説明

マット

【課題】 長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマット本体からの縁体の離脱や縁体の剥離若しくは切断等が生じることが効果的に防がれ、優れた耐久性を発揮するマットの提供。
【解決手段】 マットM本体の周縁部に縁体Eが結合されている。マットM本体は、ループパイルPが植設された基布B(原反部S)の下面側にエラストマー製のバッキングAが施されてなる。縁体Eは、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーからなり、マットM本体の周縁部を上下から挟んだ状態で融着している。縁体Eの上側部とマットM本体の周縁部との融着は、マットM本体の周縁部における原反部Sの上面側のループパイルPが縁体Eの上側部内に侵入し、縁体Eの上縁部を構成する高分子成形材料が原反部Sの上面側のループパイルPの間隙に浸透した状態で行われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のパイルを上面側に有する原反部を備えるマット本体と、高分子成形材料製の縁体を有してなるマット、例えば玄関用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平7−250803号公報には、基布とこれに植設されたパイルと基布の非パイル面に施されたエラストマーバッキングとから成るマットが開示されている。そのエラストマーバッキングを構成するゴムシートは、図1及び段落0040等に示されるように、その端縁が基布の端縁よりも若干外側にはみ出すように基布に接着され、端縁が基布の端縁よりも若干外側にはみ出すように両者が一体化されている。
【0003】
ゴムシートのうち基布の端縁より外側にはみ出した部分は、マット本体の外側に位置する縁部を構成する。このゴムシート製の縁部は、パイルが植設された基布のバッキングと一体をなすものであるから、基本的にはマット本体から剥離したり離脱することは生じない。
【0004】
しかしながら、長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においては、ゴムシート製の縁部が、強度若しくは耐久性の不足により切断されてマット本体から離脱してしまうことが生じ得る。
【0005】
このような問題を回避する上で、ゴムシート製の縁部の上面に別の縁体を接着してマットの周縁部を補強し、必要に応じ内方に向かって上向きの傾斜面を構成することが行われている。
【0006】
しかしながら、長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においては、接着の強度若しくは耐久性の不足により縁体が剥離してマット本体から離脱してしまうことが生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−250803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマット本体からの縁体の離脱や縁体の剥離若しくは切断等が生じることが効果的に防がれ、優れた耐久性を発揮するマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマットは、多数のパイルを上面側に有する原反部を備えるマット本体と、高分子成形材料製の縁体を有してなるマットであって、
前記縁体の外側縁部は前記マット本体よりも外方に位置し、少なくとも前記マット本体の周縁部の上側及び外側に対し、前記縁体が融着していることを特徴とする。
【0010】
少なくともマット本体の周縁部の上側及び外側に対し、高分子成形材料製の縁体が融着しているので、マット本体と縁体との結合強度及び耐久性が高い。
【0011】
そのため、マットの長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマット本体からの縁体の離脱や縁体の剥離若しくは切断等が生じることが効果的に防がれ、耐久性が高い。
【0012】
本発明のマットは、上記縁体の上側部と上記マット本体の周縁部との融着が、該周縁部における原反部の上面側のパイルが前記縁体の上側部内に侵入し、縁体の上縁部を構成する高分子成形材料が原反部の上面側のパイルの間隙に浸透した状態で行われているものであることが望ましい。
【0013】
この場合、少なくともマット本体の周縁部の上側及び外側に対し、高分子成形材料製の縁体が融着しているので、マット本体と縁体との結合強度及び耐久性が高い。而も、縁体の上側部とマット本体の周縁部との融着は、該周縁部における原反部の上面側のパイルが縁体の上側部内に侵入し、縁体の上縁部を構成する高分子成形材料が原反部の上面側のパイルの間隙に浸透した状態で行われているので、縁体の上縁部に対する原反部の上面側のパイルのアンカー的な効果により、マット本体と縁体との結合強度及び耐久性は極めて効果的に増強される。
【0014】
そのため、マットの長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマット本体からの縁体の離脱や縁体の剥離若しくは切断等が生じることが極めて効果的に防がれ、非常に優れた耐久性を発揮する。
【0015】
更に、本発明のマットは、上記縁体の少なくとも内側部が、上記マット本体の周縁部に対し、該周縁部を上下から挟んだ状態で融着しているものであることが望ましい。
【0016】
この場合、上記縁体の少なくとも内側部が、上記マット本体の周縁部に対し、該周縁部を上下から挟んだ状態で融着している。そのため、マットの長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマット本体からの縁体の離脱や縁体の剥離若しくは切断等が生じることが効果的に防がれ、より優れた耐久性を発揮する。
【0017】
本発明のマットは、パイルがカットパイルおよび/またはループパイルであるものとすることができる。
【0018】
また本発明のマットは、パイルが不織布の表面部であるものとすることができる。
【0019】
また本発明のマットは、原反部が、下面側にバッキングを有するものとすることができる。
【0020】
また本発明のマットは、縁体がエラストマーからなるものとすることができる。
【0021】
また本発明のマットは、縁体の高さがマット本体の上面位置の高さの1/2倍乃至2倍であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマットは、長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマット本体からの縁体の離脱や縁体の剥離若しくは切断等が生じることが効果的に防がれ、優れた耐久性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】マットの模式的な要部断面図である。
【図2】マットの要部平面図である。
【図3】マットの要部正面図である。
【図4】マットの要部底面図である。
【図5】別のマットの模式的な要部断面図である。
【図6】更に別のマットの模式的な要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(1) 図1乃至図4は、本発明の実施の形態の一例としてのマットMに関するものである。
【0026】
このマットMは、マットM本体と、そのマットM本体の周縁部に結合された縁体Eを有してなるものであり、平面視において長方形状をなす。なお、本発明のマットの平面視形状は、長方形状に限らず、例えば正方形を始めとする各種多角形、円形、楕円形、その他の形状であってもよい。
【0027】
マットM本体は、基布Bに植設された多数のループパイルPを、その基布Bの上面側(マットMを床面等の水平面上に載置した状態において上面に位置する側)に満遍なく有する原反部S(タフト布)の下面側に、加硫ゴム材料からなるエラストマー製のバッキングAが施されてなるものである。
【0028】
縁体Eは、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(高分子成形材料)からなり、縁体Eの外側縁部はマットM本体よりも外方に位置し、縁体Eのうち内外方向中間部から内側の部分は、マットM本体の周縁部に対し、該周縁部を上下から挟んだ状態で融着している。
【0029】
縁体Eの上面部は、縁体Eの外側縁部から内方に向かって上向きに傾斜し、縁体Eの高さ(縁体Eのうち最も高い位置の高さ。)はマットM本体の上面位置の高さ(ループパイルPの上端位置の高さ)の約1.2倍である。
【0030】
このマットMでは、縁体Eの上側部とマットM本体の周縁部との融着は、マットM本体の周縁部における原反部Sの上面側のループパイルPが変形しつつ縁体Eの上側部内に侵入し、縁体Eの上縁部を構成する高分子成形材料であるポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーが原反部Sの上面側のループパイルPの間隙に浸透した状態で行われている。縁体Eの上側部のうち内周縁部の高さは低く形成されているので、その部分のループパイルPは圧縮されている。
【0031】
ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーからなる縁体Eのうち内外方向中間部から内側の部分は、マットM本体の周縁部に対し、該周縁部を上下から挟んだ状態で融着しているので、マットM本体と縁体Eとの結合強度及び耐久性が高い。而も、縁体Eの上側部とマットM本体の周縁部との融着は、該周縁部における原反部Sの上面側のループパイルPが縁体Eの上側部内に侵入し、縁体Eの上縁部を構成するポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーが原反部Sの上面側のループパイルPの間隙に浸透した状態で行われているので、縁体Eの上縁部に対する原反部Sの上面側のループパイルPのアンカー的な効果により、マットM本体と縁体Eとの結合強度及び耐久性は極めて効果的に増強される。
【0032】
(2) 図5に示すマットLにおいて図1乃至図4に示すマットLと異なる点は、マットL本体の周縁部の上側及び外側に対し、縁体Fが融着している点である。
【0033】
この場合、マットL本体の周縁部の上側及び外側に対し、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーからなる縁体Fが融着しているので、マットL本体と縁体Fとの結合強度及び耐久性が高い。
【0034】
そのため、マットLの長期にわたる使用や高い負荷の下での使用においてもマットL本体からの縁体Fの離脱や縁体Fの剥離若しくは切断等が生じることが効果的に防がれ、耐久性が高い。
【0035】
(3) 図6は、本発明の実施の形態の別の例としてのマットNに関するものである。
【0036】
このマットNは、マットN本体と、そのマットN本体の周縁部に結合された縁体Gを有してなる。
【0037】
マットN本体は、原反部Tである不織布Wの下面側に、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーからなるバッキングCが施されてなるものである。原反部Tである不織布Wの毛羽状の表面部がパイルを構成する。
【0038】
縁体Gは、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(高分子成形材料)からなり、縁体Gの外側縁部はマットN本体よりも外方に位置し、縁体Gのうち内外方向中間部から内側の部分は、マットN本体の周縁部に対し、該周縁部を上下から挟んだ状態で融着している。マットNにおける縁体Gの内周縁部の高さは低く形成されて溝状をなし、その部分の不織布Wは圧縮されている。
【0039】
縁体Gの上面部は、縁体Gの外側縁部から内方に向かって上向きに傾斜し、縁体Gの高さはマットN本体の上面位置の高さ(原反部Tである不織布Wの上面位置の高さ)の約1.2倍である。
【0040】
この例のマットNでは、縁体Gの上側部とマットN本体の周縁部との融着は、マットN本体の周縁部における原反部Tの上面側の不織布Wが縁体Gの上側部内に侵入し、縁体Gの上縁部を構成する高分子成形材料であるポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーが原反部Tの上面側の不織布Wの間隙に浸透した状態で行われている。そのため、縁体Gの上縁部に対する原反部Tの上面側の不織布Wを構成する繊維のアンカー的な効果により、マットN本体と縁体Gとの結合強度及び耐久性は極めて効果的に増強される。
【0041】
(4) 原反部におけるパイルは、ループパイルに限るものではなく、カットパイル、ビロードの毛羽、不織布の毛羽状の表面部等であってもよい。複数種のパイルを有する原反部であってもよい。
【0042】
(5) 多数のパイルを有する原反部の例としては、基布又は布以外のシート状物にカットパイルおよび/またはループパイルが植設されたタフト布の他、各種パイル織物、各種ビロード、各種不織布等を挙げることができる。
【0043】
(6) 原反部の下面側に施されるバッキングの材料の例としては、各種ラテックス;SBR(スチレン−ブタジエン共重合体)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体)、ポリブタジエン(BR)、CR(クロロプレンラバー)、ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム等のゴム系材料について必要な加硫を行ったエラストマー;アクリル樹脂エマルジョン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらは、単独である場合に限らず、例えばラテックスバッキングに重ねてゴム系材料からなるエラストマーバッキングを設けることもできる。
【0044】
(7) 縁体の材料の例としては、SBR(スチレン−ブタジエン共重合体)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体)、ポリブタジエン(BR)、CR(クロロプレンラバー)、ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム等のゴム系材料について必要な加硫を行ったエラストマー;アクリル樹脂エマルジョン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。なお、マット本体にバッキングを有する場合において
【0045】
縁体は、上面部が外側縁部から内方に向かって上向きに傾斜しているものとすることができるが、これに限るものではない。例えば縁体の上面部がほぼ一定高さであるものとすることもできる。
【0046】
なお、以上の実施の形態についての記述における構成部品の寸法、個数、材質、形状、その相対配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【符号の説明】
【0047】
A バッキング
B 基布
C バッキング
E 縁体
F 縁体
G 縁体
L マット
M マット
N マット
P ループパイル
S 原反部
T 原反部
W 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のパイルを上面側に有する原反部を備えるマット本体と、高分子成形材料製の縁体を有してなるマットであって、
前記縁体の外側縁部は前記マット本体よりも外方に位置し、少なくとも前記マット本体の周縁部の上側及び外側に対し、前記縁体が融着していることを特徴とするマット。
【請求項2】
上記縁体の上側部と上記マット本体の周縁部との融着は、該周縁部における原反部の上面側のパイルが前記縁体の上側部内に侵入し、縁体の上縁部を構成する高分子成形材料が原反部の上面側のパイルの間隙に浸透した状態で行われている請求項1記載のマット。
【請求項3】
上記縁体の少なくとも内側部は、上記マット本体の周縁部に対し、該周縁部を上下から挟んだ状態で融着している請求項1又は2記載のマット。
【請求項4】
パイルがカットパイルおよび/またはループパイルである請求項1乃至3の何れか1項に記載のマット。
【請求項5】
パイルが不織布の表面部である請求項1乃至4の何れか1項に記載のマット。
【請求項6】
原反部が、下面側にバッキングを有する請求項1乃至5の何れか1項に記載のマット。
【請求項7】
縁体がエラストマーからなる請求項1乃至6の何れか1項に記載のマット。
【請求項8】
縁体の高さがマット本体の上面位置の高さの1/2倍乃至2倍である請求項1乃至7の何れか1項に記載のマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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