等の合成繊維のスパンメルト不織布が好ましく、メルトブローンの複層体であるSMS、SMMSがより好ましい。
【0024】
外面シートを構成する材料は、親水性であってもよく、疎水性であってもよい。
外面シートを構成する材料としては、防汚処理、抗菌処理、撥水処理等を施した材料を用いることもできる。
外面シートを構成する材料は、本発明のマスクの着脱時に手で表面に触れても、表面が汚れにくいように、表面が平滑であるのが好ましい。
外面シートを構成する材料は、使用中に摩擦等によって粉塵、毛羽抜け等を発生させないものであるのが好ましい。
【0025】
外面シートは、積層体の全面にわたって配置することもでき、部分的に配置することもできる。
外面シートは、病原体不活性化層の下に単に積層して配置されていてもよく、外面シートの表面と病原体不活性化層の表面とは接合されて一体化されていてもよい。
【0026】
病原体不活性化層は、病原体を不活性化させるための層である。
本発明において、病原体とは、結核、インフルエンザ、肺炎、気管支炎、咽頭炎等の呼吸器疾患を生じさせる微生物、ウィルス等の総称である。具体的には、例えば、細菌類、カビ類、リケッチャ類、ダニ類、ウィルス類が挙げられる。
本発明において、不活性化とは、病原体の活性を無害化、無毒化、無力化等することを意味する。不活性化の具体的な手段としては、例えば、ろ過除去、吸着除去、熱変性、化学変性、抗体反応が挙げられる。
【0027】
病原体不活性化層は、病原体を不活性化させる機能を奏するものであれば、構成を特に限定されないが、1枚以上のシート状材料から構成されているのが好ましく、複数枚のシート状材料から構成されているのがより好ましい。
この場合、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、折りたたまれているのが好ましい態様の一つである。この態様においては、折り畳まれているシート状材料の折りたたまれる前の面積を折りたたまれた状態での面積で除して得られる折りたたみ率が、1.5以上であるのが好ましく、2.0以上であるのがより好ましい。
【0028】
積層体は、その通気度が下部帯状体30及び上部帯状体40のいずれよりも大きいのが好ましい。この場合、呼気が積層体を通過しやすくなるため、呼気の漏れが生じにくくなる。
【0029】
下部帯状体30は、主シート部20の内側の下部において設けられる。下部帯状体30は、主シート部20の左右両端部(濃色のハッチ部。以下、他の図においても、接合部を濃色のハッチ部で示す場合がある。)と直接結合し、前記左右両端部の間にわたって設けられている。
上部帯状体40は、主シート部20の内側の下部において設けられる。上部帯状体40は、主シート部20の左右両端部と直接結合し、前記左右両端部の間にわたって設けられている。
下部帯状体30及び上部帯状体40と主シート部20との結合の方法は、特に限定されず、例えば、ホットメルト、粘着剤、超音波シール、ヒートシールが挙げられる。
マスク100においては、下部帯状体30及び上部帯状体40が、いずれも主シート部20と直接結合しているが、本発明はこれに限定されず、下部帯状体及び上部帯状体は、それぞれ、左右両端部の間にわたって設けられる状態が実現されていればよい(図12、図15等参照。)。
【0030】
下部帯状体30及び上部帯状体40は、帯状の伸縮性材料により形成される。
伸縮性材料は、特に限定されないが、例えば、以下の3種の伸縮性材料が挙げられる。
【0031】
(1)フィラメント状の弾性体(弾性糸)を用いた伸縮性材料
具体的には、例えば、ゴム糸、ポリウレタンフィラメント等の弾性糸を編み、又は織って得られる、テープ状又はチューブ状のいわゆるゴムバンド;弾性糸とナイロンフィラメント、ポリエステルフィラメント等の合繊フィラメントと交編し、又は交織して得られる伸縮性を持つ編み物、織物;弾性糸と紡績糸とを用いてネット状又は更に筒状に成形した伸縮包帯、筒状包帯、伸縮サポータ等の組織の変形を伴って伸縮可能な材料が挙げられる。具体的には、例えば、ウレタンフィラメントと綿糸とを交織した伸縮包帯(例えば、白十字社製の伸縮包帯)が挙げられる。
【0032】
(2)伸縮性フィルム類
具体的には、例えば、ポリウレタンフィルム、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)フィルム、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)フィルム、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)フィルム等の合成樹脂フィルム;ポリウレタン不織布等の合成樹脂不織布が挙げられる。伸縮性フィルム類は、いずれの方向にも等しい伸張性を有するもの、一方向のみに伸張性を有するもの、一方向の伸張性が他の方向の伸張性と異なるものが挙げられる。
【0033】
(3)上記(1)の伸縮性材料又は上記(2)の伸縮性フィルム類と不織布との積層体
具体的には、例えば、複数の弾性糸を並列に並べて伸長させた状態で接合剤によりその上下に不織布を接合して得られる積層体;SEBSフィルムと一方向の伸張性が大きい不織布との積層体(一方向の伸縮性がそれと直交する方向の伸縮性より大きい)が挙げられる。このような積層体の具体例として、一方向伸長性の伸縮性材料である、米国トレドガー社製のFlexAire 541 Elastic Laminateが挙げられる。
本発明のマスクにおいては、下部帯状体及び上部帯状体の左右方向の伸張性が、マスクの着用位置のずれの防止に影響を及ぼす。したがって、低い張力で左右に伸びやすく、幅方向の変形が少ない、一方向の伸縮性がそれと直交する方向の伸縮性より大きい伸縮性材料が好ましい。
【0034】
下部帯状体30及び上部帯状体40に用いられる伸縮性材料は、帯状のものである。
本発明において、「帯状」とは、左右方向の長さが上下方向の長さより長く、前後方向の長さ(厚さ)がこれらよりかなり短い(薄い)ことを意味する。
図2は、帯状の伸縮性材料の例を示す模式的な平面図である。
図2に示されるように、帯状の伸縮性材料は、左右方向の長さLが上下方向の長さWより長い。左右方向の長さLと上下方向の長さWの比(L/W)は、1.5以上であるのが好ましい。
【0035】
図3は、種々の帯状の伸縮性材料の例を示す模式図である。図3(A)、図3(B)及び図3(C)は斜視図であり、図3(D)は平面図である。なお、図3に示される上下方向の長さを示す数値は、いずれも例示であり、本発明はこれらの数値に限定されない。
図3(A)に示される帯状の伸縮性材料は、平織りのゴム紐である。例えば、下着の腰部に用いられているものを用いることができる。
図3(B)に示される帯状の伸縮性材料は、ポリウレタンフィラメントをウーリィナイロンフィラメントと紐状に交編したものである。
図3(C)に示される帯状の伸縮性材料は、筒状の編み包帯である。例えば、肘、膝等を伸縮的に被覆する際に用いられるもの、ヘアーバンドとして用いられるものを用いることができる。
図3(D)に示される帯状の伸縮性材料は、伸縮性フィルム類のシートを長方形に裁断したものである。
【0036】
帯状の伸縮性材料は、下部帯状体又は上部帯状体とした場合に、左右方向の最大伸張率(非伸張時の長さに対する可逆的に伸張しうる長さの最大値の割合)が1.5以上となるのが好ましい。
本発明のマスクの着用時において、下部帯状体及び上部帯状体は、通常、最大伸張率まで伸張させて用いられずに、それよりも伸張率(非伸張時の長さに対する伸張時の長さの割合)が低い状態で用いられるのが好ましい。例えば、最大伸張率が1.5の場合は伸張率1.3程度で、最大伸張率が2.0の場合は伸張率1.5程度で用いられるように構成される。
【0037】
下部帯状体30は、着用時に、着用者の下顎を保持する。
下部帯状体30は、その下側の辺縁部の全部において、主シート部20と結合していない。よって、下部帯状体30は、着用者の下顎に引っ掛かる伸縮顎バンドを構成している。着用時には、下部帯状体30の中央部を内側(着用者側)向きに、かつ、やや下向きに引っ張り、下部帯状体30の中央部を下顎の先端部より下側(喉側)に位置させた後、引っ張るのを止める。これにより、下部帯状体30が伸張した状態で下顎の先端部より下側(喉側)に引っ掛かって下顎を保持する。その結果、固定部90の作用と相俟って本体部10が着用者の顔面下部に固定される。
なお、下部帯状体30の着用者の下顎と接する面は図1において見えている面であってもよく、裏側に隠れている面であってもよく、固定時には、着用者の顎の形状等に合わせて下部帯状体30を適宜ひねるなどしてもよい。
【0038】
伸縮顎バンドは、上下方向の長さが10mm以上であるのが好ましい。上下方向の長さが15mm以上であると、着用位置のずれがより生じにくくなる。
【0039】
上部帯状体40は、着用時に、着用者の鼻を保持する。
上部帯状体40は、その上側の辺縁部の全部において、主シート部20と結合していない。よって、上部帯状体40は、着用者の鼻に引っ掛かる伸縮鼻バンドを構成している。着用時には、上部帯状体40の中央部を内側(着用者側)向きに、かつ、やや上向きに引っ張り、上部帯状体40の中央部を鼻の鼻頭より上側に位置させた後、引っ張るのを止める。これにより、上部帯状体40が伸張した状態で鼻の鼻頭又は鼻梁に引っ掛かって鼻を保持する。その結果、固定部90の作用と相俟って本体部10が着用者の顔面下部に固定される。
なお、上部帯状体40の着用者の下顎と接する面は図1において見えている面であってもよく、裏側に隠れている面であってもよく、固定時には、着用者の鼻の形状等に合わせて上部帯状体40を適宜ひねるなどしてもよい。
【0040】
伸縮鼻バンドは、上下方向の長さが2mm以上であるのが好ましい。上下方向の長さが5mm以上であると、着用位置のずれがより生じにくくなる。
【0041】
本発明のマスク100において、本体部10は、主シート部20、下部帯状体30及び上部帯状体40以外の部材を有していてもよい。
【0042】
固定部90は、本体部10に結合され、本体部10を着用者の顔面下部に固定する。
固定部90は、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されている。伸縮性材料は、特に限定されず、例えば、ゴム糸と綿との交織帯、ウレタンフィラメントとポリエステルフィラメントとの交編ネット、チューブ状に編成したウリーナイロン、伸縮性不織布が挙げられる。
中でも、本発明者が特開平6−328600号公報及び特開平7−252762号公報で提案した、一方向伸張性の複合弾性体にスリット又は切り欠きを設けたものが好ましく、エラストマーフィルムの片面又は両面を不織布で積層した一方向伸張性の複合弾性体にスリット又は切り欠きを設けたものであるのがより好ましい。この場合、着用時に安定的に本体部を固定することができ、また、着用者の肌に跡が残りにくい。
【0043】
本発明においては、固定部は、ループ状の伸縮性材料に限定されない。例えば、本体部の左右両側にそれぞれ設けられ、互いに結ぶことにより、着用者の耳に掛けることができるようにした2本の紐、眼鏡のツルの部分のように、着用者の耳に上側から掛けるようにした構造体、眼帯に用いられているのと同様の着用者の頭部に掛けるループ状のヘッドバンドが挙げられる。
【0044】
本発明のマスク100は、上述した各種部材を一体化(接合)させて得ることができる。一体化の方法は、特に限定されず、例えば、ミシン糸等による縫合;ホットメルト等による接着;ヒートシール、超音波シール等による溶結が挙げられる。ミシン糸による縫合の場合には、ミシン目に対して、樹脂、粘着テープ等による目止め処理を行うことができる。
【0045】
本発明のマスク100は、上述したように、本体部10が、下部帯状体30及び/又は上部帯状体40を有するため、着用者が会話時に口を開閉したりして、顎が上下に動く場合にも、着用位置のずれが生じにくい。
【0046】
下部帯状体及び上部帯状体について、より詳細に説明する。
図4は、本発明のマスクの別の一例を示す模式的な平面図である。
図4に示されるマスク102は、基本的に、マスク100と同様であるが、本体部12の主シート部20に、下部帯状体30及び上部帯状体40の代わりに、下部帯状体32及び上部帯状体42が設けられている点で異なる。
【0047】
下部帯状体32は、下部帯状体30と基本的に同様であるが、主シート部20と、左右両端部のみならず、その下側の辺縁部の全部においても結合している。このように、下部帯状体32は、着用者の下顎を収容する顎ラップポケットを構成している。着用時には、下部帯状体32の中央部を内側(着用者側)向きに、かつ、やや下向きに引っ張り、下部帯状体32により形成された空間に下顎を入れた後、引っ張るのを止める。これにより、下部帯状体32が伸張した状態で下顎の先端部より下側(喉側)に引っ掛かって下顎を保持する。その結果、固定部90の作用と相俟って本体部10が着用者の顔面下部に固定される。
なお、下部帯状体32の着用者の下顎と接する面は図4において裏側に隠れている面となる。
【0048】
下部帯状体32は、主シート部20と、その下側の辺縁部の全部においても結合しているが、本発明はこれに限定されず、下部帯状体が、主シート部と、その下側の辺縁部の一部のみにおいて結合している態様であってもよい。
【0049】
顎ラップポケットは、深さ(上下方向の長さの最大値)が20mm以上であるのが好ましい。深さが20mm以上であると、着用位置のずれがより生じにくくなる。
【0050】
上部帯状体42は、上部帯状体40と基本的に同様であるが、主シート部20と、左右両端部のみならず、その上側の辺縁部の全部においても結合している。このように、上部帯状体42は、主シート部20との間に着用者の鼻を収容する鼻ラップポケットを構成している。着用時には、上部帯状体42の中央部を内側(着用者側)向きに、かつ、やや上向きに引っ張り、上部帯状体42により形成された空間に鼻を入れた後、引っ張るのを止める。これにより、上部帯状体42が伸張した状態で鼻の鼻頭又は鼻梁に引っ掛かって鼻を保持する。その結果、固定部90の作用と相俟って本体部10が着用者の顔面下部に固定される。
なお、上部帯状体42の着用者の鼻と接する面は図4において裏側に隠れている面となる。
【0051】
上部帯状体42は、主シート部20と、その上側の辺縁部の全部においても結合しているが、本発明はこれに限定されず、上部帯状体が、主シート部と、その上側の辺縁部の一部のみにおいて結合している態様であってもよい。
【0052】
鼻ラップポケットは、深さ(上下方向の長さの最大値)が20mm以上であるのが好ましい。深さが20mm以上であると、着用位置のずれがより生じにくくなる。
【0053】
このように、下部帯状体及び上部帯状体は、いずれも主シート部と左右両端部のみで結合していてもよく(図1に示される伸縮顎バンド及び伸縮鼻バンドの態様)、更に下側又は上側の辺縁部の全部又は一部においても結合していてもよい(図4に示される顎ラップポケット及び鼻ラップポケットの態様)。
【0054】
着用時における下部帯状体及び上部帯状体並びに主シート部の状態について説明する。
図5は、着用時における下部帯状体及び上部帯状体並びに主シート部の状態を示す模式図である。
図5(A)は、図1に示されるマスク100の着用時の状態を示す。下部帯状体30は伸縮顎バンドを構成して、着用者の下顎に引っ掛かって下顎を保持している。また、上部帯状体40は伸縮鼻バンドを構成して、着用者の鼻に引っ掛かって鼻を保持している。
図5(A)に示される状態となるようにするためには、例えば、伸縮顎バンド及び伸縮鼻バンドに用いられる伸縮性材料として、ウレタンフィラメントと綿糸とを交織した伸縮包帯(例えば、白十字社製の伸縮包帯)を用い、伸縮顎バンド及び伸縮鼻バンドの上下方向の長さをそれぞれ30mmとする方法が挙げられる。
また、下部帯状体30及び上部帯状体40は、図5(A)に示されるように、主シート部20と着用者の肌との間に存在(介在)することにより、主シート部20の内面と着用者の肌との接触を防ぐように働いている。
【0055】
図5(B)は、図4に示されるマスク102の着用時の状態を示す。下部帯状体32は顎ラップポケットを構成して、着用者の下顎全体から両頬に至る部位を被覆して、下顎を保持している。また、上部帯状体42は鼻ラップポケットを構成して、着用者の鼻全体から両頬に至る部位を被覆して、鼻を保持している。
図5(B)に示される状態となるようにするためには、例えば、顎ラップポケット及び鼻ラップポケットに用いられる伸縮性材料として、一方向伸長性の伸縮性材料(例えば、米国トレドガー社製のFlexAire 541 Elastic Laminate)を用い、顎ラップポケット及び鼻ラップポケットの深さをそれぞれ50mmとする方法が挙げられる。
また、下部帯状体32及び上部帯状体42は、図5(B)に示されるように、主シート部20と着用者の肌との間に存在(介在)することにより、主シート部20の内面と着用者の肌との接触を防ぐように働いている。したがって、図5(B)においては、主シート部20の内側の表面と着用者の肌とが接触していない。この態様では、着用者が会話時に口を開閉したりして、顎が上下に動く場合にも、その動きが主シート部20に伝わりにくいため、着用位置のずれがより生じにくい。
このように、主シート部20の内側の表面と着用者の肌とが接触しないようにするためには、例えば、下部帯状体32をその下側の辺縁部の主シート部20との結合部より上の位置において折り返した状態で着用者の下顎を収容する構造とし、かつ、上部帯状体42をその上側の辺縁部の主シート部20との結合部より下の位置において折り返した状態で着用者の鼻を収容する構造とする態様が挙げられる。この態様においては、少なくとも、下部帯状体32及び上部帯状体42の折り返し部分の厚さの分だけ、主シート部20の内側の表面と着用者の肌との間が離間する程度は更に大きくなる。
【0056】
図5(C)は、マスク104の着用時の状態を示す。マスク104は、基本的に、マスク100と同様であるが、本体部14の主シート部20に、上部帯状体40の代わりに、マスク102におけるのと同様の上部帯状体42が設けられている点で異なる。
下部帯状体30は伸縮顎バンドを構成して、着用者の下顎に引っ掛かって下顎を保持している。また、上部帯状体42は鼻ラップポケットを構成して、着用者の鼻全体から両頬に至る部位を被覆して、鼻を保持している。
また、下部帯状体30及び上部帯状体42は、図5(C)に示されるように、主シート部20と着用者の肌との間に存在(介在)することにより、主シート部20の内面と着用者の肌との接触を防ぐように働いている。
【0057】
図5(D)は、マスク106の着用時の状態を示す。マスク106は、基本的に、マスク100と同様であるが、本体部16の主シート部20に、下部帯状体30の代わりに、マスク102におけるのと同様の下部帯状体32が設けられている点で異なる。
下部帯状体32は顎ラップポケットを構成して、着用者の下顎全体から両頬に至る部位を被覆して、下顎を保持している。また、上部帯状体40は伸縮鼻バンドを構成して、着用者の鼻に引っ掛かって鼻を保持している。
また、下部帯状体32及び上部帯状体40は、図5(D)に示されるように、主シート部20と着用者の肌との間に存在(介在)することにより、主シート部20の内面と着用者の肌との接触を防ぐように働いている。
【0058】
さらに、下部帯状体及び上部帯状体の変形状態について、種々の上部帯状体を例に挙げて説明する。
図6は、左右両端部のみが主シート部に直接結合する上部帯状体を示す模式的な平面図である。
図6の上側の図に示されるように、上部帯状体は、左右方向の長さがLであり、上下方向の長さがこれよりかなり短い(例えば、7mm)。
上部帯状体は、左右方向の中央部を指でつまんで下側に引っ張ると、図6の下側の図に示されるように、上縁部の左右方向の長さがL、下縁部の左右方向の長さがLとなる。この場合、上下方向の長さが相対的にかなり短い態様であるので、LとLとはほぼ等しくなる。
【0059】
図7は、左右両端部のみが主シート部に直接結合する別の上部帯状体を示す模式的な平面図である。
図7の上側の図に示されるように、上部帯状体は、左右方向の長さがLであり、上下方向の長さがこれより短いが幅広である(例えば、50mm)。
上部帯状体は、左右方向の中央部の下縁部の付近を指でつまんで下側に引っ張ると、図7の下側の図に示されるように、上縁部の左右方向の長さがL、下縁部の左右方向の長さがLとなる。この場合、上下方向の長さが相対的にかなり長い態様であるので、つままれた下縁部の付近と上縁部の付近とではその変形状態が異なってくる。具体的には、LよりもLがかなり長くなる。また、上縁部と下縁部との間の部分の変形状態も、上側よりも下側において変形率が高くなる。すなわち、変形前には(1)、(2)、(3)及び(4)の部分の長さは等しいが、これらに相当する部分の変形後の(1)’、(2)’、(3)’及び(4)’の長さは、(1)’<(2)’<(3)’<(4)’となる。
【0060】
図6及び図7で示されるような上部帯状体は、伸縮鼻バンドを構成するものである。本発明においては、このような伸縮鼻バンドや伸縮顎バンドは、上述したような変形状態を考慮して材質、形状等を決定することになる。
【0061】
図8は、左右両端部及び上縁部の全部が主シート部に直接結合する上部帯状体を示す模式的な平面図である。
図8の上側の図に示されるように、上部帯状体は、左右方向の長さがLであり、上下方向の長さ(主シート部に結合している部分を除く。以下「深さ」ともいう。)がこれより短い(例えば、20mm)。
上部帯状体は、左右方向の中央部の下縁部の付近を指でつまんで下側に引っ張ると、図8の下側の図に示されるように、上縁部は固定されているので上縁部の左右方向の長さはLで変わらず、下縁部の左右方向の長さがLより長いLとなる。また、上縁部と下縁部との間の部分の変形状態も、上側よりも下側において変形率が高くなる。すなわち、変形前には(1)及び(2)の部分の長さは等しいが、これらに相当する部分の変形後の(1)’及び(2)’の長さは、(1)’<(2)’となる。
この態様では、上部帯状体は、左右両端部及び上縁部の3辺が主シート部に固定されているため、伸縮性材料の伸縮率よりも伸縮性が悪くなる。
【0062】
図9は、左右両端部及び上縁部の全部が主シート部に直接結合する別の上部帯状体を示す模式的な平面図である。
図9の上側の図に示されるように、上部帯状体は、左右方向の長さがLであり、上下方向の長さがこれより短いが、図8に示される上部帯状体よりも長くなっている(例えば、50mm)。
上部帯状体は、左右方向の中央部の下縁部の付近を指でつまんで下側に引っ張ると、図9の下側の図に示されるように、上縁部は固定されているので上縁部の左右方向の長さはLで変わらず、下縁部の左右方向の長さがLより長いLとなる。また、上縁部と下縁部との間の部分の変形状態も、上側よりも下側において変形率が高くなる。すなわち、変形前には(1)、(2)及び(3)の部分の長さは等しいが、これらに相当する部分の変形後の(1)’、(2)’及び(3)’の長さは、(1)’<(2)’<(3)’となる。
この態様では、上部帯状体は、左右両端部及び上縁部の3辺が主シート部に固定されているため、伸縮性材料の伸縮率よりも伸縮性が悪くなるが、図8に示される上部帯状体と比べると、上下方向の長さが長いため、上縁部が固定されていることの影響が少なくなっており、伸びやすくなっている。
【0063】
図8及び図9で示されるような上部帯状体は、鼻ラップポケットを構成するものである。本発明においては、このような鼻ラップポケットや顎ラップポケットは、上述したような変形状態を考慮して材質、形状等を決定することになる。
特に、鼻ラップポケットは、鼻頭及び小鼻が複雑な曲線形状を形成している上、その形状には大きな個人差がある点を考慮するのが好ましい。従来のマスクにおいては、鼻の周辺において、呼気が漏れたりずれたりしやすいという問題があった。
本発明においては、鼻ラップポケットは、鼻頭及び小鼻を被覆する態様が好ましく、更に、鼻梁も被覆する態様(図5(B)及び図5(C)参照。)がより好ましい。鼻ラップポケットが鼻梁も被覆する場合は、小鼻の周辺において多少の隙間が生じても呼気の漏れが生じにくい。
鼻ラップポケットの深さは、上記観点から、左右方向の中央部において、20mm以上であるのが好ましく、30mm以上であるのがより好ましい。
また、鼻ラップポケットの深さは、着用時に着用者の眼の付近まで被覆しないなどの扱いやすさの点から、100mm以下であるのが好ましい。
【0064】
鼻ラップポケットについて、用いられる伸縮性材料と形状との関係を説明する。
図10は、種々の材料及び形状の鼻ラップポケットを有するマスクを示す模式的な平面図である。図10においては、主シート部及び鼻ラップポケットのみを示している。図10中には、後述する作製したサンプルにおける主シート部及び鼻ラップポケットの大きさも示した。
図10(A)に示されるマスク102aは、主シート部20の上部に、非伸縮性材料である上部帯状体42aが左右両端部のみならず、その上側の辺縁部の全部においても結合しており、鼻ラップポケットを構成している。
後述する着用試験においては、上部帯状体42aが、非伸縮性材料であるPP・SMS不織布(Avgol社製、目付13g/m2、破断伸び30%)からなり、長方形の形状であり、主シート部20に熱シールにより結合されたサンプルを用いた。
【0065】
図10(B)に示されるマスク102bは、上部帯状体42aの代わりに非伸縮性材料である上部帯状体42bを用いた以外は、マスク102aと同じである。
後述する着用試験においては、上部帯状体42bとして、上部帯状体42aの下縁部付近に2本の470デシテックスのウレタンフィラメントを1.3倍に延伸させた状態で粘着剤により結合して取り付けたサンプルを用いた。
【0066】
図10(C)に示されるマスク102cは、上部帯状体42aの代わりに伸縮性材料である上部帯状体42cを用いた以外は、マスク102aと同じである。
後述する着用試験においては、上部帯状体42cとして、一方向伸縮性の伸縮性材料であるSEBSフィルムとPP不織布の複合弾性体(米国トレドガー社製、目付40g/m2、破断伸び220%)を、1.3倍に伸張させた状態で主シート部20に熱シールにより結合されたサンプルを用いた。
【0067】
図10(D)に示されるマスク102dは、上部帯状体42cの代わりに伸縮性材料である上部帯状体42dを用いた以外は、マスク102cと同じである。
後述する着用試験においては、上部帯状体42dとして、上部帯状体42cの左右方向の中央部における上下方向の長さを長くしたものを用いたサンプルを用いた。
【0068】
図10(E)に示されるマスク102eは、上部帯状体42cの代わりに伸縮性材料である上部帯状体42eを用いた以外は、マスク102cと同じである。
後述する着用試験においては、上部帯状体42eとして、上部帯状体42cの左右方向の中央部における上下方向の長さを短くしたものを用いたサンプルを用いた。
【0069】
図10に示される各マスクについて着用試験を行った。着用試験は、マスクを被験者に着用させて、着用性並びに被覆状態及び鼻周辺の隙間の発生状態を評価することにより行った。第1表に結果を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
第1表から明らかなように、鼻ラップポケットが非伸縮性材料である上部帯状体により構成されている場合(マスク102a及び102b)は、着用するのが困難であり、また、鼻周辺で隙間が生じてしまう。
これに対し、鼻ラップポケットが伸縮性材料である上部帯状体により構成されている場合(マスク102c、102d及び102e)は、着用するのが容易であり、かつ、鼻周辺で隙間が発生せず、又は発生してもわずかである。中でも、鼻ラップポケットを構成する上部帯状体の左右方向の中央部における上下方向の長さを長くした場合(マスク102d)は、極めて好ましいことが分かる。
【0072】
顎ラップポケット及び鼻ラップポケットの形状について説明する。
図11は、種々の顎ラップポケットの模式的な平面図である。図11(A)〜図11(F)においては、主シート部(図示せず)との結合部を実線で、開口部を点線で示している。なお、顎ラップポケットは、実線部分のすべてにおいて主シート部と結合していてもよく、実線部分の一部において主シート部と結合していてもよい。
図11(A)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体34aが横長の長方形の形状であり、その左右両縁部及び下縁部が主シート部と結合することにより構成されている。
図11(B)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体34bが横長かつ上辺が下辺より長い台形の形状であり、その左右両縁部及び下縁部が主シート部と結合することにより構成されている。
【0073】
図11(C)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体34cが弦の部分が上側になっているほぼ半円の形状であり、その左右両縁部から下縁部にかけての弧の部分が主シート部と結合することにより構成されている。
図11(D)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体34dが底辺の部分が上側になっている横長の二等片三角形の形状であり、その左右両縁部から下縁部にかけての二つの辺の部分が主シート部と結合することにより構成されている。
本発明においては、図11(C)及び図11(D)に示される顎ラップポケットのように、下部帯状体の左右両縁部と下縁部とが一体となっており、明確な分離が難しい態様であっても、主シート部の左右両端部の間にわたって設けられるものに該当しうる。
【0074】
図11(E)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体34eが横長の七角形の形状であり、その左右両縁部から下縁部にかけての六つの辺の部分が主シート部と結合することにより構成されている。
図11(F)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体34fが横長の六角形の形状であり、その左右両縁部から下縁部にかけての五つの辺の部分が主シート部と結合することにより構成されている。
本発明においては、図11(E)及び図11(F)に示される顎ラップポケットのように、多角形の下部帯状体を用いることができ、その場合、一辺のみが主シート部と結合していない態様に限られず、複数の辺が主シート部と結合していなくてもよい。例えば、図11(E)において、結合していない一つの辺の左右両側の二つの辺が結合していない態様であってもよい。
【0075】
上述した種々の顎ラップポケットの形状において、角張った部分については、角を丸めてソフトな感覚に仕上げることも好ましい態様の一つである。
【0076】
上記では、図11を用いて顎ラップポケットを例に挙げて説明したが、鼻ラップポケットについても同様である。
【0077】
上述したように、本発明においては、顎ラップポケット及び鼻ラップポケットは、主シート部の左右両端部の間にわたって設けられるものであれば、形状を特に限定されない。
【0078】
顎ラップポケットを構成する下部帯状体及び鼻ラップポケットを構成する上部帯状体は、それぞれ、主シート部の左右両端部の間にわたって設けられるものであれば、主シート部と直接結合するものであってもよく、主シート部と間接的に結合するものであってもよい。
【0079】
図12は、鼻ラップポケットを構成する上部帯状体が主シート部と間接的に結合するマスクの模式的な平面図である。なお、図12中の大きさは、後述する実施例6のマスクにおけるものであり、本発明を限定するものではない(図14においても同様である。)。
図12に示されるマスク108は、基本的に、着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部18と、本体部18に結合され、本体部18を着用者の顔面下部に固定する固定部90とを具備する。
本体部18は、主シート部20と、主シート部20の内側の上部において、主シート部20の左右両端部と間接的に結合し、前記左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の鼻を保持するための上部帯状体50を含む鼻ラップポケット構造体を有する。上部帯状体50及びそれを主シート部20に連結する部材等について、以下詳細に説明する。
【0080】
図13は、上部帯状体を含む鼻ラップポケット構造体を示す模式図である。図13(A)は平面図であり、図13(B)は図13(A)中のXIIIB−XIIIB線に沿った横端面図である。
また、図14は、鼻ラップポケット構造体を構成する複合シート及び伸縮性複合シートを示す模式的な平面図である。
図13に示される鼻ラップポケット構造体60は、図13(A)及び図13(B)に示されるように、複合シート62とその内側の伸縮性複合シート64とを、それらの上縁部及び左右両縁部で結合したものである。
具体的には、複合シート62は、特に限定されず、例えば、PE/PPスパンボンド不織布(例えば、チッソ社製、目付20g/m2)62aとその外側のLLD・PEフィルム(例えば、東燃化学社製、20μm)62bとをラミネートして得られるものを用いることができる。複合シート62は、図14(A)に示されるような平面形状をしている。複合シート62の台形状に切り欠いている部分は、口唇部に当たる部分であり、このような切り欠き部が存在することにより、空気の流通がしやすくなっている。
また、伸縮性複合シート64は、帯状の伸縮性材料により形成されているものであれば特に限定されず、例えば、平面方向において等方性の伸縮性を有するポリウレタンフィルム(例えば、シーダム社製、25μm)64aとその外側の左右方向に一方向性の伸縮性を有するPE/PETスパンレース不織布(例えば、ユニチカ社製、30g/m2)64bとを熱融着によって結合させて得られるものを用いることができる。伸縮性複合シート64は、図14(B)に示されるような平面形状をしている。
複合シート62の内側に伸縮性複合シート64を、PE/PPスパンボンド不織布62aとPE/PETスパンレース不織布64bとが隣接するように積層し、それらの上縁部及び左右両縁部を熱融着によって結合させることにより、鼻ラップポケット構造体60を得ることができる。
【0081】
図12に示されるマスク108の本体部18は、主シート部20に、上述したような鼻ラップポケット構造体60を結合させて得ることができる。本体部18においては、鼻ラップポケット構造体60の伸縮性複合シート64が、上部帯状体50として機能する。
鼻ラップポケット構造体60と主シート部20との結合は、例えば、複合シート62と主シート面20との間に用意される結合手段によって行うことができる。結合手段は、特に限定されず、例えば、面ファスナー、接着剤、粘着剤等により結合させる方法が挙げられる。
図12に示されるマスク108の本体部18においては、主シート部20の上縁部より上に鼻ラップポケット構造体60の上縁部が位置するように主シート部20と鼻ラップポケット構造体60とが結合されているが、本発明においては、主シート部と鼻ラップポケット構造体との位置関係は特に限定されず、伸縮性複合シート64が、上部帯状体50として機能するように、主シート部20の左右両端部の間にわたって設けられていればよい。
【0082】
図12に示されるマスク108のように、主シート部に、鼻ラップポケット構造体のような別体を設けることにより、その一部を上部帯状体として機能させる態様は、本発明の好適な態様の一つである。
すなわち、上部帯状体(マスク108においては伸縮性複合シート64)とその外側のシート状物(マスク108においては複合シート62)とが上側の縁部及び左右両辺において結合している、下側に開口を有する袋状部材(マスク108においては鼻ラップポケット構造体60)を、前記上部帯状体が前記シート部の内側の上部に位置するように前記シート状物において結合させて、着用者の鼻を収容する鼻ラップポケットを構成するのは、本発明の好適な態様の一つである。
なお、図12に示されるマスク108においては、上部帯状体及びシート状物として、いずれも二つの材料を複合した部材を用いたが、本発明はこれに限定されず、それぞれ単一の材料からなる部材であってもよく、三つ以上の部材を複合した部材であってもよい。例えば、後述する実施例8においては、シート状物として、スパンボンド不織布からなる部材を用いている。
【0083】
図15は、顎ラップポケットを構成する下部帯状体が主シート部と間接的に結合するマスクの模式的な平面図である。なお、図15中の大きさは、後述する実施例7のマスクにおけるものであり、本発明を限定するものではない(図17においても同様である。)。
図15に示されるマスク109は、基本的に、着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部19と、本体部19に結合され、本体部19を着用者の顔面下部に固定する固定部90とを具備する。
本体部19は、主シート部20と、主シート部20の内側の下部において、主シート部20の左右両端部と間接的に結合し、前記左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の鼻を保持するための下部帯状体70を含む顎ラップポケット構造体を有する。下部帯状体70及びそれを主シート部20に連結する部材等について、以下詳細に説明する。
【0084】
図16は、下部帯状体を含む顎ラップポケット構造体を示す模式図である。図16(A)は平面図であり、図16(B)は図16(A)中のXVIB−XVIB線に沿った横端面図である。
また、図17は、顎ラップポケット構造体を構成する不織布シート及び伸縮性複合シートを示す模式的な平面図である。
図16に示される顎ラップポケット構造体80は、図16(A)及び図16(B)に示されるように、不織布シート82とその内側の伸縮性複合シート84とを、それらの下縁部及び左右両縁部で結合したものである。
具体的には、不織布シート82は、通気性であるのが好ましく、例えば、ガーゼ状のTCF不織布(例えば、#403、フタムラ化学社製、目付30g/m2)を用いることができる。不織布シート82は、図17(A)に示されるような平面形状をしている。
顎ラップポケット構造体80は、不織布シート82の二等辺三角形状の部分が露出する形状であり、この露出した部分は、口唇が接する部位を想定している。なお、図17(A)中の点線で囲んだ3箇所の部分(外側の面)には、はく離層を持つ粘着テープが設けられている。
また、伸縮性複合シート84は、帯状の伸縮性材料により形成されているものであれば特に限定されず、例えば、平面方向において等方性の伸縮性を有するポリウレタンフィルム(例えば、シーダム社製、25μm)84aとその外側の左右方向に一方向性の伸縮性を有するPE/PETスパンレース不織布(例えば、ユニチカ社製、30g/m2)84bとを熱融着によって結合させて得られるものを用いることができる。伸縮性複合シート84は、図17(B)に示されるような平面形状をしている。
不織布シート82の内側に伸縮性複合シート84を、不織布シート82とPE/PETスパンレース不織布84bとが隣接するように、かつ、不織布シート82の上縁部が伸縮性複合シート84の上縁部からはみ出すように積層し、それらの下縁部及び左右両縁部を熱融着によって結合させることにより、顎ラップポケット構造体80を得ることができる。
【0085】
図15に示されるマスク109の本体部19は、主シート部20に、上述したような顎ラップポケット構造体80を結合させて得ることができる。本体部19においては、顎ラップポケット構造体80の伸縮性複合シート84が、下部帯状体70として機能する。
主シート部20と顎ラップポケット構造体80との結合は、上述した不織布シート82の裏面に用意された粘着テープにより行われる。
図15に示されるマスク109の本体部19においては、主シート部20の下縁部より下に顎ラップポケット構造体80の下縁部が位置するように、かつ、主シート部20の左右両縁部より左右方向の外側に顎ラップポケット構造体80の左右両縁部が位置するように、主シート部20と顎ラップポケット構造体80とが結合されているが、本発明においては、主シート部と顎ラップポケット構造体との位置関係は特に限定されず、伸縮性複合シート84が、下部帯状体70として機能するように、主シート部20の左右両端部の間にわたって設けられていればよい。
【0086】
図15に示されるマスク109のように、主シート部に、顎ラップポケット構造体のような別体を設けることにより、その一部を下部帯状体として機能させる態様は、本発明の好適な態様の一つである。
すなわち、下部帯状体(マスク109においては伸縮性複合シート84)とその外側のシート状物(マスク109においては不織布シート82)とが下側の縁部及び左右両辺において結合している、上側に開口を有する袋状部材(マスク109においては顎ラップポケット構造体80)を、前記下部帯状体が前記シート部の内側の下部に位置するように前記シート状物において結合させて、着用者の下顎を収容する顎ラップポケットを構成するのは、本発明の好適な態様の一つである。
なお、図15に示されるマスク109においては、下部帯状体として、二つの材料を複合した部材を用いたが、本発明はこれに限定されず、単一の材料からなる部材であってもよく、三つ以上の部材を複合した部材であってもよい。また、図15に示されるマスク109においては、シート状物として、単一の材料からなる部材を用いたが、本発明はこれに限定されず、二つ以上の部材を複合した部材であってもよい。
【0087】
本発明においては、下部帯状体及び上部帯状体により、それぞれ顎ラップポケット及び鼻ラップポケットを設ける方法として、上述したように、例えば、下部帯状体及び上部帯状体を直接主シート部と結合させる方法、下部帯状体を用いた袋状部材及び上部帯状体を用いた袋状部材を主シート部に結合させる方法、これらを組み合わせた方法(例えば、下部帯状体は直接主シート部と結合させ、上部帯状体はそれを用いた袋状部材を主シート部と結合させる方法、下部帯状体はそれを用いた袋状部材を主シート部と結合させ、上部帯状体は直接主シート部と結合させる方法)が挙げられる。
下部帯状体及び上部帯状体を直接主シート部と結合させる方法は、材料費が安価であり、また、製造工程が簡易であるという利点がある。
下部帯状体を用いた袋状部材及び上部帯状体を用いた袋状部材を主シート部に結合させる方法は、袋状部材を主シート部に結合させる態様により、下部帯状体及び上部帯状体がそれぞれ主シート部の左右縁部より左右方向の外側や内側に位置するようにすることができる。袋状部材と主シート部との結合は比較的簡単であるため、主シート部の構造と袋状部材の構造を、それぞれ独立して設計することができ、多様な態様を実現することができる。
また、袋状部材を着脱可能にして、着用により袋状部材が汚れた場合には袋状部材のみを脱着して廃棄し、主シート部は洗濯可能な材料により構成して複数回使用することもできる。
【0088】
上述したような袋状部材を用いた顎ラップポケット及び鼻ラップポケットの形状について説明する。
図18は、種々の顎ラップポケットの模式的な平面図である。図18(A)及び図18(B)においては、顎ラップポケットの縁部を実線で、開口部を点線で示している。なお、顎ラップポケットと主シート部(図示せず)との結合は、図17(A)で説明したように、顎ラップポケットの縁部で結合しなくてもよく、ずれないように部分的に粘着剤等で結合すればよい。
図18(A)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体72が横長の長方形の形状であり、下部帯状体72とその外側のシート状物72aとが下側の縁部及び左右両辺においてシート状物72aの上縁部がはみ出るように結合し、上側に開口を有する袋状部材を構成している。袋状部材と主シート部との結合は、通常は、シート状物72aの外側の面に設けられた結合手段によって行われる。
図18(B)に示される顎ラップポケットは、下部帯状体74が横長の長方形の形状であり、下部帯状体74とその外側のシート状物74a(上縁部中央に切り欠き部を有する。)とが下側の縁部及び左右両辺において結合し、上側に開口を有する袋状部材を構成している。袋状部材と主シート部との結合は、通常は、シート状物74aの外側の面に設けられた結合手段によって行われる。
この袋状部材を用いる態様においては、下部帯状体とシート状物とは重なり合う部分があればよく、形状を特に限定されない。
以上、顎ラップポケットを例に挙げて説明したが、鼻ラップポケットについても同様である。
【0089】
また、本発明においては、下部帯状体が、スリット又は穴を有し、前記スリット又は前記穴に着用者の下顎を収容するのが好ましい態様の一つである。
図29は、本発明のマスクの別の一例を示す模式的な平面図である(ただし、フラップ36bについては、斜視図的に図示してある。)。なお、図29中の大きさは、後述する実施例4のマスクにおけるものであり、本発明を限定するものではない。
図29に示されるマスク112は、基本的に、マスク102と同様であるが、本体部17の主シート部20に、下部帯状体32の代わりに、下部帯状体36が設けられている点で異なる。
下部帯状体36は、基本的に下部帯状体32と同様であるが、スリット36aを有する点及びフラップ36bを有する点で異なる。
スリット36aは、着用時に、着用者の下顎を収容する。これにより、下部帯状体36による下顎の収容がより確実になり、ずれがより生じにくくなる。
フラップ36bは、下顎を収容する際に引き出して、スリット36aに下顎を挿入しやすくする効果を奏する。
なお、下部帯状体36はスリット36aを有するものであるが、下部帯状体は、スリットの代わりに穴を有していても、同様の効果を得ることができる。
【0090】
本発明においては、下部帯状体、及び/又は、上部帯状体が、着用時において、主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられているのが好ましい態様の一つである。
図19は、下部帯状体及び上部帯状体が、着用時において、主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられている本発明のマスクの着用時の左右方向の中央部における模式的な端面図である。
図19に示されるマスク102は、図4及び図5(B)に示されるマスク102であり、上述したように、下部帯状体32が、その下側の辺縁部の全部において、主シート部20と結合しており(図19中、斜線部が結合部)、着用者の肌Wのうち下顎Wを収容する顎ラップポケットを構成し、かつ、上部帯状体42が、その上側の辺縁部の全部において、主シート部20と結合しており(図19中、斜線部が結合部)、着用者の肌Wのうち鼻頭Wを収容する鼻ラップポケットを構成している。
下部帯状体32は、図19に示されるように、着用時において、折り返され、主シート部20と着用者の肌Wとの間に二重に存在する部分が生じ、また、上部帯状体42は、図19に示されるように、着用時において、折り返され、主シート部20と着用者の肌Wとの間に二重に存在する部分が生じている。また、着用者の肌Wのうち口唇Wはマスク102のいずれの部分とも接触していない。
このような構造により、着用時において、主シート部20の内側の表面と着用者の肌Wとが接触しないようになっている。
【0091】
図20は、従来公知の超立体型マスクの着用時の左右方向の中央部における模式的な端面図である。
図20に示されるマスク200は、着用時に、本体シート部210の内面が着用者の肌Wのうち下顎W及び鼻頭Wと直接接触している。
このように、従来公知のいわゆる超立体型マスクにおいては、着用者の肌が、下顎及び鼻頭、更には両頬で、本体シート部の内面に強く接触する。これはいわゆる立体型マスクにおいても同様である。
また、従来公知のプリーツ型マスクにおいては、立体型マスクと同様に、下顎、鼻頭及び両頬で本体シート部の内面に接触するし、また、更に口の部分でも接触することがある。
上述したように、従来公知のマスクにおいては、いずれも、着用者の肌が本体シート部の内面と接触する構造となっている。
これに対し、上述した、下部帯状体、及び/又は、上部帯状体が、着用時において、主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられている本発明の態様においては、容易に、主シート部の内側の表面と着用者の肌とが接触しないという着用状態(フローティング状態)を実現させることができる。
【0092】
さらに、下部帯状体、及び/又は、上部帯状体が、着用時において、主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられている本発明の態様について説明する。
図21は、本発明のマスクの更に別の一例を示す模式図である。図21(A)は平面図であり、図21(B)は斜視図である。なお、図21中の大きさは、後述する実施例5のマスクにおけるものであり、本発明を限定するものではない。
図21に示されるマスク110は、基本的に、マスク102と同様であるが、本体部11の主シート部20に、下部帯状体32及び上部帯状体42の代わりに、これらとは形状が異なる下部帯状体34及び上部帯状体44が設けられている点と、固定部90の代わりに、これとは形状が異なる固定部92が設けられている点で異なる。
下部帯状体34は、上下方向の長さが左右両縁部と左右方向の中央部において長く、その中間(左右2箇所)が短くなっている。
上部帯状体44は、上下方向の長さが左右両縁部と左右方向の中央部において長く、その中間(左右2箇所)が短くなっている。
下部帯状体34と上部帯状体44とは、左右両縁部付近において、上部帯状体44が外側、下部帯状体34が内側になるように、重なった状態で主シート部20に結合されている。具体的には、主シート部20の左右両縁部において、上部帯状体44の両縁部が結合し、主シート部20の左右両縁部及び上部帯状体44の両縁部の下部帯状体34と重なった部分において、下部帯状体34の両縁部が結合している。
固定部92は、固定部90と形状が異なっている。
【0093】
図22は、図21に示される本発明のマスクの着用時の模式図である。図22(A)は着用者の顔の正面側から見た図であり、図22(B)は着用者の顔の右側面側から見た図である。図22においては、下部帯状体及び上部帯状体の存在状態を明りょうに示すため、主シート部を省略してある。
マスク110においては、下部帯状体34及び上部帯状体44が、着用時において、主シート部(図示せず)と着用者の肌との間に存在するように設けられている。
下部帯状体34は、着用者の顔面の下顎から顎骨を経由して両頬に至る部分において着用者の顔面に接触するように設けられている。また、上部帯状体44は、顔面の鼻頭から小鼻を経由して両頬に至る部分において着用者の顔面に接触するように設けられている。
下部帯状体34と上部帯状体44とは、上述したように、左右両縁部付近において重なっている部分があるから、着用者の顔面の口唇の周辺部を取り囲むように、環状の構造を形成している。主シート部は、この下部帯状体34と上部帯状体44の外側に位置することになる。したがって、主シート部は、着用者の顔面と接触しない状態(フローティング状態)となっている。換言すれば、主シート部と口唇の周辺部との間には、空間が形成されている。
このように、下部帯状体34及び上部帯状体44並びに主シート部は、口唇の周辺部と接触していないから、着用者は話をしたり、口で呼吸をしたりする際に、負担を感じることがない。また、鼻の穴部は、口唇の周辺部の空間に開放されているから、鼻で呼吸する際にも、負担を感じることがない。
また、下部帯状体34は、下顎を被覆する部分で折り返されて二重になっている。上部帯状体44は、鼻頭を被覆する部分で折り返されて二重になっている。このように、下部帯状体34及び上部帯状体44が着用時において、折り返され、主シート部と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じているため、容易に、主シート部の内側の表面と着用者の肌とが接触しないという着用状態(フローティング状態)を実現させることができる。また、下部帯状体34及び上部帯状体44が折り返されているため、着用者の肌との密着性が高くなり、呼気の漏れが生じにくくなっているという利点もある。
なお、図21に示されるマスク110は、下部帯状体34及び上部帯状体44の両方を有する態様であるが、本発明はこれに限定されず、下部帯状体のみを有していてもよいし、上部帯状体のみを有していてもよい。
【0094】
主シート部と着用者の肌との間に形成される空間(以下「マスク内空間」ともいう。)について、更に説明する。
図23は、マスク内空間の説明図である。
図23は、基本的に、図5(B)と同じであるが、マスク内空間の説明のための符号を追記してある。
Pは、主シート部20の内側の表面と、着用者の鼻の本体部12と接触する部分のうち左右方向の中央最下部との最短距離である。
Qは、主シート部20の内側の表面と、着用者の上唇の左右方向の中央最下部との最短距離である。
Rは、主シート部20の内側の表面と、着用者の顎の本体部12と接触する部分のうち左右方向の中央最上部との最短距離である。
Sは、主シート部20の内側の表面と、口唇を閉じた状態において上下の唇の合わせ目から外側に向かう延長線上の着用者の口角から20mmの位置にある頬の部分との最短距離である。
P、Q、R及びSをそれぞれ、又は総称して、「マスク内空間距離」という。
【0095】
着用時に、主シート部の内側の表面と着用者の肌とが接触しない本発明の態様は、例えば、図23に示されるように、下部帯状体32が、着用時において、前記主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられ、かつ、上部帯状体42が、着用時において、前記主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられることにより実現すること。また、上部帯状体42は着用者の鼻と接触し、主シート部20を支持する。したがって、P(主シート部20の内側の表面と、着用者の鼻の上部帯状体42と接触する部分のうち左右方向の中央最下部との最短距離)及びR(主シート部20の内側の表面と、着用者の顎の下部帯状体32と接触する部分のうち左右方向の中央最上部との最短距離)は、それぞれ、主に上部帯状体42及び下部帯状体32の厚さに依存することになる。この点について、更に、Pに関し、図を用いて説明する。
【0096】
図24は、図23中の上部帯状体42と着用者の鼻との接触部位付近の拡大説明図である。図24に示されるように、P(主シート部20の内側の表面と、着用者の鼻の上部帯状体42と接触する部分のうち左右方向の中央最下部との最短距離)は、着用時に折り返すように設けられている上部帯状体42の2枚分の厚さ、折り返された上部帯状体42の距離及び上部帯状体42と主シート部20との接合部分(例えば、接着剤)の厚さの合計とほぼ等しくなる。したがって、上部帯状体42が折り返されることによって、その2枚分の厚さがPに寄与することが分かる。すなわち、上部帯状体42が、着用時において、折り返され、主シート部20と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じる構造により、主シート部と着用者の肌との間に一重の上部帯状体のみが存在する場合や、主シート部と着用者の肌との間に上部帯状体が存在しない場合に比べて、Pを大きくすることができ、フローティング状態を実現しやすくしているのである。
【0097】
図24を用いてPに関し説明したが、Rについても同様であり、下部帯状体32が、着用時において、折り返され、主シート部20と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じる構造により、主シート部と着用者の肌との間に一重の上部帯状体のみが存在する場合や、主シート部と着用者の肌との間に下部帯状体が存在しない場合に比べて、Rを大きくすることができ、フローティング状態を実現しやすくしているのである。
【0098】
P及びRは、それぞれ、0.5mm以上であるのが好ましく、1mm以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、フローティング状態を実現しやすく、ひいては、ずれが生じにくくなる。また、P及びRは、それぞれ、10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、ぶかぶかした感覚がなく、着用感が優れたものとなる。
P及びRは、それぞれ上記範囲とするためには、上部帯状体42及び下部帯状体32の厚さを特定の範囲にする方法が挙げられる。
例えば、上部帯状体42及び下部帯状体32として、伸縮性フィルム類、弾性糸と紡績糸とを用いてネット状に成形した伸縮包帯又はこれらと不織布との積層体を用いる場合、市販品では0.5mm以上であるのが通常であるため、これらを用いることにより、上部帯状体42及び下部帯状体32を主シート部20と着用者の肌との間に二重に存在させることにより、P及びRをそれぞれ1mm以上とすることが容易となる。
また、上部帯状体42及び下部帯状体32を、伸張させた状態で主シート部20に結合させ、その後、収縮させることにより、凹凸が生じ、P及びRを大きくすることができる。
【0099】
口唇部は、通常のマスクでは一番汚れやすい部分であり、一方最も清潔に保つべき部位でもある。そのため、Qは、3mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、のどあめをなめたり、ガムやチョコレートを口中に含んだりしても、それによって主シート部の内側の面を汚しにくいし、また、着用者が口紅をしている場合において、話をしても、口紅が主シート部に移りにくい。また、Qは、25mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、ぶかぶかした感覚がなく、着用感が優れたものとなる。
【0100】
Sは、1mm以上であるのが好ましく、2mm以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、話をしたりしている時に、口元が主シート部の内側の面に触れる煩わしさを抑制することができる。また、Sは、15mm以下であるのが好ましく、10mm以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、ぶかぶかした感覚がなく、着用感が優れたものとなる。
【0101】
P、Q、R及びSの関係は、特に限定されないが、通常、Q>S>P≒Rとなる。
【0102】
P、Q、R及びSの測定方法は、以下のとおりである。
着用者が着用するマスクの主シート部のP、Q、R及びSを測定する位置に、穴あけポンチ(直径5mm)を用いて丸穴を開ける。ついで、端部から長さの目盛り(0.5mm単位)の入ったプラスチック製の丸棒(直径3mm)を丸穴に挿入し、P、Q、R及びSを測定する着用者の肌の位置に接触した状態で目盛りを読み、挿入された部分の長さを測定する。さらに、主シート部の厚さを測定して、挿入された部分の長さから差し引いて、P、Q、R及びSを算出する。
なお、目盛りの読み取りは0.5mm単位で行う。主シート部の内側の表面と着用者の肌とが接触している場合は、0mmとする。少なくとも着用者4名の測定値の平均(ただし、0.5mm単位に丸める。)を算出して、P、Q、R及びSの値とする。
【0103】
本発明のマスク100において、本体部10は、主シート部20、下部帯状体30及び上部帯状体40以外の部材を有していてもよい。
例えば、本体部10は、図1に示されるように、上部帯状体40を有しているが、本発明のマスクにおいては、上部帯状体の代わりに、主シート部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材や、主シート部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材を用いることもできる。これらは、上部帯状体と併用することもできる。
【0104】
着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材及び着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材は、主シート部の上部に設けられる。鼻の突起部は形状の起伏が大きいため、また、鼻頭には強いテンションが掛かりやすいために、鼻の根元には隙間が生じやすい。これらは、このような隙間が生じることを抑制する。
着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材及び着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材は、特に限定されず、例えば、従来のマスクに用いられているノーズフィット用のテープ部材やワイヤー部材を用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウム等の金属テープ、合成樹脂製ロッドが挙げられる。
【0105】
図1に示される本発明のマスク100において、固定部90は、本体部10に結合され、本体部10を着用者の顔面下部に固定する。
固定部90は、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されている。伸縮性材料は、特に限定されず、例えば、ゴム糸と綿との交織帯、ウレタンフィラメントとポリエステルフィラメントとの交編ネット、チューブ状に編成したウリーナイロン、伸縮性不織布が挙げられる。
中でも、本発明者が特開平6−328600号公報及び特開平7−252762号公報で提案した、一方向伸張性の複合弾性体にスリット又は切り欠きを設けたもの(例えば、図21に示される固定部92)が好ましく、エラストマーフィルムの片面又は両面を不織布で積層した一方向伸張性の複合弾性体にスリット又は切り欠きを設けたものであるのがより好ましい。この場合、着用時に安定的に本体部を固定することができ、また、着用者の肌に跡が残りにくい。
【0106】
本発明においては、固定部は、ループ状の伸縮性材料に限定されない。例えば、本体部の左右両側にそれぞれ設けられ、互いに結ぶことにより、着用者の耳に掛けることができるようにした2本の紐、眼鏡のツルの部分のように、着用者の耳に上側から掛けるようにした構造体、眼帯に用いられているのと同様の着用者の頭部に掛けるループ状のヘッドバンド、着用者の頬等で密着させる粘着材が挙げられる。
【0107】
本発明のマスク100は、上述した各種部材を一体化させて得ることができる。一体化の方法は、特に限定されず、例えば、ミシン糸等による縫合;ホットメルト等による接着;ヒートシール、超音波シール等による溶結が挙げられる。ミシン糸による縫合の場合には、ミシン目に対して、樹脂、粘着テープ等による目止め処理を行うことができる。
【0108】
本発明のマスクの作用効果について説明する。
図25は、マスクの着用者の顔面の動きによる寸法変化を示す模式的な説明図である。図25(A)は着用者が口を閉じている状態を示し、図25(B)は着用者が口を開いている状態を示す。
図25に示されるように、口を上下に開くと、鼻頭と顎下端との距離はLaからLbへと長くなり(差をΔLとする。)、また、顎下端を通り両頬を結ぶ長さもW1aからW1bへと長くなる(差をΔWとする。)。他方、鼻の付け根付近を通り両頬を結ぶ長さはW2aからW2bへとほとんど変化しない。
上述したように、口を上下に開くと、鼻頭と顎下端との距離はΔL、顎下端を通り両頬を結ぶ長さはΔWだけ大きくなるから、マスク本体が鼻頭及び顎下端に接触する場合や、マスク本体が両頬から顎下端にかけて接触する場合は、この変化がマスクの着用状態に大きな影響を及ぼす。以下、より具体的に説明する。
【0109】
図26は、従来公知の超立体型マスクの着用者の顔面の動きによる着用状態の変化を示す模式的な説明図である。図26(A)は着用者が口を閉じている状態を示し、図26(B)は着用者が口を開いている状態を示す。なお、図26においては、超立体型マスクの本体シート部を網掛け部で示し、その他の部分は図示を省略した。
図26に示されるように、超立体型マスクは、着用者が口を開くと、本体シート部が顎の移動に伴って下方に大きくずれる(矢印)。これは、超立体型マスクにおいては、顎の部位で本体シート部と顔面が強く接触しているためである。着用者が口の開閉を繰り返すと、このずれが繰り返され、場合によっては本体シート部が鼻からずり落ちてしまう状況に至る。
【0110】
図27は、従来公知のプリーツ型マスクの着用者の顔面の動きによる着用状態の変化を示す模式的な説明図である。図27(A)は着用者が口を閉じている状態を示し、図27(B)は着用者が口を開いている状態を示す。なお、図27においては、プリーツ型マスクの本体シート部を網掛け部で示し、その他の部分は図示を省略した。
図27に示されるように、プリーツ型マスクは、着用者が口を開くと、本体シート部のプリーツが開き、上下方向に伸びた形状となる。しかしながら、本体シート部の左右両縁部が中央に引っ張られて左右に大きい隙間が生じ(矢印)、呼気の漏れが生じる。
【0111】
図28は、本発明のマスクの着用者の顔面の動きによる着用状態の変化を示す模式的な説明図である。図28(A)は着用者が口を閉じている状態を示し、図28(B)は着用者が口を開いている状態を示す。なお、図28においては、本発明のマスクの本体部の主シート部を網掛け部で示し、本体部の下部帯状体及び上部帯状体を斜線部で示し、その他の部分は図示を省略した。
図28に示されるように、本発明のマスクは、着用者が口を開くと、顎を収容する下部帯状体が主シート部の下縁より下側にはみ出るように伸び、顎の移動に伴う主シート部の下方へのずれはほとんど生じない(矢印)。また、呼気の漏れも生じない。
上述したように、従来公知のマスクにおいては、着用者の顔面の動きにより、ずれが生じたり、呼気の漏れが生じたりすることは避けられなかった。これに対し、本発明のマスクは、着用者の顔面の動きにより、主シート部のずれが生じたり、呼気の漏れが生じたりすることがない。これは、下部帯状体及び/又は上部帯状体が帯状の伸縮性材料により形成されているため、この伸縮性材料の伸縮効果により、着用者の顔面の動きが吸収され、主シート部に伝わらないようになっているからである。この効果は、フローティング状態が実現されている場合には、より大きくなる。
【0112】
以上、本発明のマスクを図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
また、各実施形態における各部の構成を任意に組み合わせて、別の実施形態とすることもできる。
【0113】
本発明のマスクは、着用位置のずれが生じにくいため、種々の用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明について実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0115】
1.マスクの製造
(実施例1) 鼻バンドと顎ラップポケットとを組み合わせた態様
以下のようにして、図30に示されるマスク114を製造した。なお、マスク114は、図5(D)に示されるマスク106とほぼ同じであるが、顎ラップポケットの深さが深い点、及び、鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材を有している点で異なる。マスク114の大きさは、図30中に示したとおりである。
図31に示される市販のプリーツ型マスク(フィッティ7dayマスク、玉川衛材社製)を用意した。このマスクは、本体シート部の上縁部中央付近に、鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材(図中、点線部)を有している。このマスクの大きさは、図31中に示したとおりである。
この市販のプリーツ型マスクに、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる鼻バンド(上部帯状体)と帯状の伸縮性材料からなる顎ラップポケット(下部帯状体)とを取り付け、マスク114を得た。
鼻バンドは、ゴム糸と綿糸とを交織した幅10mmのゴム糸バンド(フジハト製パジャマゴム、破断伸び210%)を、市販のプリーツ型マスクの本体シート部(マスク114の主シート部に相当する。)の内側の面に未伸長の状態で、本体シート部の上縁から下側に10mmの位置にゴム糸バンドの上縁が位置するように、左右両端をゴム系接着剤で結合させて取り付けた。
また、厚さ30μmのポリウレタンフィルムの表裏両面に、易伸張性のスパンレース不織布(ユニチカ製,PE/PET1.5d×51mm、レーヨン2d×51mmの50/50混合繊維、20g/m2)を熱結合して得られた3層構造の伸縮複合体(コンペラ、(株)日本吸収体技術研究所製、破断伸び270%)を、幅50mmに裁断し、約30%伸長させた状態で、下縁及び左右両縁をゴム系結合剤で本体シート部の下縁及び左右両縁に結合させて、ほぼ50mmの深さを持つ顎ラップポケットを取り付けた。
【0116】
(実施例2) 鼻バンドと顎バンドとを組み合わせた態様
以下のようにして、図32に示されるマスク116を製造した。マスク116の大きさは、図32中に示したとおりである。
図33に示される市販の超立体型マスク(超立体ウイルスガードやや大きめサイズ、ユニチャーム社製)を用意した。このマスクは、本体シート部の上縁部の中央付近の左右両側に、鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材(図中、点線部)を有している。このマスクの大きさは、図33中に示したとおりである。
この市販の超立体型マスクに、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる鼻バンド(上部帯状体)と帯状の伸縮性材料からなる顎バンド(下部帯状体)とを取り付け、マスク116を得た。
鼻バンドは、ゴム糸と綿糸とを交織した幅10mmのゴム糸バンド(フジハト製パジャマゴム、破断伸び210%)を、市販の超立体型マスクの本体シート部(マスク116の主シート部に相当する。)の内側の面に未伸長の状態で、本体シート部の上縁中央の頂点から下側に40mmの位置にゴム糸バンドの上縁が位置するように、左右両端をゴム系接着剤で結合させて取り付けた。
顎バンドは、ゴム糸と綿糸とを交織した幅10mmのゴム糸バンド(フジハト製パジャマゴム、破断伸び210%)を、市販の超立体型マスクの本体シート部の内側の面に未伸長の状態で、本体シート部の下縁中央の頂点から上側に20mmの位置にゴム糸バンドの下縁が位置するように、左右両端をゴム系接着剤で結合させて取り付けた。
【0117】
(実施例3) 鼻ラップポケットと顎バンドとを組み合わせた態様
以下のようにして、図34に示されるマスク118を製造した。なお、マスク118は、図5(C)に示されるマスク104とほぼ同じであるが、鼻ラップポケットの深さが深い点で異なる。マスク118の大きさは、図34中に示したとおりである。
図35に示される市販のガーゼマスク(エアークリーンマスク、白鳩社製)を用意した。このマスクの大きさは、図35中に示したとおりである。
この市販のガーゼマスクに、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる鼻ラップポケット(上部帯状体)と帯状の伸縮性材料からなる顎バンド(下部帯状体)とを取り付け、マスク118を得た。
鼻ラップポケットは、幅60mmの伸縮包帯(抗菌シンシクタイ、ニチバン社製、破断伸び220%)を、市販のガーゼマスクの本体シート部(マスク118の主シート部に相当する。)の内側の面に未伸長の状態で、上縁及び左右両縁を本体シート部の上縁及び左右両縁にミシンにより2本線で縫い付けて結合させて、取り付けた。
顎バンドは、径20mmの伸縮自在の筒状アミ包帯(ワンタッチネット包帯、興和社製、破断伸び150%)を、市販のガーゼマスクの本体シート部の内側の面に未伸長の状態で、本体シート部の下縁から上側に13mmの位置に筒状アミ包帯の下縁が位置するように、左右両縁を本体シート部の左右両縁にミシンにより2本線で縫い付けて結合させて、取り付けた。
【0118】
(実施例4) 鼻ラップポケットと顎ラップポケット(下顎収容用スリット付き)とを組み合わせた態様
以下のようにして、図29に示されるマスク112を製造した。マスク112の大きさは、図29中に示したとおりである。
図35に示される市販のガーゼマスクに、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる鼻ラップポケット(上部帯状体)と帯状の伸縮性材料からなる下顎収容用スリットを有する顎ラップポケット(下部帯状体)とを取り付け、マスク112を得た。
鼻ラップポケットは、幅40mmの伸縮包帯(抗菌シンシクタイ、ニチバン社製、破断伸び220%)を、市販のガーゼマスクの本体シート部(マスク112の主シート部に相当する。)の内側の面に未伸長の状態で、上縁及び左右両縁を本体シート部の上縁及び左右両縁にミシンにより2本線で縫い付けて結合させて、取り付けた。
顎ラップポケットは、チューブ状ネット包帯(ププレ切って使えるネット包帯、日進医療機社製)を切り開いて平面状にして、縦40mm、横140mmのシートを切り出し、左右方向の中央部に上縁から20mmのところに長さ60mmの横スリットを、はさみを用いてカットして設けたものを、市販のガーゼマスクの本体シート部の内側の面に未伸長の状態で、下縁及び左右両縁(ただし、下から30mmの部分のみ。)を本体シート部の下縁及び左右両縁にミシンにより2本線で縫い付けて結合させて、取り付けた。
【0119】
(実施例5) 鼻ラップポケットと顎ラップポケットとを組み合わせた態様
以下のようにして、図21に示されるマスク110を製造した。マスク110の大きさは、図21中に示したとおりである。
主シート部20は、内側の表面を構成するシートであるPE不織布(DELNET、三昌社製、目付20g/m2)と、外側の表面を構成するシートであるPP製のSMMS不織布(Avgol社製、目付13g/m2)との間に、病原体不活性化シートとして、PE/PET複合繊維(ユニチカ社製、1.5d×51mm)に銀被覆ポリエステル繊維(シルファイバー、三菱マテリアル社製、2d×51mm)を3%混合したウェブを熱処理して得たシート(目付40g/m2)を挟んだ積層体を用いた。主シート部20は、左右方向の長さが200mm、上下方向の長さが100mmであった。
下部帯状体34及び上部帯状体44は、それぞれ、合成ゴムフィルムの両面を不織布で挟んだ複合体である一方向伸長性の伸縮体(Flex Aire 541 Elastic Laminate、トレドガー社製、目付95g/m2)を用いた。この伸縮体は、左右方向の長さが160mmで、上下方向の長さが左右端部で60mm、中央部が40mmとなるように、片側を波型形状に裁断して用いた。
主シート部20の内側の表面の上部に、上記伸縮体の1枚を、1.25倍に伸張させた状態で重ね、上縁部及び左右側縁部を熱シールにより結合させて鼻ラップポケット(上部帯状体44)を形成した。ついで、主シート部20の内側の表面の下部に、上記伸縮体のもう1枚を上下を逆にして、1.25倍に伸張させた状態で重ね(一部は上部帯状体44の上に重なった。)、下縁部及び左右側縁部を熱シールにより結合させて顎ラップポケット(下部帯状体34)を形成した。
さらに、固定部材92として、合成ゴムフィルムの両面を不織布で挟んだ複合体である一方向伸長性の伸縮体(Flex Aire 541 Elastic Laminate、トレドガー社製、目付95g/m2)を用い、耳掛け用の切り欠きを設けた上で、本体部11の左右両端部にそれぞれ熱シールにより結合させて取り付けた。
【0120】
(実施例6) 袋状部材により構成された鼻ラップポケットを有する態様(その1)
以下のようにして、図12に示されるマスク108を製造した。マスク108の大きさは、図12中に示したとおりである。
図31に示される市販のプリーツ型マスクに、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる上部帯状体50を含む鼻ラップポケット構造体60を取り付け、マスク108を得た。
(1)鼻ラップポケット構造体の製造
PE/PPスパンボンド不織布(チッソ社製、20g/m2)62aとLLD・PEフィルム(東燃化学社製、20μm)62bとをラミネートして得られた複合シート62を用意した。複合シート62は、図14(A)に示すような切り欠きを持つ形状に裁断したものであった。切り欠いた部分は、マスク108の着用時に鼻からの吸気及び排気を容易にすることを目的とする。
平面方向において等方性の伸縮性を有するポリウレタンフィルム(シーダム社製、25μm)64aと左右方向に一方向性の伸縮性を有するPE/PETスパンレース不織布(ユニチカ社製、30g/m2)64bとを熱融着によって結合させて得られた伸縮性複合シート64を用意した。伸縮性複合シート64の破断伸びは190%であった。伸縮性複合シート64は、図14(B)に示すような形状をしていた。伸縮性複合シート64は、マスク108において、上部帯状体50となる。
上記で用意した複合シート62と伸縮性複合シート64とを重ね合わせて、上縁及び左右両縁の3辺を熱融着によって結合させ、図13に示される鼻ラップポケット構造体60を得た。
鼻ラップポケット構造体60の材料構成は、図13(B)に示されるように、内側(図中、上側)から、ポリウレタンフィルム64a、PE/PETスパンレース不織布64b、PE/PPスパンボンド不織布62a及びLLD・PEフィルム62bの順であった。
(2)鼻ラップポケット構造体の取付け
鼻ラップポケット構造体60のLLD・PEフィルム62bの表面に粘着剤を塗布し、市販のプリーツ型マスクの本体シート部(マスク108の主シート部20に相当する。)の内側の表面に、図12に示すように、本体シート部の上縁から10mm上側に突き出るような位置に貼り付けて、マスク108を得た。
【0121】
(実施例7) 袋状部材により構成された顎ラップポケットを有する態様
以下のようにして、図15に示されるマスク109を製造した。マスク109の大きさは、図15中に示したとおりである。
図31に示される市販のプリーツ型マスクに、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる下部帯状体70を含む顎ラップポケット構造体80を取り付け、マスク109を得た。
(1)顎ラップポケット構造体の製造
ガーゼ状のTCF不織布(#403、二村化学社製、30g/m2)を図17(A)に示されるような形状に裁断して、不織布シート82とした。不織布シート82の外側の面に、図17(A)中、点線で囲まれている部分において、市販のプリーツ型マスクの本体シート部と結合させるための粘着テープを、はく離用テープの付いた状態で設けた。
平面方向において等方性の伸縮性を有するポリウレタンフィルム(シーダム社製、25μm)84aと左右方向に一方向性の伸縮性を有するPE/PETスパンレース不織布(ユニチカ社製、30g/m2)84bとを熱融着によって結合させて得られた伸縮性複合シート84を用意した。伸縮性複合シート84の破断伸びは190%であった。伸縮性複合シート84は、図17(B)に示すような形状をしていた。伸縮性複合シート84は、マスク109において、下部帯状体70となる。
上記で用意した不織布シート82と伸縮性複合シート84とを重ね合わせて、下縁及び左右両縁の3辺をホットメルト接着剤によって結合させ、図16に示される顎ラップポケット構造体80を得た。
顎ラップポケット構造体80の材料構成は、図16(B)に示されるように、内側(図中、上側)から、ポリウレタンフィルム84a、PE/PETスパンレース不織布84b及び不織布シート(TCF不織布)82の順であった。
図16(A)に示される顎ラップポケット構造体80の上部の二等辺三角形状をした部分は、伸縮性複合シート84が存在せず、不織布シート82が露出している部分であり、マスク109においては、着用者の口唇と接触する部位になる。
(2)顎ラップポケット構造体の取付け
顎ラップポケット構造体80の不織布シート82の粘着テープから、はく離用テープをはく離させ、市販のプリーツ型マスクの本体シート部(マスク109の主シート部20に相当する。)の内側の表面に、図15に示すように、本体シート部の下縁から10mm下側に突き出るような位置に貼り付けて、マスク109を得た。
【0122】
(実施例8) 袋状部材により構成された鼻ラップポケットを有する態様(その2)
以下のようにして、図36に示されるマスク120を製造した。
まず、実施例5の主シート部20と同様の材料からなり、図37に示される五角形の形状を有する本体シート部(マスク120の主シート部22に相当する。)に、ゴム紐の耳掛け(マスク120の固定部91に相当する。)を左右に結合して、図37に示されるマスク202を製造した。マスク202の大きさは、図37中に示したとおりである。
図37に示されるマスク202に、以下のようにして、帯状の伸縮性材料からなる上部帯状体52を含む鼻ラップポケット構造体61を取り付け、マスク120を得た。
(1)鼻ラップポケット構造体の製造
PE/PETスパンボンド不織布(ユニチカ社製、20g/m2)63を図39(A)に示されるような形状に裁断した。PE/PETスパンボンド不織布63の外側の面に、図39(A)中、点線で囲まれている部分において、マスク202の本体シート部と結合させるための粘着テープを、はく離用テープの付いた状態で設けた。
実施例7の伸縮性複合シート84と同様の材料からなり、図39(B)に示される形状の伸縮性複合シート65を用意した。伸縮性複合シート65は、マスク120において、上部帯状体52となる。
上記で用意したPE/PETスパンボンド不織布63と伸縮性複合シート65とを重ね合わせて、上縁及び左右両縁の3辺を熱融着によって結合させ、図38に示される鼻ラップポケット構造体61を得た。なお、図38において、図38(A)は平面図であり、図38(B)は図38(A)中のXXXVIIIB−XXXVIIIB線に沿った横端面図である。
鼻ラップポケット構造体61の材料構成は、図38(B)に示されるように、内側(図中、上側)から、ポリウレタンフィルム65a、PE/PETスパンレース不織布65b及びPE/PPスパンボンド不織布63の順であった。
(2)鼻ラップポケット構造体の取付け
鼻ラップポケット構造体61のPE/PETスパンボンド不織布63の粘着テープから、はく離用テープをはく離させ、マスク202の本体シート部の内側の表面に、図36に示すように、本体シート部の上部の左右両縁からわずかにはみ出すような位置に貼り付けて、マスク120を得た。
【0123】
2.マスクの評価
(1)実施例1のマスクの評価
実施例1で得られたマスクと、下部帯状体及び上部帯状体を取り付ける前の図31に示される市販のプリーツ型マスクとを用いて、男女各2名(合計4名)に着用させ、着用状態を評価した。
評価項目及び結果を第2表に示す。なお、マスク内空間距離は、0.5mm単位で測定し、着用者4名の測定値の平均(0.5mm単位に丸めたもの)を算出した(以下同様)。
【0124】
【表2】

【0125】
(2)実施例2のマスクの評価
実施例2で得られたマスクと、下部帯状体及び上部帯状体を取り付ける前の図33に示される市販の超立体型マスクとを用いて、男女各2名(合計4名)に着用させ、着用状態を評価した。
評価項目及び結果を第3表に示す。
【0126】
【表3】

【0127】
(3)実施例3のマスクの評価
実施例3で得られたマスクと、下部帯状体及び上部帯状体を取り付ける前の図35に示される市販のガーゼマスクとを用いて、男女各2名(合計4名)に着用させ、着用状態を評価した。
評価項目及び結果を第4表に示す。
【0128】
【表4】

【0129】
(4)実施例4のマスクの評価
実施例4で得られたマスクと、下部帯状体及び上部帯状体を取り付ける前の図35に示される市販のガーゼマスクとを用いて、男女各2名(合計4名)に着用させ、着用状態を評価した。なお、実施例4のマスクは、着用者の下顎の先端をスリット36aに挿入した状態で着用した。
評価項目及び結果を第5表に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
(5)実施例5のマスクの評価
実施例5で得られたマスクを用いて、男女各2名(合計4名)に着用させ、着用状態を評価した。
評価項目及び結果を第6表に示す。
【0132】
【表6】

【0133】
(6)実施例6のマスクの評価
実施例6で得られたマスクと、鼻ラップポケット構造体を取り付ける前の図31に示される市販のプリーツ型マスクとを用いて、眼鏡を常時着用する男女各2名(合計4名)に着用させ、眼鏡の曇りの発生状態を評価した。
その結果、市販のプリーツ型マスクにおいては、着用後平均20秒前後で眼鏡に曇りが発生したが、実施例6のマスクにおいては、着用後15分経過しても曇りの発生がなかった。
なお、実施例6のマスクは、ずれもほとんど生じなかった。
【0134】
(7)実施例7のマスクの評価
実施例7で得られたマスクと、顎ラップポケット構造体を取り付ける前の図31に示される市販のプリーツ型マスクとを用いて、女性4名に着用させ、以下のようにして評価を行った。
着用者は、いずれも着用前に濃い目の口紅を注し、クラッカービスケットを口に含んだ。
着用後3分間はそのまま静かに呼吸しながら着用し、その後2分間はクラッカービスケットをバリバリ噛み砕きながら口を動かし続け、その後3分間は静かに呼吸しながら着用して、マスクを取り外した。その後、実施例7のマスクの場合は、顎ラップポケット構造体80を主シート部20から取り外した。
その結果、市販のプリーツ型マスクにおいては、いずれの着用者の場合も、縦約50mm、横約60mmにわたって口紅がべっとりと付き、クラッカーの粉末が付着していた。これに対し、実施例7のマスクにおいては、マスクの主シート部20の動きが小さく、また、主シート部20の浮き上がりも発生したため、口紅の付着範囲は縦約30mm、横約40mmと小さく、また、クラッカーの付着量はわずかであった。
また、顎ラップポケット構造体80を取り外した状態で、主シート部20の内面を観察したところ、粘着剤の付着痕以外の汚れは全くなかった。
【0135】
(8)実施例8のマスクの評価
実施例8で得られたマスクと、鼻ラップポケット構造体を取り付ける前の図37に示されるマスク202とを用いて、男女各2名(合計4名)に着用させ、着用状態を評価した。
評価項目及び結果を第7表に示す。
【0136】
【表7】

【0137】
実施例8のマスクにおいては、鼻ラップポケット構造体61と主シート部22とは、2箇所の粘着剤で結合されているが、上部の粘着剤の部位のみで結合して鼻ラップポケット構造体61の可動範囲を広くすると、上部帯状体を折り返す状態で用いなくても、着用者の鼻にキャップ状にかぶせて着用することができる。
【符号の説明】
【0138】
10、11、12、14、16、17、18、19 本体部
20、22 主シート部
30、32、34、34a、34b、34c、34d、34e、34f、36、70、72、74 下部帯状体
36a スリット
36b フラップ
40、42、42a、42b、42c、42d、42e、44、50、52 上部帯状体
60、61 鼻ラップポケット構造体
62 複合シート
62a、63 PE/PPスパンボンド不織布
62b LLD・PEフィルム
64、65、84 伸縮性複合シート
64a、84a ポリウレタンフィルム
64b、84b PE/PETスパンレース不織布
72a、74a シート状物
80 顎ラップポケット構造体
82 不織布シート
90、91、92 固定部
100、102、102a、102、102c、102d、102e、104、106、108、109、110、112、114、116、118、120、200、202 マスク
210 本体シート部
W 着用者の肌
着用者の下顎
着用者の口唇
着用者の鼻頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部と、前記本体部に結合され、前記本体部を着用者の顔面下部に固定する固定部と
を具備し、
前記本体部が、主シート部と、前記主シート部の内側の下部において、前記主シート部の左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の下顎を保持するための下部帯状体、及び/又は、前記主シート部の内側の上部において、前記主シート部の左右両端部の間にわたって設けられた、帯状の伸縮性材料により形成されている、着用者の鼻を保持するための上部帯状体とを有する、マスク。
【請求項2】
前記下部帯状体、及び/又は、前記上部帯状体が、着用時において、前記主シート部と着用者の肌との間に存在するように設けられている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記下部帯状体が、顔面の下顎から顎骨を経由して両頬に至る部分において着用者の顔面に接触するように設けられ、及び/又は、前記上部帯状体が、顔面の鼻頭から小鼻を経由して両頬に至る部分において着用者の顔面に接触するように設けられている、請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
着用時において、前記主シート部の内側の表面と着用者の肌とが接触しない、請求項1〜3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の鼻の本体部と接触する部分のうち左右方向の中央最下部との最短距離が0.5mm以上である、請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の上唇の左右方向の中央最下部との距離が3mm以上である、請求項4又は5に記載のマスク。
【請求項7】
着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の顎の本体部と接触する部分のうち左右方向の中央最上部との最短距離が0.5mm以上である、請求項4〜6のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
着用時において、前記主シート部の内側の表面と、着用者の頬との距離が1mm以上である、請求項4〜7のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
前記下部帯状体及び/又は前記上部帯状体が、左右方向の最大伸張率が1.5以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のマスク。
【請求項10】
前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体が、その下側の辺縁部の全部において、前記主シート部と結合しておらず、着用者の下顎に引っ掛かる伸縮顎バンドを構成する、請求項1〜9のいずれかに記載のマスク。
【請求項11】
前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体が、その下側の辺縁部の全部又は一部において、前記主シート部と結合しており、着用者の下顎を収容する顎ラップポケットを構成する、請求項1〜9のいずれかに記載のマスク。
【請求項12】
前記下部帯状体が、着用時において、折り返され、前記主シート部と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じる、請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体とその外側のシート状物とが下側の縁部及び左右両辺において結合している、上側に開口を有する袋状部材を、前記下部帯状体が前記主シート部の内側の下部に位置するように前記シート状物において結合させて、着用者の下顎を収容する顎ラップポケットを構成する、請求項1〜9のいずれかに記載のマスク。
【請求項14】
前記顎ラップポケットが、深さ20mm以上である、請求項11〜13のいずれかに記載のマスク。
【請求項15】
前記本体部が、前記下部帯状体を有し、
前記下部帯状体が、スリット又は穴を有し、前記スリット又は前記穴に着用者の下顎を収容する、請求項1〜9のいずれかに記載のマスク。
【請求項16】
前記本体部が、前記上部帯状体を有し、
前記上部帯状体が、その上側の辺縁部の全部において、前記主シート部と結合しておらず、着用者の鼻に引っ掛かる伸縮鼻バンドを構成する、請求項1〜15のいずれかに記載のマスク。
【請求項17】
前記本体部が、前記上部帯状体を有し、
前記上部帯状体が、その上側の辺縁部の全部又は一部において、前記主シート部と結合しており、着用者の鼻を収容する鼻ラップポケットを構成する、請求項1〜15のいずれかに記載のマスク。
【請求項18】
前記上部帯状体が、着用時において、折り返され、前記主シート部と着用者の肌との間に二重に存在する部分が生じる、請求項17に記載のマスク。
【請求項19】
前記本体部が、前記上部帯状体を有し、
前記上部帯状体とその外側のシート状物とが上側の縁部及び左右両辺において結合している、下側に開口を有する袋状部材を、前記上部帯状体が前記主シート部の内側の上部に位置するように前記シート状物において結合させて、着用者の鼻を収容する鼻ラップポケットを構成する、請求項1〜15のいずれかに記載のマスク。
【請求項20】
前記鼻ラップポケットが、深さ20mm以上である、請求項17〜19のいずれかに記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2012−29990(P2012−29990A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173940(P2010−173940)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】