説明

マルチキャリア信号を事前コード化するための装置及び方法

マルチキャリア受信機の中で取り除かれる所定の保護間隔の長さよりも大きい第1の経路遅延に関連付けられた第1の経路と第2の経路遅延に関連付けられた第2の経路とから構成するマルチパス通信チャネルを通って送信される事前コード化された信号を提供するために、それぞれがマルチキャリア変調方式の多数のキャリア周波数の中のキャリア周波数に関連付けられた数値の集合から成るマルチキャリア信号を事前コード化する装置が、第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報を提供するための手段と、第1の経路遅延に関する情報及び第2の経路遅延に関する情報を用いてマルチキャリア信号を重み付け手段とを備え、重み付け手段は時間拡散事前コード化信号が得られるようにマルチキャリア信号を重み付けるように動作し、この時間拡散事前コード化信号の長さはマルチキャリア信号の長さと所定の保護間隔の長さの合計に対応し、重み付け手段は時間拡散事前コード化信号を事前コード化された信号として提供するように動作する。さらに、複数の送信アンテナが使用される場合は、時間領域及び空間領域での拡散を同時に実行することができる。本発明によれば、利用可能な帯域幅を効率的に利用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、電気通信であり、特にマルチキャリア送信技術の分野である。
【背景技術】
【0002】
未来の無線通信システムは、送信される広帯域信号に対して高いデータ伝送速度を実現することが期待される。直交周波数分割多重化(OFDM)又はマルチキャリア符号分割多重アクセス(MC−CDMA)などのマルチキャリアシステムは、J. A. C. Binghamによる文献「Multicarrier for Data Transmission: An Idea Whose Time Has Come」、IEEE Communications Magazine、第28巻、5号、ページ5〜14、1990年5月、及びS. Abeta, H. Atarashi, 及びM. Sawahashiによる文献「Forward link Capacity of Coherent DS-CDMA and MC-CDMA Broadband Packet Wireless Access in a Multi-cell Environment」、Proc. IEEE Vehicular Technology Conference (VTC'2000-Fall)、Boston, 米国、2000年9月、の中で説明されているように、未来の移動体通信に対する有望な方式である。マルチキャリアシステムは、フーリエ変換及び保護間隔(guard interval)として周期的プレフィックス拡張(cyclic prefix extension)を使用することによって、広帯域信号から結果として生ずる難しい周波数選択性を処理する。しかしながら、通信チャネルの最大遅延が保護間隔を超えると、重大な性能の劣化が観察される可能性がある。
【0003】
図16は、従来のOFDMの送信方式を例示する。送信機において、周波数領域の信号がマルチキャリア信号として逆フーリエ変換器1601に送られる。OFDM送信の場合は、周波数領域の信号は直交する。逆フーリエ変換器1601は逆フーリエ変換を行い、時間領域の信号を提供する。符号間干渉(intersymbol interference)(ISI)から送信すべき信号を保護するために、保護間隔がブロック1603によって取り入れられる。特に、この保護間隔は送信される多数の最終値の正確なコピーである。ここで、多数の数値すなわち保護間隔の長さは、仮定される最大チャネル長すなわち最大のチャネル遅延に対応する。このため、保護間隔は、OFDM送信の場合は、送信される信号の周期的拡張(cyclic extension)であり、周期的プレフィックス(cyclic prefix)(CP)と呼ばれることが多い。次に、(周期的な)送信信号は、チャネルのインパルス応答によって特徴付けられる通信チャネル1605を介して送信される。
【0004】
ディジタル通信システムの動作を説明するために、離散的チャネルのインパルス応答によって、通信チャネル1605を離散的なタップを含むディジタル領域の中で特徴付けることができる。ここで、各タップはマルチパス通信チャネルの場合は、長期のチャネルの状態として経路遅延に関連付けられた伝搬経路に対応する。
【0005】
図16には、チャネルのインパルス応答の実施例が示されている。このチャネルのインパルス応答は複数の離散的なタップから成り、ここでは例えば、最初の3つのタップが保護間隔に等しいかそれよりも短いチャネル遅延に関連付けられる。言い換えると、チャネルのインパルス応答のこの部分によって引き起こされる符号間干渉は、保護間隔によって完全に保護される。これとは反対に、最後の2つのチャネルのタップに関連した伝搬経路を通って送信された送信信号のバージョンは著しく遅延されて、保護間隔によって保護されない信号部分の中に現れるため、最後の2つのチャネルのインパルス応答の係数は、通信チャネルの一部の原因となるISIを表す。このため、通信チャネル1605の出力部において、送信された信号は、図16に示された信号フレームの中に図示された符号間干渉を含む。さらに具体的に言うと、通信チャネルのインパルス応答のために、前に送信された記号に対応するある量のエネルギーが、現在検討されている記号の保護間隔の中に現れる。さらに、前に送信された記号に関連したさらに多くの量のエネルギーが、保護間隔の後に続く信号部分の中に現れる。このさらに多く量のエネルギーは符号間干渉の原因になり、結果として、受信された周波数領域の信号の直交性が失われる。
【0006】
受信機においては、周期的プレフィックスはブロック1607によって取り除かれ、結果として生じた受信信号はフーリエ変換器1609を用いて周波数領域に変換される。
【0007】
この受信された周波数領域の信号はもはや直交していないので、送信された情報を適切に検出することはできないため、結果としてビットエラー率が増加する。
【0008】
それにもかかわらず、OFDMはデータ転送速度が高い通信システムに対する効果的な送信方式である。このOFDMは、送信機と受信機との間の最大遅延と同じ長さの又はそれよりも長い冗長性(保護間隔)を取り入れている。これにより、受信機における信号処理が簡単になる。しかしながら、保護間隔は符号間干渉を取り除くために受信機で廃棄される冗長性であるため、保護間隔を使用することによりデータ転送速度の損失がもたらされる。さらに、保護間隔が通信チャネルの最大遅延に対して十分に長くない場合は、又は換言すると、チャネルの最大遅延が保護間隔を超える場合は、システムの性能は大幅に劣化する。この問題は、例えば無線通信又は有線通信の中で幾つかの伝搬に関するシナリオを発生する。
【0009】
保護間隔を超える長いチャネル遅延に対して性能が劣化することを防ぐための、従来の取り集合み方が幾つか存在する。ここでは一般に、受信機において別の信号処理、例えばイコライザが取り入れられる。H. Schmidt及びK. D. Kammeyerによる文献「Impulse truncation for wireless OFDM systems」、第5回International OFDM-Workshop、Hamburg、ドイツ、2000年9月の中で、チャネルのインパルス応答を短くするために、線形フィルタによるチャネルインパルスの打ち切りが提案されている。N. Al-Dhahir及びJ. M. Cioffiによる文献「Optimum Finite-Length Equalization for Multicarrier Transceivers」、IEEE Transactions on Communications、第44巻1号、ページ55〜64、1996年1月の中で、受信機における時間領域の中のイコライザが提案されている。S. Trautmann、T. Karp、及びN. J. Fliegeによる文献「Frequency Domain Equalization of DMT/OFDM Systems with Insufficient Guard Interval」、 Proc. IEEE Int. Conference on Communications (ICC 2002)、第3巻4月/5月2002号、ページ1646〜1650の中で、周波数領域の中のイコライザが開示されている。Communications、第19巻11号、ページ2267〜2278、2001年11月の中で、非線形の決定帰還イコライザが説明されている。Z. Whang及びG. B. Giannakisによる文献「Wireless Multicarrier Communications」、IEEE Signal Processing Magazine、第17巻3号、ページ29〜48、2000年5月、の中で、OFDMシステムに対してゼロパディングするための線形イコライザが説明されている。M. Budsabathon、Y. Hara、及びS. Haraによる文献「On a Pre-FFT OFDM Adaptive Antenna Array for Delayed Signal Suppression」、Proc. 第7回 International OFDM-Workshop、Hamburg、ドイツ、2002年9月、により、ビーム形成による遅延の抑制が開示されている。
【0010】
前述した従来技術の方式には、受信機を一層複雑にする別の信号処理方式を必要とするという欠点がある。さらに、実際に変形された信号が受信機で処理されるため、ISIを完全に取り除くことはできない。
【0011】
従来技術の方式のさらに別の不都合な点は、保護間隔の長さが仮定された最大チャネル長を反映して増加すると、帯域幅の効率が低下することである。この問題もまた、より包括的なエラーコード化方式を用いることによって克服することができる。しかしながら、コード化の複雑性が増大すると、冗長性を取り入れる必要があるため帯域幅の効率は低下する。これは、周知のエラー訂正方式における一般的な方式である。
【0012】
K. Kusumeによる文献「Linear Space-Time Precoding for OFDM Systems based on Channel State Information」、Proceedings IEEE, International Symposium on Personal, Indoor, and Mobile Radio Communications (PIMRC 2003)、北京、中国、2003年9月、第1巻、ページ231〜235,の中で開示された別の方式では、送信される信号を事前コード化するために完全なチャネル状態の情報(CSI)に基づいた線形送信事前コード化方式(linear transmit precoding scheme)が適用される。しかしながら、上記の方式は、受信機においてディジタル処理を設計するためにチャネル状態の情報に関して完全な知識があると仮定している。このため、それは通信チャネルの時間変動を取り入れる移動性の高い周波数分割二重システムに対して適用することはできない。より具体的に言うと、移動端末の速度が増加すると、通信チャネルは一層時間で変動するようになるため、チャネルのインパルス応答及び、特に、通信チャネルのインパルス応答係数は1つの送信される記号の中で極めて急速に変化する。このため、チャネルのインパルス応答係数の現在の大きさ及び現在の位相の完全な知識を含む短時間のチャネル状態の情報に関する完全な知識は得ることができない。従って、上記の従来技術は、移動体送信のシナリオではビットエラー率の増加を被ることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、マルチキャリア送信のシナリオの中で、マルチキャリア信号を事前コード化(precode)するための効率的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1に基づいてマルチキャリア信号を事前コード化するための装置によって、請求項20に基づいたマルチキャリア送信機によって、請求項21によるマルチキャリア受信機によって、請求項23に基づいたマルチキャリア信号を提供する方法によって、請求項24に基づいた事前コード化信号を提供する方法によって、請求項25に基づいた受信された情報の信号を提供するための方法によって、又は請求項26によるコンピュータプログラムによって達成される。
【0015】
本発明は、マルチパス通信チャネルを通って送信されるマルチキャリア信号が、長い状態のチャネル情報のみを利用し、短い状態のチャネル情報を廃棄することにより事前コード化される場合、符号間干渉を回避することができるという研究の成果に基づいている。特に、長期のチャネル状態の情報としてマルチパス通信チャネルの伝搬経路に関連したチャネル遅延に関する情報のみが明確に考慮される場合、送信されるマルチキャリア信号を効率的に事前コード化することができるということが発見されている。このことは、長期のチャネル状態の情報は抑制すべき符号間干渉に関連したマルチパス通信チャネルの特性を表すというさらなる研究成果に基づいている。これとは反対に、短期のチャネル状態の情報は基本的には、例えば移動端末の速度によるチャネル係数の時間的な変動を表す。ある経路の遅延に関連した伝搬経路の長さを記号の持続時間によって決定される時間間隔の中では一定であると仮定できる限り、大きく時間的に変動するチャネル係数はどのような別の遅延を取り入れることはない。このため、本発明は、短期的な意味で通信チャネルの時間的に変動する特性を利用する代わりに、それぞれが対応する伝搬経路に関連付けられる複数の経路の遅延に関する知識のみを利用する。
【0016】
経路の遅延を含むチャネルの遅延特性に基づいて、逆経路遅延特性(inverse path delay characteristic)を用いてマルチキャリア信号を効果的に事前コード化することができるため、受信機においてチャネルの遅延特性に対するチャネルの影響が減少される。
【0017】
本発明のさらに別の利点は、任意の従来の送信のシナリオの中で情報を送信することに対して、本発明の方法を適用できることである。より具体的に言うと、本発明の事前コード化方式は変調方式を提供し、これにより事前コード化されたマルチキャリア信号が、本発明の事前コード化方式を適用することによってマルチキャリア信号から提供される。ここで、この事前コード化方式は、符号間干渉を引き起こすチャネルの遅延に関する、また受信機において復調するために適用されるマルチキャリア復調方式に関する通信チャネルの特性を明白に考慮する。例えば、本発明の事前コード化方式をマルチキャリア信号を変調するために適用して、OFDM受信機に送信される事前コード化された信号を得ることができる。チャネルの遅延特性が明確に考慮に入れられるため、受信された信号には保護間隔の中にISIエネルギーが含まれる。この保護間隔は、OFDM受信機を用いる場合は取り除かれる。
【0018】
さらに、本発明の事前コード化方式は、システムの設計に関して柔軟である。例えば、本発明の事前コード化方式は、多重入力単一出力(MISO)のシナリオ(MISOのシナリオ)における情報の送信に適用することができる。さらに、本発明の事前コード化方式は、単一入力単一出力(SISO)チャネルに対しても適用できる。MISOのシナリオは、送信機において複数のアンテナ素子がまた受信機において単一のアンテナが使用されて、MISOチャネルが形成されることを意味する。SISOのシナリオは、送信機及び受信機において1つのアンテナが使用される場合に形成される。
【0019】
前述した従来技術のイコライザによる方式とは異なり、本発明の事前コード化方式を適用する場合、受信機における信号処理は変わらない。例えば、本発明の処理方式が、例えばダウンリンク用の基地局に存在するので、単純なOFDM復調を移動端末で実行することができる。前述した従来技術とは異なり、本発明の方式は、瞬間的なチャネル状態の情報の代わりに、長期のチャネル状態の情報しか必要としない。
【0020】
前述したように、短期のチャネル状態の情報は、移動度に依存して極めて急速に変化するフェージング係数と呼ばれる。これとは逆に、長期のチャネル状態の情報は、多数のマルチパス、遅延、及び幾何学的な特性によって決定される出発方向(directions of departure)を特徴付ける。これらの特性は、移動端末の移動度に対してむしろ緩やかに変化する。前述したように、瞬間的なCSIを送信機において知ることができると仮定することは、常に可能である又は実行できるとは限らない。
【0021】
さらに、要求される長期のチャネル状態の情報は、1つの送信された記号内では時間的に変動しないと仮定することができるため、本発明の方式は安定している。このため、本発明の事前コード化方式は、高い移動度によって特徴付けられるような送信のシナリオにおいても、ISIを減らすために適用できる。
【0022】
本発明によれば、この事前コード化方式は、フィルタ係数を有する事前コード化用フィルタとして理解することができる。これらのフィルタ係数は、周知の最小平均二乗誤差(MMSE)の基準から引き出すことができる。このため、MMSEの意味で最適な解決策を得ることができる。
【0023】
本発明のさらに別の利点は、本発明の事前コード化方式が送信機(基地局)においてのみ付加的な複雑性を取り入れることである。より具体的に言うと、本発明の事前コード化方式は、受信機(移動端末)ではどのような複雑性も取り入れることはない。この利点により、バッテリー駆動の電源が小さい端末を得るための、電力消費が小さいコンパクトな端末に対する要求が反映される。この付加的な信号処理は基地局に移されるため、増加する空間についての要求事項及び増大する電力消費は、両方とも基地局を設計する場合には重要な問題ではないため容認できる。このため、本発明の事前コード化方式は、送信システムの性能が向上されるため費用効率が高く、同時に多数の移動端末の形状を、電力消費が少ないために単純で小型に維持することができる。従って、本発明の事前コード化方式は、同じ費用でシステムの性能が向上されるということで特徴付けられた移動端末を提供するため、事実上より安価な移動端末は顧客にとっても一層魅力的なものになる。
【0024】
さらに、本発明の事前コード化方式は、従来の移動端末を使用できる各種の伝搬のシナリオに対して適応できる。例えば、屋内環境で使用されることが多い無線ローカルエリアネットワーク(LAN)の中で、OFDM送信技術を使用することができる。この屋内環境では、伝搬空間が限定されるため、通信チャネルの最大遅延が限定される。しかしながら、屋外環境の携帯電話システムの中でOFDMシステムが送信用に使用される場合、遅延が異なる多くの伝搬のシナリオが存在する。本発明の事前コード化システムは遅延が保護間隔を超えるような長い場合にも妥当な性能を維持するため、複数のシナリオの中にシステムを適応させることができる。
【0025】
さらに、現在の送信環境の中のチャネルノイズの電力をはっきりと考慮することによって、本発明の事前コード化方式を最適化することができるため、本発明の事前コード化方式はチャネルノイズの点で伝搬環境に対して適応できる。このため、本発明の事前コード化方式を使用すれば、チャネルノイズに対するシステムの最適化を実現することができる。
【0026】
本発明のさらに別の利点は、本発明の方式による最適化は例えば送信電力などの複数のパラメータに依存するため、本発明の事前コード化方式が通信リンクに対するサービスについての要求事項の品質を意識していることである。送信電力は、例えばより高い送信品質を要求するユーザに対してはより高い送信電力というように、サービスについての要求事項に基づいて選択することができる。このため、送信される信号を、利用可能な送信電力に対して適応させる又は最適化することができる。
【0027】
本発明のさらに別の利点は、本発明の事前コード化方式は、標準的なOFDM送信システムと比較する場合、結果として生じた送信システムのデータ転送速度をより高くすることができることである。例えば、幾つかの送信のシナリオでは、通信チャネルのより長い遅延は、前述したように、より多くの冗長性を取り入れるより長い保護間隔を必要とする。このことは、送信するデータの速度を制限することになる。本発明によれば、より短い保護間隔さえも使用することができるため、より高いデータ転送速度を達成できる。言い換えると、本発明は利用可能な通信帯域幅などの利用可能な通信リソースを効率的に利用することができる。
【0028】
本発明のさらに別の利点は、同じ空気のインターフェース(air interface)を種々のシナリオで又は種々のセルの中でも使用できることである。例えば、移動局が内部(屋内)から外部(屋外)へ又はその逆の方向へ移動する場合、経路の変化による経路の遅延は解決できる。そのような場合は、移動局の移動を考慮に入れるために、ハンドオーバが発生する。本発明の事前コード化方式が同じ空気のインターフェースを使用するため、継ぎ目のないハンドオーバを実現する試みは容易に行うことができる。
【0029】
本発明のさらに別の利点は、本発明の事前コード化方式が携帯電話システム用の柔軟性に富んだセルの設計を可能にすることである。セルの設計がセルの大きさに関連した通信チャネルの最大遅延を考慮に入れるため、セルの設計は厳密に最大遅延に関連付けられる。チャネルの長い遅延(より大きなセルから生じる)がOFDM受信機で使用される保護間隔を超える場合は、妥当な性能を維持することができるため、本発明の事前コード化方式を用いて遅延とセルの設計との間のこの密接な関係を緩めることができる。例えば、前述した空気のインターフェースの場合では、市街地に対して設計された保護間隔の大きさ(長さ)を短くすることができる。この場合は、セルの大きさはマイクロセルに対応することになり、これは一定の領域に必要な基地局の数の減少につながる。さらに、農村地域では基地局の数を少なく配置することも可能である。これは通信リンクの品質又はデータ転送速度を妥協せずにセルの規模をより大きくすることによって可能にされる。
【0030】
本発明のさらに別の利点は、本発明の事前コード化方式がフィルタ係数の更新を頻繁に要求しないことである。長期のCSIは長期の意味で観察され、例えばチャネルのインパルス応答のようにそれほど頻繁には変化しない。このため、本発明の事前コード化用フィルタは、完全なチャネル状態の情報に基づいた他の任意の事前コード化方式よりも頻繁には更新/再計算を行われないようにすることができる。
【0031】
本発明のさらに多くの実施形態は、下記の図面に関連して詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態に基づいて、マルチキャリア信号を事前コード化するための装置を示す。
【0033】
本発明によれば、マルチキャリア信号を事前コード化する装置は、マルチキャリア信号から事前コード化された信号を提供するように動作する。マルチキャリア信号は、数値の集合から構成する。ここで数値の集合の各値は、検討される送信のシナリオに関連したマルチキャリア変調方式の多数のキャリア周波数の中のキャリア周波数に関連付けられる。
【0034】
図1に示した装置は、マルチキャリア信号を重み付けするための手段103を備えている。この重み付け用の手段103は、多数の入力部105及び出力部107を有する。さらに、この重み付け用の手段103は別の入力部109を備えており、この入力部109に、第1の経路の遅延及び第2の経路の遅延に関する情報を提供する手段111が接続されている。
【0035】
重み付け用の手段103の出力部107は、通信チャネル113に接続されている。図1には、通信システムの原理的なモデルが例示されている。この通信チャネル113は、マルチキャリア受信機117に接続された出力部115を有する。このマルチキャリア受信機117は、例えばOFDM形受信機とすることができる。マルチキャリア受信機は、保護間隔を取り除くように動作するブロック119を有している。このブロック119は、マルチキャリア形復調器123に接続された出力部121を有する。このマルチキャリア形復調器は、送信されたマルチキャリア信号の受信された信号を提供するための多数の出力部125を有する。
【0036】
前述したように、図1は、マルチキャリア信号をコード化するための本発明の装置が埋め込まれた通信システムの原理図を示す。通信チャネル113は、例えば送信用フィルタ、ディジタル/アナログ変換器、増幅器、1つ以上の送信アンテナなどから構成する。通信チャネル113は、マルチパスの通信チャネルと仮定される。このため、通信チャネル113は、それぞれが経路遅延に関連付けられた複数の伝搬経路によって特徴付けられる。より具体的に言うと、通信チャネル113は、第1の経路遅延に関連付けられた第1の伝搬経路と、第2の経路遅延に関連付けられた第2の伝搬経路とから構成する。その結果、マルチキャリア信号から重み付け用の手段103によって提供された事前コード化信号は、マルチパスの通信チャネル113を通って、すなわち複数の伝搬経路、特に通信チャネル113の第1の通信経路及び第2の通信経路を経由して送信される。
【0037】
受信機では、通信チャネル113は、受信アンテナ、受信用フィルタ、アナログ/ディジタル変換器などから構成する。マルチキャリア受信機が受信可能な信号は、通信チャネル113の出力部115を経由して、保護間隔を取り除くように動作するブロック119に送られる。その後、ブロック119は、時間領域の信号を従来のマルチキャリア形復調器123に提供する。この復調器123は、受信されたマルチキャリア信号を得るために、出力部121を経由して提供された時間領域の信号を周波数領域に変換するように動作するフーリエ変換器とすることができる。
【0038】
前述したように、マルチキャリア受信機117は、従来のOFDM形受信機とすることができる。このため、ブロック119は、図1に示すように、最大チャネル長に関連した長さを有する保護間隔を取り除く。次に、マルチキャリア信号の長さに対応する長さを有する残りの信号(時間領域の信号)は、出力部121を経由して復調器123に送られる。通信チャネルの最大遅延が保護間隔以下である場合、ISIは取り込まれないため、受信されたマルチキャリア信号は直交する。しかしながら、チャネルの最大遅延が保護間隔を超える場合は、ISIが取り入れられるため、受信されたマルチキャリア信号はもはや直交しない。このことは前述したように、ビットエラー率を増加させることになる。この場合は、通信チャネルの第1の伝搬経路に関連した第1の経路遅延は、さらに処理を行うためにマルチキャリア受信機117で取り除かれる所定の保護間隔の長さよりも大きい。より具体的に言うと、少なくとも1つの経路遅延が、所定の保護間隔の持続時間を超えている。
【0039】
符号間干渉を減らすために、本発明の重み付け用の手段103は、入力部105を経由して送られたマルチキャリア信号を、情報を提供するための手段111によって提供された第1の経路遅延に関する情報及び第2の経路遅延に関する情報を用いて重み付けするように動作する。より具体的に言うと、重み付け用の手段103は、時間拡散(time-spread)事前コード化信号が得られるようにマルチキャリア信号を重み付けするように動作する。ここで、送信される事前コード化信号を符号間干渉から保護するために、時間拡散動作は必要である。しかしながら、本発明の重み付け用の手段103は、図1に示すように、時間拡散事前コード化信号の長さがマルチキャリア信号の長さと所定の保護間隔の長さとの合計に対応するように、時間的に拡散するように動作する。時間拡散事前コード化信号は、送信するための事前コード化信号として出力部107を経由して通信チャネル113に送られる。
【0040】
通常は、入力部105を経由して送られるマルチキャリア信号は、情報の送信に適用されるキャリア周波数に関連したマルチキャリア値の集合から構成するディジタル信号である。この場合、重み付け用の手段103は、受信機において符号間干渉を減らすように、重み係数の集合を用いてマルチキャリア値の集合を重み付けするように動作する。好ましいことに、重み付け用の手段103はフィルタ動作を行う。入力部105を経由して送られたマルチキャリア信号は、重み係数の集合を用いてフィルタ処理される。このため、重み付け用の手段103は、重み係数によって各マルチキャリア値を乗算するための乗算器を備える。さらに、重み付け用の手段103は、フィルタ処理に関連した畳込み演算の結果として事前コード化信号を提供するために、乗算の結果を加算するための加算器を備える。
【0041】
前述したように、本発明の方式は、通信チャネル113のマルチパスの伝搬特性に関連した明確な伝搬経路の遅延に関する知識を利用することのみに依存している。図2は、単に実施例として、マルチパス送信(マルチパス遅延特性)による通信チャネル113の伝搬特性の実施形態を示す。図2に示すように、通信チャネル113は、図2の上の図面に示すように、2つのチャネルタップから成るチャネルのインパルス応答によって表すことができる。各チャネルタップは複雑なタップ値に関連付けられ、受信された信号の対応する経路の現在の減衰及びその位相に対する影響を表している。
【0042】
説明を簡単にするために、図2は第1の経路及び第2の経路に対応する2つのチャネルタップしか示していない。前述したように、振幅及び位相に関する情報は、本発明の事前コード化方式に対して無関係である。より具体的に言うと、図2の中段の図面に示された第1の経路遅延及び図2の下側の図面に示された第2の経路遅延に関する情報のみに関心がある。換言すると、本発明の事前コード化動作を実行するために必要な通信チャネルに関する唯一の情報は、第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報であり、第1の伝搬経路及び第2の伝搬経路に関連した対応するチャネルタップの振幅及び位相の変動には無関係である。この要求事項を強調するために、図2はマルチパスの遅延特性に対するチャネルのインパルス応答を分解した図を示す。
【0043】
第1の経路を経由して送信された事前コード化信号のバージョンは第1の経路遅延を受け、また第2の経路を経由して送信された事前コード化信号のバージョンは第2の経路遅延を受ける。受信機では、事前コード化信号の送信された信号に対応する受信された信号の重ね合わせが受信され、この場合通信チャネルのマルチパスの遅延特性のために、符号間干渉が発生する。
【0044】
受信機における符号間干渉を減らすために、手段103が使用した重み係数の集合は、通信チャネル113のマルチパスの遅延特性を備える。より具体的に言うと、重み係数の集合は第1の経路遅延及び第2の経路遅延又はそれに関する情報を直接備える。例えば、重み係数の集合は、例えば第1の経路遅延に関して正規化された値として第1の経路遅延及び第2の経路遅延を備えるため、単位なしの値が得られる。重み係数の集合を用いて、事前コード化信号が時間的に拡散されて、チャネルの最大遅延に関係なくマルチキャリア受信機117によって取り除かれる保護間隔の中に、符号間干渉が積み重ねられる。保護間隔の中に符号間干渉のエネルギーを集中するために、重み付け用の手段103が使用する重み係数の集合は、所定の保護間隔の長さに関する情報をさらに含む、又は別の方法では、所定の保護間隔の長さを直接含む。またこの場合、単位なしの係数が使用されるように、重み係数に含まれた所定の保護間隔の長さを適当な値に対して正規化することができる。
【0045】
さらに、重み付け用の手段103が含む重み係数には、現在使用されているマルチキャリア変調方式を考慮に入れるために、フーリエ変換に関連したフーリエ係数及び/又は逆フーリエ変換に関連したフーリエ係数がさらに含まれる。好ましいことに、事前コード化信号は、OFDM形受信機であるマルチキャリア受信機117に送信される。この場合、入力部105を経由して重み付け用の手段103に送られるマルチキャリア信号は、時間領域に変換されるため、重み付け用の手段103の出力部107を経由して提供される事前コード化信号は、OFDM形のマルチキャリア受信機117に対して送信される時間領域の信号とみなすことができる。言い換えると、重み付け用の手段103は、事前コード化動作及び変調動作を実行する。より具体的に言うと、重み付け用の手段103は、この場合はOFDM形変調器に取って代わる。同時に、入力部105を経由して送られたマルチキャリア信号は、ISIの削減に関連した最適な送信戦略及び適用されたマルチキャリアの変調/復調方式を考慮することによって、事前コード化信号に変換される。
【0046】
同時に、チャネルノイズさえもはっきりと考慮されるため、事前コード化された信号はチャネルノイズに関してより強くなる。これを行うために、重み付け用の手段103が使用する重み係数の集合は、チャネルノイズ、又は特にチャネルノイズの電力に関する情報を含むことができる。チャネルノイズの電力を考慮するために、情報を提供する手段111は、チャネルノイズの電力に関する情報を提供するようにさらに動作して、この電力を重み係数の集合の中で明確に考慮することができるようにする。しかしながら、チャネルノイズは、通信チャネルの出力部において受信された信号に影響する。チャネルノイズに関する情報を重み付け用の手段103に提供するために、チャネルノイズに関する情報を受信された信号からマルチキャリア受信機によって取り出すことができるが、これは一般的な技術である。次に、マルチキャリア受信機117は、チャネルノイズに関する情報を情報を提供するための手段111に送る。このチャネルノイズに関する情報は、送信規格例えば高性能LAN規格(HiperLAN standard)に関連した信号フレームの未使用部分を経由して送信することができる。
【0047】
事前コード化された信号が、送信機と通信するためのマルチキャリア受信機117が使用するアップリンク用の周波数帯域とは異なるダウンリンク用の周波数帯域を介してマルチキャリア受信機117に送信される場合は、重み付け用の手段103が必要とする第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報のみを受信機で抽出することができる。しかしながら、従来のマルチキャリア受信機は、例えば現在のチャネルの状態に対して均等化方式を適合させるためにチャネル評価方式を常に適用するため、この仕事は受信機の複雑性を増加させることには結び付かない。この情報は、前述したように、未使用の信号部分を介して情報を提供するための手段111に送ることができる。このとき、情報を提供するための手段111は、マルチキャリア受信機から第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報を受信するように動作する。例えば、マルチキャリア受信機117は、全チャネルのインパルス応答を情報を提供するための手段111に送る。この場合、情報を提供するための手段111は、受信された情報から通信チャネルについての第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報を引き出すように動作する。
【0048】
しかしながら、情報を提供するための手段111が、第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報を直接受信することには関心がある。そのような通信を可能にするために、本発明はそのような機能を有するマルチキャリア受信機をさらに提供する。この結果は、後で説明する。
【0049】
別の方法では、本発明の提供するための手段111は、複数のチャネル遅延の輪郭を記憶するための記憶素子を備えている。ここで、それぞれのチャネル遅延の輪郭は、一定の送信シナリオに関連付けられている。例えば、都市地域又は農村地域といった一定の送信シナリオに依存して、情報を提供する手段は、現在の送信のシナリオに対応する現在のチャネル遅延の輪郭を選択して、現在のチャネル遅延の輪郭が備えている第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する対応する情報を、重み付け用の手段103に提供するように動作する。
【0050】
しかしながら、送信機及び受信機が、同じ送信周波数帯域の中で情報を送信することもできる。この場合、情報を提供するための手段111は、マルチキャリア受信機117によって送られた例えば最初の部分の中の信号から第1の経路遅延及び第2の経路遅延を予測するように動作する。第1の経路遅延及び第2の経路遅延を予測するために、情報を提供するための手段111は、自己相関関数がチャネルの遅延特性に関する情報を直接提供するため、受信された信号の自己相関関数を決定するように動作することができる。
【0051】
第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報は、重み付け用の手段103が重み係数を決定するように動作する場合に、重み付け用の手段103によって要求される。この重み係数は、事前コード化された信号を与えるためにマルチキャリア信号を重み付けるために使用される。この場合、本発明の重み付け用の手段103は、重み係数を決定するための手段を含む。例えば、この重み係数を決定するための手段は、第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報を情報を提供するための手段111から受信して、この第1の経路遅延及び第2の経路遅延に関する情報を明確に考慮することによって重み係数を決定するように動作する。本発明のこの見地は、後で説明する。
【0052】
以下に、本発明の方式をより詳細に説明する。
【0053】
図3には、OFDM送信システムの構成が要約されている。このOFDM送信システムは、Nc値を含むマルチキャリア信号を時間領域に変換するための逆フーリエ変換器303を備えている。その後段のブロック305は、保護間隔を取り入れる。結果として生じた信号は、通信チャネル307を通って送信される。この場合、通信チャネル307の出力部において、チャネルノイズが加えられる。受信機において、ブロック309が保護間隔を取り除き、このように処理された信号はフーリエ変換器311に送られて、マルチキャリア信号の受信された信号を提供する。保護間隔の挿入の後に送信された信号の長さはNであることに注意されたい。簡潔にするために、図3はチャネルのコーディング/デコーディング及びインターリービング/デインターリービングを明確に示していない。
【0054】
チャネルのコーディング及びインターリービングの後で、情報ビットは、ベクトルで配列されたn番目のOFDM記号の複素数値のベースバンド記号に変調される。
【数1】

ここで、Nc及び(・)Tは、それぞれサブキャリアの数及び転置行列である。変調された信号は、周波数領域から時間領域に逆フーリエ変換行列FHによって変換される。ここで、(・)Hはエルミート転置行列である。Nc点フーリエ変換行列Fは、下記のように定義される。
【数2】

及び
【数3】

ここで、
【数4】

は行列Aの(l,m)番目の項目であり、
【数5】

である。行列Fはユニタリー(unitary)であるため、逆フーリエ変換はFH=F-1によって与えられる。信号が送信される前に、時間領域の信号は、保護間隔(GI)として大きさNgの周期的プレフィックス(CP)によって周期的に拡張される。これは、下記のように、GI挿入行列により表される。
【数6】

ここで、
【数7】

及びBは、それぞれ大きさNcの単位行列及び
【数8】

の最後のNg行である。便宜のために、下記も定義される。
N=Nc+Ng
【0055】
2チャネルのモデルが下記の中で、すなわち、単一入力単一出力チャネル(SISO)及び多重入力単一出力チャネル(MISO)の中で検討される。SISOチャネルは、MISOチャネルの特別な場合と見なすことができる。下記の中で、ベキ零シフト行列が定義される。
【数9】

及び
【数10】

【0056】
次に、時間nにおけるOFDM記号のブロックテプリッツ構造(block Toeplitz structure)のチャネル畳込み行列は、下記のように表すことができる。
【数11】

ここで、
【数12】

及び
【数13】

は、それぞれクロネッカー積(Kronecker product)及びアレイステアリングベクトル(array steering vector)を示す。Mは、送信機におけるアンテナ素子の数である。次数Lのチャネルタップhl,l=0,...,Lは、無相関の複素数のガウス確率変数と仮定される。このため、時間n−1におけるOFDM記号に対するチャネル行列は、下記のように表すことができる。
【数14】

【0057】
上記のチャネル行列には、記号
【数15】

から
【数16】

までに符号間干渉(ISI)が取り入れられる。下記において、記号の持続時間が長いため、前に送られた記号のみが現在の記号に対してISIを引き起こすことが想定される。このため、上記のチャネル行列は、M=1に対して
【数17】

であるため、SISOチャネルに対して単純な畳込み行列まで減少する。
【0058】
受信機において、CPはGI除去行列によって受信された信号から取り除かれる。
【数18】

また、サブキャリア信号を回復するために、信号はFによって時間領域から周波数領域に変換される。
【0059】
予測された信号は、下記のように表すことができる。
【数19】

ここで、周波数領域の中のノイズ
【数20】

は、下記のように定義される。
【数21】

また、
【数22】

は時間領域の中のノイズ指数である。
【0060】
OFDMシステムの基本的な特性は、周波数領域において、CPがISIを避けるために通信チャネルの最大遅延よりも大きく設定される場合、通信チャネルは多数の平行なチャネルに変換されることである。ISIを減少させるための条件を下記に示す。
【数23】

【数24】

の場合
これにより、下記が成立する。
【数25】

【0061】
CPがチャネルの最大遅延よりも大きい場合、チャネルの畳込み行列H0は円形になり、フーリエ変換によって対角化される。下記を定義することにより、
C=GR0I
結果として下記が成立する。
【数26】

ここで、hはH0の第1の列である。このため、上記の式は、下記のように簡素化することができる。
【数27】

【0062】
キャリア間の干渉(ICI)はないため、サブキャリアは互いに別々に容易に回復することができる。独立したサブキャリアの平行なチャネルを、図4に例示する。特に、CPが通信チャネルの最大遅延よりも大きい場合、図4は平行なチャネルの等化物を示す。
【0063】
以下に、どのようにOFDMシステムが周波数領域の中でマルチパスのSISOチャネルからダイバーシチを得るのかについを、実施例によって説明する。下記において、ダウンシフトの演算子が定義される。
【数28】

ここで、
【数29】

は、NcxNcの単位行列のk番目の列である。Ng≧Lが満足される場合、次の関係が保持されることを示すことができる。
【数30】

【0064】
また、下記の式から、
【数31】

次の式が生ずる。
【数32】

この対角線成分は、正規化指数
【数33】

によって乗算された上記の式の中で示されるように、フーリエ変換行列の
【数34】

番目の列である。このため、対角線行列
【数35】

は下記のように記載できる。
【数36】

ここで、上記の式は最後の段階に適用される。上記の結果は、対角線行列
【数37】

が対角線行列
【数38】

の重ね合わせであることを示している。
【数39】

の対角線成分が通信チャネルの周波数応答を表すため、経路Lの数が多くなればそれだけ、周波数領域の中でより大きなダイバーシチが得られて、チャネルコーディング方式が周波数方向に適用される場合、より安定した通信が得られる。例えば、遅延が存在しない場合(L=0)、チャネルの周波数応答は
【数40】

によって表される。このことは、チャネルが全てのサブキャリアにわたって均一であり、ダイバーシチを利用できないことを意味する。
【0065】
本発明のさらに別の見地によれば、図1に示した重み付け行列はビーム形成するように動作する。
【0066】
ビーム形成は、様々な方向に付勢される送信ビームを送信するために多数のアンテナを利用する従来の方式である。M. Budsabathon、Y. Hara及びS. Haraによる文献「On a Pre-FFT OFDM Adaptive Antenna Array for Delayed Signal Suppression」、Proc. 第7回International OFDM-Workshop、Hamburg、ドイツ、2002年9月の中で、受信機におけるビーム形成が説明されている。この文献では、OFDMシステムの保護間隔を超える長いチャネル遅延によって引き起こされる問題が解決される。従来技術の方式は、ISI及びICIを避けるために、保護間隔を超える遅延がある方向から入射する信号を抑制する。この方式は、多数のアンテナが受信機に配置されていると仮定する。このことは、多数のアンテナ及び付加的な演算能力を搭載するために一定の空間を必要とする。このため、前述した従来技術の方式は、電池の消耗が少ない小形の移動端末には適当ではない。
【0067】
通常、ビーム形成を行うために、送信される信号は送信方向を考慮するためにビーム形成ベクトル(ステアリングベクトル)によって重み付けられる。送信された信号が保護間隔を超える遅延のある方向には伝搬しないように、ビーム形成ベクトルを形成できることがさらに認められている。このことは、受信機で観察される経路遅延の有効数を減らして、ISI及びICIを緩和させることになる。しかしながら、ビーム形成は受信機における経路遅延の有効数を減少させるが、マルチパスは前述したようにダイバーシチソースであるため、それはチャネルコード化方式に対しては不都合である。
【0068】
図5は、ビーム形成方式のブロック図を示す。マルチキャリア信号は最初、逆フーリエ変換器303を経由して時間領域に変換される。次に、ブロック305は、時間領域における信号の広がり(CP拡張)に相当する保護間隔を挿入する。この結果として生じた時間領域の信号は次に、ビームフォーマ(beamformer)501によって空間領域の中で広げられる。これは、空間における広がりと呼ばれることが多い。
【0069】
行列Wは、信号を空間領域の中で広げるビーム形成を実行する。ルック方向(look direction)のビーム形成は、ビーム形成ベクトルを計算するために検討される。このため、行列Wは下記のように示される。
【数41】

ここで、Nbは、重み付けベクトルを計算するためのビームの数である。
【0070】
ビーム形成方式に関連したシステムの性能を検証するために、コンピュータシミュレーションを実行した。
【0071】
図6は、1ビーム、2ビーム及び4ビームの場合の、ビットエラー率(BER)対ビットエネルギー対ノイズ比(Eb/N0)に関する結果として生じたシステムの性能を例示する。送信機におけるビーム形成方式に関するシミュレーションのパラメータは、上側に示した表に要約されている。保護間隔の大きさは、不十分な保護間隔の極端な例としてゼロに設定される。このため、全てのチャネルの遅延は、保護間隔を超えることになる。ビーム形成ベクトルに対する出発方向(DODS)は、対応する経路遅延に基づいて選択される。この場合、経路遅延が最も短いDODSが選択される。結果は、高い信号対ノイズ比の領域(SNR)では、ISI及びICIが抑制されるため、より少ない数のビームに対して性能が向上したことを示している。しかしながら、SNRがより低い場合は、チャネルのコード化のために性能を向上させるより多くの周波数のダイバーシチが利用可能であるため、より多くの数のビームを使用することが好都合である。図6から分かるように、経路遅延の数に関して、周波数ダイバーシチのゲインと干渉の緩和との間に妥協が存在する。従来のビーム形成方式に関連した性能を改良するために、本発明は効率的なビーム形成に対する構想をさらに提供する。この場合、重み係数の集合を設計する一方でステアリングベクトル(ビーム形成ベクトル)をはっきりと考慮に入れることができるため、重み付け用の手段はビーム形成するようにさらに動作する。
【0072】
下記において、短期のチャネル状態の情報と長期のチャネル状態の情報との間の相違が説明される。
【0073】
送信機が通信チャネルに関する十分な知識を有していると仮定する線形送信処理方式(Linear transmit processing scheme)は、K. Kusumeによる文献「Linear Space-Time Precoding for OFDM Systems based on Channel State Information」、Proceedings IEEE, International Symposium on Personal, Indoor, and Mobile Radio Communications (PIMRC 2003)、Beijing、中国、2003年9月、第1巻、ページ231〜235、の中で開示されている。上記の従来技術の文献の中で開示された方式によれは、CSIは受信機からフィードバックされる、又は時分割二重システムの別のリンクから予測されると見なされる。しかしながら、十分なチャネルに関する知識を有するという仮定は、実現可能でないシステムもある。例えば、周波数分割二重システムでは、アップリンクから予測されるCSIは、アップリンク及びダウンリンクのキャリア周波数が異なるため、ダウンリンクに対しては適用することができない。
【0074】
送信機において新しい信号処理技術を設計するために、経路遅延及びDODSなどのあまり急速に変化しない幾つかのCSIを利用する。それは、この幾何学的な情報は移動体の動きに対してむしろ変化が遅いと考えられるからである。
【0075】
下記においては、短期及び長期のCSIの分離が、SISOチャネルに関連して説明される。ここで、MISOチャネルのモデルの特別な特性が後で説明される。前述したように、OFDM変調は、マルチパスのチャネルを平行なチャネルに分解する。ノイズが存在しない場合は、保護間隔が十分に選択されたときの送信機と受信機との間のチャネルは、図7に示すように説明できる。対角線行列
【数42】

は、その主対角線内の全てのサブキャリアのチャネルの周波数応答を含む。これらの項目は極めて急速に変化するため、送信機では利用できない。しかしながら、この対角線行列は、それぞれが明確な経路遅延に対応する対角線行列の重ね合わせである。
【0076】
図8は、SISOのチャネル上で短期のCSIと長期のCSIとの分離を例示している。この場合、周波数領域の表示が選択されている。通信チャネルは、経路l,(0≦l≦L)に対する複素数値のチャネルタップhlに関連したL+1個の伝搬経路を備えている。この複素数値のチャネルタップは急速に変化し、短期のCSIと考えられている。一方、対角線行列Ωlは、チャネル係数ほど急速には変化しない経路遅延に対応する。このため、対角線行列は、長期のチャネル状態の情報を表す。この長期のCSIは、信号の処理を設計するために、本発明の送信機で利用されると見なされる。
【0077】
完全を期するために、長期の感覚で直交性の条件を調査することは興味がある。下記において、後で説明する本発明の重み係数の設計に関連した最適化問題を明確に表すために、これらの条件を検討する。
【0078】
図9は、SISO通信チャネルに関連したシステムモデルのブロック図を示す。
【0079】
図3の通信システムとは異なり、図9に示したシステムモデルは、それぞれが対応する伝搬経路に関連付けられたL+1個の遅延ブロック901を備える。言い換えると、チャネルの遅延ブロック901は、マルチパスの通信チャネルの遅延特性などの長期のチャネル特性として時間領域内のチャネルの遅延を表す。短期のCSIを考慮に入れるために、各通信経路は乗算器903に関連付けられる。受信機において、受信された信号は重ね合わせされる。ここで、重ね合わせは加算器905によって表される。説明を簡単にするために、十分な保護間隔が選択されて、ISI及びICIが存在しないと仮定する。さらに、図9に示した実施形態では簡潔にするために、チャネルノイズは明確に考慮に入れられない。ここで目標は、送信機における信号処理設計用の条件を見つけることである。この条件は、長期のチャネル状態の情報だけでなく、受信機における信号処理も考慮に入れる。これを行うために、図9に示したシステムのモデルは、図10に示した等化のシステムモデルに変換される。
【0080】
図10に示したシステムのモデルは、システムの直線性を反映するため、各通信経路を別個に検討することができる。さらに、この直線性のために、短期のCSIに関連したチャネルタップを右側に移動することができる。
【0081】
次の変換の段階では、図10に示したシステムのモデルは、図11に示した等化のシステムモデルに変換することができる。
【0082】
図11に示したシステムのモデルは、L+1個のブロック1101を備えている。ここで、各ブロック1101は、L+1個の伝搬経路の中の特定の伝搬経路に関連している。図10に示した実施形態と比較すると、ブロック1101は、それぞれの連結されたブロック303,305,901,309及び311の動作を表す。言い換えると、ブロック1101は、前に述べた動作ブロックに対する複合動作を表す。
【0083】
システムの動作を説明するために、関心のある式の一部を便宜上次のように記載する。
【数43】

【0084】
ここで、短期のCSIを明確に除外する条件がL+1個存在することを認めることができる。
【0085】
OFDM変調は、各経路遅延を対角線成分としてフーリエ係数の能力を有する対角線行列に変換する。
【0086】
システムモデルの上記の変換は、保護間隔が通信チャネルの最大遅延よりも大きいという仮定に基づいていることに注意されたい。しかしながら、この仮定は、後で説明するが、常に満たされるとは限らない。この上記の考察は、短期のチャネル状態の情報に関係なく、受信されたマルチキャリア信号の直交性を維持するために、本発明の重み付け用の手段が使用するための重み係数を提供するために、さらに分析するための根拠を提供する。
【0087】
保護間隔を超える長いチャネル遅延がある場合、ISI及びICIが存在する。本発明によれば、これは下記の式によって表すことができる。ここでは、説明を簡単にするために、SISO形の通信チャネルが検討される。
【数44】

この式では簡潔にするために、ノイズの項は含めない。上記の式の右側の第1の項は、保護間隔の中の遅延成分に関連する。このため、この項を対角線構造を有する下記のように変換することができる。
【数45】

直交性が保持されて、Ng番目のダイバーシチを実現できる。上記の式の中間の項は保護間隔を超える経路遅延を含み、対角線構造を通過しない。対角線構造が維持されないため、それは理想的には軽減する必要があるICIと考えられる。しかしながら、これらの成分は、システムの性能を向上させるために利用できるマルチパスのチャネルのために、潜在的に付加的な(L−Ng)番目のダイバーシチを取り入れる。これとは反対に、上記の式の右側の最後の項は、以前送信された信号s[n−1]によるISIを表し、これは抑制する必要がある。
【0088】
上記の導出から始めて、本発明の事前コード化方式を分析するように説明する。前述したように、説明を簡単にするために、前の説明はSISO形チャネルのモデルに基づいていた。本発明の事前コード化方式は、前述したように、SISO方式及びMISO方式の両方に適用できることに注意されたい。このため、下記において、本発明の事前コード化方式をMISOのシナリオの事例に対して説明する。この場合、SISOのシナリオは、MISOのシナリオの特別な事例と考えることができる。
【0089】
前述したように、送信ビームが好ましいことに最も短いチャネル遅延に関連付けられた伝搬経路に向かって方向付けられるようにマルチキャリアを重み付けるように、本発明の重み付け用の手段が前述したステアリングベクトルを明確に考慮に入れる場合、本発明の事前コード化方式をビーム形成に対して適用することもできる。
【0090】
図12は、本発明のさらに別の実施形態に基づいて、マルチキャリア信号を事前コード化するための創意に富んだ装置の実施形態を示している。
【0091】
図12に示したシステムのモデルは、Tで示した本発明の事前コード化用フィルタを含む、事前コード化するための本発明の装置を設計するための、MISOチャネル上のシステムのモデルの中で本発明による事前コード化するための装置1201を備えている。
【0092】
図12では、L+1個の通信経路がはっきりと示されている。各チャネルの経路はlによって索引が付けられ、複素数値のチャネルタップ係数hlによって特徴付けられる。さらに、各伝搬経路は、前述したように経路遅延
【数46】

に関連付けられている。
【0093】
図12に示したシステムのモデルは、前述した実施形態とは異なり、各伝搬経路がステアリングブロック1203に関連付けられたL+1個のステアリングブロック1203を備えている。さらに、このステアリングブロック1203は、本発明の事前コード化用フィルタ1201と対応する伝搬遅延ブロック901との間に配置されている。
【0094】
ステアリングブロック1203は、多数のアンテナが適用される場合にチャネルの性質を表す。このことは、送信される信号が、帯域幅が狭いという仮定及び遠距離電磁界の仮定(far field assumption)のため(平面波により生じた)に空間的に一定の方向に結合される(空間的な相関による)ことを意味する。アレイのステアリングベクトルaTlの数学的な転置演算子は、チャネルの性質として空間結合を説明する。
【0095】
図12に示した本発明の事前コード化用フィルタ1201は、システムの直線性のために、長期のCSIしかチャネル情報として考慮しないため、乗算器903により表されたチャネルタップを、前述したように受信機側に移動することができる。
【0096】
図13は、本発明の事前コード化用フィルタTを設計するために、下記の中で使用されるMISOチャネルの場合の直線的に変換されたシステムのモデルを示す。
【0097】
図13は、各経路遅延に対してICIの削減に対する要求事項を満足するために、事前コード化用フィルタに関する条件も示す。これらの条件は、下記の式によって表すことができる。
【数47】

【0098】
逆フーリエ変換FHは、式の目的を得るために左から乗算されることに注意されたい。最適化の目標は、次数Lの利用可能なマルチパスから完全なダイバーシチを得ると同時に、l>Nqに対してICIを避けることによりサブキャリア間の直交性を維持することである。ISIを避けるために、保護間隔を超える経路遅延を明白に検討すべきである。ISIを避けるための条件は、下記のように記載することができる。
【数48】

ここで、下記の式は、
【数49】

左から乗算されて、保護間隔を超える信号のみがISIを避けるために対象となるため、(l−Nq)の条件のみが(Nq+1≦l≦L)に対して残る。
【0099】
理想的には、事前コード化用フィルタTが上記の条件を満足させる必要がある。しかしながら、一旦チャネルの最大遅延が保護間隔を超えると(Nq<L)、結果として生ずる干渉と保護間隔を超える経路からのダイバーシチの利得とは互いに矛盾する。このため、一定の基準のもとで最適な妥協を見つける必要がある。事前コード化用フィルタTに対する最適な解決策を見出すために、下記では実施例として最小平均2乗誤差基準(MMSE)を適用する。このことは、後で説明する。
【0100】
第1に、上記の条件は、1つの数式のシステムに集められる。次に、予測された信号
【数50】

が、下記のように長期の感覚で形成される。
【数51】

ここで、分散σ2ηのホワイトノイズの項
【数52】

も明白に検討される。これに関連して、行列Φは下記の式で表される。
【数53】

【0101】
Φの大きさはpxMNであり、ここでpは下記のように表される。
【数54】

【0102】
長期の感覚の望ましい信号は、次のようになる。
【数55】

【0103】
上記の式から、最適化の問題は下記のように記述することができ、
【数56】

送信能力ETxについての制約がある。この最適化の問題は、例えばLagrangian関数を用いて解決することができる。
【0104】
事前コード化用フィルタの係数(重み係数)に対する最適な解決策を下記に示す。
【数57】

ここで、最適な重み要素β-1optを下記に示す。
【数58】

ここで、「tr」はトレース演算子(trace operator)を指す。上記の式によって与えられた事前コード化用フィルタは、その最適化基準のために送信ウィーナーフィルタ(transmit Wiener filter)と見なすこともできる。
【0105】
重み係数は、MMSE方式とは異なる最適な方式の解から得ることもできることに注意されたい。例えば、上記の最適化問題を解くことに対して、例えば最大公算基準を適用することによって、重み係数を提供することもできる。Simon Haykinによる文献「Adaptive Filter Theory」、第4版、Prentice Hall、2002年、の中では、本発明の重み係数に与えるために適当な複数の最適化方式が説明されている。
【0106】
前述したように、上記の計算により、ステアリングベクトルによって表されるビーム形成の事例に対して本発明の重み付け用フィルタが使用する可能な重み係数の集合に対する解が提供される。SISOのシナリオに対して、ステアリングベクトルは1に等しい。このため、上記の検討は、SISOのシナリオに対しても有効である。
【0107】
上記の構築から分かるように、本発明の事前コード化用フィルタは、信号を空間及び時間の中に同時に広げるが、ビーム形成方式は信号を時間の中に広げて(CP拡張)、次にビーム形成ベクトル(ステアリングベクトル)を用いることによって空間に広げる。
【0108】
図14は、従来のマルチキャリア変調方式にビーム形成が加えられた方式と、ビーム形成の事例に対する本発明の事前コード化方式との間の相違を例示する。
【0109】
図14の左の図では、マルチキャリア信号は最初に時間領域に変換される。続いて、保護間隔が取り入れられる。この保護間隔は、時間方向に送信される多数の最後の係数のコピーである。その後、送信される記号は、各アンテナに対して位相を移すことによって空間に広げられるため、送信される信号のエネルギーが、例えば伝搬経路に関連した一定の方向に集中される。
【0110】
これとは反対に、本発明の事前コード化用フィルタは、マルチキャリア信号を時間及び空間内に広げられる事前コード化信号に同時に変換する。さらに、本発明の送信ウィーナーフィルタは、前述したように、同時にまた明白にチャネル遅延を含む。
【0111】
図15は、ビットエラー率に関して従来のビーム形成方式と比較した場合の、本発明の送信ウィーナーフィルタの性能を例示する。この場合、種々のビームが検討される。シミュレーションパラメータは、上側に示した表の中に要約されている。保護間隔の大きさは、不十分な保護間隔の極端な例としてゼロに設定される。このため、全てのチャネルの遅延は、保護間隔を超えることになる。図15に示した初期のシミュレーションの結果は、前に説明したように、ビーム形成方式用の種々のビームの中には交差点が存在することを例示している。しかしながら、本発明のMISOの場合の事前コード化用フィルタ(送信ウィーナーフィルタ)は、明らかにビーム形成方式よりも性能が優れている。
【0112】
前述した本発明の事前コード化用フィルタは、重み付け行列の中に配置される重み係数の集合を備えている。前述したように、この重み付け行列は、第1の行列及び第2の行列の連結から構成する。例えば、第1の行列は、経路遅延から成る。第2の行列は、例えば前に記載した対角線行列の中に配置されたフーリエ係数を含む。さらに、第2の行列は、例えば前に記載した逆フーリエ変換行列の中に配置された逆フーリエ係数を含む。例えば、第1の行列は、前述した行列Φから成る。このため、第2の行列は行列Ψとなる。
【0113】
これらの行列を使用して、重み付け用の手段はこの場合、マルチキャリア信号で構成されたマルチキャリア値の集合を重み付け行列で乗算するように動作する。言い換えると、重み付け用の手段は、ベクトル乗算によって行列を実行する。
【0114】
従って、第1の行列は、第1の部分行列と第2の部分行列との連結から構成する。この場合、第1の部分行列は、例えば前に述べたL個の経路遅延から構成する。言い換えると、第1の部分行列は行列ΦHとすることができる。
【0115】
第2の部分行列は、本発明の事前コード化用フィルタに関する重み係数を決定するための本発明の方式に関連して前に説明したように、例えば共役及び転置された形式の第1の部分行列の及び第1の部分行列による乗算の逆数を含む。さらに、第2の部分行列は、チャネルのノイズ電力をさらに含む。例えば、第2の部分行列は、前に説明した下記の行列である。
【数59】

【0116】
前述したように、本発明の重み付け用の手段は、時間拡散事前コード化信号がさらに空間で拡散するように、マルチキャリア信号を重み付けるようにさらに動作する。この場合、重み係数の集合はステアリングベクトルの集合を含み、このステアリングベクトルの集合は第1の伝搬経路に関連した第1のステアリングベクトルを含み、第2のステアリングベクトルは第2の伝搬経路に関連付けられる。本発明の重み付け用の手段は、重み付け行列によってマルチキャリア信号を重み付けるように動作する。この重み付け行列は、行列フィルタとすることができる。各重み付けベクトル(又は行列の各列)は、行列フィルタによって乗算されるベクトルの各成分に対して異なるため、行列フィルタはマルチレート(multirate)のフィルタバンクと見なすことができる。ステアリングベクトルを使用する本発明の事前コード化とは反対に、従来のビーム形成方式では、ベクトルの全ての成分は下記のように同じベクトルによって乗算される。
【数60】

【0117】
このことは、同じ空間内の広がりが行列の中に配置された全ての時間領域の信号に対して行われるのに対して、行列フィルタは異なる方法でそれを行うことを意味する。言い換えると、従来のビーム形成は、ベクトル内に配置された時間領域の信号の間のどのような影響も取り入れない。これは、本発明の行列フィルタを使用する場合である。さらに、本発明の行列フィルタは、信号を時間領域及び空間領域に同時に広げる。
【0118】
一般に、通信チャネルは、所定の保護間隔の長さよりも短い又は長いL+1個の経路遅延に関連付けられたL+1個の伝搬経路を備えている。さらに、通信チャネルは、保護間隔の長さを超える経路遅延に関連したさらに多くの数の伝搬経路を備えることができる。ここで、重み付け用の手段は、マルチキャリア係数の集合を前述した重み付け行列により、例えば前述した本発明の最適化方程式によって決定された重み付け行列により乗算するように動作する。好ましいことに、重み付け行列はステアリングベクトルも含むため、事前コード化された信号は時間及び空間の両方に広げられる。これを行うために、送信点は例えば、制御される送信ビームを送信するように動作するため、事前コード化された信号は好ましくはL+1個の伝搬経路を経由して送信される。本発明の事前コード化方式が実行されない場合は、ステアリングベクトルが1に設定されるため、本発明の重み付け用の手段は時間拡散を行うためにのみ動作し、事前コード化された信号は前述したようにNの長さを有する。
【0119】
マルチキャリア信号を重み付けるために使用される重み付け係数の集合を決定するために、重み付け用の手段は重み係数を決定するための前述した手段を含む。好ましいことに、重み係数を決定するための手段は、最小平均二乗誤差の感覚で前述した最適化関数を解くように動作する。前述したように、決定するための手段は、ISIが存在しない望ましい信号に基づいてまた予測された信号を踏まえて解を得ることができる。この信号は、ISI及びICIによって悪影響を受ける。ここで、予測された信号は、経路遅延に対してのみチャネルの影響を受ける。
【0120】
さらに、本発明は、マルチパス通信チャネルを通って送信される事前コード化された信号を供給するための創意に富んだマルチキャリア送信機を提供する。ここで、このマルチキャリア送信機は、多数の値から成る情報信号を提供するための手段と、マルチキャリア信号を供給するために、これらの多数の数値をマルチキャリア変調方式に関連付けられた離散的なキャリア周波数に割り当てるための割当て部とを備えている。例えば、割当て部はブロックインターリービング動作を実行する。さらに、マルチキャリア送信機は、マルチキャリア信号から事前コード化された信号を提供するための上記による装置を備えている。本発明のマルチキャリア送信機がOFDMのシナリオの中で使用される場合、IFFT変換器及び周期的なプレフィックスインサータから構成される従来のOFDM変調構造は、本発明に基づいて、事前コード化された信号を提供する本発明の装置によって置き換えられる。
【0121】
本発明のマルチキャリア送信機は、OFDM受信機と通信するようにさらに動作する。例えば、マルチキャリア送信機は、保護間隔の情報を受信機に送信するように動作して、保護間隔の長さを適用性のあるように決定し、これにより長期のチャネル特性を明白に考慮に入れる。
【0122】
さらに、本発明は、前述した本発明によるマルチキャリア送信機が送信した受信され事前コード化された信号から受信された情報の信号を供給するためのマルチキャリア受信機も提供する。このマルチキャリア受信機は、受信された情報の信号を供給するために、受信され事前コード化された信号を復調するためのOFDM形復調器を備えている。このOFDM形復調器は、例えば、保護間隔を取り除きまた時間領域の信号をもとの周波数領域に変換するように動作する従来のOFDM形復調器とすることができる。好ましいことに、このOFDM形復調器は、シグナリング情報(signaling information)を受信するための手段をさらに備えて、マルチキャリア送信機が選択した保護間隔の長さに基づいて、取り除く保護間隔の長さを適応できるように調整するように、保護間隔を取り除く手段を制御することができる。
【0123】
さらに、本発明のマルチキャリア受信機は、受信され事前コード化された信号から第1の経路遅延及び第2の経路遅延を決定するための手段を備えている。マルチキャリア送信機が事前コード化された信号を提供するための本発明による装置を備えており、またこの場合、重み付け用の手段がはっきりと経路遅延を考慮するように動作するため、本発明のマルチキャリア受信機は、予測された第1の信号経路及び第2の信号経路をマルチキャリア送信機に送信するための手段をさらに備える。例えば、第1の経路遅延及び第2の経路遅延を決定するための手段は、前述したように、受信され事前コード化された信号の自己相関関数を決定し、第1の経路遅延及び第2の経路遅延を自己相関行列から抽出するように動作する。
【0124】
チャネルパラメータを得るために、送信機はチャネルパラメータをアップリンクの信号(移動体から基地局への信号)から予測するようにさらに動作する。このことは、アップリンクに対するチャネルの相互性に基づく(アップリンクに対するチャネル行列の転置は、ダウンリンクに対して有効である)。遅延とは別に、出発方向もアップリンクから予測される(実際に予測される値は、アップリンク信号を受け取ることに対して到着方向と呼ばれる)。この場合、アップリンクとダウンリンクとの間の周波数の違いによる較正は必要である。
【0125】
本発明による方法の幾つかの実行に関する要求事項にもよるが、本発明による方法はハードウェア又はソフトウェアの中で実現することができる。この実現は、本発明の方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと共に動作できるディジタル記憶媒体、特に中に記憶された電気的に読取り可能な制御信号を有するディスク又はCDを用いて行うことができる。従って、本発明は一般的に、コンピュータが読取り可能な担体上にプログラムコードが記憶されたコンピュータプログラム製品である。このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行される場合に本発明による方法を実行する。言い換えると、本発明の方法はこのように、コンピュータ上で実行される場合に本発明の方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施形態に基づいて、マルチキャリア信号を提供するための装置のブロック図である。
【図2】経路遅延に関してチャネルのインパルス応答の分解を例示する図である。
【図3】OFDMシステムの設計モデルを示す図である。
【図4】OFDM送信の場合の並列チャネルを示す図である。
【図5】ビーム形成方法を例示する図である。
【図6】送信機におけるビーム形成の性能を例示する図である。
【図7】ノイズがない場合の並列チャネルを例示する図である。
【図8】SISO形チャネルの場合の短期のCSI及び長期のCSIの分離を例示する図である。
【図9】本発明によるシステムモデルのブロック図である。
【図10】本発明による通信システムのブロック図である。
【図11】長期の感覚で直交性の状態を例示する図である。
【図12】本発明による通信システムのブロック図である。
【図13】本発明による通信システムのブロック図である。
【図14】送信された信号の構造に関する従来の方式と本発明の方式との間の相違を例示する図である。
【図15】本発明の方式の性能を例示する図である。
【図16】従来のOFDM方式を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの数値の集合を含むマルチキャリア信号を事前コード化して事前コード化された信号を生成する装置であって、該事前コード化された信号は、マルチキャリア受信機において取り除かれる所定の保護間隔の長さよりも大きい第1の経路遅延に関連付けられた第1の経路と、第2の経路遅延に関連付けられた第2の経路とから構成するマルチパス通信チャネルを通って送信されるものであり、前記集合中の数値のそれぞれの値は、マルチキャリア変調方式におけるいくつかのキャリア周波数の中のあるキャリア周波数に関連付けられており、
前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する情報を提供するための手段(111)と、
前記第1の経路遅延に関する情報及び前記第2の経路遅延に関する情報を用いて前記マルチキャリア信号に重み付けをする重み付け手段(103)と
を備え、
前記重み付け手段(103)は、時間拡散事前コード化信号が得られるように前記マルチキャリア信号を重み付けるように動作し、前記時間拡散事前コード化信号の長さは、前記マルチキャリア信号の長さと前記所定の保護間隔の長さとの合計に対応し、前記重み付け手段(103)は、前記時間拡散事前コード化信号を前記事前コード化された信号として提供するように動作することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記マルチキャリア信号がマルチキャリア値の集合を含み、前記重み付け手段(103)が重み係数の集合を用いて前記マルチキャリア値の前記集合を重み付けするように動作することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マルチパス通信チャネルが、前記第1の経路遅延と前記第2の経路遅延とを含むマルチパス遅延特性を有し、マルチパス遅延特性によって符号間干渉の発生するものであり、
前記重み係数の集合が、前記マルチパス遅延特性を含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記重み係数の集合が、前記第1の経路遅延と前記第2の経路遅延とを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記重み係数の集合が前記所定の保護間隔の長さを含むことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記重み係数の集合がフーリエ変換に関連付けられたフーリエ係数及び/又は逆フーリエ変換に関連付けられたフーリエ係数を含むことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記重み係数の集合が第1の行列と第2の行列との連結から構成する重み付け行列の中に配置され、前記第1の行列が前記経路遅延を含み、前記第2の行列がフーリエ係数及び/又は逆フーリエ係数を含み、
前記重み付け手段(103)が前記マルチキャリア値の集合に前記重み付け行列を乗算することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の行列が逆フーリエ変換に関連付けられた係数を含む逆フーリエ変換行列と、対角線の中のフーリエ変換に関連付けられた係数を含む帯域行列との連結から成ることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の行列が、第1の部分行列と第2の部分行列との連結から成り、前記第1の部分行列が、L個の経路遅延を含み、前記第2の部分行列が、共役及び転置された形式での第1の部分行列に対する第1の部分行列による乗算結果の逆数を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記情報を提供するための手段(111)がチャネルのノイズ電力に関する情報を提供するようにさらに動作し、
前記重み係数の集合が前記チャネルのノイズ電力を含むことを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
複数のアンテナが送信用に使用され、重み付け手段(111)は、時間拡散事前コード化信号が空間内にさらに拡散されるように前記マルチキャリア信号を重み付けるようにさらに作用し、前記重み係数の集合が、ステアリングベクトルの集合を含み、前記ステアリングベクトルの集合が、第1の伝搬経路に関連付けられた第1のステアリングベクトルと第2の伝搬経路に関連付けられた第2のステアリングベクトルを含むことを特徴とする請求項2から10に記載の装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、前記重み付け行列が、前記ステアリングベクトルに基づいた時間領域での拡散及び空間領域での拡散が同時に実行されるようにマルチキャリアを重み付けるように動作することを特徴とする装置。
【請求項13】
前記通信チャネルが前記保護間隔の長さよりも短い又は長いL+1個の経路遅延に関連付けられたL+1個の伝搬経路を備え、さらに多くの数の伝搬経路が前記保護間隔の長さを超える経路遅延に関連付けられ、前記マルチキャリア信号がNc個のキャリア周波数に関連付けられたマルチキャリア値の集合を備え、前記重み付けするための手段(103)が重み付け行列の中に配置された重み係数の集合を備え、前記重み付けするための手段がマルチキャリア係数の集合を前記重み付け行列により乗算するように動作し、前記重み付け行列は下記に示した行列であり、
【数1】

前記Φは前記経路遅延を含む下記の行列を指し、
【数2】

前記
【数3】

はl(エル)番目の伝搬経路の経路遅延を含むシフト行列を表し、前記GRは前記保護間隔を取り除くことに関連した動作を表す行列であり、前記Ψは下記の行列を表し、
【数4】

前記FHは逆フーリエ変換の行列を表し、前記Ωlはl(エル)番目の伝搬経路に関連付けられた下記の対角線行列を表し、
【数5】

前記σ2ηはチャネルのノイズ電力を示し、
前記ETxは送信電力を示し、前記pはスカラーであり、前記β-1optは下記に示す重み係数であり、
【数6】

前記(tr)はトレース演算子を指し、
前記事前コード化された信号が、MN信号を送信するように動作する送信点によって送信され、
前記重み付け行列が、Mが1よりも大きい場合は、前記事前コード化された信号を空間領域の中で拡散させることによってビーム形成するようにさらに動作し、
前記alTは、l(エル)番目の伝搬経路に向かうビーム形成に関連付けられた転置されたステアリングベクトルを示し、前記重み付け行列は時間拡散のためにのみ作用する場合には、alTが1である、
ことを特徴とする請求項1から12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する情報を提供するための手段(111)が、前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する情報を前記マルチキャリア受信機から受信して、前記情報を前記重み付け手段(103)に提供するように動作することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記情報を提供するための手段(111)は、それぞれが一定の送信のシナリオに関連付けられた複数のチャネル遅延のプロファイルを記憶するための記憶素子を備え、
前記情報を提供するための手段(111)は、現在の送信のシナリオに対応する現在のチャネル遅延のプロファイルを選択して、前記現在のチャネル遅延のプロファイルが備えている前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する対応する情報を、前記重み付けするための手段(103)に提供するように動作することを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記情報を提供するための手段(111)が、前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延を前記マルチキャリア受信機が送信した信号の受信された信号から予測するように動作することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記マルチキャリア信号が、マルチキャリア値の集合を備え、前記重み付け手段(103)が、重み係数の集合を用いてマルチキャリア値の集合に重み付けをするように作用し、前記事前コード化するための装置が、前記重み係数を決定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から16に記載の装置。
【請求項18】
前記決定するための手段が、前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する情報を唯一のチャネル情報として受信するように動作し、かつ前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する情報を明白に考慮に入れることにより、前記重み係数を決定するように動作することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記重み係数の集合が、重み付け行列の中に配置され、前記重み係数を決定するための手段が、下記の最適化関数を、
【数7】

最小平均二乗誤差の観点から解くように動作し、ここで、前記Tは重み付け行列を示し、βは重み係数であり、u(n)は、符号間干渉とキャリア間干渉がない望ましい信号を示し、
【数8】

は、符号間干渉による悪影響があって、キャリア間干渉がない、予期された信号を示し、前記予期された信号が経路遅延に対してのみチャネルの影響を受けることを特徴とする請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
マルチパス通信チャネルを通って送信される事前コード化された信号を提供するためのマルチキャリア送信機であって、
いくつかの数値を含む情報信号を提供するための手段と、
マルチキャリア信号を供給するために、前記多数の数値をマルチキャリア変調方式に関連付けられた離散的なキャリア周波数に割り当てるための割当て部と、
前記事前コード化された信号を前記マルチキャリア信号から提供するための請求項1から19のいずれかに記載の装置とから構成することを特徴とするマルチキャリア送信機。
【請求項21】
請求項20に基づいた前記マルチキャリア送信機によって、第1の経路遅延に関連付けられた第1の伝搬経路と第2の経路遅延に関連付けられた第2の伝搬経路とを含む成るマルチパス通信チャネルを通って送信される受信され事前コード化された信号から受信された情報信号を提供するためのマルチキャリア受信機であって、
受信された情報信号を提供するために、受信された事前コード化された信号を復調するための直交周波数分割多重化復調器と、
前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延を前記受信され事前コード化された信号から決定するための手段と、
予測された前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延を前記マルチキャリア送信機に送信するための手段と
を含んでなるマルチキャリア受信機。
【請求項22】
事前コード化された信号を提供するために、マルチキャリア信号を事前コード化する方法であって、前記マルチキャリア信号は、いくつかの数値の集合を含み、該集合の各数値がマルチキャリア変調方式のいくつかのキャリア周波数の中のあるキャリア周波数に関連付けられており、前記事前コード化された信号は、第1の経路遅延に関連付けられた第1の経路と、2の経路遅延に関連付けられた第2の経路とを含むマルチパス通信チャネルに送信され、前記第1の経路遅延は、マルチキャリア受信機において取り除かれる所定の保護間隔の長さよりも大きいものであって
前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延に関する情報を提供するステップと、
前記第1の経路遅延に関する情報及び前記第2の経路遅延に関する情報を用いて、長さが前記マルチキャリア信号の長さと前記所定の保護間隔の長さとの合計に対応する時間拡散事前コード化信号が得られるように、前記マルチキャリア信号に重み付けをするステップと、
前記時間拡散事前コード化信号を事前コード化された信号として提供するステップと
を含む方法。
【請求項23】
マルチパス通信チャネルを通って送信される事前コード化された信号を提供する方法であって、
いくつかの数値を含む情報信号を提供するステップと、
マルチキャリア信号を提供するために、前記いくつかの数値をマルチキャリア変調方式に関連付けられた離散的なキャリア周波数に割り当てるステップと、
前記事前コード化された信号を提供するために、請求項22に基づいてマルチキャリア信号を事前コード化するステップと
を含む方法。
【請求項24】
第1の伝搬遅延に関連付けられた第1の伝搬経路と第2の伝搬遅延に関連付けられた第2の伝搬経路から構成するマルチパス通信チャネルを通る、請求項23による方法によって提供された受信され事前コード化された信号から受信された情報信号を提供する方法であって、
受信された情報信号を提供するために直交周波数分割多重化復調方式を用いて、前記受信され事前コード化された信号を復調するステップと、
前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延を前記受信され事前コード化された信号から決定するステップと、
予測された前記第1の経路遅延及び前記第2の経路遅延を前記マルチキャリア送信機に送信するステップと
を含む特徴とする方法。
【請求項25】
プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請求項22、23又は24に基づいた方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−515834(P2007−515834A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510101(P2005−510101)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011842
【国際公開番号】WO2005/043851
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】