説明

マルチロール装置によって可撓性支持体を架橋性液状シリコーン組成物でコーティングする際のミスト発生を防止する方法

本発明は、高速ロール上での紙や合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステル)、織物原料のシートのような様々な可撓性支持体上へのシリコーンコーティングの一般分野に関する。本発明は、高速で作動するロールタイプのコーティング装置を用いて可撓性支持体を架橋したコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物でコーティングする時のミストの発生を制御するための効果的な方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、高速ロール上で紙又は合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステル等)又は織物原料(textile)のシートのような様々な可撓性支持体をシリコーンでコーティングする分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、重付加によって、脱水素縮合によって、重縮合によって、カチオンルートで又はフリーラジカルルートで架橋して特に剥離特性及び/又は撥水特性を有する保護コーティング又はフィルムを形成することができる1種以上のポリオルガノシロキサンを含む液状組成物による可撓性材料のコーティングに関する。
【0003】
可撓性支持体は、紙、厚紙、プラスチックフィルム又は金属フィルムであることができる。これらのシリコーンでコーティングされた支持体の用途には、例えば:食品用途(焼き型、ラッピング)用の紙、粘着ラベル/テープ、パッキング及びシーリング材料等がある。
【背景技術】
【0004】
これらの可撓性支持体の架橋性(即ち架橋可能な)液状シリコーンによるコーティングは、連続的に且つ非常に高速で作動するコーティング装置によって実施される。これらの装置は、複数のロール(特にプレスロール及びコーティングロールを含む)から成るコーティングヘッドを含み、これに互いに連関した一連のロールによって架橋性液状シリコーン組成物が連続的に供給される。可撓性支持体のウェブがプレスロールとコーティングロールとの間を高速で循環し、それにより少なくとも一方の面を(コーティングヘッドの下流に配置された架橋手段によって架橋させることが予定される)シリコーンフィルムでコーティングされる。これらの架橋手段は、例えば熱、放射線(例えば紫外線)又は電子ビームの放射源であることができる。
【0005】
生産性の競争において、剥離性シリコーンでコーティングされた可撓性支持体の製造業者は、ますます高速化が求められる可撓性支持体ウェブ進行線速度に適した液状シリコーンコーティング配合物を求めている。高速コーティングのための新たなシリコーン配合物についてのこの研究において、経済性のファクターはもちろん無視できないことである。
【0006】
しかしながら、連続コーティング機についての高速化は、コーティングロールから動いている可撓性支持体ウェブへの液状シリコーンフィルムの移動に関しての問題点の代名詞であることが知られている。これらの移動の問題(「スプリッティング」)は、特にコーティングヘッドの周辺領域並びにより特定的には回転しているロール同士の接触点及び/又はコーティングロールとコーティングされるべき可撓性支持体との間の接触点において、ミスト又はエーロゾルの発生(「ミスティング(ミスト形成)(ミスティング)」、「フォギング(fogging)」)となって現れてくる。このミスト又はこのエーロゾルの密度は、進行線速度が増すにつれて、従ってロールの回転速度が増すにつれて、増大する。
【0007】
この現象は、まず第一に消耗材料の損失、とりわけ下流(例えばオーブン)において支持体上にコーティング液体の液滴が堆積するという結果を招き、これはコーティングの品質をひどく損なうものである。
【0008】
さらに、望ましくないミストの形成は、ロールコーティング装置の付近で高レベルのエーロゾルに曝される作業者にとっての産業衛生及び安全性の観点から、不利な結果をもたらす。このエーロゾルは有毒な場合がある。
【0009】
さらに、ミスティングはロールコーティング装置の急速な汚染をもたらし、メンテナンス上の制約及び早過ぎる消耗を引き起こす。
【0010】
このミストという結果に対して保護するためには、コーティングヘッドの周りにミストを捕捉することができる吸引システムを配置させるのが一般的である。
【0011】
さらに、この現象を未然に防ぐためのコーティングヘッドの調整法が当業者にはいくつか知られている。その例には、以下のものが包含される:
A.速度を低下させる。これは生産性にとって不利である。
B.シリコーン付着率を減らす。これは得ることが望まれる可撓性シリコーン支持体の特性(外観、被覆性、剥離性、機械的特性)にとって不利である。
C.コーティングロールの接線速度と紙の線速度との間の差を大きくする。しかし一定の差を超えるとコーティング層の均質性がひどく妨げられる。さらに、この手段によると、ミストの密度を減らすことは可能であるが、コーティング速度を有意に増加させるのに充分にミストを除去することはできない。
D.コーティングロールとプレスロールとの間の圧力を高める。ここでもまた、ある程度の限界があり、充分にはミスト形成現象をなくせない。
【0012】
ロールコーティング機におけるミストの形成を制御するための別のアプローチは、液状シリコーンコーティング組成物の配合に働きかけることから成るものである。
【0013】
このアプローチに従えば、シリコーンコーティング液体を構成するポリオルガノシロキサンの数による平均重合度を低減させ、従ってシリコーンコーティング浴の粘度を低下させることによって、ミストの密度を抑制することが知られている。
【0014】
これらの既知の技術には、特性、特に得ることが求められる可撓性シリコーンで処理された支持体の剥離性をかなり変化させてしまうという重大な欠点がある。
【0015】
シリコーン配合物を介するこのアプローチを例証するために、国際公開WO2004/046248号パンフレットを引用することができる。この国際公開パンフレットには、可撓性支持体コーティング用途用のミスティング防止用添加剤として星形枝分れシリコーンポリマーを使用することが記載されている。これらの星形枝分れシリコーンポリマーの調製方法は、反応性≡SiH単位を含有するポリオルガノシロキサンと長鎖オレフィンとを(ヒドロシリル化によって)不完全に反応させて一部置換されたポリヒドロオルガノシロキサンを得て、これを次いでヒドロシリル化によってMQタイプのビニルシリコーン樹脂及び長鎖ジオレフィンと反応させることを含む。この種の組成物は比較的複雑であり、従って得るのに費用がかかることは明白である。さらに、これらは依然として高速シリコーンロールコーティングにおけるミスト形成の制御に関して、改善の余地を残す。
【0016】
ヨーロッパ特許公開第0716115号公報には、ロールによる高速コーティング用のシリコーン組成物の調製方法が記載されており、この組成物はミストの密度を下げることができると示されている。この方法に従えば、トリメチルシリルを末端とする重合度12のポリジメチルメチルヒドロシロキサン、並びに末端基がジメチルビニルシロキシ基であり且つ重合度が300である、ペルフルオロエチルブチル及びメチルビニル官能基で置換されたポリジメチルシロキサン0.01%、並びにポリプロピレングリコール及び随意にステアリル又はオレイルアルコールが用いられる。これは、ポリオキシプロピレン基で官能化されたポリジメチルシロキサンをもたらす。これらの官能化ポリジメチルシロキサンは、他の官能化ポリジメチルシロキサン(例えばヘキセニル単位で官能化されたもの)と組み合わされ、また、白金をベースとするヒドロシリル化触媒とも組み合わされて、ミスト形成の減少を可能にするシリコーンコーティング組成物を形成する。この官能化単位は、ステアリン酸又はオレイン酸残基のような疎水性残基であることができる。
【0017】
米国特許第4808391号明細書に記載された発明は、シリコーンをベースとするインク及びワニス、より特定的にはこれらのインク/ワニスを高速で作動するローラーコーティング機を用いて基材に塗布する方法に関する。この特許明細書には特に、15000〜50000mPa・sの範囲の25℃における粘度を有するビニルを末端基とするポリジメチルシロキサンを含む組成物が開示されている。これらの液状コーティング組成物はさらに、白金をベースとする触媒及び高い比表面積を有するシリカ(より特定的にはヒュームドシリカ)から成るレオロジー添加剤を含む。
【0018】
米国特許第6057033号明細書には、可撓性支持体上をコーティングして、UV誘発カチオン架橋後に剥離コーティングを形成することが予定されるシリコーン組成物が開示されている。これらの組成物は、ポリオルガノシロキサンに加えて、平均長さ15〜100μm及び平均厚さ5〜40μmのセルロース繊維を含む。用いられるポリオルガノシロキサンは、UV誘発フリーラジカル架橋を可能にするアクリルオキシ又はメタクリルオキシタイプの架橋性基で官能化されたポリオルガノシロキサンである。
【0019】
この組成物中に加えられたセルロース繊維は、脆弱でない架橋シリコーン剥離コーティングを得るという技術上の問題点の解決策を提供することを可能にする。このセルロース繊維は次の点に関して改善をもたらすことが示されている:支持体へのシリコーンコーティングフィルムの移動、打抜き耐性、機械的特性(引張抵抗及び引裂抵抗)、紙へのコーティングの固着、紙内部へのコーティング液の吸収の減少、そしてついでにミスト形成の減少。
【0020】
この最後の点については、米国特許第6057033号明細書にはセルロース繊維がもたらすミストの減少を評価するための量的要素が何ら提供されていない。この減少は全く不充分なままであると考える必要がある。
【0021】
国際公開WO01/98418号パンフレットには、反応性≡SiH単位を有する分岐状ポリオルガノシロキサンであるミスティング防止剤をシリコーンコーティング組成物中に用いることが記載されている。このミスティング防止剤は、白金族の金属を含有する触媒の存在下で、少なくとも3個の≡SiH基を含有する少なくとも1種の有機ヒドロゲノケイ素化合物大過剰と少なくとも2個のアルケニル基を有する少なくとも1種の化合物とを、比[反応性≡SiH単位の数]:[反応性≡Si−アルケニル単位の数]≧4.6:1として反応させることを含む方法によって得られる。
【0022】
特開平6−264011号公報には、フィルム形成性樹脂及び溶剤を含み、さらに直径1〜10μmのワックス粒子を含み、最も粗大な粒子の直径が支持体に塗布された湿ったフィルムコーティングの厚さの150%以下であるコーティング液が記載されている。この種のコーティング液は、ミスト形成の抑制によって少なくとも10〜30m/分のコーティング速度の増大が可能だろうと推測される。この文献はシリコーンコーティングに関するものではないので、このような文献の教示はかけ離れたものである。
【特許文献1】国際公開WO2004/046248号パンフレット
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第0716115号公報
【特許文献3】米国特許第4808391号明細書
【特許文献4】米国特許第6057033号明細書
【特許文献5】国際公開WO01/98418号パンフレット
【特許文献6】特開平6−264011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この従来技術に鑑みて、本発明の本質的な目的の1つは、架橋したコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物で可撓性支持体をコーティングする(高速で作動するロールコーティング装置によって行われるコーティング)時のミスティング(ミスト形成)を効果的に制御する方法を提供することにある。
【0024】
本発明の別の本質的な目的は、架橋させることが予定されるシリコーン組成物で可撓性支持体をコーティングする(高速で作動するロールコーティング装置で行われるコーティング)時のミスティングを簡単且つ経済的に制御する方法を提供することにある。
【0025】
本発明の別の本質的な目的は、架橋させることによって剥離コーティングとなることができるシリコーン組成物によって可撓性材料のロール上で高速で可撓性支持体をコーティングする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらのすべての目的及び他の目的は、本発明によって達成される。本発明は、まず第1に、可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法を提供し、この方法は、次の工程:
(1)次の成分:
・重付加によって、脱水素縮合によって、重縮合によって、カチオンルートで又はフリーラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに予定される反応のタイプに応じて選択される種類の1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着調節剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋抑制剤D:
を含む、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xを調製する工程;並びに
(2)ロールコーティング装置によって可撓性支持体上に前記液状シリコーン組成物Xをコーティングする工程:
を含み、
工程(1)において前記液状シリコーン組成物Xにミスティング防止用添加剤Eを添加することを特徴とし、
前記ミスティング防止用添加剤Eは、
・少なくとも1個の反応性≡SiH単位を式:
【化1】

の単位上のみに有する分岐状ポリオルガノシロキサンL(又は少なくとも1種の分岐状ポリオルガノシロキサンLを含む混合物)であり;
前記ミスティング防止用添加剤Eは、
(a)次のもの:
■1分子当たりに2個の反応性≡SiH単位を有し、次の実験式:
【化2】

を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサンF
{これら式中、
a、a'、b及びcは0以上の数であり、好ましくはa',b及びcは0であり、
MはR'334SiO1/2であり;
M'はHR34SiO1/2であり;
DはR56SiO2/2であり;
TはR7SiO3/2であり;
QはSiO4/2であり;
記号R1、R2、R3、R'3、R4、R5、R6及びR7は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれが
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす}
と、
■ケイ素原子に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たりに少なくとも3個有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサンGとを、
▲1種以上の重付加触媒H(この重付加触媒Hは、白金族に属する少なくとも1種の金属から成るのが好ましい)、並びに
▲随意としての1種以上の架橋抑制剤I及び/又は1種以上の溶剤J
の存在下で、好ましくは0℃〜200℃の範囲の温度において、反応させ、その際、成分F及びGの性状及び量を比[反応性≡SiH単位の数]:[反応性≡Si−アルケニル単位の数]>1:1(好ましくは>2:1)となるように決定し、そして
(b)必要に応じて重付加触媒Hの除去及び/又は脱蔵及び/又は架橋抑制剤I'の添加の後に、ミスティング防止用添加剤Eを単離する
ことによって得られたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明者らは、全く驚くべきことにそして予期しなかったことに、少なくとも1個の反応性≡SiH単位を単位M'上のみに有する分岐状ポリオルガノシロキサンL(又は1種以上の分岐状ポリオルガノシロキサンLを含む混合物)であるミスティング防止用添加剤Eを用いることによって、ミスティングに対する効果的な制御がもたらされ、それにより、高速で作動するロールコーティングシステムにおけるミスティングに関する問題が有意に改善されることを見出したという点で、賞賛に値するものである。
【0028】
本発明者らはまた、
・α,ω位において反応性≡SiH単位を末端とする(従って反応性≡SiH単位を2個だけ含む)ポリオルガノシロキサンオイルFと、
少なくとも3個の反応性≡Si−アルケニル単位を含むポリオルガノシロキサンオイルGと
から、成分F及びGの性状及び量を比[反応性≡SiH単位の数]:[反応性≡Si−アルケニル単位の数]>1:1となるように選択した重付加反応によってこの添加剤を調製したという点で、賞賛に値するものである。
【0029】
実際、前記国際公開WO01/98418号パンフレットには、ミスティング防止用添加剤は、
・大過剰の、少なくとも3個の≡SiH基を含有するポリオルガノシロキサンオイルと、
少なくとも2個の≡Si−アルケニル単位を含むポリオルガノシロキサンオイルと
比[反応性≡SiH単位の数]:[反応性≡Si−アルケニル単位の数]≧4.6:1となるようにして重付加反応させることによって調製しなければならないと記載されているため、技術上の先入観/偏見があった。
【0030】
従って、本発明に従うミスティング防止剤Eを調製するための本発明に従う反応成分F及びGの適切な選択は、前記国際公開WO01/98418号パンフレットに教示された比[≡SiH]:[≡Si−アルケニル]≧4.6:1という条件を取り除くことを可能にする。
【0031】
ミスティング防止用添加剤Eの調製方法において規定された条件は、非常に顕著なミスティング防止特性を有する添加剤を得ることを可能にする。特定の科学理論やメカニズムに縛りつけられることは望まないが、この特性は本発明に従う分岐状ポリマー(群)Lの存在によるものであり、その粘弾性が高速で作動するロールコーティングシステムにおけるミスティングを制御することを可能にしているものと思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明に従うミスティング防止用添加剤Eは、コーティングの間のミスティングの量を減らすのに充分な量で用いられる。当業者であればもちろん、通常の試験によって困難なくこれらの量を決定できる。例えば、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xの総重量に対して0.1〜15重量部の量で本発明に従う添加剤を用いることができる。
【0033】
本発明に従う方法の1つの有利な実施形態に従えば、ポリオルガノシロキサンGは、
(a)ケイ素原子に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たりに少なくとも3個有するものであって、且つ
(b)次式:
【化3】

(ここで、
XはC2〜C6アルケニル基であり、
Zは触媒の活性に対して悪影響がない一価の炭化水素基であり、1〜8個の炭素原子を有し且つ随意にハロゲン原子で置換されたアルキル基から及びアリール基から選択され、
dは0、1又は2である)
の単位を有し且つ
(c)随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式:
【化4】

(ここで、Zは上記と同じ意味を持ち、
eは0〜3の範囲の値を有する)
の単位であるものである。
【0034】
ポリオルガノシロキサンF及びGは、シリコーン組成物の架橋をもたらす既知の重付加メカニズムによって互いに反応することができるものである。また、重付加触媒H(この重付加触媒Hは、白金族に属する少なくとも1種の金属から成るのが好ましい)を用いることも可能である。この触媒は、より特定的には白金化合物及びロジウム化合物から選択することができる。特に、米国特許第3159601号明細書、同第3159602号明細書、同第3220972号明細書、ヨーロッパ特許公開第0057459A号公報、同第0188978A号公報及び同第0190530A号公報に記載された白金と有機物質との錯体、並びに米国特許第3419593号明細書、同第3715334号明細書、同第3377432号明細書及び同第3814730号明細書に記載された白金とビニル含有オルガノシロキサンとの錯体を用いることができる。一般的に好ましい触媒は、白金である。この場合、白金金属の重量として計算した重付加触媒Hの重量による量は、ポリオルガノシロキサンF及びGの総重量に対して2〜400ppmの範囲とするのが一般的であり、5〜300ppmの範囲とするのが好ましい。
【0035】
シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物XのポリオルガノシロキサンAは、金属触媒(この場合には白金をベースとする触媒)の存在下で周囲温度において又は加熱時に重付加反応によって架橋するタイプのものであることができる。これらは、RTV(室温加硫性)と称される架橋性ポリオルガノシロキサン組成物又はHTV(これは「高温加硫性」の略号である)と称される重付加ポリオルガノシロキサン組成物である。
【0036】
2構成型(2液型)又は1構成型(1液型)RTV又は重付加HTVポリオルガノシロキサン組成物は、本質的に、一般的に金属触媒(好ましくは白金触媒)の存在下でヒドロシリル基とシリルアルケニル基との反応によって硬化又は架橋する。これらは、例えば米国特許第3220972号明細書、同第3284406号明細書、同第3436366号明細書、同第3697473号明細書及び同第4340709号明細書に記載されている。
【0037】
ポリオルガノシロキサンAはまた、周囲温度において湿分の作用下で、一般的に金属触媒(例えばスズ化合物)の存在下で重縮合反応によって架橋するタイプのもの(重縮合RTV)であってもよい。このタイプのポリオルガノシロキサンを用いる組成物は、例えば米国特許第3065194号明細書、同第3542901号明細書、同第3779986号明細書、同第4417042号明細書及びフランス国特許第2638752号明細書(1構成型組成物)並びに米国特許第3678002号明細書、同第3888815号明細書、同第3933729号明細書及び同第4064096号明細書(2構成型組成物)に記載されている。
【0038】
これらの重縮合RTV組成物の一部となるポリオルガノシロキサンAは、ヒドロキシル基又は加水分解性基(加水分解可能な基)(例えばアルコキシ基)を有する線状、分岐状又は網目状(架橋)ポリシロキサンである。かかる組成物にはさらに架橋剤を含ませることができ、この架橋剤は特に少なくとも3個の加水分解性基を有する化合物、例えばケイ酸塩、アルキルトリアルコキシシラン又はアミノアルキルトリアルコキシシランである。
【0039】
前記液状シリコーン組成物Xはさらに、カチオンルート又はフリーラジカルルートで、
・有効量のカチオン開始剤系(熱開始剤及び/若しくは光開始剤)−有機金属錯体若しくはオニウムホウ酸塩タイプの開始剤、プロトン供与性有機溶剤(イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等)の存在下で、且つ/又は
・場合によりフリーラジカル開始剤の存在下で、化学線(UV)若しくは電子ビームで活性化して、
架橋可能な1種以上のポリオルガノシロキサンAを含むことができる。
【0040】
これらのポリオルガノシロキサンは、例えば線状又は環状エポキシシリコーン及び/又はビニルエチルシリコーンである。この種のエポキシ又はビニルオキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、特にドイツ国特許第4009889号明細書、ヨーロッパ特許公開第0396130号公報、同第0355381号公報、同第0105341号公報、フランス国特許第2110115号明細書及び同第2526800号明細書に記載されている。
【0041】
エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、≡SiH単位含有オイルと4−ビニルシクロヘキセノン又はアリルグリシジルエーテルのようなエポキシ官能性化合物とのヒドロシリル化反応によって調製することができる。ビニルオキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、SiH単位含有オイルとアリルビニルエーテル又はアリルビニルオキシエトキシベンゼンのようなビニルオキシ官能性化合物とのヒドロシリル化反応によって調製することができる。
【0042】
架橋抑制剤Dは一般的に、使用準備のできた組成物に所定の可使時間を付与するために用いられる。一方で触媒本体の性状及び組成物中におけるその濃度(所定の架橋速度をもたらす)を変化させ、他方で遅延剤の性状及びその濃度を変化させることによって、可使時間を調節することができる。触媒本体の活性は、加熱することによって回復される(熱活性化)。遅延剤は、アセチレン性アルコール(エチニルシクロヘキサノール:ECH)及び/若しくはマレイン酸ジアリル及び/若しくはトリアリルイソシアヌレート及び/若しくはマレイン酸ジアルキル(マレイン酸ジエチル)及び/若しくはアルキニルジカルボン酸ジアルキル(アセチレンジカルボン酸ジエチル)から、又はポリオルガノシロキサン(これは環状であり且つ少なくとも1個のアルケニルで置換されているのが有利であり、テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましい)、若しくはアルキル含有マレエートから選択するのが好ましい。
【0043】
アセチレン性アルコール(例えばフランス国特許第1528464B号明細書及び同第2372874A号明細書を参照されたい)は、本発明に従って有用な遅延剤である。その例には、次のものが包含される:
・1−エチニルシクロヘキサン−1−オール;
・3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
・3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
・1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
・3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
・3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール。
【0044】
これらのα−アセチレン性アルコールは、市販されている製品である。
【0045】
本発明に従って有用な遅延剤の別の例には、ホスフィン誘導体、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト{Ciba社より商品名Irgafos 168(登録商標)として販売}、又は国際公開WO2004/061003号パンフレットに記載されたもの、特に次式のIrgafos(登録商標)P-EPQ化合物が包含される。
【化5】

【0046】
この種の遅延剤は、特に触媒系の金属に対して1〜100モル当量で存在させる。
【0047】
本発明の方法のために構想される架橋抑制剤I及びI'は、例えば抑制剤Dについて記載したものである。好ましくは、I'はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト{Ciba社より商品名Irgafos 168(登録商標)として販売}である。
【0048】
シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xにおいて、架橋したシリコーンコーティングの剥離特性に対する制御を可能にするために、1種以上の粘着調節剤系Kを用いるのが有利であり得る。
【0049】
剥離紙又はポリマー系支持体を有する粘着テープ用のシリコーン配合物中の粘着調節剤系の例としては、ヨーロッパ特許公開第0601938A号公報を挙げることができ、その内容をすべて本明細書中に取り入れる。
【0050】
1つの態様に従えば、粘着調節剤系Kは、
・重付加によって架橋する配合物の場合には、式MDViQ;MMViQ;MMViViQ;MMViDDViQ;MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂であり;
・重縮合によって架橋する配合物の場合には、式MOHQのポリオルガノシロキサン樹脂であり;そして
・放射線下で架橋する配合物の場合には、式MD'Q又はMM'Qのポリオルガノシロキサン樹脂である。
【0051】
希釈剤及び/又は溶剤J、J'及びJ''の例には、脂肪族及び芳香族溶剤並びに塩素化溶剤が包含され、その例には、ホワイトスピリット、メチルエチルケトン及びアセトンのようなケトン類、イソプロパノール及びn−ブチルアルコールのようなアルコール類、飽和、不飽和又は芳香族炭化水素類、有利にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン及びベンゼン、並びに「ナフサ」石油留分;C7〜C8石油留分、ハロゲン化炭化水素、並びにそれらの混合物がある。
【0052】
本発明の方法の1つの好ましい態様に従えば、ミスティング防止用添加剤Eが添加される(シリコーンコーティングの前駆体となる)液状シリコーン組成物Xは、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・1種以上の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着調節剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋抑制剤D:
を含む。
【0053】
触媒C1は、上記の重付加触媒Hについて規定した化合物から選択することができる。
【0054】
この好ましい態様に従えば、重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAは、式(VI):
【化6】

のシロキシ単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(VII):
【化7】

のシロキシ単位であるものである。これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリルであり、
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、
bは0、1又は2であり、
a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である。
【0055】
重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAの例には、ジメチルビニルシリルを末端とするジメチルポリシロキサン、トリメチルシリルを末端とするメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマー及びジメチルビニルシリルを末端とするメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマーがある。
【0056】
架橋用有機ケイ素化合物Bは、式(VIII):
【化8】

の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IX):
【化9】

の単位であるタイプのものである。これら式中、
記号Lは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
cは0、1又は2であり、そして
gは0、1、2又は3である。
【0057】
架橋用有機ケイ素化合物Bの例には、例えば、
・ヒドロジメチルシリルを末端とするジメチルポリシロキサンポリマー、
・ポリ(ジメチルシロキサン)(メチルヒドロシロキシ)α,ω−ジメチルヒドロシロキサンポリマー、
・MDD':ジメチルヒドロメチルポリシロキサン(ジメチル)単位を有し且つトリメチルシリルを末端とするコポリマー、
・M'DD':ジメチルヒドロメチルポリシロキサン単位を有し且つヒドロジメチルシリルを末端とするコポリマー、
・MD':トリメチルシリルを末端とするヒドロメチルポリシロキサン。
【0058】
これらの成分に加えて、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xにはさらに、重付加によって、重縮合によって、カチオンルートで又はフリーラジカルルートで架橋するシリコーン組成物において一般的な1種以上の添加剤を含ませることができる。例えば顔料等を挙げることができる。
【0059】
別の有利な実施形態に従えば、分岐状ポリオルガノシロキサンLは、次の平均実験式:
【化10】

を有する。ここで、
f、g、i、k及びmは0以上であり、
h及びmは0より大きく、
M'はHR89SiO1/2であり、
alkはRR1011SiO1/2であり、
alkはRR12SiO2/2であり、
DはR1314SiO2/2であり、
TはR15SiO3/2であり、
QはSiO4/2であり、
ここで、
記号R(分岐状ポリマーのアルキル玉継手)は、C2〜C6アルキル基であり、そして
記号R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれが
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす。
【0060】
本発明の方法の1つの好ましい態様に従えば、本発明に従うミスティング防止用添加剤Eが添加される(シリコーンコーティングの前駆体となる)液状シリコーン組成物Xは、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・1種以上の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着調節剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋抑制剤D:
を含む。
【0061】
本発明の別の主題は、可撓性支持体を前記のシリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xでコーティングする時のミスティングを減らすための、上で規定したミスティング防止用添加剤Eの使用に関する。
【0062】
本発明の最後の主題は、ロールコーティング装置によって可撓性支持体を前記のシリコーンコーティングの前駆体となる少なくとも1種の液状シリコーン組成物Xでコーティングする方法であって、本発明のミスティング制御方法を用いることを特徴とする、前記コーティング方法に関する。
【0063】
従って、本発明が、高速で作動するロールコーティング装置によって可撓性支持体(例えば紙、フィルム又はポリマーフィルム)をコーティングする時のミストの生成を抑制する手段であって、独創性があり、簡単で、経済的で、且つ信頼性があるものを提供することは、明らかである。実際の工業上の結果は、コーティングの品質に対して有害であるこのミスティング現象が発生することなく、運転速度をさらに高めることができるということである。本発明によって提供される制御手段はまた、可撓性支持体の少なくとも一方の面上に得ることが望まれる架橋したシリコーンコーティングの外観品質、被覆性、剥離特性及び機械的特性(剥がれ落ち)に影響を及ぼさないという無視できない利点をも有する。
【0064】
さらに、ミスティングの減少は、高速で作動するロールを用いた工業用シリコーンコーティング装置のそばに立つ人員にとっての衛生及び安全性の条件を有意に向上させる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の特定実施形態を例示することを目的とするものであり、本発明の範囲をこれら実施形態に限定するものではない。
【0066】
(I)ミスティング防止用添加剤Eの調製:
【0067】
例1:
【0068】
トルエン40g及びPt含有率10〜12%のKarstedtPt溶液14mgを不活性雰囲気下において導入する。この混合物を85℃において加熱撹拌し、次いで鎖の各末端を(CH3)2HSiO1/2単位でブロックされたポリ(ジメチルシロキサン)オイル(100g当たり0.2当量の≡SiHを含有)51g及びアルケニル化されたポリオルガノシロキサンオイル(100g当たり0.035当量の≡SiViを含有)49gを2時間かけて同時に前記触媒溶液中に流し込む。この反応混合物を85℃においてさらに3時間加熱する。揮発性成分をストリッピングした後に、得られた分岐状シリコーンオイルは、2300mm2/秒の粘度を有し、100g当たり0.085当量の≡SiHを含有していた。
【0069】
例2:
【0070】
トルエン40g及びPt含有率10〜12%のKarstedtPt溶液14mgを不活性雰囲気下において導入する。この混合物を85℃において加熱撹拌し、次いでα,ω−SiH≡SiHシリコーンオイル(100g当たり0.2当量の≡SiHを含有)51.6g並びに側部及び末端≡SiVi単位を含有するシリコーンオイル(100g当たり0.036当量の≡SiViを含有)48.4gを2時間かけて同時に前記触媒溶液中に流し込む。この反応混合物を、≡SiVi単位が完全に転化するまで、85℃においてさらに2時間加熱する。揮発性成分をストリッピングした後に、得られた分岐状シリコーンオイルは、283mm2/秒の粘度を有し、100g当たり0.081当量の≡SiHを含有していた。
【0071】
例2に対する比較例(従来技術のWO01/98418号を表わす)
【0072】
トルエン40g及びPt含有率10〜12%のKarstedtPt溶液14mgを不活性雰囲気下において導入する。この混合物を85℃において加熱撹拌し、次いで1分子当たり3個より多くの≡SiH単位を含有するシリコーンオイル(100g当たり0.4当量の≡SiHに相当)50.4g並びに側部及び末端≡SiVi単位を含有するシリコーンオイル(100g当たり0.036当量の≡SiViに相当)48.5g(SiH/SiVi比11.9に相当)を1時間かけて同時に前記触媒溶液中に流し込む。この同時添加の終わりに、この混合物はゲル化(架橋)し、もはや撹拌できなかった。従って、この組成物は予定される用途に用いることができない。
【0073】
例3:
【0074】
トルエン40g及びPt含有率10〜12%のKarstedtPt溶液14mgを不活性雰囲気下において導入する。この混合物を85℃において加熱撹拌し、次いでα,ω−SiHシリコーンオイル(100g当たり0.2当量のSiHを含有)95.7g及び≡SiVi単位を含有する環状シリコーンオイル(100g当たり1.13当量の≡SiViを含有)4.3gを1.5時間かけて同時に前記触媒溶液中に流し込む。この反応混合物を、≡SiVi単位が完全に転化するまで、85℃においてさらに4時間加熱する。揮発性成分をストリッピングした後に、得られた分岐状シリコーンオイルは、103mm2/秒の粘度を有し、100g当たり0.14当量の≡SiHを含有していた。
【0075】
(II)ミスティング防止用添加剤としての試験
【0076】
(I)において調製した分岐状シリコーンを、ミスティング防止用添加剤として試験した。観察された結果を、測定されたミスティング品質(mg/m3)として、又は異なるロール回転速度について、添加剤を用いて若しくは添加剤なしで測定したミスティングの比の形で、下記の表にまとめる。
【0077】
試験の説明
【0078】
高速で作動するロールコーティング装置で生成するミストを分析し且つ定量測定するために、再現性よく作動して900m/分を超える線速度で紙のウェブを搬送することができる実験室規模の2本ロール装置(フランス国グルノーブル所在のErmap社より入手)を用いた。その2本のロール(プレスロール、コーティングロール)は、10cmの直径を有する。プレスロールはゴムで被覆され、コーティングロールはクロムで被覆されている。コーティングロールは、2本のロールの速度が同期するようにダンベル形状にカットされている。プレスロールはモーターで駆動させることができ、一定圧力でコーティングロールと接触する。シリコーンコーティング液は、2本のロールの間隙中に直接注がれる。用いた液の量は。0.25ミリリットルである。
【0079】
次に、シリコーンポリマーA1(末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサン)と例1〜3に記載した生成物とをポリマー100重量部中に前記生成物2重量部の割合で混合することによって、様々な組成物を調製した。これらの組成物を、必要な時にはロール装置のバレル上で均質化させる。次いで、被検調製物を塗り広げたロール上で上記の回転システムを用いる。次いで、これらロールの回転速度を次第に高める。並行して、フランス国所在のITS社より販売されている粒子カウンターと称される測定装置をロールの間の接触点付近に置くことによって、ミストの密度を測定する。ミスト密度測定の結果は、所定測定速度における空気1m3当たりのシリコーンエーロゾルのmg数で表わされる。
【0080】
下記の表に、得られた結果をまとめる。
【表1】

【0081】
従って、上記の例に記載された生成物を添加することによって、回転するローラーによって生成するミストの濃さを有意に低下させることができるということがわかる。
【0082】
(III)紙支持体上のシリコーン剥離コーティングの調製
【0083】
次の物質を順次混合することによって、浴を得た:
・末端をジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサンシリコーンポリマー、
・本発明に従う添加剤(例1、2及び3)、
・ポリヒドロメチルシロキサンとポリジメチルシロキサンコポリマーとから成る油の混合物(これら2種のタイプのコポリマーは、トリメチルシロキサン基でブロックされたものである)、
・ジビニルテトラメチルジシロキサン中の溶液状のPt含有触媒(Karstedt触媒)。
【0084】
この混合物の割合は、最終浴中で、ビニル基の全モル数とヒドロシロキサン基の全モル数との間の比が1.75となり、白金濃度が110ppmになり、そしてエチニルシクロヘキサン−1−オール含有率が配合物の重量に対して約0.15重量%となるように、計算される。さらに、本発明に従うミスティング防止用添加剤は、末端をジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサンシリコーンポリマーに、配合物の総重量に対して2重量%の割合で、添加される。これらの浴を連続的に用いて、コーティングヘッドが4本の濡れたロールを供えたヘッドであるコーティング機によって「グラシン」紙支持体をコーティングする。このヘッドの下流で、約195℃の空気を循環させた乾燥機を用いて、前記シリコーンコーティングを130〜160℃の範囲の最大温度にすることによって、このシリコーンコーティングを硬化させる。
【0085】
上記の浴を連続的に用いてコーティングを実施した後に、コーティングの際のミストの減少に関して同等の結果が得られ、得られたコーティングは指触乾燥状態であり、剥離特性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
(1)次の成分:
・重付加によって、脱水素縮合によって、重縮合によって、カチオンルートで又はフリーラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに予定される反応のタイプに応じて選択される種類の1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着調節剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋抑制剤D:
を含む、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xを調製する工程;並びに
(2)ロールコーティング装置によって可撓性支持体上に前記液状シリコーン組成物Xをコーティングする工程:
を含む、可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法であって、
工程(1)において前記液状シリコーン組成物Xにミスティング防止用添加剤Eを添加し;
このミスティング防止用添加剤Eが、
・少なくとも1個の反応性≡SiH単位を式:
【化1】

の単位上のみに有する分岐状ポリオルガノシロキサンL(又は少なくとも1種の分岐状ポリオルガノシロキサンLを含む混合物)であり;
前記ミスティング防止用添加剤Eが、
(a)次のもの:
■1分子当たりに2個の反応性≡SiH単位を有し、次の実験式:
【化2】

を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサンF
{これら式中、
a、a'、b及びcは0以上の数であり、好ましくはa',b及びcは0であり、
MはR'334SiO1/2であり;
M'はHR34SiO1/2であり;
DはR56SiO2/2であり;
TはR7SiO3/2であり;
QはSiO4/2であり;
記号R1、R2、R3、R'3、R4、R5、R6及びR7は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれが
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす}
と、
■ケイ素原子に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たりに少なくとも3個有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサンGとを、
▲1種以上の重付加触媒H(この重付加触媒Hは、白金族に属する少なくとも1種の金属から成るのが好ましい)、並びに
▲随意としての1種以上の架橋抑制剤I及び/又は1種以上の溶剤J
の存在下で、好ましくは0℃〜200℃の範囲の温度において、反応させ、その際、成分F及びGの性状及び量を比[反応性≡SiH単位の数]:[反応性≡Si−アルケニル単位の数]>1:1(好ましくは>2:1)となるように決定し、そして
(b)必要に応じて重付加触媒Hの除去及び/又は脱蔵及び/又は架橋抑制剤I'の添加の後に、ミスティング防止用添加剤Eを単離する
ことによって得られたものである:
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンGが、
(a)ケイ素原子に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも3個有するものであって、且つ
(b)次式:
【化3】

(ここで、
XはC2〜C6アルケニル基であり、
Zは触媒の活性に対して悪影響がない一価の炭化水素基であり、1〜8個の炭素原子を有し且つ随意にハロゲン原子で置換されたアルキル基から及びアリール基から選択され、 dは0、1又は2である)
の単位を有し且つ
(c)随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式:
【化4】

(ここで、Zは上記と同じ意味を持ち、
eは0〜3の範囲の値を有する)
の単位である:
ものであることを特徴とする、請求項1に記載の可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法。
【請求項3】
前記分岐状ポリオルガノシロキサンLが次の平均実験式:
【化5】

{ここで、
f、g、i、k及びmは0以上であり、
h及びmは0より大きく、
M'はHR89SiO1/2であり、
alkはRR1011SiO1/2であり、
alkはRR12SiO2/2であり、
DはR1314SiO2/2であり、
TはR15SiO3/2であり、
QはSiO4/2であり、
ここで、
記号R(分岐状ポリマーのアルキル玉継手)は、C2〜C6アルキル基であり、そして
記号R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれが
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす}
を有することを特徴とする、請求項2に記載の可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のミスティング防止用添加剤Eが添加されるシリコーンコーティングの前駆体となる前記液状シリコーン組成物Xが、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・1種以上の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着調節剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋抑制剤D:
を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法。
【請求項5】
前記の重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAが式(VI):
【化6】

のシロキシ単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(VII):
【化7】

のシロキシ単位であるものである
{これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリルであり、
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、
bは0、1又は2であり、
a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である}
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法。
【請求項6】
前記の架橋用有機ケイ素化合物Bが式(VIII):
【化8】

の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IX):
【化9】

の単位であるものである
{これら式中、
記号Lは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
cは0、1又は2であり、そして
gは0、1、2又は3である}
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の可撓性支持体をコーティングする時のミスティングの制御方法。
【請求項7】
可撓性支持体を請求項1〜6のいずれかに記載のシリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xでコーティングする時のミスティングを減らすための、請求項1〜6のいずれかに記載のミスティング防止用添加剤Eの使用。
【請求項8】
ロールコーティング装置を用いて請求項1〜7のいずれかに記載のシリコーンコーティングの前駆体となる少なくとも1種の液状シリコーン組成物Xで可撓性支持体をコーティングする方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載のミスティング制御方法を用いることを特徴とする、前記コーティング方法。

【公表番号】特表2009−526090(P2009−526090A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543833(P2008−543833)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069408
【国際公開番号】WO2007/065921
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507421304)ブルースター シリコーン フランス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】