説明

マスフローコントローラーの監視

【課題】ポンプされていない状態にある圧力チャンバにガスを供給するために圧力チャンバに接続されたマスフローコントローラー(MFC)を監視し、適切に機能させる。
【解決手段】試験期間の間、連続的な充填サイクルを生成すべくMFCを循環的に切り替えることと、試験期間の間、所定の間隔を置いてチャンバの圧力を測定することとを含み、MFCの全切替時間が充填サイクルのうちの少なくとも10%であり、さらに、圧力の測定値の平均値を得て、MFCが適切に機能しているかどうかを判定すべく平均値を過去のデータと比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバにガスを供給するために圧力チャンバに接続されたマスフローコントローラー(MFC)を監視するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスフローコントローラーは、半導体基板をエッチングすることと半導体基板上にフィルムを堆積することとを含む様々なプロセスのために、測定されたガス流を圧力チャンバに供給するのに使用される。正確な流量はプロセスの再現性において極めて重要であり、また、流量の誤りによって、チャンバ内の化学薬品の割合が変化するので、異なるプロセスが行われるようになる。
【0003】
このため、マスフローコントローラーを監視するためのシステムが、システムの作動における問題を特定すべく既に開発されてきた。典型的には、これらは、MFCに所望の流量を配置することと、ガス流を安定させることを可能とすることと、定められた時間又は設定圧力が実現されるまで定められた容積のチャンバがガスで満たされることを可能とすることと、チャンバ内へのガスの充填速度を決定することとを含む。この試験の間、チャンバはポンプされない。この充填速度の値は、MFCが正確に作動しているかを検証すべく公知の正常値と比較されうる。
【0004】
米国特許第7822570号明細書、米国特許第6955072号明細書及び米国特許第5684245号明細書は、マスフローコントローラーを作動させようとする様々なアプローチを示す。
【0005】
斯かるシステムは、過去の比較的長いプロセス時間について非常に有効である。しかしながら、公知の切替式のボッシュプロセスを使用するとき、循環的なプロセス時間を減少させることが望ましい。この結果、MFCの開時間又は閉時間がこれらの設計長さによって異なる場合、偏差(deviation)がサイクル時間のうちのかなりの部分となり、上記で説明された理由のためにプロセスにおいてディストーション(distortion)が引き起こされる。言い換えれば、何分間も続くプロセス又はサイクルについて、チャンバへのガスの供給の期間において数msの変動が存在したとしても、このことは、無視することができる変動となる。しかしながら、プロセス又はサイクル時間が著しく減少せしめられる場合、MFCの作動におけるリード期間(lead period)又は遅延期間(lag period)は全体のうちのかなりの部分となり、このことはプロセスの変動をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人は、この問題を軽減することができる方法を開発してきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様によれば、本発明は、ポンプされていない状態にある圧力チャンバにガスを供給するために圧力チャンバに接続されたマスフローコントローラー(MFC)を監視する方法において、試験期間の間、連続的な充填サイクルを生成すべくMFCを循環的に切り替えることと、試験期間の間、所定の間隔を置いてチャンバの圧力を測定することとを含む方法において、MFCの全切替時間が充填サイクルのうちの少なくとも10%であり、当該方法は、圧力の測定値の平均値を得ることと、MFCが適切に機能しているかどうかを判定すべく平均値を過去のデータと比較することとを含むことを特徴とする、方法である。
【0008】
試験期間の間、MFCを頻繁に循環させることによって、切替期間がガス流期間のうちのかなりの部分にならざるをえず、この結果、切替における誤りが必然的に現れることが理解されるであろう。
【0009】
好ましい実施形態では、試験期間は、チャンバが予め定められた圧力に達し又は予め定められた数のサイクルが行われると終了する。
【0010】
各サイクルは充填ステップ及び(充填ステップではない)遅延ステップを含むことができる。充填ステップ及び/又は遅延ステップの長さは試験サイクル中に変化せしめられうる。切替式のボッシュプロセスにおいて典型的であるように、MFCは、サイクルの間、必ずしも完全に閉じられ且つ/又は完全に開かれるわけではないことが理解されるべきである。試験はMFCが実質的に閉じられ且つ実質的に開かれればうまくいくだろう。
【0011】
サイクル時間は約0.1s〜約60sでありうる。先進的な切替式のボッシュプロセスでは、1sよりも長い時間が非常に望ましい。切替時間と意図されたプロセス時間との相対的な長さに応じて、サイクルの数が適切に選択されることができる。サイクルの数は少なくとも二つでなければならない。
【0012】
MFCについての切替時間は約10ms〜約200msでありうる。サイクル時間に対するMFC切替時間の比率は約0.00017〜約2の間でありうる。
【0013】
加えて、本方法は、圧力の測定値の変化率を得ることと、MFCが適切に機能しているかどうかを判定すべく変化率を過去のデータと比較することとを含んでもよい。
【0014】
このため、長期に亘って得られた変化率をプロットすることによって、MFCがゆっくり開き又は早く開くようになっているかを判定することができる。
【0015】
更なる態様では、本発明は、ガスをチャンバに供給する、チャンバに接続されたマスフローコントローラー(MFC)の作動を監視する方法において、MFCが所定の期間循環的に開かれ且つ閉じられる試験段階を初期化することと、所定の間隔を置いてチャンバの圧力を測定することと、圧力の増加の変化率を決定することと、MFCの性能における漸進的な変動を示すべく長期間に亘って測定された変化率のヒストリカルトレンドを決定することとを含む、方法である。
【0016】
本発明は、上記で定義されてきたが、上記で又は以下の記載において説明される特徴の独創的な組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ループ的な充填速度(looping fill rate)又は循環的な充填速度(cyclic fill rate)に対するチャンバ圧力の上昇を示す。
【図2】図2は、長期に亘る充填速度の変化率における変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は様々な態様において行われることができ、以下、特定の実施形態が添付の図面を参照して例によって記述される。
示されてきたように、本発明は「短ステップ/マルチサイクル」の充填速度チェックの概念を導入し、この概念は、遅く開き又は遅く閉じるMFCを特定するのに使用されることができる。
【0019】
このため、出願人は、試験チャンバの充填速度が多数の短いプロセスステップから構成され、このことによってMFCが各連続的なステップについてオンオフされる(又は非常に低い流れに切り替えられる)ことを提案する。このことは、MFCがオン/オフを切り替えるのにかかる時間がMFCの全「オン」時間のうちのかなりの部分を占めるということを意味する。結果として、オン/オフ時間におけるあらゆる遅延又は変動が、低い/高い充填速度の読取値として現れるはずであり、このことによって使用者に問題を警告することができる。
【0020】
試験は、特に、プロセスチャンバを含む機械の長期間の作動に亘ってMFC性能における緩やかな変化をとらえるように設計される。このため、図1では、MFCのゆっくり開く反応がプロットされる。充填速度の各サイクルは「充填」ステップ及び「測定」ステップを含み、「充填」ステップ及び「測定」ステップはそれぞれ可変長でありうる。サイクルの数は、チャンバにおいて行われるべきプロセスの期間の長さをある程度反映して変更されうる。充填速度の試験期間の終了は、得られた圧力又は定められた数のサイクルがトリガーとなりうる。
【0021】
その後、充填速度における各ループ又は各サイクルからのデータがデータロガーによって記録されることができる。このデータは、図1において示される圧力/時間グラフをプロットするのに使用される。これらは試験線(test line)の変化率を計算するのに使用されることができ、この情報は保存される。
【0022】
図2において見られうるように、所定の期間に亘る試験データが経過時間に対する変化率のグラフ上にプロットされることができる。MFCが一貫して行われていれば、プロット線は真っ直ぐな線になるだろう。しかしながら、MFCがゆっくり開くようになる場合、これは負の変化率を有するプロットを生成し、一方、MFCが早く開く場合、プロットは正の変化率を有するだろう。充填速度が正常な境界値の外側にあるということを機械の操作手に警告すべく、制限値を設定することができる。
【0023】
MFCがゆっくり開き且つゆっくり閉じる場合、図2において示される変化率は変化しないだろう。
【0024】
この変動は、各ステップの間、デマンド(demand)を0に設定することなくMFCの流れをステップすること(stepping)によって特定されることができ、このため、値はMFCの開作動にのみ依存する。MFCは、チャンバ圧力が最終的な圧力に達するまで各ステップにおいて増大される(ramped)。この値はデータロガーに記録され、試験は、平均値を求めるべく何回も実施される。その後、平均値が記録されて上側及び下側の境界値に対して判断される。最終的な圧力が前の試験から減少している場合、MFCがゆっくり開いているということができる。最終的な圧力が前の試験から増加している場合、MFCが早く開いているということができる。
【0025】
最新技術では、MFCについての開時間は、典型的には〜100msであるが、50〜400msの範囲内であってもよい。閉時間はMFCに応じて30〜600msの範囲内であり、一般的なモデルは50msの閉時間を有する。このため、典型的な循環的なプロセスでは、MFCは、100ms後に完全に開かれ、600msまで開いたままであり、その後650msにおいて完全に閉じられる。サイクルが再び開始する前に約5s待つことが通常である。開期間は、理想的には、恐らく閉鎖がt=200msにおいて開始する状態で減少せしめられうる。
【0026】
故障の最も典型的な性質はMFCがゆっくり開くことであるが、上述されたループされた充填アプローチ(looped fill approach)は漏れ(leaking)又はMFCがゆっくり閉じることも特定することができる。(充填速度サイクルがプロセス時間と同様であると仮定して)従来のプロセスについて、MFCの開時間及び閉時間は1sの範囲内であり、一方、全充填サイクルは60s程度でありうる。しかしながら、試験プロセスを実施するとき、充填時間は、1sのMFC時間が500msの全充填サイクルと対照を成すように極めて短くされることができる。結果として、MFCの開時間及び閉時間は全体のうちのかなり大きな割合となる。効果的な試験のために、充填ステップ(すなわち充填時間+MFC時間)のうちの10%よりも大きなMFCの開時間及び閉時間の合計を有することが望ましいと考えられる。
【0027】
上述された方法はチャンバがワーキングチャンバであることを想定しているが、チャンバは最も便利には別個のチャンバであってもよく、このことは、試験結果に寄与するワーキングチャンバにおける漏れ故障(leakage fault)を防止し、且つマスフローコントローラーに関する問題を誤って示すことを防止するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプされていない状態にある圧力チャンバにガスを供給するために該圧力チャンバに接続されたマスフローコントローラー(MFC)を監視する方法において、
試験期間の間、連続的な充填サイクルを生成すべく前記MFCを循環的に切り替えることと、
前記試験期間の間、所定の間隔を置いて前記チャンバの圧力を測定することと
を含む方法において、
前記MFCの全切替時間が前記充填サイクルのうちの少なくとも10%であり、当該方法は、前記圧力の測定値の平均値を得ることと、前記MFCが適切に機能しているかどうかを判定すべく前記平均値を過去のデータと比較することとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記試験期間が、前記チャンバが予め定められた圧力に達すると終了する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験期間が予め定められた数のサイクル後に終了する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各サイクルが充填ステップ及び(充填ステップではない)遅延ステップを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記充填ステップ及び/又は前記遅延ステップの長さが前記試験期間中に変化せしめられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記MFCが、前記サイクルの間、完全に閉じ且つ/又は開くことがない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記サイクル時間が約0.1s〜約60sである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも二つのサイクルが行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記MFCについての前記切替時間が約10ms〜約200msの間である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
サイクル時間に対するMFC切替時間の比率が0.00017〜2の間である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力の測定値の変化率を得ることと、前記MFCが適切に機能しているかどうかを判定すべく前記変化率を過去のデータと比較することとを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ガスをチャンバに供給する、該チャンバに接続されたマスフローコントローラー(MFC)の作動を監視する方法において、
該MFCが所定の期間循環的に開かれ且つ閉じられる試験段階を初期化することと、
所定の間隔を置いて前記チャンバの圧力を測定することと、
該圧力の増加の変化率を決定することと、
前記MFCの性能における漸進的な変動を示すべく長期間に亘って測定された変化率のヒストリカルトレンドを決定することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記チャンバがエッチングツール又は堆積ツールのワーキングチャンバである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記チャンバが試験チャンバである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−248193(P2012−248193A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119596(P2012−119596)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(512035033)エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】