マルチディスプレイシステム
【課題】事前に故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイ内に再配置することが可能なマルチディスプレイシステムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明のマルチディスプレイシステムは、格子状に配置された複数のディスプレイ1〜4により一体の画面として構成されたマルチディスプレイ5と、マルチディスプレイ5に映像を出力するマルチ画面表示計算機6とを備え、マルチ画面表示計算機6は、各ディスプレイ1〜4の状態を取得し故障か否かを判断する故障検知手段9と、故障検知手段9で故障と判断したディスプレイ4に表示されているウィンドウの一覧を正常なディスプレイ1〜3に表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常なディスプレイ1〜3内に再配置するウィンドウ再配置手段13とを備える。
【解決手段】本発明のマルチディスプレイシステムは、格子状に配置された複数のディスプレイ1〜4により一体の画面として構成されたマルチディスプレイ5と、マルチディスプレイ5に映像を出力するマルチ画面表示計算機6とを備え、マルチ画面表示計算機6は、各ディスプレイ1〜4の状態を取得し故障か否かを判断する故障検知手段9と、故障検知手段9で故障と判断したディスプレイ4に表示されているウィンドウの一覧を正常なディスプレイ1〜3に表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常なディスプレイ1〜3内に再配置するウィンドウ再配置手段13とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のディスプレイで1つの表示画面を構成するマルチディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のディスプレイを格子状に配置し一つの画面として表示可能にするマルチディスプレイシステムが製品化され、電力や交通などインフラ分野の監視制御システムにおいて広く用いられている。監視制御は一時の停滞も許されない分野であり、監視映像や監視情報を表示するマルチディスプレイシステムには高度な信頼性が要求されている。
【0003】
このため、ディスプレイが自身の故障検知を行う機能を持ち、RS-232CやEthernet(登録商標)といった汎用通信インタフェースを使って外部に故障通知を行うことが可能な製品もある。監視制御システムではこの機能を利用して故障状態を検出し、縮退運転等の故障制御を行うことが可能である。
【0004】
例えば特許文献1に示される表示方式では、予めディスプレイの故障状態に応じた縮退運転のための表示パターンを準備しておき、故障状態に応じて表示パターンを呼び出し、表示されているウィンドウの配置を変更することにより、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイに表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭59−30300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される表示方式では、縮退運転時に予め登録されたパターンしか表示しないため、画面に表示すべきウィンドウの数や種類が変わったときにパターンを登録し直さなければならず、柔軟に対応できないという問題があった。
【0007】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、事前に故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイ内に再配置することが可能なマルチディスプレイシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマルチディスプレイシステムは、格子状に配置された複数のディスプレイにより一体の画面として構成されたマルチディスプレイと、前記マルチディスプレイに映像を出力するマルチ画面表示計算機とを備え、前記マルチ画面表示計算機は、前記各ディスプレイの状態を取得し、故障か否かを判断する故障検知手段と、前記故障検知手段で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常な前記ディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマルチディスプレイシステムは、故障検知手段で故障と判断したディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常なディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段を備えるので、事前に故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイ内に再配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るマルチディスプレイシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る画面配置情報テーブルを示す図である。
【図3】本発明に係るマルチディスプレイシステムを構成する各ディスプレイの左上端座標を示す図である。
【図4】本発明に係るウィンドウ情報テーブルを示す図である。
【図5】本発明に係るマルチディスプレイシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係るウィンドウ抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図7】一つのディスプレイが故障した状態の、本発明に係るマルチディスプレイの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る再配置ウィンドウリストを示す図である。
【図9】本発明に係るウィンドウ再配置手段の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係るディスプレイに表示される再配置対象ウィンドウ一覧を示す図である。
【図11】ウィンドウを再配置した状態の本発明に係るマルチディスプレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<構成>
図1は、本発明に係るマルチディスプレイシステムの全体構成を示すブロック図である。図1において、マルチディスプレイシステムはマルチディスプレイ5と、マルチディスプレイ5の表示を制御するマルチ画面表示計算機6と、マルチディスプレイ5とマルチ画面表示計算機6の通信を中継する通信中継装置7とを備えている。
【0012】
マルチディスプレイ5は縦2台、横2台の合計4台のディスプレイ1〜4を一体配置して構成しており、横2800画素、縦2100画素の解像度を持つ。ディスプレイ1〜4は、RS-232CやEthernet(登録商標)などの汎用通信インタフェースを備え、計算機などの外部機器と汎用通信インタフェースを介して通信することで外部からの各種制御や状態監視が可能な業務向けの大型表示装置である。またディスプレイ1〜4は、光源にランプやLEDを使ったDLP方式プロジェクタ方式や液晶方式の表示装置であり、横1400画素、縦1050画素の解像度を有する。
【0013】
マルチ画面表示計算機6はMicrosoft社のWindows(登録商標)オペレーティングシステムやLinux(登録商標)オペレーティングシステムが動作し、RS-232CやEthernet(登録商標)などの汎用通信インタフェースを備えている。また、マルチ画面表示計算機6は、複数の映像出力端子を持ち、複数のディスプレイと接続して一体となった画面(デスクトップ画面)を表示することが可能なマルチグラフィックカードを備えたパソコンである。
【0014】
通信中継装置7はマルチディスプレイ5とマルチ画面表示計算機6の間に設けられ、複数のディスプレイ1〜4とマルチ画面表示計算機6をEthernet(登録商標)ケーブルやRS−232Cケーブルにより接続して相互通信を可能とする。
【0015】
図1において、マルチ画面表示計算機6は、通信手段8、ディスプレイ1〜4の故障を検知する故障検知手段9、画面配置情報テーブルを管理する画面配置情報管理手段10、ウィンドウ情報テーブルを管理するウィンドウ情報管理手段11、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを抽出するウィンドウ抽出手段12、正常なディスプレイ上にウィンドウを再配置するウィンドウ再配置手段13をさらに備えている。
【0016】
通信手段8は通信中継装置7を介してディスプレイ1〜4と通信し、ディスプレイ1〜4の状態監視や各種制御を行うものである。
【0017】
故障検知手段9は通信手段8からディスプレイ1〜4の状態を取得する。その結果、表示続行が不可能なディスプレイや状態取得そのものが行えないディスプレイがあれば、当該ディスプレイは故障したものと判断する。
【0018】
ウィンドウ抽出手段12は、画面配置情報管理手段10が持つ画面配置情報テーブルとウィンドウ情報管理手段11が持つウィンドウ情報テーブルを参照し、故障したディスプレイに全部または一部が表示されているウィンドウを抽出する。
【0019】
ウィンドウ再配置手段13は、ウィンドウ抽出手段12にて故障したディスプレイに表示されていると判断されたウィンドウのリストをマルチディスプレイ5上に表示し、ユーザーがマウスやキーボードなどを使って選択したウィンドウを正常な(故障していない)ディスプレイに表示する。
【0020】
図1ではウィンドウA、ウィンドウBがディスプレイ1に表示されており、ウィンドウCがディスプレイ2に、ウィンドウD、ウィンドウEがディスプレイ3に、ウィンドウF、ウィンドウGがディスプレイ4に表示されている。また、ウィンドウHはディスプレイ2とディスプレイ4に跨って表示されている。これらのウィンドウは、例えば監視カメラの映像、監視しているプラントの数値情報などの監視情報画面などである。
【0021】
図2は、画面配置情報管理手段10にて管理されている画面配置情報テーブルを示している。画面配置情報テーブルはディスプレイ毎の画面配置情報から構成されており、本発明のマルチディスプレイ5は4つのディスプレイ1〜4から構成されているため、4つの画面配置情報を持つ。画面番号1の行はディスプレイ1、画面番号2の行はディスプレイ2、画面番号3の行はディスプレイ3、画面番号4の行はディスプレイ4のそれぞれ画面配置情報である。
【0022】
画面配置情報は画面番号の他、IPアドレス、画面オフセット、画面サイズから構成される。画面番号は左上端のディスプレイを0として、左から右、上から下へ昇順に番号付けした値となり、ディスプレイ1は画面番号1、ディスプレイ2は画面番号2、ディスプレイ3は画面番号3、ディスプレイ4は画面番号4となる。IPアドレスはディスプレイのEthernet(登録商標)インタフェースの識別番号であり、ディスプレイ1は192.168.100.1、ディスプレイ2は192.168.100.2、ディスプレイ3は192.168.100.3、ディスプレイ4は192.168.100.4となる。
【0023】
画面オフセットはマルチディスプレイ5全体の画面の座標を表す大画面座標における各ディスプレイの左上端の座標(DX,DY)であり、単位は画素である。画面サイズは幅方向をDW、高さ方向をDHで表し、単位は画素である。
【0024】
図3は大画面座標と各ディスプレイの左上端の座標の関係を示す図である。マルチディスプレイ5の画面の左上端は(0,0)、右下端は(2799,2099)となり、ディスプレイ1の画面の左上端は(0,0)、ディスプレイ2の画面の左上端は(1400,0)、ディスプレイ3の画面の左上端は(0,1050)、ディスプレイ4の画面の左上端は(1400,1050)となる。画面サイズは各ディスプレイの画面の画素単位の大きさを表し、ディスプレイ1〜4はすべて同一のサイズ(1400,1050)となる。
【0025】
図4は、ウィンドウ情報管理手段11にて管理されているウィンドウ情報テーブルを示す。図1に示すように8個のウィンドウがマルチディスプレイ5に表示されているため、ウィンドウ情報テーブルには8つのウィンドウ情報が格納されている。ウィンドウ情報は、インデックス、ウィンドウタイトル、ウィンドウID、ウィンドウ位置、ウィンドウサイズから構成されている。インデックスはウィンドウ情報テーブルにおける順番を表す値である。ウィンドウIDはウィンドウを識別するための値であり、OSがマイクロソフト社のWindows(登録商標)であればウィンドウハンドルが該当するが、OSをマイクロソフト社のWindows(登録商標)に限定するものではない。ウィンドウ位置は大画面座標におけるウィンドウの左上端の座標(WX,WY)であり、単位は画素である。ウィンドウサイズは幅方向をDW、高さ方向をDHで表し、単位は画素である。
【0026】
<動作>
図5は、本発明のマルチディスプレイシステムの動作を示すフローチャートである。以下、図5に沿ってマルチディスプレイシステムの動作について説明する。
【0027】
まず、故障検知手段9は通信手段8を使って、ディスプレイ1〜4に対して定期的に状態取得を行う(ステップS601)。状態取得間隔は要求される故障検知の時間に従って決めればよく、例えば10秒である。さらに故障検知手段9は、状態取得の結果に従いディスプレイ1〜4が故障か否かを判断する(ステップS602)。いずれのディスプレイ1〜4も正常であれば(ステップS602でNO)、ステップS601に戻って状態取得を継続する。
【0028】
ディスプレイが故障であるか否かの判断要因はディスプレイによって様々であるが、例えばランプが不点灯であれば、映像表示が不可能であるため故障と判断する。その他、冷却ファンが停止した場合は温度異常となり表示を続けられないので、故障と判断する。あるいは、ディスプレイから状態問い合わせに対する応答がない場合にも、ディスプレイの表示制御を行う事ができないため、故障と判断する。今、状態取得の結果ディスプレイ1〜3には異常がなく、ディスプレイ4はランプ不点灯であるので、ディスプレイ4を故障と判断し、ステップS602でYESとなる。
【0029】
次に、ウィンドウ抽出手段12が故障ディスプレイ4上に表示されていたウィンドウを抽出する(ステップS603)。
【0030】
その後、ウィンドウ抽出手段12が抽出したウィンドウを正常なディスプレイ上に再配置する(ステップS604)。再配置処理が終わると再びステップS601に戻って状態取得を繰り返す。
【0031】
<ウィンドウ抽出>
図6はウィンドウ抽出手段12のウィンドウ抽出動作を示すフローチャートである。まずステップS701において、判定すべきウィンドウのインデックスIを1に初期化する。つまり、ウィンドウ情報テーブルにおける最初のウィンドウについて判定を行うことにする。次に、インデックスIのウィンドウの左上端が故障したディスプレイに含まれるかどうかを判定する(ステップS702)。具体的には、故障したディスプレイの画面オフセットを(DX,DY)、画面サイズを(DW,DH)、ウィンドウの左上端の座標を(WX[I],WY[I])として、以下の式を満たすかどうかで判定する。
【0032】
DX<WX[I]<DX+DW …(1)
DY<WY[I]<DY+DH …(2)
式(1),(2)を両方満たす場合、ウィンドウの左上端が故障したディスプレイに入ると判定し、ステップS704へ進んで再配置ウィンドウリストにウィンドウ情報を登録する。式(1),(2)の少なくともいずれかを満たさない場合にはステップS703に進み、インデックスIのウィンドウの右下端が故障したディスプレイに入るかどうか判定する。インデックスIのウィンドウの右下端の座標(RIGHT[I],BOTTOM[I])は、ウィンドウサイズを(WW[I],WH[I])とすると、
RIGHT[I]=WX[I]+WW[I] …(3)
BOTTOM[I]=WY[I]+WH[I] …(4)
と表され、以下の式を満たすかどうかで判定する。
【0033】
DX<RIGHT[I]<DX+DW …(5)
DY<BOTTOM[I]<DY+DH …(6)
式(5)、式(6)を両方満たす場合には、ウィンドウの右下端が故障したディスプレイに入ると判定してステップS704に進み、当該ウィンドウのウィンドウ情報を再配置ウィンドウリストへ登録する。その後、ステップS705へ進む。一方、式(5)、式(6)の少なくともいずれかが満たされない場合、ウィンドウの右下端が故障したディスプレイに入らないと判断し、ステップS705へ進む。
【0034】
次にステップS705において、インデックスIを1加算して次のウィンドウのインデックスを求める。
【0035】
最後にステップS706において、インデックスIが表示されているウィンドウ数を超えるかどうか判定し、超えていた場合、表示されているすべてのウィンドウについての判定が終わったことになり、ウィンドウ抽出動作を終了する。超えていなかった場合は、ステップS702に戻って次のウィンドウの判定を行う。
【0036】
図7は、ディスプレイ4が故障したときのマルチディスプレイシステムの画面を表す図である。以下、図7に示すディスプレイ4が故障した際のウィンドウ抽出手段12の動作を図6に沿って再び説明する。
【0037】
まず、インデックスI=1とし(ステップS701)、ウィンドウAが故障ディスプレイ4に含まれるか否かを判定する(ステップS702)。ディスプレイ4の画面オフセットは(1400,1050)、画面サイズは(1400,1050)であり、ウィンドウAの左上端の座標は(30,30)であるので、DX=1400、DY=1050、DW=1400、DH=1050、WX[1]=30、WY[1]=30を式(1)、式(2)に代入すると、それぞれ
1400<30<2800…(1´)
1050<30<2010…(2´)
となり、式(1´)、式(2´)はいずれも成立しないため、ウィンドウAの左上端はディスプレイ4に含まれないと判断しステップS703に進む。
【0038】
ステップS703では、ウィンドウAの右下端の座標(RIGHT[1],BOTTOM[1])が故障ディスプレイ4に含まれるか否かを判定する。ウィンドウAのウィンドウサイズ(WW,WH)=(640,480)であるため、RIGHT[1]=WX[1]+WW[1]=30+640=670、BOTTOM[1]=WY[1]+WH[1]=30+480=510となり、これらを式(5)、式(6)に代入すると、それぞれ
1400<670<2800…(5´)
1050<510<2010…(6´)
となる。式(5´)、式(6´)はいずれも成立しないため、ウィンドウAの右下端はディスプレイ4に含まれないと判断する。結果、ウィンドウAは左上端、右下端のいずれもディスプレイ4に含まれないため、ウィンドウ情報を再配置ウィンドウリストに登録せず、インデックスIを1加算してI=2とする(ステップS705)。
【0039】
次に、インデックスIが表示されているウィンドウ数を超えたかどうか判断する。今、表示されているウィンドウ数は8なので超えていないと判断され、ステップS702に戻る。そして、引き続きインデックスI=2のウィンドウBに対して、ディスプレイ4に含まれるか否かの判定を行う。ウィンドウB、ウィンドウC、ウィンドウD、ウィンドウEについて、ウィンドウAと同様にウィンドウ抽出手段12にて判定を行った結果、これらのウィンドウはディスプレイ4に含まれないと判定される。
【0040】
次に、インデックスI=6のウィンドウFの判定動作について説明する。ステップS702において、ウィンドウFの左上端が故障ディスプレイ4に含まれるか否かを判定する。ウィンドウFの左上端の座標は図4より(1450,1100)であるので、DX=1400、DY=1050、DW=1400、DH=1050、WX[6]=1450、WY[6]=1100を式(1)、式(2)に代入すると、それぞれ
1400<1450<1400+1400…(1´)
1050<1100<1050+1050…(2´)
となり、式(1´)、式(2´)は共に成立する。よって、ウィンドウFの左上端はディスプレイ4に含まれると判断しステップS704に進み、ウィンドウ再配置リストにウィンドウFのウィンドウ情報を登録する。
【0041】
次に、ステップS705においてインデックスIが1加算され、I=7となる。I=7は表示されているウィンドウ数8を超えていないため(ステップS706)、ステップS702に戻り、ウィンドウGがディスプレイ4に含まれるかどうかの判定を行う。ウィンドウG、ウィンドウHについてもウィンドウFと同様にウィンドウ抽出手段12による判定を行った結果、ウィンドウG、ウィンドウHはディスプレイ4に含まれると判定し、ウィンドウG、ウィンドウHのウィンドウ情報を再配置ウィンドウリストに登録する。
【0042】
ウィンドウHについての判定動作のステップS705において、インデックスIを1加算してI=9となる。I=9は表示されているウィンドウ数8を超えているため(ステップS706)、全てのウィンドウについて故障ディスプレイ4に含まれる否かの判定を終えたものと判断し、ウィンドウ抽出手段12における抽出処理が終了する。
【0043】
<ウィンドウ再配置>
図8は、ウィンドウ抽出手段12が抽出した故障ディスプレイに表示されていたウィンドウのリスト(再配置ウィンドウリスト)を示している。再配置ウィンドウリストは、ウィンドウ抽出手段12が抽出したウィンドウのウィンドウ情報を、図4に示すウィンドウ情報テーブルから抜き出した構成となっている。ここでは図7に示すようにディスプレイ4が故障しており、ディスプレイ4上にはウィンドウF、ウィンドウG、ウィンドウHが表示されていたので、再配置ウィンドウリストにはこれらのウィンドウのウィンドウ情報が示されている。
【0044】
図9は、ウィンドウ再配置手段13が行うウィンドウ再配置処理のフローチャートである。ウィンドウ再配置手段13は、再配置ウィンドウリストに格納されているウィンドウ情報を元に再配置ウィンドウ一覧を正常なディスプレイ1〜3に表示する(ステップS901)。
【0045】
図10に、図8に示した再配置ウィンドウを元に表示する再配置ウィンドウ一覧を示す。図10において再配置ウィンドウ一覧では、ウィンドウFを選択するためのボタン30と、ウィンドウGを選択するためのボタン31と、ウィンドウHを選択するためのボタン32が表示されている。
【0046】
図9に戻って、ユーザーがマウスやキーボードにて再配置ウィンドウ一覧から再配置するウィンドウを選択する(ステップS902)。例えばウィンドウFが選択されたとすると、正常なディスプレイ1〜3のうち最も若いディスプレイ番号のディスプレイ1にウィンドウFを表示する(ステップS903)。ウィンドウFがディスプレイ1上の他のウィンドウに重なってしまう場合は、ユーザーの指示に応じてウィンドウFのサイズを変更するか、他のディスプレイに移動する。
【0047】
そして、ウィンドウFを再配置ウィンドウリストから削除し(ステップS904)、再配置ウィンドウリストが空かどうか判断する(ステップS905)。ウィンドウG、ウィンドウHがまだ再配置ウィンドウリストに残っているため、ステップS901に戻って、再配置ウィンドウ一覧を表示する。ここで、再配置ウィンドウ一覧にはウィンドウGを選択するためのボタンと、ウィンドウHを選択するためのボタンが表示されている。
【0048】
以下、ウィンドウGやウィンドウHについてもユーザーの選択を受けてウィンドウFと同様の処理を行う。すなわち、再配置ウィンドウリストが空になるまでステップS901〜ステップS905を繰り返し、ウィンドウG、ウィンドウHを正常なディスプレイ1〜3に再配置する。
【0049】
再配置後のマルチディスプレイ5を図11に示す。図11において、ウィンドウF、ウィンドウGはサイズを変更することなくディスプレイ1に再配置されている。ウィンドウHはディスプレイ1に一旦再配置されるものの、ディスプレイ1上の他のウィンドウと重なるため、ユーザー操作により任意の他の正常なディスプレイに移動される。図11では、ディスプレイ3に移動している。さらに、ディスプレイ3においてウィンドウD及びウィンドウEと重ならないようにユーザー操作により適宜サイズ変更されて配置される。
【0050】
<効果>
本発明のマルチディスプレイシステムによれば、以下の効果を奏する。すなわち、本発明のマルチディスプレイシステムは、格子状に配置された複数のディスプレイ1〜4により一体の画面として構成されたマルチディスプレイ5と、マルチディスプレイ5に映像を出力するマルチ画面表示計算機6とを備え、マルチ画面表示計算機6は、各ディスプレイ1〜4の状態を取得し、故障か否かを判断する故障検知手段9と、故障検知手段9で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常な前記ディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段13とを備えるので、予め故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていた情報が失われることを防ぐことができる。
【0051】
また、本発明のマルチディスプレイシステムにおいて、マルチ画面表示計算機6は、各ディスプレイ1〜4の位置及びサイズを含む画面配置情報を管理する画面配置情報管理手段10と、各ディスプレイ1〜4上に表示されるウィンドウの位置及びサイズを含むウィンドウ情報を管理するウィンドウ情報管理手段11と、画面配置情報とウィンドウ情報を基に、故障検知手段9で故障と判断したディスプレイ4に表示されているウィンドウを抽出するウィンドウ抽出手段12とをさらに備えるので、予め故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていた情報が失われることを防ぐことができる。
【0052】
また、本発明のマルチディスプレイシステムにおいて、ウィンドウ再配置手段13は、ユーザーが選択したウィンドウをユーザーの指示に応じてサイズを変更したうえで再配置することが可能であるため、故障したディスプレイに表示されているウィンドウを適切なサイズで再表示することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1〜4 ディスプレイ、5 マルチディスプレイ、6 マルチ画面表示計算機、7 通信中継装置、8 通信手段、9 故障検知手段、10 画面配置情報管理手段、11 ウィンドウ情報管理手段、12 ウィンドウ抽出手段、13 ウィンドウ再配置手段、30 ウィンドウF選択ボタン、31 ウィンドウG選択ボタン、32 ウィンドウH選択ボタン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のディスプレイで1つの表示画面を構成するマルチディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のディスプレイを格子状に配置し一つの画面として表示可能にするマルチディスプレイシステムが製品化され、電力や交通などインフラ分野の監視制御システムにおいて広く用いられている。監視制御は一時の停滞も許されない分野であり、監視映像や監視情報を表示するマルチディスプレイシステムには高度な信頼性が要求されている。
【0003】
このため、ディスプレイが自身の故障検知を行う機能を持ち、RS-232CやEthernet(登録商標)といった汎用通信インタフェースを使って外部に故障通知を行うことが可能な製品もある。監視制御システムではこの機能を利用して故障状態を検出し、縮退運転等の故障制御を行うことが可能である。
【0004】
例えば特許文献1に示される表示方式では、予めディスプレイの故障状態に応じた縮退運転のための表示パターンを準備しておき、故障状態に応じて表示パターンを呼び出し、表示されているウィンドウの配置を変更することにより、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイに表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭59−30300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される表示方式では、縮退運転時に予め登録されたパターンしか表示しないため、画面に表示すべきウィンドウの数や種類が変わったときにパターンを登録し直さなければならず、柔軟に対応できないという問題があった。
【0007】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、事前に故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイ内に再配置することが可能なマルチディスプレイシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマルチディスプレイシステムは、格子状に配置された複数のディスプレイにより一体の画面として構成されたマルチディスプレイと、前記マルチディスプレイに映像を出力するマルチ画面表示計算機とを備え、前記マルチ画面表示計算機は、前記各ディスプレイの状態を取得し、故障か否かを判断する故障検知手段と、前記故障検知手段で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常な前記ディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマルチディスプレイシステムは、故障検知手段で故障と判断したディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常なディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段を備えるので、事前に故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを正常なディスプレイ内に再配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るマルチディスプレイシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る画面配置情報テーブルを示す図である。
【図3】本発明に係るマルチディスプレイシステムを構成する各ディスプレイの左上端座標を示す図である。
【図4】本発明に係るウィンドウ情報テーブルを示す図である。
【図5】本発明に係るマルチディスプレイシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係るウィンドウ抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図7】一つのディスプレイが故障した状態の、本発明に係るマルチディスプレイの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る再配置ウィンドウリストを示す図である。
【図9】本発明に係るウィンドウ再配置手段の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係るディスプレイに表示される再配置対象ウィンドウ一覧を示す図である。
【図11】ウィンドウを再配置した状態の本発明に係るマルチディスプレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<構成>
図1は、本発明に係るマルチディスプレイシステムの全体構成を示すブロック図である。図1において、マルチディスプレイシステムはマルチディスプレイ5と、マルチディスプレイ5の表示を制御するマルチ画面表示計算機6と、マルチディスプレイ5とマルチ画面表示計算機6の通信を中継する通信中継装置7とを備えている。
【0012】
マルチディスプレイ5は縦2台、横2台の合計4台のディスプレイ1〜4を一体配置して構成しており、横2800画素、縦2100画素の解像度を持つ。ディスプレイ1〜4は、RS-232CやEthernet(登録商標)などの汎用通信インタフェースを備え、計算機などの外部機器と汎用通信インタフェースを介して通信することで外部からの各種制御や状態監視が可能な業務向けの大型表示装置である。またディスプレイ1〜4は、光源にランプやLEDを使ったDLP方式プロジェクタ方式や液晶方式の表示装置であり、横1400画素、縦1050画素の解像度を有する。
【0013】
マルチ画面表示計算機6はMicrosoft社のWindows(登録商標)オペレーティングシステムやLinux(登録商標)オペレーティングシステムが動作し、RS-232CやEthernet(登録商標)などの汎用通信インタフェースを備えている。また、マルチ画面表示計算機6は、複数の映像出力端子を持ち、複数のディスプレイと接続して一体となった画面(デスクトップ画面)を表示することが可能なマルチグラフィックカードを備えたパソコンである。
【0014】
通信中継装置7はマルチディスプレイ5とマルチ画面表示計算機6の間に設けられ、複数のディスプレイ1〜4とマルチ画面表示計算機6をEthernet(登録商標)ケーブルやRS−232Cケーブルにより接続して相互通信を可能とする。
【0015】
図1において、マルチ画面表示計算機6は、通信手段8、ディスプレイ1〜4の故障を検知する故障検知手段9、画面配置情報テーブルを管理する画面配置情報管理手段10、ウィンドウ情報テーブルを管理するウィンドウ情報管理手段11、故障したディスプレイに表示されていたウィンドウを抽出するウィンドウ抽出手段12、正常なディスプレイ上にウィンドウを再配置するウィンドウ再配置手段13をさらに備えている。
【0016】
通信手段8は通信中継装置7を介してディスプレイ1〜4と通信し、ディスプレイ1〜4の状態監視や各種制御を行うものである。
【0017】
故障検知手段9は通信手段8からディスプレイ1〜4の状態を取得する。その結果、表示続行が不可能なディスプレイや状態取得そのものが行えないディスプレイがあれば、当該ディスプレイは故障したものと判断する。
【0018】
ウィンドウ抽出手段12は、画面配置情報管理手段10が持つ画面配置情報テーブルとウィンドウ情報管理手段11が持つウィンドウ情報テーブルを参照し、故障したディスプレイに全部または一部が表示されているウィンドウを抽出する。
【0019】
ウィンドウ再配置手段13は、ウィンドウ抽出手段12にて故障したディスプレイに表示されていると判断されたウィンドウのリストをマルチディスプレイ5上に表示し、ユーザーがマウスやキーボードなどを使って選択したウィンドウを正常な(故障していない)ディスプレイに表示する。
【0020】
図1ではウィンドウA、ウィンドウBがディスプレイ1に表示されており、ウィンドウCがディスプレイ2に、ウィンドウD、ウィンドウEがディスプレイ3に、ウィンドウF、ウィンドウGがディスプレイ4に表示されている。また、ウィンドウHはディスプレイ2とディスプレイ4に跨って表示されている。これらのウィンドウは、例えば監視カメラの映像、監視しているプラントの数値情報などの監視情報画面などである。
【0021】
図2は、画面配置情報管理手段10にて管理されている画面配置情報テーブルを示している。画面配置情報テーブルはディスプレイ毎の画面配置情報から構成されており、本発明のマルチディスプレイ5は4つのディスプレイ1〜4から構成されているため、4つの画面配置情報を持つ。画面番号1の行はディスプレイ1、画面番号2の行はディスプレイ2、画面番号3の行はディスプレイ3、画面番号4の行はディスプレイ4のそれぞれ画面配置情報である。
【0022】
画面配置情報は画面番号の他、IPアドレス、画面オフセット、画面サイズから構成される。画面番号は左上端のディスプレイを0として、左から右、上から下へ昇順に番号付けした値となり、ディスプレイ1は画面番号1、ディスプレイ2は画面番号2、ディスプレイ3は画面番号3、ディスプレイ4は画面番号4となる。IPアドレスはディスプレイのEthernet(登録商標)インタフェースの識別番号であり、ディスプレイ1は192.168.100.1、ディスプレイ2は192.168.100.2、ディスプレイ3は192.168.100.3、ディスプレイ4は192.168.100.4となる。
【0023】
画面オフセットはマルチディスプレイ5全体の画面の座標を表す大画面座標における各ディスプレイの左上端の座標(DX,DY)であり、単位は画素である。画面サイズは幅方向をDW、高さ方向をDHで表し、単位は画素である。
【0024】
図3は大画面座標と各ディスプレイの左上端の座標の関係を示す図である。マルチディスプレイ5の画面の左上端は(0,0)、右下端は(2799,2099)となり、ディスプレイ1の画面の左上端は(0,0)、ディスプレイ2の画面の左上端は(1400,0)、ディスプレイ3の画面の左上端は(0,1050)、ディスプレイ4の画面の左上端は(1400,1050)となる。画面サイズは各ディスプレイの画面の画素単位の大きさを表し、ディスプレイ1〜4はすべて同一のサイズ(1400,1050)となる。
【0025】
図4は、ウィンドウ情報管理手段11にて管理されているウィンドウ情報テーブルを示す。図1に示すように8個のウィンドウがマルチディスプレイ5に表示されているため、ウィンドウ情報テーブルには8つのウィンドウ情報が格納されている。ウィンドウ情報は、インデックス、ウィンドウタイトル、ウィンドウID、ウィンドウ位置、ウィンドウサイズから構成されている。インデックスはウィンドウ情報テーブルにおける順番を表す値である。ウィンドウIDはウィンドウを識別するための値であり、OSがマイクロソフト社のWindows(登録商標)であればウィンドウハンドルが該当するが、OSをマイクロソフト社のWindows(登録商標)に限定するものではない。ウィンドウ位置は大画面座標におけるウィンドウの左上端の座標(WX,WY)であり、単位は画素である。ウィンドウサイズは幅方向をDW、高さ方向をDHで表し、単位は画素である。
【0026】
<動作>
図5は、本発明のマルチディスプレイシステムの動作を示すフローチャートである。以下、図5に沿ってマルチディスプレイシステムの動作について説明する。
【0027】
まず、故障検知手段9は通信手段8を使って、ディスプレイ1〜4に対して定期的に状態取得を行う(ステップS601)。状態取得間隔は要求される故障検知の時間に従って決めればよく、例えば10秒である。さらに故障検知手段9は、状態取得の結果に従いディスプレイ1〜4が故障か否かを判断する(ステップS602)。いずれのディスプレイ1〜4も正常であれば(ステップS602でNO)、ステップS601に戻って状態取得を継続する。
【0028】
ディスプレイが故障であるか否かの判断要因はディスプレイによって様々であるが、例えばランプが不点灯であれば、映像表示が不可能であるため故障と判断する。その他、冷却ファンが停止した場合は温度異常となり表示を続けられないので、故障と判断する。あるいは、ディスプレイから状態問い合わせに対する応答がない場合にも、ディスプレイの表示制御を行う事ができないため、故障と判断する。今、状態取得の結果ディスプレイ1〜3には異常がなく、ディスプレイ4はランプ不点灯であるので、ディスプレイ4を故障と判断し、ステップS602でYESとなる。
【0029】
次に、ウィンドウ抽出手段12が故障ディスプレイ4上に表示されていたウィンドウを抽出する(ステップS603)。
【0030】
その後、ウィンドウ抽出手段12が抽出したウィンドウを正常なディスプレイ上に再配置する(ステップS604)。再配置処理が終わると再びステップS601に戻って状態取得を繰り返す。
【0031】
<ウィンドウ抽出>
図6はウィンドウ抽出手段12のウィンドウ抽出動作を示すフローチャートである。まずステップS701において、判定すべきウィンドウのインデックスIを1に初期化する。つまり、ウィンドウ情報テーブルにおける最初のウィンドウについて判定を行うことにする。次に、インデックスIのウィンドウの左上端が故障したディスプレイに含まれるかどうかを判定する(ステップS702)。具体的には、故障したディスプレイの画面オフセットを(DX,DY)、画面サイズを(DW,DH)、ウィンドウの左上端の座標を(WX[I],WY[I])として、以下の式を満たすかどうかで判定する。
【0032】
DX<WX[I]<DX+DW …(1)
DY<WY[I]<DY+DH …(2)
式(1),(2)を両方満たす場合、ウィンドウの左上端が故障したディスプレイに入ると判定し、ステップS704へ進んで再配置ウィンドウリストにウィンドウ情報を登録する。式(1),(2)の少なくともいずれかを満たさない場合にはステップS703に進み、インデックスIのウィンドウの右下端が故障したディスプレイに入るかどうか判定する。インデックスIのウィンドウの右下端の座標(RIGHT[I],BOTTOM[I])は、ウィンドウサイズを(WW[I],WH[I])とすると、
RIGHT[I]=WX[I]+WW[I] …(3)
BOTTOM[I]=WY[I]+WH[I] …(4)
と表され、以下の式を満たすかどうかで判定する。
【0033】
DX<RIGHT[I]<DX+DW …(5)
DY<BOTTOM[I]<DY+DH …(6)
式(5)、式(6)を両方満たす場合には、ウィンドウの右下端が故障したディスプレイに入ると判定してステップS704に進み、当該ウィンドウのウィンドウ情報を再配置ウィンドウリストへ登録する。その後、ステップS705へ進む。一方、式(5)、式(6)の少なくともいずれかが満たされない場合、ウィンドウの右下端が故障したディスプレイに入らないと判断し、ステップS705へ進む。
【0034】
次にステップS705において、インデックスIを1加算して次のウィンドウのインデックスを求める。
【0035】
最後にステップS706において、インデックスIが表示されているウィンドウ数を超えるかどうか判定し、超えていた場合、表示されているすべてのウィンドウについての判定が終わったことになり、ウィンドウ抽出動作を終了する。超えていなかった場合は、ステップS702に戻って次のウィンドウの判定を行う。
【0036】
図7は、ディスプレイ4が故障したときのマルチディスプレイシステムの画面を表す図である。以下、図7に示すディスプレイ4が故障した際のウィンドウ抽出手段12の動作を図6に沿って再び説明する。
【0037】
まず、インデックスI=1とし(ステップS701)、ウィンドウAが故障ディスプレイ4に含まれるか否かを判定する(ステップS702)。ディスプレイ4の画面オフセットは(1400,1050)、画面サイズは(1400,1050)であり、ウィンドウAの左上端の座標は(30,30)であるので、DX=1400、DY=1050、DW=1400、DH=1050、WX[1]=30、WY[1]=30を式(1)、式(2)に代入すると、それぞれ
1400<30<2800…(1´)
1050<30<2010…(2´)
となり、式(1´)、式(2´)はいずれも成立しないため、ウィンドウAの左上端はディスプレイ4に含まれないと判断しステップS703に進む。
【0038】
ステップS703では、ウィンドウAの右下端の座標(RIGHT[1],BOTTOM[1])が故障ディスプレイ4に含まれるか否かを判定する。ウィンドウAのウィンドウサイズ(WW,WH)=(640,480)であるため、RIGHT[1]=WX[1]+WW[1]=30+640=670、BOTTOM[1]=WY[1]+WH[1]=30+480=510となり、これらを式(5)、式(6)に代入すると、それぞれ
1400<670<2800…(5´)
1050<510<2010…(6´)
となる。式(5´)、式(6´)はいずれも成立しないため、ウィンドウAの右下端はディスプレイ4に含まれないと判断する。結果、ウィンドウAは左上端、右下端のいずれもディスプレイ4に含まれないため、ウィンドウ情報を再配置ウィンドウリストに登録せず、インデックスIを1加算してI=2とする(ステップS705)。
【0039】
次に、インデックスIが表示されているウィンドウ数を超えたかどうか判断する。今、表示されているウィンドウ数は8なので超えていないと判断され、ステップS702に戻る。そして、引き続きインデックスI=2のウィンドウBに対して、ディスプレイ4に含まれるか否かの判定を行う。ウィンドウB、ウィンドウC、ウィンドウD、ウィンドウEについて、ウィンドウAと同様にウィンドウ抽出手段12にて判定を行った結果、これらのウィンドウはディスプレイ4に含まれないと判定される。
【0040】
次に、インデックスI=6のウィンドウFの判定動作について説明する。ステップS702において、ウィンドウFの左上端が故障ディスプレイ4に含まれるか否かを判定する。ウィンドウFの左上端の座標は図4より(1450,1100)であるので、DX=1400、DY=1050、DW=1400、DH=1050、WX[6]=1450、WY[6]=1100を式(1)、式(2)に代入すると、それぞれ
1400<1450<1400+1400…(1´)
1050<1100<1050+1050…(2´)
となり、式(1´)、式(2´)は共に成立する。よって、ウィンドウFの左上端はディスプレイ4に含まれると判断しステップS704に進み、ウィンドウ再配置リストにウィンドウFのウィンドウ情報を登録する。
【0041】
次に、ステップS705においてインデックスIが1加算され、I=7となる。I=7は表示されているウィンドウ数8を超えていないため(ステップS706)、ステップS702に戻り、ウィンドウGがディスプレイ4に含まれるかどうかの判定を行う。ウィンドウG、ウィンドウHについてもウィンドウFと同様にウィンドウ抽出手段12による判定を行った結果、ウィンドウG、ウィンドウHはディスプレイ4に含まれると判定し、ウィンドウG、ウィンドウHのウィンドウ情報を再配置ウィンドウリストに登録する。
【0042】
ウィンドウHについての判定動作のステップS705において、インデックスIを1加算してI=9となる。I=9は表示されているウィンドウ数8を超えているため(ステップS706)、全てのウィンドウについて故障ディスプレイ4に含まれる否かの判定を終えたものと判断し、ウィンドウ抽出手段12における抽出処理が終了する。
【0043】
<ウィンドウ再配置>
図8は、ウィンドウ抽出手段12が抽出した故障ディスプレイに表示されていたウィンドウのリスト(再配置ウィンドウリスト)を示している。再配置ウィンドウリストは、ウィンドウ抽出手段12が抽出したウィンドウのウィンドウ情報を、図4に示すウィンドウ情報テーブルから抜き出した構成となっている。ここでは図7に示すようにディスプレイ4が故障しており、ディスプレイ4上にはウィンドウF、ウィンドウG、ウィンドウHが表示されていたので、再配置ウィンドウリストにはこれらのウィンドウのウィンドウ情報が示されている。
【0044】
図9は、ウィンドウ再配置手段13が行うウィンドウ再配置処理のフローチャートである。ウィンドウ再配置手段13は、再配置ウィンドウリストに格納されているウィンドウ情報を元に再配置ウィンドウ一覧を正常なディスプレイ1〜3に表示する(ステップS901)。
【0045】
図10に、図8に示した再配置ウィンドウを元に表示する再配置ウィンドウ一覧を示す。図10において再配置ウィンドウ一覧では、ウィンドウFを選択するためのボタン30と、ウィンドウGを選択するためのボタン31と、ウィンドウHを選択するためのボタン32が表示されている。
【0046】
図9に戻って、ユーザーがマウスやキーボードにて再配置ウィンドウ一覧から再配置するウィンドウを選択する(ステップS902)。例えばウィンドウFが選択されたとすると、正常なディスプレイ1〜3のうち最も若いディスプレイ番号のディスプレイ1にウィンドウFを表示する(ステップS903)。ウィンドウFがディスプレイ1上の他のウィンドウに重なってしまう場合は、ユーザーの指示に応じてウィンドウFのサイズを変更するか、他のディスプレイに移動する。
【0047】
そして、ウィンドウFを再配置ウィンドウリストから削除し(ステップS904)、再配置ウィンドウリストが空かどうか判断する(ステップS905)。ウィンドウG、ウィンドウHがまだ再配置ウィンドウリストに残っているため、ステップS901に戻って、再配置ウィンドウ一覧を表示する。ここで、再配置ウィンドウ一覧にはウィンドウGを選択するためのボタンと、ウィンドウHを選択するためのボタンが表示されている。
【0048】
以下、ウィンドウGやウィンドウHについてもユーザーの選択を受けてウィンドウFと同様の処理を行う。すなわち、再配置ウィンドウリストが空になるまでステップS901〜ステップS905を繰り返し、ウィンドウG、ウィンドウHを正常なディスプレイ1〜3に再配置する。
【0049】
再配置後のマルチディスプレイ5を図11に示す。図11において、ウィンドウF、ウィンドウGはサイズを変更することなくディスプレイ1に再配置されている。ウィンドウHはディスプレイ1に一旦再配置されるものの、ディスプレイ1上の他のウィンドウと重なるため、ユーザー操作により任意の他の正常なディスプレイに移動される。図11では、ディスプレイ3に移動している。さらに、ディスプレイ3においてウィンドウD及びウィンドウEと重ならないようにユーザー操作により適宜サイズ変更されて配置される。
【0050】
<効果>
本発明のマルチディスプレイシステムによれば、以下の効果を奏する。すなわち、本発明のマルチディスプレイシステムは、格子状に配置された複数のディスプレイ1〜4により一体の画面として構成されたマルチディスプレイ5と、マルチディスプレイ5に映像を出力するマルチ画面表示計算機6とを備え、マルチ画面表示計算機6は、各ディスプレイ1〜4の状態を取得し、故障か否かを判断する故障検知手段9と、故障検知手段9で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常な前記ディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段13とを備えるので、予め故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていた情報が失われることを防ぐことができる。
【0051】
また、本発明のマルチディスプレイシステムにおいて、マルチ画面表示計算機6は、各ディスプレイ1〜4の位置及びサイズを含む画面配置情報を管理する画面配置情報管理手段10と、各ディスプレイ1〜4上に表示されるウィンドウの位置及びサイズを含むウィンドウ情報を管理するウィンドウ情報管理手段11と、画面配置情報とウィンドウ情報を基に、故障検知手段9で故障と判断したディスプレイ4に表示されているウィンドウを抽出するウィンドウ抽出手段12とをさらに備えるので、予め故障時の表示パターンを設定することなく、故障したディスプレイに表示されていた情報が失われることを防ぐことができる。
【0052】
また、本発明のマルチディスプレイシステムにおいて、ウィンドウ再配置手段13は、ユーザーが選択したウィンドウをユーザーの指示に応じてサイズを変更したうえで再配置することが可能であるため、故障したディスプレイに表示されているウィンドウを適切なサイズで再表示することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1〜4 ディスプレイ、5 マルチディスプレイ、6 マルチ画面表示計算機、7 通信中継装置、8 通信手段、9 故障検知手段、10 画面配置情報管理手段、11 ウィンドウ情報管理手段、12 ウィンドウ抽出手段、13 ウィンドウ再配置手段、30 ウィンドウF選択ボタン、31 ウィンドウG選択ボタン、32 ウィンドウH選択ボタン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配置された複数のディスプレイにより一体の画面として構成されたマルチディスプレイと、
前記マルチディスプレイに映像を出力するマルチ画面表示計算機とを備え、
前記マルチ画面表示計算機は、
前記各ディスプレイの状態を取得し、故障か否かを判断する故障検知手段と、
前記故障検知手段で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常な前記ディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段とを備えた、
マルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記マルチ画面表示計算機は、
前記各ディスプレイの位置及びサイズを含む画面配置情報を管理する画面配置情報管理手段と、
前記各ディスプレイ上に表示されるウィンドウの位置及びサイズを含むウィンドウ情報を管理するウィンドウ情報管理手段と、
前記画面配置情報と前記ウィンドウ情報を基に、前記故障検知手段で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウを抽出するウィンドウ抽出手段とをさらに備える、
請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
前記ウィンドウ再配置手段は、ユーザーが選択したウィンドウをユーザーの指示に応じてサイズを変更したうえで再配置することが可能な、
請求項1又は2に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項1】
格子状に配置された複数のディスプレイにより一体の画面として構成されたマルチディスプレイと、
前記マルチディスプレイに映像を出力するマルチ画面表示計算機とを備え、
前記マルチ画面表示計算機は、
前記各ディスプレイの状態を取得し、故障か否かを判断する故障検知手段と、
前記故障検知手段で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウの一覧を正常な前記ディスプレイに表示し、前記一覧からユーザーが選択したウィンドウを正常な前記ディスプレイ内に再配置するウィンドウ再配置手段とを備えた、
マルチディスプレイシステム。
【請求項2】
前記マルチ画面表示計算機は、
前記各ディスプレイの位置及びサイズを含む画面配置情報を管理する画面配置情報管理手段と、
前記各ディスプレイ上に表示されるウィンドウの位置及びサイズを含むウィンドウ情報を管理するウィンドウ情報管理手段と、
前記画面配置情報と前記ウィンドウ情報を基に、前記故障検知手段で故障と判断した前記ディスプレイに表示されているウィンドウを抽出するウィンドウ抽出手段とをさらに備える、
請求項1に記載のマルチディスプレイシステム。
【請求項3】
前記ウィンドウ再配置手段は、ユーザーが選択したウィンドウをユーザーの指示に応じてサイズを変更したうえで再配置することが可能な、
請求項1又は2に記載のマルチディスプレイシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−174150(P2012−174150A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37815(P2011−37815)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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