説明

マゼンタ金属キレート染料およびインクジェット印刷機におけるその使用

式(1)の金属キレート化合物またはその塩:[A−N=N−B]M 式(1)
[式中、Aは、置換されていてもよいピリジル環であり;そしてBは、式(2)のものであり、ここにおいて、XおよびWは、H以外の置換基であり;Mは、A−N=N−Bとキレートを形成している金属であり;そしてnは、0〜4である]。
式(1)の化合物を含有する組成物およびインク、該インクを用いるインクジェット印刷方法、および該インクを含有するインクジェット印刷機用カートリッジも請求する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、金属キレート化合物、インクおよびインクジェット印刷(“IJP”)におけるその使用に関する。
IJPは、ノズルを基材と接触させることなく、インクの液滴を微細ノズルに通して基材上に噴出させるノンインパクト(non-impact)印刷技術である。
【0002】
IJPに用いられる染料およびインクには、多くの厳しい性能要件がある。例えば、それらは、良好な耐水堅牢度、耐光堅牢度および光学濃度を有する鮮明でフェザリングのない像を提供することが望ましい。インクは、汚れを防止するために、基材に施用したときに迅速に乾燥することがしばしば要求されるが、インクジェットノズルの先端にクラスト(crust)を形成すべきではない。これは、クラストが、印刷機の作動を妨げるためである。インクはまた、分解するか、または微細ノズルを詰まらせうる沈殿物を形成することなく、長期にわたる貯蔵に対し安定であるべきである。
【0003】
カラーインクジェット印刷機では典型的に、4種の異なる色相のインク、すなわち、マゼンタ、黄色、シアンブルーおよび黒色が用いられる。これら以外の色は、これらのインクの異なる組合わせを用いて得ることができる。したがって、最適な印刷品質のためには、用いる着色剤が具体的で的確な色相を有するインクを形成することができなければならない。これは着色剤を混合することにより実現することができるが、要求される正確な色相を有する単一の着色剤を用いることにより実現すると有利である。
【0004】
C.I.アシッドレッド(Acid Red)52のようなマゼンタ着色剤およびIJPにおけるその使用は公知である。多くのマゼンタ着色剤はオゾンおよび/または光に対する堅牢度に劣る。他のものは、望ましくない色彩または低い彩度を有する。われわれ独自の最近の研究により、オゾンが印刷物に対し有することができ、暗い場所であっても促進された退色を引き起こす有害作用が示されている。長期間にわたる印刷物の堅牢度に関する製造業者と消費者の要件は絶えず増大しており、改善された色彩、耐光堅牢度および耐オゾン堅牢度を有しインクジェットに適したマゼンタ着色剤が必要とされている。
【0005】
WO01/48090は、ナフトール成分と特定のヘテロ環式基を含む金属キレート化合物に関するものである。WO01/48090では、α位でアゾ基に付着しているピリジル環により置換されているような化合物は開示されていない。さらに、WO01/48090では、そのような置換化合物がインクジェット印刷の用途での使用について優れた性質を有するという事実が開示されていない。
【0006】
本発明に従って、式(1)の金属キレート化合物またはその塩を提供する:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
Aは、置換されていてもよいピリジル環であり;そして
Bは、式(2)のものであり:
【0009】
【化2】

【0010】
ここにおいて、XおよびWは、H以外の置換基であり;
Mは、A−N=N−Bとキレートを形成している金属であり;そして
nは、0〜4である]。
【0011】
Aは、好ましくは式(3)のものである:
【0012】
【化3】

【0013】
[式中:
qは、0、1、2、3または4であり;そして
各Zは、独立して、H以外の置換基である]。
【0014】
W、XおよびZは、それぞれ独立して、CF、−OH、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO、リン酸、スルホ、置換されていてもよいホスホルアミド、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、−SR、−SO、−SONR、−SOR、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−NRまたは−NHCORから選択されることが好ましく、ここにおいて、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいアラルキルである。
【0015】
W、XまたはZが置換されていてもよいホスホルアミドである場合、それは、置換されていないか、または置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリールもしくは置換されていてもよいアラルキルにより置換されていることが好ましい。好ましい置換基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、ヒドロキシエチル、置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいベンジルが挙げられる。
【0016】
W、XまたはZが置換されていてもよいアルコキシである場合、それは、置換されていてもよいC1−6−アルコキシであって、−Cl、−F、−Br、−CN、−OHまたは−COHにより置換されていてもよいものであることが好ましい。Zは、置換されていないC1−6−アルコキシであることがもっとも好ましい。
【0017】
W、XまたはZが置換されていてもよいアルキルである場合、それは、置換されていてもよいC1−4−アルキルであることが好ましく、より好ましくは、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホまたはシアノにより置換されていてもよいC1−4−アルキルである。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、トリフルオロメチル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、スルホプロピルおよびカルボキシエチルが挙げられる。Zが置換されていてもよいアルキルである場合、それは、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルであることが特に好ましい。
【0018】
W、XまたはZが置換されていてもよいアルケニルである場合、それは、置換されていてもよいC2−4アルケニルであることが好ましい。
W、XまたはZが置換されていてもよいアルキニルである場合、それは、置換されていてもよいC2−6アルキニルであることが好ましい。
【0019】
W、XまたはZが置換されていてもよいアリールである場合、それは、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいナフチル、または置換されていてもよいヘテロアリール、特に置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましい。
【0020】
W、XまたはZが置換されていてもよいアリールである場合のW、XまたはZ上の好ましい所望による置換基は、スルホ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、ハロ(好ましくはクロロ)、アルコキシ(好ましくはC1−6−アルコキシ)、アルキル(好ましくは、ハロゲン(好ましくはフルオロ)により置換されていてもよいC1−4−アルキル)、ヒドロキシ、カルボキシ、リン酸およびスルホから選択される。W、XまたはZが置換されていてもよいアリールである場合、それは特に、C1−4−アルキル、カルボキシ、リン酸、ハロゲン(好ましくはフルオロ)、ヒドロキシおよびスルホにより置換されている。
【0021】
W、XまたはZが置換されていてもよいアラルキルである場合、それは、置換されていてもよいベンジルであることが好ましい。
WおよびXは、それぞれ独立して、スルホ、スルホンアミド、カルボキシ、カルボンアミド、ハロゲン、ニトロおよびシアノ基から選択されることが好ましい。
【0022】
Zは、−SH;カルボキシ;シアノ;ハロ(好ましくは、ブロモ、クロロもしくはフルオロ);ニトロ;C1−6−アルコキシ;または、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロ(好ましくはフルオロ)もしくはシアノ基(1以上)により置換されていてもよいC1−4−アルキルから選択されることがもっとも好ましい。
【0023】
、RおよびRは、それぞれ独立して、H、置換されていてもよいC1−4−アルキルまたは置換されていてもよいアリールであることが好ましく、より好ましくは、H;ヒドロキシ、カルボキシ、スルホもしくはシアノにより置換されていてもよいC1−4−アルキル;または、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、トリフルオロメチルもしくはシアノにより置換されていてもよいフェニルである。R、RおよびRにより表される基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、スルホプロピル、カルボキシエチルまたはカルボキシフェニルが挙げられる。R、RおよびRは、H、置換されていてもよいC1−4−アルキル(例えば、トリフルオロメチル、ヒドロキシエチルもしくはシアノエチル)、または置換されていてもよいアリール(例えば、カルボキシにより置換されていてもよいフェニル)であることが特に好ましい。
【0024】
ピリジル環Aは、好ましくは、置換されていないか、あるいは、−SH;カルボキシ;シアノ;ハロ(好ましくは、ブロモ、クロロもしくはフルオロ);ニトロ;C1−6−アルコキシ;または、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロ(好ましくはフルオロ)もしくはシアノにより置換されていてもよいC1−4−アルキルから選択される1個以上の置換基を持つ。
【0025】
qは、0、1、2、3または4であることが好ましく、より好ましくはqは0、1または2である。
Mは、好ましくは以下の金属の1種以上を含む:ニッケル、クロム、コバルト、銅、亜鉛、鉄またはマンガン。Mはニッケルまたは銅であることがとりわけ好ましく、もっとも好ましくはニッケルである。
【0026】
A−N=N−Bは、それぞれ1:1、2:1、2:2または2:3の比で、特にそれぞれ1:1または2:1の比で、Mとキレートを形成することが好ましい。
式(1)の金属キレート化合物中に式A−N=N−Bの配位子が1個より多く存在する場合、式A−N=N−Bの配位子は同一または異なっていることができるが、好ましくはそれらは同一である。
【0027】
式(1)の金属キレート化合物はまた、1個以上の追加的な配位子を含んでいてもよい。これらの配位子は有色または無色であることができ、1個より多く存在する場合それらは同一または異なっていることができる。
【0028】
nは、好ましくは0、1、2、3または4であり、より好ましくは、nは1または2である。nは1であることが特に好ましい。
式(1)の化合物は、式(4a)もしくは(4b)の金属キレート化合物またはその塩であることが好ましい:
【0029】
【化4】

【0030】
[式中:
Mは、角括弧中に示す基とキレートを形成しているニッケルであり;
XおよびWは、スルホ、スルホンアミド、カルボキシ、カルボンアミド、ハロゲン、ニトロおよびシアノ基から選択され;
qは、0、1または2であり;そして
Zは、シアノ、C1−4−アルキル、カルボキシ、ニトロ、ハロおよびC1−6−アルコキシ基から選択される]。
【0031】
より好ましくは、式(1)の化合物は、式(5)の金属キレート化合物またはその塩である:
【0032】
【化5】

【0033】
[式中、
Mは、角括弧中に示す基とキレートを形成しているニッケルであり;そして
qは、0、1または2であり;そして
Zは、シアノ、C1−4−アルキル、カルボキシ、ニトロ、ハロおよびC1−6−アルコキシ基から選択される]。
【0034】
式(1)の化合物は色においてマゼンタである、すなわち、該化合物は490〜570nmの範囲にλmaxを保有することが特に好ましい。
本発明の化合物は、とりわけ良好な耐オゾン堅牢度、光学濃度および耐光堅牢度を示し、これにより、写真のように克明な(photorealistic)インクジェット印刷およびその他のインクジェット印刷の用途に有益な着色剤となる。
【0035】
式(1)の化合物はまた、該化合物を含有するインクをインクジェット印刷機で用いるときに、インクジェット印刷機内で良好な溶解度および操作可能性(operability)を有し、ノズルにクラストを形成するかまたはノズルを詰まらせる傾向が低い。
【0036】
式(1)の化合物は、好ましくは繊維反応性基を含まない。これは、そのような基は必要ないためである。繊維反応性基はまた、長期間貯蔵中にインク中で加水分解する傾向があり、このことが安定性の問題を引き起こす可能性がある。繊維反応性基という用語は当分野で周知であり、例えばEP0356014 A1に記載されている。繊維反応性基は、適切な条件下で、セルロース系繊維中に存在するヒドロキシル基または天然繊維中に存在するアミノ基と反応して、繊維と染料との間に共有結合的連結を形成することができる。式(1)の化合物中に存在しないことが好ましい繊維反応性基の例として、硫酸エステル基を硫黄原子に対しβ位に含有する脂肪族スルホニル基、例えば、β−スルファト−エチルスルホニル基、脂肪族カルボン酸、例えば、アクリル酸、α−クロロ−アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、プロピオル酸、マレイン酸、ならびにモノクロロ−およびジクロロマレイン酸のα,β−不飽和アシルラジカル;また、アルカリの存在下でセルロースと反応する置換基を含有する酸のアシルラジカル、例えば、クロロ酢酸、β−クロロおよびβ−ブロモプロピオン酸ならびにα,β−ジクロロ−およびジブロモプロピオン酸などのハロゲン化脂肪族酸のラジカル、あるいはビニルスルホニル−またはβ−クロロエチルスルホニル−またはβ−スルファトエチル−スルホニル−エンド−メチレンシクロヘキサンカルボン酸のラジカルを挙げることができる。セルロース反応性基の他の例は、テトラフルオロシクロブチルカルボニル、トリフルオロ−シクロブテニルカルボニル、テトラフルオロシクロブチルエテニルカルボニル、トリフルオロ−シクロブテニルエテニルカルボニル;活性化ハロゲン化1,3−ジシアノベンゼンラジカル;および、ヘテロ環式環中に1、2または3個の窒素原子を、そして該環の炭素原子上に少なくとも1個のセルロース反応性置換基を含有するヘテロ環式ラジカルである。
【0037】
本明細書中に記載する化合物は、本明細書中に示すもの以外の互変異性体の形で存在することができる。これらの互変異性体も、本発明の範囲内に含まれる。
式(1)の金属キレート化合物はまた、異なる幾何構造、例えば八面体または四面正方形で存在することができる。これらの異なる幾何構造の形も、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
式(1)の化合物は、遊離酸または塩基の形であってもよい。好ましい塩は水溶性であり、例えば、アルカリ金属塩(特にリチウム、ナトリウム、カリウム);アンモニウム、置換アンモニウムおよびそれらの混合塩である。好ましい金属塩は、ナトリウム、リチウム、アンモニウムおよび置換アルキルアンモニウム塩を伴うものである。
【0039】
好ましいアンモニウムおよび置換アルキルアンモニウム塩は式NVのカチオンを有し、ここにおいて、各Vは独立してHまたは置換されていてもよいアルキルであるか、あるいは、Vによって表される2個の基はHまたは置換されていてもよいアルキルで、Vによって表される残りの2個の基はそれらが付着しているN原子と一緒に5または6員環(好ましくはモルホリニル、ピリジニルまたはピペリジニル環)を形成している。
【0040】
各Vは、独立して、HまたはC1−4−アルキルであることが好ましく、より好ましくは、H、CHまたはCHCH、特にHである。
カチオンの例としては、NH、モルホリニウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、(CHH、(CH、H(CH)(CHCH)、CH、CHCH、H(CHCH、CHCHCH、(CHCHN、N(CH、N(CHCH、N−メチルピリジニウム、N,N−ジメチルピペリジニウムおよびN,N−ジメチルモルホリニウムが挙げられる。
【0041】
式(1)の化合物は、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウムまたは置換アンモニウムの塩の形にあることが特に好ましい。これは、われわれが、これらの塩が、インクジェット印刷用インクに組み込まれたときに高い耐光堅牢度を示す印刷物を提供することを見いだしたためである。
【0042】
式(1)の化合物を、公知の技術を用いて塩に転化させてもよい。例えば、染料のアルカリ金属塩を水に溶解し、該溶液を適切に修飾されたイオン交換樹脂のカラムに通すことにより、化合物のアルカリ金属塩をアンモニアまたはアミンを伴う塩に転化させることができる。
【0043】
式(1)の化合物は、金属キレート化合物およびその非化学量論的混合物の調製に関する従来技術を用いて調製することができる。例えば、適切な方法は、金属塩と式A−N=N−Bの化合物とを溶液中で一緒に混合することを含み、ここにおいて、AおよびBは上記のとおりである。
【0044】
上記方法の生成物を、上記のような従来技術により塩に転化させてもよい。あるいは、反応混合物を、好ましくは鉱酸、例えば塩酸を用いて酸性化することにより、生成物をその遊離酸の形で単離してもよい。生成物が固体として沈殿したら、それを濾過により混合物から分離してもよい。不要なアニオンは、透析、逆浸透、限外濾過またはそれらの組合わせにより上記方法の生成物から除去してもよく、好ましくは除去する。あるいは、生成物の溶液を、生成物を単離することなく直接上記精製に付す。
【0045】
式A−N=N−Bの化合物は、例えば、アミノ−ピリジンA−NHのN−酸化物をジアゾ化してジアゾニウム塩を与え、得られたジアゾニウム塩を式H−Bの化合物とカップリングすることにより調製することができ、ここにおいて、AおよびBは上記のとおりである。ジアゾ化は、好ましくは20℃未満の温度、より好ましくは−0℃〜5℃の温度で実施する。ジアゾ化は、好ましくは希酸中、好ましくは7より低いpHで実施する。希鉱酸、例えばHClもしくはHSO、または有機酸、例えば酢酸、リン酸もしくはその混合物を用いて、所望の酸性条件を実現することが多い。その後、N−酸化物を切断して、式A−N=N−Bの化合物を提供することができる。
【0046】
あるいは、式(1)の化合物は、式A−NHの化合物を、例えばナトリウムエトキシドおよび硝酸イソアミルを用いてジアゾ化してジアゾニウム塩を与えた後、該ジアゾニウム塩を式H−Bの化合物上にカップリングして式A−N=N−Bの化合物を提供することにより、調製することができる。
【0047】
その後、式A−N=N−Bの化合物を、金属塩、例えば塩化ニッケル(II)または酢酸ニッケル(II)などで処理することにより、対応する金属錯体[A−N=N−B]Mに転化させることができる。
【0048】
本発明はまた、2種以上の式(1)の化合物またはそれらの塩を含む混合物を提供する。さらに、式(1)の化合物を、市販の染料、特にColour Index Internationalに挙げられているものと混合して、色彩または他の性質を所望のように調整してもよい。
【0049】
本発明の第2の観点に従って、
(a)本発明の第1の観点に従った1種以上の化合物(1以上);および
(b)本発明の第1の観点に従った化合物以外の1種以上の水溶性染料(1以上)、
を含む組成物を提供する。
【0050】
その他の水溶性染料は、例えば、キサンテン染料、アゾまたはビスアゾ染料である。
好ましい他の水溶性染料としては、C.I.アシッドレッド50、52、87、91、92、95、249および289;CIダイレクトレッド(Direct Red)252;パシファイドリアクティブレッド(pacified Reactive Red)23;C.I.ダイレクトバイオレット(Direct Violet)106および107;WO96/24636の8および9頁に記載されている化合物100〜107、200および201;米国特許第5542970号の4〜10段に示され記載されている化合物1〜24;EP−A−682 088の7〜17頁に記載されている化合物1〜55;EP−A−194885の実施例1〜6に示されている化合物1〜14;EP−A−717 089の8〜13頁に記載されている化合物1〜24;米国特許第5262527号の5〜11段の実施例1〜16に記載されている化合物;および、WO94/16021の実施例1〜21に記載されている染料が挙げられる。
【0051】
本発明の第2の観点に従った組成物は、合計で1〜99部、より好ましくは3〜70部、特に5〜50部の成分(a);および、合計で99〜1部、より好ましくは30〜97部、特に95〜50部の成分(b)を含むことが好ましく、ここにおいて、部は重量基準であり、部の合計(a)+(b)=100である。
【0052】
該組成物は、本発明の第1の観点に記載したように、式(1)の単一染料またはその混合物を含有することができる。同様に、該組成物は、単一の水溶性染料または2種以上の水溶性染料の混合物を含有することができる。
【0053】
本発明の第1および第2の観点に従った化合物および組成物は、それらをインクジェット印刷用インクに組み込む前に、望ましくない不純物を除去するために精製してもよく、好ましくは精製する。精製には、従来技術、例えば、限外濾過、逆浸透および/または透析を用いることができる。
【0054】
本発明の第3の観点に従って、
(i)本発明の第1の観点に従った化合物、または本発明の第2の観点に従った組成物;および
(ii)液体媒体
を含むインクを提供する。
【0055】
液体媒体は、好ましくは、水;水と有機溶媒の混合物;または、水を含まない有機溶媒
を含む。
インクの成分(i)の重量部数は、好ましくは0.01〜30部、より好ましくは0.1〜20部、特に0.5〜15部、さらに特に1〜5部である。成分(ii)の重量部数は、好ましくは99.99〜70部、より好ましくは99.9〜80部、特に99.5〜85部、さらに特に99〜95部である。部数(i)+(ii)は100であり、ここで述べた部はすべて重量基準である。
【0056】
成分(i)は、成分(ii)に完全に溶解することが好ましい。成分(i)は、20℃において成分(ii)中で少なくとも10%の溶解度を有することが好ましい。これにより、より希釈されたインクの調製に用いることができる濃縮物の調製が可能になり、かつ貯蔵中に液体媒体の蒸発が起こった場合にインクの成分(i)の化合物(1種以上)が沈殿する可能性が低くなる。
【0057】
液体媒体が水と有機溶媒の混合物を含む場合、水と有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:99、より好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0058】
水と有機溶媒の混合物中に存在する有機溶媒は、水混和性有機溶媒またはそのような溶媒の混合物であることが好ましい。好ましい水混和性有機溶媒としては、C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトン−アルコール、好ましくは、アセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびにオリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドおよびスルホランが挙げられる。好ましくは、液体媒体は、水と2種以上、特に2〜8種の水混和性有機溶媒を含む。
【0059】
液体媒体が、水を含まない有機溶媒(すなわち1重量%未満の水)を含む場合、該溶媒は好ましくは30°〜200℃、より好ましくは40°〜150℃、特に50〜125℃の沸点を有する。有機溶媒は、水不混和性、水混和性であるか、またはそのような溶媒の混合物であることができる。好ましい水混和性有機溶媒は、上記水混和性有機溶媒のいずれかおよびその混合物である。好ましい水不混和性溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素;エステル、好ましくは酢酸エチル;塩素化炭化水素、好ましくはCHCl;およびエーテル、好ましくはジエチルエーテル;ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0060】
液体媒体が水不混和性有機溶媒を含む場合、好ましくは極性溶媒が包含される。これは、極性溶媒が液体媒体中での染料の溶解度を高めるためである。極性溶媒の例としてはC1−4−アルコールが挙げられる。前述の優先傾向を考慮すると、液体媒体が、水を含まない有機溶媒である場合、それは、ケトン(特にメチルエチルケトン)および/またはアルコール(特にC1−4−アルカノール、例えば、エタノールまたはプロパノール)を含むことが特に好ましい。
【0061】
水を含まない有機溶媒は、単一の有機溶媒または2種以上の有機溶媒の混合物であることができる。媒体が、水を含まない有機溶媒である場合、それは2〜5種の異なる有機溶媒の混合物であることが好ましい。これにより、インクの乾燥特性および貯蔵安定性に対し良好な制御を与える媒体を選択することが可能になる。
【0062】
水を含まない有機溶媒を含むインクは、迅速な乾燥時間が必要とされる場合、詳細には疎水性かつ非吸収性基材、例えば、プラスチック、金属およびガラス上に印刷するときに、とりわけ有用である。
【0063】
好ましい低融解性固体媒体は60℃〜125℃に融点を有する。適切な低融点固体としては、長鎖の脂肪酸またはアルコール、好ましくはC18−24鎖を有するもの、およびスルホンアミドが挙げられる。式(1)の化合物は、低融点固体に溶解することができ、またはその中に細かく分散させることができる。
【0064】
本発明に従ったインクはまた、当然ながら、インクジェット印刷用インクに従来用いられている追加的成分、例えば、粘度および表面張力の調整剤;腐敗抑制剤;殺生剤;コゲーション(kogation)を低減させる添加剤;紙のカールを減少させるためのしわ防止剤(anti-cockle agent);および、イオン性または非イオン性であることができる界面活性剤を、さらに含有することができる。
【0065】
インクのpHは、好ましくは4〜11、より好ましくは7〜10である。
本発明のインクは、標準的なマゼンタ、黄色、シアンブルーおよび黒色のインクセット中のマゼンタインクを形成することが好ましい。典型的には、そのようなインクセットにおいて、黄色インクは、C.I.ダイレクトイエロー86、142またはPro−JetTMファーストイエロー(Fast Yellow)2を含有し;シアンブルーインクは、C.I.ダイレクトブルー86、199またはPro−JetTMファーストシアン2を含有し;そして、黒色インクは、C.I.ダイレクトブラック199またはPro−JetTMファーストブラック2を含有する(Pro−JetはAvecia Limitedの商標である)。
【0066】
本発明に従った組成物は、インクジェット印刷機での使用に適したインクであることが好ましい。インクジェット印刷機での使用に適したインクは、精密ノズルを詰まらせることなくインクジェット印刷ヘッドを通して繰り返し発射することができるインクである。
【0067】
インクは、高濃度インク、低濃度インクまたは高濃度および低濃度の両方のインクとして、インクジェット印刷機中に組み込むことができる。後者の場合、このことは、印刷された像の解像度および質に改善をもたらすことができる。したがって、本発明はまた、成分(a)が2.5〜7部、より好ましくは2.5〜5部の量(高濃度インク)で存在するか、または成分(a)が0.5〜2.4部、より好ましくは0.5〜1.5部の量(低濃度インク)で存在する組成物を提供する。
【0068】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、25℃において好ましくは20cP未満、より好ましくは10cP未満、特に5cP未満の粘度を有する。
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、さらに特に10ppm未満の二価および三価の金属イオン(式(1)の着色剤またはインクの他の任意の成分に結合しているあらゆる二価および三価の金属イオン以外のもの)を含有する。
【0069】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、好ましくは10μm未満、より好ましくは3μm未満、特に2μm未満、さらに特に1μm未満の平均孔径を有するフィルターに通して濾過されている。この濾過により、多くのインクジェット印刷機に見いだされる精密ノズルを通常なら詰まらせうる粒状物質が除去される。
【0070】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、さらに特に10ppm未満のハロゲン化物イオンを含有する。
【0071】
本発明の第4の観点は、基材上に像を印刷するための方法であって、本発明の第1の観点に従った化合物または本発明の第2の観点に従った組成物を含有するインクを、インクジェット印刷機により該基材に施用することを含む方法を提供する。この方法で用いるインクは、本発明の第3の観点で定義したようなものであることが好ましい。
【0072】
インクジェット印刷機では、好ましくは、インクを基材に、小さなオリフィスを通って基材上に噴出する液滴の形で施用する。好ましいインクジェット印刷機は、圧電インクジェット印刷機およびサーマルインクジェット印刷機である。サーマルインクジェット印刷機では、プログラム化した熱パルスをオリフィスに隣接する抵抗器によりリザーバー中のインクに施用し、それによりインクを小さな液滴の形で、基材とオリフィスの相対運動中に基材に向けて噴出させる。圧電インクジェット印刷機では、小さな結晶の振動により、オリフィスからインクを噴出させる。あるいは、インクを、例えば国際特許出願WO00/48938および国際特許出願WO00/55089に記載されているように、可動式のパドルまたはプランジャーに接続した電気機械的作動装置により噴出させることができる。
【0073】
基材は、好ましくは、紙、プラスチック、生地、金属またはガラス、より好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクター用スライドまたは生地材料、特に紙である。好ましい紙は、普通紙か、または酸性、アルカリ性もしくは中性特性を有することができる処理紙である。光沢紙が特に好ましい。さらに特に、写真用の上質紙が好ましい。
【0074】
市販の紙の例としては、HP Premium Coated Paper、HP Photopaper(すべてHewlett Packard Inc.から入手可能)、Stylus Pro 720 dpi Coated Paper、Epson Photo Quality Glossy Film、Epson Photo Quality Glossy Paper(Seiko Epson Corp.から入手可能)、Canon HR 101 High Resolution Paper、Canon GP 201 Glossy Paper、Canon HG 101 High Gloss Film(すべてCanon Inc.から入手可能)、Wiggins Conqueror紙(Wiggins Teape Ltdから入手可能)、Xerox Acid PaperおよびXerox Alkaline紙(Xeroxから入手可能)が挙げられる。
【0075】
本発明の第5の観点は、本発明の第3の観点に従ったインクを用いるか、または本発明の第4の観点に従った方法により印刷した基材、好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクター用スライドまたは生地材料を提供する。
【0076】
本発明の第5の観点は、写真用上質印刷であることが特に好ましい。
本発明の第6の観点に従って、チャンバーとインクを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該インクがチャンバー内にあり、そして該インクが本発明の第1または第2の観点に従った化合物または組成物を含有する、前記インクジェット印刷機用カートリッジを提供する。インクは、本発明の第3の観点で定義したようなものであることが好ましい。
【0077】
本発明の第7の観点に従って、インクジェット印刷機用カートリッジを含有するインクジェット印刷機であって、該インクジェット印刷機用カートリッジが本発明の第6の観点で定義したようなものである、インクジェット印刷機を提供する。
【0078】
本発明をさらに以下の実施例により例示する。ここにおいて、すべての部およびパーセンテージは、特記しない限り重量基準である。
実施例1
Mがニッケルである化合物(1)の調製
【0079】
【化6】

【0080】
化合物(1)を段階(a)および(b)に従って調製した:
段階(a):2−ヒドロキシ−1−[ピリジン−2−イルジアゼニル]ナフタレン−3,6−ジスルホン酸の調製
2−ヒドロキシ−1−[ピリジン−2−イルジアゼニル]ナフタレン(20g、0.08mol)を、氷冷した発煙硫酸(20%三酸化硫黄、150mL)に30分かけて加えた。添加終了後すぐに反応温度を徐々に60℃まで上昇させ、同温度で1.5時間維持した。混合物を放置して冷却した後、氷(1kg)に加えると、橙色懸濁液が得られた。固体を濾過により採取し、塩化ナトリウム溶液およびアセトンで洗浄すると、57gの橙色固体が得られた(収率91%、強度52%)。
段階(b):化合物(1)の調製
段階(a)からの生成物(5g、6.4mmol)をpH 6で水(150mL)に溶解した。塩化ニッケル六水和物の水溶液(8.5mLの0.4mol dm−3溶液)を滴下して加えると、色がより濃くなりpHが低下した。pHをpH 6〜7に回復させ、反応混合物を70〜80℃で2時間撹拌した。冷却後、染料を塩化ナトリウムの添加により沈殿させ、濾過により採取した。該染料を再構成させ、透析膜に通して低伝導度まで透析すると、1gの固体が得られた。λmax(水)523,562nm。
実施例2
Mがニッケルである化合物(2)の調製
【0081】
【化7】

【0082】
実施例2を、段階(b)で17.5mLの0.4mol dm−3塩化ニッケル溶液を用いた点を除き、実施例1の化合物(1)について記載したものと同じ手順に従って調製した。2.1gの固体を採取した。λmax(水)518,555nm。
比較染料1
比較染料1を、EP1270676Aの実施例4に記載されているように調製した。これは、式:
【0083】
【化8】

【0084】
のものである。
比較染料2
比較染料2を、EP0902064Bの実施例IVに記載されているように調製した。これは、式:
【0085】
【化9】

【0086】
のものである。
実施例3:インクおよびインクジェット印刷
実施例1および2に記載した染料ならびに比較染料1および2を、対応するインクにそれぞれ転化した。インクは、3.5部のそれぞれを96.5部の液体媒体に溶解することによっており、液体媒体は、
5部の2−ピロリドン;
5部のチオジグリコール;
2部のSurfynolTM465(Air Products Inc.から入手可能な非イオン性界面活性剤);
88部の水、
を含み、水酸化アンモニウムでpH 9.5に調整されていた。
【0087】
このようにして調製したインクを、中に組み込まれた染料に応じてインク1、インク2、比較インク1および比較インク2とした。
インクジェット印刷
インク1および2ならびに比較インク1および2を0.45ミクロンのナイロン製フィルターに通して濾過した後、シリンジを用いて空のインクジェット印刷用カートリッジ中に組み込んだ。
【0088】
その後、インクを、HP560C印刷機を用いて強度70%でCanon Professional Photo Paper PR101に印刷した。
これらの印刷物を、Hampden 903 Ozoneキャビネット内で40℃、相対湿度50%で1ppmのオゾンに24時間暴露することにより、耐オゾン堅牢度について試験した。印刷物をAtlas Ci5000 Weatherometer内で100時間にわたりキセノンアーク灯に暴露することにより、耐光堅牢度についても試験した。印刷したインクのオゾンおよび光に対する堅牢度を、暴露前後の色座標における差異により判定した。
【0089】
オゾンおよび光への暴露前後の印刷物の色測定は、以下のパラメーターに設定したGretag spectrolino分光光度計を用いて実施した:
測定配置:0°/45°
スペクトル域:400〜700nm
スペクトル間隔:20nm
光源:D65
観測視野:2°(UE1931)
密度:ANSI A
外部充填物(External Filler):なし
耐オゾン堅牢度および耐光堅牢度を、印刷物の色座標により判定した印刷物の色彩における変化(ΔE)により評価した。数字が小さいほど堅牢度が高いことを示す。この変化ΔEは、相関ΔE=((Δa+(Δb+(ΔL0.5を用いて算出する。印刷物の耐オゾン堅牢度および耐光堅牢度に関する結果を以下に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1は、本発明のインクが、同様の類似物と比較したときに、改善された耐オゾン堅牢度および耐光堅牢度を有することを示している。
他のインク
表AおよびBに記載したインクを調製することができ、ここにおいて、第1列に記載した化合物は同じ数字の上記実施例で作成された化合物である。第2列以降に引用されている数字は当該成分の部数をさし、すべての部は重量基準である。インクは、サーマル式または圧電式のインクジェット印刷により、紙に施用することができる。
【0092】
以下の略語を表AおよびBに用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
CET=セチルアンモニウムブロミド
PHO=NaHPOおよび
TBT=第三級ブタノール
TDG=チオジグリコール
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の金属キレート化合物またはその塩:
【化1】

[式中、
Aは、置換されていてもよいピリジル環であり;そして
Bは、式(2)のものであり:
【化2】

ここにおいて、XおよびWは、H以外の置換基であり;
Mは、A−N=N−Bとキレートを形成している金属であり;そして
nは、0〜4である]。
【請求項2】
Aが、式(3)のものである、請求項1に記載の化合物:
【化3】

[式中:
qは、0、1、2、3または4であり;そして
各Zは、独立して、H以外の置換基である]。
【請求項3】
W、XおよびZが、それぞれ独立して、CF、−OH、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO、リン酸、スルホ、置換されていてもよいホスホルアミド、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、−SR、−SO、−SONR、−SOR、−OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−NRまたは−NHCORから選択され、R、RおよびRが、それぞれ独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいアラルキルである、請求項1または2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
Zが、−SH;カルボキシ;シアノ;ハロ;ニトロ;C1−6−アルコキシ;または、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロもしくはシアノ基(1以上)により置換されていてもよいC1−4−アルキルから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
WおよびXが、それぞれ独立して、スルホ、スルホンアミド、カルボキシ、カルボンアミド、ハロゲン、ニトロおよびシアノ基から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式(1)A−N=N−Bの金属キレート化合物が、それぞれ1:1または2:1の比でMとキレートを形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
Mが、ニッケル、クロム、コバルト、銅、亜鉛、鉄またはマンガンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Mがニッケルである、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
式(4a)もしくは(4b)のものである請求項1に記載の金属キレート化合物またはその塩:
【化4】

[式中:
Mは、角括弧中に示す基とキレートを形成しているニッケルであり;そして
XおよびWは、スルホ、スルホンアミド、カルボキシ、カルボンアミド、ハロゲン、ニトロおよびシアノ基から選択され;
qは、0、1または2であり;そして
Zは、シアノ、C1−4−アルキル、カルボキシ、ニトロ、ハロおよびC1−6−アルコキシ基から選択される]。
【請求項10】
式(5)のものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物またはその塩:
【化5】

[式中、
Mは、角括弧中に示す基とキレートを形成しているニッケルであり;そして
qは、0、1または2であり;そして
Zは、シアノ、C1−4−アルキル、カルボキシ、ニトロ、ハロおよびC1−6−アルコキシ基から選択される]。
【請求項11】
(a)請求項1〜10のいずれか一項に記載の1種以上の化合物(1以上);および
(b)請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物以外の1種以上の水溶性染料(1以上)
を含む組成物。
【請求項12】
(a)請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物、または請求項11に記載の組成物;および
(b)液体媒体
を含むインク。
【請求項13】
基材上に像を印刷するための方法であって、請求項12に記載のインクをインクジェット印刷機により該基材に施用することを含む方法。
【請求項14】
請求項12に記載のインクを用いるか、または請求項13に記載の方法により印刷した基材。
【請求項15】
チャンバーとインクを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該インクがチャンバー内にあり、そして該インクが請求項12で定義したようなものである、前記インクジェット印刷機用カートリッジ。
【請求項16】
インクジェット印刷機用カートリッジを含有するインクジェット印刷機であって、該インクジェット印刷機用カートリッジが請求項15で定義したようなものである、前記インクジェット印刷機。

【公表番号】特表2007−527441(P2007−527441A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516361(P2006−516361)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000899
【国際公開番号】WO2004/113462
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】