説明

マルチディスプレイ装置

【課題】マルチディスプレイ装置において、個々の映像表示装置で個別に識別設定を行うことなく、各映像表示装置がそれぞれの表示すべき映像を表示できるマルチディスプレイ装置を実現する。
【解決手段】縦列接続の最初の映像表示装置2a’は、入力された複数の静止画信号の映像ブランク期間の所定の時間差を識別して該当する静止画信号を表示部に映像表示すると共に、静止画信号の垂直同期信号を削除して次の映像表示装置2b’に出力し、複数のそれぞれの静止画信号の垂直同期信号の開始位置を所定の時間差だけ遅らせて次の映像表示装置2c’に出力し、次の映像表示装置2d’及びこれに続く映像表示装置は、最初の映像表示装置2a’と同様に信号処理すると共に、入力された複数の静止画信号の内、垂直同期信号が削除された静止画信号については、その静止画信号を表示部に映像表示せず、静止画信号の垂直同期信号を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像表示装置を互いに或いは外部機器を通じて接続し、1つのディスプレイのように機能する静止画表示マルチディスプレイ装置(以下、マルチディスプレイ装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複数の映像表示装置を接続して1つのディスプレイのように機能させるマルチディスプレイ装置が広く用いられている。大画面を必要とする展示会やコンサートなど業務用を中心とし、設置場所の環境や用途・目的に合わせて接続数を自由に増減出来る事が特徴である。
【0003】
マルチディスプレイ装置は、複数の映像表示装置によって構成されているため、それぞれの映像装置に映像信号を伝送する必要がある。いくつかの従来技術による映像信号の伝送方法について図10から図13を用いて解説する。
【0004】
図10は、特許文献1のマルチディスプレイ表示システムの構成図である。静止画信号を生成する映像信号発生装置1と、9つの映像表示装置2aから2iで構成されている。
【0005】
映像信号発生装置1は、ディジーチェーン接続などの手段により縦列接続された映像表示装置9台に対応するため、映像を9分割し各映像表示装置2aから2i用の静止画信号を生成する。各静止画信号は、映像表示装置2aへ出力される。
【0006】
図11は、特許文献1の映像信号発生装置1で出力される静止画信号のタイミングチャートと、仮に映像表示した場合の映像イメージの図である。図11の(a)から(i)は、映像表示装置2aから2i用に9分割された静止画信号のタイミングチャートであり、その右側はこれらの静止画信号をそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージを表している。図11の(a)から(i)では、本来の映像信号の表示開始位置は、垂直同期信号の立ち上がり位置である開始位置からテレビジョン信号規格に基づく時間差だけ一般的に遅らせている。本来の映像信号は、図示しないが、通常の映像表示装置の表示領域にひとつの静止画の全ての映像信号が通常のように表示される。また、図11の(a)から(i)では、各映像表示装置2aから2i用の映像信号の各開始位置は、この本来の映像信号の表示開始位置に対し所定の時間差「A」だけ順次遅らせて、各静止画信号に映像ブランク期間「A」から「9A」を形成してある。従って、図11の(a)から(i)のように、映像ブランク期間「A」から「9A」が広がると、通常の映像表示装置に仮に表示した場合、図11の(a)から(i)の右側に示されるように、映像イメージは、通常の映像表示装置の表示領域の上方に黒帯状の領域が広がって生じ、全体に下方へシフトした表示となる(映像の一部が表示領域の下方へはみ出した映像)。
【0007】
例えば、図11(a)は、映像表示装置2a用の静止画信号のタイミングチャートである。そのタイミングチャートは、本来の映像信号の表示開始位置と映像表示装置2aの映像信号の表示開始位置に差が「A」であることがわかる。そして、映像イメージにおいては「A」の分だけ映像ブランク期間として表示領域の上方に黒帯状の領域が生じることが確認できる。同様に、図11(b)から(i)は、それぞれ「2A」・・・「9A」と、異なった映像ブランク期間を有している事が確認できる。これら図11(a)から(i)の静止画信号が、順次シリアルに図10の映像信号発生装置1から出力される。
【0008】
映像表示装置2aの動作について図12および図13を用いて説明する。
【0009】
図12は、特許文献1に係る映像表示装置2aのブロック図である。その内部は、表示部40、リモコン受光部60、表示位置検出部33、イメージプロセッサ36、CPU37などによって構成されている。映像信号発生装置1から出力された図11(a)から(i)の各静止画信号を映像表示装置2aに入力すると、映像表示装置2aは以下の処理を実施する。まず、表示位置検出部33が各映像表示装置用の映像信号の各映像ブランク期間を検出し、CPU37によって、後述するあらかじめユーザーによって設定され記憶された映像ブランク期間の設定値と比較が行われ、比較の結果、検出した静止画信号の映像ブランク期間の値「A」とあらかじめ映像表示装置2aに記憶されている映像ブランク期間の値「A」が一致した場合は、その静止画信号をイメージプロセッサ36で処理し表示部40に映像表示する。両者が一致しなければ、映像表示は実施されない。
【0010】
続いて、あらかじめユーザーによって設定され記憶される映像ブランク期間の設定値について、説明する。
【0011】
図13は、特許文献1の映像表示装置2aから2iの映像信号識別設定画面である。映像表示装置2aから2i用に伝送された静止画信号を識別するために、各映像表示装置に、それぞれの映像ブランク期間「A」・・・「9A」に対応する映像信号識別番号「1」・・・「9」を設定する。例えば、映像表示装置2aでは、図13の(a)に示すように、ユーザーのリモコン操作によって「1」が設定され、映像表示装置2aには映像ブランク期間「A」が記憶される。また、映像表示装置2bでは、図13の(b)に示すように、ユーザーのリモコン操作によって「2」が設定され、映像表示装置2bには映像ブランク期間「2A」が記憶される。このユーザーによるリモコン操作が映像表示装置の台数分順次繰り返され、最後に、映像表示装置2iに「9」が設定され、映像表示装置2iには映像ブランク期間「9A」が記憶される。
【0012】
映像表示装置2aに、映像表示装置2a用の静止画信号が入力されると、映像ブランク期間「A」を検出し、あらかじめ映像表示装置2aに設定し記憶された映像ブランク期間「A」と比較する。両者が同一であると判定されると、図11の(a)映像表示装置2a用の映像信号の開始位置を本来の映像信号の開始位置に戻して、映像表示装置2aの表示部40に映像表示を行う。なお、各静止画信号から検出された映像ブランク期間の値と各映像表示装置に記憶された映像ブランク期間の値が同一で無い場合は映像表示しない。
【0013】
以降も同様に、映像表示装置2bから2iで、それぞれに対応する「2A」から「9A」の映像ブランク期間の静止画信号のみを表示することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特願2010−220724(平成22年9月30日出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1のマルチディスプレイ装置は、映像表示装置2a用から2i用の静止画信号の差を持たせた映像ブランク期間を映像表示装置2aから2iが識別することを特徴としている。このため、異なった映像ブランク期間で動作するようにあらかじめ各映像表示装置にユーザーが個別設定を行う必要があり、図10の映像表示装置2aから2iのように、台数が多いほど操作設定が煩雑となる課題があった。
【0016】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、映像ブランク期間に差を持たせた静止画信号を利用するマルチディスプレイ装置において、個々の映像表示装置で個別に識別設定を行うことなく、各映像表示装置がそれぞれの表示すべき静止画信号を判別して映像表示できるマルチディスプレイ装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明のマルチディスプレイ装置は、一つの映像を複数分割した静止画信号を、それぞれ映像表示する複数の映像表示装置が縦列接続されたマルチディスプレイ装置であって、 前記静止画信号は、少なくとも映像信号と垂直同期信号で構成されており、複数のそれぞれの前記映像信号の実際の表示開始位置を本来の映像信号の表示開始位置に対し所定の時間差だけ順次遅らせて前記静止画信号に映像ブランク期間を形成してあり、 前記複数の映像表示装置は、前記静止画信号を映像表示する表示部と前記垂直同期信号を制御する同期制御部を有し、縦列接続の最初の前記映像表示装置は、入力された複数の前記静止画信号の前記映像ブランク期間の前記所定の時間差を識別して該当する前記静止画信号を前記表示部に映像表示すると共に、前記同期制御部により、該当する前記静止画信号の垂直同期信号を削除して次の前記映像表示装置に出力し、複数のそれぞれの前記静止画信号の前記垂直同期信号の開始位置を前記所定の時間差だけ遅らせて次の前記映像表示装置に出力し、次の前記映像表示装置及びこれに続く前記映像表示装置は、前記最初の映像表示装置と同様に信号処理すると共に、入力された複数の前記静止画信号の内、前記垂直同期信号が削除された前記静止画信号については、その前記静止画信号を前記表示部に映像表示せず、前記同期制御部によりその前記静止画信号の垂直同期信号を制御しないことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のマルチディスプレイ装置は、一つの映像を複数分割した静止画信号を、それぞれ映像表示する複数の映像表示装置が縦列接続されたマルチディスプレイ装置であって、前記静止画信号は、少なくとも映像信号と垂直同期信号で構成されており、前記映像信号の本来の表示開始位置は、前記垂直同期信号の開始位置からテレビジョン信号規格に基づく時間差だけ遅れているが、複数のそれぞれの前記映像信号の実際の表示開始位置は、前記本来の映像信号の表示開始位置に対し所定の時間差だけ順次遅らせて前記静止画信号に映像ブランク期間を形成してあり、前記複数の映像表示装置は、前記静止画信号を映像表示する表示部と前記垂直同期信号を制御する同期制御部を有し、縦列接続の最初の前記映像表示装置は、入力された複数の前記静止画信号の前記映像ブランク期間の前記所定の時間差を識別して最初の前記静止画信号を前記表示部に映像表示すると共に、前記同期制御部により、最初の前記静止画信号の垂直同期信号を削除して次の前記映像表示装置に出力し、最初の前記静止画信号に続くそれぞれの前記静止画信号の前記垂直同期信号の開始位置を前記所定の時間差だけ遅らせて次の前記映像表示装置に出力し、次の前記映像表示装置及びこれに続く前記映像表示装置は、入力された複数の前記静止画信号の内、前記垂直同期信号が削除された前記静止画信号については、その前記静止画信号を前記表示部に映像表示せず、前記同期制御部によりその前記静止画信号の垂直同期信号を制御せず、前記垂直同期信号が削除されていない前記静止画信号については、最初の前記映像表示装置と同様に、入力された複数の前記静止画信号の前記映像ブランク期間の前記所定の時間差を識別して該当する前記静止画信号を前記表示部に映像表示すると共に、前記同期制御部により、該当する前記静止画信号の垂直同期信号を削除して次の前記映像表示装置に出力し、該当する前記静止画信号に続くそれぞれの前記静止画信号の前記垂直同期信号の開始位置を前記所定の時間差だけ遅らせて次の前記映像表示装置に出力したことを特徴とする。
【0019】
本発明のマルチディスプレイ装置は、一つの映像を複数分割した前記静止画信号の分割配置と、複数の映像表示装置の配置とが対応していることを特徴とする。
【0020】
本発明のマルチディスプレイ装置は、一つの映像を複数分割した前記静止画信号の複数の前記映像信号の順番と前記縦列接続された複数の映像表示装置の順番とが対応していることを特徴とする。
【0021】
本発明のマルチディスプレイ装置は、前記縦列接続の最初の前記映像表示装置に入力される複数のそれぞれの前記静止画信号の前記映像ブランク期間は、前記所定の時間差を順次整数倍した期間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマルチディスプレイ装置は、映像ブランク期間に差を持たせた静止画信号を利用するマルチディスプレイ装置において、個々の映像表示装置で個別に識別設定を行うことなく、各映像表示装置がそれぞれの表示すべき静止画信号を判別して映像表示できるマルチディスプレイ装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例に係るマルチディスプレイ表示システムの構成図である。
【図2】本実施例に係る映像信号発生装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る映像表示装置のブロック図である。
【図4】本発明に係る映像信号発生装置で分割処理される映像のイメージ図である。
【図5】図1のa点における各静止画信号のタイミングチャートと、その静止画信号を仮に映像表示させた場合の映像イメージの図である。
【図6】図1のb点における静止画信号のタイミングチャートと、その静止画信号を仮に映像表示させた場合の映像イメージの図である。
【図7】図1のc点における静止画信号のタイミングチャートと、その静止画信号を仮に映像表示させた場合の映像イメージの図である。
【図8】図1のi点における静止画信号のタイミングチャートと、その静止画信号を仮に映像表示させた場合の映像イメージの図である。
【図9】本発明に係る映像表示装置の表示状態を時系列で示した図である。
【図10】特許文献1のマルチディスプレイ表示システムの構成図である。
【図11】特許文献1の映像信号発生装置から伝送される各静止画信号と映像イメージ図である。
【図12】特許文献1に係る映像表示装置のブロック図である。
【図13】特許文献1の映像表示装置の映像信号識別設定画面である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
本発明の実施例について以下に述べるが、図10から図13を使用して説明した特許文献1の従来技術の構成と同じ本発明の構成については同じ符号を用いて説明する。最初に図1から図3を用いて、本実施例における機器の構成について説明する。
【0025】
図1は、本実施例に係るマルチディスプレイ表示システムの構成図である。1は静止画信号を生成する映像信号発生装置である。また、2a′から2i′はそれぞれ映像表示装置であり全体として9画面マルチディスプレイ装置を構成している。映像信号発生装置1から出力された静止画信号は、映像表示装置2a′に入力し、以降、ディジーチェーン接続等の縦列接続によって映像表示装置2i′まで順に出力される。なお、本実施例における各映像表示装置の解像度を横1920×縦1080としたので、9面で、横5760×縦3240の解像度となる。
【0026】
図2は、本実施例に係る映像信号発生装置1のブロック図で、従来技術の特許文献1の映像信号発生装置1の構成と同じである。映像信号発生装置1は、PC(パーソナルコンピュータ)20と映像信号送出部10によって構成され、映像信号送出部10は、画像メモリ11、グラフィックスコントローラ12、映像信号制御部13、HDMI出力部14で構成されている。PC20は映像データを生成し出力することができる。PC20から出力された映像データは、グラフィックスコントローラ12に入力される。グラフィックスコントローラ12は、映像データを9分割し、画像メモリ11を用いてビデオフォーマットに適合させ、9分の1画像ずつ時分割した静止画信号を生成する。
【0027】
図5で詳細に説明する静止画信号には垂直同期信号と水平同期信号およびドットクロックが含まれている。グラフィックスコントローラ12で生成された静止画信号は、映像信号制御部13に入力される。映像信号制御部13では、グラフィックスコントローラ12からの制御信号によって静止画信号毎に映像ブランク期間を形成する処理を実施する。
【0028】
一般的な静止画信号では、本来の映像信号の表示開始位置は、垂直同期信号の立ち上がり位置である開始位置からテレビジョン信号規格に基づく時間差だけ一般的に遅らせている。本願実施例の静止画信号は、従来技術である図10の映像信号発生器1が出力する静止画信号と同じであり、図11に示すように本来の映像信号の表示開始位置に対し所定の時間差「A」だけ順次遅らせて、各静止画信号に映像ブランク期間「A」から「9A」を形成する。映像信号制御部13から出力された映像信号はHDMI出力部14を経て、映像表示装置2a′へと出力される。
【0029】
続いて、マルチディスプレイ装置を構成する映像表示装置について解説する。
【0030】
図3は、本発明に係る映像表示装置のブロック図である。ブロック図全体を囲う2a′は映像表示装置を示し、スケーラー30、表示部40、画像メモリ50によって構成され、スケーラー30は、HDMI出力部31、HDMI入力部32、表示位置検出部33、ROM34、RAM35、イメージプロセッサ36、CPU37、フラッシュメモリ38、同期制御部39によって構成されている。なお、図1の映像表示装置2b′から2i′も、図3の映像表示装置2a′と同じ構成である。また、本願実施例の映像表示装置2a′から2i′と従来技術である図12の映像表示装置2aから2iとの相違点は、前者が、同期制御部39を有した点と後者にある図12のリモコン受光部60を有さない点である。
【0031】
CPU37は、スケーラー30全体の制御を行っており、表示位置検出部33とROM34とRAM35とイメージプロセッサ36と同期制御部39が接続されている。
【0032】
ROM34には映像表示装置2a′を動作させるためのプログラムが記憶されており、CPU37は、ROM34の内容をRAM35に展開し、プログラムを実行する。また、ROM34には、映像表示装置2aに表示させる静止画信号を識別する目的で、識別対象となる映像ブランク期間の値「A」が記憶されている。この値は、接続される全ての映像表示装置2a′から2i′で共通である。
【0033】
HDMI入力部32には、映像信号発生装置1から入力されたHDMI規格形式の信号が入力し、映像信号、水平同期信号、垂直同期信号、ドットクロックが復号された信号が取り出される。HDMI入力部32は、HDMI出力部31と表示位置検出部33とイメージプロセッサ36に接続されており、これらの各部へ各HDMI入力部32から取り出した各信号を出力する。
同期制御部39は、HDMI入力部32から受け取った垂直同期信号を、CPU37からの指示によって削除または遅延させて、HDMI出力部31に出力することが出来る。
従って、HDMI入力部32から入力された垂直同期信号だけは、同期制御部39を経由してHDMI出力部31に接続されている。
【0034】
表示位置検出部33は、入力した静止画信号の映像ブランク期間の所定の時間差を検出する。映像ブランク期間の検出方法は、図5(a)に示す垂直同期信号の立ち上がり開始位置を基準として、本来の映像信号の表示位置に相当する位置を割り出し、その位置から実際に入力した各映像表示装置用の映像信号の開始位置までの時間差から測定できる。
【0035】
なお、本実施例とは別の方法として、水平同期信号を基準として映像信号の開始までの期間をドットクロックでサンプリングすることでも可能である。
【0036】
CPU37は、表示位置検出部33で検出した静止画信号の映像ブランク期間とROM34に記憶した映像表示装置2a′から2i′共通の映像ブランク期間「A」と比較し、入力された静止画信号が映像表示装置2a′で表示するべきものかを判定する。入力された静止画信号の映像ブランク期間が所定の時間差「A」である場合、表示すべき静止画信号であると判定され、CPU37は、イメージプロセッサ36に映像信号の処理実施を指示し、画像メモリ50に映像信号を展開し、図5右の映像イメージのような映像ブランク期間の所定の時間差「A」が無い正常の映像に戻して表示部40で表示する。同時に、CPU37は、同期制御部39に指示して、映像表示装置2a′用の垂直同期信号を削除してHDMI出力部31へ出力させる。また、表示位置検出部33で検出した入力された静止画信号の映像ブランク期間が「A」以外、すなわち映像表示装置2a′で表示すべきでない静止画信号と判定されれば、CPU37は、その静止画の映像信号を表示部40で表示する処理を指示せず、同期制御部39によって、垂直同期信号を所定の時間差「A」期間(詳細後述)遅延させてHDMI出力部31へ出力する。映像表示装置2a′は、新たな表示すべき静止画信号が入力されるまで表示した静止画信号の映像を表示し続ける。
【0037】
なお、本実施例においては、表示すべきでない静止画信号について同期制御部39によって垂直同期信号を「A」期間後退させる手段について説明したが、垂直同期信号の「A」期間後退に替えて、映像信号を「A」期間前倒ししても良い。以上が、映像表示装置2a′の機器構成の説明であり、映像表示装置2b′から2i′も同様の構成である。
【0038】
続いて、本実施例の映像信号発生装置1における映像信号の生成について図4と図5を用いて説明する。
【0039】
図4は、本発明に係る映像信号発生装置1で処理される映像のイメージ図である。図4の(a)は、図2のPC20が生成する横5760×縦3240の解像度の「楕円」の映像データである。図4(b)は、グラフィックスコントローラ12において図4(a)の映像を9分割したものであり、それぞれが横1920×縦1080の解像度の映像データであることを表している。グラフィックコントローラ12によって、9分割された映像データは、9分の1ずつ映像信号に変換され、水平同期信号と垂直同期信号をともなって静止画信号として映像信号制御部13に入力される。なお、9分割され映像信号制御部13に入力される信号は図2の説明で前述した本来の映像信号である。
【0040】
図5は、図1のa点における各静止画信号のタイミングチャートと、その右側はこれらの静止画信号をそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージを表している。図5(a)から図5(i)は、映像表示装置2a′から2i′用に9分割された静止画信号である。タイミングチャートは、垂直同期信号、本来の映像信号、各映像表示装置用の映像信号、水平同期信号を、配列したものである。なお、各静止画信号のタイミングチャートにおける本来の映像信号は比較のために記載したものであり、図1のa点からi点において実際には存在しない。また、図5(a)から図5(i)の映像信号に応じ仮に映像表示した場合の映像イメージをタイミングチャートの右側に示している。
【0041】
図2の映像信号制御部13は、グラフィックスコントローラ12からの指示を受けて、図5(a)から図5(i)の映像信号の表示開始位置を所定の時間差「A」ずつ遅延させる。この差が映像イメージに映像ブランク期間として現れる。例えば、図5(a)では、本来の映像信号の表示開始位置と映像表示装置2a′用の映像信号の表示開始位置には所定の時間差「A」が存在し、映像イメージには「A」の分だけ映像ブランク期間が生じる。図5(b)から図5(i)も同様に、「2A」、「3A」・・・「9A」と、異なった映像ブランク期間を持たせる。図5に示すように、縦列接続の最初の映像表示装置2a′に入力される複数のそれぞれの静止画信号の映像ブランク期間「A」、「2A」、「3A」・・・「9A」は、所定の時間差「A」を順次整数倍した期間となっている。
【0042】
図5(a)から図5(i)の各映像表示装置用の映像信号は、垂直同期信号および水平同期信号とともに図5(a)から図5(i)の順に時分割で図2の映像信号制御部13からHDMI出力部14に入力される。なお、補足となるが、映像ブランク期間の所定の時間差の検出は、図3の中で記述したように、図5(a)に示す垂直同期信号の立ち上がり開始位置を基準として、本来の映像信号の表示位置に相当する位置を割り出し、その位置から実際に入力した各映像表示装置用の映像信号の開始位置までの時間差から測定できる。
【0043】
図2のHDMI出力部14では、HDMI規格形式の静止画信号に変換され映像表示装置2a′に向けて出力される。
【0044】
本実施例のマルチディスプレイ装置における静止画信号の処理について図6から図8を用いて説明する。
【0045】
図6は、図1のb点における静止画信号のタイミングチャートと、その右側はこれらの静止画信号をそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージを表している。図6(a′)から図6(i′)は、映像表示装置2a′で同期信号の処理をされた後の各静止画信号と映像イメージを表している。
【0046】
図6(a′)から図6(i′)に示すタイミングチャートは、上から順に、垂直同期信号、本来の映像信号、各映像表示装置用の映像信号、水平同期信号である。なお、本来の映像信号は比較のために記載したものである。また、図6(a′)から図6(i′)の各静止画信号に応じそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージをタイミングチャートの右側に示している。
【0047】
映像表示装置2a′は、図1のa点の図5(a)から(i)に示す各静止画信号を受けて、映像ブランク期間の検出と映像表示処理を実施するとともに、同期制御部39によって、b点の図6(a′)から図6(i′)に示す各静止画信号に変換する。
【0048】
具体的には、図6(a′)で示す映像表示装置2a′用の静止画信号は、図1のa点においては図5(a)に示されるように垂直同期信号が存在していたが、図1のb点では映像表示装置2a′の同期制御部39によって図6(a′)に示されるように垂直同期信号が削除されている。これにより、映像表示装置2a′以降の映像表示装置2b′から2i′が映像表示装置2a′用の静止画信号を受け取っても垂直同期信号が削除されているので映像表示は行われないものとなる。
【0049】
また、図6(b′)に示す映像表示装置2b′用の映像信号の映像ブランク期間は、図1のa点において図5(b)に示されるように「2A」だったものが、図1のb点においては図6(b′)に示されるように「A」に変換されている。これにより、映像表示装置2b′が、この静止画信号を受け取ると、映像ブランク期間が「A」であるため映像表示を実行する。
【0050】
更に、図6(c′)に示す映像表示装置2c′用の映像信号の映像ブランク期間は、図1のa点において「3A」だったものが、図1のb点において「2A」に変換され、以降も同様の変換が行われ、(i′)に示す映像表示装置2i′用の映像信号の映像ブランク期間は、図1のa点において「9A」だったものが、図1のb点において「8A」に変換される。
【0051】
図7は、図1のc点における静止画信号のタイミングチャートと、その右側はこれらの静止画信号をそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージを表している。図7(a′′)から図7(i′′)は、映像表示装置2b′で処理された後の各静止画信号と映像イメージを表している。
【0052】
図7(a′′)から図7(i′′)に示す、タイミングチャートは、上から順に、垂直同期信号、本来の映像信号、各映像表示装置用の映像信号、水平同期信号である。なお、本来の映像信号は比較のために記載したものである。また、図7(a′′)から図7(i′′)の静止画信号に応じそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージをタイミングチャートの右側に示している。
【0053】
映像表示装置2b′は、図1のb点の図6(a′)から図6(i′)に示す静止画信号を受けて、映像ブランク期間の検出と映像表示処理を実施すると同時に、同期制御部39によって、図1のc点の図7(a′′)から図7(i′′)に示す信号波形に変換する。
【0054】
具体的には、図7(a′′)で示す映像表示装置2a′用の静止画信号は、b点で垂直同期信号が存在しないため図3の表示位置検出部33は垂直同期信号を検出しない。垂直同期信号が検出されなければ図3のイメージプロセッサ36における映像処理も行われず表示部40に映像表示されることもない。
【0055】
また、図7(b′′)に示す映像表示装置2b′用の映像信号の映像ブランク期間は、図1のb点で「A」に変換されているため、映像表示装置2b′で映像表示処理を実施するとともに、図1のc点では映像表示装置2b′の同期制御部39によって垂直同期信号が削除される。これにより、映像表示装置2c′から2i′が映像表示装置2b′用の静止画信号を受け取っても映像表示は行われないものとなる。
【0056】
また、図7(c′′)に示す映像表示装置2c′用の映像信号の映像ブランク期間は、図1のb点において「2A」だったものが、図1のc点において「A」に変換されている。これにより、映像表示装置2c′が、この静止画信号を受け取ると、映像ブランク期間が「A」であるため映像表示を実行する。以降も同様の変換が行われ、図7(i′′)に示す映像表示装置2iの映像ブランク期間は、図1のb点において「8A」だったものが、図1のb点において「7A」に変換される。
【0057】
図8は、図1のi点における静止画信号のタイミングチャートと、その右側はこれらの静止画信号をそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージを表している。図8(a′′′)から図8(i′′′)は、映像表示装置2c′で処理された後の各静止画信号と映像イメージを表している。
【0058】
図8(a′′′)から図8(i′′′)に示す、タイミングチャートは、上から順に、垂直同期信号、本来の映像信号、各映像表示装置用の映像信号、水平同期信号である。なお、本来の映像信号は比較のために記載したものである。また、図8(a′′′)から図8(i′′′)の静止画信号に応じそのまま通常の映像表示装置に仮に表示した場合の映像イメージをタイミングチャートの右側に示している。
【0059】
映像表示装置2i′は、図1のi点の図8(a′′′)から図8(i′′′)に示す静止画信号を受けて、映像ブランク期間の検出と映像表示処理を実施する。
【0060】
具体的には、図8(a′′′)で示す映像表示装置2a′用の静止画信号は、垂直同期信号が存在しないため何の処理も行わない。
【0061】
また、図8(b′′′)に示す映像表示装置2b′用の静止画信号も、垂直同期信号が存在しないため何の処理も行わない。
【0062】
同様に、図8(c′′′)に示す映像表示装置2c′用の静止画信号も、垂直同期信号が存在しないため何の処理も行わない。
【0063】
そして、図8(i′′′)に示す映像表示装置2i′用の静止画信号の映像ブランク期間は、図1のi点で「A」に変換されているため、映像表示装置2i′で映像表示処理を実施する。以上が、本実施例のマルチディスプレイ装置における静止画信号の処理の解説である。
【0064】
続いて、本発明に係る映像表示装置の表示状態について解説する。
【0065】
図9は、本発明に係る映像表示装置の表示状態を時系列で示した図である。図9(0)は初期状態であり、何も表示されていない。図9(A)は、時分割された最初の信号である静止画信号(図5の(a))が、映像表示装置2aすなわち左上の画面に表示された状態である。以降、順次静止画信号が入力され、9画面分を入力し全ての表示が完了した状態が図9(I)である。このように、図4(b)に示す一つの映像を複数分割した静止画信号の分割配置は、図9(A)から(I)に示す映像表示装置2a′から2i′の配置と対応している。そして、図4(b)に示す一つの映像を複数分割した静止画信号の複数の映像信号の順番と図9(A)から(I)に示す映像表示装置2a′から2i′の順番とが対応している。
【0066】
以上が、本実施例における映像信号発生装置1と、映像表示装置2a′から2i′の説明である。本実施例を実施する事で、静止画信号は、垂直同期信号、映像信号、水平同期信号以外に別途識別信号を用いることなく、しかも特許文献1のような各映像表示装置の映像ブランク期間の個別設定の必要が無くマルチディスプレイ装置による映像表示を実現することが可能となる。
【0067】
なお、上述の実施例で説明した複数の映像表示装置で表示する静止画表示動作を「動画の1フレーム分」と捉え、高速で(例えば、1秒間に30フレーム)静止画信号を転送表示する事で、本発明は動画にも対応する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、複数の映像表示装置を接続し、一体の表示部として機能するマルチディスプレイ装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 映像信号発生装置
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2a′、2b′、2c′、2d′、2e′、2f′、2g′、2h′、2i′ 映像表示装置
11 画像メモリ
12 グラフィックスコントローラ
13 映像信号制御部
14 HDMI出力部
20 PC
30 スケーラー
31 HDMI出力部
32 HDMI入力部
33 表示位置検出部
34 ROM
35 RAM
36 イメージプロセッサ
37 CPU
38 フラッシュメモリ
39 同期制御部
40 表示部
50 画像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの映像を複数分割した静止画信号を、それぞれ映像表示する複数の映像表示装置が縦列接続されたマルチディスプレイ装置であって、
前記静止画信号は、少なくとも映像信号と垂直同期信号で構成されており、
複数のそれぞれの前記映像信号の実際の表示開始位置を本来の映像信号の表示開始位置に対し所定の時間差だけ順次遅らせて前記静止画信号に映像ブランク期間を形成してあり、
前記複数の映像表示装置は、前記静止画信号を映像表示する表示部と前記垂直同期信号を制御する同期制御部を有し、
縦列接続の最初の前記映像表示装置は、入力された複数の前記静止画信号の前記映像ブランク期間の前記所定の時間差を識別して該当する前記静止画信号を前記表示部に映像表示すると共に、前記同期制御部により、該当する前記静止画信号の垂直同期信号を削除して次の前記映像表示装置に出力し、複数のそれぞれの前記静止画信号の前記垂直同期信号の開始位置を前記所定の時間差だけ遅らせて次の前記映像表示装置に出力し、
次の前記映像表示装置及びこれに続く前記映像表示装置は、前記最初の映像表示装置と同様に信号処理すると共に、入力された複数の前記静止画信号の内、前記垂直同期信号が削除された前記静止画信号については、その前記静止画信号を前記表示部に映像表示せず、前記同期制御部によりその前記静止画信号の垂直同期信号を制御しない
ことを特徴とするマルチディスプレイ装置。
【請求項2】
一つの映像を複数分割した静止画信号を、それぞれ映像表示する複数の映像表示装置が縦列接続されたマルチディスプレイ装置であって、
前記静止画信号は、少なくとも映像信号と垂直同期信号で構成されており、
前記映像信号の本来の表示開始位置は、前記垂直同期信号の開始位置からテレビジョン信号規格に基づく時間差だけ遅れているが、複数のそれぞれの前記映像信号の実際の表示開始位置は、前記本来の映像信号の表示開始位置に対し所定の時間差だけ順次遅らせて前記静止画信号に映像ブランク期間を形成してあり、
前記複数の映像表示装置は、前記静止画信号を映像表示する表示部と前記垂直同期信号を制御する同期制御部を有し、
縦列接続の最初の前記映像表示装置は、入力された複数の前記静止画信号の前記映像ブランク期間の前記所定の時間差を識別して該当する前記静止画信号を前記表示部に映像表示すると共に、前記同期制御部により、該当する前記静止画信号の垂直同期信号を削除して次の前記映像表示装置に出力し、複数のそれぞれの前記静止画信号の前記垂直同期信号の開始位置を前記所定の時間差だけ遅らせて次の前記映像表示装置に出力し、
次の前記映像表示装置及びこれに続く前記映像表示装置は、
入力された複数の前記静止画信号の内、前記垂直同期信号が削除された前記静止画信号については、その前記静止画信号を前記表示部に映像表示せず、前記同期制御部によりその前記静止画信号の垂直同期信号を制御せず、
前記垂直同期信号が削除されていない前記静止画信号については、最初の前記映像表示装置と同様に、入力された複数の前記静止画信号の前記映像ブランク期間の前記所定の時間差を識別して該当する前記静止画信号を前記表示部に映像表示すると共に、前記同期制御部により、該当する前記静止画信号の垂直同期信号を削除して次の前記映像表示装置に出力し、該当する前記静止画信号に続くそれぞれの前記静止画信号の前記垂直同期信号の開始位置を前記所定の時間差だけ遅らせて次の前記映像表示装置に出力した
ことを特徴とするマルチディスプレイ装置。
【請求項3】
一つの映像を複数分割した前記静止画信号の分割配置と、複数の映像表示装置の配置とが対応していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチディスプレイ装置。
【請求項4】
一つの映像を複数分割した前記静止画信号の複数の前記映像信号の順番と前記縦列接続された複数の映像表示装置の順番とが対応していることを特徴とする請求項3記載のマルチディスプレイ装置。
【請求項5】
前記縦列接続の最初の前記映像表示装置に入力される複数のそれぞれの前記静止画信号の前記映像ブランク期間は、前記所定の時間差を順次整数倍した期間であることを特徴とする請求項4記載のマルチディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−212061(P2012−212061A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78247(P2011−78247)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】