説明

マッサージ機

【課題】マッサージ機において、身体の長手方向に沿った広範囲に対して指圧点を直線的に移動させるようなマッサージを施せるようにし、もって斬新で快適なマッサージ感が得られるようにする。また施療部材の移動と足との干渉を防ぐことができるようにする。
【解決手段】マッサージ機1は、ふくらはぎLの裏面を押圧する位置に設けられた裏押し用の施療部材161と、裏押し用の施療部材161に対向配置された前押し用の施療部材160と、これら一対の施療部材160,161でふくらはぎLを挟持し且つ押圧する挟持機構162と、挟持機構162による一対の施療部材の挟持状態を持続しつつ、一対の施療部材160,161をふくらはぎLの長手方向に沿って移動させる移動機構26と、移動機構26による一対の施療部材160,161の移動と足Fとの干渉を防ぐ干渉防止機構250と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢をマッサージするのに好適なマッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下肢(特に、膝下から足首近傍にかけての部分)をマッサージすることができるマッサージ機として、椅子型マッサージ装置のフットレストに採用されたものが知られている(例えば、特許文献1)。このマッサージ機は、左右一対の施療凹部を備えており、その両側壁の内側面と中間壁の両側面とにそれぞれエアバッグが設けられている。これら各エアバッグをエア給排装置で膨張・収縮させることにより、各施療凹部内に嵌め込まれた両下肢を同時にマッサージできるようになっている。
【0003】
一般に、エアバッグは、中央部の膨らみが最も大きく両端部に向かうほど膨らみが小さくなっているので、下肢の長手方向の狭い範囲でしか十分な押圧力が得られないということがあった。そこで、複数のエアバッグを各施療凹部の長手方向に沿って並設し、この複数のエアバッグに同時又は順次にエアを給排して、下肢をその長手方向の広範囲に渡ってマッサージできるようにしたマッサージ機も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
一方、エアバッグを用いず、施療凹部を構成する両壁部そのものを下肢に対して接近・離反させる機構を採用したマッサージ機も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3012780号公報
【特許文献2】特開平11−347082号公報
【特許文献3】特許第3339849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマッサージ機は、特許文献1、特許文献2に開示されたエアバッグ式であろうと、特許文献3に開示された機械式であろうと、施療凹部に嵌め入れた身体部分に対し、対向する一対の施療部材でマッサージするものであり、結局のところは、定点的な押圧と解放を繰り返すだけである。そのため、得られるマッサージ感としては単一的で変化の乏しいものである。
【0007】
また、定点的な押圧と解放とを繰り返すだけのマッサージでは、血流やリンパの流れ、或いは神経に対して脈動的な刺激を与えることが主であり、換言すれば身体側の自発的な疲労回復や活性化を待つのが狙いとなる。すなわち、実質的且つ直接的に血流やリンパの流れを促進させるというようなイメージではなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、身体の長手方向に沿った広範囲に対して指圧点を直線的に移動させるようなマッサージを施せるようにすることで、斬新で快適なマッサージ感が得られるようにし、また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できるようにした新規なマッサージ機を提供することを目的とする。加えて、マッサージ機と施術中の足との干渉といった不都合が発生しないマッサージ機をを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るマッサージ機は、膝と足との間に位置するふくらはぎの裏面を押圧する裏押し用の施療部材と、前記裏押し用の施療部材に対向配置された前押し用の施療部材とからなる一対の施療部材と、前記一対の施療部材でふくらはぎを挟持し且つ押圧する挟持機構と、前記挟持機構による前記一対の施療部材の挟持状態を持続しつつ、前記一対の施療部材をふくらはぎの長手方向に沿って移動させる移動機構と、前記移動機構による前記一対の施療部材の移動と足との干渉を防ぐ干渉防止機構と、を有していることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記干渉防止機構は、前記移動機構が前記一対の施療部材を膝から足へ向
けて移動させた際に、前記裏押し用の施療部材が到達する到達位置へ足が入り込まないように規制する規制部材を有しているとよい。
好ましくは、前記干渉防止機構は、前記移動機構が前記裏押し用の施療部材を移動させる移動経路から裏側へ足が通り抜けないように規制する背面部材を有しているとよい。
【0010】
好ましくは、前記干渉防止機構は、前記移動機構が前記一対の施療部材を膝から足へ向けて移動させた際に、前記裏押し用の施療部材が到達する到達位置へ足が入り込まないように規制する規制部材と、前記移動機構が前記裏押し用の施療部材を移動させる移動経路から裏側へ足が通り抜けないように規制する背面部材とを有しており、前記規制部材から上方に延設するように前記背面部材が一体的に成形されているとよい。
【0011】
好ましくは、前記干渉防止機構は、前記裏押し用の施療部材が足と当接したときに、裏押し用の施療部材をその移動方向の後方側へ移動可能とする緩衝部材を有しているとよい。
好ましくは、前記緩衝部材は、前記裏押し用の施療部材を支持する支持部材の基部側に設けられた弾性部材であるとよい。
【0012】
好ましくは、前記一対の施療部材は、前記ふくらはぎの前面から左右の斜め外方にずれた箇所と前記ふくらはぎの裏面とを挟持しつつ押圧するように構成されており、これら一対の施療部材とは別に、前記ふくらはぎの前面から左右の斜め内方にずれた箇所を押圧する押圧部材が設けられており、前記移動機構は、一対の施療部材の移動に連動して、前記押圧部材を前記ふくらはぎの長手方向に沿って移動可能としているとよい。
【0013】
好ましくは、前記挟持機構には、前記一対の施療部材を挟持位置へと進出させると共に、解放位置へと退行させる出退駆動部が備えられており、前記挟持位置は、一対の施療部材が互いに近接して前記ふくらはぎを挟持し且つ押圧した状態となる位置とされ、前記解放位置は、一対の施療部材が互いに最も離反した状態となる位置とされているとよい。
好ましくは、前記移動機構による施療部材の移動範囲の一方端側又は他方端側が、前記一対の施療部材の解放位置となるように設定されているとよい。
【0014】
好ましくは、前記施療部材は、拳状に形成されているとよい。
好ましくは、前記一対の施療部材間で構成される施療凹部が左右一対設けられ、前記一対の施療凹部は、当該凹部の長手方向が同方向となるように並設されているとよい。
また、本発明に係るマッサージ機は、膝と足との間に位置するふくらはぎの裏面を押圧する裏押し用の施療部材と、前記裏押し用の施療部材に対向配置された前押し用の施療部材とからなる一対の施療部材と、前記一対の施療部材でふくらはぎを挟持し且つ押圧する挟持機構と、前記挟持機構による前記一対の施療部材の挟持状態を持続しつつ、前記一対の施療部材をふくらはぎの長手方向に沿って移動させる移動機構と、前述した前押し用の施療部材をふくらはぎ側へ近接させて押圧力を増大させる押圧力増強手段と、を有していることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記押圧力増強手段は、内部にエアが供給されることで膨張するエアバッグ構造とされているとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマッサージ機は、身体の長手方向に沿った広範囲に対して指圧マッサージを施せるものであり、斬新で快適なマッサージ感が得られるようになる。また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できる。加えて、本発明に係るマッサージ機では、マッサージ機と施術中の足との干渉といった不都合が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るマッサージ機の基本形態となるマッサージ機における外観の正面斜視図である。
【図2】本発明に係るマッサージ機の基本形態となるマッサージ機における内部構造の正面斜視図である(解放位置)。
【図3】本発明に係るマッサージ機の基本形態となるマッサージ機における内部構造の正面斜視図である(挟持位置)。
【図4】本発明に係るマッサージ機の基本形態となるマッサージ機における内部構造の正面図である(挟持位置)。
【図5】本発明に係るマッサージ機の基本形態となるマッサージ機における内部構造の正面斜視図である(最上の挟持位置)。
【図6】図3の一部を省略して示したE−E線断面図である(挟持位置、挟持間隔:狭い)。
【図7】図3の一部を省略して示したE−E線断面図である(挟持位置、挟持間隔:広い)。
【図8】図2の一部を省略して示したF−F線断面図である(解放位置)。
【図9】本発明に係るマッサージ機の実施形態における内部構造の正面斜視図である。
【図10】本発明に係るマッサージ機の実施形態における内部構造の正面図である。
【図11】本発明に係るマッサージ機の実施形態における内部構造の要部斜視図である。
【図12】図10のG−G線断面図である(一部を省略して示した図)。
【図13】図3の一部を省略して示したE−E線断面図である(挟持位置、挟持間隔:狭い、押圧力増強手段あり)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1〜図8は、本発明に係るマッサージ機の基本構成を有するマッサージ機1を示している。以下、このマッサージ機を「基本形態のマッサージ機1」と言う。
この基本形態のマッサージ機1は、使用者の左右両方の下肢を対象として、下肢を構成するふくらはぎLと足Fとの両方に、挟み込みのマッサージならびに直線的に移動するような指圧マッサージを同時に行えるように構成されたものを示してある。
【0019】
なお、本明細書において「ふくらはぎL」は、人間の下肢のうち、膝下であって且つ足首より上の部分を言うものとし、「足F」は足首より下の部分を言うものとする。また、図1の矢示線Xで示す方向を前後方向、矢示線Yで示す方向を左右方向(幅方向)、矢示線Zで示す方向を上下方向と言う。
この基本形態のマッサージ機1は、図1に示すように、正面視すると横長又は縦長の長方形或いは正方形であって側面視すると長靴型となるようなケーシング2を有したものとなっている。
【0020】
ケーシング2には、その前面の約上半部で前方及び上方へ向けて開放する左右一対の第1施療凹部4が、互いに左右に離れて並設されている。これら左右の第1施療凹部4に対して左右のふくらはぎLを嵌め入れることができる。
また、ケーシング2には、その前面の約下半部で上方及び前方へ向けて開放する左右一対の第2施療凹部5が、互いに左右に離れて並設されている。これら左右の第2施療凹部5に対して左右の足Fを嵌め入れることができるようになっている。
【0021】
第1施療凹部4にふくらはぎLを嵌め入れ、同時に第2施療凹部5に足Fを嵌め入れることができるように、第1施療凹部4及び第2施療凹部5は、左側配置のもの同士、及び右側配置のもの同士が連通するように構成されている。
第1施療凹部4や第2施療凹部5の内部には、スポンジやウレタン等によるクッション材、伸縮性の豊富な布やレザー等によるカバー材を備えた内張材6が設けられている。内張材6には、適度な通気性を付与させておくのが好適であり、場合によっては暖房又は冷房機構などをも付与しておくことができる。また、カバー材については線ファスナーや面ファスナー等による取付手段を採用することにより、必要に応じて容易に交換できるようにするとよい。
【0022】
図2〜図8に示すように、左右の第1施療凹部4には、それぞれ、ふくらはぎLを正面側及び後面(裏面)側からマッサージする垂直マッサージ機構151が設けられている。これに対し、左右の第2施療凹部5には、それぞれ、足Fを左右両側からマッサージする水平マッサージ機構150が設けられている。
なお、この基本形態のマッサージ機1において、ケーシング2は、立てた状態と仰向け(前面を上向き)にして寝かせた状態とに使用向きを変更することが任意に選択可能である。そのため、使用者は、椅子などに腰掛けているときにはケーシング2を立てた状態にして、使用すればよいし、またベッドなどで仰向けに寝ころんでいるときにはケーシング2も仰向け又は傾斜させた状態にして、使用すればよい。
【0023】
このようなことから、第1施療凹部4の垂直マッサージ機構151や、第2施療凹部5の水平マッサージ機構150における「垂直」や「水平」の呼称は、本明細書中での便宜上のものに過ぎず、マッサージ機1としての使用状態を限定したものではない。
図2〜図8に示すように、ケーシング2の内部には支持フレーム15が設けられている。この支持フレーム15は、下端位置で略水平に設けられた台フレーム部16と、この台フレーム部16の後端部から上方へ向けて略垂直に設けられた背フレーム部17とを有しており、側面視L型に一体形成されている。
【0024】
そして、この支持フレーム15のうち、台フレーム部16に対して上記した水平マッサージ機構150が設けられており、背フレーム部17に対して前記した垂直マッサージ機構151が設けられている。
この基本形態のマッサージ機1では、台フレーム部16に設けられた水平マッサージ機構150が、板状の施療部材154,155を具備しており、これら両施療部材154,155によって足Fを左右両側から揉みマッサージする構成となっている。
【0025】
またこの基本形態のマッサージ機1では、背フレーム部17に設けられた垂直マッサージ機構151が、前押し用の施療部材160(脛用の施療部材160)及び裏押し用の施療部材161(ふくらはぎの背面用の施療部材161)を具備しており、これら両施療部材160,161によってふくらはぎLを前後両側から指圧マッサージする構成となっている。
【0026】
まず、垂直マッサージ機構151について詳説する。
この垂直マッサージ機構151は、ふくらはぎLの前面の斜め外方へずれた箇所を押す前押し用の施療部材160と、ふくらはぎLを介して前記施療部材160と対峙する配置とされてふくらはぎLを裏側から支持する裏押し用の施療部材161と、これら前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161に対してふくらはぎLへの押付状態を付与させる挟持機構162と、両施療部材160,161及び挟持機構162を上下動させる移動機構26とを有している。
【0027】
前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161は、互いに前後方向で対向する配置として構成され、この構成が使用者(身体)の左右の下肢に各対応させて左右一対に設けられている。当然に、挟持機構162は、各組を構成する施療部材160,161に対応させて、それぞれ個別に設けられている。
移動機構26は、背フレーム部17に設けられた左右一対の垂直レール21に対し、垂直動スライダ30の左右両端部に設けられたレール保持部163が上下動自在な状態に外嵌され、この垂直動スライダ30が昇降駆動部31によって上下駆動される構造となっている。また、この垂直動スライダ30に対して、左右両側に施療部材160,161及び挟持機構162が設けられている。
【0028】
昇降駆動部31を具体的に説明すれば、長手方向を上下方向へ向けた送りネジ軸32と、この送りネジ軸32を回転駆動するための正逆回転可能なモータ33及びこのモータ33の後部側に連結された減速ギヤ部34と、垂直動スライダ30に設けられ送りネジ軸32が串刺し状態で螺合するナット部材35とを有したものとしてある。モータ33及び減速ギヤ部34は、支持フレーム15内(台フレーム部16上の左右方向中央部)で固定されている。
【0029】
図6〜図8に示すように、前押し用の施療部材160は、ふくらはぎLの前面(真正面)から左方又は右方の斜め外方にややずれて配置されている。具体的には、左側の施療部材160ではふくらはぎLの左寄りとなるような斜め外方であり右側の施療部材160ではふくらはぎLの右寄りとなるような斜め外方とされている。このような配置とされることで、この施療部材160は、ふくらはぎLの前面にある向こう脛(ムコウズネ)との直
接的な当接を避け、そのうえで、向こう脛の左右外側に沿った横位置(軽く押すと浅い窪みを生じる状態で上下方向に延びた筋部)を押圧できるようになっている。
【0030】
この施療部材160は、前記移動機構26が具備する垂直動スライダ30のレール保持部163から、ふくらはぎLの左右方向外側を通って前方突出するように設けられたステー部165に対し、その前方の突出位置で支持されている。この施療部材160は、軸方向の中央部が膨らんだ円柱ローラ状(鼓状)に形成されたものであって、軸心となる部分に、前記ステー部165と連結する支軸166が設けられている。この施療部材160は、支軸166を中心に回転自在なものとしてもよいし、回転しないものとしてもよい。
【0031】
支軸166は、ステー部165との連結部分とされる根本側が左右方向の最外側となり、軸先端となるほど左右方向の内側へ入り込むように(図6に示す角度αを参照)、斜めに前方突出して設けられている。このような支軸166の斜め突出状態により、施療部材160がふくらはぎLを外側から回り込むようになって、前面の斜め外方にだけ当接し、ふくらはぎLの外方側面などとの当接を回避している。
【0032】
これに対し、裏押し用の施療部材161は、前押し用の施療部材160によって後方へ押されるふくらはぎLをその裏面側中央で支え受けるようになっている。この施療部材161は、前記移動機構26が具備する垂直動スライダ30の前面に対し、ローラ軸を左右方向へ水平にして架設された円筒ローラとして形成されている。ローラ形状は、左右方向の内側が太く、左右方向の外側ほど細くなるテーパローラとしてある。
【0033】
そのため、この裏押し用の施療部材161は、ふくらはぎLを支持したときの押し量を、左右方向の内側ほど多くすると共に、ふくらはぎLを支持したときの面圧については反対に、左右方向の外側ほど高めるものであり、全体としてほどよい刺激を付与するうえで好適となっている。この施療部材161は、ローラ軸を中心に回転自在なものとしてもよいし、回転しないものとしてもよい。
【0034】
これら前押し用の施療部材160と裏押し用の施療部材161とは、前記移動機構26の垂直動スライダ30が上下動するときに、互いに一体となって上下動するので、ふくらはぎLは、その斜め前面(向こう脛の横)と裏面との前後2カ所を効果的に指圧マッサージされるものとなっている。
なお、いずれの施療部材160,161も、その形成素材には、軟質又は硬質の樹脂やゴムなど、弾性を有するものが採用可能である。
【0035】
一方、垂直マッサージ機構151の挟持機構162は、前押し用の施療部材160と裏押し用の施療部材161との相互間にふくらはぎLが嵌め入れられたときに、前押し用の施療部材160が裏押し用の施療部材161から一定距離を超えて開かない(離れない)状態に保持させると共に、両施療部材160,161によってふくらはぎLの前後両面を押圧する状態が維持されるようにするための機構である。
【0036】
挟持機構162の具体的な構造は、次のようである。
すなわち、図6〜図8に示すように、前押し用の施療部材160を支持するステー部165の基部には、軸心を上下方向へ向けた状態で上方及び下方に突出する揺動軸43を設けると共に、この上下の揺動軸43を、垂直動スライダ30のレール保持部163に対して回転自在な状態で枢支させてある。これにより、このステー部165は、揺動軸43を支点に、垂直動スライダ30に対して水平揺動自在となっている。
【0037】
その上で、ステー部165の基部に対し、揺動軸43を超えてその後方へ向けて突出する従節ピン50を設けて、この従節ピン50の後端部を、背フレーム部17の垂直レール21に設けたカムレール47へ係合させてある。
このようなことから、前押し用の施療部材160に対し、裏押し用の施療部材161から開く(離れる)作用が生じても、従節ピン50がカムレール47に当接することにより、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161から一定距離を超えて開かない(離れない)ようになっている。
【0038】
なお、従節ピン50は、具体的に次のようにして設けてある。すなわち、揺動軸43に対し、両脚を径方向外方へ突出させた脚付きコイルバネ167のコイル部分を外嵌させ、このコイルバネ167の一方のバネ脚をステー部165へ係合させてある。また、このコ
イルバネ167の他方のバネ脚にスリーブを装着した状態で、このスリーブごとカムレール47に係合させてある。このカムレール47に係合させたバネ脚(スリーブ)が従節ピン50を形成するものである。
【0039】
従って、コイルバネ167のバネ作用があるので、前押し用の施療部材160は、裏押し用の施療部材161からある程度の範囲を持ってのみ開閉するようになっている。
また、カムレール47は、具体的に次のようにして設けてある。
すなわち、支持フレーム15の背フレーム部17には、その前面に、長手方向を上下方向へ向けてストレートに凹設された縦溝170(図2〜図6参照)が形成されている。縦溝170の下端部は、左右方向の内側へ斜めに折れ曲がった斜交溝部として形成されている。
【0040】
縦溝170にはレール部材171が嵌め込まれている。このレール部材171は、縦溝170のストレート部分だけに収められており、下端部で斜めに折れ曲がった斜交溝部までは及んでいない。
このレール部材171は、縦溝170におけるストレート部分内の溝幅よりも細く形成されている。また、このレール部材171は、縦溝170のストレート部分内において左右方向の内側(左側に配置された縦溝170では右寄りの溝壁を言い、右側に配置された縦溝170では左寄りの溝壁を言う)に沿って配置されている。従って、この縦溝170のストレート部分内には、レール部材171と共に、その左右方向外側に、支持アーム40の従節ピン50を嵌め入れることができるものとされている。
【0041】
なお、前記したステー部165には、垂直動スライダ30のレール保持部163との間に解放付勢具(図示しないコイルバネ)を設けてある。この解放付勢具により、ステー部165、即ち、前押し用の施療部材160を、図6中の矢符Pに示すような左右方向の外方(裏押し用の施療部材161との相互間を開く方向)へ付勢させてある。
この解放付勢具による付勢作用は、従節ピン50をレール部材171の側面に常に当接させる。そのため、従節ピン50は、レール部材171の側面に当接したまま縦溝170のストレート部分内で上下移動できるようになる。すなわち、この説明で明かなように、従節ピン50が当接するレール部材171の側面が、従節ピン50にとってのカムレール47となっている。
【0042】
ところで、図2〜図8に示す基本形態では、この挟持機構162に対して、次のような出退駆動部37も採用している。すなわち、この出退駆動部37は、移動機構26の垂直動スライダ30が所定の下限位置を超えて、更に下方へ移動するときに、前押し用の施療部材160が裏押し用の施療部材161から一定距離を超えて開く(離れる)ようにするためのものである。
【0043】
この出退駆動部37の作動により、両施療部材160,161の相互間は挟持中よりも広くなり、ふくらはぎLの出し入れが容易となる(各施療部材160,161が邪魔にならない)。
具体的に、出退駆動部37は、縦溝170の下端部に内部連通して設けた斜交溝部によって構成されたものとしている。すなわち、この斜交溝部は、縦溝170のストレート部分内に嵌められたレール部材171(カムレール47)に対して、その下端部の側面に折れ曲がりながら連続していることになる。そのため、この斜交溝部の溝内面は、支持アーム40の従節ピン50を誘導することのできる解放レール48を形成していると言える。
【0044】
従って、垂直動スライダ30が垂直レール21に沿ってその最も下部側へ移動すると、ステー部165の従節ピン50は、カムレール47から解放レール48へと誘導されることになる。そのため、従節ピン50は、その後端が左右方向の内方へ傾くようになって、前押し用の施療部材160は揺動軸43を中心に、裏押し用の施療部材161から開く方向(離れる方向)へ揺動するようになる。そのため、両施療部材160,161の相互間距離は解放位置となる。
【0045】
なお、その後、垂直動スライダ30が垂直レール21を上昇すれば、ステー部165の従節ピン50は解放レール48からカムレール47へと誘導され、前押し用の施療部材160は揺動軸43を中心に、裏押し用の施療部材161に近接する方向へ揺動するようになる。そのため、両施療部材160,161の相互間距離は挟持位置となる。このように、出退駆動部37は、垂直動スライダ30の上下動に伴い、前押し用の施療部材160を解放位置と挟持位置との間で出退動作させるものとなる。
【0046】
なお、これらの説明から明らかなように、ステー部165の突出角度、即ち、裏当て用の施療部材161に対する前押し用の施療部材160の相互間距離は、カムレール47及び解放レール48の形状により決定される。
ところで、図2〜図8に示す基本形態において、前記カムレール47を形成させているレール部材171は、断面が長丸状(又は楕円状)に形成されたものとしてある。そして、このレール部材171は、その上端部及び下端部が支持フレーム15の背フレーム部17に形成された縦溝170内において回動自在に保持されたものとしてある。
【0047】
また、支持フレーム15の背フレーム部17には、その上端面であって、且つ左右方向のおおよそ中央部に、ダイヤル操作部175を設けてある。そして、レール部材171の上端部(回動軸心)に一体回転可能に設けた回動入力片177と、ダイヤル操作部175の偏心位置との間に、リンク178を水平架設してある。これにより、ダイヤル操作部175の回動操作でリンク178を水平方向に沿って押し引きさせ、回動入力片177を介してレール部材171を回動させるリンク機構180を構成させてある。
【0048】
すなわち、このリンク機構180においてダイヤル操作部175を水平回転させると、レール部材171がその縦軸まわりに90°程度、回動して、レール部材171は、長丸状断面の長軸側が左右方向を向いたり(図6の状態)、長軸側が前後方向を向いたり(図7の状態)する。
このようなレール部材171の回動は、支持フレーム15の背フレーム部17に形成された縦溝170内で生じるものであり、レール部材171が縦溝170内(凹部スペース)の溝幅を狭める程度を変更させることになる。更に言えば、カムレール47を形成しているレール部材171の左右側面を、左右方向に位置変更させることになる。結果として、支持アーム40の従節ピン50がレール部材171に当接する位置を、左右方向の外方へ出っ張らせたり、左右方向の内方へ引っ込めさせたりできることになる。
【0049】
故に、図6に示す如く、このリンク機構180の操作で、レール部材171を、長丸状断面の長軸側が左右方向に向くようにしたときには、支持アーム40の従節ピン50が前後方向でまっすぐに突出し、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161に近接した挟持位置となって、ふくらはぎLを強く締め付けるようになる。
反対に、図7に示す如く、このリンク機構180の操作で、レール部材171を、長丸状断面の長軸側が前後方向に向くようにしたときには、支持アーム40の従節ピン50が前後方向で外向きに傾斜し、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161から開いた(離れた)挟持位置となって、ふくらはぎLを締め付ける力が緩和されるようになる。
【0050】
このリンク機構180の操作は、使用者の体型(ふくらはぎLの太さ)やマッサージ感に対する好みによって適宜選択すればよいものである。
また、図13に示すように、支持アーム40の適切な部分に、前押し用の施療部材160をふくらはぎL側へ近接させて押圧力を増大させる押圧力増強手段280を設けることは、非常に好ましい。
【0051】
すなわち、図13に示す如く、リンク機構180の操作で、レール部材171を、長丸状断面の長軸側が左右方向に向くようにしたときには、前押し用の施療部材160は裏押し用の施療部材161に近接した挟持位置となって、ふくらはぎLを強く締め付けるようになる。その上で、押圧力増強手段280を作動させることで、ふくらはぎLの一部分又全体を更に強い力で押圧することができる。
【0052】
具体的には、押圧力増強手段280は、エアバッグなどで構成され膨張可能とされている。この押圧力増強手段280へのエアは、図示しないコンプレッサなどから供給される。
押圧力増強手段280は、例えば、前押し用の施療部材160の背後(施療対象であるふくらはぎLとは反対側)に設けることができる。この押圧力増強手段280にエアが供
給されることで膨張し、前押し用の施療部材160がふくらはぎL側へと突出すると共に近接し(図13の矢印Q)、ふくらはぎLをポイント的に押圧するようになる。
【0053】
押圧力増強手段280を、ステー部165の後方(施療対象であるふくらはぎLとは反対側)に設けることもできる。この場合、この押圧力増強手段280にエアが供給され膨張することで、前押し用の施療部材160が揺動軸43回りに回動して、ふくらはぎLへと突出し(図13の矢印Q)、ふくらはぎLをポイント的に押圧するようになる。
また、押圧力増強手段280を、裏押し用の施療部材161を支持する支持柱281の基端部側に設けることもできる。この場合、この押圧力増強手段280にエアが供給され膨張することで、支持柱281の長さが伸びることとなり、裏押し用の施療部材161がふくらはぎLを前方へ押し出すようになる(図13の矢印Q’)。それに伴い、前押し用の施療部材160が相対的にふくらはぎL側へと近接することになり、ふくらはぎLをポイント的に押圧するようになる。この作動態様は、裏押し用の施療部材161自体を、内部にエアが供給されることで膨張する膨張構造とすることでも実現可能である。
【0054】
同様の作動態様は、前押し用の施療部材160を、内部にエアが供給されることで膨張する膨張構造とすることで実現可能である。つまり、前押し用の施療部材160自体を押圧力増強手段280とすることもできる。この場合、この押圧力増強手段280にエアが供給されることで、前押し用の施療部材160自体が膨張することとなり、前押し用の施療部材160がふくらはぎL側へと突出し、ふくらはぎLをポイント的に押圧するようになる。
【0055】
なお、押圧力増強手段280を動作させるに際しては、レール部材171の回動状態は直接的には関係ない。図7に示す如く、このリンク機構180の操作で、レール部材171を、長丸状断面の長軸側が前後方向に向くようにし、ふくらはぎLを締め付ける力が緩和された状況下であっても、押圧力増強手段280を作動させ(エアを供給し)、ふくらはぎLをポイント的に押圧するようにしてもよい。
【0056】
次に、マッサージ機1に備えられた水平マッサージ機構150を説明する。
水平マッサージ機構150は、片脚の足Fを嵌め入れる程度に左右方向に離れた状態として対向配置された横押し用の施療部材154,155と、これら施療部材154,155に対して足Fへの揉み動作を付与させるための揉み機構185とを有している。
横押し用の施療部材154,155は互いに対を成した状態として構成され、この構成が、使用者(身体)の左右の下肢に各対応させて設けられている。
【0057】
足Fの内側に向く配置とされた施療部材154も、また足Fの外側に向く配置とされた施療部材155も、足Fの高さ(床面から足Fの甲までの高さ)を超える程度に突出する板状に形成されている。いずれの施療部材154,155も、その形成素材には、軟質又は硬質の樹脂やゴムなど、厚み方向に弾性を有するものが採用可能である。また、各施療部材154,155が対向する内面には、足Fへの接触感を和らげるクッション材やカバー材等を配備しておくのが好適とされている。
【0058】
この水平マッサージ機構150の揉み機構185は、垂直マッサージ機構151の移動機構26(昇降駆動部31)が装備する正逆回転可能なモータ33を駆動源とする。すなわち、図2〜図5に示すように、このモータ33の前部側にはギアボックス187が連結されており、このギアボックス187に施療部材154,155を左右に亘って貫通する1本の回転軸186が回転自在に支持されている。ギアボックス187内には、ウォームギア及びウォームホイルが内蔵されていて、これらを介してモータ33の動力が回転軸186に伝えられるようになっている。
【0059】
この回転軸186が施療部材154,155を貫通している貫通部分には、回転軸186の回転力を施療部材154,155によるマッサージ動作に変換する変換部188が設けられている。
この変換部188は、回転軸186の軸方向中途部に回転軸186と一体回転するように固定された回転ボス部189と、施療部材154,155に設けられて前記回転ボス部189を相対回転自在な状態で外嵌するハウジング部190と、回転ボス部189に対してハウジング部190が供回りすることを規制する規制部191(図5参照)とを備えて
いる。
【0060】
回転ボス部189は、回転軸186に対して傾斜して設けられた円盤であって、その外周部には、ベアリングなどの滑り軸受具が装着されている。回転ボス部189の傾きは、施療部材154,155間において相対逆向きとなっている。
規制部191は、ハウジング部190から下向きに突出する係合突起を有したもので、この係合突起が、支持フレーム15の台フレーム部16に形成された左右に延びる摺動ガイド溝に係合するようになっている。
【0061】
これらのことにより、回転軸186の回転時には、摺動ガイド溝に係合した係合突起が左右方向へのみ摺動を許容される状態となって、ハウジング部190の供回りは阻止され、施療部材154,155は前後動と左右動とが所定角度範囲に規制された状況下で前後・左右に揺動するものとなる。前記したように、左右の施療部材154,155間において、回転軸186に対する回転ボス部189の傾きは相対逆向きとなっているので、施療部材154,155の前側が互いに近接している状態では、施療部材154,155の後側が離反した状態となる。即ち、施療部材154,155は平面視して略逆V字状となる。
【0062】
そして、回転軸186が回転するにしたがい、施療部材154,155は前側が互いに離反する動作を生じ、これに伴って施療部材154,155の後側は互いに近接する動作を生じる。その後は、また施療部材154,155の前側が互いに近接すると共に後側が互いに離反し、以後、施療部材154,155は前記したサイクル動作を繰り返すことになる。
【0063】
なお、回転軸186には、施療部材154,155の相互間を渡る部分に対応するようにして、足裏マッサージローラ200が串刺し状に貫通して設けられている。この足裏マッサージローラ200は、足Fの土踏まずを面接触状に支えることができる程度の外径で、且つ、回転軸186と同心又は僅かに偏心した外周面を有しており、この外周面には、周方向及び回転軸186の軸方向に間隔をおいて複数の突起部201が設けられている。この足裏マッサージローラ200は、回転軸186と一体回転可能又は半回転遅れを発生させるクラッチを介して従動回転可能となっており、施療部材154,155が前記したサイクル動作を繰り返すときに、これらと連動して回転する。
【0064】
この足裏マッサージローラ200の前方には、施療部材154,155の相互間に挟まれる配置で、足Fのつま先裏を支える足支持部材195aが配置され、足裏マッサージローラ200の後方には、施療部材154,155の相互間に挟まれる配置で、足Fの踵裏を支える足支持部材195bが配置されている。この足支持部材195a,195bの上面には、複数の突起部196が設けられている。
【0065】
足裏マッサージローラ200に設けられた突起部201や、足支持部材195a,195bに設けられた突起部196における配置、突設高さ、材質、個数などは、足裏にあるツボ位置などに応じて適宜に選択可能である。
次に、図2〜図8に示した基本形態のマッサージ機1を使用する状況に基づいて、その作用を説明する。
【0066】
マッサージ機1は、電源スイッチ又は運転操作スイッチがオフの状態にあるときには、図2に示すように、垂直マッサージ機構151における前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161は、最も下方位置で停止している。
最も下方位置で停止している前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161は、それらの相互間隔が最も広く開いており、その相互間に対して容易にふくらはぎLを出し入れすることができる。
【0067】
そこでまず、使用者は、左右のふくらはぎLを前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161の間にそれぞれ嵌め入れると共に、左右の足Fを、水平マッサージ機構150における横押し用の施療部材154,155の間にそれぞれ嵌め入れる。
この状態で電源スイッチ又は運転操作スイッチをオン操作すると、モータ33が作動し、垂直マッサージ機構151では、昇降駆動部31の減速ギヤ部34を介して移動機構26が垂直動スライダ30を上方へ向けて移動開始させる。また、水平マッサージ機構15
0では、揉み機構185のギアボックス187を介して回転軸186が回転を始める。
【0068】
垂直マッサージ機構151において、垂直動スライダ30が上方へ移動し始めると、支持アーム40の従節ピン50が解放レール48からカムレール47側へ移動し、これら従節ピン50とカムレール47とが当接するようになる。これにより、前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161の相互間隔が狭くなる。
すなわち、前押し用の施療部材160によってふくらはぎLの斜め前面(向こう脛の横)が押圧されると共に、裏押し用の施療部材161によってふくらはぎLの裏面が押圧され、効果的に指圧マッサージされる状態となる。
【0069】
この状態のまま、垂直動スライダ30は、支持アーム40の従節ピン50がカムレール47に当接し続ける範囲内(解放レール48を除いた領域)で少なくとも1サイクル、所望に応じて複数サイクルにわたり、上下往復動を繰り返すようになっている。複数サイクルの繰り返しを行う場合は、タイマー回路や計数回路に基づくものとしたり、或いは人為的なスイッチ操作に基づくものとすればよい。
【0070】
一方、水平マッサージ機構150においては、回転軸186の回転によって横押し用の施療部材154,155が、互いの前側を離反させると共に互いの後側を近接させ、また反対に、互いの前側を近接させると共に互いの後側を離反させるといった繰り返しの揉みマッサージを、足Fに対して左右両側から施すことになる。
同時に、施療部材154,155の相互間を渡る部分で、回転軸186に串刺し状に設けられた足裏マッサージローラ200が回転軸186と一緒に回転して、この足裏マッサージローラ200の外周面に設けられた複数の突起部201が、足Fの足裏を後方から前方へ向け、又は後方から前方へ向けて指圧するようにマッサージする。
【0071】
なお、垂直マッサージ機構151と水平マッサージ機構150とは、常に同期して動作するようにしてもよいし、いずれか一方だけを独立して動作するようにしてもよい。これらは、使用者の所望するところに応じて、適宜選択できるようにしておくとよい。
また、垂直マッサージ機構151によりマッサージしているふくらはぎLや、水平マッサージ機構150によりマッサージしている足Fに対して、振動マッサージを行うためのバイブレーション機構(図示略)を設けて、垂直マッサージ機構151や水平マッサージ機構150の作動時に同時又は別個独立して、このバイブレーション機構を作動させるようにしてもよい。
【0072】
カムレール47は、例えば、上下方向で太さを異ならせるようにすることで、ふくらはぎLの形状(太さの変化)に対応させて、裏押し用の施療部材161に対する前押し用の施療部材160の相互間距離が変化するようにしてもよい。
停電時などの対応として、水平マッサージ機構150によるふくらはぎLの拘束状態や、垂直マッサージ機構151による足Fの拘束状態を、使用者が手で強制的に解除できるような機構(脱出用の機構)を装備させることも可能である。
【0073】
例えば、図2〜図8に示した基本形態のマッサージ機1では、脱出用の機構として、モータ33の前側に連結されたギアボックス187に対し、その前面で突出する状態で脱出用ダイヤル197を設けてある。この脱出用ダイヤル197を回転操作すると、ギアボックス187内を介してモータ33のモータ軸を回転させることができるようになっている。これにより、水平マッサージ機構150によるふくらはぎLの拘束状態や、垂直マッサージ機構151による足Fの拘束状態を解除させることができる。また、このような機構は、各部機構のメンテナンスの際にも有効に利用可能となる。
【0074】
以上、詳説したように、基本形態のマッサージ機1では、身体(ふくらはぎLや足F)の長手方向に沿った広範囲に対して指圧マッサージを施せるものであり、斬新で快適なマッサージ感が得られ、また血流やリンパの流れに対して実質的且つ直接的な活性化を期待できるようになっている。しかしながら、この基本形態のマッサージ機1には、下記するような開発の余地が残っていた。
【0075】
すなわち、垂直マッサージ機構151の作動中などであって、且つ、移動機構26が垂直動スライダ30を上昇させたときには、この垂直動スライダ30と共に上昇している裏押し用の施療部材161と、この裏押し用の施療部材161の下方に設けられている足支
持部材195bとの上下間で、足Fを間違って入り込ませる虞のあるスペースが形成される。
【0076】
一例を挙げれば、前記したように足裏マッサージローラ200の外周面には突起部201が設けられ、この足裏マッサージローラ200の後方に設けられた足支持部材195bには突起部196が設けられている。そのため、使用者のなかには、突起部196辺りに足Fのつま先(足指の付け根など)を押し付けようとして、足Fの踵部を後方斜め上方へ浮かす行動をとる者が現れると予測される。
【0077】
その結果、裏押し用の施療部材161と足支持部材195bとの上下間に形成されたスペースへ使用者が足Fを間違って入り込ませる状況が発生するが、もしも、このとき垂直マッサージ機構151の移動機構26が垂直動スライダ30を下降させると、裏押し用の施療部材161が足F(足首や踵の後面など)と接触干渉して、足F(つま先など)を足支持部材195bの上面乃至は突起部196へ押しつけてしまうといった不都合が起こる。
【0078】
加えて、移動機構26が垂直動スライダ30を移動させているとき(上昇中や下降中)に、この垂直動スライダ30が移動する移動経路内へ足Fを差し入れてしまうようなことがあると、垂直動スライダ30と足Fとの接触干渉が起こる不都合がある。そのため、このような状況にも備えた対策を講じておくのが好適と言える。
そこで、図9〜図12に示すように、本発明に係るマッサージ機1Aでは、垂直マッサージ機構151において、移動機構26による一対の施療部材(前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161)の移動と足Fとの干渉を防ぐための干渉防止機構250を有した構成としている。
【0079】
なお、本発明に係るマッサージ機1Aでは、垂直マッサージ機構151において、一対の施療部材160,161と、これら一対の施療部材160,161でふくらはぎLを挟持し且つ押圧する挟持機構162と、一対の施療部材160,161をふくらはぎLの長手方向に沿って移動させる移動機構26と、をも有した構成となっており、これらの構成に関しては、前記した基本形態のマッサージ機1と略同様である。
【0080】
マッサージ機1Aに備えられた干渉防止機構250は、規制部材251と背面部材252と緩衝部材253とを有している。
規制部材251は、移動機構26が一対の施療部材160,161を膝から足Fへ向けて移動させた際に、裏押し用の施療部材161(ふくらはぎの背面用の施療部材161)が到達する到達位置(下方到達位置)へ足Fが入り込まないように規制するためのものである。ここで、裏押し用の施療部材161が到達する下方到達位置は、水平マッサージ機構150の施療部材154,155の上縁端より上側位置である(図12参照)。
【0081】
すなわち、この規制部材251は、水平マッサージ機構150における左右一対の施療部材154,155の左右相互間であってその上方に対応する位置に配置され、且つ下方到達位置のさらに下方側に配備されている。この配備位置において、規制部材251は前方突出形状とされているため、下方到達位置に達した裏押し用の施療部材161と、足支持部材195bとの上下間に存在するスペースに、足Fを間違って入り込ませることはない。
【0082】
図10、図11に示すように、規制部材251は、裏押し用の施療部材161と同じ程度の幅を有し、また図12に示すように、側面視すると前方へ向けて突出した形状で、且つ前端を半円状にカーブさせた突起として形成されたものとしてある。規制部材251の前端縁は、裏押し用の施療部材161の中心と側面視の上下方向でほぼ同じ位置とされている。
【0083】
これに対して、干渉防止機構250の背面部材252は、垂直動スライダ30及びこの垂直動スライダ30に取り付けられた裏押し用の施療部材161が、上下に移動する際の移動経路上に足Fが入ったり、この移動経路から裏側へ足Fが後方に通り抜けないように規制するためのものである。
すなわち、この背面部材252は、裏押し用の施療部材161が上下に移動する際の経路の前面に沿うようにして、前述した規制部材251の後端部から上方へ向けて帯板状に
延びた部材として形成されている。この背面部材252は、裏押し用の施療部材161よりは後方となる位置に配置されている。そのため、垂直動スライダ30の移動経路に対し、足Fを入り込ませるようなことはできず、上下動する垂直動スライダ30と足Fとが接触干渉することを防止できるものとなる。
【0084】
具体的に、背面部材252は規制部材251と一体形成されたものとしてあり、規制部材251の下端側を、支持フレーム15の台フレーム部16等に対して固定すると共に、背面部材252の上端部を、支持フレーム15の背フレーム部17における上部桟272に固定するものとしている。この固定構造により、規制部材251及び背面部材252は、それらの上下両側が支持フレーム15に対して強固に固定され、足F等によって押されるようなことがあっても不動状態を保持できるものである。
【0085】
また、背面部材252と裏押し用の施療部材161との連結部には、裏押し用の施療部材161の外周面に沿うような凹面カーブ255が形成されている。このような凹面カーブ255を設けることで、規制部材251を裏押し用の施療部材161の下方到達位置に可能な限り接近させ、もって、足Fの入り込みを防止する作用が最大限に発揮されるようにしている。
【0086】
なお、本実施形態の施療部材161は、背面部材252の帯幅と略同じローラ幅に形成されている。このローラ形状は、左右方向の中央部が太く、左右方向の両側ほど細くなる鼓状又は拳状のものとしてある。つまり、本実施形態の施療部材161は、基本形態のマッサージ機1(図2等を参照)の施療部材161よりは、左右方向に幅狭なものとなっている。
【0087】
そして、この裏押し用の施療部材161を形成しているローラは、ローラ軸の両端部が、垂直動スライダ30から背面部材252の左右両側を通って前方突出する一対の支持部材256(支持棒256)によって支持される構造としてある。
干渉防止機構250の緩衝部材253は、裏押し用の施療部材161が移動機構26によって膝から足Fへ向けて移動(下降)して万が一にも足Fと当接したときに、裏押し用の施療部材161を移動方向の後方や上方へ移動可能(逃げ可能)とさせるためのものである。
【0088】
この緩衝部材253は、ゴムや樹脂などにより形成された弾性部材258であり、一対の支持部材256の基部側にこの弾性部材258が設けられた構成となっている。すなわち、垂直動スライダ30と支持部材256との間に弾性部材258が挟み込まれた構造となっている。垂直動スライダ30と弾性部材258との結合、及び弾性部材258と支持部材256との結合は接着剤による接着構造としてある。なお、支持部材256をコイルスプリングで構成し、支持部材256自体に弾性部材258の機能を持たせるようにしてもよい。
【0089】
このような緩衝部材253を設けておけば、万が一、裏押し用の施療部材161が移動中に足F等と接触したとしても、接触によって施療部材161に加わる移動力が弾性部材258の弾性変形によって緩和吸収され、その結果、施療部材161による足F等への接触力が弱められたり解消されたりすることになる。
ところで、前記した垂直マッサージ機構151が備える一対の施療部材(前押し用の施療部材160及び裏押し用の施療部材161)は、ふくらはぎLの前面から左右の斜め外方にずれた箇所と、ふくらはぎLの裏面とを、2箇所で挟持しつつ押圧するものとしている。しかし、本実施形態のマッサージ機1Aでは、これに加えて、ふくらはぎLの前面から左右の斜め内方にずれた箇所を押圧するために、押圧部材260(第3の施療部材)が更に設けられている。
【0090】
この押圧部材260は、垂直動スライダ30から前方突出状に固定され、ふくらはぎLを押圧する先端部分は、太鼓状又は拳状に形成されている。
図10に示すように、この押圧部材260は、前押し用の施療部材160に対して、ふくらはぎLを嵌め入れる程度に左右方向へ離れた状態に対向配置されている。本実施形態では、前押し用の施療部材160よりも、やや高い位置(前押し用の施療部材160と裏押し用の施療部材161とが略同じ高さであって、これらの上端位置と押圧部材260の
下端位置とが並ぶような位置関係)に、押圧部材260が配置されたものとした。
【0091】
前記のように押圧部材260が垂直動スライダ30に固定されているため、当然の如く、移動機構26は、一対の施療部材160,161の移動に連動させて押圧部材260をも同速、同方向へ移動可能とさせる。
このような押圧部材260を設けることにより、ふくらはぎLに対する挟持圧を高めたり、挟持の接触箇所(押圧箇所)を多くしてマッサージ領域を増やしたりできるため、ふくらはぎLへのマッサージ感を一層、高めることができる。
【0092】
更に、本実施形態のマッサージ機1Aでは、ケーシング2の第1施療凹部4や第2施療凹部5(基本形態のマッサージ機1を示した図1を参照)に対して、それらの内部へ設ける内張材6を、上布体と、この上布体に重なり合う下布体とによる二枚構造として形成させ、これら上布体と下布体の間へ温度調整された空気(温風や冷風)を吹き出させる構成を備えさせてある。上布体と下布体とは略同じ形状に形成されている。
【0093】
図9に示すように、支持フレーム15の背フレーム部17に対し、左右方向中央部などにヒータ付き送風装置270が設けられている。このヒータ付き送風装置270には、上記した上布体と下布体の間へ空気を導くための空気吹き出し部271が設けられている。
このような二枚構造の内張材6と、ヒータ付き送風装置270とを備えさせることにより、ヒータを作動させつつ送風装置270を作動させれば内張材6自体を暖かくでき、またヒータを非作動にしたまま送風装置270を作動させれば常温〜やや冷たい状態にすることができるようになる。また当然に、内張材6によって覆われるようになるケーシング2の第1施療凹部4内や第2施療凹部5内を、暖かくしたり、常温〜やや冷たい状態にしたりすることができる。そのため、使用者に対し、より一層、快適なマッサージを続けさせることができるようになる。
【0094】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、本発明に係るマッサージ機は、椅子型マッサージ装置の座部前方に設けることで、フットレストとして兼用可能な状態に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 マッサージ機(基本形態)
1A マッサージ機
2 ケーシング
4 施療凹部
5 施療凹部
6 内張材
15 支持フレーム
16 台フレーム部
17 背フレーム部
21 垂直レール
26 移動機構
30 垂直動スライダ
31 昇降駆動部
32 ネジ軸
33 モータ
34 減速ギヤ部
35 ナット部材
37 出退駆動部
40 支持アーム
43 揺動軸
47 カムレール
48 解放レール
50 従節ピン
150 水平マッサージ機構
151 垂直マッサージ機構
154 施療部材
155 施療部材
160 施療部材(前押し用)
161 施療部材(裏押し用)
162 挟持機構
163 レール保持部
165 ステー部
166 支軸
167 コイルバネ
170 縦溝
171 レール部材
175 ダイヤル操作部
177 回動入力片
178 リンク
180 リンク機構
185 揉み機構
186 回転軸
187 ギアボックス
188 変換部
189 回転ボス部
190 ハウジング部
191 規制部
195a 足支持部材
195b 足支持部材
196 突起部
197 脱出用ダイヤル
200 足裏マッサージローラ
201 突起部
250 干渉防止機構
251 規制部材
252 背面部材
253 緩衝部材
255 凹面カーブ
256 支持部材
258 弾性部材
260 押圧部材
270 送風装置
271 空気吹き出し部
272 上部桟
F 足
L ふくらはぎ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝と足との間に位置するふくらはぎの裏面を押圧する裏押し用の施療部材と、前記裏押し用の施療部材に対向配置された前押し用の施療部材とからなる一対の施療部材と、
前記一対の施療部材でふくらはぎを挟持し且つ押圧する挟持機構と、
前記挟持機構による前記一対の施療部材の挟持状態を持続しつつ、前記一対の施療部材をふくらはぎの長手方向に沿って移動させる移動機構と、
前記移動機構による前記一対の施療部材の移動と足との干渉を防ぐ干渉防止機構と、
を有していることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記干渉防止機構は、前記移動機構が前記一対の施療部材を膝から足へ向けて移動させた際に、前記裏押し用の施療部材が到達する到達位置へ足が入り込まないように規制する規制部材を有していることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記干渉防止機構は、前記移動機構が前記裏押し用の施療部材を移動させる移動経路から裏側へ足が通り抜けないように規制する背面部材を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記干渉防止機構は、
前記移動機構が前記一対の施療部材を膝から足へ向けて移動させた際に、前記裏押し用の施療部材が到達する到達位置へ足が入り込まないように規制する規制部材と、
前記移動機構が前記裏押し用の施療部材を移動させる移動経路から裏側へ足が通り抜けないように規制する背面部材とを有しており、
前記規制部材から上方に延設するように前記背面部材が一体的に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記干渉防止機構は、前記裏押し用の施療部材が足と当接したときに、裏押し用の施療部材をその移動方向の後方側へ移動可能とする緩衝部材を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記裏押し用の施療部材を支持する支持部材の基部側に設けられた弾性部材であることを特徴とする請求項5に記載のマッサージ機。
【請求項7】
前記一対の施療部材は、前記ふくらはぎの前面から左右の斜め外方にずれた箇所と前記ふくらはぎの裏面とを挟持しつつ押圧するように構成されており、
これら一対の施療部材とは別に、前記ふくらはぎの前面から左右の斜め内方にずれた箇所を押圧する押圧部材が設けられており、
前記移動機構は、一対の施療部材の移動に連動して、前記押圧部材を前記ふくらはぎの長手方向に沿って移動可能としていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項8】
前記挟持機構には、前記一対の施療部材を挟持位置へと進出させると共に、解放位置へと退行させる出退駆動部が備えられており、
前記挟持位置は、一対の施療部材が互いに近接して前記ふくらはぎを挟持し且つ押圧した状態となる位置とされ、前記解放位置は、一対の施療部材が互いに最も離反した状態となる位置とされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項9】
前記移動機構による施療部材の移動範囲の一方端側又は他方端側が、前記一対の施療部材の解放位置となるように設定されていることを特徴とする請求項8に記載のマッサージ機。
【請求項10】
前記施療部材は、拳状に形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項11】
前記一対の施療部材間で構成される施療凹部が左右一対設けられ、前記一対の施療凹部は、当該凹部の長手方向が同方向となるように並設されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項12】
膝と足との間に位置するふくらはぎの裏面を押圧する裏押し用の施療部材と、前記裏押し用の施療部材に対向配置された前押し用の施療部材とからなる一対の施療部材と、
前記一対の施療部材でふくらはぎを挟持し且つ押圧する挟持機構と、
前記挟持機構による前記一対の施療部材の挟持状態を持続しつつ、前記一対の施療部材をふくらはぎの長手方向に沿って移動させる移動機構と、
前述した前押し用の施療部材をふくらはぎ側へ近接させて押圧力を増大させる押圧力増強手段と、
を有していることを特徴とするマッサージ機。
【請求項13】
前記押圧力増強手段は、内部にエアが供給されることで膨張するエアバッグ構造とされていることを特徴とする請求項12に記載のマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−96058(P2012−96058A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−3294(P2012−3294)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】