説明

マット、浴槽装置、及びベッド

【課題】適度な弾力性を有するマット、浴槽装置、及びベッドを提供すること、また、それらの加温及び冷却性能の向上に貢献する。
【解決手段】マット100は、不織布20と、不織布20を内包する袋部材10と、袋部材10に内包される液体30とを備える。袋部材10は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の不透液性材料により構成される。また、不織布20は、低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される。このため、所定方向に対しては高い保液性を有する反面、他の所定方向に対しては高い排液性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を内包するマット、不織布を内包するマットが浸漬された浴槽を備えた浴槽装置、及び不織布が浸漬された浴槽を備えたベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マットの温度を調節する技術として、保冷機能を有する保冷体を出し入れするための開口部を有する袋体からなるマット(例えば、特許文献1)や、ウォーターマットレス用温度コントローラ(例えば、特許文献2)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるマットは、第1の可撓性シートと第2の可撓性シートを対向させて重ね合わせ、周縁部分のみを部分的に固着させて開口部を形成した袋状の形態を有するものである。第1の可撓性シートは、マットの外表面の側から順に、外側シート、緩衝用シート、アルミシートを積層させてなる。このように緩衝用シートを備えることにより、適度な弾力性を得ることができるため、好的な座り心地を与えることができる。
【0004】
また、特許文献2に開示されるウォーターマットレス用温度コントローラは、ウォーターマットレス内の水を加温するヒータとウォーターマットレス内における現在温度を測定する温度センサーとを備える。ヒータはウォーターマットレスを包囲するセイフティライナーとセイフティライナーの外側の支持体との間に配設される。また、温度センサーは、セイフティライナーの外側に配設される。
【特許文献1】特開2004−173513号公報
【特許文献2】特開平8−275847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるマットでは、保冷体の外側に、アルミシート、緩衝用シート、外側シートが積層されるため、マットによる冷却効率が悪くなる。他方、特許文献2に開示されるウォーターマットレス用温度コントローラは、水等の液体のみを緩衝材とすることが前提であるため、心地よい弾力性を得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、適度な弾力性を有するマット、そのマットを備える浴槽装置、及び不織布が浸漬された浴槽を備えたベッドを提供するとともに、それらの加温及び冷却性能の向上に大きく貢献するものである。
【0007】
本発明の1つのマットは、低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される不織布と、前述の不織布を内包するとともに不透液性材料により構成される袋部材と、前述の袋部材に内包される液体及び/又は前記液体の蒸気とを備える。
【0008】
このマットによれば、袋部材が液体のみならず不織布をも内包することから、液体のみを内包する場合と比べて、マットを利用する者に適度な弾力性による快適さを与えることができる。また、袋部材が液体及び/又は前記液体の蒸気を内包することから、対象物の温度が液体及び/又は前記液体の蒸気の温度よりも低い場合には対象物に対する高い加温効果を発揮し、対象物の温度が液体及び/又は前記液体の蒸気の温度よりも高い場合には対象物に対する高い冷却効果を発揮することができる。さらに、不織布が低融点繊維を高融点繊維に融着することによって低融点繊維を介して高融点繊維間が接合されることから、未だ原因は明らかではないが、所定方向に対しては高い保液性を有する反面、他の所定方向に対しては高い排液性を有する。これにより、マットが物理的に外力を受けた場合であっても、不織布が適度に保液及び排液を行うため、心地よい弾力性を維持することができる。
【0009】
また、本発明の1つの浴槽装置は、低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される不織布と、前述の不織布を内包するとともに透液性材料により構成される袋部材とを有するマットと、液体を貯留するとともに、その液体中に前述のマットが配置された浴槽とを備える。
【0010】
この浴槽装置によれば、袋部材が液体のみならず不織布を内包することから、液体のみを内包する場合と比べて、液体中にマットが配置された浴槽装置を利用する者に適度な弾力性による快適さを与えることができる。また、袋部材が液体を内包することから、対象物の温度が液体の温度よりも低い場合には対象物に対する高い加温効果を発揮し、対象物の温度が液体の温度よりも高い場合には高い冷却効果発揮することができる。さらに、不織布が低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間が接合されることから、所定方向に対しては高い保液性を有する反面、他の所定方向に対しては高い排液性を有する。また、不織布を採用することにより、マット(換言すれば、不織布とも言える)が物理的に外力を受けた場合であっても、不織布が適度に保液及び排液を行うため、心地よい弾力性を維持することができる。また、袋部材が透液性材料により構成されるため、マットが浴槽に浸漬された際には、浴槽内の液体が袋部材を透過することにより不織布に浸透する。他方、マットを浴槽から取り出した際には、一旦浸透した液体が不織布からその袋部材を透過することにより排液される。このため、使用時以外はマット内から液体を除去することができるため、袋部材及び不織布の劣化を遅延させることができるとともに、そのマットの保管は容易になる。
【0011】
また、本発明の1つのベッドは、低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される不織布と、液体を貯留するとともに、その液体中に前述の不織布の少なくとも一部が配置された浴槽と、その不織布及びその浴槽の上方を覆う不透液性材料により構成されるカバーとを備える。
【0012】
このベッドによれば、液体中に不織布の少なくとも一部を配置する浴槽を備えることから、ベッドを利用する者に適度な弾力性による快適さを与えることができる。また、不織布の少なくとも一部が液体を含むことから、対象物の温度が液体の温度よりも低い場合には対象物に対する高い加温効果を発揮し、対象物の温度が液体の温度よりも高い場合には高い冷却効果発揮することができる。さらに、不織布が低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間が接合されることから、所定方向に対しては高い保液性を有する反面、他の所定方向に対しては高い排液性を有する。また、不織布を採用することにより、不織布が物理的に外力を受けた場合であっても、不織布が適度に保液及び排液を行うため、心地よい弾力性を維持することができる。また、カバーが不透液性材料により構成される。このため、カバー上に位置する利用者が浴槽または不織布に含まれる液体に直接触れることがないため、利用者が濡れることがない。他方、不織布を浴槽から取り出した際には、一旦浸透した液体が不織布から排液される。このため、使用時以外は不織布内から液体を除去することができるため、不織布の劣化を遅延させることができるとともに、不織布やカバーの保管は容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の1つのマットは、そのマットの利用者に対して心地よい弾力性を与えるとともに、高い加温効果又は高い冷却効果を与えることができる。
【0014】
また、本発明の1つの浴槽装置は、その浴槽装置の利用者に対して心地よい弾力性を与えるとともに、高い加温効果又は高い冷却効果を与えることができる。
【0015】
また、本発明の1つのベッドは、そのベッドの利用者に対して心地よい弾力性を与えるとともに、高い加温効果又は高い冷却効果を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略されうる。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態のマット100を示す斜視図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。なお、図面を見やすくするために、図2における不織布20の紙面手前側の液体30は描かれていない。
【0018】
図1及び図2に示すマット100は、不織布20と、不織布20を内包する袋部材10と、袋部材10に内包される液体30とを備える。
【0019】
本実施形態の袋部材10は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の不透液性材料により構成される。なお、袋部材10の強度を高める観点ではウレタン樹脂が好ましく、製造コストを低減する観点では塩化ビニル樹脂が好ましい。このように袋部材10が不透液性材料により構成されることから、内部に貯留される液体30が袋部材10を透過して外部へ漏れだすことがない。また、袋部材10は熱伝導性の高い材料であることが好ましい。袋部材10が熱伝導性の高い材料であれば、袋部材10に加熱機器(例えば、公知のPTCヒータ)を当接して内部の液体30を加熱することができるためである。また、この場合、袋部材10は耐熱性樹脂であることがさらに好ましい。上述の熱伝導性の高い材料及び耐熱性の高い材料は公知の材料(例えば、アルミナを添加したポリフェニレンサルファイド樹脂)が適用しうる。
【0020】
本実施形態の不織布20は、低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される。
【0021】
ここで、不織布20を構成する高融点繊維は、捲縮を有する熱可塑性捲縮合成繊維であることが好ましい。さらに、高融点繊維の繊度は1dtex以上30dtex以下であることが好ましく、3dtex以上6dtex以下(本実施形態では約4dtex)であることが、さらに好ましい。また、繊維長は30mm以上(本実施形態では34mm)であることが好ましい。加えて、高融点繊維は不織布20全体の50重量%以上95重量%以下を占めることが好ましく、嵩密度は、0.01g/cm以上0.1g/cm以下であることが好ましい。また、高融点繊維は、それ自体が保液しないように、保液性のないポリエステル繊維やポリプロピレン繊維等の疎水性合成繊維を用いることが好ましい。但し、ある程度の弾力性を担保するため、30%以下の範囲内において保水性合成繊維(例えば、レーヨンやアクリル等)を混合させてもよい。なお、高融点繊維の繊度が1dtex未満であれば、嵩高にすることができるが、保液性が過度に高まる。その結果、不織布が外力を受けた場合に適度な排液ができず、利用者に対して心地よい弾力性を与えることが困難となる。加えて、不織布20自体の圧縮弾性回復力も低減するため、この面からも利用者に対して心地よい弾力性を与えることが困難となる。他方、高融点繊維の繊度が30dtexを超えると、捲縮を付け難くなるため、嵩密度が増加して保湿性が低下すると考えられる。
【0022】
他方、不織布20を構成する低融点繊維は、高融点ポリマーを芯成分とし、低融点ポリマーを鞘成分とすることが好ましい。さらに、繊維長は30mm以上であることが好ましい。また、低融点繊維は不織布20全体の5重量%以上50重量%以下を占めることが好ましい。さらに、高融点ポリマーと低融点ポリマーとの溶融温度差は10℃以上(本実施形態ではその差は約20℃)であることが好ましい。なお、芯鞘複合繊維は、テレフタル酸やイソフタル酸を酸成分とし、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール成分と共重合したポリエステル共重合体を鞘成分ポリマーとし、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエーテル系ポリエステル等を芯成分ポリマーとすることが好ましい。
【0023】
本実施形態の不織布20を採用することにより、所定方向に対しては高い保液性を有する反面、他の所定方向に対しては高い排液性を有する。本実施形態では、液体30が、各繊維間に形成される毛細管のような微細空間を通じて、毛細管現象によって不織布20内に浸透するものと考えられる。従って、不織布20は、物理的な外力を受けることなく、液体を内部に浸透させることができるとともに、その微細空間を利用することにより保液性を有すると考えられる。他方、物理的な外力を受けた場合には、毛細管のような微細空間が収縮する。その結果、一旦、毛細管現象により浸透した液体は、不織布の外部に排液されると考えられる。特に、前述の疎水性合成繊維を採用することにより、排液性能がさらに向上し得る。このように、本実施形態のマット100は、不織布20に液体を浸透させるとともに排液し得る構成を有するため、例えば、利用者がそのマット上に座ることによって物理的な外力が与えられた場合であっても、不織布20が適度に保液及び排液を行うため、利用者に対して心地よい弾力性を与えることができる。
【0024】
本実施形態の液体30は、空気よりも熱伝導率の高い水で構成される。この水には、純水の他、塩水、活性水、アルカリ水、酸性水、温泉水、海水、地下水、井戸水、軟水、硬水等の様々な態様の水が含まれる。但し、この液体30は、水に限定されることはない。空気よりも熱伝導率の高い液体の例として、アルコール等が挙げられる。但し、管理と取扱いの容易性、及び安全性の観点から、液体30は水であることが好ましい。この液体30は、空気よりも熱伝導率が高いため、利用者に対して空気よりも早く熱を与えることができる。また、この液体30は、マット100に対して物理的な外力が加わっていない状態では、不織布20の繊維間に形成される微細空間に保持され得る。一方、マット100に対して物理的な外力が加わることによって不織布20が変形された状態では、不織布20の繊維間に形成される微細空間が収縮する。その結果、微細空間に保持しきれなくなった液体30の一部が、不織布20の外側へ排出される。
【0025】
このマット100は、液体30を保持及び排出し得る不織布20を備えることから、利用者に対して心地よい弾力性を与える。また、このマット100は、その内部に液体30を備えることから、空気等の気体に比べて熱伝導性も高い。このため、高い加温効果が期待できる。また、例えば、液体30が水であった場合、一旦温められた液体30の保熱性が高いことから、利用者を継続的に暖めることも可能である。尚、このマット100は、内部の液体30を加温して利用者を暖めることも可能であるとともに、内部の液体30を冷却して利用者を冷やすことも可能である。
【0026】
<第1の実施形態の変形例>
図3は、第1の実施形態の変形例のマット101を示す概略断面図である。
【0027】
図3に示すマット101は、袋部材10内部の半分程度が液体30で満たされ、他の部分が液体30の蒸気31によって充填されている点で、液体30のみで袋部材10内の全体が充填されている第1の実施形態のマット100と異なる。その他の構成は、特に言及が無いかぎり第1の実施形態と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0028】
このマット101は、液体30及び液体30の蒸気31によって袋部材10内が充填されていることから、液体30のみで袋部材10内を充填させる場合に比べて、利用者に心地よい弾力性を与えることができる。
【0029】
<第2の実施形態>
図4は、本実施形態のマット200を示す斜視図である。また、図5は、図4のB−B断面図である。なお、図面を見やすくするために、図5における不織布20の紙面手前側の液体30は描かれていない。
【0030】
図4及び図5に示すマット200は、第1の実施形態の袋部材10に換えて袋部材210を備え、さらに蓋体240を備える点で、第1の実施形態におけるマット100と異なる。その他の構成は、特に言及が無いかぎり第1の実施形態と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0031】
図4及び図5に示す袋部材210は、第1の実施形態の袋部材10と同じ材料により構成される。しかし、袋部材210には、孔部211が形成されている。このため、この孔部211を通じて液体30を流入させることや排出させることが可能である。
【0032】
また、図4及び図5に示すように、蓋体240は、袋部材210の孔部211を液密な状態で閉塞する。この蓋体240は、孔部211に対して、公知の固定手段により着脱可能に固定される。このため、この蓋体240が孔部211に固定された状態では、袋部材210に内包される液体30が孔部211から、マット200の外部に流出することがない。一方、この蓋体240が孔部211から取り外された状態では、袋部材210に内包される液体30を孔部211からマット200の外部に排出させることができる。さらに、袋部材210から液体30を一旦排出した後、再度孔部211から液体30を流入させることができる。
【0033】
本実施形態のマット200は、マット200の外側から加温又は冷却することによりマット200の温度を調整するだけでなく、液体30自体を入れ替えることによりマット200の温度を調整することができる。また、不使用時においては、液体30を排出しておくことにより、袋部材210や不織布20の劣化を遅延させることができるとともに、マット200の保管を容易にすることができる。
【0034】
また、本実施形態のマット200は、第1の実施形態の変形例のマット101と同様に、袋部材210内部の一部が液体30で満たされ、他の部分が液体30の蒸気によって充填されていても良い。このように、液体30と液体30の蒸気によって袋部材210内が充填されることにより、液体30のみで袋部材210内を充填させる場合に比べて、利用者に心地よい弾力性を与えることができる。
【0035】
<第3の実施形態>
図6は、本実施形態のマット300及び液体循環装置350を示す概略断面図である。
【0036】
図6に示すマット300は、第1の実施形態の袋部材10に代えて袋部材310を備える。また、本実施形態のマット300は、排出管351及び流入管352を介して液体循環装置350に接続されている。前述の各構成を除き、マット300は、第1の実施形態におけるマット100と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0037】
図6に示す袋部材310は、第1の実施形態の袋部材10と同じ材料により構成される。しかし、袋部材310は、液体30を排出するための排出口311及び液体を流入するための流入口312が形成されている。
【0038】
また、図6に示す液体循環装置350は、排出口311に接続される排出管351と、流入口312に接続される流入管352と、ポンプ353と、濾過装置354と、温度制御装置355とを備える。ここで、ポンプ353は、液体30を、液体循環装置350から、流入管352、マット300、及び排出管351を経由して、再び液体循環装置350に戻すように循環させる。濾過装置354は、マット300内、排出管351、及び流入管352の間で循環される液体30内の不純物等を取り除く。また、温度制御装置355は、マット300内、排出管351、及び流入管352の間で循環される液体30の温度を所定の温度に調整する。これらポンプ353、濾過装置354、及び温度制御装置355は、それぞれ公知の技術により構成されており、図示しない制御装置により制御されている。
【0039】
上述の構成により、マット300の温度を自在に調整することができる。また、ポンプ353により、マット300内の液体30の量を自在に調整することができる。これにより、所望の弾力性を持つマットが得られる。さらに、不使用時においては、ポンプ353、濾過装置354、及び温度制御装置355を停止させることにより、省エネルギーにも貢献することができる。なお、水は、アルコールやベンジン等よりも保熱性が高いことが知られている。そこで、液体30として保熱性の高い水を選択した場合、アルコールやベンジン等を選択した場合と比較して、マット300は、ある程度の時間であれば、前述の各装置を停止させたとしても、利用者を暖めたり冷やしたりすることができる。また、不使用時においては、排出口30からマット300内のほぼ全ての液体30を排出しておくことにより、袋部材310や不織布20の劣化を遅延させることができるとともに、マット300の保管を容易にすることができる。
【0040】
<第4の実施形態>
図7は、本実施形態のマット400及び浴槽460を示す概略断面図である。
【0041】
図7に示すマット400は、第1の実施形態の袋部材10に代えて袋部材410を備える。また、マット400は、液体30を貯留する浴槽460内に浸漬されている。前述の各構成を除き、マット400は、第1の実施形態と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0042】
図7に示す袋部材410は、織物等の透液性材料により構成される。このため、浴槽460に貯留される液体30が袋部材410を透過して袋部材410の内部に流入する。マット400が浴槽460に浸漬され、袋部材410の内部に液体30が流入すると、不織布20の保液性により、液体30が不織布20内に保持される。なお、袋部材410は耐熱性材料であることが好ましい。袋部材410が耐熱性材料であれば、60℃程度の高温の液体30を貯留する浴槽460に浸漬しても耐え得るためである。
【0043】
上述の構成により、浴槽460内の液体30の温度を制御すれば、マット400の温度を自在に調整することができる。また、不使用時においては、マット400を浴槽460から取り出すことにより、袋部材410内部に流入していた液体30が排出され得る。このようにすれば、袋部材410や不織布20の劣化を遅延させることができるとともに、マット400の保管を容易にすることができる。
【0044】
<第5の実施形態>
図8は、本実施形態のベッド500を示す概略断面図である。
【0045】
図8に示すベッド500は、第4の実施形態の袋部材410の代わりに、不織布20及び浴槽460の上方を覆うカバー510を備える。前述の構成を除き、ベッド500は、第4の実施形態と同一の浴槽460、液体30、及び不織布20を備える。
【0046】
図8に示すベッド500を構成するカバー510は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の不透液性材料により構成される。また、第4の実施形態における袋部材410と同様に、カバー510は耐熱性材料であることが好ましい。カバー510が耐熱性材料であれば、60℃程度の高温の液体30を貯留する浴槽460上を覆うことができるためである。尚、このベッド500は、内部の液体30を加温して利用者を暖めることも可能であるとともに、内部の液体30を冷却して利用者を冷やすことも可能である。すなわち、内部の液体30の温度が利用者の体温よりも高い場合は、利用者を暖めることができる一方で、内部の液体30の温度が利用者の体温よりも低い場合は、利用者を冷やすことができる。
【0047】
また、本実施形態では、浴槽460に貯留される液体30の上面を、不織布20の最も高い位置よりも低い位置にしている。そうすると、カバー510上に位置する利用者がカバー510を介して不織布20に触れることができる。その結果、液体30の弾力性のみに頼らず、液体30、液体30の蒸気31、及び不織布20の各々の弾力性を合わせた適度な弾力性を利用者に与えることができる。但し、浴槽460に貯留される液体30の上面を不織布20の最も高い位置よりも高い位置にしても構わない。
【0048】
<第5の実施形態の変形例>
図9は、第5の実施形態の変形例のベッド600を示す概略断面図である。
【0049】
図9に示すベッド600を構成するカバー610が、防水加工がなされた布地で構成される点で、浴槽460が液体30のみで充填される第5の実施形態のベッド500と異なる。その他の構成は、特に言及が無いかぎり第5の実施形態と同じである。従って、第5の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0050】
また、ベッド600を構成するカバー610は、防水加工がなされた布地で構成されるため、液体30を透過させることがない一方で、液体30の蒸気31を透過させることができる。このため、カバー610上に位置する利用者に対して、蒸し風呂と同様の効果を与えることができる。
【0051】
ところで、第1の実施形態の変形例において、袋部材10の半分程度が液体30で満たされ、他の部分が液体30の蒸気31で充填されている構成を採用しているが、このような構成に限定されない。例えば、袋部材10の半分を超える割合の部分が液体30で満たされても良く、袋部材10の半分未満の割合の部分が液体30で満たされても良い。このように、液体30の割合を増減することにより、利用者の好みに合わせて弾力性を変化させることができる。
【0052】
また、第4の実施形態における浴槽460に対して、第3の実施形態に記載するような液体循環装置を接続して、液体30の温度制御等を行うことは、好ましい一態様である。液体循環装置を採用すれば、浴槽内の不純物のろ過が利用者の健康に良い上に、不織布20の劣化も防止され得る。
【0053】
また、第4の実施形態では、透液性材料により構成される袋部材410を採用しているが、少なくとも1つ以上の孔部が形成された不透液性材料により構成される袋部材を採用しても良い。この場合には、孔部を介して袋部材の内部に液体が流入するため、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、マット、浴槽装置、及びベッドとして広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の1つの実施形態におけるマットを示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の1つの実施形態の変形例におけるマットを示す概略断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態におけるマットを示す斜視図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態におけるマット及び液体循環装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態におけるマット及び浴槽を示す概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態におけるベッドを示す概略断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態の変形例におけるベッドを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10,210,310,410 袋部材
20 不織布
30 液体
31 蒸気
100,101,200,300,400 マット
211 孔部
240 蓋体
311 排出口
312 流入口
350 液体循環装置
351 排出管
352 流入管
353 ポンプ
354 濾過装置
355 温度制御装置
460 浴槽
500 ベッド
510 カバー
600 ベッド
610 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される不織布と、
前記不織布を内包するとともに不透液性材料により構成される袋部材と、
前記袋部材に内包される液体及び/又は前記液体の蒸気とを備える
マット。
【請求項2】
前記袋部材に前記袋部材の外部と内部とを連通する孔部が形成され、
前記孔部を閉塞する蓋体をさらに備える
請求項1に記載のマット。
【請求項3】
低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される不織布と、前記不織布を内包するとともに透液性材料により構成される袋部材とを有するマットと、
液体を貯留するとともに、前記液体中に前記マットが配置された浴槽とを備える
浴槽装置。
【請求項4】
低融点繊維を高融点繊維に融着することにより低融点繊維を介して高融点繊維間を接合して構成される不織布と、
液体を貯留するとともに、前記液体中に前記不織布の少なくとも一部が配置された浴槽と、
前記不織布及び前記浴槽の上方を覆う不透液性材料により構成されるカバーとを備える
ベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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