説明

マッサージ器一体型のコンピュータマウス

【課題】従来のマッサージ器一体型コンピュータマウスが、マウス本体上面にマッサージ用振動器を配置するものであるため、その部位を手の平以外の身体部位にあてがいマッサージすると、マウス底面部や端部を手で保持しなければならず操作上の課題となる。
【解決手段】
光学式コンピュータマウスの底面部が、本体側に凹状に窪んで形成され、凹状に窪んだ部位にマッサージ用振動器が突出配置され、本体に配した切替スイッチにより、コンピュータマウスの操作スイッチのいずれかをマッサージ用振動器への電源供給のオン/オフ、及び振動パターン変更スイッチに切り替えられるマッサージ器一体型の構成とすることにより、操作者が手の平でコンピュータマウスを掴みながら、略凸状の身体部位にコンピュータマウスの凹状に窪んだ部位を密着させてマッサージすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機能付コンピュータマウスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・コンピュータ(以下、パソコンという。)は仕事や生活の日常に十分に普及しており、多くの人々が一日のうち少なからずパソコンに向き合って操作を行っている。
【0003】
パソコンの操作は、主にはパソコン本体、モニター画面、キーボード及びコンピュータマウス(以下、マウスという。)で視覚及び両手のキー操作やマウス操作で行い、多くの場合、椅子に座った姿勢で机上のパソコンを操作するものである。
【0004】
上記の操作は、パソコンの普及期以来今日まであまり変化することなく、多くの場合、操作時間の長時間化に伴って、目はいうまでもなく、手、肩、首筋、腰に緊張や痛みが生じ、パソコン操作に休憩を取りながら、そうした身体部位を自らの手などでマッサージする光景は日常的に見受けられる。
【0005】
一方、マッサージ用の補助器具類もすでに多数上市されており、その多くが振動器(振動子の偏心回転による振動発生器)が内蔵されて、操作性やデザインを工夫されて専用の装置となっている。
【0006】
しかし、前記のパソコン操作時のマッサージに用いようとするときは、別途専用のマッサージ器を用意しておくこととなり、事務所などの場合は装置を置いておく場所や、専用のマッサージ器を使用することの周りへの気兼ねから、あまり一般的には使用されていないのが実態である。
【0007】
これは、専用のマッサージ器であることによるが、パソコン関連機器、周辺機器としては別体のマッサージ器が馴染まず異質であることに起因している。こうしたことからパソコン操作者がパソコン操作の休憩時などに気軽に腕、肩、首等の部位をマッサージして疲労回復させることに好適な簡便な機器が一般的ではなく、やむを得ず自らの手を使ってマッサージすることとなってきた。
【0008】
これに対し、パソコン周辺機器のうち、手を用いて操作するマウスに着目して、マウスにマッサージ機能を付帯させるという技術的思想は、特許文献1乃至特許文献6の日本国及び米国特許関連文献等で知られている。
【特許文献1】 米国特許US6323841B1
【特許文献2】 特開平10−133812号公報
【特許文献3】 米抄2004/189606
【特許文献4】 米抄2006/192756
【特許文献5】 米抄2007/188451
【特許文献6】 特開2002−14769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マウスにマッサージ機能を付帯させるこれら公知技術は、前述のパソコン操作者のマッサージによる疲労緩和ニーズに適合するものではあるが、特許文献1の技術では、振動子の振動によるマッサージ器(パッド)を本体に内蔵するものの、マッサージ器部分がマウス本体と分離可能な構成で、マウスと一体となっているときはマッサージ器の電源がオフとなり、マウスから分離したときは電源がオンになり、これを手にとって適宜必要な身体部位のマッサージが可能であるものである。
【0010】
しかし、これでは、マウス本体の部品構成を複雑化するうえに、分離して手のひら以外の部位をマッサージするときは、マウスとは完全に別体となるためマウスと一体である必然性が乏しく、またその形状や、操作スイッチ類の設置に制約が多いものであって、必ずしも実用的とはいえないものであった。
【0011】
特許文献2、特許文献3の技術では、突起や突起隆起により手の平を刺激するものであり、手の平を載せた状態のマウス操作中における手の平のツボ押しを目的としたものであって、マウスを持ち上げて腕、首、肩のマッサージへの適用を想定したものではなかった。
【0012】
特許文献4の技術は、マウスに接続する専用のマッサージ部品に関するものであって、マウス操作時はマウスより外して別体として保管しておく必要があるため、簡便性や紛失の危険性などの実用上の問題があった。また、USB電源よりマウス本体が受ける電源を分岐させ、別体のマッサージ器の電源としたに過ぎないものであった。
【0013】
また、特許文献5、特許文献6の技術は、マウス本体の手の平に当接する複数の部位にマッサージ用部位を配したものであるが、特許文献5では、マウス本体内に配したUSB電源を受けた振動機構がマウスのシェル(筐体)を振動させるものであり、特許文献6の技術は、マウスの移動検出情報に連動して手の平をマッサージするための稼働部位を動作させるものであるが、いずれも操作性の観点からは、手の平を載せた状態のマウス操作中における手の平のマッサージを目的としたもので、マウスを持ち上げて腕、首、肩に使用することを想定したものではなかった。
【課題を解決する手段】
【0014】
本願発明者らは、前記の公知技術によるマウス一体型の制約事項について鋭意研究を重ねたうえで、公知技術にはない技術的な思想を創造するにいたり本願発明の具体化に成功した。
【0015】
従来技術が、マウス本体の上面の手の平に当接する部位にマッサージ用振動器を配置するものであったところ、コンピュータ入力関連機器であるマウス本体の上面は、本来手の平へのフィット感のために略凸状の形状に成形されており、その部位を手の平以外の身体部位にあてがいマッサージしようとすると、身体部位の多くは略凸状であるところで、マッサージ器の当接の安定感にかけること、マッサージ器の操作のためには、マウス底面部や端部を手に保持してマッサージを行うこととなり、かつマッサージ器の操作ボタンの配置に従来マウスとは異なる特別な構成を要することとなり、マッサージ器一体型のマウスの操作上の課題となることが判明した。
【0016】
こうした課題に対して本願発明者らが発明にいたった基本構成は、マウスを持ち上げたうえで、主には腕、首、肩の略凸状の身体部位にマッサージ用振動器を好適に当接させるために、マウス本体の底面部を凹状に窪ませて、その部位に、マウス底部よりは突出しない形でマッサージ用振動器を突出配置させる、というものである。
【0017】
これにより、通常マウスを掴むようにマウス本体上面を手で保持して、そのうえで持ち上げたうえでマウス底面部を腕、首、肩に当接させて、かつパソコン操作用のマウスのスイッチ(通常、左右一対で配されている。)を、マッサージ器として使用するための切替えスイッチを操作したうえで、マッサージ器操作用に利用できることとなった。
【0018】
本願請求項1の発明は、光学式コンピュータマウスであって、コンピュータマウスの底面部が、横方向を貫通して本体側に凹状に窪んで形成され、凹状に窪んだ部位には、マッサージ用振動器が突出配置され、本体に配した切替スイッチにより、コンピュータマウスの操作スイッチのいずれかを、マッサージ用振動器への電源供給のオン/オフ、振動パターン及び振動強度の変更スイッチに切り替えて、操作者が手の平でコンピュータマウスを掴みながら、略凸状の身体部位にコンピュータマウスの凹状に窪んだ部位を密着させてマッサージ用振動器を操作してマッサージすることを特徴とするマッサージ器一体型のコンピュータマウスを提供する。
【0019】
また、本願請求項2の発明は、マッサージ用振動器への電源の供給が、USB電源(バスパワー)又は本体に内蔵したバッテリーによることをさらに加えたことを特徴とする本願請求項1の発明のマッサージ器一体型のコンピュータマウスを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本願発明により、従来のパソコン操作用のマウスに比べて特段の複雑な形状を構成要件とせず、かつパソコン操作時のマウス操作の要領で手の平でマウスを保持しながら、必要な略凸状の身体部位にマウス底面部の凹状の窪みを当接して、マウス操作用のスイッチを利用してマッサージ器として利用することができる。こうすることで、日常的なパソコン利用場面において、簡便にかつ周囲へ気兼ねすることなくマウス型のマッサージ器としてマウス本体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本願発明のマッサージ器一体型のマウスの実施形態の外観を示したものである。図2は、本願発明の実施形態の底部からみた外観を、図3は、同じく左側面からみた外観をそれぞれ示した図である。
【0022】
マウスは、USB接続方式によりパソコン本体に接続されて、モニター画面上のカーソル位置等を、マウスのXY二軸の移動に基づき操作して入力を行うパソコン入力装置である。
【0023】
本願のマウスは、通常、机上等の平板面に載置したときにマウスの底面部となる部位が、マウスの底面部前方と底面部後方を残して略底面部中央を左右に貫通して略凹状に窪ませて形成されており、当該凹状の窪み部分は平板面から離れている。
【0024】
上記の左右に貫通する略凹状の窪みには、マウス本体の底部には至らない範囲でマッサージ用振動器が突出配置され、その凹状面内のマッサージ用振動器の前部又は後部に、光学式の移動情報検出部が配されている。
【0025】
通常、赤外線を用いた光学式の移動情報検出部は、マウスを載置する平板面から離隔され平板面と非接触により情報を読み取っており、本願発明では通常よりもさらに大きな離隔距離となるものの、光学的或いは電気的にパソコン用のマウスとして必要な移動情報を検出しうるように調整されている。
【0026】
マウスには、通常本体上面前方の左右に、人差し指、中指でそれぞれ操作可能なスイッチが配されており、それ以外の上面部は、手の平にて握りやすいような略凸状の三次元曲面で形成されている。本願発明も、本体上面の構成は通常のとおりであって構わない。
【0027】
一方、マウス本体の上面のいずれかの箇所、又はマウス側面部のいずれかの箇所、及びマウス底部のいずれかの箇所には、コンピュータマウスと、マッサージ器の機能を切り替えるためのスイッチが配されている。
【0025】
なお、機能の切替えスイッチは、コンピュータマウスの操作上の混乱を惹起しない限り、例えばマウス操作用の左右一対のスイッチの特別な操作(同時に押す、等)によるものであっても構わないが、スライド式の切り替えスイッチであることが誤動作を防ぐためには好適である。
【0028】
本願発明のマウスでは、機能の切替えスイッチを切り替えると、電気回路の切り替えが行われるようになっており、例えば、マウス上面前方の左側スイッチはマッサージ器の電源のオン/オフのスイッチとなり、同じく右側スイッチはマッサージ器の振動パターンを切り替えるためのスイッチとすることができるようになっている。
【0029】
当然に、電気回路の切り替えは、物理的な接点スイッチを利用して回路を切り替えるものや、論理回路が組まれた集積回路により切り替えを行うものであってもよい。本願ではパソコンマウスの操作スイッチを、切替えスイッチによりマッサージ器のスイッチとして機能させることができれば、いずれの切り替え方法であってもよい。
【0030】
また、その他スイッチの操作の組み合わせにより、電源オン/オフ、振動パターン切替え、振動強度を上げ下げなど切り替えることができるようにも回路設計することができる。
【0031】
マッサージ器の振動パターンの変更は、一般的に多くのハンディタイプのマッサージ器と同様に、振動発生部のモータのオン/オフのパターンを記憶した集積回路によるものでよく、予め記憶させた振動パターンを、上記の例において、例えば右側スイッチの1回のオン(クリック)により、次のパターンに切り替わり、これがクリックするたびにロータリーにパターンを変更させていくこともできる。
【0032】
同様に、例えば左右いずれかのスイッチを長押しすることで、マッサージ器の振動発生部のモータに供給される電流を変化させるようにすることで、マッサージ振動の強度を変化させることができるようにすることもできる。
【0033】
これらの制御については、いずれの場合も切替えスイッチをマッサージ器機能に切替えた場合に、パソコン操作用のマウス固有のスイッチ類をマッサージ振動器のオン/オフや、振動パターンの切り替え、振動強度の切り替えのためのスイッチとして利用できるような専用の集積回路設計により実現できるものであって、本願発明により可能となる効果である。
【0034】
また、近年一般に見受けられる、マウスの上面前方の左右のスイッチの間に、モニター画面の上下スクロール用などのローラー状の回転スイッチが突出設置されたものについても、本願発明の技術的思想に基づき、機能切替えスイッチによりマッサージ器の制御用スイッチとして利用することができる。
【0035】
マッサージ用振動器は、他のマッサージ器同様に、振動子の偏心回転により振動を生じせしめる部品を用いるが、現在、円筒状の寸法が長さ略1cm前後、直径が1cm以下の小型モータを用いた超小型パーツがあるため、こうした小型振動器を嵌入した硬質シリコンゴム等の弾性体の外表面を滑らかな突出形状に成形し、その突出形状部位がマウス底面の凹状の面の略中央部に突起するように配置されている。また、当然に機能を損なわない限り、上記突出部と凹状の窪み部は部材として一体的に成型されてもよいし、同一材質で一体化した部材で構成されてもよい。
【0036】
マッサージ用振動器の一部分を構成する突出部を含むマウス底部の凹状の窪み部は、当然にマウス上面部から手の平で押え付けて、マッサージする身体部位へ強く密着させられるものであるために、その凹状の窪み形状は、首や肩などの緩やかな身体部位のカーブにゆとりを持って密着できるような曲率で形状設計されており、かつ強い圧迫を受けても上記突出部を含む部位やシェル(筐体)が破損しないような構造設計がなされている。
【0037】
本願発明のマウスは、通常のマウス機能に加え、切替えスイッチを切替えることでマッサージ器ともなるものであって、両機能を同時に発揮することを予定していない。これは、マウスを利用している実態からいえば、両機能を切替える方式で十分であるとともに、誤動作によるパソコン利用上の問題を防ぐものともなっている。
【0038】
光学式のマウスに必要な電力と、マッサージ器に必要とされる電力は当然に異なるものであるが、本願発明では、USB接続方式によりパソコン本体から供給されるUSB電源の定格(USBポートのバスパワー規格である5V/500mA)が使用できれば、マッサージ用振動器は十分に必要とされる振動を発生させることが発明者らにより確認されており、このため当然にパソコン用マウスとして、マッサージ器としての消費電力の違いに対応した回路又は電子部品、電線類の選択を行うことを想定している。
【0039】
場合により、より大きな電源を要する場合、或いは近年増加している無線方式(「BLUETOOTH」(登録商標)方式等)のケーブルレス型マウスの場合は、マウス本体内に乾電池や充電可能な小型リチウムイオン電池等のバッテリーを搭載し、電力を供給することもできる。
【0040】
マウス本体とパソコン本体を繋ぐUSBケーブルは、通常マウス本体の前側面中央に固定式で結合されていることが多いが、本願発明によりマッサージ器に切り替え使用するときは、ケーブルがマウス本体の後部側面に結合されることが操作上便利である。これは例えば予めマウス本体後部側面にUSBケーブルが結合されていれば解消される問題であるが、この場合はコンピュータマウスとしてはケーブルが手首部に接触する可能性もある。コンピュータマウスとしての操作性と、マッサージ器としての操作性のいずれを重視するかは任意の設計事項であり、前後左右いずれにケーブル結合される場合も本願発明に包含されるものである。
【0041】
その他、本願マウスのシェル(筐体)の材質は、前記同様任意の設計事項であり、段落0036で述べるような強度対応が構造的に実現できるものであれば、材質の選択は本願発明の作用効果に大きな影響を与えない。
【0042】
また、本願発明のマウスの構成に、例えばLED電飾での装飾性を加味したものや、形状デザインにおいて人間工学上の創作をより加味したものは、本願発明の技術的思想には影響を与えることはない。
【0043】
さらに、例えば無線でパソコン本体接続されるマウスにおいて、遠隔までの持運び性を向上することや、マウスのスイッチによらずパソコン本体でのソフトウェア或いはその他の携帯型情報機器により本願のマウスのマッサージ機能を操作することなどは当然に想定されるが、いずれも本願発明のマウスの構成が基礎となるかぎり本願発明の部分利用に過ぎないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】 本願発明の実施形態を示すマウスの概略図
【図2】 本願発明の実施形態を示すマウスの左側面からみた外観図
【図3】 本願発明の実施形態を示すマウスの底部からみた外観図
【符号の説明】
【0045】
1 マウス本体
2 マウス本体上面部
3 凹状窪み部
4 マッサージ振動器部(突出部)
5 マウス上面前部の左側スイッチ
6 マウス上面前部の右側スイッチ
7 切替えスイッチ
8 USBケーブル
9 光学式の移動情報検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式コンピュータマウスであって、コンピュータマウスの底面部が、横方向を貫通して本体側に凹状に窪んで形成され、凹状に窪んだ部位には、マッサージ用振動器が突出配置され、本体に配した切替スイッチにより、コンピュータマウスの操作スイッチのいずれかをマッサージ用振動器への電源供給のオン/オフ、振動パターン及び振動強度の変更スイッチに切り替えて、操作者が手の平でコンピュータマウスを掴みながら、略凸状の身体部位にコンピュータマウスの凹状に窪んだ部位を密着させてマッサージ用振動器を操作してマッサージすることを特徴とする
マッサージ器一体型のコンピュータマウス
【請求項2】
マッサージ用振動器への電源の供給が、USB電源又は本体に内蔵したバッテリーによることを特徴とする
マッサージ器一体型のコンピュータマウス

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−89220(P2013−89220A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243904(P2011−243904)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【特許番号】特許第4986093号(P4986093)
【特許公報発行日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(508188123)株式会社アートファクトリー (1)
【Fターム(参考)】