説明

マッサージ装置

【課題】熱源の熱を効率良く人体に伝え、且つ、熱源を配置する部分の寸法管理を容易に行うことができるマッサージ装置を提供すること。
【解決手段】マッサージ機構によって駆動されるアーム3に施療子2を設け、上記アーム3に施療子2を回転自在に支持する支持軸30を設けて、弾性体20からなる施療子2の外周部に熱を運ぶ熱伝達手段31を支持軸30と施療子2外周部との間に設けて、該熱伝達手段31内に熱源4を配置するマッサージ装置において、熱伝達手段31を複数個に分割し、分割された熱伝達手段31で、熱源4を当接するように挟み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、もみ玉とも称される施療子によって人体に対するマッサージを行うマッサージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
もみ玉とも称される施療子にマッサージ動作を行わせることで人体の背面に対するマッサージを行うマッサージ装置がある。このタイプのものでは、通常、左右で対となる施療子を椅子の背もたれ内に配置し、背もたれの前面に設けたカバーを介して人体背面に圧力を加えることでマッサージを行うものとなっている。ここで、施療子が人体に対して力だけでなく、温かみも与えることができるようにすれば、被施療者にしてみれば人の手によるマッサージを受けている感覚を擬似的に創出することができるとともに、この感覚がマッサージの充足感を高めることになる。
【0003】
特許公開2008−284338号公報には、施療子を支持する中空の支持軸内部に熱源を挿入して配置するとともに、熱源の熱を弾性体からなる施療子の外周部に運ぶ熱伝達手段を設け、施療子が人体に対して力だけでなく、温かみも与えるマッサージ装置が記載されている。
【0004】
しかし、上記公報記載の発明では、熱源と、支持軸との間にエアギャップが生じ、熱源から支持軸への熱伝導性が低いという問題がある。また、熱源を挿入するための挿入部を設ける際には、挿入に必要なクリアランスを設けつつも、挿入後の熱源と挿入部の隙間は出来る限り小さくする必要がある。そのため、挿入部の加工難易度が高く、面粗度や平面度の寸法精度を確保しつつエアギャップを極小となるように挿入部を形成するのは非常に難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2008−284338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、熱源の熱を効率良く人体に伝え、且つ、熱源を配置する部分の寸法管理を容易に行うことができるマッサージ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明に係るマッサージ装置は、マッサージ機構によって駆動されるアーム3に施療子2を設け、上記アーム3に施療子2を回転自在に支持する支持軸30を設けて、弾性体20からなる施療子2の外周部に熱を運ぶ熱伝達手段31を支持軸30と施療子2外周部との間に設けて、該熱伝達手段31内に熱源4を配置するマッサージ装置において、熱伝達手段31を複数個に分割し、分割された熱伝達手段31で、熱源4を当接するように挟み込むことを特徴とする。このようにすることで、熱源4と熱伝達手段31のエアギャップ7を極小化することができる。また、熱伝達手段31は、熱伝達手段31を構成する各パーツを組み合わせることで形成される。各パーツは結合面全面を露出させた状態にすることで、容易に加工できる。
【0008】
また、上記支持軸30に熱伝達手段保持部1を設け、該熱伝達手段保持部1の人体近傍側に、熱伝達手段31を挿入して保持させることが好ましい。このようにすることで、人体への熱伝達効率を下げることなく、熱伝達手段31を小型化することができる。
【0009】
また、上記熱伝達手段31のうち人体近傍側の部分を嵌合させることで、上記熱伝達手段保持部1内に熱伝達手段31を保持させることが好ましい。このようにすることで、熱伝達手段保持部1と上記熱伝達手段31の人体近傍側の嵌合部11に、熱源4の熱を集中して伝えることができる。
【0010】
また、上記熱伝達手段31の人体近傍側が、他の部位より高熱伝導性の部材であることが好ましい。このようにすることで、熱源4の熱を熱伝導性の高い部分、すなわち人体近傍側に集中して伝えることができる。
【0011】
また、上記熱伝達手段31と熱源4との間に衝撃緩和部材7を設けたことが好ましい。このようにすることで、熱源4にかかる外力の衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、熱伝達手段で熱源を当接するよう挟み込むことで、熱源と熱伝達手段の間のエアギャップを極小化することができる。よって、熱源から熱伝達手段への熱伝導効率が向上し、人体が熱を感知するまでにかかる時間を短縮することができる。また、熱伝達手段を構成する各パーツは容易に加工することができるので、熱伝達手段の寸法管理は容易に行うことができる。
【0013】
また、熱伝達手段保持部の人体近傍側に、熱伝達手段を挿入して保持させることで、熱伝達手段を小型化することができ、熱源の低容量化や電力削減が可能となる。また、人体近傍側に熱伝達手段を設けたことで、人体が熱を感知するまでにかかる時間を更に短縮することができる。
【0014】
また、熱伝達手段の人体近傍側の部分を、熱伝達手段保持部に嵌合させることで、人体近傍側の嵌合部を通じて人体に向けての熱伝達効率が向上し、人体が熱を感知するまでにかかる時間を更に短縮することができる。
【0015】
また、熱伝達手段の人体近傍側が、他の部位より高熱伝導性の部材であることで、人体近傍側の熱伝導性を向上させ、人体が熱を感知するまでにかかる時間を更に短縮することができる。
【0016】
また、熱伝達手段と熱源との間に衝撃緩和部材を設けることで、過負荷による熱源の破損や亀裂を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の実施形態1を示すもので、(a)は要部の概略斜視図、(b)は要部の概略分解斜視図、(c)は図1(b)の熱伝達手段の概略斜視図である。
【図2】本願発明の実施形態1の全体構成の一例を示す一部破断斜視図である。
【図3】本願発明の実施形態2を示すもので、(a)は要部の概略斜視図、(b)は実施形態2の熱伝達手段の他形状の概略斜視図である。
【図4】本願発明の実施形態3の要部の概略断面図である。
【図5】本願発明の実施形態における熱伝達手段の材質を示すもので、(a)は実施形態1の概略斜視図、(b)は実施形態3の概略断面図である。
【図6】本願発明の全実施形態における熱伝達手段の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本願発明に係るマッサージ装置全体の概略構成と、施療子部分の概略構成について説明する。
【0019】
図2は本願発明に係るマッサージ装置の外観の一例を示しており、座部1に対してリクライニング自在な背もたれ10内に、上下に自走するマッサージ機構(図示せず)が配されている。背もたれ10の前面を覆っているカバー101の背後には上記マッサージ機構によって駆動されることでマッサージのための動きを行う施療子2,2が配されている。
【0020】
図1(a)に示すように、左右で対となっている各施療子2,2は、弾性体20,20で形成されているとともに上記マッサージ機構によって駆動されるアーム3,3の先端に夫々取り付けられている。この取り付けは、図1(b)に示すように、アーム3の先端に支持軸30を固定して、この支持軸30の外周に軸受25を介して施療子2を配設することで、施療子2をその軸回りに遊転自在となるようにしている。上記支持軸30の軸方向中央部にはディスク状の熱伝達手段31を備えており、施療子2を構成する弾性体20は上記ディスク状の熱伝達手段31の左右に夫々配設している。ここで、熱源4は熱伝達手段31内に配置している。
【0021】
施療子2が上記のように構成されたマッサージ装置において、上記熱源4で熱を発生させつつ施療子2を動かして人体に対してマッサージを行う時、熱源4の熱は熱伝達手段31によって施療子2の外周部に運ばれるために、背もたれ10のカバー101を介して人体に接触する施療子2の外周部は人体に温かさを十分に感じさせることができるものとなる。
【0022】
以下、本願発明の特徴的部分について更に記述する。
【0023】
図1(c)には、本願発明の実施形態1における熱伝達手段31の概略斜視図を示している。ここでは、支持軸30と垂直方向に分割された熱伝達手段31aと熱伝達手段31bで構成される熱伝達手段31が用いられている。ここで、熱伝達手段31aと熱伝達手段31b夫々の結合面には、凹部6´、凸部6からなる位置決め構造があり、該凹部6´、凸部6を嵌合させることで、すれが生じないよう位置決めを行う。また、熱伝達手段31aと熱伝達手段31bは、ビス(図示せず)もしくは接着剤等で、夫々の結合面を1つに結合させる。
【0024】
熱伝達手段31aと熱伝達手段31b夫々の結合面の中央部には、該結合面を結合させたときに熱源4を略隙間無く包含することができるように、設置穴5が形成されている。ここで、熱源4に電力を供給する接続線(図示せず)を熱伝達手段31の外方に出すための排出口51を設置穴5に連通するように設けている。熱源4は、その設置穴5に挿入され、熱伝達手段31aと熱伝達手段31b夫々と当接するように挟み込まれる。ここで、熱源4の設置穴5は、熱伝達手段31aと熱伝達手段31b両部材の結合面に形成するのではなく、片側の結合面にだけ形成し、他方の結合面を平面とすれば、設置穴5の寸法誤差は半減する。このようにすることで、熱源4と熱伝達手段31の間にできるエアギャップを極小化することができるので、熱源4から熱伝達手段31に伝わる熱伝導効率が向上し、人体が熱を感知するまでにかかる時間を短縮することができる。
【0025】
ここで、熱伝達手段31aと熱伝達手段31bの両方、もしくは片方に、熱源4の設置穴5を形成したので、結合面全面を露出させた状態にして、作業を行うことができ、寸法精度の確保が容易となる。すなわち、上記のような構成とすることで、熱源4の熱を効率良く人体に伝え、且つ、熱源4を配置する部分の寸法管理を容易に行うことができるマッサージ装置を提供することができる。
【0026】
続いて、図3(a)には、本願発明の実施形態2における熱伝達手段31の概略斜視図を示している。実施形態1では熱伝達手段31をディスク状にして支持軸30に直接設けていたが、実施形態2では、人体近傍に熱伝達手段31を配置する構成としている。ここで、人体近傍に熱伝達手段31を配置するために、支持軸30にディスク状の熱伝達手段保持部1を設け、熱伝達手段保持部1の人体近傍側に平板形状の挿入口8を設けている。そして、熱伝達手段保持部1の外周部側から、該挿入口8に、熱伝達手段31aと熱伝達手段31bで熱源4を挟んで結合させた平板形状の熱伝達手段31を挿入し、該熱伝達手段31が、該熱伝達手段保持部1の外周面より突出しないよう保持する。このようにすることで熱伝達手段31を小型化することができる。ここで、熱伝達手段保持部1、熱伝達手段31には、位置決め用の穴60が2個ずつ穿設してあり、熱伝達手段保持部1、熱伝達手段31夫々の穴60を合わせて、位置合わせピン61にて貫通させることで、熱伝達手段保持部1に熱伝達手段31を位置決めさせ保持している。ここで、熱伝達手段保持部1の人体近傍側の反対側に、熱源4の接続線を出すための排出口(図示せず)を、挿入口8と連通するように設けており、該接続線(図示せず)は、熱伝達手段31の排出口51及び上記排出口(図示せず)を通って、外部に出される。
【0027】
ここで、熱伝達手段31を小型化して人体側に配置するようにしたことで熱源4の低容量化や、電力削減が可能となる。また、人体近傍側に熱伝達手段を設けたことで、人体が熱を感知するまでにかかる時間を更に短縮することができる。
【0028】
ここで、熱伝達手段31を熱伝達手段保持部1に保持する方法としては、例えば、図3(b)に示すように、熱伝達手段31にテーパを設け、熱伝達手段保持部1の挿入口8にも同様のテーパを設け、熱伝達手段保持部1の外周側から、熱伝達手段31を熱伝達手段保持部1に嵌合するように挿入する方法がある。ここで、熱伝達手段31が、熱伝達手段保持部1に確実に保持されるのであれば、上記以外の方法であっても構わない。
【0029】
続いて、図4には、本願発明の実施形態3の熱伝達手段保持部1と熱伝達手段31を示している。実施形態3では、上記熱伝達手段31のうち人体近傍側の部分に嵌合部11を設け、上記熱伝達手段保持部1に嵌合部11で嵌合させることで、上記熱伝達手段保持部1内に熱伝達手段31を保持させている。そして、この嵌合部11以外では熱伝達手段保持部1と熱伝達手段31が接触しないように、所定の隙間12を設けている。このようにすることで、熱源4の熱は、上記熱伝達手段31を通じて人体近傍側の嵌合部11に集中して伝達することになり、人体への熱伝導効率を上げることができる。すなわち、人体が熱を感知するまでにかかる時間を更に短縮することができる。ここで、熱伝達手段31は、熱伝達手段保持部1の人体近傍側からその反対側まで貫通させているので、実施形態2のように、熱源4に電力を供給する接続線(図示せず)を外部に出すための、排出口(図示せず)を熱伝達手段保持部1に設ける必要はない。
【0030】
続いて、図5(a)には、本願発明の実施形態1における熱伝達手段31の他形状を示している。また、図5(b)には、本願発明の実施形態3における熱伝達手段31の他形状を示している。ここでは、熱伝達手段31は、人体近傍側が他の部位と比べ、高熱伝導性の部材310で構成されている。また、熱源4は、高熱伝導性の部材310側に配置させさせている。このようにすることで、材料による熱伝導性の違いから、熱伝導性の高い部分、すなわち人体近傍側に熱源4の熱が集中して伝わることになり、人体に早く温もりを与えることができる。なお、人体近傍側には高熱伝導性の部材310として金属(特にアルミや銀等の高熱伝導部材)を用い、他の部位には低熱伝導性の部材311として樹脂(特に熱耐性が高いPEEKやPPS等)を用いることが考えられる。
【0031】
続いて、図6には、本願発明の全実施形態における熱伝達手段31の概略断面図を示している。本願発明の全実施形態においては、熱源4として、例えば、PTCヒータを用いる。PTCヒータの発熱素子は一般的にセラミック部材であることが多い。セラミック部材はある一定以上の圧縮または衝撃等の負荷が掛かった場合、破損や亀裂が容易に発生し、所望の発熱量が発揮できないばかりか、発火等の不具合が生じる恐れがある。また、熱源4を熱伝達手段31で当接するように挟み込む時以外にも、マッサージ中には人体からの反力により様々な衝撃が熱伝達手段31には掛かる。そこで、図示例のように熱伝達手段31と熱源4との間に衝撃緩和部材7を設けることが好ましい。このようにすることで、熱源4にかかる外力の衝撃を緩和することができ、過負荷による熱源4の破損や亀裂を抑止することができる。ちなみに、衝撃緩和部材7は、板ばねや皿ばね等のサスペンション構造でもよいし、ゴムや潤滑材等の材料構造でも良い。
【0032】
以上、本願発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本願発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本願発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 熱伝達手段保持部
11 嵌合部
12 隙間
2 施療子
20 弾性体
3 アーム
30 支持軸
31 熱伝達手段
4 熱源
5 設置穴
7 衝撃緩和部材
8 挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージ機構によって駆動されるアームに施療子を設け、上記アームに施療子を回転自在に支持する支持軸を設け、弾性体からなる施療子の外周部に熱を運ぶ熱伝達手段を支持軸と施療子外周部との間に設けて、該熱伝達手段内に熱源を配置するマッサージ装置において、熱伝達手段を複数個に分割し、分割された熱伝達手段で、熱源を当接するように挟み込むことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
上記支持軸に熱伝達手段保持部を設け、該熱伝達手段保持部の人体近傍側に、熱伝達手段を挿入して保持させることを特徴とする請求項1記載のマッサージ装置。
【請求項3】
上記熱伝達手段のうち人体近傍側の部分を嵌合させることで、上記熱伝達手段保持部内に熱伝達手段を保持させることを特徴とする請求項2記載のマッサージ装置。
【請求項4】
上記熱伝達手段の人体近傍側が、他の部位より高熱伝導性の部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマッサージ装置。
【請求項5】
上記熱伝達手段と熱源との間に衝撃緩和部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマッサージ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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