説明

マルチプロセッシングを用いて超音波映像を形成する超音波システム及び方法

【課題】本発明は、マルチプロセッシングを用いて超音波映像を形成する超音波システムに関する。
【解決手段】本発明による超音波システムは、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送信し、対象体から反射された超音波反射信号に基づいて受信信号を出力するプローブと、前記受信信号に遅延を加えて合算して前記スキャンラインのそれぞれに対応するスキャンライン信号を形成するビームフォーマと、複数のプロセッサとを備え、前記のプロセッサのそれぞれは、個別に前記スキャンライン信号を処理して超音波映像信号を出力するマルチプロセッシング部と、前記超音波映像信号にディスプレイのため映像処理を行う映像処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断分野に関し、特にマルチプロセッシングを用いて超音波映像を形成する超音波システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波システムは、被検体の体表から体内の所望部位に向かって超音波信号を照射し、反射された超音波信号(超音波エコー信号)の情報を用いて軟部組織の断層や血流に関するイメージを無侵襲で得る装置である。
【0003】
従来の超音波システムは、超音波映像を形成するために、トランスデューサを介して得た超音波受信信号を専用ハードウェアの超音波処理モジュールを介して順次的なパイプライン方式で処理して超音波映像データを形成する。
【0004】
【特許文献1】特表2002−530177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のハードウェア基盤の処理方式は超音波映像形成のための専用モジュールを備えなければならないため、経済的ではなかった。また、製品の小型化、ユーザの利便性及び製品のメンテナンスにおいて問題があった。
【0006】
マルチプロセッシングで超音波映像のリアルタイム性を保障することができ、超音波映像信号の形成及び加工時間を短縮できる超音波システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による超音波システムは、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送信し、対象体から反射された超音波反射信号に基づいて受信信号を出力するプローブと、前記受信信号に遅延を加えて合算して前記スキャンラインそれぞれに対応するスキャンライン信号を形成するビームフォーマと、複数のプロセッサを備え、前記のプロセッサそれぞれは個別に前記スキャンライン信号を処理して超音波映像信号を出力するマルチプロセッシング部と、前記超音波映像信号にディスプレイのための映像処理を行う映像処理部とを備える。
【0008】
本発明による、 複数のプロセッサを備える超音波システムでの超音波映像形成方法は、a)複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送信する段階と、b)対象体から反射された超音波反射信号に基づいて受信信号を形成する段階と、c)前記受信信号に遅延を加えて合算し、前記スキャンラインのそれぞれに対応するスキャンライン信号を形成する段階と、d)前記プロセッサの個数に従って前記スキャンライン信号を分割する段階と、e)前記分割されたスキャンライン信号を前記プロセッサに割り当てる段階と、f)個別に前記スキャンライン信号を処理して超音波映像信号を出力する段階と、g)前記超音波映像信号にディスプレイのための映像処理を行う段階とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、信号処理型ASIC(Application_Specific Integrated Circuit)及びDSP(Digital Signal Processing)チップなどの専用ハードウェア及びソフトウェアをマルチプロセッサによって、代替することによる費用節減効果があり、専用ハードウェアで処理が難しかったソフトウェアアルゴリズムの適用でイメージの質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を添附した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例による超音波システムのブロック図である。本発明の実施例による超音波システム100は超音波信号を送受信するためのプローブ110を備える。プローブ110は、超音波信号と電気的信号を相互変換する圧電性物質で構成された複数の変換素子を備える。変換素子はパルサー(図示せず)から提供された電気的パルス信号に応答して超音波信号を生成する。このように生成された超音波信号はスキャンラインに沿って送信される。また、変換素子は対象体から反射された超音波信号を電気的受信信号に変換する。電気的受信信号は変換素子に接続されるチャネルを介して出力される。
【0011】
超音波システム100は、ビームフォーマ(beam former)120をさらに備える。ビームフォーマ120は変換素子と集束点との間の距離を考慮してチャネルを通じて入力された受信信号に遅延を加える。ビームフォーマ120は遅延された受信信号を合算してスキャンラインのそれぞれに対応するロウ(raw)信号(以下、スキャンライン信号)を形成する。
【0012】
超音波システムは、スキャンライン信号を処理して超音波映像信号を形成するマルチプロセッシング部130をさらに備える。マルチプロセッシング部130は信号割当部132、複数のプロセッサ134_1〜134_n及び信号合成部136を備える。信号割当部132は図2に示された通りスキャンライン信号を複数のグループに分けてスキャンライン信号を複数のプロセッサ134_1〜134_nに割り当てる。ここで、グループの数はプロセッサ134_1〜134_nの個数に従って決定できる。スキャンライン個数が「S」個である場合、各グループに含まれたスキャンライン信号と関連したスキャンラインの個数(k)は次の式1のように計算できる。
【0013】
S/n=k ・・・(式1)
ここで、「n」はプロセッサ134_1〜134_nの個数を示す。
【0014】
プロセッサ134_1〜134_nのそれぞれは、信号割当部132で割り当てられたk個のスキャンラインのスキャンライン信号を受信する。プロセッサ134_1〜134_nのそれぞれはスキャンライン信号を処理して部分映像信号を形成する。まず、プロセッサ134_1〜134_nは超音波システム100で映像処理に適した振幅を有するようにスキャンライン信号を増幅する。プロセッサ134_1〜134_nは、増幅された信号で減衰損失を補償する。また、プロセッサ134_1〜134_nはディスプレイ部の動的範囲に該当するように増幅された信号を圧縮し、これを復調(demodulation)して単一パルス信号またはスパイク信号を形成する。プロセッサ134_1〜134_nは復調された信号に対して濾波(reject)制御して雑音を除去し、部分映像信号を形成する。
【0015】
本発明の一実施例で、別途のプロセッサ134_1〜134_nでマルチプロセッシングが行われたが、本発明の他の実施例ではマルチコアプロセッサを用いてマルチプロセッシングを行うことができる。
【0016】
信号合成部136は、プロセッサ134_1〜134_nのそれぞれから出力される部分映像信号を合成して映像フレームに該当する超音波映像信号を出力する。本発明の実施例によるマルチプロセッシング部130はメモリ(図示せず)をさらに備え、メモリにはスキャンライン信号の処理に必要なアルゴリズムを格納することができる。
【0017】
超音波システム100は、映像処理部140をさらに備える。映像処理部140は、超音波映像信号に対してディスプレイのための映像処理を行う。例えば、映像処理部140は超音波映像信号をディスプレイに適した映像フォーマットにスキャン変換する。また、映像処理部140はスキャン変換された超音波映像信号をレンダリングしてピクセルデータを形成する。ディスプレイ部150は、ピクセルデータに基づいてスクリーン上に超音波映像をディスプレイすることができる。
【0018】
本発明の一実施例で、超音波映像信号のスキャン変換が部分映像信号を合成した後、映像処理部140で実施されることを記述したが、本発明の他の実施例ではスキャン変換がマルチプロセッシング部130で実施できる。即ち、プロセッサ134_1〜134_nのそれぞれは分割超音波映像信号をスキャン変換し、信号合成部136はスキャン変換された分割超音波映像信号を合成することができる。このような場合、映像処理部140はスキャン変換を行わず、超音波映像信号をレンダリングしてピクセルデータを形成することができる。
【0019】
一方、本発明の実施例による超音波システム100は、二つ以上の診断モード映像、例えば、Bモード映像とパワードップラーモード映像を同時に提供する複合モードで作動することができる。このように2つの診断モード映像を同時にディスプレイ部150に表示する複合モードにおいては各診断モード別にデータ量及び演算方法などが相違する。従って、複数のプロセッサ134_1〜134_nは診断モードの個数に従って複数のプロセッサグループに分割することができる。例えば、Bモード映像とパワードップラーモード映像が複合モードで形成されれば、プロセッサ134_1〜134_nはプロセッサ134_1〜134_mを備える第1のプロセッサグループ及びプロセッサ134_m+1〜134_nを備える第2のプロセッサグループに分割できる。第1のプロセッサグループはBモード映像を形成するように作動し、第2のプロセッサグループはパワードップラーモード映像を形成するように作動することができる。即ち、信号割当部132はBモードに該当するスキャンライン信号を第1のプロセッサグループに割り当て、パワードップラーモードに該当するスキャンライン信号を第2のプロセッサグループに割り当てることができる。
【0020】
信号合成部136は、第1のプロセッサグループから出力される分割超音波映像信号を合成してBモード映像フレームに該当するBモード映像信号を出力し、第2のプロセッサグループから出力される分割超音波映像信号を合成してパワードップラーモード映像フレームに該当するパワードップラーモード映像信号を出力する。
【0021】
前記Bモード映像データとPDモード映像データはそれぞれ映像処理部140のスキャン変換過程と後処理過程を経てディスプレイ部150にBモード超音波映像とPDモード超音波映像で表示される。本実施例では複合モードの例としてBモードとPDモードを説明したが、複合モードは前記例に限定されず、Bモード、Cモード、Mモード、PWモード、CWモード、2Dモード及び3Dモードのうち二つ以上のモードの結合からなる。
【0022】
本発明は望ましい実施例を通じて説明し例示したが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の事項及び範疇を逸脱せず、様々な変形及び変更がなされることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例による超音波システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例による信号割当部でスキャンライン信号を分割する例を概略的に示す例示図である。
【符号の説明】
【0024】
100超音波システム
110プローブ
120ビームフォーマ
130マルチプロセッシング部
132信号割当部
134_1〜134_nプロセッサ
136信号合成部
140映像処理部
150ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送信し、対象体から反射された超音波反射信号に基づいて受信信号を出力するプローブと、
前記受信信号に遅延を加えて合算して前記スキャンラインそれぞれに対応するスキャンライン信号を形成するビームフォーマと、
複数のプロセッサを備え、前記のプロセッサそれぞれは個別に前記スキャンライン信号を処理して超音波映像信号を出力するマルチプロセッシング部と、
前記超音波映像信号にディスプレイのための映像処理を行う映像処理部と
を備えることを特徴とする超音波システム。
【請求項2】
前記マルチプロセッシング部は、
前記プロセッサの個数に従って前記スキャンライン信号を分割し、前記分割されたスキャンライン信号を前記プロセッサに割り当てる信号割当部と、
前記プロセッサのそれぞれから出力される分割超音波映像信号を合成するための信号合成部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
前記マルチプロセッシング部は、前記スキャンライン信号処理に必要なアルゴリズムを格納するメモリをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波システム。
【請求項4】
前記プロセッサのそれぞれは、前記スキャンライン信号に対して増幅、補償、圧縮、復調及び濾波を行うことを特徴とする請求項3に記載の超音波システム。
【請求項5】
前記信号割当部は、少なくとも二つの診断モードが同時に行われる複合モードで前記プロセッサを複数のプロセッサグループに分割し、前記プロセッサグループは互いに異なる診断モードのスキャンライン信号を処理することを特徴とする請求項4に記載の超音波システム。
【請求項6】
前記複合モードは、
Bモード、Cモード、Mモード、PWモード、CWモード、2Dモード及び3Dモード中の少なくとも二つのモードを備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波システム。
【請求項7】
前記プロセッサのそれぞれは、前記スキャンライン信号に対してスキャン変換をすることを特徴とする請求項4に記載の超音波システム。
【請求項8】
複数のプロセッサを備える超音波システムでの超音波映像形成方法であって、
a)複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送信する段階と、
b)対象体から反射された超音波反射信号に基づいて受信信号を形成する段階と、
c)前記受信信号に遅延を加えて合算し、前記スキャンラインのそれぞれに対応するスキャンライン信号を形成する段階と、
d)前記プロセッサの個数に従って前記スキャンライン信号を分割する段階と、
e)前記分割されたスキャンライン信号を前記プロセッサに割り当てる段階と、
f)個別に前記スキャンライン信号を処理して超音波映像信号を出力する段階と、
g)前記超音波映像信号にディスプレイのための映像処理を行う段階と
を備えることを特徴とする超音波映像形成方法。
【請求項9】
前記f)段階は、
前記プロセッサのそれぞれで、前記スキャンライン信号に対して増幅、補償、圧縮、復調及び濾波を行う段階
を備えることを特徴とする請求項8に記載の超音波映像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−160401(P2009−160401A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331889(P2008−331889)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(597096909)株式会社 メディソン (269)
【氏名又は名称原語表記】MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】