説明

マルチコアファイバ

【課題】 非直線的に設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制できるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【解決手段】 マルチコアファイバ1は、複数のコア11、12と、それぞれのコア11、12の外周面を囲むクラッド30と、を備え、複数のコア11、12の内、互いに隣り合う少なくとも一組のコア11、12の伝搬定数の差が、長手方向に沿って変化することを特徴とする。このようにコア11、12を設定することで、湾曲した状況で設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが高くなることを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非直線的に設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制することができるマルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより囲まれた構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年、光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
下記非特許文献1には、このようなマルチコアファイバの一例が記載されている。このマルチコアファイバにおいては、1つのクラッド内に複数のコアが配置されている。しかし、非特許文献1においても指摘されているように、マルチコアファイバにおいては、それぞれのコアを伝播する光信号同士が互いに干渉して、それぞれのコアを伝播する光信号にノイズが重畳する場合がある。そこで、非特許文献1においては、コア同士のクロストークを低減させるための1つの手法として、それぞれのコアのクラッドに対する比屈折率差を互いに変えることが示されている。
【0005】
また、下記特許文献1には、屈折率差、コアの直径等を互いに異ならせることにより、互いに伝搬定数の異なる複数のコアを備えるマルチコアファイバが記載されている。
【0006】
さらに、下記特許文献2には、コアの直径が互いに異なる複数のコアを備えるマルチコアファイバが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Masanori KOSHIBA “Heterogeneous multi−core fibers: proposal and design principle” IEICE Electronics Express, Vol.6, No.2, 98−103
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/0388863号
【特許文献2】米国特許第5,519,801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記非特許文献1に記載のように、それぞれのコアのクラッドに対する比屈折率差を互いに変えたり、特許文献1、2のように、コアの直径等を互いに異ならせることにより、互いに隣り合うコアにおける光信号の伝搬定数(導波条件)が異なり、確かにクロストークは軽減される。しかし、光ファイバは、直線状に設置される場合だけではなく、非直線的に設置される場合がある。例えば、一定の径の孤を描くように設置される場合、互いに隣り合うコアの一方が、弧の内側となり、他方が弧の外側になることで、互いに隣り合うコアのそれぞれの光の伝搬定数が一致してしまうことがある。そして、光ファイバの設置の状況によっては、互いに隣り合うコアのそれぞれの光の伝搬定数が一致する状態が長く続く場合がある。このように互いに隣り合うコアのそれぞれの光の伝搬定数が互いに一致している状態が長い距離続くと、それぞれのコア同士のクロストークが生じ易くなるという問題がある。つまり、互いに隣り合うコアのクラッドに対する比屈折率差を変える等することにより、互いに隣り合うコアにおける光の伝搬定数を異ならす場合においても、光ファイバが非直線的に設置される場合においては、特定のコア同士のクロストークが生じ易くなることがある。
【0010】
そこで、本発明は、非直線的に設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制することができるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマルチコアファイバは、複数のコアと、それぞれの前記コアの外周面を囲むクラッドと、を備え、前記複数のコアの内、互いに隣り合う少なくとも一組のコアの伝搬定数の差が、長手方向に沿って変化することを特徴とするものである。
【0012】
このようなマルチコアファイバの一組のコアは、マルチコアファイバが非直線的に配置されることで、互いに隣り合う少なくとも一組のコアにおいて、伝搬定数が一致する場所が生じても、この一組のコアにおいては、モードフィールド径の差が長手方向に沿って変化するため、それぞれのコアの伝搬定数は、長い区間において一致しない。従って、本発明のマルチコアファイバは、螺旋状や湾曲した状況で設置される場合においても、この互いに隣り合う一組のコアのクロストークが悪化することを抑制することができる。
【0013】
また、前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアを伝播するそれぞれの光のモードフィールド径の差が、長手方向に沿って変化することが好ましい。
【0014】
互いに隣り合う一組のコアを伝播する光のモードフィールド径の差が長手方向に沿って変化するということは、互いに隣り合う一組のコアの伝搬定数の差が長手方向に沿って変化していることに他ならない。従って、このようなマルチコアファイバにおいては、モードフィールド径の変化を調べることにより、互いに隣り合う一組の伝搬定数の差が長手方向そって変化していることを容易に調べることができる。
【0015】
また、前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアは、前記クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化することが好ましい。
【0016】
このような構成により、互いに隣り合うコアにおける伝搬定数の差やモードフィールド径の差を長手方向に容易に変化させることができる。また、屈折率の変化量に対するクロストークの変化は非常に大きいため、屈折率を微小に変化させることで、クロストークが悪化することを防止することができる。
【0017】
この様にクラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する場合においては、前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアの比屈折率差の差は、前記クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する変化量よりも大きいことが好ましい。
【0018】
このように比屈折率差を設定することにより、マルチコアファイバの曲げ半径が大きい場合において、よりクロストークを低減することができる。
【0019】
或いは、上記の様にクラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する場合においては、前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアの比屈折率差の差は、前記クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する変化量よりも小さいことが好ましい。
【0020】
このように屈折率差を設定することにより、ファイバに印加される曲げ径が変化した場合においても、クロストークの値を安定させる事ができる。
【0021】
また、前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアは、直径の差が長手方向に沿って変化することが好ましい。
【0022】
このような構成によっても、互いに隣り合うコアにおける伝搬定数の差やモードフィールド径の差を長手方向に容易に変化させることができる。また、コアの直径をコアとなるガラスロッドの外径を変動させることにより確定することができ、また、この外径の変動をコアとなるガラスロッドの製造後に調整することができる。
【0023】
また、前記伝搬定数の差は、長手方向に沿って一定の間隔で変化することが好ましい。
【0024】
このような構成にすることで、モードフィールド径の差が一定の間隔で変化するように互いに隣り合うコアの伝搬定数を一定の間隔で変えれば良い。従って、このような構成のマルチコアファイバを工業生産する際、管理しやすい条件でマルチコアファイバを製造することができる。
【0025】
或いは、前記伝搬定数の差は、長手方向に沿って不規則な間隔で変化することが好ましい。
【0026】
このような構成にすることで、マルチコアファイバを製造するために用いるファイバ用母材において、コアとなるガラスロッドの直径や屈折率をランダムな間隔で変えれば良く、容易にマルチコアファイバを作製することができる。また、このように伝搬定数の差が、長手方向に沿って不規則な間隔で変化する場合、マルチコアファイバが螺旋状に巻かれて使用される等、規則的な形状で曲げられて設置される場合に、クロストークが規則的に悪化することを防止することができる。
【0027】
また、前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアにおける少なくとも一方のコアが、前記クラッドの中心軸の周りを回転するように螺旋状に配置されることがより好ましい。
【0028】
螺旋状に配置されたコアのファイバの長手方向に垂直な断面における位置は、ファイバの長手方向に沿って変化する。従って、このようなマルチコアファイバが非直線状に設置されて、螺旋状に配置されたコアと他のコアとの光の伝搬定数が一致する区間が生じたとしても、ファイバの長手方向に沿って、この特定のコアと他のコアとの位置関係が変化するため、これらのコア同士の光の伝搬定数は、長い区間において一致しない。従って、マルチコアファイバが湾曲した状況で設置される場合においても、互いに隣り合うコアのクロストークが悪化することをさらに抑制することができる。なお、上記の互いに隣り合う一組のコアは、一方のコアが螺旋状に配置され、他方のコアがクラッドの中心軸に一致或いは平行に配置されても良く、両方のコアが、それぞれ螺旋状に配置されても良い。
【0029】
なお、この場合において、螺旋状に配置される前記コアが、前記クラッドの前記中心軸の周りを回転するピッチは、一定の間隔であっても良く、不規則な間隔であっても良い。
【0030】
また、本明細書における「ピッチ」とは、ファイバの長手方向の単位長さ当たりの螺旋状のコアの回転回数を意味する。従って、例えば、螺旋状のコアが、ファイバの1mあたりにクラッドの中心軸の周りを1回転する場合、このコアのピッチは1回/mとなる。
【0031】
この場合においては、螺旋状に配置される前記コアが、前記クラッドの前記中心軸の周りを回転するピッチの間隔が、前記モードフィールド径の差が変化する間隔の非整数倍であることが好ましい。
【0032】
つまり、コアのモードフィールド径の変化の周期が、コアの捻じれの周期の非整数倍となる。このようにコアが螺旋状に回転するピッチの間隔と、モードフィールド径の差が変化する間隔とを不一致にすることにより、マルチコアファイバが非直線状に配置される場合において、螺旋状のコアが回転することにより、一組のコア同士の光の伝搬定数が、長い区間において一致しない作用と、モードフィールド径の差が変化することにより、一組のコア同士の光の伝搬定数が、長い区間において一致しない作用とが、それぞれ個別の場所で生じる。従って、一組のコア同士の光の伝搬定数を長い区間において一致しないようにすることができる。このため、特定のコア同士のクロストークが悪化することをさらに抑制することができ、クロストークのばらつきを収束することができる。
【0033】
前記螺旋状の前記コアは、前記クラッドの前記中心軸の周りを右回転と左回転とを繰り返すように配置されていることが好ましい。
【0034】
このようにコアが右回転と左回転を繰り返すように螺旋状に配置されることにより、ファイバを右回転、左回転を交互に捩じりながら製造することができるので、コアが片方向の回転のみを持った構造の光ファイバと比較すると、製造性が高まり、安価な螺旋状のコアを持つマルチコアファイバを提供できる。
【0035】
なお、本明細書において、コアが、クラッドの中心軸の周りを右回転と左回転とを繰り返して螺旋状に回転している場合における、「回転回数」とは、右回転の回転回数、及び、左回転の回転回数を共に正として加算する場合の回転回数を意味する。従って、例えば、螺旋状のコアが、ファイバの0.5mの区間においてクラッドの中心軸の周りを右側に0.5回転して、続く0.5mの区間において、今度は左側に0.5回転する場合、1m当たりの回転回数は、0.5+0.5=1回転であり、この場合のコアのピッチは1回/mとなる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、非直線的に設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制できるマルチコアファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図である。
【図2】図1のマルチコアファイバが曲がっている場合におけるマルチコアファイバの様子を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図である。
【図4】マルチコアファイバの変形例を示す図である。
【図5】マルチコアファイバの変形例を示す図である。
【図6】マルチコアファイバの曲げ方向を示す図である。
【図7】比較例1のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図8】比較例1のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図9】参考例1のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図10】参考例1のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図11】参考例2のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図12】参考例2のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図13】実施例1のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図14】実施例1のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図15】実施例2比較例1のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図16】実施例2のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図17】実施例3のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図18】実施例3のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図19】実施例4のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図20】実施例4のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図21】実施例5のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図22】実施例5のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図23】実施例6のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図24】実施例6のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図25】実施例7のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【図26】実施例7のマルチコアファイバの曲げ半径を変化させた場合におけるクロストークの最大値、最小値、平均値を示す図である。
【図27】実施例8のマルチコアファイバの曲げ直径を変化させた場合におけるクロストークの変化の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、ぞれぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図であり、具体的には、図1(A)は、マルチコアファイバの長手方向に垂直な断面における構造を示す図であり、図1(B)は、図1(A)のマルチコアファイバ1の中心を通るB−B線における屈折率分布を示す図である。なお、図1(B)は、マルチコアファイバが直線状である場合の屈折率分布を示している。
【0040】
図1(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11、12と、複数のコア11、12全体を包囲すると共にそれぞれのコア11、12の間を埋めて、それぞれのコア11、12の外周面を囲むクラッド30と、クラッド30の外周面を被覆する内側保護層31と、内側保護層31の外周面を被覆する外側保護層32と、を備える。
【0041】
本実施形態においては、クラッド30の中心軸に沿って1つのコア11が配置されると共に、この1つのコア11の周りに複数のコア12が等間隔で配置されている。また、コア11の周りに配置される複数のコア12は、クラッド30の中心軸に平行に配置されている。また、本実施形態においては、図1(A)に示すように、コアの数が全体で7つとされ、中心に1つのコア11が配置されると共に、他の6つのコア12がクラッド30外周に沿って配置されている。こうして、中心のコア11と外周側のそれぞれのコア12とが三角格子状に配置されている。従って、それぞれのコア11、12同士の中心間距離は、互いに等しくされている。このように配置された複数のコア11、12は、クラッド30の中心軸に対して対称とされている。つまり、マルチコアファイバ1をクラッド30の中心軸の周りに所定の角度回転させた場合に、外周側のそれぞれのコア12の回転後における位置は、回転前における外周側の他のコア12の位置となる。また、中心に配置されたコア11は、マルチコアファイバ1を中心軸の周りに回転させても動かない。このようにそれぞれのコア11、12がクラッド30の中心軸に対して対称となる位置に配置されることにより、それぞれのコア11、12の配置による光学的性質を均質にすることができる。
【0042】
このマルチコアファイバ1を構成するそれぞれの部材の大きさは、特に限定されるわけではないが、クラッド30の直径は、例えば、140μmとされ、内側保護層31の外径は、例えば、205μmとされ、外側保護層32の外径は、例えば、265μmとされる。また、それぞれのコア11、12の中心間距離は、特に限定されないが、例えば、39.2μmとされている。
【0043】
そして、本実施形態においては、互いに隣り合うそれぞれのコア11、12の直径d、dが、互いに異なるようにされている。中心に配置されるコア11の直径dは、例えば、8.0μmとされ、外周側に配置されるコア12の直径dは、中心に配置されるコア11の直径に対して、例えば、−5%〜5%異なるようにされ、さらに、互いに隣り合う外周側に配置されたコア12同士は、例えば、直径dが互いに−5%〜5%異なるようにされている。互いに隣り合うコア11、12の直径d、dが、物理的に僅かに異なっていても、コア11、12を伝播する光にしてみれば、それぞれのコア11、12の直径は、殆ど変わらず、略同等の光学特性となるが、このように互いに隣り合うコア11、12の直径d、dが、物理的に僅かに異なることにより、互いに隣り合うコア11、12のクロストークを抑制することができる。このように、互いに隣り合うコア11、12の直径の差は、直径の10%以内であることが、クロストークを抑制しつつ、それぞれのコアの光学的特性を同等にする観点から好ましい。また、互いに隣接するコア同士においてコアの直径が同一であっても、後述するコア同士の長手方向における特性変動の効果によりクロストークを抑制する事が可能である。
【0044】
さらに、クラッド30の中心に配置されるコア11の直径dは、マルチコアファイバ1の長手方向に対して変化せず、一定とされている。これに対して、クラッド30の外周側に配置されるそれぞれのコア12の直径dは、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化している。従って、中心に配置されるコア11と、この中心に配置されるコア11に隣り合うようにして外周側に配置されるそれぞれのコア12との直径の差(d−d)は、長手方向に沿って変化している。例えば、それぞれのコア12の直径dは、長手方向に沿って、7.6μm〜7.9μmの間で変化しており、中心に配置されるコア11と、この中心に配置されるコア11に隣り合うようにして外周側に配置されるそれぞれのコア12との直径の差(d−d)は、長手方向に沿って、0.1μm〜0.4μmの範囲で変化している。この変化の間隔は、特に限定されないが、ケーブルとして使用される長さの範囲で1周期以上の変化があれば十分である。海底ケーブルのように数十kmスパンで用いられる場合は、1回/kmの間隔で安定した効果が得られる。また、アクセス系に用いられるようなケーブルでは数十mから数百mのスパンで用いられることが想定されるため、0.1回/m〜1回/mのオーダーで変化があれば安定した効果が得られる。また、局内の配線のような数mオーダーでの配線用途には、1回/m〜10回/m程度の周期を与えることが望ましい。このため、変化の周期としては、0.001回/m〜10回/mの範囲であることが望ましい。
【0045】
さらに外周側のコア12の直径dは、長手方向に沿って、それぞれのコア12同士で互いに同様に変化するのではなく、互いに異なって変化している。例えば、外周側の特定のコア12の直径が、長手方向に沿って所定の周期で変化しているとすると、そのコア12と互いに隣り合う他のコア12の直径は、長手方向に沿って、特定のコア12の直径が変化する周期と異なる周期で変化してする。
【0046】
また、図1(B)に示すように、本実施形態においては、中心に配置されているコア11の屈折率がn、及び、外周側に配置されているそれぞれのコア12の屈折率nは、クラッド30の屈折率nよりも高くされており、さらに、外周側に配置されているそれぞれのコア12の屈折率nは、中心に配置されているコア11の屈折率がnよりも高くされている。なお、互いに隣り合うコア11、12の屈折率は、クラッド30に対する比屈折率差で約−10%〜10%であることが、クロストークを抑制しつつ、それぞれのコアの光学的特性を同等にする観点から好ましい。
【0047】
さらに、クラッド30の中心に配置されるコア11の屈折率nは、マルチコアファイバ1の長手方向に対して変動せず、一定とされている。これに対して、クラッド30の外周側に配置されるそれぞれのコア12の屈折率nは、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化している。従って、中心に配置されるコア11と、この中心に配置されるコア11に隣り合うようにして外周側に配置されるそれぞれのコア12との屈折率は、特に限定されないが、クラッドに対する比屈折率差においてコア11の比屈折率差の約−10%〜10%範囲で、長手方向に沿って変化している。この変化の間隔は、ケーブルとして使用される長さの範囲で1周期以上の変化があれば十分である。海底ケーブルのように数十kmスパンで用いられる場合は、1回/kmの間隔で安定した効果が得られる。また、アクセス系に用いられるようなケーブルでは数十mから数百mのスパンで用いられることが想定されるため、0.1回/m〜1回/mのオーダーで変化があれば安定した効果が得られる。また、局内の配線のような数mオーダーでの配線用途には、1回/m〜10回/m程度の周期を与えることが望ましい。このため、変化の周期としては、0.001回/m〜10回/mの範囲であることが望ましい。
【0048】
さらに外周側のコア12の屈折率nは、長手方向に沿って、それぞれのコア12同士で互いに同様に変化するのではなく、互いに異なって変化している。例えば、外周側の特定のコア12の屈折率が、長手方向に沿って所定の周期で変化しているとすると、そのコア12と互いに隣り合う他のコア12の屈折率は、長手方向に沿って、特定のコア12の屈折率が変化する周期と異なる周期で変化してする。従って、外周側のコア12において、互いに隣り合うコア12同士は、長手方向に沿って、互いに同じ屈折率である場所も存在するが、多くの場所において、互いに異なる屈折率となる。
【0049】
なお、外周側のコア12の屈折率nは、一定の間隔で変化しても良く、不規則な間隔で変化しても良い。
【0050】
なお、図1(B)においては、内側保護層31及び外側保護層32の屈折率については省略している。
【0051】
光ファイバのコアを伝播する光の伝搬定数は、コアの屈折率に基づくクラッドの屈折率に対する比屈折率差Δとコアの直径で規定される。ここで、i=1、2としたとき、nの屈折率を有するコア11、12のクラッド30に対する比屈折率差Δは、以下の式で定義される。なお、nはクラッド30の屈折率を示す。
【数1】

【0052】
上記のようにコア11の屈折率nは、マルチコアファイバ1の長手方向に対して一定とされているため、コア11のクラッド30に対する比屈折率差Δは、長手方向に沿って変化せず、例えば、0.40%とされる。一方、上記の様にそれぞれのコア12の屈折率nは、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化しているため、それぞれのコア12のクラッド30に対する比屈折率差Δは、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化しており、例えば、長手方向に沿って、0.38%〜0.42%の間で変化している。従って、互いに隣り合うコア11、12は、クラッドに対する比屈折率差の差(Δ−Δ)は長手方向に沿って変化しており、例えば、上記の様にコア11の比屈折率差Δが、0.40%であり、コア12の比屈折率差Δが、長手方向に沿って0.38%〜0.42%の間で変化している場合、互いに隣り合うコア11、12は、比屈折率差の差(Δ−Δ)が、長手方向に沿って−0.02%〜0.02%変化している。コア11の比屈折率差を基準にすると、この比屈折率差の差の変化量は、−5%〜5%となっている。
【0053】
そして、上記の様にコア11は、直径d及びクラッド30に対する比屈折率差Δが一定であるため、コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDは一定となる。一方、上記の様にコア11と隣り合うそれぞれのコア12は、直径d及びクラッド30に対する比屈折率差Δが、長手方向に沿って変化するため、コア12を伝播する光のモードフィールド径MFDはマルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化する。従って、コア11及びコア12を伝播するそれぞれの光のモードフィールド径の差(MFD−MFD)は、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化する。
【0054】
例えば、上記の様にコア11は、直径dが、8.0μmであり、比屈折率差Δが、0.40%である場合、コア11に波長1310nmの光が伝播するとき、この光のモードフィールド径MFDは、8.5μmとなり、コア11に波長1550nmの光が伝播するとき、この光のモードフィールド径MFDは、9.6μmとなる。また、例えば、上記の様に、それぞれのコア12は、直径dが長手方向に沿って、7.6μm〜7.9μmの間で変化しており、比屈折率差Δが、長手方向に沿って0.38%〜0.42%の間で変化している場合、コア12に波長1310nmの光が伝播するとき、この光のモードフィールド径MFDは、8.2μm〜8.6μmの間で変化し、コア12に波長1550nmの光が伝播するとき、この光のモードフィールド径MFDは、9.3μm〜9.7μmの間で変化する。これらの場合、マルチコアファイバ1のそれぞれのコア11、12に波長1310nmの光が伝播するとき、コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと、それぞれのコアを伝播する光のモードフィールド径MFDとの差(MFD−MFD)は、長手方向に沿って、−0.3μm〜0.1μmの間で変化する。同様に、それぞれのコア11、12に波長1550nmの光が伝播するとき、コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと、それぞれのコアを伝播する光のモードフィールド径MFDとの差は、長手方向に沿って、−0.3μm〜0.1μmの間で変化する。
【0055】
なお、コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと、それぞれのコアを伝播する光のモードフィールド径MFDとの差は、外周側のコア12の屈折率nが一定の間隔で変化する場合は、一定の間隔で変化し、外周側のコア12の屈折率nが不規則な間隔で変化する場合は、不規則な間隔で変化する。
【0056】
また、外周側のそれぞれのコア12の直径d及び屈折率nが、長手方向に沿って、それぞれのコア12同士で同様に変化するのではなく、互いに異なって変化している場合においては、外周側のそれぞれのコア12を伝播する光のモードフィールド径MFDが、互いに異なって変化している。
【0057】
このようなマルチコアファイバにおいて、コア11、12の材料としては、例えば、屈折率を上げるゲルマニウム等のドーパントが添加されたシリカガラスを挙げることができ、クラッド30の材料としては、何らドーパントが添加されていないシリカガラスを挙げることができる。さらに、内側保護層31及び外側保護層32の材料としては、紫外線硬化樹脂を挙げることができる。なお、コア12の材料がゲルマニウム等のドーパントが添加されたシリカガラスである場合、コア12は、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って、このドーパントの添加量が変化している。
【0058】
そして、本実施形態においては、それぞれのコア11、12は、光をシングルモードで伝播する。
【0059】
次に、本実施形態のマルチコアファイバ1の作用について説明する。
【0060】
光ファイバを曲げた場合の屈折率の変化は、例えば、等価屈折率法により求めることができる。すなわち、光ファイバが曲がっている場合の屈折率は、直線状の光ファイバの屈折率分布に(1+(r/R)cosθ)を掛けることにより、等価的に求めることができる。ここで、(r、θ)は、光ファイバの長手方向に垂直な平面における極座標であり、θ=0が光ファイバを曲げている状態における外側の方向であり、rは光ファイバの中心からの距離である。また、Rは、光ファイバの曲率半径を示す。
【0061】
ここで、図1(A)におけるB−B線に沿った方向にマルチコアファイバ1を曲げることを考える。この場合、B−B線がθ=0を含む線である。図2は、このようにマルチコアファイバ1が曲がっている場合におけるマルチコアファイバ1の様子を示す図である。具体的には、図2(A)は、マルチコアファイバ1の長手方向に垂直な断面における構造を示す図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B線における等価屈折率の分布を示す図である。なお、図2(B)においては、理解の容易のため、図1(B)に示すマルチコアファイバ1が直線状の場合の屈折率分布を破線で示す。図2に示すように、B−B線に沿ってマルチコアファイバ1を曲げたとき、マルチコアファイバ1の中心が原点となり、B−B線上における曲げの外側の方向がθ=0となり、B−B線上における曲げの内側の方向がθ=180度となる。この場合、上式より、マルチコアファイバ1の曲げの外側のコアやクラッドの等価屈折率が高くなり、曲げの内側のコアやクラッドの等価屈折率が低くなる。
【0062】
従って、上述のように外周側のコア12が中心のコア11よりも屈折率が高い場合、マルチコアファイバ1の曲げの曲率半径を特定の大きさにすると、中心のコア11の実効屈折率と、外周側のコア12の内、マルチコアファイバ1の曲げ内側に位置するコアの実効屈折率とが一致する場合がある。また、特に図を用いて説明しないが、上述の説明と異なり、中心のコア11が外周側のコア12よりも屈折率が高くされている場合においては、中心のコア11の実効屈折率と、外周側のコア12の内、マルチコアファイバ1の曲げ外側に位置するコアの実効屈折率と、特定のコア12の実効屈折率とが一致する場合がある。
【0063】
なお、上述の説明においては、理解の容易のために、実効屈折率を実際のガラスの屈折率と同じように説明したが、実際には、導波される光の断面中の広がりを含めて決定されるパラメータである。なお、実効屈折率は、伝搬定数と1対1の関係にある。
【0064】
このように、中心のコア11の実効屈折率と外周側のコア12の実効屈折率とが、曲げにより変化するため、本実施形態の様に中心のコア11と外周側のコア12の直径を互いに変える場合においても、中心のコア11と外周側のコア12における特定のコア12の伝搬定数が一致する場合がある。
【0065】
しかし、本実施形態のマルチコアファイバ1においては、上述のように、中心のコア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと外周側のコア12を伝播する光のモードフィールド径MFDとの差が、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化する。つまり、中心のコア11の伝搬定数と外周側のコア12の伝搬定数との差が、長手方向に沿って変化する。このため、上記の様に、マルチコアファイバ1を曲げることにより、中心のコア11と外周側のコア12における特定のコア12の伝搬定数が一致する場合においても、この様な状態は、マルチコアファイバ1の長い区間において維持されない。従って、本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、螺旋状や湾曲した状況で設置される場合においても、この互いに隣り合う中心に配置されるコア11と外周側のコア12とのクロストークが悪化することを抑制することができる。
【0066】
さらに、コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと、それぞれのコアを伝播する光のモードフィールド径MFDとの差は、一定の間隔で変化しても良いし、不規則な間隔で変化してもよい。コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと、それぞれのコアを伝播する光のモードフィールド径MFDとの差が、不規則な間隔で変化する場合は、マルチコアファイバ1が螺旋状に巻かれて使用される等、規則的な形状で曲げられて設置される場合に、クロストークが規則的に悪化することを防止することができる。
【0067】
さらに、外周側のそれぞれのコア12を伝播する光のモードフィールド径MFDが、互いに異なって変化する場合においては、外周側のそれぞれのコア12同士のクロストークが悪化することを防止することができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、中心のコア11の直径dが一定であり、外周側のそれぞれのコア12の直径dがマルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化し、さらに、中心のコア11の屈折率nが一定で、外周側のそれぞれのコア12の屈折率nがマルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化することで、中心のコア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと外周側のコア12を伝播する光のモードフィールド径MFDとの差が、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化するものとした。しかし、本実施形態は、このような形態に限らず、例えば、モードフィールド径MFDとモードフィールド径MFDとの差が、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化する限りにおいて、コア11の直径dや屈折率nがマルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化して、コア11を伝播する光のモードフィールド径MFDがマルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化しても良い。さらに、コア11の直径dや屈折率n、及び、それぞれのコア12の直径dや屈折率nの内、少なくとも一つのパラメータが、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化することで、モードフィールド径MFDとモードフィールド径MFDとの差が、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化しても良い。
【0069】
このようなマルチコアファイバ1は、次の様に製造することができる。
【0070】
まず、コア11及びコア12となるコア用ガラス部材、及び、クラッド30もしくはクラッド30の一部となるクラッド用ガラス部材を準備する。このコア11となるコア用ガラス部材は、長手方向において、一定の直径で、一定の屈折率とされ、コア12となるコア用ガラス部材は、長手方向に直径及び屈折率が変化するものとする。このコア用ガラス部材の直径及び屈折率は、後述の様に光ファイバ用母材を紡糸して、マルチコアファイバ1とした場合に、マルチコアファイバ1における外周側のコア12の直径の変化及び屈折率の変化に合わせて、変化されている。次に、準備したコア11及びコア12となるコア用ガラス部材をクラッド用ガラス部材中に配置して、コラプスすることにより、断面における配置が、図1(A)に示す、コア11、12及びクラッド30と略相似形のファイバ用母材を作製する。そして、このファイバ用母材を加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバ1とする。なお、準備したコア11及びコア12となるコア用ガラス部材をクラッド用ガラス部材中に配置して、これらのガラス部材をコアラプスしながら紡糸しても良い。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。図3は、本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバ2を示す図である。なお、図3においては、理解の容易のため、クラッド30を破線で示し、内側保護層31、外側保護層32は省略し、マルチコアファイバ1の長手方向と径方向の縮尺を実際のマルチコアファイバと変えて記載している。
【0072】
本実施形態においては、図2に示すように、中心のコア11は、第1実施形態と同様に、クラッド30の中心軸に沿って配置されているが、外周側のコア12は、クラッド30の中心軸の周りを、互いに同じ方向に回転するように螺旋状に配置されている点において、第1実施形態のマルチコアファイバ1と異なる。なお、本実施形態のマルチコアファイバ2における中心のコア11及び外周側のコア12の直径や屈折率は、第1実施形態におけるマルチコアファイバ1の中心のコア11及び外周側のコア12の直径や屈折率と同様である。図2に示すように、外周側のコア12は、矢印Aの方向に沿って、右回転するようにして、配置されている。つまり、マルチコアファイバ2においては、このようにコア12が螺旋状に形成された状態で固化しており、コア12の永久捻れが付与されている。
【0073】
なお、図2においては、螺旋状である外周側のコア12は、クラッド30の中心軸の周りを同じピッチでしている。つまり、マルチコアファイバ2の長手方向における何れの区間においても、マルチコアファイバ2の単位長さ当たりのコア12の回転回数が一定とされている。
【0074】
しかし、マルチコアファイバ2においては、螺旋状のコア12は、クラッド30の中心軸の周りを回転するピッチが変化する区間を有していても良い。つまり、例えば、ある所定の区間において、螺旋状のコア12の回転のピッチが、1回/mであり、他の区間で0.5回/mであるようにしていても良く、更に他の区間で、他のピッチで回転するようにしても良い。更に、螺旋状のコア12は、ピッチが常に変化していても良い。
【0075】
また、特に図示しないが、螺旋状のコア12は、クラッド30の中心軸の周りを右回転と左回転とを繰り返していても良い。つまり、螺旋状のコア12は、所定の区間において、右回転するように配置され、その所定の区間と隣り合う区間において、左回転するように配置されても良い。さらにこの場合においては、コア12が右回転する区間と左回転する区間との間において、コア12がクラッド30の軸中心に回転せず、コア11と平行に配置されても良い。また更に、螺旋状のコア12が、右回転するそれぞれの区間の長さ、及び、左回転するそれぞれの区間の長さが、一定ではないこととしても良い。
【0076】
そして、コア12は、クラッド30の中心軸の周りを平均1回/m以上のピッチで回転していることが好ましく、平均4回/m以上のピッチで回転していることがより好ましい。なお、上記のように、コア12が、右方向、左方向のそれぞれに回転している場合において、このピッチは、右方向の回転数、及び、左方向の回転数を共に正として加算して、ピッチを計算する。例えば、螺旋状のコア12が、マルチコアファイバ2の0.5mの区間においてクラッド30の中心軸の周りを右側に0.5回転して、続く0.5mの区間において、今度は左側に0.5回転する場合、1m当たりの回転回数は、0.5+0.5=1回であり、この場合のコア12の回転のピッチは1回/mとなる。
【0077】
さらに、マルチコアファイバ2においては、螺旋状に配置される外周側のコア12が、クラッド30の中心軸の周りを回転するピッチの間隔が、上述のコア11のモードフィールド径MFDとコア12のモードフィールド径MFDの差が変化する間隔の整数倍としても良いが、非整数倍であることが好ましい。
【0078】
次に、本実施形態のマルチコアファイバ2の作用について説明する。
【0079】
ここで、再び図2を用いて説明をする。図2において、マルチコアファイバ2を括弧書きで示す。第1実施形態と同様にして、図1(A)におけるマルチコアファイバ2の中心を通るB−B線に沿った方向にマルチコアファイバ2を曲げることを考える。図3に示すように、B−B線に沿ってマルチコアファイバ2を曲げたとき、マルチコアファイバ2の中心が原点となり、B−B線上における曲げの外側の方向がθ=0となり、B−B線上における曲げの内側がθ=180度となる。この場合、第1実施形態において説明したように、曲げの内側のコアやクラッドの等価屈折率が低くなる。
【0080】
従って、第1実施形態で説明したように、中心のコア11の実効屈折率と、外周側の特定のコア12の実効屈折率とが一致する場合がある。
【0081】
しかし、本実施形態のマルチコアファイバ2においては、螺旋状に配置されたコア12のマルチコアファイバ2の長手方向に垂直な断面における位置は、マルチコアファイバ2の長手方向に沿って変化する。従って、このようにマルチコアファイバが特定の曲率半径で曲げられて設置されることで、図2に示すように、中心のコア11の屈折率と、外周側のコア12の内、曲げ方向の内側に位置する1つのコア12の実効屈折率とが一致する区間が生じたとしても、マルチコアファイバ2の長手方向に沿って、この中心のコア11と実効屈折率が一致した外周側の特定のコア12と、中心のコア11との位置関係が変化するため、この特定のコア12と中心のコア11との実効屈折率は、長い区間において一致しない。また、第1実施形態のマルチコアファイバ1と同様に、中心のコア11を伝播する光のモードフィールド径MFDと外周側のコア12を伝播する光のモードフィールド径MFDとの差が、マルチコアファイバ1の長手方向に沿って変化するので、中心のコア11と外周側のコア12における特定のコア12の伝搬定数が一致する状態は、長い区間において維持されない。従って、本実施形態のマルチコアファイバ2によれば、第1実施形態のマルチコアファイバ1よりもさらに、この特定のコア12と中心のコア11とのクロストークが悪化することを抑制することができる。このように本実施形態のマルチコアファイバ2によれば、湾曲した状況で設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制することができるため、コア全体として、クロストークのばらつきを抑制することができる。
【0082】
さらに、上述のように、螺旋状に配置される外周側のコア12が、クラッド30の中心軸の周りを回転するピッチの間隔が、上述のコア11のモードフィールド径MFDとコア12のモードフィールド径MFDの差が変化する間隔の非整数倍であることが好ましい。この場合においては、コア12が回転するピッチと、モードフィールド径MFDとモードフィールド径MFDの差が変化する間隔とを設定することにより、マルチコアファイバ2が非直線状に配置される場合において、螺旋状のコア12が回転することにより、中心のコア11と外周側のコア12との伝搬定数が、長い区間において一致しない作用と、モードフィールド径MFDとモードフィールド径MFDとの差が変化することにより、コア11とコア12との光の伝搬定数が、長い区間において一致しない作用とが、それぞれ個別の場所で生じる。従って、中心のコア11と外周側のコア12との光の伝搬定数をより短い区間で一致しないようにすることができる。このため、特定のコア同士のクロストークが悪化することをさらに抑制することができ、また、クロストークのばらつきを収束することができる。
【0083】
なお、上記説明においては、外周側の特定のコア12の実効屈折率と、中心のコア11の実効屈折率とが一致する場合について説明したが、例えば、外周側のコア12同士において、実効屈折率が一致する場合においても、同様にしてそれぞれのコア12の実効屈折率は、長い区間において一致しない。従って、それぞれのコア12同士のクロストークが悪化することを抑制することができる。
【0084】
このようなマルチコアファイバ2の製造は次の様に行う。
【0085】
まず、第1実施形態と同様にしてファイバ用母材を作製する。そして、第1実施形態と同様にして、ファイバ用母材を加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバとし、このマルチコアファイバを内側保護層31、外側保護層32で被覆する。このとき、紡糸された直後のマルチコアファイバを軸中心に回転させる。このようにマルチコアファイバを軸中心に回転させることで、ファイバ用母材から紡糸されて固化する前のマルチコアファイバの半製体に対して、この軸中心の回転力が伝わり、図2に示すように、外周側のコア12が、クラッド30の中心軸の周りを回転するように螺旋状に形成される。別言すれば、外周側のコア12に永久捻じれが付与される。
【0086】
このようにコアが螺旋状に配置されたマルチコアファイバを製造することにより、例えばファイバのテープ化やケーブル化、敷設作業、および実環境下において継続的・永久的にクロストークが悪化することを抑制することができる。さらに、機械的信頼性の観点でも、このように予めマルチコアファイバのコアを螺旋状に配置することが望ましい。
【0087】
紡糸された直後のマルチコアファイバを軸中心に回転させるには、例えば、紡糸されたマルチコアファイバが、最初に接触するターンプーリーをマルチコアファイバの軸中心に回転移動させれば良い。このターンプーリーを一方向に回転させることにより、コア12がクラッド30の中心軸の周りを一方の方向に回転する形状となる。また、ターンプーリーを一方向の回転させずに、揺動回転させることにより、コア12がクラッド30の中心軸の周りを右回転と左回転とを交互に回転する形状となる。
【0088】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
例えば、上記実施形態おいて、コアの数を7つとしたが、コアは複数であればその数に特に制限はない。また、例えば、図1や図3において、外周側のコア12が1本でも良く、7本以上であっても良い。さらに、コア全体の数が複数である限りにおいて、クラッド30の中心軸に沿ったコア11は必須の要件ではない。例えば、クラッド30に正三角形を描くように3つのコアが配置され、互いに隣り合うコアを伝播する光のモードフィールド径MFDが、長手方向に沿って互いに異なるように変化しても良く、必要に応じて、これらのコアが互いに螺旋状に配置されても良い。また、本発明のマルチコアファイバは、複数のコアが、クラッド30の中心軸に対して対称とされている必要はなく、例えば、複数のコアが5行×4列で、格子状に配列されるものであっても良い。
【0090】
このように本発明のマルチコアファイバは、複数のコアを備えて、このコアの内、互いに隣り合う少なくとも一組のコアを伝播するそれぞれの光のモードフィールド径の差が、長手方向に沿って変化する限りにおいて、使用用途に応じて、適宜変形が可能である。図4は、このようなマルチコアファイバの変形例を示す図である。
【0091】
図4(a)は、中心に1つのコア11が配され、このコアを取り囲むように4つのコア12が配されて、コア11とコア12との中心間距離が、それぞれ等しくされたマルチコアファイバを示す図である。図4(b)は、図1(A)に示す上記実施形態のマルチコアファイバ1における外周側のコア12の更に外周側に6つのコア13が設けられており、それぞれのコア11〜13が三角格子状に並べられて、全体として、星形に配置されている例を示す図である。また、図4(c)は、図1(A)に示す上記実施形態のマルチコアファイバ1における外周側のコア12の更に外周側に12本のコア13が互いに均等な間隔で設けられて、19本のコアが三角格子状に配されることで、最密充填されている例を示す図である。
【0092】
また、図5(a)は、図1(A)に示す上記実施形態のマルチコアファイバ1におけるそれぞれのコア11、12が、複数の空孔14によって囲まれている例を示す図である。この場合、それぞれの空孔14の働きにより、コア11、12に光がより強く閉じ込められて、互いに隣り合うコア同士のクロストークをより抑制することができる。また、図5(b)は、図1(A)に示す上記実施形態のマルチコアファイバ1におけるそれぞれのコア11、12が、クラッド30と同様の屈折率を有する第1クラッド15で囲まれ、この第1クラッド15がクラッド30よりも屈折率が低い第2クラッド16で囲まれている例を示す図である。つまり、コア11(12)と第1クラッド15と第2クラッド16によるコア要素が、いわゆるトレンチ型とされることにより、コア11、12に光がより強く閉じ込められて、互いに隣り合うコア同士のクロストークをより抑制することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0094】
(比較例1)
中心に1つのコアが配置され、このコアを取り囲むように外周側に6つのコアが配置されて、それぞれのコア同士の中心間距離がそれぞれ等しいマルチコアファイバを想定してシミュレーションを行った。このマルチコアファイバにおいては、それぞれのコアがマルチコアファイバの中心軸に一致或いは平行に配置されるものとした。
【0095】
また、このマルチコアファイバにおいては、それぞれの中心のコアの直径を7.734μmとして、外周側のコアの直径をそれぞれ7.734μmとし、それぞれのコアの中心間距離Lを35.0μmとし、クラッドの外径を140μmとした。また、中心のコアのクラッドに対する比屈折率差Δをそれぞれ0.40%として、外周側のコアのクラッドに対する比屈折率差を互いに等しくして、中心のコアよりも0.01%高くした。
【0096】
このマルチコアファイバのそれぞれのコアに波長が1.55μmの光を伝播させて、マルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。図6は、マルチコアファイバの曲げ方向を示す図である。本例においては、X軸に沿ってマルチコアファイバを曲げている。具体的には、まず、図6に示すようにマルチコアファイバの外周側の1つのコアが、折り曲げ方向であるX軸に鉛直なY軸から約15度だけ右回りに回転するように、マルチコアファイバを軸中心に回転させた。そして、マルチコアファイバの原点上に位置する部分を固定して、この固定された部分を基準としてX軸Y軸に垂直に延在するマルチコアファイバの長手方向の一部をX軸のマイナス方向に湾曲させた。この結果を図7に示す。なお、図7において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図8に示す。なお、図8において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図7、8に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0097】
図7、図8に示すように、本比較例のマルチコアファイバは、外周側のコアにおける、特定のコアが、特に曲げ直径が約700mmにおいて、クロストークが悪い結果となった。
【0098】
(参考例1)
外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していること以外は、比較例1のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。このマルチコアファイバにおいては、捻じれのピッチを0.01回/mとした。
【0099】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図9に示す。なお、図9において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図10に示す。なお、図10において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図9、図10に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0100】
図9、図10に示すように、本参考例のマルチコアファイバは、外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していることにより、比較例1のマルチコアファイバよりも、特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪くなることが低減される結果となった。
【0101】
(参考例2)
捻じれのピッチを1回/mとしたこと以外は、参考例1のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。
【0102】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図11に示す。なお、図11において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図12に示す。なお、図12において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図11、図12に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0103】
図11、図12に示すように、本参考例のマルチコアファイバは、外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していることにより、比較例1のマルチコアファイバよりも、特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪くなることが低減される結果となり、さらに参考例1よりも、それぞれのクロストークのばらつきが集束される結果となった。
【0104】
(実施例1)
外周側のコアの比屈折率差が長手方向に沿って3回/mで正弦波状に変化し、その変化率が0.005%であること以外は、比較例1のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。このように外周側のコアの比屈折率差が、長手方向に沿って変化することにより、クラッドの中心に配置されるコアを伝播する光のモードフィールド径MFDと、外周側に配置されるコアを伝播する光のモードフィールド径MFDとの差が、マルチコアファイバの長手方向に沿って変化する。
【0105】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図13に示す。なお、図13において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図14に示す。なお、図14において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図13、図14に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0106】
図13、図14に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、外周側のコアの比屈折率差が変化することにより、比較例1のマルチコアファイバよりも、特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪くなることが低減される結果となった。
【0107】
(実施例2)
外周側のコアの比屈折率差の変化率が0.01%であること以外は、実施例1のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。
【0108】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図15に示す。なお、図15において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図16に示す。なお、図16において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図15、図16に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0109】
図15、図16に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、外周側のコアの比屈折率差が実施例1よりも大きく変化することにより、実施例1のマルチコアファイバよりも、特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪くなることがさらに低減される結果となった。
【0110】
(実施例3)
外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していること以外は、実施例1のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。このマルチコアファイバにおいては、捻じれのピッチを3回/mとした。
【0111】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図17に示す。なお、図17において、波線はそれぞれのコアのクロストークを示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図18に示す。なお、図18において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図17、図18に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0112】
図17、図18に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していることにより、実施例1よりも特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪くなることがさらに低減され、実施例1よりもそれぞれのクロストークのばらつきが集束される結果となった。
【0113】
(実施例4)
外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していること以外は、実施例2のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。このマルチコアファイバにおいては、捻じれのピッチを3回/mとした。
【0114】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図19に示す。なお、図19において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図20に示す。なお、図20において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図19、図20に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0115】
図19、図20に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、外周側のコアがクラッドの中心軸の周りを螺旋状に回転していることにより、実施例2よりも特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪化することがさらに低減され、実施例2よりもそれぞれのクロストークのばらつきが集束される結果となった。
【0116】
(実施例5)
外周側のコアの比屈折率差が長手方向に沿って2回/mで変化し、捻じれのピッチを1回/mとして、(コアの比屈折率差の変化の周期)/(コアの捻じれの周期)=2.00としたこと以外は、実施例4のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。
【0117】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図21に示す。なお、図21において、波線はそれぞれのコアのクロストークの値を示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図22に示す。なお、図22において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図21、図22に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0118】
図21、図22に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、(コアの比屈折率差の変化の周期)が(コアの捻じれの周期)の丁度2倍であり、曲げ直径が大きな領域(直線に近い領域)で、若干集束が乱れる結果となった。
【0119】
(実施例6)
(コアの比屈折率差の変化の周期)/(コアの捻じれの周期)=2.01としたこと以外は、実施例5のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。
【0120】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図23に示す。なお、図23において、波線はそれぞれのコアのクロストークを示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図24に示す。なお、図24において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図23、図24に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0121】
図23、図24に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、(コアの比屈折率差の変化の周期)が(コアの捻じれの周期)の整数倍よりも若干大きいため、クロストークが実施例5よりも集束する結果となった。
【0122】
(実施例7)
(コアの比屈折率差の変化の周期)/(コアの捻じれの周期)=2.02としたこと以外は、実施例5のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。
【0123】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べた。この結果を図25に示す。なお、図25において、波線はそれぞれのコアのクロストークを示し、実線は、平均値を示す。さらに、マルチコアファイバを曲げる方向を維持しつつ、マルチコアファイバを軸中心に回転させて、それぞれの曲げ直径において、クロストークの最大値、及び、最小値、及び、平均値を調べた。この結果を図26に示す。なお、図26において、波線は、それぞれ最大値、最小値を示し、実線は、平均値を示す。また、図25、図26に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0124】
図25、図26に示すように、本実施例のマルチコアファイバは、(コアの比屈折率差の変化の周期)/(コアの捻じれの周期)が、実施例6よりもさらに大きいため、クロストークが実施例6よりもさらに集束する結果となった。
【0125】
(実施例8)
次に外周側のコアにおいて、比屈折率差が長手方向に沿って0.6回/mで正弦波状に変化し、その変化率が0.02%であり、1回/mの周期の捻じれを有する条件としたこと以外は、比較例1のマルチコアファイバと同様の条件のマルチコアファイバを想定した。 さらに、中心のコアと外周側のコアとの比屈折率差の差を0.0%,0.0025%,0.005%,0.01%,0.02%,0.025%,0.03%,0.04%,0.05%と変化させた。なお、基準となる比屈折率差が0.4%(中心のコアのクラッドに対する比屈折率差が0.4%)であるので、比屈折率差の差が0.05%とは、外周側のコアの比屈折率差として0.45%が設定されたことを意味する。
【0126】
そして、比較例1と同様の光をそれぞれのコアに伝播させて、比較例1と同様にしてマルチコアファイバを徐々に曲げたときにおける、中心のコアと外周側のコアとのクロストークの変化を調べ、さらに、ぞれぞれの比屈折率差の差におけるすべての外周側のコアの平均のクロストークを調べた。その結果を図27に示す。尚、図27に示すクロストークは、光を100m伝搬した後の値である。
【0127】
図27に示すように、外周側のコアの比屈折率差の長手方向に沿った変化量(0.02%)が、中心のコアの比屈折率差と外周側のコアの比屈折率差との差よりも、大きく変化するマルチコアファイバ(中心のコアと外周側のコアとの比屈折率差の差が、0.0%,0.0025%,0.005%,0.01%,0.02%のマルチコアファイバ)をグループAとすると、グループAのマルチコアファイバにおいては、曲げ直径が100mmから10000mmという非常に広い範囲にわたりクロストークの変化量を低減できる結果となった。
【0128】
また、図27に示すように、外周側のコアの比屈折率差が長手方向に沿った変化量(0.02%)が、中心のコアの比屈折率差と外周側のコアの比屈折率差との差よりも、小さく変化するマルチコアファイバをグループB(中心のコアと外周側のコアとの比屈折率差の差が、0.025%,0.03%,0.04%,0.05%)とすると、グループBのマルチコアファイバにおいては、曲げ直径が大きい領域において、よりクロストークが改善される結果となった。さらに図7に示す比較例1のマルチコアファイバのように長手方向の特性変動が無い場合に存在する特定の曲げ直径でのクロストークの急激な劣化が発生しなくなる。
【0129】
以上より、本発明の様に、互いに隣り合う少なくとも一組のコアを伝播するそれぞれの光のモードフィールド径の差が、長手方向に沿って変化するマルチコアファイバによれば、非直線的に設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制できることが分かった。
【0130】
さらに、本発明のマルチコアファイバにおいて、互いに隣り合う少なくとも一組のコアにおける少なくとも一方のコアが、クラッドの中心軸の周りを回転するように螺旋状に配置されることにより、さらに特定のコアのクロストークが特定の曲げ直径で悪くなることが低減され、クロストークのばらつきが集束されることが分かった。そして、この場合、コアのモードフィールド径の変化の周期が、コアの捻じれの周期の非整数倍であれば、クロストークがより集束することが分かった。
【0131】
また、互いに隣り合う少なくとも一組のコアの比屈折率差の差は、クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する変化量よりも大きい方が、曲げ直径が大きい領域において、よりクロストークが改善されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上説明したように、本発明によれば、非直線的に設置される場合においても、特定のコア同士のクロストークが悪化することを抑制できるマルチコアファイバが提供される。
【符号の説明】
【0133】
1、2・・・マルチコアファイバ
11、12・・・コア
14・・・空孔
15・・・第1クラッド
16・・・第2クラッド
30・・・クラッド
31・・・内側保護層
32・・・外側保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアと、
それぞれの前記コアの外周面を囲むクラッドと、
を備え、
前記複数のコアの内、互いに隣り合う少なくとも一組のコアの伝搬定数の差が、長手方向に沿って変化する
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアを伝播するそれぞれの光のモードフィールド径の差が、長手方向に沿って変化することを特徴とする請求項1のマルチコアファイバ。
【請求項3】
前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアは、前記クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化することを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアの比屈折率差の差は、前記クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する変化量よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアの比屈折率差の差は、前記クラッドに対する比屈折率差の差が長手方向に沿って変化する変化量よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアは、直径の差が長手方向に沿って変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項7】
前記伝搬定数の差は、長手方向に沿って一定の間隔で変化することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項8】
前記伝搬定数の差は、長手方向に沿って不規則な間隔で変化することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項9】
前記互いに隣り合う少なくとも一組のコアにおける少なくとも一方のコアが、前記クラッドの中心軸の周りを回転するように螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項10】
螺旋状に配置される前記コアが、前記クラッドの前記中心軸の周りを回転するピッチの間隔が、前記モードフィールド径の差が変化する間隔の非整数倍であることを特徴とする請求項9に記載のマルチコアファイバ。
【請求項11】
前記螺旋状の前記コアは、前記クラッドの前記中心軸の周りを右回転と左回転とを繰り返すように配置されていることを特徴とする請求項9または10に記載のマルチコアファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−211964(P2012−211964A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76913(P2011−76913)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人情報通信機構、「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】