説明

マルチリーフコリメータ及び放射線治療装置

【課題】放射線の照射範囲を高精度に設定することが可能なマルチリーフコリメータ及び放射線治療装置を提供する。
【解決手段】マルチリーフコリメータ1は、患者の体内における病巣部の形状に合わせて放射線の照射範囲を設定するものである。マルチリーフコリメータ1は、一対のリーフ板群10と、一対の駆動ユニット12とを備える。リーフ板群10は、放射線の照射軸Aと直交する方向に沿って並ぶリーフ板14A,14Bを複数有する。駆動ユニット12は、リーフ板14A,14Bと一対一に接続されると共にリーフ板群10が並ぶ方向にリーフ板14A,14Bを駆動させる駆動機構24が照射軸Aに沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を有する。駆動ユニット12は、リーフ板14A,14Bよりも放射線を照射する放射線源側に位置している

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内における癌等の病巣部の形状に合わせて放射線の照射範囲を設定するマルチリーフコリメータ、及び、病巣部に陽子線等の放射線を照射して病巣部の治療を行なう放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置による癌等の病巣部の治療においては、周辺の正常組織が回復不能な影響を受けないようにすると共に、病巣部のみに致死的な線量を集中させるようにして放射線を照射することが理想である。ところが、通常、病巣部の形状は患者毎に異なっている。
【0003】
そこで、従来、複数のリーフ板によって構成される一対のリーフ板群と、各リーフ板にそれぞれ設けられた複数のL字型金具と、送りねじを介して各L字型金具とそれぞれ連結された複数のモータとを備え、各モータをそれぞれ駆動させることで放射線の照射範囲を患者毎に設定可能としたマルチリーフコリメータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−204284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、放射線を病巣部にのみ照射するため、放射線の照射範囲をできるだけ高精度に設定することが望まれている。ここで、病巣部の外形を多数のリーフ板によって正確に再現するためには、できる限りリーフ板の板厚が薄いことが好ましい。
【0005】
しかしながら、従来のマルチリーフコリメータでは、モータが交互にずれるように配置されていたので、リーフ板の板厚をより薄くしようとした場合、モータが互いに干渉してしまい、モータを配置することが困難となるという問題があった。
【0006】
本発明は、放射線の照射範囲を高精度に設定することが可能なマルチリーフコリメータ及び放射線治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマルチリーフコリメータは、患者の体内における病巣部の形状に合わせて放射線の照射範囲を設定するマルチリーフコリメータであって、リーフ板が放射線の照射軸と直交する仮想軸に沿って並ぶように複数配置されたリーフ板群と、リーフ板と一対一に接続されると共に照射軸に直交し且つ前記仮想軸に直交する方向に沿って当該リーフ板を駆動させる駆動手段が照射軸に沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を複数有する駆動ユニットとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るマルチリーフコリメータでは、駆動ユニットが、駆動手段が照射軸に沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を複数有している。そのため、駆動手段が互いに干渉することなく配列されるようになるので、リーフ板の薄板化に対応可能となっている。その結果、放射線の照射範囲を高精度に設定することが可能となる。
【0009】
また、駆動ユニットは、駆動手段列がリーフ板の駆動方向に沿って並ぶように複数配置されて構成されていることが好ましい。このようにすると、駆動ユニットにおける駆動手段列の配置密度を高めることができるので、マルチリーフコリメータのコンパクト化を図ることが可能となる。
【0010】
また、駆動ユニットは、駆動手段列が仮想軸に沿って並ぶように複数配置されて構成されていることが好ましい。このようにすると、駆動ユニットにおける駆動手段列の配置密度をより高めることができるので、マルチリーフコリメータの更なるコンパクト化を図ることが可能となる。
【0011】
また、リーフ板の駆動方向に沿って回動可能とされると共に照射軸に沿う方向におけるリーフ板の一端側に少なくとも一つ配置された第1回動部材と、リーフ板の駆動方向に沿って回動可能とされると共に照射軸に沿う方向におけるリーフ板の他端側に少なくとも二つ配置された第2回動部材とを更に備え、リーフ板は、第1回動部材及び第2回動部材によって支持されていることが好ましい。このようにすると、リーフ板を確実に支持することが可能となると共に、リーフ板をその駆動方向にスムーズに駆動させることが可能となる。
【0012】
また、仮想軸に沿う方向においてリーフ板群の中央部分に位置するリーフ板の板厚が、仮想軸に沿う方向においてリーフ板群の両側部分に位置するリーフ板の板厚よりも薄くなっていることが好ましい。主として、リーフ板群を構成する複数のリーフ板が並ぶ方向においてリーフ板群の中央部分に位置するリーフ板の板厚によって放射線の照射範囲の精度が決定されるので、このようにすることで、放射線の照射範囲をより高精度に設定することが可能となる。
【0013】
また、駆動ユニットは、リーフ板群よりも放射線を照射する放射線源に近い位置に配置されていることが好ましい。このようにすると、マルチリーフコリメータの患者への近接が駆動ユニットによって阻害されることがなくなる。ここで、放射線はその照射軸と直交する方向に拡がる性質を有しているので、上記のようにマルチリーフコリメータが患者に近接可能とされることで、放射線の照射範囲を高精度に設定することができるようになる。
【0014】
一方、本発明に係る放射線治療装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線源から照射される放射線の照射方向に配置されて放射線の照射範囲を所定形状に設定するマルチリーフコリメータとを備える放射線治療装置であって、マルチリーフコリメータは、複数のリーフ板が放射線の照射軸と直交する仮想軸に沿って配列された一対のリーフ板群と、リーフ板と一対一に接続されると共に照射軸に直交し且つ仮想軸に直交する方向に沿って当該リーフ板を駆動させる駆動手段が照射軸に沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を複数有する駆動ユニットとを有していることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る放射線治療装置では、マルチリーフコリメータの駆動ユニットが、駆動手段が照射軸に沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を複数有している。そのため、駆動手段が互いに干渉することなく配列されるようになるので、リーフ板の薄板化に対応可能となっている。その結果、放射線の照射範囲を高精度に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放射線の照射範囲を高精度に設定することが可能なマルチリーフコリメータ及び放射線治療装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
まず、図1及び図2を参照して、放射線治療装置100の構成について説明する。放射線治療装置100は、図1に示されるように、治療台102と、治療台102を取り囲む回転ガントリ104と、放射線照射装置106と、サイクロトロン(粒子加速器)108とを備える。
【0019】
放射線照射装置106は、治療台102上の患者Pの体内における癌等の病巣部Fに対して治療のための放射線Rを照射する装置である。放射線照射装置106は、回転ガントリ104に取り付けられ、回転ガントリ104によって治療台102の周りを移動可能とされている(図1参照)。放射線照射装置106は、図2に示されるように、散乱体110及びマルチリーフコリメータ1を有する。
【0020】
散乱体110は、サイクロトロン108によって生成され、図示しない輸送装置を通って放射線照射装置106に送り込まれた細い放射線Rを、放射線Rの照射軸Aと直交する方向に拡大させるものである(図2参照)。散乱体110としては、例えば、厚さ数mmの鉛板やアルミ板を用いることができる。ここで、本実施形態において、放射線Rは、α線、β線、γ線、分子線、原子線、中性子線、電子線、陽子線、X線、重粒子線、イオン線、重イオン線等を含むものであり、放射線治療の分野においては、陽子線、重粒子線、X線、中性子線が特に好適に用いられる。
【0021】
マルチリーフコリメータ1は、患者Pの体内における病巣部Fの形状に合わせて放射線Rの照射範囲を定めるものである。マルチリーフコリメータ1は、図2に示されるように、放射線照射装置106において、散乱体110よりも放射線Rの照射方向(X軸方向)に配置されている。
【0022】
次に、図2〜図6を参照して、マルチリーフコリメータ1の構成について詳細に説明する。マルチリーフコリメータ1は、図2及び図3に示されるように、一対のリーフ板群10と、リーフ板群10よりも放射線Rの上流側(放射線源であるサイクロトロン108側)に位置に配置された一対の駆動ユニット12とを備えている。
【0023】
一対のリーフ板群10は、Y軸方向(X軸に直交し且つZ軸に直交する方向)に対向して配置されている。リーフ板群10は、複数(本実施形態において32枚)のリーフ板14Aと複数(本実施形態において20枚)のリーフ板14Bとが、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)に沿って並ぶように配置されて構成されている。具体的には、リーフ板群10は、本実施形態において、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)に沿って、10枚のリーフ板14B、32枚のリーフ板14A及び10枚のリーフ板14Bがこの順に並んで構成されている。
【0024】
リーフ板14A,14Bは、矩形状を呈しており、放射線を遮蔽することができる、8g/cm以上の密度を有する材料(例えば、銅、タンタル、モリブデン)を加工して形成することができる。リーフ板14Aの板厚T(Z軸方向の幅)とリーフ板14Bの板厚Tとは異なっており、本実施形態において、リーフ板14Aの板厚Tは3mm程度に設定され、リーフ板14Bの板厚Tは5mm程度に設定されている。また、本実施形態において、リーフ板14A,14Bの長さ(Y軸方向の幅)Lは共に180mm程度に設定されており、リーフ板14A,14Bの高さ(X軸方向の幅)Hは共に120mm程度に設定されている。そのため、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の中央部分に位置するリーフ板14Aの板厚Tが、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の両端部分に位置するリーフ板14Bの板厚Tよりも薄くなっている。
【0025】
リーフ板14A,14Bには、図4及び図5に示されるように、その高さH方向において対向する一対の側面S,Sに、その長さL方向に延在する溝部16がそれぞれ形成されている。リーフ板14A,14Bの側面S側における溝部16には、1つのミニチュアベアリング(第1回動部材)18が係合しており、リーフ板14A,14Bの側面Sにおける溝部16には、2つのミニチュアベアリング(第2回動部材)18が、Y軸方向において互いに離間した状態で係合している(図4参照)。そのため、リーフ板14A,14Bは、3つのミニチュアベアリング18によって支持されており、その長さL方向にスライド可能とされている。
【0026】
リーフ板14A,14Bは、特に図5において詳しく示されるように、その板厚T方向において対向する一対の側面S,Sであってその高さH方向の中央部分に、その長さL方向に延在する段差部20を有している。また、隣り合うリーフ板14A,14Bの間隔Gは、段差部20の高さDよりも小さく設定されている。これは、放射線Rが、隣り合うリーフ板14A,14Bの間隙を通り抜けるのを防止するためである。本実施形態においては、段差部20の高さDが1mm程度に設定されており、隣り合うリーフ板14A,14Bの間隔Gが0.2mm程度に設定されている。
【0027】
図3に戻って、一対の駆動ユニット12は、Y軸方向(X軸に直交し且つZ軸に直交する方向)に対向して配置されている。駆動ユニット12は、複数(本実施形態において6つ)の第1〜第6駆動機構列22A〜22Aと、複数(本実施形態において6つ)の第1〜第6駆動機構列22B〜22Bとを有している。第1〜第6駆動機構列22A〜22A及び第1〜第6駆動機構列22B〜22Bは、それぞれ放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)に沿って並ぶように配置されている。また、第1〜第6駆動機構列22A〜22Aと第1〜第6駆動機構列22B〜22Bとは、リーフ板14A,14Bの長さ方向(Y軸方向)に沿って並ぶように配置されており、リーフ板群10に対して第1〜第6駆動機構列22B〜22Bが第1〜第6駆動機構列22A〜22Aよりも遠くに位置している。
【0028】
第1、第2、第5、第6駆動機構列22A,22A,22A,22A及び第1、第2、第5、第6駆動機構列22B,22B,22B,22Bは、駆動機構24が放射線Rの照射軸Aに沿って並ぶように複数(本実施形態においては4つ)配置されて構成されている。また、第3、第4駆動機構列22A,22A及び第3、第4駆動機構列22B,22Bは、駆動機構24が放射線Rの照射軸Aに沿って並ぶように複数(本実施形態においては5つ)配置されて構成されている。なお、各駆動機構列22A〜22A,22B〜22Bを構成する駆動機構24は、リーフ板群10を収容する枠体(図示せず)に設けられたリブ(図示せず)に固定されている。
【0029】
駆動機構24は、リーフ板14A,14Bをその長さL方向(Y軸方向)に駆動させるためのものである。駆動機構24は、図6に示されるように、ボールねじ26と、モータ28と、エンコーダ30と、筐体32とを有している。
【0030】
ボールねじ26は、ねじ軸26a及びナット体26bを含んでいる。ねじ軸26aは、一対のベアリング33によって回動可能に筐体32に対して取り付けられている。ナット体26bは、ねじ軸26aと螺合している。ナット体26bには、後述する筐体32のスリット32bから外方に向けて突出する板状部材34が設けられている(図3、図4及び図6参照)。なお、図3及び図4では、一部の板状部材34並びに後述する接続板38,42及び連結部材40を省略して描いている。
【0031】
モータ28は、その軸が連結部材(カップリング)36によってねじ軸26aの一端と連結されている。エンコーダ30は、モータ28に取り付けられており、モータ28の回転角を測定する。
【0032】
筐体32は、外形が直方体形状を呈しており、その内部にボールねじ26を収容している。筐体32の側壁32aには、筐体32の長手方向(Y軸方向)に延びるスリット32bが形成されている(図4参照)。
【0033】
上記の構成を有する駆動機構24は、リーフ板14A,14Bを駆動させるため、リーフ板14A,14Bと一対一に接続されている。具体的には、図4に示されるように、駆動機構列22A〜22Aを構成する駆動機構24とリーフ板14A,14Bとは、接続板38によって一対一に接続されている。接続板38は、一端がスリット32bから突出する板状部材34と接続され、他端がリーフ板14A,14Bと接続されている。接続板38は、その一端から他端にかけて、放射線Rの照射方向(X軸方向)に沿って下方に延び、屈曲部38aにおいて屈曲された後、リーフ板14A,14Bに向かって再び放射線Rの照射方向(X軸方向)に沿って下方に延びている。接続板38は、矩形状を呈する薄板であり、ステンレス板を加工して形成することができる。本実施形態において、接続板38の板厚は0.5mm程度に設定されている。
【0034】
また、図4に示されるように、駆動機構列22B〜22Bを構成する駆動機構24とリーフ板14A,14Bとは、連結部材40及び接続板42によって一対一に接続されている。連結部材40は、一端がスリット32bから突出する板状部材34と接続され、他端が接続板42の一端と接続されており、板状部材34と接続板42とを連結している。連結部材40は、その一端から他端にかけて、リーフ板14A,14Bに向けてY軸方向に沿って直線状に延びている。連結部材40は、矩形状を呈する薄板であり、アルミ板を加工して形成することができる。本実施形態において、連結部材40の板厚は3mm程度に設定されている。
【0035】
接続板42は、一端が連結部材40の他端と接続され、他端がリーフ板14A,14Bと接続されている。接続板42は、その一端から他端にかけて、放射線Rの照射方向(X軸方向)に沿って下方に延び、屈曲部42aにおいて屈曲された後、リーフ板14A,14Bに向かって再び放射線Rの照射方向(X軸方向)に沿って下方に延びている。接続板42は、矩形状を呈する薄板であり、ステンレス板を加工して形成することができる。本実施形態において、接続板42の板厚は0.5mm程度に設定されている。
【0036】
以上のような本実施形態においては、駆動機構24において、モータ28の回転運動がボールねじ26によって直線運動に変換され、ボールねじ26を構成するナット体26bとリーフ板14A,14Bが接続板38によって接続されているので、リーフ板14A,14Bがボールねじ26を構成するねじ軸26aの延在方向(Y軸方向)に沿って駆動される。そして、駆動機構24とリーフ板14A,14Bとが一対一に接続されているので、各駆動機構24により各リーフ板14A,14Bをそれぞれ駆動させることで、放射線Rが通過可能な開口44(図2参照)を形成することができると共に、開口44の位置及び形状を自在に変化させることができる。そのため、マルチリーフコリメータ1に入射された放射線Rは、開口44を通過すると共に開口44の周囲に存在するリーフ板14A,14Bによって遮蔽され、開口44の形状に対応する輪郭に沿って切り取られることとなるので、マルチリーフコリメータ1では、患者Pの体内における病巣部Fの形状に合わせて放射線Rの照射範囲を変化させることが可能となっている。
【0037】
また、本実施形態においては、駆動ユニット12が、駆動機構列22A〜22A及び駆動機構列22B〜22Bを有しており、駆動機構列22A〜22A及び駆動機構列22B〜22Bが、放射線Rの照射軸Aに沿って並ぶように配置された複数の駆動機構24を有している。そのため、駆動機構24が互いに干渉することなく配列されるようになるので、リーフ板14A,14Bの薄板化に対応可能となっている。
【0038】
また、本実施形態においては、駆動機構列22A〜22A及び駆動機構列22B〜22Bが、それぞれ放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)に沿って並ぶように配置されており、駆動機構列22A〜22Aと駆動機構列22B〜22Bとが、リーフ板14A,14Bの長さ方向(Y軸方向)に沿って並ぶように配置されている。そのため、駆動ユニット12における駆動機構列22A〜22A及び駆動機構列22B〜22Bの配置密度を高めることができるので、マルチリーフコリメータ1のコンパクト化を図ることが可能となっている。
【0039】
また、本実施形態においては、駆動ユニット12が、リーフ板群10よりも放射線Rの上流側(サイクロトロン108側)に配置されている。そのため、マルチリーフコリメータ1を患者に近づけようとした場合に、マルチリーフコリメータ1の患者Pへの近接が駆動ユニット12によって阻害されないようになっている。その結果、放射線Rの照射範囲を高精度に設定することが可能となっている。
【0040】
また、本実施形態においては、リーフ板14A,14Bの側面Sにおける溝部16に1つのミニチュアベアリング18が係合しており、リーフ板14A,14Bの側面Sにおける溝部16に2つのミニチュアベアリング18が係合している。そのため、リーフ板14A,14Bが3つのミニチュアベアリング18によって支持されると共に、駆動機構24によるリーフ板14A,14Bの駆動に伴いミニチュアベアリング18がリーフ板14A,14Bの駆動方向(Y軸方向)に沿って回動するので、リーフ板14A,14Bをその駆動方向(Y軸方向)にスムーズに駆動させることが可能となっている。
【0041】
また、本実施形態においては、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の中央部分に位置するリーフ板14Aの板厚Tが、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の両端部分に位置するリーフ板14Bの板厚Tよりも薄くなっている。主として、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の中央部分に位置するリーフ板14Aの板厚Tによって放射線Rの照射範囲の精度が決定されるので、このようにすることで、放射線Rの照射範囲をより高精度に設定することが可能となっている。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、リーフ板14A,14Bの側面Sにおける溝部16に1つのミニチュアベアリング18が係合しており、リーフ板14A,14Bの側面Sにおける溝部16に2つのミニチュアベアリング18が係合していたが、リーフ板14A,14Bの側面S,Sの一方に少なくとも一つのミニチュアベアリング18が配置され、リーフ板14A,14Bの側面S,Sの他方に少なくとも二つのミニチュアベアリング18が配置されていればよい。
【0043】
また、本実施形態ではミニチュアベアリング18を用いたが、リーフ板14A,14Bの駆動方向(Y軸方向)に回動可能なものであれば、種々の回動部材を用いることができる。
【0044】
また、本実施形態では放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の中央部分に位置するリーフ板14Aの板厚Tを、放射線Rの照射軸Aと直交する方向(Z軸方向)においてリーフ板群10の両端部分に位置するリーフ板14Bの板厚Tよりも薄くしていたが、リーフ板群10を構成するリーフ板14A,14Bの板厚Tが全て同じであってもよい。
【0045】
また、本実施形態では駆動ユニット12がリーフ板群10よりも放射線Rの上流側(サイクロトロン108側)に配置されていたが、駆動ユニット12がX軸方向においてリーフ板群10と同じ位置(リーフ板群の隣)に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本実施形態に係る放射線治療装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る放射線治療装置の構成を説明するための概略図である。
【図3】図3は、マルチリーフコリメータを示す斜視図である。
【図4】図4は、マルチリーフコリメータの一部を示す斜視図である。
【図5】図5は、リーフ板を拡大して示す側面図である。
【図6】図6は、駆動機構を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…マルチリーフコリメータ、10…リーフ板群、12…駆動ユニット、14A,14B…リーフ板、18…ミニチュアベアリング(第1回動部材、第2回動部材)、22A〜22A,22B〜22B…駆動機構列(駆動手段列)、24…駆動機構(駆動手段)、100…放射線治療装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内における病巣部の形状に合わせて放射線の照射範囲を設定するマルチリーフコリメータであって、
リーフ板が放射線の照射軸と直交する仮想軸に沿って並ぶように複数配置されたリーフ板群と、
前記リーフ板と一対一に接続されると共に前記照射軸に直交し且つ前記仮想軸に直交する方向に沿って当該リーフ板を駆動させる駆動手段が前記照射軸に沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を複数有する駆動ユニットとを備えることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、前記駆動手段列が前記リーフ板の駆動方向に沿って並ぶように複数配置されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載されたマルチリーフコリメータ。
【請求項3】
前記駆動ユニットは、前記駆動手段列が前記仮想軸に沿って並ぶように複数配置されて構成されていることを特徴とする請求項2に記載されたマルチリーフコリメータ。
【請求項4】
前記リーフ板の駆動方向に沿って回動可能とされると共に前記照射軸に沿う方向における前記リーフ板の一端側に少なくとも一つ配置された第1回動部材と、
前記リーフ板の駆動方向に沿って回動可能とされると共に前記照射軸に沿う方向における前記リーフ板の他端側に少なくとも二つ配置された第2回動部材とを更に備え、
前記リーフ板は、前記第1回動部材及び前記第2回動部材によって支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載されたマルチリーフコリメータ。
【請求項5】
前記仮想軸に沿う方向において前記リーフ板群の中央部分に位置するリーフ板の板厚が、前記仮想軸に沿う方向において前記リーフ板群の両側部分に位置するリーフ板の板厚よりも薄くなっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載されたマルチリーフコリメータ。
【請求項6】
前記駆動ユニットは、前記リーフ板群よりも放射線を照射する放射線源に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載されたマルチリーフコリメータ。
【請求項7】
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射される放射線の照射方向に配置され、放射線の照射範囲を所定形状に設定するマルチリーフコリメータとを備える放射線治療装置であって、
前記マルチリーフコリメータは、
複数のリーフ板が放射線の照射軸と直交する仮想軸に沿って配列されたリーフ板群と、
前記リーフ板と一対一に接続されると共に前記照射軸に直交し且つ前記仮想軸に直交する方向に沿って当該リーフ板を駆動させる駆動手段が前記照射軸に沿って並ぶように複数配置された駆動手段列を複数有する駆動ユニットとを有していることを特徴とする放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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