説明

マッサージ椅子

【課題】マッサージ機構が内蔵された背もたれ部のカバーの交換時期を、使用者に対して容易且つ的確に知らせることができるマッサージ椅子を提供する。
【解決手段】カバー部の施療子被覆部20bは、使用者と接する外側カバー部材34とその内側の内側カバー部材33とを2枚重ねて構成され、外側カバー部材34の耐摩耗性が内側カバー部材33よりも低く構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背もたれ部にマッサージ機構が組み込まれたマッサージ椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれ部にマッサージ機構を組み込んだマッサージ椅子は、背中のつぼや経絡にマッサージ機構の施療子を当てて所定の動作をさせ、血行を促進させることで肩や背中の凝りを解消させるものであって、例えば特許文献1に示すように従来より提案されている。
【0003】
このようなマッサージ椅子は、背もたれ部において施療子等の機構部が直接使用者の身体に触れないように布等のカバーにより被覆されている。そして、使用の都度施療子とカバーとが摺接してマッサージが行われるため、長期間使用するとカバーが破れて施療子が剥き出しになる虞がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1にて示されているマッサージ椅子のように、背もたれ部のカバーが外側カバー部材と内側カバー部材との二枚重ねで構成され、カバーの耐久性の向上を図っているものがある。特に、この特許文献1のマッサージ椅子では、施療子が直接的に摺接する内側カバー部材を外側カバー部材よりも耐摩耗性を大としている。
【特許文献1】特許第3093777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カバーを二重構造とし、しかも内側カバー部材の耐摩耗性を大としたことで、カバーの耐久性を向上できたものの、施療子の動作に伴う内外のカバー部材同士の摩擦からやがて破れが生じてくる。このとき、内外のカバー部材のどちらが先に破れる事になるのか分からず、例えば内側カバー部材が先に破れると外側カバー部材が破れて施療子が露出するまで、使用者がカバーの交換時期であることに気づきにくい。
【0006】
一方、上述した特許文献1のように、内側カバー部材を外側カバー部材よりも耐摩耗性を大、換言すれば外側カバー部材を内側カバー部材よりも耐摩耗性を低くすることで、積極的に外側カバー部材から先に破れ始めるようにすることもできる。しかしながら、少し破れ始めても互いのカバー部材の見分けがつきにくいと、その破れに気付くのが遅れてしまうため、できるだけ早期に使用者に対してカバーの交換時期を知らせることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、施療子を有するマッサージ機構が内蔵された背もたれ部のカバーの交換時期を、使用者に対して容易且つ的確に知らせることができるマッサージ椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、施療子を上下方向、幅方向及び前後方向の少なくとも一方に駆動する駆動機構がカバーにて保護されて背もたれ部内に備えられ、前記駆動機構により前記施療子を施療動作させて着座した使用者に対してマッサージを行うマッサージ椅子であって、前記カバーは、前記使用者と接する外側カバー部材とその内側の内側カバー部材とを複数枚重ねて構成し、前記外側カバー部材の耐摩耗性を前記内側カバー部材よりも低く、且つ前記外側カバー部材に対して前記内側カバー部材の色の色相又は明度を相違させたことをその要旨とする。
【0009】
この発明では、カバーは、使用者と接する外側カバー部材とその内側の内側カバー部材とを複数枚重ねて構成され、外側カバー部材の耐摩耗性が内側カバー部材よりも低く構成される。つまり、施療子の動作に伴う内外のカバー部材同士の摩擦により、積極的に外側カバー部材が先に破れ始める構成とされている。そして、外側カバー部材に対して内側カバー部材の色の色相又は明度が相違されることから、先に破れた外側カバー部材のその破れ箇所から色の色相又は明度の異なる内側カバー部材が覗き、使用者はカバーの破れ箇所を容易且つ的確に発見できるようになる。これにより、使用者に対してカバーの交換時期を容易且つ的確に知らせることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマッサージ椅子において、前記外側カバー部材及び前記内側カバー部材は、互いに反対側の色相で構成されたことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、外側カバー部材及び内側カバー部材が互いに反対側の色相で構成される。これにより、外側カバー部材の色と内側カバー部材の色との差異が明確になり、より容易且つ的確に破れ箇所が発見しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、施療子を有するマッサージ機構が内蔵された背もたれ部のカバーの交換時期を、使用者に対して容易且つ的確に知らせることができるマッサージ椅子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、マッサージ椅子10の脚部11は図示しない床面に載置されるとともに、その脚部11の上部には使用者が着座可能な座部12が固定されている。その座部12の後部には、使用者の背中を持たれ掛けさせるための背もたれ部13が傾動可能に設けられている。使用者の腕を置くための肘掛け14が座部12の両側に設けられている。座部12の前方下部には、使用者の足等を乗せてマッサージを行うオットマン15が傾動可能に設けられている。
【0014】
図2に示すように、背もたれ部13は、硬質樹脂材料からなり前面が上下方向に長く開口された長方形状の開口部16を有するバックボード17と、該バックボード17の背面側に取り付けられるバックカバー18と、前記バックボード17と前記バックカバー18との間に収容され所定部位に取り付けられる略長方形状の機構部フレーム19と、前記バックボード17の前面を覆うように取り付けられるカバー部20とで構成されている。
【0015】
機構部フレーム19には、その長手方向(上下方向)の内側面にガイドレール19aが形成されている。そのガイドレール19aには、駆動機構としてのマッサージ機構40が組み込まれている。マッサージ機構40は、マッサージ機構40に組み付けられる駆動モータ(図示略)により上下動される。また、マッサージ機構40には、幅方向の回転軸にて連結されたもみ玉41aを先端に有する施療子41が対で備えられ、その駆動モータ又は別途設けられた駆動モータによりその一対の施療子41が幅(左右)方向及び前後方向に駆動させる。このようにマッサージ機構40の上下動に加えて、施療子41の幅方向及び前後方向の動作が組み合わされることで、施療子41による3次元の施療動作が行われるようになっている。
【0016】
カバー部20は、図2及び図3に示すように、バックボード17の開口部16の両側及び上側に連続するように設けられ使用者の背中の荷重を実質的に受ける背中受け部20aと、該背中受け部20aの内側で前記開口部16の範囲、即ち施療子41(もみ玉41a)の移動範囲に対応した長方形状の施療子被覆部20bとで構成されている。
【0017】
背中受け部20aは、布地よりなる2枚のカバー部材31,32にてクッション30を包んで構成され、使用者の背中の荷重をクッション30で受け止めるように構成されている。カバー部材31,32は、幅方向外側端部が合成樹脂性の固定板35と縫合されており、固定板35に形成された複数の孔35aからピン36をバックボード17の複数の取付孔37に向けて装着することで、カバー部20がバックボード17の開口部16以外の前面を覆うように該バックボード17に対して固定される。
【0018】
施療子被覆部20bは、背中受け部20aの内側でバックボード17の開口部16を塞ぐように設けられ、ともに布地よりなる内側カバー部材33と外側カバー部材34とを2枚重ねて構成されている。カバー部材33,34は、背中受け部20aのカバー部材31,32との境目が断面J字状の接続部材38とともに縫合されており、該接続部材38がバックボード17の開口部16に掛け止められている。
【0019】
本実施の形態の内側カバー部材33及び外側カバー部材34は、内側カバー部材33よりも外側カバー部材34の耐摩耗性が低く構成されている。因みに、同一の生地材質を使用しつつ、その生地の厚さ、糸の太さ、生地の構成密度等の変更で対応できる。無論、糸の強度の異なる異種の生地材質を使用して耐摩耗性を変えてもよい。また、内側カバー部材33及び外側カバー部材34は、互いの色の色相(色合い)又は明度を相違させた生地で構成している。例えば、外側カバー部材34に黒色など暗めの色を選択した場合、内側カバー部材33は色の明度を変えて白やベージュなど明るめの色を選択する。また、内側カバー部材33をピンク色など目立つ色を採用してもよい。また、外側カバー部材34の色の色相に対し、内側カバー部材33は色の色相を正反対または正反対近傍の反対側の色相を選択するとよい。
【0020】
このような構成のマッサージ椅子10では、背もたれ部13内のマッサージ機構40の駆動に基づいて、使用者の背中に対し揉み、擦り、叩き等の施療子41(もみ玉41a)による3次元の施療動作が行われる。
【0021】
この施療子41の3次元の施療動作は、カバー部20のカバー部材33,34を介在させて使用者に伝達されているが、この施療子41の施療動作に伴って内側カバー部材33と外側カバー部材34との間で摩擦が発生している。カバー部材33,34間で発生する摩擦によりカバー部材33,34のそれぞれ摩耗することとなるが、本実施の形態では前述したように外側カバー部材34の耐摩耗性が内側カバー部材33よりも低く構成されているため、積極的に外側カバー部材34の方が先に摩耗して破れる構成となっている。そして、外側カバー部材34が先に破れた場合は、内側カバー部材33の色の色相や明度が外側カバー部材34の色と相違されていることから、使用者に対して破れた箇所を容易且つ的確に示すことができる。特に、外側カバー部材34と内側カバー部材33とを反対側の色相を採用すれば、互いの色の差異が明確になる。これにより、使用者はカバー部20の交換時期であることを認識することができるようになっている。
【0022】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)カバー部20の施療子被覆部20bは、使用者と接する外側カバー部材34とその内側の内側カバー部材33とを2枚重ねて構成され、外側カバー部材34の耐摩耗性が内側カバー部材33よりも低く構成される。つまり、施療子41の動作に伴う内外のカバー部材33,34同士の摩擦により、積極的に外側カバー部材34が先に破れ始める構成とされている。そして、外側カバー部材34に対して内側カバー部材33の色の色相又は明度が相違されることから、先に破れた外側カバー部材34のその破れ箇所から色の色相又は明度の異なる内側カバー部材33が覗き、使用者はカバー部20の破れ箇所を容易且つ的確に発見できるようになる。これにより、使用者に対してカバー部20(施療子被覆部20b)の交換時期を容易且つ的確に知らせることができる。
【0023】
(2)外側カバー部材34及び内側カバー部材33が互いに反対側の色相で構成することで、外側カバー部材34の色と内側カバー部材33の色との差異が明確になり、より容易且つ的確に破れ箇所が発見しやすくなる。
【0024】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、カバー部20の施療子被覆部20bを内側カバー部材33と外側カバー部材34との2枚構成としているが、内側カバー部材33を2枚以上とし、外側カバー部材34を含めて3枚以上の構成としてもよい。外側カバー部材34の少なくとも次の内側カバー部材33の色の色相又は明度を相違させる。
【0025】
・上記実施の形態では、施療子41部分を覆うカバー部20の施療子被覆部20bに適用したが、カバー部20が背中受け部20aと施療子被覆部20bと連続するものにおいてはその全体に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態におけるマッサージ椅子の斜視図である。
【図2】背もたれ部の分解斜視図である。
【図3】背もたれ部の構成を説明するための図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10…マッサージ椅子、13…背もたれ部、20…カバー部(カバー)、33…内側カバー部材、34…外側カバー部材、40…マッサージ機構(駆動機構)、41…施療子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施療子を上下方向、幅方向及び前後方向の少なくとも一方に駆動する駆動機構がカバーにて保護されて背もたれ部内に備えられ、前記駆動機構により前記施療子を施療動作させて着座した使用者に対してマッサージを行うマッサージ椅子であって、
前記カバーは、前記使用者と接する外側カバー部材とその内側の内側カバー部材とを複数枚重ねて構成し、前記外側カバー部材の耐摩耗性を前記内側カバー部材よりも低く、且つ前記外側カバー部材に対して前記内側カバー部材の色の色相又は明度を相違させたことを特徴とするマッサージ椅子。
【請求項2】
請求項1に記載のマッサージ椅子において、
前記外側カバー部材及び前記内側カバー部材は、互いに反対側の色相で構成されたことを特徴とするマッサージ椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−153537(P2009−153537A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331408(P2007−331408)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】