説明

マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー及びその製作方法

【課題】本発明は、質量印加の効果と表面応力の変化による効果とを同時に定量的に分析可能なマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー及びその製作方法を開示する。
【解決手段】圧電マイクロカンチレバー共振子を用いた物理/生化学センサーにおいて、前記圧電マイクロカンチレバー共振子は、感知過程で発生する吸着された感知対象物質によるセンサー表面の質量変化だけでなく、表面応力の変化を区別して定量分析することができるように、互いに異なるサイズの多数の圧電マイクロカンチレバー共振子らが配列される構造で構成されることによって、質量印加の効果と共に表面応力の変化による効果とを同時に定量的に分析することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー(単に、物理センサーまたは生化学センサーと称する場合がある。)及びその製作方法に関し、より詳しくは、感知過程で得られる共振周波数の変化を測定して感知対象物質の吸着による質量印加の効果と表面応力の変化による効果とを同時に定量的に分析することによって、様々な応用分野で感知対象物質の分析に利用することができるように、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー及びその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の科学技術開発は、ヒト生活の質的向上を究極の目的としている。特に、生命工学及び環境分野において、疾病の治療に先立って、疾病を予め予測するか、または早期に診断し、ヒト寿命に直接的な影響が与えられる各種の問題を効率よく制御しようとする研究が活発に進行されている。
【0003】
このような研究動向として、有害環境物質、または疾病診断のための人体バイオマーカー及び病原体のような感知対象物質の存在可否や、特定生化学反応の可否を迅速かつ簡単に検出するためのマイクロ精密センサーシステムの研究開発が例えられる。空気、水生環境または人体内に存在する感知しようとする生化学物質及び有害公害物質の濃度が極めて薄い場合、これを既存の分析法で分析するためには、試料の抽出、濃縮及び分析のために、高コスト、大型分析装置及びサンプルの全処理に多大な時間が所要される等、多くの短所を克服しなければならない。試料の抽出及び濃縮のようなサンプルの全処理過程なしにリアルタイムで対象物質を分析するためには、分析に用いられるセンサー素子の感度が単分子レベルの質量が感知可能でなければならない。
【0004】
このようなセンサーの一つである圧電駆動要素が集積したマイクロカンチレバーは、交流電界によって自ら駆動することができ、共振周波数の支点で圧電効果によって表れる交流信号の大きな変化を電気的測定によって迅速に読み取ることができる。これと関連した技術資料は、本研究グループから発表した特許と研究論文を始め、既に多くの研究者らによって報告されている。
【0005】
圧電方式や他の駆動原理を利用して共振周波数で作動するマイクロカンチレバー共振子センサーは、感知対象物質を感知する実際の応用において、感知過程で発生するカンチレバー表面の質量変化をカンチレバーの共振周波数の変化の形態で感知信号に出力し、これを分析して結果を得る。より幅広い適用、かつ、より正確な分析のために、単一カンチレバーより複数のカンチレバーが配列されたアレイ状の素子が望ましい。一方、カンチレバーの共振周波数は、感知過程で発生する表面質量の変化以外に、表面応力の変化によっても減少するかまたは増加するようになる。しかし、単一カンチレバー、または同一なサイズのカンチレバーが複数に配列されたアレイ状の素子を用いる場合、感知信号である共振周波数の変化において、感知過程で発生する質量印加の効果及び表面応力の変化の効果を区別して分析することができないという限界がある。表面応力の変化を確認するために、光学的な方法で表面応力の変化によるカンチレバーの機械的な曲げ具合を測定して分析することができるが、共振周波数の変化を主な感知信号として活用する場合、質量印加の効果と表面応力の効果が同時に作用するため、区別分析が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような点を鑑みて導出した本発明の目的は、感知対象物質の吸着による質量印加の効果と表面応力の変化による効果とを同時に定量的に分析することのできる、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー及びその製作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような本発明の目的を達成するためのマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーは、圧電マイクロカンチレバー共振子を用いた物理/生化学センサーにおいて、前記圧電マイクロカンチレバー共振子は、感知過程で発生する吸着された感知対象物質によるセンサー表面の質量変化だけでなく、表面応力の変化を区別して定量分析することができるように、互いに異なるサイズの多数(複数)の圧電マイクロカンチレバー共振子が配列される構造からなる特徴がある。
【0008】
なお、前記圧電マイクロカンチレバー共振子アレイは、シリコン基板の上部に形成され、長さが段階的に縮小されて配列される多数の窒化シリコン膜カンチレバー;前記窒化シリコン膜カンチレバーの上部に形成される酸化シリコン膜;前記シリコン酸化膜の上部に所定のサイズで形成される下部電極;前記下部電極の上部に圧電駆動のために形成される圧電駆動薄膜層;前記下部電極の上部及び前記圧電駆動薄膜層の一部領域の上部に電極間の絶縁のために形成される絶縁層;前記絶縁層の上部及び前記圧電駆動薄膜層の上部に形成される上部電極、及び前記上部電極及び下部電極に素子の駆動のための電界を印加するように連結される電極ライン;を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明の目的を達成するためのマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作方法において、(a)シリコン基板の上部及び下部にそれぞれの前記窒化シリコン膜カンチレバーを蒸着するステップ;(b)上部側の前記窒化シリコン膜カンチレバーの上部に酸化シリコン膜を蒸着するステップ;(c)前記酸化シリコン膜の上部全面に接合層を含む下部電極を形成するステップ;(d)前記下部電極の上部全面に圧電駆動のための圧電駆動薄膜層を形成するステップ;(e)前記形成された圧電駆動薄膜の一部を蝕刻して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーに集積されるマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイを形成するステップ;(f)前記形成されたマルチサイズの圧電駆動材料アレイの下部にある下部電極の一部を蝕刻して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーに集積されるマルチサイズの下部電極アレイ及び駆動電圧印加のための電極ライン及びパッドを形成するステップ;(g)前記形成されたマルチサイズの下部電極アレイ及びマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイの一部領域の上部に上下部電極間の絶縁のための絶縁層を形成するステップ;(h)前記絶縁層の上部及びマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイの上部に、マルチサイズの上部電極アレイと駆動電圧印加のための電極ライン及びパッドを形成するステップ;(i)前記下部窒化シリコン膜カンチレバーの一部を除去するステップ;(j)前記(i)ステップで露出したシリコン基板を蝕刻するステップ;(k)前記シリコンが蝕刻された素子の上部窒化シリコン膜の一部を除去して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーを形成するステップ;を実施して製作されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーは、様々な感知過程で発生する吸着された感知対象物質によるセンサー表面の質量変化だけでなく、表面応力の変化を区別して分析可能という長所を有する。つまり、外部から極少量の感知対象物質の濃度に迅速に反応し、共振周波数の変化によって即時に感知可能であるため、迅速な回答速度と高い感度とを有するという長所があり、共振周波数の変化を分析することによって、生化学反応による表面吸着質量の増加以外に感知過程による表面応力の変化の影響が分かるため、感知結果において、より広範囲な情報を確保することができ、正確な感知結果を得ることができるという効果がある。
【0011】
また、本発明におけるセンサプラットホームを生化学分野に応用する場合、感知対象物質の存在有無を判断することはもちろん、感知物質と感知対象物質との反応、感知対象物質間の反応状態が直・間接的に確認加能な幅広い感知信号を確保することができるという効果がある。
【0012】
一方、本発明におけるセンサプラットホームを、既存の水晶振動子質量センサー(QCM)に代えて、様々な材料の薄膜蒸着工程時にその厚みを測定する物理センサーを使用すると、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイから得られる共振周波数信号のみを電気的に分析して表面応力の効果を分析することによって、蒸着される薄膜物質の厚みに対する、より精密な情報だけでなく、薄膜材料の機械的特性を同時に分析することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の望ましい一実施の形態であるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーを概略的に示した構成図。
【図2】マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの断面図。
【図3】マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作過程を示した断面図(side view)。
【図4】マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作過程を示した平面図(top view)。
【図5】それぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイで共振周波数の変化を示したグラフ。
【図6】それぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイで共振周波数の変化を示したグラフ。
【図7】それぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイで共振周波数の変化を示したグラフ。
【図8】それぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイで共振周波数の変化を示したグラフ。
【図9】それぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイで共振周波数の変化を示したグラフ。
【図10】マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーから得られた周波数変化を圧電マイクロカンチレバー共振子の長さの関数で示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい一実施の形態であるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー及びその製作方法を添付した図面を参照して、より詳しく説明すると、下記の通りである。
【0015】
図1は、本発明の望ましい一実施の形態であるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーを概略的に示した構成図であり、図2は、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの断面図であり、図3は、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作過程を示した断面図であり、図4は、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作過程を示した平面図であり、図5乃至図9は、それぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイで共振周波数の変化を示したグラフであり、図10は、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーから得られた周波数変化を圧電マイクロカンチレバー共振子の長さの関数で示したグラフである。
【0016】
図に示すように、本発明によるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーは、互いに異なるサイズの多数の圧電マイクロカンチレバー共振子10が配列される構造からなる。つまり、2次元的に段階的に縮小されて配列される形態を有する。
【0017】
マイクロカンチレバー共振子アレイを構成する互いに異なるサイズのそれぞれの圧電マイクロカンチレバー共振子10は、シリコン基板6の上部に形成され、長さが段階的に縮小されて配列される支持層4と、支持層4の上部に所定のサイズで形成される下部電極2と、下部電極2の上部に圧電駆動のために形成される圧電駆動薄膜層1と、下部電極2の上部及び圧電駆動薄膜層1の一部領域の上部に電極間の絶縁のために形成される絶縁層5と、絶縁層5の上部及び圧電駆動薄膜層1の上部に形成される上部電極3、及び上部電極及び下部電極に素子の駆動のための電界が印加可能に連結される電極ライン7及びパッド8と、からなる。
【0018】
また、前記支持層4は、シリコン基板6の上部に形成され、長さが段階的に縮小されて配列される多数の窒化シリコン膜カンチレバーと、前記窒化シリコン膜カンチレバーの上部に形成される酸化シリコン膜とからなる。
【0019】
圧電マイクロカンチレバー共振子10は、圧電駆動のための薄膜材料として圧電物質が使用される。圧電物質は、所定の結晶に圧力を加えた時に電位差(電圧)が発生し、また、これらの物質に逆に電位差(電圧)が印加されると、物理的変位が生じる原理を利用した物質であり、大きく窒化物と酸化物とに分けられ、窒化物は窒化アルミニウム(AlN)が代表的に使われ、酸化物は非鉛系(Piezoelectric materials without lead)である酸化亜鉛(ZnO)、または鉛系のPb(Zr,Ti)O3(チタン−ジルコン酸鉛、以下PZT)が代表的に使われる。
【0020】
絶縁層5は、感光性ポリイミド(Polyimide)のようなパターニング可能な物質を用いて写真工程(photo lithography)によって形成する。圧電駆動素子の基本共振周波数及び共振周波数の変化は、複素インピーダンスなどのような電気的信号の変化で表れ、これはセンサーモジュールに組み込まれたインピーダンスアナライザ(Impedance Analyzer)によって測定される。よって、2次元的に段階的に縮小された複数の圧電マイクロカンチレバー共振子10を含むマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーは、回路上に具現されたオシレーター及び周波数カウンターを使って周波数を探索することによって、素子の共振周波数値を測定し、素子を測定環境に露出して、センサーの感知物質層と感知対象物質との反応によって変化されたマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10アレイに含まれた圧電マイクロカンチレバーの共振周波数を全て測定して分析し、感知対象物質の存在有無を判断するようになる。
【0021】
本発明における圧電マイクロカンチレバー共振子10の基本共振周波数値は、素子の長さの二乗に反比例してその数値が増加し、素子のサイズを減らして高い共振周波数値を確保する場合、より優れた感度特性を得ることができる。特に、分子レベルの質量を有する非常に微細な感知対象物質を感知するためには、フェムトグラム領域以下の小さな質量が感知可能な素子が求められる。よって、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10アレイに含まれるマルチサイズの窒化シリコン膜カンチレバーのうち、感知対象物質の感知過程において、発生する表面質量の増加に対してより敏感な感度を表す小さな窒化シリコン膜カンチレバーは、その長さと幅とが、各々30及び10マイクロン程度を有することが望ましい。
【0022】
5つのサイズを有するものとして、一例を挙げて説明すると、5種類のサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10が集積される場合、それぞれのサイズ(長さ、幅、及び厚み)は、
A:240μm(長さ)、80μm(幅)、2.3μm(厚み)
B:180μm(長さ)、60μm(幅)、2.3μm(厚み)
C:120μm(長さ)、40μm(幅)、2.3μm(厚み)
D:60μm(長さ)、20μm(幅)、2.3μm(厚み)
E:30μm(長さ)、10μm(幅)、2.3μm(厚み)である。
【0023】
各層の厚みは、上部電極:0.1μm、下部電極:0.15μm、圧電駆動薄膜層:0.5μm、支持層(窒化シリコン膜カンチレバー+酸化シリコン膜):(1.2μm+0.35μm)と設計することが望ましい。
【0024】
前記のように、最小の30マイクロンの圧電マイクロカンチレバー共振子10は、ばね定数が充分大きいため、感知過程で発生するカンチレバー表面の応力変化に対して鈍感な特性を有する。一方、240マイクロンの大きい圧電マイクロカンチレバー共振子10は、ばね定数が小さいため、感知過程で発生する表面質量の増加及び表面応力の変化の両要素に対して全て敏感な反応を表す。
【0025】
マイクロカンチレバー共振子10のサイズによるばね定数k(kTheoretical)の変化は、下記の関係式で説明することができる。
【0026】
【数1】

【0027】
前記の式において、ばね定数kTheoreticalを定義するために使用されたE*は、マイクロカンチレバー共振子10の弾性率(Young’s Modulus)、tはマイクロカンチレバー共振子の厚み、またwとLは、それぞれマイクロカンチレバー共振子の幅と長さである。本発明において、マルチサイズのマイクロカンチレバー共振子アレイに含まれたマイクロカンチレバー共振子の厚みは一定に維持される。よって、前記の式で表した厚みtは、マイクロカンチレバー共振子10の平面のサイズによるばね定数の変化関係を記述するために考慮されない。よって、マイクロカンチレバー共振子10のサイズ変化によるばね定数の変化は、マイクロカンチレバー共振子10の幅と長さの三乗の比(w/L3)で決まる。また、マイクロカンチレバー共振子10の幅に対する長さとの比率(L/w)を一定に維持し、平面のサイズを2次元的に縮小する場合、結果的にマイクロカンチレバー共振子10のばね定数kTheoreticalは長さの二乗に反比例してその値が上がることが分かる。
【0028】
本発明の実施の形態で提示する圧電マイクロカンチレバー共振子10のうち、最大のものは最小のものの長さの8倍にあたる長さを有しており、結果的に最小のもののばね定数は、最大のものに比べて約64倍大きい値を有する。
【0029】
センサー応用時に、表面印加質量の効果と表面応力変化の効果との明らかな分離分析のために、小さいものと大きいものとのばね定数値において10倍以上の差を有するように、圧電マイクロカンチレバー10の長さの差を3倍以上になるように設計することが望ましい。
【0030】
図3及び図4に示すように、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作段階は、下記の通りである。
【0031】
(a)シリコン基板の上部及び下部にそれぞれの前記窒化シリコン膜カンチレバーを蒸着するステップ、(b)上部側の前記窒化シリコン膜カンチレバーの上部に酸化シリコン膜を蒸着して支持層4を形成するステップ、(c)前記酸化シリコン膜の上部全面に接合層を含む下部電極2を形成するステップ、(d)前記下部電極2の上部全面に圧電駆動のための圧電駆動薄膜層1を形成するステップ、(e)前記形成された圧電駆動薄膜1の一部を蝕刻して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10アレイセンサーに集積されるマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイを形成するステップ、(f)前記形成されたマルチサイズの圧電駆動材料アレイの下部にある下部電極2の一部を蝕刻して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーに集積されるマルチサイズの下部電極アレイ及び駆動電圧印加のための電極ライン7及びパッド8を形成するステップ、(g)前記形成されたマルチサイズの下部電極アレイ及びマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイの一部領域の上部に上下部電極間の絶縁のための絶縁層5を形成するステップ、(h)前記絶縁層5の上部及びマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイの上部に、マルチサイズの上部電極アレイと駆動電圧印加のための電極ライン7及びパッド8を形成するステップ、(i)前記下部窒化シリコン膜カンチレバーの一部を除去するステップ、(j)前記(i)ステップで露出したシリコン基板6を蝕刻するステップ、(k)前記シリコンが蝕刻された素子の上部窒化シリコン膜の一部を除去して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10アレイセンサーを形成するステップ、を順に実施して製作されることを特徴とするマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーを製作する。
【0032】
前記(k)ステップ後、感知対象物質を感知するための感知層を形成する(l)ステップを更に含むことができる。
【0033】
前記(l)ステップは、生体物質感知のための感知物質層の形成のために、マイクロカンチレバーの表面に金(gold)薄膜を蒸着し、金−チオール(gold−thiol)反応を利用して自己配列単分子層(self−assembled monolayer)を形成し、以後、感知対象物質に適合した感知物質を固定する方法、または化学センサーの応用のために特定感知対象物質が結合可能な高分子物質を含んだ溶液をマイクロカンチレバー表面にインクジェットプリンティング、スピンコーティング、またはディップコーティングして形成する方法のいずれか一つを使用することができる。
【0034】
図5乃至図9は、製作されたマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10の背面に金(gold)薄膜を蒸着し、金−アンカンチオール反応(gold−alkanethiol reaction)による自己組織化単分子層(self−assembled monolayer)の形成、及びビオチン(biotin)、及びストレプトアビジン(streptavidin)などを用いてヒト抗体(human antibody)を固定した後、表れる共振周波数の変化を5つのサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10に対して示した図である。小さいものは非常に高い共振周波数を有しており、印加質量に対する感度が極めて高い。よって、ヒト抗体(Human antibody)(IgG)の固定によって周波数の減少が明らかに表れた。一方、大きいものは小さいものに比べて基本共振周波数値が小さく、かつ質量に対する感度も小さいため、結果的に同時に得られた小さいものの結果より比較的小さな周波数減少を表した。
【0035】
図10は、図5乃至図9の実施の形態で表れた、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子10の各々から得られた周波数の変化を、カンチレバーの長さの関数で示した図である。図10の黒色の四角形及び線で示されたグラフは、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーを用いてヒト抗体(human antibody)(IgG)を固定する時に予想される表面質量の増加による理論的な周波数の変化であり、円及び線で示されたグラフは、実際の実験で表れた周波数の変化である。
【0036】
つまり、30マイクロン長さの圧電マイクロカンチレバー共振子10は、感知過程で発生する表面応力の影響をほぼ受けないものと表れた。よって、マルチサイズを具現するにあたって、質量印加による周波数の変化が支配的な特性を有する圧電マイクロカンチレバー共振子10として望ましい。しかし、感知過程で発生する表面応力の影響をより少なく受けるために、これより小さなサイズを有し、かつ高いばね定数を有する圧電マイクロカンチレバー共振子10を適用することが望ましい。一方、長さ240マイクロン長さの圧電マイクロカンチレバー共振子10は、表面応力の影響を非常に受けると表れ、表面応力の変化による周波数変化の比重の大きい圧電マイクロカンチレバー共振子10として望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
このように、本発明によるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーを利用すれば、感知過程で発生する表面質量の吸着情報を分析することができるだけでなく、それぞれのサイズを有する圧電マイクロカンチレバー共振子アレイの質量感度から得られると予想される周波数の変化パターンと、実際の感知過程で得られる共振周波数の変化パターンとを比べると、表面応力の発生による影響を同時に把握することができ、つまり、カンチレバー表面に形成された感知物質と感知対象物質との間の生化学反応と関連した、より豊富な情報を得ることができる。よって、本発明におけるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーは、極微量で存在する様々な種類の感知対象物質の存在有無が迅速かつ精密に感知可能であるだけでなく、カンチレバー表面に形成された感知物質が様々な種類の感知対象物質と反応する場合、表面応力の影響を同時に区別分析することによって、感知結果において感知対象物質に対する分別力を向上させることができる。
【0038】
本発明は、前述した特定の望ましい実施の形態に限ることなく、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱せず発明が属する技術分野で通常の知識を持った者なら誰もが様々な変形実施が可能であることはもちろん、そのような変更は、請求の範囲に記載された範囲内にある。
【符号の説明】
【0039】
1:圧電駆動薄膜層
2:下部電極
3:上部電極
4:支持層
5:絶縁層
6:シリコン基板
7:電極ライン
8:パッド
10:圧電マイクロカンチレバー共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電マイクロカンチレバー共振子を用いた物理/生化学センサーにおいて、
前記圧電マイクロカンチレバー共振子は、感知過程で発生する吸着された感知対象物質によるセンサー表面の質量変化だけでなく、表面応力の変化を区別して定量分析することができるように、互いに異なるサイズの多数の圧電マイクロカンチレバー共振子が配列される構造からなることを特徴とするマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項2】
前記圧電マイクロカンチレバー共振子アレイは、
シリコン基板の上部に形成され、長さが段階的に縮小されて配列される多数の窒化シリコン膜カンチレバー;
前記窒化シリコン膜カンチレバーの上部に形成される酸化シリコン膜;
前記シリコン酸化膜の上部に所定のサイズで形成される下部電極;
前記下部電極の上部に圧電駆動のために形成される圧電駆動薄膜層;
前記下部電極の上部及び前記圧電駆動薄膜層の一部領域の上部に電極間の絶縁のために形成される絶縁層;
前記絶縁層の上部及び前記圧電駆動薄膜層の上部に形成される上部電極;及び
前記上部電極及び下部電極に素子の駆動のための電界を印加するように連結される電極ライン;を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項3】
前記窒化シリコン膜カンチレバーは、長さが縮小される比率と同様に幅も縮小されることを特徴とする請求項2に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項4】
前記窒化シリコン膜カンチレバーは、その厚みが一定に維持されることを特徴とする請求項3に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項5】
前記絶縁層はポリイミドを含むことを特徴とする請求項2に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項6】
前記圧電マイクロカンチレバー共振子は、前記圧電駆動のための薄膜材料としては圧電物質が用いられることを特徴とする請求項2に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項7】
最長の圧電マイクロカンチレバー共振子は、最短の圧電マイクロカンチレバー共振子の長さの3倍以上であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサー。
【請求項8】
請求項2乃至請求項6のいずれかに1項によるマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作方法において、
(a)シリコン基板の上部及び下部にそれぞれの前記窒化シリコン膜カンチレバーを蒸着するステップ;
(b)上部側の前記窒化シリコン膜カンチレバーの上部に酸化シリコン膜を蒸着するステップ;
(c)前記酸化シリコン膜の上部全面に接合層を含む下部電極を形成するステップ;
(d)前記下部電極の上部全面に圧電駆動のための圧電駆動薄膜層を形成するステップ;
(e)前記形成された圧電駆動薄膜の一部を蝕刻して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーに集積されるマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイを形成するステップ;
(f)前記形成されたマルチサイズの圧電駆動材料アレイの下部にある下部電極の一部を蝕刻して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーに集積されるマルチサイズの下部電極アレイ及び駆動電圧印加のための電極ライン及びパッドを形成するステップ;
(g)前記形成されたマルチサイズの下部電極アレイ及びマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイの一部領域の上部に上下部電極間の絶縁のための絶縁層を形成するステップ;
(h)前記絶縁層の上部及びマルチサイズの圧電駆動薄膜材料アレイの上部に、マルチサイズの上部電極アレイと駆動電圧印加のための電極ライン及びパッドを形成するステップ;
(i)前記下部窒化シリコン膜カンチレバーの一部を除去するステップ;
(j)前記(i)ステップで露出したシリコン基板を蝕刻するステップ;
(k)前記シリコンが蝕刻された素子の上部窒化シリコン膜の一部を除去して、マルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイセンサーを形成するステップ;
を順に実施して製作されることを特徴とするマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作方法。
【請求項9】
前記(k)ステップ後、感知対象物質を感知するための感知層を形成する(l)ステップを更に含んでなることを特徴とする請求項8に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作方法。
【請求項10】
前記(l)ステップは、生体物質感知のための感知物質層の形成のために、前記マイクロカンチレバーの表面に金(gold)薄膜を蒸着し、金−チオール(gold−thiol)反応を利用して自己配列単分子層(self−assembled monolayer)を形成し、以後、感知対象物質に適合した感知物質を固定することを特徴とする請求項9に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた物理/生化学センサーの製作方法。
【請求項11】
前記(l)ステップは、化学センサーの応用のために特定感知対象物質が結合可能な高分子物質を含んだ溶液を 前記マイクロカンチレバー表面にインクジェットプリンティング、スピンコーティング、またはディップコーティングして形成することを特徴とする請求項9に記載のマルチサイズの圧電マイクロカンチレバー共振子アレイを用いた生化学センサー製作方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525317(P2010−525317A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503990(P2010−503990)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000868
【国際公開番号】WO2009/107965
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea