説明

マルチスポットレーザープローブ

第1のアダプターと、第1のアダプター内のGRINレンズであって、GRINレンズの近位端部においてレーザー光源からレーザービームを受光し、受光したレーザービームをGRINレンズの遠位端部に向かって中継するように構成された、GRINレンズと、中継されたレーザー光を受光するように構成された近位端部を有するマルチファイバー配列と、を含むマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブが提供される。更に、カニューレと、カニューレ内に配置された光ファイバーと、カニューレ内の回折ビームスプリッタと、カニューレ内に位置し、光ファイバーの遠位端部と回折ビームスプリッタの間に配置されたGRINレンズであって、回折ビームスプリッタが、GRINレンズからの集束されたレーザービームを複数の回折レーザービームに分割するように構成されている、GRINレンズと、を含むマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、眼科手術に利用されるレーザープローブに関し、特に、光凝固術に利用されるマルチスポットレーザープローブに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光凝固術は、網膜剥離や網膜断裂、糖尿病などの疾病の結果として生じる増殖性網膜症等、の眼の状態に対処する治療法である。糖尿病患者の体内における異常に高い血糖は、網膜の血管を刺激して成長因子を放出し、これにより、網膜表面上の望ましくない血管及び毛細血管の増殖を促進する。これらの増殖した血管は、非常に壊れやすく、従って、容易に硝子体液中に出血する。身体は、瘢痕組織を生成することにより、これらの損傷した血管に対して応答し、これにより、網膜の剥離が生じ、最終的に失明に至る場合がある。
【0003】
レーザー光凝固術においては、レーザープローブを利用し、網膜の様々なレーザー焼灼スポットにおいて血管を焼灼する。このレーザーは、視力を与えるために網膜内に存在している桿状体及び錐状体をも損傷することになるため、血管のみならず、視力も影響を受けることになる。視力は、網膜の中心窩において最も敏感であるため、外科医は、得られたレーザー焼灼スポットを、網膜の周辺領域に配置する。この結果、中心の視力を保持するために、周辺の視力が多少犠牲にされる。この手術の際には、外科医は、光凝固の対象である網膜の領域が照射されるように、非焼灼照準ビームを利用してプローブを駆動する。低出力の赤色レーザーダイオードが入手可能なので、一般に、照準ビームは、低出力の赤色レーザー光である。望ましい網膜スポットを照射するようにレーザープローブを位置決めしたら、外科医は、フットペダル又は他の手段により、レーザーを起動し、これにより、照射されている領域を光凝固する。網膜スポットが焼灼されたら、焼灼されたレーザースポットの適切な配列が網膜にわたって分布するまで、外科医は、プローブを位置決めし直し、新しいスポットを照準光によって照射し、レーザーを起動し、プローブを位置決めし直す、というように繰り返す。
【0004】
網膜の1回の治療に必要とされるレーザー光凝固の数は大きく、一般には、例えば、1,000〜1,500個のスポットが焼灼される。従って、レーザープローブが、複数のスポットを一度に焼灼できるマルチスポットプローブであったなら、光凝固手術は、(レーザー光源出力が十分であると仮定した場合に)更に高速になることが容易に理解されよう。このため、マルチスポットレーザープローブが既に開発されており、これは、2種類に分類することができる。本明細書において「マルチスポット/マルチファイバー」レーザープローブと表記される第1のカテゴリは、対応する複数の光ファイバーの配列により、複数のレーザービームを生成する。第2のカテゴリは、単一のファイバーのみを利用しており、従って、本明細書においては、「マルチスポット/シングルファイバー」レーザープローブと表記する。レーザープローブがシングルファイバープローブであるのか又はマルチファイバープローブであるのかとは無関係に、レーザープローブは、そのプローブをレーザー光源に接続するために利用されるアダプターと、互換性を有する必要がある。この観点において、レーザー光源は、従来、SMA(Subminiature version A)相互接続装置などの、標準的な相互接続装置を有している。例えば、レーザー光源は、レーザー光源が光を送っている器具に結合されたオスSMAコネクタを受け入れるメスSMAコネクタを有することができる。従来のシングルスポット/シングルファイバーレーザープローブの場合には、そのオスSMAコネクタは、単一のファイバーを内蔵することになる。レーザー光源は、レーザービームウエスト(laser beam waist)と呼ばれる集束ビームをオスSMAコネクタに供給する。これは、シングルファイバープローブにとって非常に有利であり、理由は、光ファイバーの端面がウエストによって照射され、レーザー光源に対する効率的な結合を可能にするからである。しかしながら、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブが、対応する複数のファイバーを利用してその複数のスポットを送る場合には、複数のファイバーに結合するにはレーザーウエストが細過ぎるため、このような便利なシングルファイバー方式によって簡単に供給源からの集束ビームを複数のファイバーに受光させることは不可能である。その代わりに、レーザー光源は、従来の相互接続装置を変更又は適合させて、プローブからの複数のファイバーが単にレーザーウエストを与えるだけでないように、しなければならない。しかしながら、このような変更は、費用を所要し、面倒である。
【0005】
このため、レーザー光源は、単一のファイバーケーブルに結合されたシングルファイバー相互接続装置にレーザー光を送り、次に、この単一のファイバーケーブルが、レーザープローブハンドピース内のシングルファイバー/マルチファイバー光学結合にレーザー光を送るようになっている、マルチスポット/マルチファイバープローブが開発されている。レーザープローブは、患者間の汚染の伝播を防ぐために、廃棄可能であることが望ましく、この結果、ハンドピース内に配設される光学素子により、原価が増大する。例えば、これらの光学素子は、複数のファイバーへの分配のために、単一のファイバーからのビームを複数のビームに分割する回折ビームスプリッタを含む。単一のファイバーからのレーザービームをビームスプリッタ上にコリメートし、次に、その結果得られる複数のビームを複数のファイバー上に集光するには、複数の平凸レンズが必要である。しかしながら、このような相互接続装置は、比較的内径が小さいので、プローブの他の部分の原価を抑えつつ、これらのレンズをレーザー光源に相互接続することは非常に困難である。
【0006】
マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブの別の課題として、得られたレーザービームスポットを適切に網膜上に分配させるために、複数のファイバーの遠位端部から伝送されるテレセントリックレーザービームを異なる角度方向に導かねばならない、ということがある。このような分配を実現するために、ファイバーの遠位端部が望ましい角度方向に折り曲げられたマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブが開発されている。しかしながら、このような折り曲げは、面倒であり、原価も増大することになる。
【0007】
複数のファイバーの利用に関連した問題点を回避するために、シングルファイバーレーザープローブからの光ビームを、回折ビームスプリッタ上に導き、ビームを複数の回折ビームに分割して網膜に伝送することができる。しかしながら、この場合には、回折ビームスプリッタは、得られた回折ビームを集束させなければならず、このためには、格子の仕様を、素子全体にわたって空間的に変化させなければならない。このような複雑性が原価を増大させるのみならず、空間的に変化する回折ビームスプリッタは、全体的な性能を低下させることにもなる。また、このような設計は、ファイバーの遠位端部と回折要素との間の距離を変化させることを、困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当技術分野では、マルチスポットレーザープローブの改良が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様によれば、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブが提供され、このプローブは、第1のアダプターであって、レーザー光源上の対向する第2のアダプターと接続するように操作可能な第1のアダプターと、第1のアダプター内の第1のGRINレンズであって、第1のGRINレンズの近位端部においてレーザー光源からレーザービームを受光し、受光したレーザービームをGRINレンズの遠位端部に向かって中継するように構成された、第1のGRINレンズと、中継されたレーザー光を受光するように構成された近位端部を有する複数の光ファイバーの配列と、を含む。
【0010】
本開示の第2の態様によれば、マルチスポット/シングルファイバーレーザープローブが提供され、このプローブは、カニューレと、カニューレ内に配置された光ファイバーと、カニューレ内の回折ビームスプリッタと、カニューレ内に位置し、光ファイバーの遠位端部と回折ビームスプリッタとの間に配置されたGRINレンズであって、回折ビームスプリッタが、GRINレンズからの集束されたレーザービームを複数の回折レーザービームに分割するように構成されている、GRINレンズと、を含む。
【0011】
本開示の第3の態様においては、光凝固術による治療用に、レーザー光源からのビームを複数のレーザービームに分割する方法が提供され、この方法は、レーザー光源から伝播したレーザービームを、GRINレンズを通して回折ビームスプリッタ上に集束させるステップであって、GRINレンズ及び回折スプリッタが、レーザープローブカニューレ内に連続的に配列される、ステップと、GRINレンズと回折スプリッタとの間のギャップを調節して回折スプリッタから得られた複数の回折ビームの集束されたスポットサイズを調節する、ステップと、を含む。
【0012】
本開示の第4の態様によれば、マルチスポット/シングルファイバーレーザープローブが提供され、このプローブは、カニューレと、カニューレ内の複数の光ファイバーの配列と、カニューレ内に位置し、配列の遠位端部に隣接したGRINレンズであって、複数の光ファイバーの配列からの複数のレーザービームを網膜上に集束されたレーザースポットに集束させるように構成された、GRINレンズと、を含む。
【0013】
本開示の第5の態様によれば、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブが提供され、このプローブは、第1のアダプターであって、レーザー光源上の対向する第2のアダプターと接続するように操作可能な第1のアダプターと、第1のアダプター内の第1のGRINレンズであって、このGRINレンズの近位端部においてレーザー光源からレーザービームを受光し、受光したレーザービームをGRINレンズの遠位端部に向かって平行波面として中継するように構成された、第1のGRINレンズと、第1のGRINレンズの遠位端部と隣接した第1のアダプター内の回折ビームスプリッタであって、平行波面を受光して複数の回折ビームを供給するように構成された、回折ビームスプリッタと、回折ビームスプリッタの遠位端部に隣接した第1のアダプター内の第2のGRINレンズであって、複数の回折ビームを複数の光ファイバーの配列の近位端部面上に集束させるように操作可能な、第2のGRINレンズと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブの近位端部に結合されるGRINレンズを収容するアダプターに結合されたレーザー光源の、長手方向の断面図である。
【図2】図1のプローブの近位端部内のマルチファイバー配列の、半径方向の断面図を示す。
【図3】マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブの近位端部に結合される回折ビームスプリッタを含むアダプターに結合されたレーザー光源の、長手方向の断面図である。
【図4】図3のプローブの近位端部内のマルチファイバー配列の、半径方向の断面図である。
【図5】図4のマルチファイバー配列から放射された複数の投射ビームを、角度で分離する、GRINレンズを示す。
【図6】回折ビームスプリッタを内蔵するマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブカニューレの遠位端部の、長手方向の断面図である。
【図7】得られた複数のレーザービームを網膜上に集束させることができるように、回折ビームスプリッタと単一のファイバーとの間に空隙を有するように変更された図6のマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブカニューレの、遠位端部の長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来のレーザー光源の相互接続装置と互換性を有する、改善されたマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブが提供される。更に、空間的に変化する回折ビームスプリッタを必要とせず、シングルファイバーをGRINレンズに対して物理に動かし易く、スポットサイズの調節を可能にする、改善されたマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブが提供される。それぞれの実施形態は、その独自の固有の利点を有する。例えば、改善されたマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブは、外科医に、レーザー焼灼スポットサイズを、容易に調節できるようにする。一方、改善されたマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブは、照準ビームによって提供される照射と得られたレーザースポットとの間に、固有の芯合わせを有することになる。この芯合わせは、照準ビームによって生成されるスポットが、得られたレーザー焼灼スポットの位置する場所を正確に表していることを、外科医が確信を持って認知できるという点において、非常に有利なので、最初に、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブについて説明する。
【0016】
マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ
まず、添付図面を参照すれば、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ100が図1に示されている。後程詳述するように、レーザープローブ100は、なんらの回折光学素子をも必要としていない。レーザー光源105は、適切な相互接続装置を通してプローブ100にレーザー光を送る。レーザー光源105用の一般的な標準化された相互接続装置は、SMA(Subminiature version A)アダプターである。従って、レーザー光源105は、メスSMAアダプター110を含む。但し、レーザー光源の相互接続装置が、レーザープローブからのオスコネクタの近位端部に、レーザーウエスト115などの集束されたビームスポットを与える限り、レーザープローブ100は、従来の標準的な光学相互接続装置と、容易に結合するようにできることを、理解されたい。従って、以下の説明においては、レーザープローブ100が、一般性を損なうことなしに、カスタマイズされたSMAアダプター120を介して供給源105に結合しているものと、仮定している。
【0017】
レーザーウエスト115を受光するために、SMAアダプター120のボアは、屈折率分布型(GRadient INdex:GRIN)レンズ125を備えている。GRINレンズ125は、このようなボアに容易に挿入される、単純な単一片の円筒形GRINロッドレンズである。GRINレンズ125は、集束ビームを、第2の集束スポット130に、次に、その遠位端部における平行ビーム波面に、中継するように設計されている。SMAの技術分野において知られているように、SMAアダプター120は、ねじが切られたシリンダ135と保持リング140とにより、SMAアダプター110に固定される。SMAアダプター120は、SMAアダプター110に挿入するためのオス端部と、オスSMA905ファイバーコネクタ145などの従来の光学相互接続装置を受け入れるメス端部と、の両方を有する。コネクタ145は、ねじが切られたシリンダ又はリング160と、保持リング165と、により、アダプター120に固定される。コネクタ145は、そのボア内に、複数の光ファイバーの配列150を含む。配列150の近位端部151は、220μmの空隙などの適切な空隙により、GRINレンズ125の遠位端部から離隔している。コネクタ145は、レーザープローブの技術分野において知られているように、ハンドピース及びカニューレまで延在するファイバー150を包む曲がり易いケーブルに接続している。
【0018】
ファイバー配列150の一実施形態が図2の断面に示されている。供給源105からの緑色レーザービーム境界205と赤色照準ビーム境界210の両方について、図1の近位端部151におけるレーザービーム境界が示されている。配列150は、6本の外側ファイバーによって周囲が取り囲まれた中心ファイバーを含む。一実施形態においては、それぞれのファイバー220は、101μmのジャケットによって取り囲まれた90μmの被覆材に包まれた75μmのガラスコアによって実現される0.22の開口数(Numerical Aperture:NA)を有する。配列150内に結合されないレーザーエネルギーの量を極小化するために、GRINレンズ125は、レーザービーム境界205が6本の外側ファイバーをちょうど包含するように構成されている。レーザービームに関する配列150のクロック装置(clocking)は、レーザービームと配列150が軸対称であるため、取り付けられていない。配列150は、図5との関係において同様に説明するように、レーザープローブの遠位端部まで延在している。
【0019】
複雑なマルチレンズ中継システムが不要であるというこのような近位相互接続装置の有利な特徴について即座に理解することができるよう。その代わりに、GRINレンズ125は、アダプター120のボアに容易に挿入され、このボアは、オスSMAアダプター145などの標準的なアダプターを、ファイバー配列150を受け入れる廃棄可能なレーザープローブに対して装着できるようにしている。GRINレンズ125及びそのアダプター120が伴わない場合には、レーザー光源105上の標準的なアダプター110を変更しなければならないであろう。供給源105用の他の付属装置を一斉に変更しなければならないため、これは、明らかに望ましくない。或いは、この代わりに、供給源のアダプターを標準的なものとして残すことは可能であろうが、その場合には、マルチレンズ中継システムが必要となろう。対照的に、SMAアダプター120及びGRINレンズ125は、このような煩雑性を除去している。従って、SMAアダプター120は非常に有利であるが、図2において観察されるように、レーザーエネルギーの約50%が配列150の各ファイバーの間の隙間に供給されることが理解されよう。従って、このレーザーエネルギーは、光凝固術に利用するために利用することができず、これにより、レーザー焼灼スポットを生成するために必要とされるレーザー光源出力及び/又は時間量が増大することになる。
【0020】
次に、図3を参照すれば、ファイバー配列の隙間を照射しない回折型の実施形態が示されている。図1との関連において説明したように、カスタマイズされたSMAアダプター120により、ユーザーは、廃棄可能なプローブをアダプター120に対して簡便に装着してレーザーエネルギーをファイバー配列上に送ることができる。但し、アダプター120は、そのボア内に、第1のGRINレンズ301と第2のGRINレンズ310の間に配置された回折ビームスプリッタ305を含む。
【0021】
GRINレンズ301は、レーザーウエスト115から発散するレーザービームを、回折ビームスプリッタ305に対して提示される平行波面にコリメートするように構成されている。GRINレンズ310は、スプリッタ305から得られた複数の回折レーザービームを、オスSMAアダプター145のボア内に収容されたファイバー配列320の近位面151上に集束させるように構成されている。ファイバー配列320は、回折ビームスプリッタ305の回折特性に従って配列された複数のファイバーを含む。例えば、回折ビームスプリッタが、5つの回折ビームからなる対称的な5角形の分布を生成する場合には、ファイバー配列320は、対応する5角形の分布に配列される。図4は、その近位面151におけるファイバーの束320のこのような配列を示している。
【0022】
一実施形態においては、それぞれの光ファイバー400は、90μmの被覆材によって覆われた75μmのガラスコアを有し、この被覆材が101μmのジャケットによって取り囲まれて0.22のNAを実現している。スプリッタ305からの回折緑色レーザービームの投射が境界405によって示されている。回折は、波長に依存するので、照準ビームの投射は、ファイバー配列320とは異なる芯に合う。従って、スプリッタ305とファイバー配列320とは、境界405がそれぞれのファイバー400と軸方向において芯合わせするように、配列されており、赤色照準ビームの境界410は、それぞれのファイバーの中心又は軸との関係において半径方向に変位している。
【0023】
一実施形態においては、スプリッタ305によってそれぞれの緑色回折ビームに提供される軸からの変位は、1.45度である。GRINレンズ310は、得られたコリメート及び回折されたビームを配列320のそれぞれのファイバー400の入射面上に集束させる。回折ビームとの関係における配列320のこのような適切なクロック装置により、それぞれのファイバー400内への個々の回折ビーム及び照準ビームの効率的な結合が実現される。この観点において、SMAアダプター120の代わりに、通信産業において一般的に利用されているフェルールコネクタ(FC)又は標準コネクタ(SC)などの、他のタイプのアダプターを利用して、最適なクロック装置を支援してもよい。図1との関係において説明したように、SMAアダプター120内への光学構成部品の組み付けは、介在する回折ビームスプリッタ305はもとより、GRINレンズ301及び310も、塗布された光学接着剤を有していると有利であり、次に、アダプター120のボア内に摺動させてもよく、相互にエンドツーエンドで当接させてもよいという点において、便利である。対照的に、屈折レンズの芯合わせは、相対的に、面倒であり、困難であろう。
【0024】
図1又は図3との関連において前述した分割されると共にファイバー配列を通してテレセントリックに(Telecentrically)伝搬した供給源からのレーザービームには、レーザープローブからの複数の集束されたレーザースポットを、角度を有するように投射するという課題が残っている。GRINレンズによる解決策が、図3のファイバー配列320との関係において図5に開示されているが、類似の実施形態は、図1のファイバー配列150についても容易に構築されることを理解されたい。
【0025】
図5に示されているように、例えば、ステンレススチールカニューレなどのレーザープローブカニューレ500が、その遠位端部においてGRINレンズ505を受け入れている。ファイバー配列320の遠位端部は、GRINレンズ505の近位端部面において発散ビーム510を投射するように、カニューレ内において変位している。この結果、GRINレンズ505は、ビームを網膜表面520上において集束させる。網膜上において得られる集束ビームの分布は、配列320の遠位端部におけるファイバーの分布によって左右される。
【0026】
この観点においては、配列320(図3)の近位端部における分布は、軸対称である必要があるが、これらのファイバーは、遠位端部において任意の適切な分布に配列することができよう。例えば、図5において観察されるように、配列320は、遠位端部において線形に配列されている。従って、得られるレーザースポットは、GRINレンズ505に提示される画像の拡大されたバージョン(この実施形態においては、線形の配列)である。一実施形態においては、GRINレンズ505は、カニューレ500の遠位端部から4mmの距離において、角度的に分散したビームを集束させる。GRINレンズ505は、望ましい角度分布へのファイバーの折り曲げ(並びに、このような折り曲げに関連した諸問題)、ファイバーの遠位端部面の面取り、又は遠位端部面への光学素子の追加に対するニーズを除去していると、有利である。これらのファイバーは、場合によっては、配列320内において互いに接触することも可能であり、その場合にも、GRINレンズ505は、依然として有効である。次に、マルチスポット/シングルファイバーレーザープローブの実施形態について説明することとする。
【0027】
マルチスポット/シングルファイバーレーザープローブ
単一のファイバーが単一のレーザービームを搬送することになるため、必要とされる複数のレーザービームを生成して複数のレーザー焼灼スポットを同時に実現するために、回折ビームスプリッタが設けられる。回折ビームスプリッタ内への集光力を生成する必要性を回避するために、図6のレーザープローブ600は、コリメートGRINレンズ605を含み、このコリメートGRINレンズ605の近位端部は、プローブ600のカニューレ615内において単一のグラスファイバー610の遠位端部と当接している。センタリングシリンダ620がファイバー610の周囲を取り囲み、カニューレ内において芯合わせされた状態にファイバーを維持している。GRINレンズ605は、平行レーザービーム波面を回折ビームスプリッタ630に対して提示する。一実施形態においては、スプリッタ630は、図3との関連において同様に説明したように、カニューレ615の遠位端部から4mmの距離において集束される11度だけ角度が離れた5つの回折及びコリメートされたビームを生成するように構成されている。プローブ600の組立は、ファイバー610とそのセンタリングシリンダ620がカニューレ内において遠位において引き戻されるという点において、有利である。次に、その外側表面に塗布された光学接着剤を有するGRINレンズ605が、ファイバー610及びシリンダ620の遠位端部に当接する時点まで、カニューレのボア内に押し込まれ、これに、続いて、こちらもその側壁上に光学接着剤を有するスプリッタ630が挿入される。次に、ファイバー610及びシリンダ620を、カニューレのボア内において遠位において変位させて、スプリッタ630の遠位端部をカニューレ615の遠位端部と芯合わせさせてもよく、芯合わせしたら、接着剤を硬化させる。更に、ファイバー610とGRINレンズ605の接合部において、並びに、レンズ605とスプリッタ630の間において、屈折率整合接着剤を利用してフレスネル反射損失を除去してもよい。
【0028】
図7は、ファイバー610の遠位端部とGRINレンズ605の間の離隔が固定されていない状態で残されている代替実施形態を示している。この場合、ファイバー610とシリンダ620とに対する機械的な結合(図示されてはいない)を作動させることにより、外科医は、ファイバー610とレンズ605の間のギャップ700のサイズを調節してもよい。図6に示されているものなどのようにギャップを伴わない場合には、回折ビームはコリメートされる。しかしながら、ギャップ700を導入することにより、回折ビームは、コリメートされるのではなく、収束し、これにより、更に小さな集束レーザースポットが網膜上に生成される。従って、機械的な結合を遠位において又は近位において変位させることにより、外科医は、治療の目標に応じて、網膜上におけるレーザービームのスポットサイズをリアルタイムで調節することができる。このような調節は、その利点を有してはいるが、回折ビームスプリッタ605は、必然的に、緑色レーザー光について図6及び図7に示されている離隔の程度とは異なる角度方向に赤色照準ビームを回折させることを観察可能である。この波長に依存した変位は、個別のファイバー端面上における赤色及び緑色レーザースポット境界との関連において図4において観察される変位に類似している。このような変位は、あまり望ましいものではなく、理由は、照準ビームの地点は、対応するレーザー焼灼スポットが生成される場所を示すことを目的としているためである。対照的に、図1及び図3との関連において説明したマルチスポット/マルチファイバーの実施形態は、照準ビームスポットとレーザービームスポットの間のこのような変位を有することにならない。
【0029】
上述の実施形態は、本発明を例示しており、限定するものではない。又、本発明の原理に従って複数の変更及び変形が可能であることも理解されたい。従って、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアダプターであって、レーザー光源上の対向する第2のアダプターと接続するように操作可能な第1のアダプターと、
前記第1のアダプター内のGRINレンズであって、前記レーザー光源からのレーザービームを、前記GRINレンズの近位端部で受光し、前記受光したレーザービームを、前記GRINレンズの遠位端部に向かって中継するように構成された、GRINレンズと、
前記中継されたレーザー光を受光するように構成された近位端部を有する、複数の光ファイバーの配列と、
を有する、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項2】
前記GRINレンズが、更に、前記レーザー光源から第1の集束ビームスポットにおいて前記レーザービームを受光し、前記受光したレーザービームを第2の集束ビームスポットを通して平行波面に中継するように構成されており、前記複数の光ファイバーの配列が、前記GRINレンズの前記遠位端部に隣接して配置され、前記配列内のそれぞれの光ファイバーが、前記平行波面の一部分を受光する、請求項1に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項3】
前記第1のアダプターが、第3のアダプターと接続するように操作可能であり、前記複数の光ファイバーの配列が、前記第3のアダプター内に位置する、請求項2に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項4】
前記第1の、第2の、及び第3のアダプターが、SMAアダプターである、請求項3に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項5】
更に、第1の、ねじが切られたシリンダを有し、前記第1のアダプターを前記第2のアダプターに接続する、請求項3に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項6】
更に、第2のねじが切られたシリンダを有し、前記第1のアダプターを前記第3のアダプターに接続する、請求項5に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項7】
第1のアダプターであって、レーザー光源上の対向する第2のアダプターと接続するように操作可能な第1のアダプターと、
前記第1のアダプター内の第1のGRINレンズであって、前記レーザー光源からのレーザービームを、前記GRINレンズの近位端部において受光し、前記受光したレーザービームを、前記GRINレンズの遠位端部に向かって平行波面として中継するように構成された、第1のGRINレンズと、
前記GRINレンズの前記遠位端部に隣接した前記第1のアダプター内の回折ビームスプリッタであって、前記平行波面を受光して複数の回折ビームを供給するように構成された、回折ビームスプリッタと、
前記回折ビームスプリッタの遠位端部に隣接した前記第1のアダプター内の、第2のGRINレンズと、
複数の光ファイバーの配列であって、前記第2のGRINレンズが、前記回折ビームを前記配列の近位端部面上に集束させるように操作可能である、複数の光ファイバーの配列と、
を有する、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項8】
前記第2のGRINレンズからの集束された回折ビームの各々が、前記配列内の前記複数の光ファイバーのそれぞれに芯合わせされる、請求項7に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項9】
前記第1のアダプターが、第3のアダプターと接続するように操作可能であり、前記複数の光ファイバーの配列が、前記第3のアダプター内に位置する、請求項7に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項10】
前記第1の、第2の、及び第3のアダプターが、SMAアダプターである、請求項9に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項11】
カニューレと
前記カニューレ内の複数の光ファイバーの配列と、
前記カニューレ内に位置し、前記配列の遠位端部に隣接したGRINレンズであって、前記複数の光ファイバーの配列からの複数のレーザービームを、複数の集束レーザースポットに集束させるように構成された、GRINレンズと、
を有する、マルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項12】
前記カニューレが、ステンレススチールカニューレである、請求項11に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項13】
前記GRINレンズの遠位端部が、前記カニューレの遠位端部と芯合わせされている、請求項11に記載のマルチスポット/マルチファイバーレーザープローブ。
【請求項14】
カニューレと、
前記カニューレ内に配置された光ファイバーと、
前記カニューレ内の回折ビームスプリッタと、
前記カニューレ内に位置し、前記光ファイバーの遠位端部と前記回折ビームスプリッタとの間に配置されたGRINレンズであって、前記回折ビームスプリッタが、前記GRINレンズからの集束されたレーザービームを複数の回折レーザービームに分割するように構成されている、GRINレンズと、
を有する、マルチスポット/シングルファイバーレーザープローブ。
【請求項15】
前記GRINレンズと前記光ファイバーとが、前記カニューレ内において強固に取り付けられている、請求項14に記載のマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブ。
【請求項16】
前記光ファイバーが、前記カニューレ内において摺動自在に取り付けられており、前記光ファイバーの遠位端部と前記GRINレンズの近位端部との間のギャップが、前記光ファイバーを前記GRINレンズに対して摺動自在に動かすことにより、調節可能である、請求項14に記載のマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブ。
【請求項17】
前記カニューレが、ステンレススチールカニューレである、請求項14に記載のマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブ。
【請求項18】
前記回折ビームスプリッタが、前記集束されたレーザービームを5つの回折レーザービームに分割するように構成されている、請求項14に記載のマルチスポット/シングルファイバーレーザープローブ。
【請求項19】
光凝固術による治療用にレーザー光源からのビームを複数のレーザービームに分割する方法であって、
前記レーザー光源からの前記レーザービームを、GRINレンズを通して回折ビームスプリッタ上に集束させるステップであって、前記GRINレンズと前記回折ビームスプリッタとが、レーザープローブカニューレ内において連続的に配列されている、ステップと、
前記GRINレンズと前記回折ビームスプリッタとの間のギャップサイズを調節し、前記回折ビームスプリッタから得られる複数の回折ビームの集束スポットサイズを調節するステップと、
を有する、方法。
【請求項20】
更に、前記調節をされた複数の回折レーザービームを網膜上に投射するステップを有する、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−513454(P2013−513454A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544531(P2012−544531)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056703
【国際公開番号】WO2011/075256
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)